小ネタ集
2013年末時点のプリンタ
〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜
(2013年12月11日公開/12月21日追記)

プリンタ比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンタ比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。


1万円強の複合機
 
 1万円強の複合機は、エプソン、キャノン共に最下位モデルとなる。エプソンのPX-046AとキャノンのPIXUS MG3530が該当し、価格はそれぞれ10,970円と10,980円で差はないと言える。この辺りになると、上位機種からどういった機能が削られているかというより、どういった機能は残されているかを見ている形となるだろう

メーカ
エプソン
キャノン
品番
PX-046A
PIXUS MG3530
製品画像

予想実売価格
10,970円
10,980円
プリンタ部
インク
色数
4色
4色
インク構成
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
顔料ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成
各色独立
カラー一体+ブラック
顔料/染料系
染料
(つよインク200X)
染料/顔料(黒)
(ChromaLife100)
ノズル数
254ノズル
1792ノズル
カラー:各42ノズル
ブラック:128ノズル
カラー:各384ノズル
顔料ブラック:640ノズル
最小インクドロップサイズ
3pl(MSDT)
2pl
最大解像度
5760×1440dpi
4800×1200dpi
給紙・排紙関連
対応用紙サイズ
L判〜A4
L判〜A4
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面
○(50枚)
前面
○(100枚)
その他
排紙トレイ自動開閉
自動両面印刷
○(普通紙のみ)
特殊機能
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
○(オートフォトファイン!EX)
○(自動写真補正II)
特定インク切れ時印刷
○(黒だけでモード・5日間のみ)
○(残った色で一時的に印刷可)
印刷速度
L判縁なし写真(メーカー公称)
105秒
37秒
A4普通紙カラー(ISO基準)
N/A
5.7ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準)
N/A
9.9ipm
スキャナ部
読み取り解像度
1200dpi
1200dpi
センサータイプ
CIS
CIS
ADF
ネガフィルム読み取り機能
スキャンデーターのメモリカード保存
ダイレクト
印刷部
カードスロット
対応メモリカード
PCからドライブとして利用
外付けHDD/外付けDVD/USBメモリへ保存
−/−/−
−/−/−
外付けHDD/外付けDVD/USBメモリから印刷
−/−/−
−/−/−
手書き合成シート
PictBridge対応
赤外線通信
Bluetooth通信
各種デザイン用紙印刷
ネットワーク
印刷
スマートフォン連携
対応端末
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 5.0以降)
Android 2.2以降
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 5.1以降)
Android 2.3.3以降
写真プリント
ドキュメントプリント
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
スキャン
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
クラウド連携
スマートフォン経由/本体
○/−
○/−
オンラインストレージからの印刷
SNSからの印刷
○(コメント付き可)
○(コメント付き可)
写真共有サイトからの印刷
メールしてプリント
リモートプリント
スキャンしてリモートプリント
コピー部
倍率指定/自動変倍/オートフィット
−/−/−
−/○/−
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー
2アップ/4アップ
−/−
−/−
バラエティコピー
FAX部
受信ファックス最大保存ページ数
データ保持(電源オフ/停電)
−/−
−/−
ワンタッチ/短縮ダイヤル
−/−
−/−
グループダイヤル/順次同報送信
−/−
−/−
自動リダイヤル
PCファクス
液晶ディスプレイ
操作パネル
ボタン式
ボタン式
インターフェイス
USB他
USB2.0×1
USB2.0×1
無線LAN
IEEE802.11n/g/b
IEEE802.11n/g/b
有線LAN
外形寸法(横×奥×高)
390×300×145mm
449×304×152mm
重量
3.9kg
5.4kg
 

