小ネタ集
2014年春時点のプリンタ
〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜
(2014年12月10日公開/2015年3月21日更新)

プリンタ比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンタ比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。


FAX機能付き複合機(3万円以上の機種)
 
 FAX機能付き複合機の中で上位機種に当たる3万円以上の機種である。エプソンの家庭向けEP-907Fとビジネス向けPX-M741FとPX-M740F、キャノンのビジネス向けMAXIFY MB5030が該当する。価格にばらつきがあるため3万円以上という括りではあるが、EP-907Fが43,980円、PX-M741Fが39,980円、PX-M740Fが29,980円、MAXIFY MB5030が36,800円となる。また前述のように家庭向けとビジネス向けという違いもある。どういった点から価格差が付き、家庭向けやビジネス向けとなっているのかを見ていこう。

メーカ
エプソン
エプソン
エプソン
キャノン
品番
EP-907F
PX-M741F
PX-M740F
MAXIFY MB5330
製品画像
実売価格(メーカーWeb/税込み)
43,980円
39,980円
29,980円
36,800円
プリンタ部
インク
色数
6色
4色
4色
4色
インク構成
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ライトシアン
ライトマゼンタ
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成
各色独立
各色独立
各色独立
各色独立
顔料/染料系
染料
(つよインク200)
顔料
(つよインク200X)
顔料
(つよインク200X)
顔料
(MAXIFY用新顔料インク)
ノズル数
1080ノズル
1568ノズル
1568ノズル
4352ノズル
全色:各180ノズル
カラー:各256ノズル
黒:800ノズル
カラー:各256ノズル
黒:800ノズル
カラー:各1024ノズル
黒:1280ノズル
最小インクドロップサイズ
1.5pl(Advanced-MSDT)
2.8pl(MSDT)
2.8pl(MSDT)
N/A
最大解像度
5760×1440dpi
4800×2400dpi
4800×2400dpi
600×1200dpi
給紙・排紙関連
対応用紙サイズ
L判〜A4
L判〜A4
L判〜A4
L判〜A4
(フチなし印刷不可)
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面
○(1枚手差し/0.6mm厚まで)
○(1枚手差し)
○(1枚手差し)
前面
○(100枚/L判〜A4)
○(L判〜2L・ハイビジョン)
○(250枚・L判〜A4)
○(250枚・普通紙B5〜A4)
○(250枚・L判〜A4)
○(250枚・L判〜A4)
○(250枚・普通紙A4/レター/リーガル))
その他
自動両面印刷
○(普通紙のみ)
○(普通紙のみ)
○(普通紙のみ)
用紙種類・サイズ登録
○(カセット収納連動)
○(カセット収納連動)
○(カセット収納連動)
○(カセット収納連動)
排紙トレイ自動開閉
自動電源オン/オフ
−/−
−/○
−/○
○(時刻指定)/○(時刻指定)
特殊機能
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
○(オートフォトファイン!EX)
○(オートフォトファイン!EX)
○(オートフォトファイン!EX)
特定インク切れ時印刷
○(黒だけでモード・5日間のみ)
○(黒だけでモード・5日間のみ)
○(黒だけでモード・5日間のみ)
印刷速度
L判縁なし写真(メーカー公称)
14秒
41秒
41秒
N/A
A4普通紙カラー(ISO基準)
N/A
10.0ipm
10.0ipm
15.0ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準)
N/A
19.0ipm
19.0ipm
23.0ipm
スキャナ部
読み取り解像度
4800dpi
1200dpi
1200dpi
1200dpi
センサータイプ
CIS
CIS
CIS
CIS
ADF
○(両面/30枚)
○(両面/35枚)
○(両面/35枚)
○(同時両面/50枚)
スキャンデーターのメモリカード保存
○(JPEG/PDF)
○(JPEG/PDF/TIFF)
○(JPEG/PDF/TIFF)
○(JPEG/PDF・USBメモリのみ)
ダイレクト
印刷部
カードスロット
対応メモリカード
SD/MS Duo/CF
SD/MS Duo
SD/MS Duo
PCからドライブとして利用
外付けHDD/外付けDVD/USBメモリへ保存
○(外部機器共有対応)/○/○
N/A(外部機器共有対応)/−/N/A
N/A(外部機器共有対応)/−/N/A
−/−/−
外付けHDD/外付けDVD/USBメモリから印刷
○/○/○
○/−/○
○/−/○
−/−/○
手書き合成シート
PictBridge対応
○(USB/Wi-Fi)
赤外線通信
各種デザイン用紙印刷
塗り絵印刷
フォーム印刷フォーム印刷(罫線・マス目・便箋・スケジュール帳・五線譜・メッセージカード・折り紙封筒)
ネットワーク
印刷
スマートフォン連携
対応端末
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 5.0以降)
Android 2.3.3以降
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 5.0以降)
Android 2.3.3以降
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 5.0以降)
Android 2.3.3以降
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 6.1以降)
Android 2.3.3以降
写真プリント
ドキュメントプリント
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
スキャン
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
クラウド連携
スマートフォン経由/本体
○/−
○/−
○/−
○/○
オンラインストレージからの印刷
SNSからの印刷
○(コメント付き可)
写真共有サイトからの印刷
メールしてプリント
リモートプリント
スキャンしてリモートプリント
コピー部
倍率指定/自動変倍/オートフィット
○(25〜400%)/○/○
○(25〜400%)/○/○
○(25〜400%)/○/○
○(25〜400%)/○/○
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー
○(退色復元対応)
2アップ/4アップ
○/−
○/○
○/○
○/○
バラエティコピー
塗り絵印刷
BOOKコピー
ミラーコピー
領域判定コピー
IDコピー
影消しコピー
パンチ穴消しコピー
IDコピー
影消しコピー
パンチ穴消しコピー
ページ順コピー
枠消しコピー
FAX部
受信ファックス最大保存ページ数
180枚/30件
180枚
180枚
250枚/30件
データ保持(電源オフ/停電)
○/○
○/○
○/○
○/−
ワンタッチ/短縮ダイヤル
−/60件
−/100件
−/100件
−/100件
グループダイヤル/順次同報送信
59宛先/30宛先
99宛先/100宛先
99宛先/100宛先
99宛先/101宛先
自動リダイヤル
PCファクス
送受信
送受信
送受信
送信のみ
液晶ディスプレイ
4.3型(角度調整可)
3.5型
2.7型
3.0型
操作パネル
タッチパネル液晶(角度調整可)
タッチパネル液晶+ボタン式
タッチパネル液晶+ボタン式
タッチパネル液晶+ボタン式
インターフェイス
USB他
USB2.0×1
USB2.0×1
USB2.0×1
USB2.0×1
無線LAN
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(アクセスポイントモード対応)
有線LAN
100BASE-TX
100BASE-TX
100BASE-TX
100BASE-TX
外形寸法(横×奥×高)
390×339×191mm
449×427×306mm
449×417×243mm
463×394×351mm
重量
8.3kg
11.6kg
9.8kg
13.1kg
 

