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2012年末時点のプリンタ 〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜 (2012年11月26日公開/2013年2月7日追記)
FAX付き複合機の中では高価な部類の3万円以上の機種である。3万円以上とひとくくりに言っても、45,600円から29,600円まで価格差は大きい。エプソンからはEP-905F(45,600円)、PX-675F(39,700円)、PX-605F(29,600円)、PIXUS MX893(29,980円)の4機種が該当する。価格も違えば、搭載する機能や、そもそも想定する用途まで異なっている4機種だが、はたしてどの機種を選べばよいのだろうか。 |
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シアン マゼンタ イエロー ライトシアン ライトマゼンダ |
シアン マゼンタ イエロー |
シアン マゼンタ イエロー |
染料ブラック シアン マゼンタ イエロー |
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(つよインク200) |
(つよインク200X) |
(つよインク200X) |
(ChromaLife100+) |
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ブラック:384ノズル |
ブラック:384ノズル |
Y/染料BK/顔料BK:各512ノズル |
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(A4普通紙セット可能枚数) |
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○(2L判・ハイビジョン以下) |
○(250枚/B5以上) |
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印刷部 |
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ノート罫線印刷(罫線・マス目・便箋) |
Web定型フォーム印刷 |
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印刷 |
iPod touch 第3世代以降 iPad Android 2.1以降 |
iPod touch 第3世代以降 iPad Android 2.1以降 |
iPod touch 第3世代以降 iPad Android 2.1以降 |
iPod touch iPad Android 1.6以降 |
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BOOKコピー ミラーコピー 領域判定コピー |
領域判定コピー |
領域判定コピー |
枠消しコピー 自動文書補正 |
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まずプリンタ部から見てみよう。インク構成からして、4機種には特徴がある。EP-905FはFAX機能無し複合機の最上位機種EP-905AにFAX機能をプラスした製品だ。そのため、プリンタ部は非常に高性能である。インク構成は、ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色に加え、ライトシアンとライトマゼンダという色の薄いインクを使う6色インク構成で、色の薄い部分でも粒状感がおさえられる。また最小インクドロップサイズは1.5plと非常に小さいことと併せて、非常に高画質だ。写真などを印刷しても、粒状感が皆無の非常に綺麗な印刷を行うことができる。インクは染料インクの「つよインク200」である。今年より採用された新インクであるため、アルバム保存300年、耐光性50年、耐オゾン性10年と耐保存性も非常に高い。また、染料インクであることから、写真紙等の光沢感がそのまま出るため、写真印刷に向いている。一方、同じエプソンでもPX-675FとPX-605Fは顔料インクの「つよインク200X」を採用する。インク構成もブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色のみで、最小インクドロップサイズも2plとEP-905Fと比べると大きいため、粒状感が目立つ事になる。