2013年末時点のプリンタ 〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜 (2013年12月11日公開/2014年1月25日追記)
FAX機能を搭載した複合機の中ではA3対応の機種を除く7機種の中で、上位機種になる4機種を比較する。エプソンのEP-906F、PX-675F、PX-605Fと、キャノンのPIXUS MX923がこの価格帯の製品となる。とは言え、EP-906Aは45,980円、PX-675Fは39,980円、PX-605Fが29,980円、PIXUS MX923が29,980円と、PX-675FとPIXUS MX923が同価格で直接のライバルとなる。この2機種を比較した上で、他の2機種はそれ以上の金額を出す価値があるほど差があるのか検討してみよう。 |
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シアン マゼンタ イエロー ライトシアン ライトマゼンタ |
シアン マゼンタ イエロー |
シアン マゼンタ イエロー |
染料ブラック シアン マゼンタ イエロー |
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(つよインク200) |
(つよインク200X) |
(つよインク200X) |
(ChromaLife100+) |
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ブラック:384ノズル |
ブラック:384ノズル |
Y/染料BK:各512ノズル 顔料BK:1024ノズル |
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(A4普通紙セット可能枚数) |
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○(2L・ハイビジョン以下) |
○(250枚/B5以上) |
○(L/KG/2L/はがき) |
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印刷部 |
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フォーム印刷(罫線・マス目・便箋・スケジュール帳・五線譜・メッセージカード・折り紙封筒) |
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印刷 |
iPod touch iPad (iOS 5.0以降) Android 2.2以降 |
iPod touch iPad (iOS 5.0以降) Android 2.2以降 |
iPod touch iPad (iOS 5.0以降) Android 2.2以降 |
iPod touch iPad (iOS 5.1以降) Android 2.3.3以降 |
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BOOKコピー ミラーコピー 領域判定コピー |
領域判定コピー |
領域判定コピー |
枠消しコピー |
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(Wi-Fiダイレクト対応) |
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プリンタ部から見てみよう。EP-906Fは6色インク構成で最小インクドロップサイズ1.5plとなっており、さすが複合機で最上位の900番台を名乗るだけはある。4機種の中では最も高画質で、写真印刷時も粒状感を感じさせない印刷が可能だ。また染料インクであるため、写真用紙本来の光沢感が失われず写真らしい印刷が行える。一方で普通紙への印刷は、インクがやや広がるため、鮮明さが失われる他、色のコントラストも弱くなる弱点がある。PX-675FとPX-605Fは同じプリント機能を持っているが、EP-906Fとは全く逆の構成で、全色顔料インクを採用する機種だ。4色インク構成で、最小インクドロップサイズも2plとEP-906Fより劣る。最小インクドロップサイズは比較的小さいので十分写真画質だが、ライトインクがないため細かく見るとEP-906Fより劣る。それよりも、全色顔料インクである事が写真印刷では問題となる。