 プリント機能を見てみよう。唯一家庭向けのEP-907Fはブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色にライトシアンとライトマゼンダを加えた6色インク構成で、最小インクドロップサイズも1.5plと非常に小さく、解像度が5760×1440dpiである事から、非常に高画質な印刷が可能だ。また、インクは染料インクを採用しているため、写真用紙などに印刷した際に用紙の光沢感がそのまま出るほか、発色も良いなど写真印刷に向いている。また、顔料インクに非対応の用紙も一部存在するが、染料インクのEP-907Fなら幅広い用紙が対応が可能だ。一方で、普通紙に印刷した際は少し滲んだようになるため、文字が太くなったり、中抜き文字が潰れそうになってしまうため、やや画質は落ちる。PX-M741FとPX-M740Fはビジネスモデルという事で、4色構成の顔料インクを採用する。最小インクドロップサイズが2.8plと大きく、ライトインクもないため、写真印刷などでは粒状感があり、EP-907Fより劣る画質となる。それでも写真印刷が全く行えないほどではないが、やはり、少しザラザラとした印象を受けるだろう。また、顔料インクであるため、写真用紙に印刷した際に、表面の光沢感が薄れポストカードのようになってしまうほか、発色も悪いという問題もある。一方、普通紙印刷ではメリハリのある印刷が行えるほか、耐水性もあることから、濡れたりマーカーを引いても滲まないというメリットもある。また、普通紙への印刷解像度を360dpiから600dpiへアップした新しいプリントヘッドを採用しており、より普通紙印刷の画質は高くなっている。普通紙印刷に特化していると言え、文書印刷や受信したFAXの印刷に力を発揮する。残るMAXIFY MB5330だが、こちらもビジネス向けと言うことで4色構成の顔料インクとなっている。PIXUSシリーズでも黒の顔料インクを採用しているが、こちらはMAXIFY用新顔料インクと言うことで、黒濃度が高くマーカーを引いた時もにじみにくく摩擦にも強いという。もちろん普通紙への印刷画質が高いため、文書印刷や受信したFAXの印刷に適している。ただし画質面ではPX-M741F/PX-M740Fより劣る可能性がある。最小インクドロップサイズに関しては非公開だが、印刷解像度が600×1200dpiと非常に低いため、最小インクドロップサイズも大きめである可能性は高い。確かに普通紙印刷ならば多少大きめでも、顔料インクであれば綺麗に見えるため問題ないとも言えるが、グラフや表の背景などのべた塗りの色や、写真部分に関しては粒状感が強く出る可能性がある。また、写真印刷は最小インクドロップサイズが大きいと予想される上に4色インクで、しかも顔料インクであることから苦手と言える。
 使用できる用紙はいずれもL判からA4までとなる。ただし、MAXIFY MB5330はフチなし印刷を行う事ができない点は注意が必要だ。給紙に関しては、4機種とも前面カセットを基本としている。EP-907Fは大小の2段カセットとなっており、下段はA4サイズまで、上段は2L・ハイビジョンサイズまでとなる。2種類の用紙がセットできるため、使用時に用紙の入れ替えなく使い分けができ便利だ。下段にA4用紙が100枚までセットでき、家庭用としては十分だろう。また上段にハガキや写真用紙は20枚までセットが可能だが、大量印刷する場合は下段にもセットする事で、合計60枚までセットできる。また、前面給紙・前面排紙と言うことで内部で大きく曲げられてしまう事から、厚紙やラベル用紙、封筒のような二重になった紙などは少し心配だ(メーカーとしては問題ない事になっている)。カセット方式は定型サイズでない用紙も、ガイドをあわせにくい。そこで、EP-907Fでは背面手差し給紙を備えている。従来の背面給紙に近い位置だが、用紙をセットしておけるような大型のものではなく、小さな背面給紙カバーと、用紙を支える小さな「用紙サポート」を引き出せるだけだ。1枚ずつしかセットできないが、背面給紙・前面排紙が行えるほか、通常の給紙カセットで対応する0.3mm厚の用紙の倍の0.6mmの用紙に印刷ができる。今まで印刷できなかった厚紙にも印刷できる他、1枚だけ前面給紙カセットにセットしたのとは異なる用紙を使用する場合にもわざわざ入れ替える必要が無く便利だ。
 PX-M740Fは前面給紙カセットは1段となる。代わりに普通紙なら250枚までセットできるという大型のもので、大量の文書印刷やFAX受信にも対応できる。また厚紙には非対応ながら背面手差し給紙も備えており、1枚だけ異なる用紙をしたい場合や封筒印刷などに便利だろう。ちなみに前面給紙カセットにハガキは最大50枚、写真用紙は最大20枚までセットできる。そしてPX-M741Fでは給紙カセットが2段となっている。EP-907Fの様な大小2段ではなく、A4まで入るカセットが2段となっている。それぞれ250枚セット可能なので最大で500枚までセットができることとなる。下段は普通紙のみでB5〜A4サイズという制限があるが、両方にA4を入れて大量印刷をしても良いし、B5とA4という風に使い分けもできる。
 MAXIFY MB5330もPX-M741Fと同じく2段カセットとなっている。もちろんどちらのカセットにもA4までの用紙をセット可能で、A4普通紙なら1段に250枚という点もPX-M741Fと同じだ。下段カセットは普通紙のみでA4、レター、リーガルサイズのみの対応だが、A4+A4やA4+B5という様に組み合わせて利用ができる。背面手差し給紙は無いが、大量印刷に対応できる。注意点として、前面給紙カセットは本体に収まっているように見えるが、実際にはこの状態では、たとえ小さな用紙であってもセットでする事はできない。使用時にはカセットを伸ばして使う事になるため、本体にセットしても飛び出てしまう。使用時には排紙トレイを引き出すため、スペース的には問題ないと言えるが、未使用時にも用紙をセットしたままだと飛び出してしまい不便とも言える。
 印刷速度を見てみよう。EP-907Fの場合、最小インクドロップサイズは非常に小さいがAdvanced-MSDTという5つのインクサイズのインクを打ち分ける機能を搭載しており、必要に応じて大きなインクサイズを打ち分ける事で高速化と高画質化を両立しており、ノズル数もエプソンとしては多めであることから、L判フチなし写真印刷が14秒と非常に高速印刷が可能である。一方PX-M741F/PX-M740Fはノズル数は多いものの、Advvanced-MSDTより劣る3つのサイズのインクを打ち分けるMSDTとなっているためL判フチなし写真印刷は41秒と遅めだ。EP-907Fよりノズル数が多いにもかかわらずここまで遅いのは、顔料インクであるためと思われる。MAXIFY MB5330はフチなし印刷が行えず、そもそも写真印刷がターゲットで無いことから、印刷速度は公表されていない。一方文書の印刷速度はEP-907Fは公表されていないが、PX-M741F/PX-M740FはA4カラー文章が10.0ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、モノクロが19ipmとなっており、インクジェットプリンタとしては非常に高速だ。そしてMAXIFY MB5330はカラー15ipm、モノクロ23ipmとさらに高速だ。もともと文書印刷に特化した設計の上に、1枚目の印字中に2枚目を重ねて搬送させる「重ね連送」を行っており、高速化を図っている。差はあるが、3機種とも非常に高速に印刷できるのは確かだ。
 ちなみに使用するインクはEP-907Fは「つよインク200」である。アルバム保存300年、耐光性50年、耐オゾン性10年となる。PX-M741F/PX-<740FAは「つよインク200X」であり、アルバム保存300年、耐光性45年、耐オゾン性30年と、EP-907Fに劣らない耐保存性である。 3機種とも十分なレベルの耐保存性を持ったインクである。また、PX-M741F/PX-M740FAは画質や速度面で写真印刷は苦手だが、耐保存性の面では写真印刷も問題ないことが分かる。MAXIFY MB5330は「MAXIFY用新顔料インク」となっており、耐保存性は不明だが、顔料インクと言うこともありビジネス用とでは問題ないレベルになっているものと思われる。
 自動両面印刷機能は4機種とも搭載している。ただしEP-907Fを除く3機種は普通紙のみの対応である点は注意が必要だ。ハガキの両面印刷を行いたい場合はEP-907Fしか対応していない。また、CD/DVDレーベル印刷機能もEP-907Fのみの搭載となる。写真の補正機能はEP-907F/PX-M741F/PX-M740Fの3機種が搭載している。「オートフォトファイン!EX」という機能で、逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われる。パソコンからの印刷時だけでなく、後述のダイレクト印刷時にも利用できる。
 4機種とも用紙種類とサイズの登録機能を搭載している。いずれも前面給紙カセットを挿し込むと自動的に登録画面が表示されるため便利だ(されないようにもできる)。そして、この登録内容と、印刷時の用紙設定が異なっている場合、メッセージが表示される仕組みだ。また、液晶ディスプレイでメニューから手動で登録も可能である。EP-907F/PX-M741F/PX-M740Fは、印刷時に実際の用紙幅をセンサーでチェックする機能もあり、できる限り印刷ミスによる用紙とインクの無駄遣いをなくす工夫がなされている。
 最近の機種では搭載機種が増えた印刷が実行されると自動的に電源がオンになる機能と、ほぼ必須になりつつある、指定した時間操作がないと自動で電源がオフになる機能だが、FAX付きモデルでは状況が異なる。常時電源を入れておかなければFAX受信が行えないためである。EP-907Fはオン・オフのいずれも搭載していない。ベースとなったEP-807Aが搭載しているため、こちらも搭載していると思われがちだが注意が必要だ。PX-M741F/PX-M740Fは自動電源オフのみ搭載している。一定時間操作がないと自動的に電源がオフになると言う機能だ。そしてMAXIFY MB5330は自動電源オン・オフというよりは、時間指定による電源オン・オフが設定できる。オフィスの就業時間や、商店の営業時間などに合わせて決まった時間に電源を入れ、決まった時間に電源が切れるというものである。ある意味オフィス向けという機種では、この機能は便利な場合もあるだろう。なお、EP-907Fのみ排紙トレイの自動開閉機能を搭載しており、印刷が実行されると、操作パネルが少し持ち上がり、排紙トレイが電動で出てくる。電源を切ると排紙トレイが収納されれ、操作パネルも収納される。

