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2014年末時点のプリンタ 〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜 (2014年12月10日公開)
複合機で1万円台前半、またはそれ以下というと、かなり安価な部類に入り、実際にラインナップ上も、最下位機種になる。エプソンからはPX-047A(10,980円)、PX-045A(7,600円)、キャノンからはPIXUS MG3530(7,800円)がこの価格帯の製品となる。この辺りになると、どういった機能が上位機種から省かれているかを見るより、どういった機能が搭載されているのかを見て、比較することになる。 |
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シアン マゼンタ イエロー |
シアン マゼンタ イエロー |
シアン マゼンタ イエロー |
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(つよインク200X) |
(つよインク200X) |
(ChromaLife100) |
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黒:128ノズル |
黒:128ノズル |
顔料BK:640ノズル |
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(フチなしはハガキサイズまで) |
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(A4普通紙セット可能枚数) |
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印刷部 |
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印刷 |
iPod touch iPad (iOS 5.0以降) Android 2.2以降 |
iPod touch iPad (iOS 5.1以降) Android 2.3.3以降 |
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各機能を見る前に、PX-045Aの説明をしておこう。PX-045Aは2年前に最下位モデルとして登場し、翌年無線LAN搭載のPX-046Aが発売されたが、PX-045Aは併売された。今年はPX-046Aの後継機種としてPX-047Aが登場してるが、PX-045Aは継続販売されている。そのためPX-047Aの下位モデルと言うよりは旧モデルというイメージで、基本性能はほとんど変わらない。しかし無線LAN搭載以外に細かな違いもあるので、見ていこう。 3機種をまずプリンタ部から見てみよう。PX-047A/PX-045Aはブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色構成となる。最小インクドロップサイズも3plと最近の機種としては大きめであるため、上位機種と比べると画質は劣り、粒状感を感じるだろう。ただし、写真印刷に耐えないほどではないため、若干ザラザラした感じを受けるのに目をつぶれば写真印刷も可能だ。また、4色全てが顔料インクであるため、写真用紙での発色はあまり良くなく、また表面の光沢も薄れポストカードのような鈍い光り方になってしまう。画質的には写真印刷ができないわけではないが、インク的には向いていない。一方で普通紙への印刷では顔料インクの特色であるコントラストが高く、滲みのないメリハリのある印刷が行える。文書印刷やコピーが非常に高画質に印刷ができる。また、耐水性も高いため、濡れた手で触ったり、マーカーを引いても滲まないのも便利だ。一方、PIXUS MG3530もブラック、シアン、マゼンダ、イエローの4色構成で、一見するとPX-046Aや上位機種PIXUS MG5530と同じ構成に見える。しかし、PIXUS MG3530はカラー3色が染料インク、ブラックは顔料インクとなる。そのため、写真印刷時はブラックインクが使えず、3色を混ぜて黒に近い色を表現する事となる。そのために、真っ黒の部分が非常に濃い茶色のようになり、コントラストが若干弱くなってしまう問題がある。とはいえブラックインクが使える機種の印刷結果と比べると分かるが、PIXUS MG3530の印刷結果単体で見ると大して分からないというレベルである。ここは、PX-047A/PX-045Aよりは劣る点だ。一方最小インクドロップサイズは2plとPX-047A/PX-045Aより小さいため、粒状感はおさえられる。