小ネタ集
2012年末時点のプリンタ
〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜
(2012年11月26日公開/2013年2月16日追記)

プリンタ比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンタ比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。


1万円台のA4単機能機
 
 今となっては数が少なくなってしまったA4プリンタ単機能機である。そのうち上位の3機種、エプソンのEP-302とPX-205、キャノンのPIXUS iP7230を比較する。価格はそれぞれ14,800円、16,600円、16,800円で、新機種ではないPX-302が少し安いが、大きな違いはないと考えて良さそうだ。それぞれ特徴的な部分があり、比較することで用途にあった機種を選べるはずだ。

メーカ
エプソン
エプソン
キャノン
品番
EP-302
PX-205
PIXUS iP7230
製品画像
予想実売価格
14,800円
16,600円
16,800円
プリンタ部
インク
色数
6色
4色
5色
インク構成
ブラック
シアン
ライトシアン
マゼンタ
ライトマゼンダ
イエロー
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
顔料ブラック
染料ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成
各色独立
各色独立
各色独立
顔料/染料系
染料
(つよインク200)
顔料
(つよインク200X)
染料/顔料(黒)
(ChromaLife100+)
ノズル数
540ノズル
768ノズル
5120ノズル
全色:各90ノズル
カラー:各128ノズル
ブラック:384ノズル
C/M:各1536ノズル
Y/染料BK:各512ノズル
顔料BK:320ノズル
最小インクドロップサイズ
1.5pl(Advanced-MSDT)
2pl(MSDT)
1pl
最大解像度
5760×1440dpi
5760×1440dpi
9600×2400dpi
給紙関連
対応用紙サイズ
カード〜A4
L判〜A4
L判〜A4
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面
○(100枚)
○(1枚手差し)
前面
○(250枚)
○(125枚/A4/B5/A5他)
○(L/KG/2L/はがき)
その他
自動両面印刷
○(普通紙のみ)
特殊機能
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
○(オートフォトファイン!EX)
○(オートフォトファイン!EX)
○(自動写真補正II)
PictBridge対応
特定インク切れ時印刷
○(黒だけ印刷)
印刷速度
L判縁なし写真(メーカー公称)
22秒
56秒
18秒
A4普通紙カラー(ISO基準)
N/A
9.5ipm
10.0ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準)
N/A
15.0ipm
15.0ipm
ネットワーク
印刷
スマートフォン連携
対応端末
iPhone
iPod touch
iPad
Android 1.6以降
写真プリント
ドキュメントプリント
○(PDF・Androidは端末でスキャンし作成したPDFのみ)
Webページプリント
メールしてプリント
リモートプリント
液晶ディスプレイ
操作パネル
インターフェイス
USB他
USB2.0×1
USB2.0×1
USB2.0×1
無線LAN
IEEE802.11n/g/b
IEEE802.11n/g/b
有線LAN
100BASE-TX
外形寸法(横×奥×高)
450×289×187mm
449×380×165mm
451×368×128mm
重量
5.5kg
5.4kg
6.6kg