 続いて、スキャナ部を見てみよう。解像度はEP-907Fが4800dpiと群を抜いており、PX-M741F/PX-M740FとMAXIFY MB5330が1200dpiとなる。いずれもCIS方式で、厚い本の綴じ目近くなど、ガラス面から浮いてしまう原稿ではピントが合わなくなってしまう点は同様だ。解像度に大きな差があるように思えるが、反射原稿(紙などの原稿)にしか対応しないため、1200dpiでも十分すぎる解像度と言える。実際、写真サイズを4800dpiで取り込むと、約16,800×24,000ドットとなり4億画素相当となってしまう。1200dpiでも4,200×6,000ドットとなり2500万画素相当となる事から、十分な性能と言える。また、全機種がスキャンした原稿をパソコンを使わずにメモリカードに保存する機能を搭載しているためパソコン無しで簡単にスキャンができる(MAXIFY MB5330はUSBメモリのみ)。JPEG又はPDF形式だが、PX-M741F/PX-M740FのみTIFF形式での保存にも対応している。そしてFAX付きモデルと言うことで全機種にADFを搭載している。家庭向けのEP-907Fで30枚、PX-M741F/PX-M740Fで35枚、最大のMAXIFY MB5330では50枚までの原稿が連続でスキャンできる。コピーやFAX送信時に便利だろう。しかも全機種が両面読み取りに対応しており、両面原稿でも安心だ。しかし、ここで機能の違いがある。EP-907F/PX-M741F/PX-M740Fは片面にしかCISセンサーが無いため、片面を読み込んだ後もう一度原稿を給紙し、もう片面を読み取る。一方MAXIFY MB5330は両面にCISセンサーを搭載し、一度原稿を通すだけで両面が読み取れている。両面読み取りのスピードは圧倒的に有利と言える。

