2015年末時点のプリンタ 〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜 (2015年11月18日公開)
エプソンのEP-10VA、EP-978A3、EP-808A、キャノンのPIXUS MG7730が3万円台以上の価格帯の製品となる。家庭向け複合機の中では最上位モデルとなるEP-10VAは45,980円、EP-808AをA3対応にしたEP-978A3は35,980円、EP-808Aは30,980円、PIXUS MG7730は289,800円となる。本来はEP-808AとPIXUS MG7730が同価格帯の製品で直接の比較対象となる。しかし、キャノンはA3複合機をラインナップしておらず、EP-10VAやEP-978A3と直接比較できる製品が無いため、3万円以上という事で、EP-808AやPIXUS MG7730と共に比較する。EP-808AとPIXUS MG7730を直接比較しつつ、プラスで金額を出してまでEP-10VAやEP-978A3を選ぶ価値があるかを見てみよう。 |
シアン マゼンタ イエロー レッド グレー |
シアン マゼンタ イエロー ライトシアン ライトマゼンタ |
シアン マゼンタ イエロー ライトシアン ライトマゼンタ |
染料ブラック グレー シアン マゼンタ イエロー |
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(つよインク200) (Epson ClearChrome K2) |
(つよインク200) |
(つよインク200) |
(ChromaLife100) |
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Y/染料BK:各512ノズル 顔料BK:1024ノズル |
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(A4普通紙セット可能枚数) |
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○(2L・ハイビジョン以下) |
○(2L・ハイビジョン以下) |
○(2L・ハイビジョン以下) |
○(L/KG/2L/はがき) |
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印刷部 |
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フォーム印刷(罫線・マス目・便箋・写真付きスケジュール帳・スケジュール帳・五線譜・メッセージカード・折り紙封筒) |
フォーム印刷(罫線・マス目・便箋・写真付きスケジュール帳・スケジュール帳・五線譜・メッセージカード・折り紙封筒) |
フォーム印刷(罫線・マス目・便箋・スケジュール帳・五線譜・メッセージカード・折り紙封筒) |
定型フォーム印刷(原稿用紙・方眼紙・五線譜・レポート用紙・スケジュール帳・チェックリスト・漢字練習帳) |
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印刷 |
iPod touch iPad (iOS 7.0以降) Android 4.0以降 (NFC対応) |
iPod touch iPad (iOS 7.0以降) Android 4.0以降 (NFC対応) |
iPod touch iPad (iOS 7.0以降) Android 4.0以降 (NFC対応) |
iPod touch iPad (iOS 7.0以降) Android 2.3.3以降 (NFC対応) |
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(Wi-Fiダイレクト対応) |
(Wi-Fiダイレクト対応) |
(Wi-Fiダイレクト対応) |
(ダイレクト接続対応) |
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EP-978A3とEP-808Aのプリント機能は基本的には同じだ。6色インクで最小インクドロップサイズは1.5plであり、非常に高画質な印刷が可能だ。一方のPIXUS MG7730も6色インクで最小インクドロップサイズは1plと、こちらも非常に高画質だ。しかし、同じ6色でもその構成は異なる。EP-978A3とEP-808Aはブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色に加えてライトシアンとライトマゼンダを採用しており昔ながらの6色構成だ。いずれも染料インクとなる。カラー原稿の色の薄い部分ではライトインクを使う事で粒状感が抑えられる。一方、PIXUS MG7730はブラック、シアン、マゼンダ、イエローに加えてグレーインクが搭載され、ベースにグレーインクを使う事で色の濃い部分での粒状感が抑えられる。