 3機種はそれぞれ基本となる複合機が存在している。インク構成やインク滴、ノズル数や印刷スピードを見ると、EP-302はEP-705Aの、PX-204はPX-605Fの、PIXUS iP7230はPIXUS MG5430のプリンタ部とほぼ同スペックである。いずれも複合機の中位モデル(PX-605FはFAX付き複合機だが)と同等であることを考えると、最高性能とはいえないが、十分高性能であると言える。
 3機種の中で最も画質が高いのはEP-302である。ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色に加えて、ライトシアンとライトマゼンダを搭載する6色構成である。最小インクドロップサイズも1.5plと極小であるため、全体を通して粒状感がほとんど無い高画質な印刷が可能である。特にライトインクを搭載するのは3機種中でEP-302のみであり、色の薄い部分でも粒状感が目立たないというメリットがある。また、この画質は複合機の最上位機種と同等であるため、画質面では最高レベルであると言える。インクは染料インクを採用しているため、写真用紙へ印刷した際に用紙の光沢感がそのまま出るため写真印刷に向いているといえる。一方で普通紙などへ印刷ではシャープさが弱くなる他、耐水性は弱いのは染料インクの宿命と言える。インクは「つよインク200」となっており、アルバム保存200年、耐光性50年、耐オゾン性15年と、耐保存性は高く、その点でも写真印刷に向いている。
 次に画質が高いのはPIXUS iP7230である。5色構成となるが、色はブラック、シアン、マゼンダ、イエローの4色となっており、ブラックインクのみ染料インクと顔料インクの2種類を搭載する。そのため写真印刷時は4色印刷となり、色の薄い部分で粒状感が若干気になる。といっても最小インクドロップサイズが1plと極小であるため、よく目をこらしてみないと粒状感は感じられず、写真全体がザラザラと見えるようなレベルではない。EP-302とほぼ同等と言っても良く、十分に写真印刷に耐えうる高画質である。またブラックだけだが顔料インクを搭載しているため、普通紙へのモノクロ印刷時にシャープな印刷結果が得られ耐水性も高いというメリットがある。ただしカラーインクは染料のみであるためカラー印刷時はこれらのメリットは得られない。インクは「ChromaLife 100+」であり、純正写真用紙のキャノン写真用紙・光沢 ゴールドを使用する事で、アルバム保存300年、耐光性40年、耐オゾン性10年を誇っている(キャノン写真用紙・光沢 プロ[プラチナグレード]ではそれぞれ200/50/10年)。こちらも耐保存性は非常に高く安心だ。
 最後にPX-205だが、こちらはブラック、シアン、マゼンダ、イエローの4色構成で、インク滴も2plと他の2機種と比べると劣ってしまうため、粒状感は若干あると言える。それでも2plというと十分小さいため、十分写真印刷に耐えられる画質であり、比べてよく見ると、色の薄い部分が若干ザラザラした印象を受ける程度である。それよりもPX-204の特徴は全色が顔料インクである事である。顔料インクのメリットとして、普通紙への印刷では染料インクに比べシャープな印刷が行える事がある。そのため普通紙へ印刷しても文字が滲んだように太くなることもなくくっきりしており、また白抜き文字などがつぶれることもなく、画像などもメリハリが出るため、普通紙への印刷画質はかなり高いと言える。普通紙のカラー印刷では最小インクドロップサイズで勝る他の2機種よりも綺麗に見える場合もあるだろう。さらに水に強いという特徴もあるため、濡れた手で触ったりマーカーを引いても滲まないという特徴がある。もちろん全色顔料インクなので、PIXUS iP7230のようなモノクロ印刷に限った話ではなく、カラー、モノクロのどちらでも同じ恩恵が得られる。そのため、普通紙への文書印刷だけでなく年賀状への印刷でも重宝するだろう。一方で写真用紙へ印刷すると光沢感が薄くなり、ポストカードのような半光沢になってしまう点は注意が必要だ。PX-205は普通紙印刷に特化していると言える。インクは「つよインク200X」でありアルバム保存200年、耐光性45年、耐オゾン性30年である。光沢感が薄くなることさえ気にならなければ、写真を印刷した際の色あせなどの問題はクリアしている。
 3機種とも写真印刷時に写真を自動補正する機能を備えている。EP-302とPX-205が備える「オートフォトファイン!EX」は顔を自動判別し、シーンに合った補正をするもので、逆光写真や色かぶりも自然に補正してくれる。一方PIXUS iP7230の備える「自動写真補正II」も顔を自動検出し、顔とそれ以外の部分の露光状態を別々に解析して、それぞれに合った明るさに補正してくれる。3機種とも高精度で自動補正が行われるのは安心である。
 対応用紙は、EP-302やカードサイズ〜A4、PX-205とPIXUS iP7230はL判〜A4となっている。EP-302はL判より小さな紙にも対応しているが、純正のカードサイズの用紙には対応するものの、名刺サイズの用紙には対応しない点は注意が必要だ。給紙はEP-302は背面トレイのみとなっており非常にシンプルだ。A4普通紙なら100枚まで一度にセットできる。背面給紙のみであるため、用紙をセットすると見えてしまうが、使用しないときは給紙トレイを閉じることでふたができるため、ホコリの面からも安心である。また背面給紙で前面排紙というシンプルな構造なので、厚紙やラベル用紙などでも安心である。逆にPIXUS iP7230は前面給紙のみとなる。2段のカセット式となっているため、2種類の用紙を同時にセット可能だ。下段はA4、A5、B5、レター、リーガルサイズ対応、上段はL判、KG、2L判、ハガキサイズ対応となっており、使用できるサイズが完全に分けられている。下段はA4普通紙なら125枚、上段はハガキなら40枚までセット可能であるが、下段にハガキや写真用紙をセットして、大量印刷に備えると行った事はできない。また、前面給紙・前面排紙と言うことで気になるのが、厚紙やラベル用紙などである。メーカーとしては問題ない事になっているが、前面から給紙して前面から排紙するため、内部で180度曲げられてしまうのは少し心配だ。前面給紙カセットは上部にスペースが必要なく、外見上もスマートで、前面から用紙交換が可能というメリットがある一方、用紙の幅だけでなく長さ方向もガイドの調整が必要なだけ面倒だともいえる。