 ダイレクト印刷機能は4機種とも対応しているものの、メモリカードスロットはEP-907F、PX-M741F、PX-M740Fの3機種のみ搭載している。EP-907FはSDカード、メモリースティックDuoに加え、コンパクトフラッシュにも対応している。RAWデータの印刷には対応しないものの、多種多様なメモリカードに対応している。PX-M741FとPX-M740FもSDカードとメモリースティックDuoに対応しており、十分と言える。また3機種ともUSBメモリにも対応しており、それらからの写真印刷も可能だ。さらにEP-907Fはメモリカード内の写真をUSBメモリにバックアップする機能も備えるなど、単体で様々な操作ができる。また3機種ともUSBメモリだけでなく外付けHDDにも対応しており、接続したドライブをネットワークドライブとして複数のパソコンからアクセスできる「外部機器共有」機能も搭載しており、単体で写真を外付けハードディスクにバックアップし、それらを含めた様々なファイルを複数のパソコンで共有できるというわけである。一方、MAXIFY MB5330はUSBメモリのみの対応で、そもそもフチなし印刷ができない事から、スキャンしてUSBメモリに画像形式で保存したものの印刷といった用途が考えられる。関連の機能としてEP-907Fは手書き合成に対応しており、写真と手書きしたものを合成できる、また、PictBridgeや赤外線通信にも対応し、様々な機器からの写真印刷が可能だ。その他、写真を塗り絵風の輪郭だけにして印刷する機能や、罫線、マス目、便箋、スケジュール帳、五線譜、メッセージカード、折り紙封筒が印刷できる「フォーム印刷」機能を搭載している。4機種中、唯一家庭向けと言うこともあり、ダイレクト印刷機能はEP-907Fが圧倒的に豊富だ。