顔料インクで写真用紙に印刷すると、発色はあまり良くなく、また表面の光沢も薄れポストカードのような鈍い光り方になってしまう。画質的には写真印刷ができないわけではないが、インク的には向いていないといえる。一方で普通紙への印刷では滲みがなくコントラストの高いメリハリのある印刷が行るため、小さな文字や白抜き文字なども潰れずに印刷できる。また耐水性も高い。そのため、文書印刷やコピーだけでなく、後述のFAX機能利用時にも受信したFAXを高画質に印刷できる。EP-906Fと比べてインク数も最小インクドロップサイズでも劣るが、普通紙への印刷ではPX-675FとPX-605Fの方が上である。最後にPIXUS MX923だが、この中間のような製品だ。インクは5色構成で、4色が染料インクで加えて顔料のブラックインクを搭載する。最小インクドロップサイズは1plとEP-906Fより小さいため、ライトインクを持たない4色での印刷ながら、写真印刷の画質はEP-906Fに迫るものがある。色の薄いところではよく見ると粒状感があるが、逆に濃い色ではドットが小さいため綺麗に見える。そして染料インクであるため写真印刷でも発色が綺麗で、光沢感も失われない。一方、普通紙へ印刷する場合は、顔料ブラックインクが力を発揮する。普通紙へ印刷しても滲まず、コントラストの高い印刷が行え、耐水性も高い。PX-675FやPX-605Fとは異なりブラックインクだけだが、文書印刷やコピー時に黒文字というのは多く、またFAXはモノクロであることがほとんどなので、意外に効果は高い。写真印刷と文章印刷のどちらかに特化した機種ほどではないが、両方を高いレベルで両立していると言える。 印刷速度を見てみよう。EP-906Fは最小インクドロップサイズは小さいが、5つのインクサイズのインクを打ち分ける「Advanced-MSDT」機能も搭載しており、必要に応じて大きなインクサイズを打ち分ける事で高速化と高画質化を両立しており、ノズル数もエプソンの機種の中では多い方なのでL判写真縁なし印刷で14秒と非常に高速だ。一方PX-675FとPX-605Fはカラーのノズル数がやや少なく、またAdvanced-MSDTより劣る3つのサイズのインクを打ち分けるMSDT対応という事もあり、L判写真縁なし印刷で56秒とかなりの差だ。最後にPIXUS MX923は最小インクドロップサイズはEP-906Fより小さいがノズル数が多いため、L判写真縁なし印刷速度は18秒とEP-906Fに迫る速度だ。速度的には染料インクで写真印刷に向いたEP-906FとPIXUS MX923が速く、逆に顔料インクのPX-675FとPX-605Fは速度的にも写真印刷に向かない事になる。一方、普通紙への印刷速度は写真印刷時とは異なる結果となる。EP-906Fでは公表されていないが、PIXUS MX923はカラーが10ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、モノクロが15ipmと非常に高速である。一方PX-675AとPX-605Aもカラーが9.5ipm、モノクロが15ipmとPIXUS MX923とほぼ同等の速度を示しており、非常に高速だ。また、ブラックのノズル数がカラーの3倍あるため特にモノクロ印刷が高速だ。普通紙への文書印刷やコピー、受信したFAXの印刷では3機種とも十分な速度を備えている。また、PX-675FとPX-605Fが文書印刷に特化した機種であることがこの点からも見て取れる。 ちなみに、使用するインクはEP-906Fは「つよインク200」である。昨年より採用された新インクであるため、アルバム保存300年、耐光性50年、耐オゾン性10年となる。PX-675FとPX-605Fは「つよインク200X」を採用するが、旧タイプの「つよインク200X」でアルバム保存200年、耐光性45年、耐オゾン性30年となる。一方、PIXUS MX923は「ChromaLife100+」であり「キヤノン写真用紙・光沢 ゴールド」を使用することにより、アルバム保存300年、耐光性40年、耐ガス性10年を実現している(キャノン写真用紙・光沢 プロ[プラチナグレード]ではそれぞれ200年、50年、10年)。4機種ともある程度の差はあるが、十分なレベルの耐保存性を持ったインクである。PX-675FとPX-605Fも顔料インクであり光沢感が薄くなることを除けば、耐保存性は写真印刷に問題ないことが分かる。また、4機種とも各色独立インクとなっており、なくなった色だけ交換できる。 給紙に関しては、4機種に特徴がある。EP-906Fは前面給紙カセットとなる。