とはえい2plは十分に小さいため、よく目をこらせば粒状感を感じる程度で十分写真画質で印刷が可能だ。しかし、そもそも顔料インクであるため、写真紙に印刷した際に光沢感が弱くなり、ポストカードのような半光沢になってしまうため、向いているとは言い難い。逆に顔料インクであるため、普通紙への印刷は得意である。顔料インクは普通紙へ印刷した際に、滲みが少なく、メリハリのある印刷が行える。全色顔料インクであるためモノクロ、カラー問わずである。染料インクではつぶれてしまいがちな白抜き文字や、グラフなどもくっきりしている。インク数や最小インクドロップサイズで勝るEP-905Fと比べても、普通紙印刷の画質は逆転しているとも言えるレベルだ。また、耐水性も高く、濡れた手で触ったり、マーカー等を引いてもにじまないというメリットがある。普通紙への文書印刷や年賀状等への印刷の他、受信したFAXの印刷も高画質に行える。採用する「つよインク200X」は
アルバム保存200年、耐光性45年、耐オゾン性30年とEP-905Fよりは若干劣る物の、十分に耐保存性は高いため、光沢感さえ気にならなければ写真印刷も行えるレベルだ。キャノンのPIXUS MX893は中間と言える。インク構成は5色だが、ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの4色構成で、ブラックのみ染料・顔料の両方のインクを搭載している(カラーは染料)。そのため写真印刷時は4色での印刷となる。ただし、最小インクドロップサイズは1plと非常に小さいため、4色印刷と言っても粒状感は皆無である。よく見ると、色の薄い部分でEP-905Fより粒状感を感じるとも言えるが、ほぼ同等の写真画質を実現している。染料インクであるため、用紙の光沢感が失われないのもEP-905Fと同等だ。一方顔料ブラックインクのおかげで、普通紙へのモノクロ印刷時にはメリハリのある印刷が行える。モノクロ原稿やモノクロコピー、年賀状の宛名面などの他、受信したFAXの印刷などで効果を発揮するだろう。一方カラーは染料インクのみなので、カラー部分にはこのメリットはない点はPX-675FやPX-605Fと異なる点だ。インクは「ChromaLife100+」で「キヤノン写真用紙・光沢 ゴールド」を使用することにより、アルバム保存300年、耐光性40年、耐ガス性10年を実現している(キャノン写真用紙・光沢 プロ[プラチナグレード]ではそれぞれ200年、50年、10年)。こちらも耐保存性は十分に高い。 印刷速度は、EP-905Fが最も速くL判縁なし写真1枚が14秒である。Advanced-MSDTという5つのインクサイズのインクを打ち分ける機能を搭載しており、必要に応じて大きなインクサイズを打ち分ける事で最小インクドロップサイズが小さくても高速化と高画質化を両立している。ノズル数も各色180ノズルとエプソンの機種の中では多い方なのも要因の一つだ。次に速いのはPIXUS MX893で17秒である。こちらも最小インクドロップサイズは小さいが、ノズル数を多くすることで高速化を実現している。一方PX-675FとPX-605Fは56秒と、他の2機種と比べると遅い。EP-905Fの4倍かかることになる。最小インクドロップサイズはやや大きい物の、カラーのノズル数が128ノズルと少なく、Advanced-MSDTではなく3つのインクサイズのインクを打ち分けるMSDTであるためと思われる。印刷と言えば、写真だけでなくA4普通紙への原稿印刷をあるだろう。パソコンからの原稿印刷やコピー、FAXの印刷など普通紙を使う機会も多いはずだ。こちらは、PIXUS MX893がカラーで9.3ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、モノクロで12.5ipmとかなり高速な値である。しかし、写真印刷では遅かったPX-675FとPX-605Fが、モノクロで9.5ipm、モノクロで15ipmと、PIXUS MX893を超える速度となっている。特にモノクロの15ipmというのはインクジェットプリンタとしてはかなり高速である。これはブラックインクのノズル数が、カラーの3倍の384ノズルとなっているためと思われる。もともとPX-675F/PX-605Fは普通紙への印刷がメインの機種なので、普通紙への印刷が高速なのは理にかなっていると言える。モノクロの事が多いFAXの印刷にも便利だろう。 給紙に関しては、それぞれ特徴がある。