 スマートフォンとの連携機能も4機種とも搭載しており、iPhoneやiPod touch、iPadと、Android端末に対応している。いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることでプリント又はスキャンが行える。写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定(MAXIFY MB5330を除く)まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。さらにドキュメント印刷にも対応している。PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もできる便利だ。また、4機種ともスマートフォン上からスキャンを実行し、データをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。出かける前に紙の情報をさっとスマートフォンに転送するといった使い方ができるため便利だろう。さらに、クラウドとの連携機能も搭載されており、オンラインストレージから印刷する事が可能だ。ここで大きな違いは、エプソンの3機種はスマートフォンのアプリとして搭載しているのに対して、MAXIFY MB5330はスマートフォン上だけでなく本体でもクラウドにアクセスし印刷ができる点が上げられる。実際の操作性はスマートフォンからの方が上だが、選択肢が広いという点でMAXIFY MB5330は有利だ。クラウドからのプリント機能をよく使うという場合は、MAXIFY MB5330が便利だろう。
 さらにネットワークを利用したプリント機能として、エプソンの3機種は、印刷したい写真や文書をプリンタにメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、スキャンした画像を離れた場所の対応複合機で印刷できる「メールdeリモート印刷」、通常のプリント同じ操作で、離れた場所の対応プリンタで印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。一方のMAXIFY MB5330も、プリンタにメールすると自動で印刷できる「メールからプリント」機能のみ搭載しているが、エプソンの3機種がWord/Excel/PowerPoint/PDFの他、JPEG/GIF/PNG/TIFF/BMPの画像形式に対応しているのに対して、MAXIFY MB5330はPDFとJPEGだけの対応というのも少し寂しい。リモートプリント機能はエプソンの3機種がリードしているといえる。