2段式カセットとなっており、上段にL判やハガキなどの小さな用紙を、下段にはA4やB5といった大きな用紙をセットするようになっている。家庭向けの機種にFAXエプソンの機能を付けたので下段にA4普通紙が100枚、上段にハガキなら20枚までとそれほど多くはない。前面給紙・前面排紙と言うことで気になるのが、厚紙やラベル用紙などである。メーカーとしては問題ない事になっているが、前面から給紙して前面から排紙するため、内部で大きく曲げられてしまうのは少し心配だ。また封筒など特殊なサイズの用紙への印刷も不安である。そこで、EP-906Fでは1枚ずつではあるが背面からの手差し給紙を可能としているのが大きな特徴だ。従来の背面給紙に近い位置だが、用紙をセットしておけるような大型のものではなく、小さな背面給紙カバーと、用紙を支える小さな「用紙サポート」を引き出せるだけだ。複数枚セットしても一度に給紙されてしまうため、本当に1枚ずつとなる。その分、コンパクトな本体でも背面給紙を可能としているわけである。さらに、通常の給紙カセットでは0.3mm厚の用紙までの対応だが、背面手差し給紙では、倍の0.6mmの用紙に印刷ができる。今まで印刷できなかった厚紙にも印刷できる点も便利だろう。PX-605Fも前面給紙カセットとなるが、1段式でセットできる用紙は1種類だ。代わりにビジネス用と言うこともあって、A4用紙なら250枚、ハガキなら50枚までセット可能と枚数はかなり多い。大量の印刷やコピー、またFAXを頻繁に受信する場合でも安心の枚数だ。またEP-906F同様背面からの手差し給紙にも対応する。1枚ずつだが、別の用紙を一時的に使いたい場合などに便利だ。ただし、こちらは最大0.3mm厚までの対応なので、前面給紙カセットと比べて厚い紙に印刷できるわけではない。そしてPX-675FはPX-605Fの前面給紙カセットを2段にしたような機種だ。EP-906Fの2段式とは異なり、ほぼ同じものを2段なので、両方にA4用紙なら250枚ずつ、合計500枚セット可能という圧倒的枚数だ。トレイ2(下段)にはA4やB5用紙のみ対応で、それより小さな用紙はトレイ1(上段)のみ対応という制限があるだけだ。最後にPIXUS MX923だが、こちらも前面給紙カセットで2段式となるためEP-906Fに近いタイプだ。上段にL判やハガキなどの小さな用紙を、下段にはA4やB5といった大きな用紙をセットするようになっている。ただしこちらは多少ビジネス用途も意識したのか、下段のA4普通紙セット可能枚数が250枚と多くなっているのが便利だ。上段はFAX機能なし複合機と同じながら、ハガキで40枚までとEP-906Fより多くなっている。一方背面手差し給紙には対応しない。 ちなみに前面の排紙トレイは、EP-906Fが自動オープン・クローズに対応、PIXUS MX923が自動オープンに対応している。EP-906Fは中から電動により排紙トレイが出てくる方式で、PIXUS MX923は前面パネルと兼用の排紙トレイのロックが外れ、前に倒れてくる方式である。そのほか、自動両面印刷機能には4機種とも対応しているため、両面プリントや両面コピー、FAXを両面プリントして用紙を節約と言うことも可能だ。PX-675FとPX-605Fは普通紙のも対応だが、EP-906FとPIXUS MX923はハガキにも対応しているため、ハガキの通信面と宛名面を連続で印刷できる。CD/DVD/BDのレーベル印刷機能もEP-906FとPIXUS MX923のみ対応だ。写真の自動補正機能としては、エプソンの3機種は「オートフォトファイン!EX」、PIXUS MX923は「自動写真補正II」と名称は違うものの、逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われる。もちろんパソコンからの印刷時だけでなく、後述のダイレクト印刷時にも利用できる。 続いて、スキャナ部を見てみよう。解像度はEP-906Fが4800dpi、PX-675FとPX-605Fが1200dpi、PIXUS MX923が2400dpiとなる。解像度に大きな差があるように見えるが、反射原稿(紙などの原稿)にしか対応しないため、1200dpiでも十分すぎる解像度と言えるため、実際に使う上での差はあまりないと言える。いずれもCIS方式で、厚い本の綴じ目近くなど、ガラス面から浮いてしまう原稿は苦手だ。また4機種ともFAX機能付きと言うこともあって、ADFを搭載しており、エプソンの3機種は30枚、PIXUS MX923は35枚までの原稿を連続でスキャンできる。