小ネタ集
2013年末時点のプリンタ
〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜
(2013年12月11日公開/2014年1月25日追記)

プリンタ比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンタ比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。


2万円以上のFAX付き複合機
 
 FAX機能を搭載した複合機の中では低価格な3機種を比較する。エプソンのPX-535F、PX-505F、キャノンのPIXUS MX523がこの価格帯の製品となる。PX-535FとPXISU MX523が19,980円で同価格だが、PX-505Fは14,980円とかなり安価だ。また上位機種とも1万円以上の価格差があるが、どういった点が異なるのだろうか。

メーカ
エプソン
エプソン
キャノン
品番
PX-535F
PX-505F
PIXUS MX523
製品画像
予想実売価格
19,980円
14,980円
19,980円
プリンタ部
インク
色数
4色
4色
4色
インク構成
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
顔料ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成
各色独立
各色独立
カラー一体+ブラック
顔料/染料系
顔料
(つよインク200X)
顔料
(つよインク200X)
染料(カラー)/顔料(黒)
(ChromaLife100)
ノズル数
357ノズル
357ノズル
1792ノズル
カラー:各59ノズル
ブラック:180ノズル
カラー:各59ノズル
ブラック:180ノズル
カラー:各384ノズル
顔料ブラック:640ノズル
最小インクドロップサイズ
3pl(MSDT)
3pl(MSDT)
2pl
最大解像度
5760×1440dpi
5760×1440dpi
4800×1200dpi
給紙・排紙関連
対応用紙サイズ
L判〜A4
L判〜A4
L判〜A4
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面
○(120枚)
○(120枚)
前面
○(100枚)
その他
排紙トレイ自動開閉
自動両面印刷
○(普通紙のみ)
特殊機能
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
○(オートフォトファイン!EX)
○(オートフォトファイン!EX)
○(自動写真補正II)
特定インク切れ時印刷
○(黒だけでモード・5日間のみ)
○(黒だけでモード・5日間のみ)
○(残った色で一時的に印刷可)
印刷速度
L判縁なし写真(メーカー公称)
74秒
74秒
39秒
A4普通紙カラー(ISO基準)
4.7ipm
4.7ipm
5.5ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準)
9.0ipm
9.0ipm
9.7ipm
スキャナ部
読み取り解像度
1200dpi
1200dpi
1200dpi
センサータイプ
CIS
CIS
CIS
ADF
○(30枚)
○(30枚・ADF使用時は600dpi)
ネガフィルム読み取り機能
スキャンデーターのメモリカード保存
○(JPEG/PDF・USBメモリのみ)
○(JPEG/PDF・USBメモリのみ)
ダイレクト
印刷部
カードスロット
対応メモリカード
PCからドライブとして利用
外付けHDD/外付けDVD/USBメモリへ保存
−/−/−
−/−/−
−/−/−
外付けHDD/外付けDVD/USBメモリから印刷
−/−/−
−/−/−
−/−/○
手書き合成シート
PictBridge対応
○(Wi-Fi)
赤外線通信
Bluetooth通信
各種デザイン用紙印刷
定型フォーム印刷(原稿用紙・方眼紙・五線譜・レポート用紙・スケジュール帳・チェックリスト・漢字練習帳)
ネットワーク
印刷
スマートフォン連携
対応端末
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 5.0以降)
Android 2.2以降
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 5.0以降)
Android 2.2以降
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 5.1以降)
Android 2.3.3以降
写真プリント
ドキュメントプリント
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
スキャン
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
クラウド連携
スマートフォン経由/本体
○/−
○/−
−/−
オンラインストレージからの印刷
SNSからの印刷
写真共有サイトからの印刷
メールしてプリント
リモートプリント
スキャンしてリモートプリント