また、モノクロに近い原稿での階調表現が優れており、中間色が赤や青っぽいグレーになりにくいという特徴がある。さらに、染料ブラックに加えて顔料ブラックを搭載しているため、ブラックインクを使用する部分に限ってだが、普通紙などへの印刷ではメリハリのある印刷結果が得られる。小さな文字や中抜き文字も潰れずに印刷が可能なほか、耐水性も高いため濡れた手で触ったりマーカーを引いても滲まない。このインク構成を見る限りでは、写真に関してはどちらもそれぞれ工夫があり、また最小インクドロップサイズも非常に小さいことから、最高画質に達しており、ほぼ互角と言える。EP-978A3とEP-808Aは6色全てを使用でき、カラーのライトインクを使用するところを、PIXUS MG7730は5色で表現し、グレーインクをベースにする分、色の鮮やかさではEP-978A3やEP-808Aが若干上と言える。しかしPIXUS MG7730ではインクを改良し鮮やかさを高めたため、実際に高い次元でのわずかな差であり、実際に比べてみれば差はほとんど無いはずだ。一方コピーや文書印刷と言った部分では、顔料インクを搭載するPIXUS MG7730に軍配が上がると言える。しかし黒と言っても、完全な黒ではないグレーの部分には染料のグレーやカラーインクを使用するし、カラーの中に混ざっている場合は顔料と染料を混ぜられないことから、染料インクが使われるなど、背景が無く完全な黒という限定があるなど、必ずしも顔料インクの恩恵を受けられるわけではない点は注意が必要だ。一方EP-978A3とEP-808Aも、文字くっきりモードを搭載し、ドライバレベルで文書印刷画質を高めている。パソコンからの印刷に限定され、染料インクのままでの改良となるが、画質は改善され、PIXUS MG7730との差はある程度縮まっている。 さて、ここまで話に出さなかったEP-10VAであるが、この機種はこれまでの機種とは画質が大きく改良されている。EP-978A3と同じ本体(背面給紙の違いはあるが)を使用するため、インクは6色だが、その構成が大きく異なりブラック、シアン、マゼンダ、イエローに加えてレッドとグレーインクを採用する。ライトインクがない分EP-978A3やEP-808Aより悪くなる部分もありそうだが、そこは 理論的色変換システム「LCCS」が力を発揮する。プロセレクションの製品に採用されてきたこの機能を家庭向けに初めて搭載している。「LCCS」は写真をプリントする際のインク配分を論理的に算出する色生成技術で、階調性・色再現域・粒状性などの点からベストになるように複雑に計算されて打つインクが決定されるというものだ。さらに、光源によって色合いが異なる光源依存性も最適になる様に計算されるなど、かなり高度なものだ。インクも染料インクながら「Epson ClearChrome K2インク」となっており、さらに紙送りの精度も高めることで、基本4色だけでも高画質に印刷ができるという。そこにレッドインクにより赤系統の表現力を高め、赤い物だけで無く夕日や肌の色などでも違いが分かるという。さらにグレーインクによりモノクロ写真でも青や赤っぽいグレーにならないようになっている。最小インクドロップサイズは1.5plとEP-978A3やEP-808Aと同等ながら、色の再現力だけで無く写真を飾ったときの事まで考えられているなど、プロセレクションの機能を旨く取り込んで画質は一段上となっている。普通紙の印刷画質は染料インクなのでEP-978A3やEP-808Aと同等だが、写真印刷に限っては他の3機種を上回る。 最小インクドロップサイズは非常に小さいが、EP-10VAとEP-978A3、EP-808AはAdvanced-MSDTという5つのインクサイズのインクを打ち分ける機能を搭載しており、必要に応じて大きなインクサイズを打ち分ける事で高速化と高画質化を両立しており、PIXUS MG7730はノズル数を非常に多くすることで、最小インクドロップサイズは小さくても高速化を実現している。結果、L判縁なし写真印刷で、EP-978A3とEP-808Aが13秒、PIXUS MG7730が18秒と非常に高速になっており、枚数の多い印刷でもストレスのない速度となっている。一方、EP-10VAは33秒と遅くなっているが、LCCSなど複雑な処理も行われ画質重視の設計であるため、速度より画質を取ったという形だろう。一方、普通紙への印刷速度はPX-10VAとEP-978A3、EP-808Aでは公表されていないため、比較することはできないが、PIXUS MG7730ではカラーが10ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、モノクロが15ipmとなっている。1分間にカラー原稿が10枚というのは非常に高速だと言えるだろう。 使用するインクはPX-10VAとEP-978A3、EP-808Aは「つよインク200」である。