PX-205も前面給紙カセットが基本だが、1段となっており一度にセットできる用紙は1種類だ。ただしA4普通紙なら一度に250枚セットできる大型のもので、大量の印刷にも対応できる。また前面給紙という事で気になる厚紙やラベル用紙などへの対応として、1枚ずつではあるが背面からの手差し給紙を可能としているのが珍しい(前面からも対応している)。従来の背面給紙トレイに近い位置だが、用紙を複数枚セットしておけるような大型のものではなく、フタと兼用の小さなトレイである。その分、コンパクトな本体でも背面給紙を可能としているわけである。前述のような曲げられたくない用紙を使用する際に便利なほか、前面給紙カセットにセットしているのとは違う用紙を1枚だけ使いたくなったときに、入れ替える手間が省ける。ちなみにPX-205の注意点として、排紙トレイを閉じられないことが挙げられる。ビジネスモデルという事で、堅牢性を重視したためだが、家庭内で使う分にはホコリの進入や見栄えを考えれば、未使用時には排紙トレイを閉じられる方が良いと言える。
 自動両面印刷はPX-205とPIXUS iP7230の2機種が対応している。ただしPX-205は普通紙のみとなるため、ハガキの両面印刷を行いたいならPIXUS iP7230となる。同時両面ではないため、片面を印刷して乾燥時間があってから再度給紙され裏面が印刷されるため、時間はかかるが、両面原稿の印刷時や年賀状印刷などには便利だろう。一方、CD/DVDレーベル印刷にはEP-302とPIXUS iP7230が対応しており、オリジナルデザインのディスクが作成可能だ。
 印刷速度を見てみよう。L判写真の縁なし印刷速度では、EP-302が22秒、PIXUS iP7230が18秒と、この2機種はかなり高速で、大量の印刷でもストレス無く行えるだろう。EP-302は最小インクドロップサイズが1.5plと小さいものの、5つのサイズのインクを打ち分けるAdvanced-MSDTに対応しており、必要に応じて大きなドットを打つことで、画質度速度を両立している。PIXUS iP7230も最小インクドロップサイズは小さいが、ノズル数を多くすることで高速化している。一方PX-205は56秒と、他の2機種と比べるとかなり遅い事が判る。ノズル数はEP-302より多く、最小インクドロップサイズもやや大きいが、Advanced-MSDTより劣る、3つのサイズのインクを打ち分けるMSDTに対応している事が関係していると思われる。56秒でも、十分使えるレベルではあるが、他の機種と比べると差が大きい。写真印刷を大量にするなら他機種が良いだろう(もっとも顔料インクのPX-205で写真印刷を主体に使うことは無いと思われるが)。一方、A4普通紙への文書印刷速度はL判写真とは傾向が異なる。こちらは単位をipmで表す。ipmはimage per minute、つまり1分あたりの印刷枚数であるため、数値の大きい方が高速になる。カラー文書の印刷はPX-205は9.5ipm、PIXUS iP4930は10.0ipmとなり、L判写真印刷時とは異なりほぼ同じ速度になっている。さらにモノクロ文書では15ipmと完全に同じになっている。両機種とも1分で15枚ということは、100枚の原稿でも7分弱で終了する事になり、かなり高速と言える。ちなみに、EP-302はA4普通紙への印刷速度が公表されていないため、比較できない。
 その他、おもしろい機能としては、PX-205はカラーインクが切れた際にもモノクロ印刷は継続できる機能を備えている。通常は1色でもインクが無くなるとプリントが出来なくなるため、便利な機能である。ただし5日間限定であり、常にカラーインクを搭載せずに使用できるわけではない。
 PIXUS iP7230はスマートフォンとの連携機能を搭載している。iPhoneやiPod touch、iPadと、Android端末などに対応しており、専用のアプリを無料でダウンロードすることで、それらから直接印刷が行える。写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。さらにPDFファイルの印刷にも対応している(Android端末はAndroid用アプリ上で作成したPDFファイルのみ対応)。
 インタフェースはEP-302はUSB2.0のみ対応と非常にシンプルだ。それに対して、PX-205とPIXUS iP7230はUSB2.0接続に加えてネットワーク接続にも対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人にはネットワーク接続によりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。無線LANはIEEE802.11nに対応しているため、無線LANで接続した場合も、遅さを感じさせなくなっている点も便利である。ただしPX-205は有線LAN、無線LANの両方に対応しているが、PIXUS iP7230は無線LANのみの対応である。無線LANの電波が届きにくい位置に設置する場合は、有線LAN接続が可能なPX-205の方が便利だ。
 本体サイズはEP-302が450×289×187mm、PX-205は449×380×165mm、PIXUS iP7230は451×368×128mmとなる。3機種とも横幅は面白いほど一緒である。一方前面給紙カセットと自動両面印刷に対応するPX-205とPIXUS iP7230は奥行きが大きくなっている。EP-302より8〜9cm大きいため、設置面積ではEP-302が有利だ。一方PIXUS iP7230は高さが128mmと圧倒的に低い。設置面積はEP-302より必要だが、置ければ圧迫感は少ないとも言える。ただし、このサイズを見ると、「単機能機だからコンパクト」とは言えない状況になりつつある。特にコンパクトなエプソンの複合機EP-805Aは390×341×141mm、複合機の下位機種のPX-435Aは390×300×145mm、キャノンの複合機下位機種PIXUS MG4230は449×304×152mmである。高さに関してはさすがにPIXUS iP7230は勝っているが、他の2機種は複合機より高さがある。幅はエプソンの複合機の方が小さいし、奥行きもPX-205とPIXUS iP7230の方が大きい。複合機では近年急激に小型化が進んだため、設置スペースの面でもA4単機能プリンタが有利とは言えない状況になりつつある事から、大きさだけで単機能機を選ぶのは時代遅れと言える。