コピー部
倍率指定/自動変倍/オートフィット
○(25〜400%)/○/○
○(25〜400%)/○/○
○(25〜400%)/○/○
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー
○(色あせ補正対応)
2アップ/4アップ
−/−
−/−
○/○
バラエティコピー
IDコピー
領域判定コピー
領域判定コピー
ページ順コピー
枠消しコピー
FAX部
受信ファックス最大保存ページ数
180枚/100件
180枚/100件
50件/20件
データ保持(電源オフ/停電)
−/−
−/−
○/−
ワンタッチ/短縮ダイヤル
−/100件
−/100件
−/20件
グループダイヤル/順次同報送信
○(30宛先)/○(30宛先)
○(30宛先)/○(30宛先)
○(19宛先)/○(21宛先)
自動リダイヤル
PCファクス
○(送信のみ)
○(送信のみ)
○(送信のみ)
液晶ディスプレイ
2.5型
2.0型
(2行モノクロ)
2.5型
操作パネル
ボタン式
ボタン式
新デュアルファンクションパネル
インターフェイス
USB他
USB2.0×1
USB2.0×1
USB2.0×1
無線LAN
IEEE802.11n/g/b
IEEE802.11n/g/b
IEEE802.11n/g/b
有線LAN
100BASE-TX
100BASE-TX
外形寸法(横×奥×高)
392×377×221mm
392×371×177mm
458×385×200mm
重量
6.0kg
5.1kg
8.7kg
 

 プリンタ部から見てみよう。PX-535FとPX-505Fはプリンタ部は同等となる。ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色構成で、最小インクドロップサイズも3plと最近の機種としては大きめである。そのため、上位機種と比べると画質は劣り、粒状感を感じるだろう。ただし、写真印刷に耐えないほどではないため、若干ザラザラした感じを受けるのに目をつぶれば写真印刷も可能だ。また、4色全てが顔料インクであるため、写真用紙での発色はあまり良くなく、また表面の光沢も薄れポストカードのような鈍い光り方になってしまう。画質的には写真印刷ができないわけではないが、インク的には向いていない。一方で普通紙への印刷では顔料インクの特色であるコントラストが高く、滲みのないメリハリのある印刷が行える。文書印刷やコピーが非常に高画質に印刷ができる。また、耐水性も高いため、濡れた手で触ったり、マーカーを引いても滲まないのも便利だ。一方、PIXUS MX523もブラック、シアン、マゼンダ、イエローの4色構成で、一見するとPX-535F/PX-505Fや上位機種PIXUS MX923と同じ構成に見える。しかし、PIXUS MX523はカラー3色が染料インク、ブラックは顔料インクとなる。そのため、写真印刷時はブラックインクが使えず、3色を混ぜて黒に近い色を表現する事となる。そのために、真っ黒の部分が非常に濃い茶色のようになり、コントラストが若干弱くなってしまう問題がある。とはいえブラックインクが使える機種の印刷結果と比べると分かるが、PIXUS MX523の印刷結果単体で見ると大して分からないというレベルである。ここは、PX-535F/PX-505Fよりは劣る点だ。一方最小インクドロップサイズは2plとPX-535F/505Fより小さいため、粒状感はおさえられる。画質の評価ではPIXUS MX523はPX-535F/PX-505Fと比べて最小インクドロップサイズは小さいがブラックインクが使えないため、総合的には同レベルと言えるだろう。ただし、PIXUS MX523は染料インクで写真印刷が行えるため、写真用紙本来の光沢感が失われないという点で、写真印刷に向いていると言えるだろう。一方顔料ブラックのおかげで、コピーや文書印刷のモノクロ部分はコントラストが高く滲まずメリハリのある印刷が行える。PX-535F/PX-505Fのようにカラー・モノクロ問わずと言うわけにはいかないが、文書印刷やコピー時に黒文字というのは多いので、意外に効果は高い。写真は苦手だが文書印刷に特化したPX-535F/PX-505Fと、写真も文書もそれなりの高画質で印刷できるPIXUS MX523というイメージだ。ちなみにPX-535F/PX-505Fは4色ともインクタンクが独立しており無くなった色だけ交換ができるが、PIXUS MX523は黒とカラーの2タンク構成で、カラー3色は一体であるため、1色でもなくなると全体を交換する必要がある。コスト面では不利である。