 両機種をまずプリンタ部から見てみよう。PX-046Aはブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色構成となる。最小インクドロップサイズも3plと最近の機種としては大きめであるため、上位機種と比べると画質は劣り、粒状感を感じるだろう。ただし、写真印刷に耐えないほどではないため、若干ザラザラした感じを受けるのに目をつぶれば写真印刷も可能だ。また、4色全てが顔料インクであるため、写真用紙での発色はあまり良くなく、また表面の光沢も薄れポストカードのような鈍い光り方になってしまう。画質的には写真印刷ができないわけではないが、インク的には向いていない。一方で普通紙への印刷では顔料インクの特色であるコントラストが高く、滲みのないメリハリのある印刷が行える。文書印刷やコピーが非常に高画質に印刷ができる。また、耐水性も高いため、濡れた手で触ったり、マーカーを引いても滲まないのも便利だ。一方、PIXUS MG3530もブラック、シアン、マゼンダ、イエローの4色構成で、一見するとPX-046Aや上位機種PIXUS MG5530と同じ構成に見える。しかし、PIXUS MG3530はカラー3色が染料インク、ブラックは顔料インクとなる。そのため、写真印刷時はブラックインクが使えず、3色を混ぜて黒に近い色を表現する事となる。そのために、真っ黒の部分が非常に濃い茶色のようになり、コントラストが若干弱くなってしまう問題がある。とはいえブラックインクが使える機種の印刷結果と比べると分かるが、PIXUS MG3530の印刷結果単体で見ると大して分からないというレベルである。ここは、PX-046Aよりは劣る点だ。一方最小インクドロップサイズは2plとPX-046Aより小さいため、粒状感はおさえられる。画質の評価ではPIXUS MG3530はPX-046Aと比べて最小インクドロップサイズは小さいがブラックインクが使えないため、総合的には同レベルと言えるだろう。ただし、PIXUS MG3530は染料インクで写真印刷が行えるため、写真用紙本来の光沢感が失われないという点で、写真印刷に向いていると言えるだろう。一方顔料ブラックのおかげで、コピーや文書印刷のモノクロ部分はコントラストが高く滲まずメリハリのある印刷が行える。PX-046Aのようにカラー・モノクロ問わずと言うわけにはいかないが、文書印刷やコピー時に黒文字というのは多いので、意外に効果は高い。写真は苦手だが文書印刷に特化したPX-046Aと、写真も文書もそれなりの高画質で印刷できるPIXUS MG3530というイメージだ。ちなみにPX-046Aは4色ともインクタンクが独立しており無くなった色だけ交換ができるが、PIXUS MG3530は黒とカラーの2タンク構成で、カラー3色は一体であるため、1色でもなくなると全体を交換する必要がある。コスト面では不利である。
 PX-046Aは背面給紙、PIXUS MG3530は前面給紙と大きく異なる。PX-046Aの背面給紙は用紙幅だけを合わせてセットできるため便利で、また背面給紙・前面排紙なので、厚紙やラベル用紙なども安心だと言える。一方で背面にスペースが必要なほか、設置場所によってやセットが面倒で、また用紙をセットしたままだとホコリが積もってしまう。PIXUS MG3530の前面給紙も、前面パネルを開いた所に用紙をセットする形で、上段が排紙トレイ、下段が給紙トレイとなる。前面給紙カセットではないため、用紙をセットしたまま前面パネルを閉じることができず、開けたままだとホコリが積もってしまう。設置場所によっては前面給紙の方が用紙がセットしやすいが、前面給紙・前面排紙なので用紙が内部で曲がってしまうのが気になるという人もいるだろう。使いやすさは一長一短で、どちらがおすすめとは言いにくい。ただし、PX-046Aは下位機種と言うことで、セットできる用紙の枚数が上位機種より少ない。A4普通紙で50枚、ハガキで20枚となる。PIXUS MG3530はA4普通紙100枚、ハガキが40枚までセットできるので、一度に大量印刷をする場合はPIXUS MG3530の方が便利だ。そのほか、PIXUS MG3530は普通紙のみだが自動両面印刷機能を搭載しているため、両面原稿の印刷や用紙の節約が手軽に行える。
 両機種とも写真の自動補正機能を備えている。PX-046Aは「オートフォトファイン!EX」、PIXUS MG3530は「自動写真補正II」と名称は違うものの、逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われる。使用するインクはPX-046Aは「つよインク200X」である。昨年より採用された新インクであるため、アルバム保存300年、耐光性45年、耐オゾン性30年となる。一方、PIXUS MG3530は「ChromaLife100」と上位機種より劣るが、アルバム保存100年を実現しており、差はあるものの両機種とも十分なレベルの耐保存性を持ったインクである。