EP-905Fは基本は前面給紙となるが、前面給紙はカセット式で2段となっており、上段にL判やハガキなどの小さな用紙を、下段にはA4やB5といった大きな用紙をセットするようになっている。下段にA4普通紙が100枚、上段にハガキなら20枚までセット可能だ。もちろん下段にもL判やハガキサイズにの用紙もセットでき、その場合、ハガキなら40枚セット可能であるため、年賀状印刷や写真の大量印刷などをする場合は下段にセットする事で、用紙の入れ替えの手間を軽減できる。PX-605Fも前面給紙カセットが基本だが、1段となっており一度にセットできる用紙は1種類だ。ただしA4普通紙なら一度に250枚セットできる大型のもので、大量の印刷やコピー、FAXの受信にも対応できる。さらにPX-675FはPX-605Fの前面給紙カセットを2段にした製品だ。EP-905Fのように用紙サイズによって2段になっているのではなく、同じサイズのカセットがもう一段なので、2段目にもA4普通紙なら250枚セットできる。制限はカセット2はB5サイズ以上という事だけなので、カセット1にL判やB5用紙を、カセット2にA4用紙をセットして使い分けても良いし、両方にA4普通紙をセットして、計500枚セットする事も可能である。これら3機種は前面給紙カセットとすることで、背面上部にスペースを必要とせず、またデザイン的にもすっきりとしているというメリットがある。しかし、前面給紙カセットの場合、気になるのが、厚紙やラベル用紙などである。メーカーとしては問題ない事になっているが、前面給紙・前面排紙となり、内部で用紙が180度曲げられるのは少し心配である。また封筒などへの印刷も少し不安だ。そこで、これら3機種では、1枚ずつではあるが背面からの手差し給紙を可能としているのが珍しい。従来の背面給紙トレイに近い位置だが、用紙をセットしておけるような大型のものではなく、小さな背面給紙カバーと、用紙を支える小さな「用紙サポート」を引き出せるだけだ。その分、コンパクトな本体でも背面給紙を可能としているわけである。前述のような曲げられたくない用紙を使用する際に便利なほか、前面給紙カセットにセットしているのとは違う用紙を1枚だけ使いたくなったときに、入れ替える手間が省ける。さらに、EP-905Fでは通常の前面給紙カセットでは0.3mm厚の用紙までの対応だが、背面手差し給紙では、倍の0.6mmの用紙に印刷ができる。今まで印刷できなかった厚紙にも印刷できる点も便利だろう。最後にPXISU MX893だがこちらは前面給紙カセットと、背面給紙の両対応だ。背面給紙も手差しではなく、一般的な背面給紙トレイなので、A4普通紙の場合、前面・背面共に150枚までセットできる。前面給紙カセットが普通紙のみの対応であるため、ハガキや写真用紙は背面給紙に限定されるが、2種類の用紙を同時にセットできるのは便利だ。また背面給紙があるため、厚紙やラベル用紙などへの印刷も安心である。いずれの機種も給紙方法には工夫があり、また厚紙やラベル用紙などへの対応もしっかりと行われているというイメージだ。あとは前面給紙主体でシンプルだが背面手差しにも対応し、さらに0.6mm厚まで対応のEP-905F、背面給紙もしっかりサポートするPIXUS MX893、前面給紙主体だがセット可能枚数が多く背面手差しにも対応するPX-605F、前面給紙が2段で大量セットの可能で背面手差しにも対応するPX-675Fという事になる。ちなみに対応する最小用紙サイズはPIXUS MX893が名刺サイズ、その他3機種がL判サイズとなるため、名刺サイズの用紙に直接印刷したい場合はPIXUS MX893が必要だ。 そのほかの機能として、CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷機能はEP-905Fのみ搭載している。一方自動両面印刷機能は全機種が対応しているが、PX-675FとPX-605Fは普通紙のみであるため、ハガキの両面印刷を行いたい場合はEP-905FかPIXUS MX893が対応となる。写真の自動補正機能としては、エプソンの3機種は「オートフォトファイン!EX」、PIXUS MG4230は「自動写真補正II」という機能を備える。名称は違うものの、逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われるという高機能なものである。またパソコンからの印刷時だけでなく、後述のダイレクト印刷時にも利用できる。そのほか、PX-675FとPX-605Fはカラーインクが切れた際にもモノクロ印刷は継続できる機能を搭載する。通常は1色でもインクが無くなるとプリントが出来なくなるため、便利な機能である。