 PX-535F/PX-505Fは背面給紙、PIXUS MX523は前面給紙と大きく異なる。PX-535F/PX-505Fの背面給紙は用紙幅だけを合わせてセットできるため便利で、また背面給紙・前面排紙なので、厚紙やラベル用紙なども安心だと言える。一方で背面にスペースが必要なほか、設置場所によってやセットが面倒で、また用紙をセットしたままだとホコリが積もってしまう。PIXUS MX523の前面給紙も上位機種PIXUS MX923とは異なり、前面パネルを開いた所に用紙をセットする形で、上段が排紙トレイ、下段が給紙トレイとなる。前面給紙カセットではないため、用紙をセットしたまま前面パネルを閉じることができず、開けたままだとホコリが積もってしまう。設置場所によっては前面給紙の方が用紙がセットしやすいが、前面給紙・前面排紙なので用紙が内部で曲がってしまうのが気になるという人もいるだろう。使いやすさは一長一短で、どちらがおすすめとは言いにくい。セット可能枚数はPX-535F/PX-505FがA4普通紙で100枚、ハガキで30枚、PIXUS MX523はA4普通紙100枚、ハガキが40枚までセットできるので、ほぼ同等だ。そのほか、PIXUS MX523は普通紙のみだが自動両面印刷機能を搭載しているため、両面原稿の印刷やコピーやFAX受信時に用紙の節約が手軽に行える。
 3機種とも写真の自動補正機能を備えている。PX-535F/PX-505Fは「オートフォトファイン!EX」、PIXUS MX523は「自動写真補正II」と名称は違うものの、逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われる。使用するインクはPX-535F/PX-505Fは「つよインク200X」である。昨年より採用された新インクであるため、アルバム保存300年、耐光性45年、耐オゾン性30年となる。一方、PIXUS MX523は「ChromaLife100」と上位機種より劣るが、アルバム保存100年を実現しており、差はあるものの両機種とも十分なレベルの耐保存性を持ったインクである。
 印刷速度はL判写真用紙縁なし印刷でPX-535F/PX-505Fが74秒、PIXUS MX523が39秒となっており、PIXUS MX523の方が倍近く速い。PX-535F/PX-505Fはもともと写真印刷に向いているプリンタではないとはいえ、かなり遅い。これはノズル数が上位機種と比べて少なく、特にカラーインクに関しては極端に少ないためである。この点から見ても写真印刷はPIXUS MX523の方が印刷速度的にもインクの種類的にも向いていると言える。一方文書印刷は差が縮まる。PIXUS MX523ではA4文書の印刷速後もカラーが5.5ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、モノクロが9.7ipmとなっているが、PX-535F/PX-505Fもそれぞれ4.7ipmと9.0ipmと近い速度になっている。普通紙への印刷に関してはそれほど気にするほどの差ではない。ちなみに上位機種PIXUS MX923ではそれぞれ10ipmと15ipmなので、これと比べると遅いが、この価格帯としては十分高速と言える。
 続いて、スキャナ部を見てみよう。解像度は3機種とも1200dpiである。反射原稿(紙などの原稿)にしか対応しないため、1200dpiでも十分すぎる解像度と言えるため問題ない性能と言える。いずれもCIS方式で、厚い本の綴じ目近くなど、ガラス面から浮いてしまう原稿は苦手だ。またPX-535FとPIXUS MX523はADFを搭載しており、いずれも30枚までの原稿を連続でスキャンできる。上位機種のように両面スキャンには対応していないが、コピーやFAX送信時には重宝するだろう。ちなみにPIXUS MX523はADF使用時には600dpiに制限されるがそこまで高解像度で読み込みたいほど、綺麗さを望む場合は、フラットベッドの方を使うと思われるのでさほど問題ではないだろう。スキャンしたファイルをパソコンを使わずに保存する機能はPX-535FとPIXUS MX523が搭載している。後述の理由によりいずれもUSBメモリに保存することしかできないが、パソコン無しでJPEG又はPDF形式での保存が可能だ。
 ダイレクト印刷機能は、ほとんど搭載されていないと言っても良い状況だ。3機種ともメモリカードスロットはない。ただし、PIXUS MX523だけ、USBメモリからのダイレクト印刷に対応している。USBメモリのみだからと言って機能が少ないわけではなく、用紙サイズや用紙の種類も選択でき、自動写真補正IIも有効である。USBメモリに入れさえすれば普通にダイレクト印刷を楽しむことができる。ちなみにPX-535FはスキャンしたデータをUSBメモリに保存する機能は搭載しているが、USBメモリからの印刷には対応していない。そのほか、PIXUS MX523はWi-Fi方式に限られるがPictBridgeにも対応しており、また単体では定型フォーム印刷機能を搭載しており、原稿用紙・方眼紙・五線譜・レポート用紙・スケジュール帳・チェックリスト・漢字練習帳の印刷が可能だ。PIXUS MX523は下位機種にしては機能が豊富だ。
 スマートフォンとの連携機能も3機種とも搭載しており、iPhoneやiPod touch、iPadと、Android端末に対応している。いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることで行える。メインで使用すると思われる写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。さらにドキュメント印刷にも対応している。PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もできる便利だ。また、3機種ともスマートフォン上からスキャンを実行し、データをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。出かける前に紙の情報をさっとスマートフォンに転送するといった使い方ができるため便利だろう。また、PX-535FとPX-505Fはクラウドとの連携機能も搭載されており、オンラインストレージ上のデータを印刷することも可能だ。
