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2014年春時点のプリンタ 〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜 (2014年12月10日公開/2015年3月21日更新)
A3ノビのプリントとA3のスキャンに対応したFAX機能付き複合機である。キャノンに該当する機種がないため、エプソンの2機種「PX-M5041F」と「PX-M5040F」の2機種の比較となる。また同程度の機能のA4用紙とスキャンに対応したPX-M740Fも参考として掲載している(実際の比較は別ページ)。2機種の違いと、A3対応の機種とA4対応の機種で機能差があるのか見ていこう。 |
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シアン マゼンタ イエロー |
シアン マゼンタ イエロー |
シアン マゼンタ イエロー |
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(つよインク200X) |
(つよインク200X) |
(つよインク200X) |
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黒:800ノズル |
黒:800ノズル |
黒:800ノズル |
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(A4普通紙セット可能枚数) |
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○(250枚・普通紙B5以上) |
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印刷部 |
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印刷 |
iPod touch iPad (iOS 5.0以降) Android 2.2以降 |
iPod touch iPad (iOS 5.0以降) Android 2.2以降 |
iPod touch iPad (iOS 5.0以降) Android 2.2以降 |
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(Wi-Fiダイレクト対応) |
(Wi-Fiダイレクト対応) |
(Wi-Fiダイレクト対応) |
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プリンタ部を見てみよう。両機種とも、インク部分に関しては同性能になっている。顔料インクで、ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色構成となっている。この点ではエプソンの染料インクのFAX付き複合機「EP-907F」より劣るところだ。最小インクドロップサイズも2.8plとEP-907Fより大きめだ。最小インクドロップサイズはそれなりに小さいので写真印刷も行えるが、ライトインクがないためEP-907Fよりは確実に劣ってしまう。その上、全色顔料インクである事が写真印刷では問題となる。顔料インクで写真用紙に印刷すると、発色はあまり良くなく、また表面の光沢も薄れポストカードのような鈍い光り方になってしまう。写真印刷ができないわけではないが、画質的にもインク的には向いていないといえる。ただし、その点さえ気にならなければインクは「つよインク200X」を採用しておりアルバム保存300年、耐光性45年、耐オゾン性30年となっており耐保存性は高い。ちなみにこの辺りの性能はPX-M740Fと同等であり、A3対応機だからと言って画質面で劣っていたり優れていることはない。カラーが各256ノズル、黒に至っては800ノズルとノズル数が非常に多くなっているが、L判写真縁なし印刷は45秒とやや遅めだ。Advanced-MSDTより劣る3つのサイズのインクを打ち分けるMSDT対応という事も影響していると思われるが、ここまでノズル数が多い割には遅い理由は不明だ。またA4対応の「PX-M740F」では41秒となっており、微妙に遅いのは、A3ノビ対応のため給紙から排紙にかけての部分が大きく、またイングヘッドの動きも大きくなるためと思われる。 一方、写真印刷はやや苦手な両機種だが、普通紙への印刷時は状況が異なる。染料インクの「EP-907F」でも十分綺麗に印刷できるが、普通紙に印刷すると多少にじんでしまい、文字が太く見えたり、白抜き文字がつぶれやすくなるなど、メリハリが弱くなる。