ただし5日間限定であり、常にカラーインクを搭載せずに使用できるわけではなく、急になくなった際に、購入するまでの間使い続けられる程度の物だと考えた方がよい。 続いて、スキャナ部を見てみよう。解像度はEP-905Fが4800dpi、PX-675FとPX-605Fがが1200dpi、PIXUS MX893が2400dpiと大きな差がある。しかし反射原稿(紙などの原稿)にしか対応しないため、1200dpiでも十分すぎる解像度で、実際には600dpiや300dpiで使用することがほとんどになると思われるため、実際に使う上での差はあまりないと言える。いずれもCIS方式、厚い本の綴じ目近くなど、ガラス面から浮いてしまう原稿は苦手だ。ちなみにスキャンした原稿をパソコンを使わずにメモリカードに保存する機能も全機種が搭載している。また4機種ともFAX機能を搭載していることもあってADFを搭載している。エプソンの3機種は30枚まで、PIXUS MX893は35枚までの原稿を連続でスキャンできる。4機種とも両面スキャンに対応しているため便利だ。しかし、注意点がある。エプソンの3機種は両面スキャン時も解像度に制限はなく、スキャンやコピーだけでなくFAX送信時にも使えて便利だ。一方PIXUS MX893は両面スキャン時は最高600dpiに制限される。またFAX送信時には両面スキャンは行えない。せっかくのFAX機能の両面スキャン対応のADFがありながら、FAX送信時には使えないのは非常に残念だ。 ダイレクト印刷も全機種が搭載している。ただし、対応メモリカードは大きく異なる。全機種が対応しているのはSDカードとメモリースティック(EP-905FはメモリースティックDuo、他の3機種は標準サイズのメモリースティックだが)のみである。EP-905FとPIXUS MX893はこれらに加えてコンパクトフラッシュに、PX-675FとPX-605Fはこれらに加えてxDピクチャーカードに対応する。最近のコンパクトデジカメや携帯電話はSDカードの機種のみで、数年前までさかのぼってもメモリースティック対応の機種があるだけなので、これら2つに対応していれば問題ないとも言えるが、念のため手持ちのデジタルカメラのメモリカードを確認した方が良さそうだ。ちなみに、これらの機種はメモリカードだけでなくUSBメモリからの印刷にも対応している。さらに、エプソンの3機種は各種メモリカードからUSBメモリへのバックアップが可能な他、USBメモリ以外に対応の外付けハードディスクや外付けDVDドライブへのバックアップやそれらからの印刷も行える(ただしPX-675F/PX-605Fは外付けDVDドライブからの印刷のみ非対応)。その上、これら3機種をLAN接続をしている場合、他のパソコンから外付けハードディスクのデータにアクセスが可能な「外部機器共有」機能も備えている。つまりEP-905F/PX-675F/PX-605F単体でメモリカード内の写真やスキャンした写真や原稿を外付けHDDに保存でき、それらに家庭内のどのパソコンからもアクセスできるわけである。そのほか、EP-905Fは赤外線通信による印刷に対応している。PictBridgeは全機種が搭載しているが、EP-905FはUSB接続とWi-Fi接続の両方式のPictBridgeに対応しているのに対して、その他の3機種はUSB接続のPictBridgeのみ対応である。 ダイレクト印刷時の機能として代表的な手書き合成シートはEP-905Fのみ対応している。EP-905Fはそれ以外に、塗り絵風の輪郭だけの印刷や、写真を背景に印刷した便箋を始めとする罫線やマス目などの用紙が印刷「ノート罫線印刷」機能を搭載する。PX-675FとPX-605Fも「ノート罫線印刷」機能は搭載している。PIXUS MX893はカレンダーや原稿用紙、方眼紙、五線譜などが印刷できる機能を備えている。さらに、「Web定型フォーム印刷」機能を搭載し、本体内蔵の定型フォームだけでなく、Web上から最新の定型フォームをダウンロードし、印刷できるようになっている点が目新しい。 スマートフォンとの連携機能も4機種とも搭載している。いずれもiPhoneやiPod touch、iPadと、Android端末に対応している。いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることで行える。印刷できる内容としてまず写真がある。用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。