また上位機種だけあって、両面スキャンにも対応しており、両面原稿を一度でスキャンできる。前述の両面コピー機能を利用すれば、両面原稿を両面印刷と言うことが、一度で行えるわけである。とはいえ、PIXUS MX923には制限がある。まず、両面スキャン時は最大解像度が600dpiになる。そこまで高解像度で読み込みたいほど、綺麗さを望む場合は、フラットベッドの方を使うと思われるのでさほど問題ではないが、それよりもFAX使用時に両面スキャン機能を使えないのは少々問題だ。ちなみにエプソンの3機種はFAX時も両面スキャンに対応している。 ダイレクト印刷は、EP-906FはSDカード、メモリースティックDuo、コンパクトフラッシュに加えてUSBメモリや外付けハードディスクからの印刷にも対応しており、最近のメモリカードに全て対応しているため不満はない。PX-675FとPX-605Fはコンパクトフラッシュには対応しないものの、そのほかはEP-906Fほぼと同等だ。そして、PIXUS MX923だが、こちらはカードスロットを備えておらず、USBメモリからの印刷のみと言う思い切った仕様だ。USBメモリのみだからと言って機能が少ないわけではなく、用紙サイズや用紙の種類も選択でき、自動写真補正IIも有効である。一方の、エプソンの3機種はメモリカードに対応しているだけではなく、メモリカードからUSBメモリ・外付けハードディスクへのバックアップが可能な他、ネットワーク接続をしている場合、他のパソコンから外付けハードディスクのデータにアクセスが可能な「外部機器共有」機能も備えている。つまり複合機単体でメモリカード内の写真やスキャンした写真や原稿を外付けHDDに保存でき、それらに家庭内のどのパソコンからもアクセスできるわけである。そのほか、赤外線通信による印刷に対応しているのはEP-906Fのみである。PictBridgeは4機種とも搭載しているが、EP-906FはUSB接続とWi-Fi接続の両方式のPictBridgeに対応しているのに対して、PX-675FとPX-605FはUSB接続方式のみ、PIXUS MX523はUSBポートを備えているにもかかわらず、Wi-Fi接続のPictBridgeにしか対応しない点は注意が必要だ。機能の豊富さではEP-906Fに軍配が上がると言える。 ダイレクト印刷時の機能として代表的な手書き合成シートもEP-906Fのみ対応している。一方、4機種とも複合機単体でいろいろな用紙を印刷できるようになっている。EP-906Fは塗り絵風の輪郭だけの印刷が行えるほか、フォーム印刷機能として罫線、マス目、便箋、スケジュール帳、五線譜、メッセージカード、折り紙封筒が印刷可能だ。一方のPX-675FとPX-605Fはフォーム印刷機能の1つ前のノート罫線印刷機能となっており、罫線、マス目、便箋の印刷のみ対応である。PIXUS MX923は定型フォーム印刷機能となっており、原稿用紙・方眼紙・五線譜・レポート用紙・スケジュール帳・チェックリスト・漢字練習帳の印刷が可能だ。4機種とも数には差はあるが、単体でも様々な用紙が印刷できるいえる。 スマートフォンとの連携機能も4機種とも搭載しており、iPhoneやiPod touch、iPadと、Android端末に対応している。いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることで行える。メインで使用すると思われる写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。さらにドキュメント印刷にも対応している。PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もできる便利だ。また、4機種ともスマートフォン上からスキャンを実行し、データをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。出かける前に紙の情報をさっとスマートフォンに転送するといった使い方ができるため便利だろう。また、エプソンの3機種はクラウドとの連携機能も搭載されており、オンラインストレージ上のデータを印刷することも可能だ。さらに、EP-906Fは、SNSの写真をコメント付きで印刷する事ができる。