アルバム保存300年、耐光性50年、耐オゾン性10年となる。一方、PIXUS MG7730は「ChromaLife100」でありアルバム保存100年を実現している。どちらも十分なレベルの耐保存性を持ったインクであるが、エプソンの3機種の方がさらに耐保存性は高く、耐光性なども書かれているなど一歩上回る印象だ。ちなみに、4機種とも各色独立インクとなっており、なくなった色だけ交換できる。 給紙に関しては、4機種とも前面給紙カセットが基本となる。いずれも2段カセットとなっており、上段にL判やハガキなどの小さな用紙を、下段にはA4やB5といった大きな用紙をセットするようになっている。完全に本体に収納可能なので、用紙をセットしたままにしてもホコリがかかるなどの心配がない。EP-10VAとEP-978A3、EP-808Aの場合、下段にA4普通紙が100枚、上段に写真用紙やハガキなら20枚までセット可能だ。一方PIXUS MG7730は下段にA4普通紙なら125枚、上段に写真用紙やハガキなら40枚までセット可能だ。セット可能枚数はPIXUS MG7730の方が上となる。しかし、PIXUS MG7730の下段はA4、A5、B5、レター、リーガルサイズのみの対応で、L判、KG、2L判、ハガキサイズに対応する上段と使用できるサイズが完全に分けられている。一方PX-10VAとEP-978A3、EP-808Aは下段にもL判やハガキサイズにの用紙もセットできる。その場合、ハガキなら40枚セット可能となるため、上下段ともにハガキを入れれば合計で60枚までセットでき、もちろん連続で使用が可能となる。下段の用紙を入れ替える手間なくある程度の大量給紙ができるPIXUS MG7730と、入れ替えの手間をかければより大量給紙ができるエプソンの3機種である。ちなみにいずれも最小用紙サイズはL判で名刺などのより小さな用紙には対応していない。前面給紙・前面排紙と言うことで気になるのが、厚紙やラベル用紙などである。メーカーとしては問題ない事になっているが、前面から給紙して前面から排紙するため、内部で大きく曲げられてしまうのは少し心配だ。また封筒など二重になっている用紙への印刷も不安なほか、定型サイズでない場合前面給紙カセットのガイドをあわせにくい。そこで、EP-10VAとEP-978A3、EP-808Aは簡易的ながら背面給紙も行える。EP-978A3とEP-808Aは従来の背面給紙に近い位置だが、用紙をセットしておけるような大型のものではなく、小さな背面給紙カバーと、用紙を支える小さな「用紙サポート」を引き出せるだけだ。印刷を実行して、セットする旨のメッセージが出てから用紙を差し込む方式であるため、本当に1枚ずつとなる。その分コンパクトな本体でも背面給紙を可能としているわけである。さらに、通常の給紙カセットでは0.3mm厚の用紙までの対応だが、背面手差し給紙では、倍の0.6mmの用紙に印刷ができる。今まで印刷できなかった厚紙にも印刷できる点も便利だろう。その上、EP-978A3ではこの背面手差し給紙に限ってA3用紙への印刷を可能にしている。A3や四切などの大きな用紙に写真を印刷したい場合や、A3やB4の文書を印刷する必要がある場合に便利だ。大量印刷の場合は本格的なA3プリンタが必要だが、時々数枚程度であれば十分に使う事ができる。そしてEP-10VAはEP-978A3の背面給紙を強化した形である。背面給紙部分だけ高さが増してしまっているが、その分、普通紙で10枚、専用紙で5枚までの連続給紙が可能となった。元々背面給紙のみのA3プリンターほど枚数は多くないが、1枚ずつの手差しよりはかなり便利である。印刷枚数が多い場合はこちらの方が便利だろう。もちろん0.6mmまでの厚紙にも対応している。前面給紙のみのPIXUS MG7730に比べて、数枚又は1枚ずつだが背面給紙前面排紙と言う方法が選択できるEP-10VAとEP-978A3、EP-808Aは、購入後に前面給紙がうまくいかない用紙を使う事になっても安心感がある。 4機種とも用紙の種類とサイズを登録しておく機能が搭載されている。液晶ディスプレイでメニューから登録も可能だが、前面給紙カセットを挿し込むと自動的に登録画面が表示されるため便利だ(されないようにもできる)。この登録内容と、印刷時の用紙設定が異なっている場合、メッセージが表示される仕組みだ。なおPX-10VAとEP-978A3、EP-808Aはこれに加えて、印刷時に実際の用紙幅をセンサーでチェックする機能もあり、できる限り印刷ミスによる用紙とインクの無駄遣いをなくす工夫がなされている。さらに、PX-10VAにはハガキ向き検知機能が搭載されている。郵便番号枠を認識することで、ハガキの上下や裏表の間違いを検知し、印刷が止まる機能だ。前面給紙だと、どうしても用紙の裏表や向きを間違いやすいので、ハガキが無駄にならない便利な機能だ。 