さらにドキュメント印刷にも対応している。ただしエプソンの3機種はPDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応しており(PowerPointはiOS版のみ)、Webページの印刷もできる一方、PIXUS MX893はPDFのみ対応で、しかもAndroid端末はAndroid用アプリ上で作成したPDFファイルのみ対応している。ドキュメント印刷を行うならエプソンの3機種の方が便利だろう。また、全機種がスマートフォン上からスキャンを実行し、データをJPEG又はPDF形式で受け取る機能も搭載している。出かける前に紙の情報をさっとスマートフォンに転送するといった使い方ができるため便利だろう。 さらにネットワークを利用したプリント機能として、エプソンの3機種は、印刷したい写真や文書を本機にメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、スキャンした画像を離れた場所の対応複合機で印刷できる「メールdeリモート印刷」、通常のプリント同じ操作で、離れた場所のEP-905F/PX-675F/PX-605Fで印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。 コピー機能を見てみよう。単純なコピー機能としては、4機種とも単純な等倍コピーだけでなく、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「自動変倍」機能や、原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行う「オートフィット」機能、さらに25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える機能を搭載した高性能な物だ。またCD/DVD/Blu-rayレーベル印刷が行えるEP-905Fはレーベルコピーも行うことができる。また4機種とも原稿面に写真を複数枚置き、焼き増し風のコピーを行うことも出来る。この際、エプソンの3機種はは「退色復元」、PIXUS MX893では「色あせ補正」と名称は異なるが、4機種とも昔の色あせした写真も自動で補正してくれる機能も備えている。4機種とも2枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2アップにも対応する。さらにPIXUS MX893では4枚の原稿を1枚に縮小する4アップにも対応している。その他、EP-905Fはコピー時にも「塗り絵印刷」が行える他、見開きの本を左右ページで別々にコピーする「BOOKコピー」、アイロンプリント紙への印刷時に使える「ミラーコピー」、文字領域と画像領域を認識し、それぞれが見やすくなるよう別々の画像処理を行う「領域判定コピー」といった機能を備える。PX-675FとPX-605Fは「領域判定コピー」に加えて、免許証などの両面の小さな原稿を、1枚の用紙に裏表並べてコピーできる「IDコピー」機能も備えている。一方PIXUS MX893はには厚手の原稿など原稿台のカバーが浮いてしまう場合に黒くなる部分を消去する「枠消しコピー」機能と、ADFを使用して複数枚原稿を複数部コピーする際に1部ずつまとめてコピーする「ページ順コピー」機能を備え、エプソンの「領域判定コピー」と似た「自動文書補正」機能により、文字と写真の混在した原稿でも見やすくコピーできる。それぞれ機能は異なるが、複合機単独で様々なコピーが行えるよう工夫されている。 それでは肝心のFAX機能を見てみよう。4機種ともスーパーG3に対応しており、モノクロ、カラーFAXを行う事が出来る。4機種ともADFを搭載しているため、複数枚の原稿の送信も便利である。前述のようにエプソンの3機種はFAX送信時にも両面スキャンがおこなえるため、両面原稿のFAX送信も手軽に行えより便利だろう。33.6Kbpsで通信可能であり、その場合の伝送速度はモノクロで約3秒というのも共通だ。また読取走査線密度はモノクロで「8pels/mm×3.85line/mm又は8pels/mm×7.7line/mm、カラーで200×200dpiなのも共通である。さらに、PIXUS MX893のみモノクロ時に300×300dpiのファインEXモードを備えているが、大きな差ではないだろう。ダイヤル機能でも4機種とも短縮ダイヤルに対応しており、EP-905Fは60件、それ以外の3機種は100件登録できるため十分だ。