機能を搭載している さらにネットワークを利用したプリント機能として、エプソンの3機種は、印刷したい写真や文書を本機にメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、スキャンした画像を離れた場所の対応複合機で印刷できる「メールdeリモート印刷」、通常のプリント同じ操作で、離れた場所のEP-906F/PX-675F/PX-605Fで印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。一方のPIXUS MX923は、本機にメールすると自動で印刷できる「メールからプリント」機能のみ搭載しているが、エプソンの3機種がWord/Excel/PowerPoint/PDFの他、JPEG/GIF/PNG/TIFF/BMPの画像形式に対応しているのに対して、PIXUS MG7130はPDFとJPEGだけの対応というのも少し寂しい。リモートプリント機能はエプソンの3機種の圧勝だ。 コピー機能を見てみよう。単純なコピー機能としては、4機種とも単純な等倍コピーだけでなく、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「自動変倍」機能や、原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行う「オートフィット」機能、さらに25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える機能を搭載した高性能な物だ。またCD/DVD/Blu-rayレーベル印刷が行えるEP-906FとPIXUS MX923はレーベルコピーも行うことができる。また4機種とも原稿面に写真を複数枚置き、焼き増し風のコピーを行うことも出来る。この際、エプソンの3機種はは「退色復元」、PIXUS MX923では「色あせ補正」と名称は異なるが、4機種とも昔の色あせした写真も自動で補正してくれる機能も備えている。さらに4機種とも2枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2アップにも対応する。さらにPIXUS MX923では4枚の原稿を1枚に縮小する4アップにも対応している。その他、EP-906Fはコピー時にも「塗り絵印刷」が行える他、見開きの本を左右ページで別々にコピーする「BOOKコピー」、アイロンプリント紙への印刷時に使える「ミラーコピー」、文字領域と画像領域を認識し、それぞれが見やすくなるよう別々の画像処理を行う「領域判定コピー」といった機能を備える。PX-675FとPX-605Fは「領域判定コピー」に加えて、免許証などの両面の小さな原稿を、1枚の用紙に裏表並べてコピーできる「IDコピー」機能も備えている。一方PIXUS MX893はには厚手の原稿など原稿台のカバーが浮いてしまう場合に黒くなる部分を消去する「枠消しコピー」機能と、ADFを使用して複数枚原稿を複数部コピーする際に1部ずつまとめてコピーする「ページ順コピー」機能を備えている。それぞれ機能は異なるが、複合機単独で様々なコピーが行えるよう工夫されている。 それでは肝心のFAX機能を見てみよう。4機種ともスーパーG3に対応しており、モノクロ、カラーFAXを行う事が出来る。4機種ともADFを搭載しているため、複数枚の原稿の送信も便利である。前述のようにエプソンの3機種はFAX送信時にも両面スキャンがおこなえるため、両面原稿のFAX送信も手軽に行えより便利だろう。33.6Kbpsで通信可能であり、その場合の伝送速度はモノクロで約3秒というのも共通だ。また読取走査線密度はモノクロで「8pels/mm×3.85line/mm又は8pels/mm×7.7line/mm、カラーで200×200dpiなのも共通である。さらに、PIXUS MX923のみモノクロ時に300×300dpiのファインEXモードを備えているが、大きな差ではないだろう。ダイヤル機能でも4機種とも短縮ダイヤルに対応しており、EP-906Fは60件、それ以外の3機種は100件登録できるため十分だ。受信したファクスの最大保存ページ数はEP-906Fが180枚又は30件、PX-675FとPX-605Fは180枚又は100件、PIXUS MX893が250枚又は30件と家庭で使う分には十分なメモリ量を備えている。また4機種とも電源を切っても、メモリに保存された受信FAXの内容は記憶しているので安心だ。ただし、停電時やコンセントが抜けた場合でも受信した内容が保持されるのはPX-675FとPX-605Fだけである。夜にはブレーカーを落とすという場合や、使わないときにどこかにしまっておくという人は注意が必要だ。