 さらにネットワークを利用したプリント機能として、PX-535Fは、印刷したい写真や文書を本機にメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、スキャンした画像を離れた場所の対応複合機で印刷できる「メールdeリモート印刷」、通常のプリント同じ操作で、離れた場所のPX-505で印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。ネットワークを利用したプリントはPX-535Fの圧勝である。
 コピー機能を見てみよう。単純なコピー機能としては、3機種とも単純な等倍コピーだけでなく、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「自動変倍」機能や、原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行う「オートフィット」機能、さらに25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える機能を搭載した高性能な物だ。さらに、PIXUS MX523は2枚又は4枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2アップ、4アップにも対応する。さらに、写真印刷に向いている機種だけあり、原稿面に写真を複数枚置き、焼き増し風のコピーを行うことも出来る。この際、「色あせ補正」機能を使用すれば昔の色あせした写真も自動で補正してくれる機能も備えている。そのほか、エプソンの2機種はコピー時に文字領域と画像領域を認識し、それぞれが見やすくなるよう別々の画像処理を行う「領域判定コピー」を行ってくれるほか、PX-535Fは免許証などの両面の小さな原稿を、1枚の用紙に裏表並べてコピーできる「IDコピー」機能も備えている。一方PIXUS MX523はには厚手の原稿など原稿台のカバーが浮いてしまう場合に黒くなる部分を消去する「枠消しコピー」機能と、ADFを使用して複数枚原稿を複数部コピーする際に1部ずつまとめてコピーする「ページ順コピー」機能を備えている。
 それでは肝心のFAX機能を見てみよう。3機種ともスーパーG3に対応しており、モノクロ、カラーFAXを行う事が出来る。PX-535FとPIXUS MX523はADFを搭載しているため、複数枚の原稿の送信も便利である。33.6Kbpsで通信可能であり、その場合の伝送速度はモノクロで約3秒というのも共通だ。また読取走査線密度はモノクロで「8pels/mm×3.85line/mm又は8pels/mm×7.7line/mm、カラーで200×200dpiなのも共通である。さらに、PIXUS MX523のみモノクロ時に300×300dpiのファインEXモードを備えているが、大きな差ではないだろう。ダイヤル機能でも、3機種とも短縮ダイヤルに対応しており、PX-535FとPX505Fが100件、PIXUS MX523が20件登録できる。受信したファクスの最大保存ページ数はPX-535FとPX-505Fは180枚又は100件、PIXUS MX523が50枚又は20件となる。これを見ると、PX-535FとPX-505Fは上位機種並みで、十分な短縮ダイヤル数や保存ページ数だが、PIXUS MX523は少なめであることが分かる。家庭内で使う分には問題になることは少ないかもしれないが、仕事の用途でも使うという場合は注意が必要そうだ。ちなみに受信したファックスデータは、PX-535FとPX-505Fは電源を切るだけで消去されてしまうのは注意が必要だ。一方PIXUS MX523は電源を切っても、メモリに保存された受信FAXの内容は記憶しているので安心だ。ただし、停電時やコンセントが抜けた場合はデータが消えてしまう。夜にはブレーカーを落とすという場合や、使わないときにどこかにしまっておくという人は注意が必要だ。3機種ともグループダイヤル、順次同報送信、手動送信、自動リダイヤル機能を備えているため、一般的な家庭用FAX電話以上の事が可能だ。また、「PCファクス」機能も3機種とも備えている。いずれも、パソコン内のデータを直接FAXできる「送信」機能のみで、受信したFAXの内容をパソコン上で確認できる「受信」機能は搭載していないが、WordやExcelのデータなどを一度印刷してからスキャンして送るという手間無くFAXできるのは便利だ。