 コピー機能を見てみよう。単純なコピー機能としては、4機種とも単純な等倍コピーだけでなく、拡大縮小コピーが可能だ。原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行う「オートフィット」機能や、25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える機能、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「自動変倍」機能も備えるなど、高性能な物だ。またCD/DVD/Blu-rayレーベル印刷に対応したEP-907Fはレーベルコピーにも対応である。またEP-907Fは原稿面に写真を複数枚置き焼き増し風のコピーを行うことも出来る。この際「退色復元」という、色あせした写真も自動で補正してくれる機能も備えている。また4機種とも2枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2アップにも対応する。さらにEP-907Fを除く3機種は4枚の原稿を1枚に縮小する4アップにも対応している。その他、EP-907Fはコピー時にも「塗り絵印刷」が行える他、見開きの本を左右ページで別々にコピーする「BOOKコピー」、アイロンプリント紙への印刷時に使える「ミラーコピー」、文字領域と画像領域を認識し、それぞれが見やすくなるよう別々の画像処理を行う「領域判定コピー」といった機能を備えるなど機能も豊富だ。一方PX-M741FとPX-M740Fは免許証やIDカードのような小さな原稿の裏と表を、1枚の紙に並べてコピーできる「IDコピー」機能、原稿の外の部分にできる影を消してくれる「影消しコピー」機能、「パンチ穴消しコピー」機能を備えるなど、ビジネス向けの機能が豊富だ。MAXIFY MB5330はADFを使って複数枚の原稿を複数部コピーするときに、1部ずつにまとめてコピーしてくれる「ページ順コピー」と、厚手の原稿で原稿の外の部分や、綴じ目の部分が黒くなってしまうのを軽減する「枠消しコピー」機能を備えるなど、こちらもビジネス向け機能が豊富だ。それぞれ機種にあったコピー機能を備えていると言える。