受信したファクスの最大保存ページ数はEP-905Fが180枚又は30件、PX-675FとPX-605Fは180枚又は100件、PIXUS MX893が250枚又は30件と家庭で使う分には十分なメモリ量を備えている。また4機種とも電源を切っても、メモリに保存された受信FAXの内容は記憶しているので安心だ。ただし、停電時やコンセントが抜けた場合でも受信した内容が保持されるのはPX-675FとPX-605Fだけである。夜にはブレーカーを落とすという場合や、使わないときにどこかにしまっておくという人は注意が必要だ。4機種ともグループダイヤル、順次同報送信、手動送信、自動リダイヤル機能を備えているため、一般的な家庭用FAX電話以上の事が可能だ。また、「PCファクス」機能も4機種とも備えている。ただし、パソコン内のデータを直接FAXできる「送信」機能は4機種とも備えている物の、受信したFAXの内容をパソコン上で確認できる「受信」機能はPX-675FとPX-605Fのみ対応である。 操作パネルを見てみよう。EP-905Fの操作パネルは「タッチパネル液晶+LEDナビ」、PX-675FとPX-605Fは「LEDナビ」、PIXUS MX893は「デュアルファンクションパネル」と、それぞれ特色がある。EP-905Fは液晶ディスプレイがタッチパネル、それ以外の部分がセンサー式ボタンの「LEDナビ」である。液晶ディスプレイ部分は、状況に応じて表示内容を変えられるため、ボタンそのものをタッチできる。また、スマートフォンと同じフリック操作で写真を選んだり、項目をスクロールできるようになっている。一方のボタン部分は表示内容こそ固定だが、ボタンはLEDライトで光っており、使用できないキーは消灯している。物理的なボタンではなくタッチセンサーなので、光っているキー以外は見えなくなり、非常に分かりやすい。この2つの組み合わせにより、直感的な操作が可能になっている。特にFAX機能を搭載している機種では、どうしてもダイヤル用のテンキーや短縮ボタンなどが必要になり、ボタン数が多くなりがちだが、EP-905Fではそれらを液晶ディスプレイ内に表示することで、ボタン数をFAX無し複合機のEP-905Aと同じ数のままFAX機能を付けることに成功している。液晶ディスプレイサイズも4機種中最も大きい3.5型で視認性は高い。さらにEP-905Fの液晶ディスプレイと操作パネルは本体前面に取り付けられ、液晶ディスプレイだけでなく操作パネル全体を持ち上げて角度調整が可能なのも特徴だ。最大90度まで起こすことができるので、垂直から水平まで見やすい角度で操作ができるよう工夫されている。操作パネルは、最高レベルの物だといえるだろう。PX-675FとPX-605Fの操作パネルは同じである。EP-905F同様の「LEDナビ」を採用しているため、使用できるボタンだけがLEDライトで光るため、分かりやすい。ただし液晶ディスプレイはタッチパネルではない点ではEP-905Fより劣る。そのため、テンキーやFAX関連のキーが必要となっており、ボタン数は増えてしまっている。とはいえLEDナビのおかげで、テンキーを使わない時は消灯しているので、比較的分かりやすいようになっている。操作パネルと液晶ディスプレイは本体前面に斜めに取り付けられている。斜めになっているためどの方向からでも使いやすいが、残念ながら角度調整は出来ない。ビジネスモデルという事で堅牢性を重視したという事だが、その分使い勝手はやや劣る。液晶ディスプレイも2.5型とやや小さめだが、視認性を大きく損ねるほどではないだろう。PIXUS MX893の操作パネルはタッチセンサー式ではなく物理的なボタンとなっているが、「デュアルファンクションパネル」の名の通り、一部のボタンがは使用する機能によって表示が切り替わる。スタートやストップ、メニューなどのボタンの他、液晶下部の3つのボタンは一般的なボタンだ。一方液晶の右側にある4×4個のボタンの内容が2種類に切り替えられるのが特徴だ。FAX利用時には、右側3列がダイヤル用のテンキーになり、左1列が上下カーソルと「OK」「戻る」になっている。一方コピーやフォトなどFAX以外を使用時には、テンキーのあった部分に上下左右カーソルとその中心に「OK」ボタンがあり、左1列は「+」「−」「戻る」ボタンになる。このように、テンキーが必要ない時はテンキーが消えるなど、わかりやすくなっている。割り当てられていないキーには何も表示されていないので、使用できるキーが分かりやすいが、エプソンの「LEDナビ」のように、各手順ごとに使用できないキーが消灯する様な、キー1つ1つの消灯・点灯切り替えは出来ず、あくまで2パターンの切り替えのみである。