 操作パネルを見てみよう。最もこだわっているのはPIXUS MX523である。「デュアルファンクションパネル」という名称で、使用する機能によって表示が切り替わる。PIXUS MX523の場合、スタートやストップ、メニューなどのボタンの他、液晶下部の3つのボタンは一般的なボタンになっている。そして、液晶ディスプレイ右側に切り替えられるボタンが並んでいる。縦4×横5個のボタンが並び、そのうち右側の3列分と、左側2列の一番上の段の「+」「−」み切り替えられ、その下にあるカーソルボタンや、「OK」「戻る」は常時見えている状態だ。右側の3列はFAX用のテンキーで、FAX機能使用時はテンキーが点灯し、「+」「−」が消灯する。逆にFAX機能以外を使用するときは、テンキーが消灯し、「+」「−」が点灯する(テンキー入力が必要な手順を除く)。上位機種とは異なり、1つのキーが2つの機能に切り替わるのではなく、使えるか使えないかの2パターンの切り替えのみであり、またエプソンの上位機種のタッチパネルの様にキー1つ1つの切り替えは出来ず、全体を切り替えるだけだが、テンキーが必要な分どうしてもボタン数が増えてしまい、操作時に迷いやすい所を、使わないときは消灯することで、分かりやすいように工夫がなされている点は好感が持てるだろう。液晶ディスプレイも2.5型と比較的大きめで視認性は高い。一方PX-535Fは一般的なボタン式だ。ボタン数が多く、また限られた操作パネル面に多くのボタンを配置しようとするとどうしても1つ1つのボタンは小さくなってしまうため、PIXUS MX523と比べると分かりにくい印象だ。ただし液晶ディスプレイは2.5型となっており視認性には問題ない。一方PX-505Fも一般的なボタン式である。PX-535Fと似たボタン配置で、こちらもボタン数が多く、小さめなので、PIXUS MX523と比べると分かりにくい。さらに液晶ディスプレイが文字のみが2行表示可能なモノクロ液晶である。FAX無し複合機の下位機種のように液晶ディスプレイ自体が無いよりはメニューや設定項目が分かりやすいが、やはりモノクロの文字だけでは分かりにくく一覧性も悪い。低価格なだけに最低限となっているのは残念だ。ちなみに3機種とも操作パネルと液晶ディスプレイは、本体前面に斜めに固定された状態になっている。PX-535F/PX-505Fは本体のから前方に飛び出す形で、PIXUS MX523は本体の上面から側面にかけて斜めに大きく面取りされた部分に埋め込まれている。残念ながら3機種とも操作パネルも液晶ディスプレイも固定されていて角度調整はできない。斜めになっているため、どの角度からでもそれほど使いにくくはないだろうが、それでも高い位置に置くと、操作がしにくかったり液晶ディスプレイが見にくくなりそうだ。
 インタフェース3機種はUSB2.0接続に加えて、ネットワーク接続に対応しており共通だ。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人にはネットワーク接続によりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。無線LANはIEEE802.11nに対応しているため、無線LANで接続した場合も、遅さを感じさせなくなっている点も3機種共通の便利な点だ。一方で、無線LANの電波が届かない場合や、より転送速度を高めたい場合は有線LAN接続が便利だが、こちらはPX-535FとPIXUS MX523が対応しており、一番低価格なPX-505Fは搭載していない。
 本体サイズを見てみよう。PX-535Fは392×377×221mm上位機種より全体にコンパクトだ。そしてPX-505FはADFが無い分高さが抑えられ392×371×177mmとなっている。一方、PIXUS MX523は453×385×200mmと横幅が大きい代わりにADFを搭載している割には高さが抑えられている印象だ。ただし横幅はPX-535F/PX-505Fより61mmも大きいため、設置場所の確認は必要そうだ。

 それぞれ省かれている機能が違うため、どの機能が必要かで機種が決まる。まずADFが必要ならPX-505Fが候補から外れる。一方ADFが不要で、とにかく安価にFAX付き複合機が必要ならPX-505Fである。写真の印刷には、インクの種類や画質、速度の面から向いていないが、文書印刷ならそれほど悪くなく、FAX機能は十分な機能だ。液晶ディスプレイがモノクロの文字だけの表示である事が気にならなければ、PX-505Fが安価でよいだろう。ではPX-535FとPIXUS MX523の価格が同じ2製品はどう選べば良いだろうか。まずは写真印刷をするかどうかだ。写真印刷をするなら染料インクを搭載したPIXUS MX523がおすすめだ。写真印刷速度も速いし、USBメモリーからのダイレクト印刷も可能だ。一方文書印刷やコピー、FAXにしか使わないなら、PX-535Fの顔料インクは有利だ。印刷速度も写真では遅いが文書はそれほど遅くない。またFAX機能を本格的に使う場合も受信FAXの最大保存ページや短縮ダイヤルの件数の多いPX-535Fがおすすめである。結局、FAXを初めとしたビジネス的な使い方をするならPX-535Fが、写真印刷など家庭での使用がメインだがプラスでFAX機能も付いている方が良いというならPIXUS MX523がおすすめと言える。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/


PX-535F
PX-505F
PIXUS MX523