 この3機種から選ぶとなると、まず写真印刷が主な目的なら、EP-302がオススメである。6色インクで印刷も高速であり、染料インクであるため写真印刷に向いている。レーベル印刷にも対応する。逆に、写真は印刷せず、普通紙や年賀状への印刷が主な目的なら、顔料インクのPX-205がおすすめである。顔料インクであるため普通紙への印刷画質が高く耐水性も高い。さらに普通紙への印刷は、特にモノクロ印刷は高速である。一方、写真も普通紙も両方の画質を望むならPIXUS iP7230がオススメである。インクは4色となるが十分高画質で写真印刷ができ。印刷も速く、自動両面印刷やCD/DVDレーベル印刷にも対応する。モノクロのみだが顔料インクによるメリハリがあり高耐水の印刷が行える。全色顔料という事でPX-205は分かりやすいが、PIXUS iP7230でも写真印刷は十分綺麗だし、EP-302の普通紙印刷も決して悪くはないため、この2機種では迷うところだろう。やや写真画質を重視するならEP-302、普通紙印刷を重視するならPIXUS iP7230というような選び方でも良い。またスマートフォンからのプリントや無線LAN接続が気に入ったからPIXUS iP7230という選び方もあるだろう。ただし、この価格と性能なら複合機を選ぶのも手である。例えばEP-302と同じプリンタ性能の複合機EP-705Aは17,700円、手差し給紙はないがPX-205と同じプリンタ性能の複合機PX-504Aは16,800円である。PIXUS iP7230と同じプリンタ性能の複合機PIXUS MG5430は26,800円と価格差があるが、少し劣るPIXUS MG4230なら15.800円である。コピーもスキャンもダイレクト印刷もできるにも関わらず、価格差はほぼ無いか数千円となっている。この価格帯のA4単機能プリンタを検討している人は、一度複合機もセットで検討してみてはいかがだろうか。



(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/


EP-302
PX-205
PIXUS iP7230