2013年末時点のプリンタ 〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜 (2013年12月11日公開/2014年1月25日追記)
今となっては数が少なくなってしまったA4プリンタ単機能機である。そのうち上位の3機種、エプソンのEP-302とPX-205、キャノンのPIXUS iP7230を比較する。価格は3機種とも16,980円で揃っている。価格は同じだが、それぞれ特徴的な部分があり、比較することで用途にあった機種を選べるはずだ。 |
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シアン ライトシアン マゼンタ ライトマゼンダ イエロー |
シアン マゼンタ イエロー |
染料ブラック シアン マゼンタ イエロー |
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(つよインク200) |
(つよインク200X) |
(ChromaLife100+) |
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ブラック:384ノズル |
Y/染料BK:各512ノズル 顔料BK:320ノズル |
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(A4普通紙セット可能枚数) |
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○(2L・ハイビジョン以下) |
○(L/KG/2L/はがき) |
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印刷 |
iPod touch iPad (iOS 5.0以降) Android 2.2以降 |
iPod touch iPad (iOS 4.3.5以降) Android 1.6以降 |
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3機種はそれぞれ基本となる複合機が存在している。インク構成やインク滴、ノズル数や印刷スピード、さらに用紙のセット方式などを見るとを見ると、EP-302はEP-806Aの、PX-204はPX-605Fのプリンタ部とほぼ同スペックであり、PIXUS iP7230もPIXUS MG7130のプリンタ部からグレーインクを抜いた様なスペックである。いずれも複合機の上位から中位モデル(PX-605FはFAX付き複合機だが)と同等であることを考えると、十分高性能であると言える。 3機種の中で最も画質が高いのはEP-306である。ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色に加えて、ライトシアンとライトマゼンダを搭載する6色構成である。最小インクドロップサイズも1.5plと極小であるため、全体を通して粒状感がほとんど無い高画質な印刷が可能である。特にライトインクを搭載するのは3機種中でEP-306のみであり、色の薄い部分でも粒状感が目立たないというメリットがある。また、この画質は複合機の最上位機種と同等であるため、画質面では最高レベルであると言える。インクは染料インクを採用しているため、写真用紙へ印刷した際に用紙の光沢感がそのまま出るため写真印刷に向いているといえる。一方で普通紙などへ印刷ではシャープさが弱くなる他、耐水性は弱いのは染料インクの宿命と言える。インクは「つよインク200」となっており、アルバム保存300年、耐光性50年、耐オゾン性10年と、耐保存性は高く、その点でも写真印刷に向いている。 次に画質が高いのはPIXUS iP7230である。5色構成となるが、色はブラック、シアン、マゼンダ、イエローの4色となっており、ブラックインクのみ染料インクと顔料インクの2種類を搭載する。そのため写真印刷時は4色印刷となり、色の薄い部分で粒状感が若干気になる。といっても最小インクドロップサイズが1plと極小であるため、よく目をこらしてみないと粒状感は感じられず、写真全体がザラザラと見えるようなレベルではない。EP-306とほぼ同等と言っても良く、十分に写真印刷に耐えうる高画質である。またブラックだけだが顔料インクを搭載しているため、普通紙へのモノクロ印刷時にシャープな印刷結果が得られ耐水性も高いというメリットがある。