 印刷速度はL判写真用紙縁なし印刷でPX-046Aが105秒、PIXUS MG3530が37秒となっており、PX-046Aの方が3倍近く時間がかかっている。もともと写真印刷に向いているプリンタではないとはいえ、かなり遅い。これはノズル数が上位機種と比べて少なく、特にカラーインクに関しては極端に少ないためである。文書印刷はもう少しマシだが、それでも遅めにはなる。PIXUS MG3530は上位機種よりノズル数は少ないが、それでも比較的多めであるため、写真印刷速度も十分実用的だ。A4文書の印刷速後もカラーが5.7ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、モノクロが9.9ipmとなっており、最上位機種の10ipmと15ipmと比べると遅いが、この価格帯としては十分高速と言える。
 続いて、スキャナ部を見てみよう。解像度は両機種とも1200dpiとなる。反射原稿(紙などの原稿)にしか対応しないため、1200dpiでも十分すぎる解像度と言えるため、実際に使う上で十分な性能を有している。いずれもCIS方式で、厚い本の綴じ目近くなど、ガラス面から浮いてしまう原稿は苦手だ。ADFやスキャンした原稿をパソコンを使わずにメモリカードに保存する機能などの機能は両機種とも省略されている。また両機種ともカードスロットを搭載していないため、メモリカードからのダイレクト印刷機能も搭載していない。
 一方でスマートフォンとの連携機能は両機種とも搭載している。iPhoneやiPod touch、iPadと、Android端末に対応しており、専用のアプリを無料でダウンロードすることで行える。メインで使用すると思われる写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。さらにドキュメント印刷にも対応している。PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もできる便利だ。また、両機種ともスマートフォン上からスキャンを実行し、データをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。出かける前に紙の情報をさっとスマートフォンに転送するといった使い方ができるため便利だろう。さらに、PX-046AはスマートフォンからEvernoteやDropboxなどのクラウドにアクセスし、オンラインストレージから画像や文書を印刷する事もできる。SNSなどには対応していないが、PIXUS MG3530はクラウドとの連携機能は搭載していないことを考えると、便利な場合もあるだろう。
 コピー機能と操作パネルを見てみよう。この2機種が他の機種と大きく違うのは液晶ディスプレイを搭載していない事である。そのため、コピーの各種設定をすることができず、非常に簡易的なものしか搭載してい。PX-046Aの操作パネルは、本体前面に取り付けられている。上位機種のように角度調整はできず、軽く上を向いているが、ほぼ垂直に取り付けられている。ボタンは「電源ボタン」「Wi-Fiボタン」「NWステータスシートボタン」「モノクロコピーボタン」「カラーコピーボタン」「ストップボタン」のみとなる。それに「ネットワーク」「用紙」「インク」のそれぞれの状態を示すLEDランプとなる。コピーはA4普通紙への等倍コピーのみとなり、他の用紙や拡大縮小、縁なし印刷などは一切行えない。原稿をセットしたら、「モノクロコピー」または「カラーコピー」ボタンを押す事で、コピーが行われるという非常にシンプルなものだ。これらのボタンを長く押すと、インク量を抑えた「試し印刷」になる。また、「モノクロコピー」または「カラーコピー」ボタンを押したまま「ストップボタン」を押すと、20枚コピーとなる。それ以外に組み合わせとして、「ストップボタン」を押したまま電源を入れると、ノズルチェックパターンが印刷される。一方、PIXUS MG3530の操作パネルは、本体正面のスキャナ部の左側に縦に並んでいる。ボタンは「電源ボタン」「Wi-Fiボタン」「用紙選択ボタン」「カラーボタン」「モノクロボタン」「ストップボタン」のみで、それに「電源」「Wi-Fi」「カラーインク」「モノクロインク」「用紙」の各状態を示すLEDランプと「エラーランプ」となる。