4機種ともグループダイヤル、順次同報送信、手動送信、自動リダイヤル機能を備えているため、一般的な家庭用FAX電話以上の事が可能だ。また、「PCファクス」機能も4機種とも備えている。ただし、パソコン内のデータを直接FAXできる「送信」機能は4機種とも備えている物の、受信したFAXの内容をパソコン上で確認できる「受信」機能はエプソンの3機種のみ対応である。 操作パネルを見てみよう。EP-906Fの操作パネルは「タッチパネル液晶+LEDナビ」、PX-675FとPX-605Fは「LEDナビ」、PIXUS MX923は「デュアルファンクションパネル」と、それぞれ特色がある。EP-906Fは液晶ディスプレイがタッチパネル、それ以外の部分がセンサー式ボタンの「LEDナビ」である。液晶ディスプレイ部分は、状況に応じて表示内容を変えられるため、ボタンそのものをタッチできる。また、スマートフォンと同じフリック操作で写真を選んだり、項目をスクロールできるようになっている。一方のボタン部分は表示内容こそ固定だが、ボタンはLEDライトで光っており、使用できないキーは消灯している。物理的なボタンではなくタッチセンサーなので、光っているキー以外は見えなくなり、非常に分かりやすい。この2つの組み合わせにより、直感的な操作が可能になっている。特にFAX機能を搭載している機種では、どうしてもダイヤル用のテンキーや短縮ボタンなどが必要になり、ボタン数が多くなりがちだが、EP-906Fではそれらを液晶ディスプレイ内に表示することで、ボタン数をFAX無し複合機のEP-905AやEP-806Aと同じ数のままFAX機能を付けることに成功している。液晶ディスプレイサイズも4機種中最も大きい3.5型で視認性は高い。さらにEP-906Fの液晶ディスプレイと操作パネルは本体前面に取り付けられ、液晶ディスプレイだけでなく操作パネル全体を持ち上げて角度調整が可能なのも特徴だ。最大90度まで起こすことができるので、垂直から水平まで見やすい角度で操作ができるよう工夫されている。操作パネルは、最高レベルの物だといえるだろう。PX-675FとPX-605Fの操作パネルは同じである。EP-906F同様の「LEDナビ」を採用しているため、使用できるボタンだけがLEDライトで光るため、分かりやすい。ただし液晶ディスプレイはタッチパネルではない点ではEP-906Fより劣る。そのため、テンキーやFAX関連のキーが必要となっており、ボタン数は増えてしまっている。とはいえLEDナビのおかげで、テンキーを使わない時は消灯しているので、比較的分かりやすいようになっている。操作パネルと液晶ディスプレイは本体前面に斜めに取り付けられている。斜めになっているためどの方向からでも使いやすいが、残念ながら角度調整は出来ない。ビジネスモデルという事で堅牢性を重視したという事だが、その分使い勝手はやや劣る。液晶ディスプレイも2.5型とやや小さめだが、視認性を大きく損ねるほどではないだろう。PIXUS MX923の操作パネルはタッチセンサー式ではなく物理的なボタンとなっているが、「デュアルファンクションパネル」の名の通り、一部のボタンがは使用する機能によって表示が切り替わる。スタートやストップ、メニューなどのボタンの他、液晶下部の3つのボタンは一般的なボタンだ。一方液晶の右側にある4×4個のボタンの内容が2種類に切り替えられるのが特徴だ。FAX利用時には、右側3列がダイヤル用のテンキーになり、左1列が上下カーソルと「OK」「戻る」になっている。一方コピーやフォトなどFAX以外を使用時には、テンキーのあった部分に上下左右カーソルとその中心に「OK」ボタンがあり、左1列は「+」「−」「戻る」ボタンになる。このように、テンキーが必要ない時はテンキーが消えるなど、わかりやすくなっている。割り当てられていないキーには何も表示されていないので、使用できるキーが分かりやすいが、エプソンの「LEDナビ」のように、各手順ごとに使用できないキーが消灯する様な、キー1つ1つの消灯・点灯切り替えは出来ず、あくまで2パターンの切り替えのみである。この操作パネルと液晶ディスプレイは、本体の上面から側面にかけて斜めに大きく面取りされた部分に埋め込まれている。残念ながら操作パネルも液晶ディスプレイも固定されていて角度調整はできない。斜めになっているため、どの角度からでもそれほど使いにくくはないだろうが、それでも高い位置に置くと、操作がしにくかったり液晶ディスプレイが見にくくなりそうだ。液晶ディスプレイのサイズは3.0型とやや大きめだ。以上から、いずれの機種も、テンキーが必要だができるだけ分かりやすくしようという工夫の跡が見える。