無線/有線LAN接続ができるようになり、プリンタから離れた場所のパソコンやスマートフォンから印刷を実行することが増えたため、電源や排紙トレイの自動化が進んでいる。EP-10VA、EP-978A3、EP-808Aは、印刷が実行されると自動的に電源がオンになり、排紙トレイが自動的に出てくる。また、排紙トレイに引っかかる操作パネルは自動的に少し角度が上がる。一方、PIXUS MG7730も印刷が実行されると自動的に電源がオンになり、自動的に前面パネルのロックが外れて前に倒れ、排紙トレイとなる。4機種とも用紙はあらかじめカセットにセットしておけることから、プリンタの前に行くことなく印刷が実行できる。その後指定した時間が経てば自動的に電源はオフになる。その際、EP-10VAとEP-978A3、EP-808Aは自動的にトレイが収納され、上がっていた操作パネルは垂直に戻り収納されるなど、こちらも完全自動である。PIXUS MG7730は電源はオフになるがトレイはそのままである。 その他、自動両面印刷機能は4機種とも搭載している。普通紙だけでなくハガキなどにも対応するため、年賀状で通信面と宛名面を用紙の差し替え無しで印刷できるなど、便利である。また、CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷機能も4機種がとも備えている。レーベル印刷のトレイを使わない時は、EP-10VA、EP-978A3、EP-808Aは前面給紙カセットの下に、PIUXUS MG7730は前面給紙カセットの上段の裏に収納できる。写真の自動補正機能としては、PX-10VA、EP-978A3、EP-808Aは「オートフォトファイン!EX」、PIXUS MG7730は「自動写真補正II」と名称は違うものの、逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われる。もちろんパソコンからの印刷時だけでなく、後述のダイレクト印刷時にも利用できる。さらにPX-10VAでは「高彩モード」が選択でき、新たに採用したレッドインクの力で、くすみががちな赤系の表現をより色鮮やかに印刷できるようになっている。 続いて、スキャナ部を見てみよう。解像度はEP-10VAとEP-978A3が4800dpi、EP-808AとPIXUS MG7730が2400dpiとなる。解像度に大きな差があるように見えるが、反射原稿(紙などの原稿)にしか対応しないため、1200dpiでも十分すぎる解像度と言える。実際写真サイズを2400dpiで取り込むと約8,400×12,000ドットとなり1億画素相当となる事から、2400dpiでもオーバースペックとも言える。、実際に使う上での差はあまりないと言えるだろう。いずれもCIS方式で、厚い本の綴じ目近くなど、ガラス面から浮いてしまう原稿ではピントが合わなくなってしまう点は注意が必要だ。EP-10VA、EP-978A3、EP-808Aはスキャンした原稿をパソコンを使わずにメモリカードに保存する機能を搭載しているためパソコン無しで簡単にスキャンができる。 ダイレクト印刷は、SDカード、メモリースティックDuoのメモリカードに対応しているのは4機種共通だ。最近のデジタルカメラやスマートフォンは一眼レフなどを除きSDカードかその小型版のmicroSDになっており、少し前にさかのぼってもメモリースティックDuoに対応していてば基本的には不満はない。加えて、EP-10VA、EP-978A3、EP-808Aはコンパクトフラッシュにも対応している。RAWデータのダイレクト印刷は行えないが、一眼レフなどのメモリカードも挿し込める。さらにこの3機種はメモリカードだけでなくUSBメモリからの印刷にも対応している。また、各種メモリカードからUSBメモリへのバックアップが可能な他、USBメモリ以外に対応の外付けハードディスクや外付けDVDドライブへのバックアップやそれらからの印刷も行える。その上、これら3機種はネットワーク接続をしている場合、他のパソコンから外付けハードディスクのデータにアクセスが可能な「外部機器共有」機能も備えている。つまり複合機単体でメモリカード内の写真やスキャンした写真や原稿を外付けHDDに保存でき、それらに家庭内のどのパソコンからもアクセスできるわけである。もちろん写真データ以外も共有可能であるため、簡易NASとしても使用できる。そのほか、赤外線通信による印刷に対応しているのもこれら3機種である。PictBridgeは4機種とも搭載しているが、EP-10VA、EP-978A3、EP-808AはUSB接続とWi-Fi接続の両方式のPictBridgeに対応しているのに対して、USBポートを省略したPIXUS MG7730ではWi-Fi接続のPictBridgeにしか対応しない点は注意が必要だ。機能の豊富さではエプソンの3機種に軍配が上がると言える。 ダイレクト印刷時の機能として代表的な手書き合成シートは4機種とも対応している。