ただしカラーインクは染料のみであるためカラー印刷時はこれらのメリットは得られない。インクは「ChromaLife 100+」であり、純正写真用紙のキャノン写真用紙・光沢 ゴールドを使用する事で、アルバム保存300年、耐光性40年、耐オゾン性10年を誇っている(キャノン写真用紙・光沢 プロ[プラチナグレード]ではそれぞれ200/50/10年)。こちらも耐保存性は非常に高く安心だ。 最後にPX-205だが、こちらはブラック、シアン、マゼンダ、イエローの4色構成で、インク滴も2plと他の2機種と比べると劣ってしまうため、粒状感は若干あると言える。それでも2plというと十分小さいため、十分写真印刷に耐えられる画質であり、比べてよく見ると、色の薄い部分が若干ザラザラした印象を受ける程度である。それよりもPX-204の特徴は全色が顔料インクである事である。顔料インクのメリットとして、普通紙への印刷では染料インクに比べシャープな印刷が行える事がある。そのため普通紙へ印刷しても文字が滲んだように太くなることもなくくっきりしており、また白抜き文字などがつぶれることもなく、画像などもメリハリが出るため、普通紙への印刷画質はかなり高いと言える。普通紙のカラー印刷では最小インクドロップサイズで勝る他の2機種よりも綺麗に見える場合もあるだろう。さらに水に強いという特徴もあるため、濡れた手で触ったりマーカーを引いても滲まないという特徴がある。もちろん全色顔料インクなので、PIXUS iP7230のようなモノクロ印刷に限った話ではなく、カラー、モノクロのどちらでも同じ恩恵が得られる。そのため、普通紙への文書印刷だけでなく年賀状への印刷でも重宝するだろう。一方で写真用紙へ印刷すると光沢感が薄くなり、ポストカードのような半光沢になってしまう点は注意が必要だ。PX-205は普通紙印刷に特化していると言える。インクは「つよインク200X」でありアルバム保存200年、耐光性45年、耐オゾン性30年である。光沢感が薄くなることさえ気にならなければ、写真を印刷した際の色あせなどの問題はクリアしている。 3機種とも写真印刷時に写真を自動補正する機能を備えている。EP-306とPX-205が備える「オートフォトファイン!EX」は顔を自動判別し、シーンに合った補正をするもので、逆光写真や色かぶりも自然に補正してくれる。一方PIXUS iP7230の備える「自動写真補正II」も顔を自動検出し、顔とそれ以外の部分の露光状態を別々に解析して、それぞれに合った明るさに補正してくれる。3機種とも高精度で自動補正が行われるのは安心である。 対応用紙は、3機種ともL判〜A4となっている。いずれも、名刺サイズなどL判サイズより小さな用紙には対応しない点は注意が必要だ。給紙も3機種とも前面給紙が基本となる。EP-306とPIXUS iP7230は複合機の上位機種と同様、前面2段給紙となる。カセット式となっているため用紙をセットしたまま本体に完全に収納が可能なほか、2段式であるため2種類の用紙を同時にセット可能だ。上段にL判やハガキなどの小さな用紙を、下段にはA4やB5といった大きな用紙をセットするようになっている。EP-306は下段にA4普通紙が100枚、上段にハガキなら20枚までセット可能だ。一方PIXUS iP7230は下段にA4普通紙なら125枚、上段にハガキなら40枚までセット可能だ。セット可能枚数はPIXUS iP7230の方が上だ。しかし、PIXUS MG7130の下段はA4、A5、B5、レター、リーガルサイズのみの対応で、L判、KG、2L判、ハガキサイズに対応する上段と使用できるサイズが完全に分けられている。一方EP-306は下段にもL判やハガキサイズにの用紙もセットできる。その場合、ハガキなら40枚セット可能となるため、下段を使用すればEP-306でもPIXUS iP7230と同じ枚数をセットできる。一方、PX-205も前面給紙でカセット式だが、1段となっており一度にセットできる用紙は1種類だ。ただしA4普通紙なら一度に250枚セットできる大型のもので、EP-306やPIXUS iP7230より大量の印刷にも対応できる。前面給紙・前面排紙と言うことで気になるのが、厚紙やラベル用紙などである。メーカーとしては問題ない事になっているが、前面から給紙して前面から排紙するため、内部で大きく曲げられてしまうのは少し心配だ。また封筒など特殊なサイズの用紙への印刷も不安である。そこで、EP-306とPX-205では1枚ずつではあるが背面からの手差し給紙を可能としている。