画質の評価ではPIXUS MG3530はPX-047A/PX-045Aと比べて最小インクドロップサイズは小さいがブラックインクが使えないため、総合的には同レベルと言えるだろう。ただし、PIXUS MG3530は染料インクで写真印刷が行えるため、写真用紙本来の光沢感が失われないという点で、写真印刷に向いていると言えるだろう。一方顔料ブラックのおかげで、コピーや文書印刷のモノクロ部分はコントラストが高く滲まずメリハリのある印刷が行える。PX-047A/PX-045Aのようにカラー・モノクロ問わずと言うわけにはいかないが、文書印刷やコピー時に黒文字というのは多いので、意外に効果は高い。写真は苦手だが文書印刷に特化したPX-047A/PX-045Aと、写真も文書もそれなりの高画質で印刷できるPIXUS MG3530というイメージだ。ちなみにPX-047A/PX-045Aは4色ともインクタンクが独立しており無くなった色だけ交換ができるが、PIXUS MG3530は黒とカラーの2タンク構成で、カラー3色は一体であるため、1色でもなくなると全体を交換する必要がある。コスト面では不利である。 PX-047A/PX-045Aは背面給紙、PIXUS MG3530は前面給紙と大きく異なる。PX-047A/PX-045Aの背面給紙は用紙幅だけを合わせてセットできるため便利で、また背面給紙・前面排紙なので、厚紙やラベル用紙なども安心だと言える。一方で背面にスペースが必要なほか、設置場所によってやセットが面倒で、また用紙をセットしたままだとホコリが積もってしまう。PIXUS MG3530の前面給紙も、前面パネルを開いた所に用紙をセットする形で、上段が排紙トレイ、下段が給紙トレイとなる。前面給紙カセットではないため、用紙をセットしたまま前面パネルを閉じることができず、開けたままだとホコリが積もってしまう。設置場所によっては前面給紙の方が用紙がセットしやすいが、前面給紙・前面排紙なので用紙が内部で曲がってしまうのが気になるという人もいるだろう。使いやすさは一長一短で、どちらがおすすめとは言いにくい。ただし、PX-047A/PX-045Aは下位機種と言うことで、セットできる用紙の枚数が上位機種より少ない。A4普通紙で50枚、ハガキで20枚となる。PIXUS MG3530はA4普通紙100枚、ハガキが40枚までセットできるので、一度に大量印刷をする場合はPIXUS MG3530の方が便利だ。そのほか、PIXUS MG3530は普通紙のみだが自動両面印刷機能を搭載しているため、両面原稿の印刷や用紙の節約が手軽に行える。ここで注意点は、フチなし印刷が可能な用紙である。PX-047AはA6〜A4、L判、2L判、KG、六切、ハガキ、ハイビジョン、PIXUS MG3530はA4、L判、2L判、KG、六切、ハガキに対応しているが、PX-045AはL判、KG、ハガキ、ハイビジョンのみで、2L判やA4用紙など大きな用紙へのフチなし印刷ができない。 3機種とも写真の自動補正機能を備えている。PX-047A/PX-045Aは「オートフォトファイン!EX」、PIXUS MG3530は「自動写真補正II」と名称は違うものの、逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われる。使用するインクはPX-047A/PX-045Aは「つよインク200X」であり、アルバム保存300年、耐光性45年、耐オゾン性30年となる。一方、PIXUS MG3530は「ChromaLife100」と上位機種より劣るが、アルバム保存100年を実現しており、差はあるものの3機種とも十分なレベルの耐保存性を持ったインクである。 印刷速度はL判写真用紙フチなし印刷でPX-047A/PX-045Aが105秒、PIXUS MG3530が37秒となっており、PX-047A/PX-045Aの方が3倍近く時間がかかっている。もともと写真印刷に向いているプリンタではないとはいえ、かなり遅い。これはノズル数が上位機種と比べて少なく、特にカラーインクに関しては極端に少ないためである。文書印刷はもう少しマシだが、それでも遅めにはなる。PIXUS MG3530は上位機種よりノズル数は少ないが、それでも比較的多めであるため、写真印刷速度も十分実用的だ。A4文書の印刷速後もカラーが5.7ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、モノクロが9.9ipmとなっており、最上位機種の10ipmと15ipmと比べると遅いが、この価格帯としては十分高速と言える。 続いて、スキャナ部を見てみよう。解像度はPX-047AとPIXUS MG3530が1200dpiで、PX-045Aは600dpiとなる。反射原稿(紙などの原稿)にしか対応しないため、1200dpiでも十分すぎる解像度と言える。