一方、顔料インクのPX-M5041FやPX-M5040Fではにじみの少ないくっきりとした印刷が行えるメリットがある。染料インクでは白い中抜き文字や細い線が潰れることがあるが、顔料インクではくっきりしているなどの違いが出る。さらに、今モデルより新ノズルとなり普通紙印刷時の解像度もアップしているため、より高画質だ。EP-907Fなど、家庭向けの染料インクのプリンタと比べてインク数も最小インクドロップサイズでも劣るが、普通紙への印刷ではPX-M5041FとPX-M5040Fの方が上である。また、耐水性も高いというメリットもあり、濡れた手で触ったりマーカーで線を引いても滲まない点も便利である。そのため、パソコンから普通紙への印刷や、普通紙コピー、年賀状印刷に向いている他、FAX機能を使う時も、受信したFAXを普通紙に印刷する際に高画質、高耐水で印刷が出来る。この特徴はA4対応のPX-M740Fでも同じである。普通紙への印刷速度は、A4普通紙カラーが両機種とも10.0ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、モノクロ印刷は18ipmとなっている。これはインクジェットプリンタとしては非常に高速な部類となる。文書の印刷やコピー、受信したFAXの印刷がストレスのない速度で印刷ができると言える。 PX-M5041FとPX-M5040Fの大きな違いが給紙に関する部分である。いずれも、対応用紙はL判からA3ノビまでという点は共通である。そのため、名刺サイズなどL判より小さな用紙に印刷することは出来ない。給紙は前面給紙がメインで、いずれもカセット式となっており、A3ノビまでの用紙をセットできるようになっている。前面給紙とすることで、後方に背面給紙用のスペースが必要ない他、前面からカセットごと取り外して用紙が交換できるので、置き場所によっては背面給紙より使いやすい。しかし背面給紙がないため、特に厚い紙や封筒、ラベル用紙などへの印刷は問題ないとは言われていても、前面から給紙し前面から排紙するため用紙がプリンタ内部で曲げられるため少し心配だ。そこで、1枚ずつの手差しではあるが背面からの給紙にも対応している。構造が簡易的なものであるため、複数枚セットしても一度に吸い込まれてしまうが、セットしている用紙以外の用紙を一時的に使いたい場合や、封筒などのサイズが特殊なもの、さらにローラー跡が付きやすい厚紙などを使用する際に便利だ。この辺りは、PX-M5041FとPX-M5040Fで共通だ。違いは前面給紙カセットである。前面給紙カセット1つには用紙を1種類セットできるのだが、A4普通紙の場合で250枚までセットできるため、大量印刷や大量のFAX受信にも耐えられるため安心だ。この前面給紙カセットが1段なのがPX-M5040F、2段なのがPX-M5041Fである。染料インクの機種「EP-907F」の前面給紙カセットも2段だが、上段は小さなサイズの用紙しかセットできず、あくまでA4普通紙とL判写真紙のように「2種類」同時にセットできるだけなのに対して、PX-M5041Fではそれぞれのカセットに制限はほとんど無く、カセット2は普通紙でB5サイズ以上という制限だけである。そのため、A4用紙を両方にセットし一度に500枚給紙できるようにすることも出来るし、片方にB5やA3、L判写真用紙などをセットしておき、使い分けることも可能だ。PX-M740Fの場合、対応用紙がA4サイズまでという違いがあるが、カセットに250枚までセットできる点や背面手差し給紙は同等であり、PX-M5041FのA4版であるPX-M741Fもラインナップされている。 写真印刷時の自動補正機能として、両機種とも最新の「オートフォトファイン!EX」に対応している。逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われる高性能なものだ。また、両機種ともダイレクト印刷時にも使用できるのは便利だ。それ以外の機能として、自動両面印刷機能も搭載しており、A3用紙まで対応している。また、A4サイズ対応のPX-M740Fとの数少ない違いの一つで、PX-M740Fは普通紙のみでハガキには非対応だが、PX-M5041FとPX-5040Fは普通紙だけでなくハガキにも対応している。 続いて、スキャナ部を見てみよう。PX-M5041FとPX-M5040FはA3プリントに対応しているだけでなく、A3サイズの原稿のスキャンに対応しているのがメリットだ。両機種とも解像度は1200dpiでCIS方式となり、FAX機能付きなのでADFを搭載している点で共通する。このADFもA3用紙に対応しており、35枚までの原稿を連続でスキャンできるのは共通だ。同時両面スキャンが行えるため両面コピーやFAXの時に重宝するはずだ。この1200dpiという解像度は「EP-907F」などと比べると劣っているように見える。