従来の背面給紙に近い位置だが、用紙をセットしておけるような大型のものではなく、小さな背面給紙カバーと、用紙を支える小さな「用紙サポート」を引き出せるだけだ。複数枚セットしても一度に給紙されてしまうため、本当に1枚ずつとなる。その分、コンパクトな本体でも背面給紙を可能としているわけである。さらに、通常の給紙カセットでは0.3mm厚の用紙までの対応だが、EP-306の背面手差し給紙では、倍の0.6mmの用紙に印刷ができる。今まで印刷できなかった厚紙にも印刷できる点も便利だろう。前面給紙のみのPIXUS MG7130に比べて、1枚ずつだが背面からと言う方法が選択できるEP-306とPX-205は安心感がある。 自動両面印刷は3機種とも対応している。ただしPX-205は普通紙のみとなるため、ハガキの通信面と宛名面を自動で両面印刷を行いたいならEP-306かPIXUS iP7230となる。同時両面ではないため、片面を印刷して乾燥時間があってから再度給紙され裏面が印刷されるため、時間はかかるが、両面原稿の印刷時や年賀状印刷などには便利だろう。CD/DVDレーベル印刷もEP-306とPIXUS iP7230が対応しており、オリジナルデザインのディスクが作成可能だ。そのほか、EP-306はPictBridgeにも対応しており、対応のデジタルカメラをUSBケーブルで接続する事で、デジタルカメラからの操作で写真プリントが行える。 印刷速度を見てみよう。L判写真の縁なし印刷速度では、EP-306が14秒、PIXUS iP7230が18秒とこの2機種はかなり高速で、大量の印刷でもストレス無く行えるだろう。EP-306は最小インクドロップサイズが1.5plと小さいものの、5つのサイズのインクを打ち分けるAdvanced-MSDTに対応しており、必要に応じて大きなドットを打つことで、画質度速度を両立している。PIXUS iP7230も最小インクドロップサイズは小さいが、ノズル数を多くすることで高速化している。一方PX-205は56秒と、他の2機種と比べるとかなり遅い事が判る。カラーのノズル数がEP-306より少なく、Advanced-MSDTより劣る、3つのサイズのインクを打ち分けるMSDTに対応している事が関係していると思われる。56秒でも、十分使えるレベルではあるが、他の機種と比べると差が大きい。写真印刷を大量にするなら他機種が良いだろう(もっとも顔料インクのPX-205で写真印刷を主体に使うことは無いと思われるが)。一方、A4普通紙への文書印刷速度はL判写真とは傾向が異なる。こちらは単位をipmで表す。ipmはimage per minute、つまり1分あたりの印刷枚数であるため、数値の大きい方が高速になる。カラー文書の印刷はPX-205は9.5ipm、PIXUS iP7230は10.0ipmとなり、L判写真印刷時とは異なりほぼ同じ速度になっている。さらにモノクロ文書では15ipmと完全に同じになっている。両機種とも1分で15枚ということは、100枚の原稿でも7分弱で終了する事になり、かなり高速と言える。ちなみに、EP-306はA4普通紙への印刷速度が公表されていないため、比較できないが写真印刷速度から考えるに遅くはないはずだ。 EP-306とPIXUS iP7230はスマートフォンとの連携機能を搭載している。iPhoneやiPod touch、iPadと、Android端末などに対応しており、専用のアプリを無料でダウンロードすることで、それらから直接印刷が行える。メインで使用すると思われる写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。さらにEP-306はドキュメント印刷にも対応している。PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もできる便利だ。さらに、クラウドとの連携機能も搭載されているため、オンラインストレージから印刷したり、SNSの写真を印刷する事ができる。SNSの写真はコメント付きでも印刷が可能だ。一方のPIXUS iP7230は2013年以前に発売開始された機種であるため、スマートフォン用のアプリは新機種が採用するPIXUS Printではなく、EasyPhotoPrintとなる。そのため、WebページやWord/Excelなどのドキュメントプリントにも対応しておらず、EasyPhotoPrint上で作成したPDFファイルの印刷のみの対応となる点は注意が必要だ。 