実際写真サイズを1200dpiで取り込むと約4,200×6,000ドットとなり2500万画素相当となる事から、十分な性能と言える。また600dpiのPX-045Aでも問題ないレベルと言える。実際、文書なら200dpi〜300dpi程度だし、写真でも600dpiで十分綺麗に取り込める。ただ、3機種ともCIS方式で、厚い本の綴じ目近くなど、ガラス面から浮いてしまう原稿は苦手だ。ADFやスキャンした原稿をパソコンを使わずにメモリカードに保存する機能などの機能は3機種とも省略されている。また3機種ともカードスロットを搭載していないため、メモリカードからのダイレクト印刷機能も搭載していない。 一方でスマートフォンとの連携機能はPX-047AとPIXUS MG3530の2機種が搭載している。iPhoneやiPod touch、iPadと、Android端末に対応しており、専用のアプリを無料でダウンロードすることで行える。メインで使用すると思われる写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。さらにドキュメント印刷にも対応している。PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もできる便利だ。また、PX-047A、PIXUS MG3530ともスマートフォン上からスキャンを実行し、データをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。出かける前に紙の情報をさっとスマートフォンに転送するといった使い方ができるため便利だろう。さらに、PX-047AはスマートフォンからEvernoteやDropboxなどのクラウドにアクセスし、オンラインストレージから画像や文書を印刷する事もできる。またネットワークを活用した機能として、PX-047Aは印刷したい写真や文書を本機にメールすると自動で印刷できる「メールプリント」機能を備えている。対応形式はWord/Excel/PowerPoint/PDFの他、画像JPEG/GIF/PNG/TIFF/BMPの各形式に対応しているので、便利だろう。さらに離れた場所からも通常の印刷操作で印刷できる「リモートプリントドライバー」にも対応している。機能面ではPX-047Aが豊富である。 コピー機能と操作パネルを見てみよう。この3機種が他の機種と大きく違うのは液晶ディスプレイを搭載していない事である。そのため、コピーの各種設定をすることができず、非常に簡易的なものしか搭載してい。PX-047AとPX=045Aはほぼ共通で、操作パネルは本体前面に取り付けられている。上位機種のように角度調整はできず、軽く上を向いているが、ほぼ垂直に取り付けられている。ボタンはPX-047Aでは「電源ボタン」「Wi-Fiボタン」「NWステータスシートボタン」「モノクロコピーボタン」「カラーコピーボタン」「ストップボタン」のみとなる。それに「ネットワーク」「用紙」「インク」のそれぞれの状態を示すLEDランプとなる。PX-045Aでは「Wi-Fiボタン」「NWステータスシートボタン」と「ネットワーク」のLEDランプは無い。コピーはA4普通紙への等倍コピーのみとなり、他の用紙や拡大縮小、縁なし印刷などは一切行えない。原稿をセットしたら、「モノクロコピー」または「カラーコピー」ボタンを押す事で、コピーが行われるという非常にシンプルなものだ。これらのボタンを長く押すと、インク量を抑えた「試し印刷」になる。また、PX-047Aでは、「ストップボタン」を押したまま「モノクロコピー」または「カラーコピー」を押すと、PX-045Aでは「モノクロコピー」または「カラーコピー」ボタンを押したまま「ストップボタン」を押すと、20枚コピーとなる。それ以外に組み合わせとして、「ストップボタン」を押したまま電源を入れると、ノズルチェックパターンが印刷される。一方、PIXUS MG3530の操作パネルは、本体正面のスキャナ部の左側に縦に並んでいる。ボタンは「電源ボタン」「Wi-Fiボタン」「用紙選択ボタン」「カラーボタン」「モノクロボタン」「ストップボタン」のみで、それに「電源」「Wi-Fi」「カラーインク」「モノクロインク」「用紙」の各状態を示すLEDランプと「エラーランプ」となる。「用紙選択ボタン」と「用紙ランプ」があるが、選択肢は2種類でA4普通紙かL判写真用紙となる。「用紙選択ボタン」を押すと、各用紙名の横のランプが点灯するだけのシンプルなものだ。原稿をセットし、用紙を選択したら、あとは「カラーボタン」または「モノクロボタン」を押せばコピーが行われる。2部以上のコピーを行い場合は、複数回コピーボタンを押せば、その回数だけコピーが行われる。「カラーボタン」または「モノクロボタン」を2秒以上押すと、速度優先の「下書きモード」でコピーされるようになる。もう一度2秒以上押すと元に戻る。A4普通紙の場合は縁ありの等倍コピーとなる。