「用紙選択ボタン」と「用紙ランプ」があるが、選択肢は2種類でA4普通紙かL判写真用紙となる。「用紙選択ボタン」を押すと、各用紙名の横のランプが点灯するだけのシンプルなものだ。原稿をセットし、用紙を選択したら、あとは「カラーボタン」または「モノクロボタン」を押せばコピーが行われる。2部以上のコピーを行い場合は、複数回コピーボタンを押せば、その回数だけコピーが行われる。「カラーボタン」または「モノクロボタン」を2秒以上押すと、速度優先の「下書きモード」でコピーされるようになる。もう一度2秒以上押すと元に戻る。A4普通紙の場合は縁ありの等倍コピーとなる。一方L判写真用紙の場合は、原稿を自動的に拡大・縮小し、縁なし印刷が行われる。2種類の用紙が使用できる点ではPIXUS MG3530の方が便利だが、大きな差ではないだろう。シンプルなコピー機能しか持っていないため、より高機能なコピー機能が必要なら、上位機種を検討することになる。
 インタフェースは両機種ともUSB2.0に加えて、無線LANに対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人には無線LANによりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。上位機種とは異なり、無線LANはWi-Fiダイレクト(キャノンはアクセスポイントモード)に対応していないため、スマートフォン・タブレットと直接接続することはできず、必ず無線LANルータが必要となる。その無線LANの設定も、液晶ディスプレイが無いことから手動で設定する場合は不便になっている。とは言え、両機種とも各種ワンタッチ接続に対応しており、液晶ディスプレイが無くても対応の無線LANルータであれば初期設定は簡単に設定できるよう工夫されている。PX-046Aの場合、AOSSとWPSに対応している。「WiFiボタン」を「WiFiランプ」の左右が交互に点滅するまで押し、その後、無線LANルータの対応ボタンを押すだけである。また、「NWステータスシートボタン」を押す事で、ネットワーク設定情報が印刷される。一方の、PIXUS MG3530の場合、AOSS、WPS、らくらく無線スタートに対応している。「Wi-Fiボタン」を「エラーランプ」が1回点滅するまで押し、あとは無線LANルータの対応ボタンを押すだけである。「ストップボタン」をエラーランプが15回点滅するまで押し続けると、ネットワーク設定情報が印刷される。ちなみに両機種とも、無線LANルータがワンタッチ設定に対応していない場合は、一度パソコンとUSB接続した上で、ネットワーク接続の設定を行う事もできる。ワンタッチ設定に対応していれば無線LANの接続設定は難しくはないが、エラーは発生したときの確認など、やはり液晶ディスプレイ搭載機種と比べると難しくなるのは仕方のないことだろう。
 本体サイズを見てみよう。PX-046Aが390×300×145mm、PIXUS MG3530が449×304×152mmとなり、両機種とも上位機種よりコンパクトだが、特にPX-046Aの横幅が小さい。一方で同等に見える奥行きは、使用時にはPIXUS MG3530の方が小さい。PX-046Aは背面給紙であるため、背面の給紙トレイを取り出すと、トレイが後方に倒れるため、その分だけ奥行きが必要だ。もちろん排紙トレイも引き出す必要がある。一方PIXUS MG3530は排紙トレイの下に用紙をセットするため、給紙トレイの分のスペースが不要である。その点では横幅か奥行きかといった事になる。

 どちらも最下位機種だけあり最低限の機能をまとめた印象で、液晶ディスプレイが無いなど操作性にも影響が出ている。一方で画質面では上位機種よりは劣るものの、使えないほど悪いわけではなく、価格を考えれば十分に高画質だ。PX-046AとPIXUS MG3530から選ぶ場合、やはりインクの違いが決めてとなるだろう。写真を印刷する可能性があるなら染料インクのPIXUS MG3530がおすすめだ。PX-046Aは印刷速度の面で見ても、写真印刷向きとは言い難い。また顔料インクは、一部使えない用紙があるなどクセもあるため、一般的に様々な用途で使えるのはPIXUS MG3530だろう。一方文書印刷やコピーにしか使わないと分かっているならPX-046Aがおすすめだ。顔料インクの普通紙への高い印刷画質や耐水性は大きなメリットとなる。今後も含めて用途を考えれば、どちらの機種が良いか決まるはずだ。
  

(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/


PX-046A
PIXUS MG3530BK
PIXUS MG3530WH