 それでは肝心のFAX機能を見てみよう。4機種ともスーパーG3に対応しており、モノクロ、カラーFAXを行う事が出来る。4機種ともADFを搭載しているため、複数枚の原稿の送信も便利である。前述のように4機種とも両面スキャン対応のADFであるため、両面原稿のFAX送信も手軽に行えより便利だろう。33.6Kbpsで通信可能であり、その場合の伝送速度はモノクロで約3秒というのも共通だ。また読取走査線密度はモノクロで「8pels/mm×3.85line/mm又は8pels/mm×7.7line/mm、カラーで200×200dpiなのも共通である。さらに、PX-M741F/PX-M740Fは8pels/mm×15.4line/mmの高詳細モードと、16pels/mm×15.4line/mmの超高詳細モードを、MAXIFY MB5330はモノクロ時に300×300dpiのファインEXモードを備えているが、大きな差ではないだろう。ダイヤル機能でも4機種とも短縮ダイヤルに対応しており、EP-906Fは60件、それ以外の3機種は100件登録できるため十分だ。受信したファクスの最大保存ページ数はEP-906Fが180枚又は30件、PX-M741F/PX-M740Fは180枚、MAXIFY MB5330が250枚又は30件と家庭で使う分には十分なメモリ量を備えている。また4機種とも電源を切っても、メモリに保存された受信FAXの内容は記憶しているので安心だ。ただし、停電時やコンセントが抜けた場合でも受信した内容が保持されるのはEP-907FとPX-M741F/PX-M740Fだけである。MAXIFY MB5330ではデーターは破棄されてしまう。夜にはブレーカーを落とすという場合や、使わないときにどこかにしまっておくという人は注意が必要だ。4機種ともグループダイヤル、順次同報送信、手動送信、自動リダイヤル機能を備えているため、一般的な家庭用FAX電話以上の事が可能だ。また、「PCファクス」機能も4機種とも備えている。ただし、パソコン内のデータを直接FAXできる「送信」機能は4機種とも備えている物の、受信したFAXをパソコン上に保存できる「受信」機能はエプソンの3機種のみ対応である。

 操作パネルは4機種ともタッチパネル液晶を採用している。液晶サイズもEP-907Fが4.3型、PX-M741Fが3.5型、PX-M740Fが2.7型、MAXIFY MB5330が3.0型と差はあるが、いずれも見やすいサイズとなっている。EP-907Fは、ベースとなるEP-807Aと同じ操作パネルで、電源ボタン以外に物理ボタンはなく、スタートボタンなども含め全てタッチパネル式の液晶内に表示される。その分液晶は4機種中最大サイズとなっている。モードボタンや設定項目など、ずばりその場所を押せるため分かりやすく、また使わないボタンが表示されることも無いため、分かりやすい。FAX用のテンキーも液晶内に表示されるため、ボタン数が増えるということもなく、FAX無し複合機と同じ操作パネルとなっている。また全てが液晶内に表示され、液晶にはバックライトが入っているため、薄暗い場所でもキーが分かりやすいというメリットがある。また、液晶ディスプレイと操作パネルは本体前面に取り付けられ、液晶ディスプレイだけでなく操作パネル全体を持ち上げて角度調整が可能だ。最大90度まで起こすことができるので、垂直から水平まで見やすい角度で操作ができるよう工夫されている。PX-M741FとPX-M740Fの操作パネルは基本的には同じである。EP-907Fと同様にタッチパネル液晶を採用することにより、直感的にモード切替や設定が行えるほか、カーソルキーや枚数の「+」「−」ボタンをなくすことができ、ボタン数が減り分かりやすい。ただしEP-907Fと異なる点は、電話番号や文字入力に使用するテンキーに関しては液晶ディスプレイ内に表示するのではなく、独立したボタンとなっている事である。家庭向け複合機にFAX機能をおまけ的に付けたEP-907Fとは異なり、FAX機能もメインとして使用されるビジネス向けの機種であるため、あえてテンキーは独立し、見栄えよりも押しやすさを優先して物理ボタンになったと思われる。操作パネルと液晶ディスプレイは本体前面に斜めに取り付けられている。斜めになっているためどの方向からでも使いやすいが、残念ながら角度調整は出来ない。ビジネスモデルという事で堅牢性を重視したという事だが、その分使い勝手はやや劣る。MAXIFY MB5330はその中間と言える。基本的にはタッチパネル式液晶でボタン数を減らしつつ操作性を向上させている。またテンキーも液晶内に表示されるという点ではEP-907Fと同じだ。ただし、使用頻度が高い「スタート」「ストップ」「ホーム」「戻る」のボタンに関しては物理的なボタンを用意している。液晶ディスプレイと操作パネルは本体前面から上面にかけて大きく面取りされた部分に埋め込まれており角度調整はできない。斜めを向いているためPX-M741F/PX-M740F同様どの方向からでも見やすいが、EP-907Fよりは劣る。操作性はEP-907Fが一歩リードと言ったところだが、FAX機能をよく使うなら物理テンキーのあるPX-M741F/PX-M740Fも良いだろう。