またPIXUS MG7730は写真やハガキだけでなくCD/DVD/Blu-rayレーベルの手書き合成にも対応している。その他、EP-10VA、EP-978A3、EP-808Aでは塗り絵風の輪郭だけの印刷や、罫線、マス目、便箋、スケジュール帳、五線譜、メッセージカード、折り紙封筒が印刷できるフォーム印刷機能を搭載している。一方のPIXUSMG7730ではカレンダー印刷機能や、原稿用紙、方眼紙、五線譜、レポート用紙、スケジュール帳、チェックリスト、漢字練習帳が印刷できる定型フォーム印刷機能を備えており、4機種とも単体でも機能は豊富であるといえる。 スマートフォンとの連携機能も4機種とも搭載しており、iPhoneやiPod touch、iPadと、Android端末に対応している。いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることでプリント又はスキャンが行える。NFCにも対応しているため、Android限定にはなるが、タッチするだけで接続設定ができるなど、上位機種ならではの便利な機能も搭載している。メインで使用すると思われる写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。さらにドキュメント印刷にも対応している。PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もできる便利だ。また、4機種ともスマートフォン上からスキャンを実行し、データをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。出かける前に紙の情報をさっとスマートフォンに転送するといった使い方ができるため便利だろう。さらに、クラウドとの連携機能も搭載されており、オンラインストレージから印刷したり、SNSの写真を印刷する事ができる。SNSの写真はコメント付きでも印刷が可能だ。またPIXUS MG7730は写真共有サイトからの印刷も可能だ。ここで大きな違いは、エプソンの3機種はスマートフォンのアプリとして搭載しているのに対して、PIXUS MG7730はスマートフォン上だけでなくPIXUS MG7730からも印刷ができる点が上げられる。実際の操作性はスマートフォンからの方が上だが、選択肢が広いという点ではPIXUS MG7730が便利だ。 さらにネットワークを利用したプリント機能として、EP-10VA、EP-978A3、EP-808Aは、印刷したい写真や文書を本機にメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、スキャンした画像を離れた場所の対応複合機で印刷できる「メールdeリモート印刷」、通常のプリント同じ操作で、離れた場所のEP-10VA/EP-978A3/EP-808Aで印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。一方のPIXUS MG7730はこれらの機能は搭載しない。リモートプリント機能はEP-10VA、EP-978A3、EP-808Aの圧勝だ。 コピー機能を見てみよう。単純なコピー機能としては、4機種とも単純な等倍コピーだけでなく、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「自動変倍」機能や、原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行う「オートフィット」機能、さらに25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える機能を搭載した高性能な物だ。またCD/DVD/Blu-rayレーベルコピーも4機種とも対応である。また原稿面に写真を複数枚置き、焼き増し風のコピーを行うことも出来る。この際、EP-10VA、EP-978A3、EP-808Aは「退色復元」、PIXUS MG7730では「色あせ補正」と名称は異なるが、4機種とも昔の色あせした写真も自動で補正してくれる機能も備えている。4機種とも2枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2アップにも対応する。さらにPIXUS MG7730では4枚の原稿を1枚に縮小する4アップにも対応している。その他、EP-10VA、EP-978A3、EP-808Aはコピー時にも「塗り絵印刷」が行える他、見開きの本を左右ページで別々にコピーする「BOOKコピー」、アイロンプリント紙への印刷時に使える「ミラーコピー」、背景の色を白にして見やすくする「背景除去機能」を備えている。またコピー時には文字と写真領域を判定してそれぞれを見やすいように補正する「領域判定コピー」を行っている。一方PIXUS MG7730には厚手の原稿など原稿台のカバーが浮いてしまう場合に黒くなる部分を消去する「枠消しコピー」機能を備える。