一方L判写真用紙の場合は、原稿を自動的に拡大・縮小し、縁なし印刷が行われる。2種類の用紙が使用できる点ではPIXUS MG3530の方が便利だが、大きな差ではないだろう。シンプルなコピー機能しか持っていないため、より高機能なコピー機能が必要なら、上位機種を検討することになる。 インタフェースはPX-047AとPIXUS MG3530はUSB2.0に加えて、無線LANに対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人には無線LANによりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。一方PX-045AはUSB接続のみで、USBも低速なUSB1.1のみ対応だ。印刷も遅く、それほど高解像度でスキャンできるわけでもないのでUSB1.1の転送速度でも問題にはならないのだろうが、わざわざ変更するほど製造コストに影響するのかは謎だ。またPX-047AとPIXUS MG3530も上位機種とは異なり、無線LANはWi-Fiダイレクト(キャノンはアクセスポイントモード)に対応していないため、スマートフォン・タブレットと直接接続することはできず、必ず無線LANルータが必要となる。その無線LANの設定も、液晶ディスプレイが無いことから手動で設定する場合は不便になっている。とは言え、両機種とも各種ワンタッチ接続に対応しており、液晶ディスプレイが無くても対応の無線LANルータであれば初期設定は簡単に設定できるよう工夫されている。PX-047Aの場合、AOSSとWPSに対応している。「WiFiボタン」を「WiFiランプ」の左右が交互に点滅するまで押し、その後、無線LANルータの対応ボタンを押すだけである。また、「NWステータスシートボタン」を押す事で、ネットワーク設定情報が印刷される。一方の、PIXUS MG3530の場合、AOSS、WPS、らくらく無線スタートに対応している。「Wi-Fiボタン」を「エラーランプ」が1回点滅するまで押し、あとは無線LANルータの対応ボタンを押すだけである。「ストップボタン」をエラーランプが15回点滅するまで押し続けると、ネットワーク設定情報が印刷される。ちなみに両機種とも、無線LANルータがワンタッチ設定に対応していない場合は、一度パソコンとUSB接続した上で、ネットワーク接続の設定を行う事もできる。ワンタッチ設定に対応していれば無線LANの接続設定は難しくはないが、エラーは発生したときの確認など、やはり液晶ディスプレイ搭載機種と比べると難しくなるのは仕方のないことだろう。 本体サイズを見てみよう。PX-047AとPX-045Aが390×300×145mm、PIXUS MG3530が449×304×152mmとなり、両機種とも上位機種よりコンパクトだが、特にPX-047AとPX-045Aの横幅が小さい。一方で同等に見える奥行きは、使用時にはPIXUS MG3530の方が小さい。PX-047Aは背面給紙であるため、背面の給紙トレイを取り出すと、トレイが後方に倒れるため、その分だけ奥行きが必要だ。もちろん排紙トレイも引き出す必要がある。一方PIXUS MG3530は排紙トレイの下に用紙をセットするため、給紙トレイの分のスペースが不要である。その点では横幅か奥行きかといった事になる。 3機種とも最下位機種だけあり最低限の機能をまとめた印象で、液晶ディスプレイが無いなど操作性にも影響が出ている。一方で画質面では上位機種よりは劣るものの、使えないほど悪いわけではなく、価格を考えれば十分に高画質だ。3機種の内どれがおすすめかと言えば、とりあえず幅広く使いたいならPIXUS MG3530がおすすめだ。無線LANを搭載しながら無線LAN非搭載のPX-045Aとほぼ同価格である。またカラーのみだが染料インクも搭載しているため、写真の印刷や光沢紙への印刷も行え、印刷速度も比較的速い。価格の割に機能がまとまっているという印象だ。一方、文書印刷やコピーがメインなら、PX-047A/PX-045Aがおすすめだ。顔料インクによる普通紙印刷画質や耐水性はメリットだし、普通紙印刷なら印刷もそれほど遅くない。またPX-047Aならスマートフォンを利用してクラウドからの印刷ができたり、メールしてプリントしたりリモートプリントドライバーを使用することもできるなど、ネットワーク機能が豊富だ。文書印刷でUSB接続ができれば良いならPX-045A、パソコンが複数台あったり、ネットワークを利用した各種機能が使いたいならPX-047Aがおすすめだ。 (H.Intel) 【今回の関連メーカーホームページ】 エプソンhttp://www.epson.co.jp/ キャノンhttp://canon.jp/
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