インタフェースは3機種ともSB2.0接続に加えてネットワーク接続にも対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人にはネットワーク接続によりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。無線LANはIEEE802.11nに対応しているため、無線LANで接続した場合も、遅さを感じさせなくなっている点も便利である。ただしEP-306とPX-205は有線LAN、無線LANの両方に対応しているが、PIXUS iP7230は無線LANのみの対応である。無線LANの電波が届きにくい位置に設置する場合は、有線LAN接続が可能なEP-306とPX-205の方が便利だ。 本体サイズはEP-306が390×338×141mm、PX-205は449×380×165mm、PIXUS iP7230は451×368×128mmとなる。EP-306がエプソンの複合機同様、横幅や奥行きが小さいのが分かるだろう。高さはPIXUS iP7230の方が低いが、EP-306は背面手差しトレイ部分が飛び出ているためで、それ以外の高さは低めだ。一方、前面給紙カセットのセット可能枚数が大きいPX-205は高さが大きくなっている上に、幅も奥行きも大きめであるため、全体に大柄な印象だ。コンパクトさを求めるならEP-306だがPIXUS iP7230もそれおど大きいわけではない。ただし、このサイズを見ると、「単機能機だからコンパクト」とは言えない状況になりつつある。エプソン同士で比較すると、複合機の上位機種EP-806Aは390×341×141mm、複合機の下位機種のPX-046Aは390×300×145mmとなっており、コンパクトなEP-306ですら複合機EP-806Aと奥行きが3mm小さいだけに過ぎない。一方キャノン同士の比較でも、複合機の上位機種PIXUS MG7130は466×369×148mm下位機種PIXUS MG3530は449×304×152mmであり、PIXUS MG7130との比較でさすがに高さは20mm小さいが、幅は15mm、奥行きは1mmの差しか無く、大きな差はない。複合機では近年急激に小型化が進んでいる一方、前面給紙カセットの採用で奥行きがA4用紙の縦の長さ+αが必要になり、設置スペースの面でもA4単機能プリンタが有利とは言えない状況になりつつある事から、大きさだけで単機能機を選ぶのは時代遅れと言える。 この3機種から選ぶとなると、まず写真印刷が主な目的なら、EP-306がオススメである。6色インクで印刷も高速であり、染料インクであるため写真印刷に向いている。レーベル印刷にも対応する。逆に、写真は印刷せず、普通紙や年賀状への印刷が主な目的なら、顔料インクのPX-205がおすすめである。顔料インクであるため普通紙への印刷画質が高く耐水性も高い。さらに普通紙への印刷は、特にモノクロ印刷は高速である。一方、写真も普通紙も両方の画質を望むならPIXUS iP7230がオススメである。インクは4色となるが十分高画質で写真印刷ができ。印刷も速く、自動両面印刷やCD/DVDレーベル印刷にも対応する。モノクロのみだが顔料インクによるメリハリがあり高耐水の印刷が行える。全色顔料という事でPX-205は分かりやすいが、PIXUS iP7230とEP-306の2機種では迷うところだろう。スマートフォンからのプリント機能の豊富さや背面手差し給紙、有線LAN接続が気に入ったのならEP-306、顔料ブラックインクや給紙枚数の多さが気に入ったのならPIXUS iP7230という選び方もあるだろう。ただし、この価格と性能なら複合機を選ぶのも手である。例えば給紙トレイや各種機能に違いはあるがEP-306と画質が同じで速度も近い複合機EP-706Aは19,980円、手差し給紙はないがPX-205と同じプリンタ性能の複合機PX-504Aは17,980円である。PIXUS iP7230とほぼ同性能で画質がさらに上の複合機PIXUS MG6530は24,980円と価格差があるが、少し劣るPIXUS MG5530なら17.980円である。コピーもスキャンもダイレクト印刷(PIXUS MG5530を除く)もできるにも関わらず、価格差は数千円となっている。この価格帯のA4単機能プリンタを検討している人は、一度複合機もセットで検討してみてはいかがだろうか。 (H.Intel) 【今回の関連メーカーホームページ】 エプソンhttp://www.epson.co.jp/ キャノンhttp://canon.jp/ ![]() ![]() |