この操作パネルと液晶ディスプレイは、本体の上面から側面にかけて斜めに大きく面取りされた部分に埋め込まれている。残念ながら操作パネルも液晶ディスプレイも固定されていて角度調整はできない。斜めになっているため、どの角度からでもそれほど使いにくくはないだろうが、それでも高い位置に置くと、操作がしにくかったり液晶ディスプレイが見にくくなりそうだ。液晶ディスプレイのサイズは3.0型とやや大きめだ。以上から、いずれの機種も、テンキーが必要だができるだけ分かりやすくしようという工夫の跡が見える。その中でも最も優れているのはEP-905Fだろう。液晶ディスプレイがタッチパネル式なので直感的な操作が可能で、ボタン数も少なくてすむ。PX-675F/PX-605FとPIXUS MX893は近いレベルではあるが、各手順ごとにキー1つ1つの点灯・消灯が切り替えられるPX-675F/PX-605Fの方がやや使いやすそうである。 インタフェース4機種はUSB2.0接続に加えて、ネットワーク接続に対応しており共通だ。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人にはネットワーク接続によりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。無線LANはIEEE802.11nに対応しているため、無線LANで接続した場合も、遅さを感じさせなくなっている点も4機種共通の便利な点だ。一方で、無線LANの電波が届かない場合や、より転送速度を高めたい場合は有線LANにも対応しているため安心である。 本体サイズを見てみよう。EP-905Fは390×339×191mmとこれだけ高機能とは思えないコンパクトさである。他の機種より横幅が約5〜10cm、奥行きが約10cm、高さも約3〜12cmも低い。さらに高さに関してはADFの中央部分のふくらんだ部分の値であるため、実際にはもっと低く感じる。設置面積では群を抜いている。PX-605Fは449×417×243mm、PIXUS MX893は491×448×218mmである。高さに関してはPIXUS MX893が低いが、設置面積はPX-605Fの方がかなり小さい。設置面積に余裕がないならPX-605Fの方が置きやすいが、置く事が出来ればPIXUS MX893の方が圧迫感は少ないかも知れない。残るPX-675Fは前面給紙カセットが2段になっているため449×427×308mmと特に高さがかなりの物だ。セット可能枚数とトレードオフとはいえ、かなりの圧迫感であるのは確かだ。 予算を気にしないのであれば、EP-905Fがオススメである。写真印刷も最高画質で行え、しかも高速である。スキャン機能もダイレクト印刷機能も、ネットワーク印刷機能も、コピー機能も弱点が見つからない。家庭向け製品だがFAX機能も十分高機能だ。なにより、タッチパネル液晶とLEDナビの組み合わせで、しかも角度調整が可能という操作しやすさに加えて、圧倒的なコンパクトさはメリットだ。1台で色々と使おうと思っているならEP-905Fが一押しである。しかし予算的にEP-905Fが難しいという場合は、PX-605FかPIXUS MX893から選ぶこととなる。写真印刷をメインで行うならPIXUS MX893である。PIXUS MX893は染料インクで高画質な写真印刷が可能で印刷も早い。FAX時に両面スキャンが行えなかったり、ネットワーク印刷機能が劣ったり、設置面積が大きいが、それでも価格を考えれば十分に満足できるはずだ。一方文書印刷やコピー、FAX機能を主体で使うならPX-605Fである。顔料インクによる普通紙への印刷画質の高さに加え、普通紙印刷は高速だ。FAX時にも両面スキャンが行えるだけでなく、電源が供給されなくても受信したFAXの内容が消えなかったり、PCファクスの送信が可能だったりと、ビジネス用途にはむしろこちらの方が向いているとも言える。PX-605FとPIXUS MX893から選ぶ場合これらを基準に選べばよいだろう。最後にPX-675FはPX-605Fのセット可能枚数を倍増させた製品だが、家庭での使用でそこまで必要かは疑問だ。本体の高さもかなりのものなので、特殊な機種と言えるだろう。どうしても大量に用紙をセットしたい場合のみPX-675Fが候補となるはずだ。 (H.Intel) 【今回の関連メーカーホームページ】 エプソンhttp://www.epson.co.jp/ キャノンhttp://canon.jp/
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