 インタフェースは4機種ともUSB2.0に加えて、有線LANと無線LANに対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人には有線・無線LANによりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。またネットワーク接続をすればスマートフォンやタブレットからの印刷も可能となる。またWi-Fiダイレクト(MAXIFY MG5330はアクセスポイントモード)に対応しているため、無線LANルータの無い環境でも、スマートフォンやタブレットと直接Wi-Fi接続が可能となっている点も共通の便利な点だ。

 本体サイズを見てみよう。EP-907Fは家庭用プリンタと言うこともあり、390×339×191mmで、複合機でしかもADFまで搭載しているとは思えないほどコンパクトだ。特に高さ191mmはADFの最も高くなっている部分であるため、実際にはもっと低く見える。設置面積だけで考えるなら、EP-907Fがベストだ。PX-M740Fは449×417×243mmと全体的にEP-907Fよりは大きめだが、一昔前の複合機と比べると同じかやや小さいため、それほど大きいとは言えない。トレイが2段のPX-M741Fは449×427×306mmとトレイの分だけ高さが大きくなっており、さすがに大きいという印象だ。設置面積は以外と大きくはないのだが、高さがある分存在感がある。そしてMAXIFY MB5330は463×394×351mmと同じ2段トレイのPX-M741Fと比べてもかなり大きい。しかも唯一小さく見える奥行きも、この状態は用紙カセットを最もコンパクトにした状態で用紙をセットする事ができない。A4用紙をセットした状態で置いておくとすると、奥行きは459mmになってしまう。サイズ面ではMAXIFY MB5330はかなり不利と言える。

 4機種の内、まずFAXや文書印刷がメインではなく、写真やレーベル印刷など様々な用途に使いたいならEP-907Fで決まりである。唯一染料インクで画質も速度も高く、様々な不可機能も付いている。それでいてFAX機能などにも抜かりはない。給紙枚数が他の機種より少ないが、そこまで大量にFAX受信をするのでなければ問題ないはずだ。価格が最も高いが、それを差し引いても機能を考えればおすすめと言える。逆に写真印刷などはしないのでFAXと文書印刷がメインなら他の3機種になる。高速印刷や両面同時スキャンに魅力を感じるならMAXIFY MB5330だが、反面フチなし印刷ができない、メモリカードスロットが無い、本体が大きいなど他機種より劣る部分もあるため、クセの強い製品と言える。印刷速度は確かに高速だが、他機種も十分高速とも言える。よほどMAXIFY MB5330の機能に魅力を感じなければ、おすすめはしにくい。あとはPX-M741FとPX-M740Fである。顔料インクであるためFAXや文書印刷は綺麗で、一方フチなし印刷も可能でメモリカードスロットもあるため、画質は劣るが写真印刷も行える。その他の機能も豊富で操作性も悪くはない。給紙カセット1段のPX-M740Fなら価格も安く、サイズも小さいため、特におすすめだ。どうしても給紙カセットが2段必要ならPX-M741Fでも良い。以上から、特別気に入った機能がない限りは、幅広い用途で使うならEP-907F、FAXと文書印刷メインで使うならPX-M740Fがおすすめと言える。
 

(H.Intel)


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キャノンhttp://canon.jp/


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