しかし、紙原稿のみのスキャンであることを考えると、写真を綺麗にスキャンする場合でもせいぜい1200dpiで、それ以上になるとファイルサイズが大きくなりすぎて扱いにくく、一般的には300dpiや600dpiで使用することになると思われるため、十分なスペックと言える。また、前述のように、いずれもCIS方式であるため、分厚い本など浮いてしまう原稿は苦手だ。両機種ともスキャンしたデータをパソコンを使わずにメモリカードにJPEG/PDF/TIFF形式で保存できる機能を搭載しており便利である。ちなみにPX-M740FはA4サイズまでという違いはあるが同スペックである。A3という大きな原稿に対応している分、コストダウンのためにスペックが劣る、という心配はない。 ダイレクト印刷は、両機種ともSDカード/メモリースティック Duoに対応しており、さらに外付けハードディスクやUSBメモリにも対応しているため、最近のデジタルカメラのメモリカードには対応しており安心だ。 スマートフォンとの連携機能も両機種とも搭載している。いずれもiPhone/iPod touch/iPad/Androidに対応しており、専用アプリ「EPSON iPrint」を用意する。撮影した写真をスマートフォンからの操作で手軽に印刷でき、その際、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定まで行えるため、パソコンから印刷するのと変わらないレベルで印刷できる。さらにドキュメント印刷にも対応している。PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応しており、Webページの印刷もできるまたスマートフォン上からスキャンを実行し、データをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。出かける前に紙の情報をさっとスマートフォンに転送するといった使い方ができるため便利だろう。またクラウドとの連携機能にも対応しており、「EPSON iPrint」上でクラウドにアクセスし、そのファイルを印刷できる。「EP-907F」の様に、SNSからの印刷はできないが、クラウドサービスを利用している人には便利な機能だ。 さらにネットワークを利用したプリント機能として、印刷したい写真や文書を本機にメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、スキャンした画像を離れた場所の対応複合機で印刷できる「メールdeリモート印刷」、通常のプリント同じ操作で、離れた場所のPX-M5041F/PX-M5040Fで印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。 コピー機能を見てみよう。単純なコピー機能としては、両機種とも単純な等倍コピーだけでなく、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「オートフィット」機能や、原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行える「自動変倍」機能に加え、25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える高性能な物だ。また、2枚又は4枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2アップ、4アップにも対応する。基本的なコピー機能は両機種とも不満はない。また、コピー時には文字領域と画像領域を認識し、それぞれが見やすくなるよう別々の画像処理を行う「領域判定コピー」という機能を備え、より見やすいコピーが行える。さらに、免許証などの両面の小さな原稿を、1枚の用紙に裏表並べてコピーできる「IDコピー」機能や、原稿サイズが出力サイズより小さい際に出来る余白の影を消す「影消しコピー」、パンチ穴を消す「パンチ穴消しコピー」機能も備えている。この辺りもPX-M740Fと同等の機能を備えているが、A3スキャンに対応しているPX-M5041FとPX-5040Fならではの機能として、本などを見開きで原稿台に置いた原稿を、1ページごと用紙にコピーする「ブック分割コピー」機能を搭載している。 それでは肝心のFAX機能を見てみよう。両機種ともスーパーG3に対応しており、モノクロ、カラーFAXを行う事が出来る。両機種ともADFを搭載しているため、複数枚の原稿の送信も便利である。もちろん両面スキャンしFAXできるため便利だ。33.6Kbpsで通信可能であり、その場合の伝送速度はモノクロで約3秒というのも共通だ。