その中でも最も優れているのはEP-906Fだろう。液晶ディスプレイがタッチパネル式なので直感的な操作が可能で、ボタン数も少なくてすむ。PX-675F/PX-605FとPIXUS MX923は近いレベルではあるが、各手順ごとにキー1つ1つの点灯・消灯が切り替えられるPX-675F/PX-605Fの方がやや使いやすそうである。 インタフェース4機種はUSB2.0接続に加えて、ネットワーク接続に対応しており共通だ。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人にはネットワーク接続によりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。無線LANはIEEE802.11nに対応しているため、無線LANで接続した場合も、遅さを感じさせなくなっている点も4機種共通の便利な点だ。ただし、アクセスポイントがない状態で、直接スマートフォンやタブレットとプリンタを接続できる「Wi-Fiダイレクト」機能はEP-906Fのみ対応だ。一方で、無線LANの電波が届かない場合や、より転送速度を高めたい場合は有線LANにも対応しているため安心である。 本体サイズを見てみよう。EP-906Fは390×339×191mmとこれだけ高機能とは思えないコンパクトさである。他の機種より横幅が約5〜10cm、奥行きが約6〜9cm、高さも約4〜11cmも低い。さらに高さに関してはADFの中央部分のふくらんだ部分の値であるため、実際にはもっと低く感じる。設置面積では群を抜いている。PX-605Fは449×417×243mm、PIXUS MX923は491×396×231mmである。横幅に関してはPX-605Fが、奥行きと高さに関してはPIXUS MX923の方が小さい。設置面積でも1872平方cmに大して1944平方cmと大きな差ではない。残るPX-675Fは前面給紙カセットが2段になっているため449×427×308mmと特に高さがかなりの物だ。セット可能枚数とトレードオフとはいえ、かなりの圧迫感であるのは確かだ。 予算を気にしないのであれば、EP-906Fがオススメである。写真印刷も最高画質で行え、しかも高速である。スキャン機能もダイレクト印刷機能も、ネットワーク印刷機能も、コピー機能も弱点が見つからない。家庭向け製品だがFAX機能も十分高機能だ。なにより、タッチパネル液晶とLEDナビの組み合わせで、しかも角度調整が可能という操作しやすさに加えて、圧倒的なコンパクトさはメリットだ。1台で色々と使おうと思っているならEP-905Fが一押しである。しかし予算的にEP-905Fが難しいという場合は、PX-605FかPIXUS MX923から選ぶこととなる。写真印刷をメインで行うならPIXUS MX923である。PIXUS MX923は染料インクで高画質な写真印刷が可能で印刷も早い。FAX時に両面スキャンが行えなかったり、ネットワーク印刷機能が劣ったりするが、レーベル印刷機能やハガキの自動両面印刷機能などPX-605Fには無い家庭向けの機能を備え、一方で用紙のセット可能枚数も多い。ただし、メモリカードからダイレクト印刷は対応しないため、そのあたりを重視するならPX-605Fだが、インクが顔料インクであるため写真印刷には向かない。両方を求めるならやはりEP-906Fまで行くしかないだろう。ではPX-605Fはどういった場合に向いているかというと、文書印刷やコピー、FAX機能を主体で使う場合ある。顔料インクによる普通紙への印刷画質の高さに加え、普通紙印刷は高速だ。FAX時にも両面スキャンが行えるだけでなく、電源が供給されなくても受信したFAXの内容が消えなかったり、PCファクスの送信が可能だったりと、ビジネス用途にはむしろこちらの方が向いているとも言える。PX-605FとPIXUS MX923から選ぶ場合、家庭での写真印刷やレーベル印刷用途にも使うか、美辞寝る用途かという事を基準に選べばよいだろう。最後にPX-675FはPX-605Fのセット可能枚数を倍増させた製品だが、家庭での使用でそこまで必要かは疑問だ。本体の高さもかなりのものなので、特殊な機種と言えるだろう。どうしても大量に用紙をセットしたい場合のみPX-675Fが候補となるはずだ。 (H.Intel) 【今回の関連メーカーホームページ】 エプソンhttp://www.epson.co.jp/ キャノンhttp://canon.jp/ ![]() ![]() |