また読取走査線密度はモノクロで8pels/mm×3.85line/mm、8pels/mm×7.7line/mm、8pels/mm×15.4line/mm、16pels/mm×15.4line/mmが設定でき、カラーで200×200dpiなのも共通である。ダイヤル機能でも両機種とも短縮ダイヤルに200件登録できるため十分だ。PX-M740Fでは100件であるため、倍の件数となる。さらに、本体サイズが大きく操作パネルに余裕があるため、ワンタッチダイヤルボタンも備える点もPX-M740Fとの違いである。ボタンは5つで、シフトボタンとの組み合わせで、10件まで登録できる。受信したファクスの最大保存ページ数も550枚と、PX-M740Fの180枚の約3倍とFAX機能に関してはかなり強化されている。もちろん、電源オフだけでなく、停電時やコンセントが抜けた場合でも受信した内容が保持されるのは安心である。また両機種ともグループダイヤル、順次同報送信、手動送信、自動リダイヤル機能を備えているため、一般的な家庭用FAX電話以上の事が可能だ。また、パソコン内のデータを直接FAXできる「PCファクス」機能を備えているのも便利である。送信(パソコン上のデータを画像として送信)だけでなく、受信(パソコン上にFAXのデータを受信)することもできる。 操作パネルは、いずれも本体の前面に配置される。液晶ディスプレイがタッチパネル対応となっており、直感的にモード切替や設定が行えるほか、カーソルキーや枚数の「+」「−」ボタンをなくすことができ、ボタン数が減り分かりやすくなっている。ただし家庭向けのEP-907Fと異なる点は、電話番号や文字入力に使用するテンキーに関しては液晶ディスプレイ内に表示するのではなく、独立したボタンとなっている点だ。家庭向け複合機にFAX機能をおまけ的に付けたEP-907Fとは異なり、FAX機能もメインとして使用されるビジネス向けの機種であるため、あえてテンキーは独立し、見栄えよりも押しやすさを優先して物理ボタンになったと思われる。液晶ディスプレイもEP-907Fと同じく4.3型となっており視認性は非常に良い。PX-M740Fも同じタッチパネル液晶だが、2.7型と小さく、PX-M5041FとPX-5040Fは本体が大きい分、液晶ディスプレイも大型になっている。操作パネルと液晶ディスプレイは本体前面に斜めに取り付けられている。斜めになっているためどの方向からでも使いやすいが、残念ながら角度調整は出来ない。ビジネスモデルという事で堅牢性を重視したという事だが、その分使い勝手はやや劣る。 インタフェースはUSB2.0と有線/無線LANの接続に対応している。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人には有線LAN/無線LANによりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。無線LANは、IEEE802.11n接続に対応しており、無線LANで接続した場合でもプリントやスキャンで待たされることが無いようになっている。アクセスポイントがない状態で、直接スマートフォンやタブレットとプリンタを接続できる「Wi-Fiダイレクト」機能にも対応している。 本体サイズはPX-M5040Fは567×486×340mmとA3対応機だけあってかなり大きい。そしてカセットが2段のPX-M5041Fは567×486×418mmと高さが純粋に78mm大きくなり圧迫感もさらに高まっている。ちなみにA4対応のPX-M740Fは449×417×243mmであり、同じ1段化セットのPX-M5040Fとの比較でも幅が約12cm、奥行きが約7cm、高さが約10cmも大きいことになる。かなり大きくなることは考えておいた方が良さそうだ。 結局2機種の違いは給紙トレイが1段か2段かという点だけである。つまり2段の給紙トレイを必要と引き替えに高さが大きくなるため、どちらを優先するかで機種が決まる。問題はA3までが必要かどうかだ。一つ安心材料としては、PX-M740Fとの比較でわかるように、スペック的にA4対応の物より低くなっているというような事は無いと言う事がある。A3対応にコストがかかるため、スペックを落としてコストダウンと言うことはなく、むしろ自動両面印刷機能や、FAXのメモリ件数の点では優れている。ただし、基本的にはPX-M740FのA3対応版と考えて良いため、本当にA3スキャンとプリントが必要か、必要なら2段カセットが必要かという点によって機種が決まるだろう。 (H.Intel) 【今回の関連メーカーホームページ】 エプソンhttp://www.epson.co.jp/ キャノンhttp://canon.jp/
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