それぞれ機能は異なるが、複合機単独で様々なコピーが行えるよう工夫されている。 操作パネルは4機種ともタッチパネル液晶を基本とする点では同じである。PIXUS MG7730は「インテリジェントタッチシステム」となっており、スタートやストップ、戻ると言った使う場面の多いボタンは液晶ディスプレイの外にタッチ式ボタンとして用意され、メニューや各種設定と言った表示内容が場面に応じて変わるものは液晶ディスプレイ内に表示されを直接タッチして操作することになっている。液晶ディスプレイ外のボタンも使用できるときだけ光る様になっているので分かりやすい。液晶ディスプレイも3.5型と大きめなので、タッチ操作や画像確認も行いやすい。一方のEP-10VA、EP-978A3、EP-808Aは液晶ディスプレイ内に、戻るやスタートのボタンも表示してしまい、液晶ディスプレイ外のボタンは電源ボタンだけというシンプルな構成だ。その分液晶ディスプレイは大きく、ワイドの4.3型となっている。どちらも使いやすいように工夫されているが、液晶ディスプレイの外にタッチ式ボタンを配置するPIXUS MG7730では、本体のカラーによっては光っているのがわかりにくい場合もあり、全てが液晶ディスプレイ内にある方が見やすい場合もあるだろう。 このように操作方法は似ている3機種だが、その取り付け位置は大きく異なる。EP-10VA、EP-978A3、EP-808Aの液晶ディスプレイと操作パネルは本体前面に取り付けられ、液晶ディスプレイだけでなく操作パネル全体を持ち上げて角度調整が可能だ。最大90度まで起こすことができるので、垂直から水平まで見やすい角度で操作ができるよう工夫されている。一方PIXUS MG7730は、本体の上面から側面にかけて斜めに大きく面取りされた部分に埋め込まれている。残念ながら操作パネルも液晶ディスプレイも固定されていて角度調整はできない。斜めになっているため、どの角度からでもそれほど使いにくくはないだろうが、それでも高い位置に置くと、操作がしにくかったり液晶ディスプレイが見にくくなりそうだ。角度調整ができるだけEP-10VA、EP-978A3、EP-808Aの方が利便性は上である。 インタフェースは4機種ともUSB2.0に加えて、有線/無線LANに対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人には有線LAN/無線LANによりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。またネットワーク接続をすればスマートフォンやタブレットからの印刷も可能となる。またWi-Fiダイレクト(PIXUS MG7730はダイレクト接続)に対応しているため、無線LANルータの無い環境でも、スマートフォンやタブレットと直接Wi-Fi接続が可能となっている点も4機種共通の便利な点だ。この際、前述のNFCが力を発揮する場合もあるだろう。 本体サイズを見てみよう。ほぼ同価格のEP-808AとPIXUS MG7730で比べてみると、EP-808Aが390×341×141mm、PIXUS MG7730が435×370×148mmとなり、全体的にEP-808Aが小さい、特に横幅に関してはEP-808Aが10%以上小さく、設置面積も17.4%小さい。高さもEP-808Aの方がわずかながら小さくなっており、圧迫感は非常に少ない。一方PIXUS MG7730も側面にかけて大きく面取りされているため、数値よりは小さく見えるが、EP-808Aと比べると大きく見える。そしてA3の手差し給紙対応のEP-978A3は479×356×148mmと横幅が特に大きくなっている。とは言えPIXUS MG7730との差は44mmであるため特別大きいという印象はない。奥行きはEP-978A3の方が小さいので、設置面積では6%大きいだけである。EP-10VAは背面給紙が強化された分、479×356×163mmと高さが大きくなっているが、実際には背面給紙部分だけ飛び出ておりそれ以外はEP-978A3と同じだ。後方の出っ張りはそれほど気にならないため、EP-978A3と同じようなサイズに見える。 これら4機種の中で、ほぼ同価格帯のEP-808AとPIXUS MG7730のどちらがおすすめかを考えてみよう。印刷画質や印刷速度、自動両面印刷やレーベル印刷といったプリンタ機能、スキャナ解像度や方式といったスキャナ機能、ダイレクト印刷機能の有無、コピー機能などはかなり似ていると言える。細かい違いで言えば、排紙トレイの自動収納やUSBメモリへの対応などがあるが、決め手には欠けるだろう。画質面ではライトインクを搭載したEP-808Aと、グレーインクを搭載したPIXUS MG7730では写真の画質は若干EP-808Aの方が上で、代わりに顔料ブラックインクを搭載している分普通紙への印刷画質はPIXUS MG7730が若干上だ。ただ、どちらも高いレベルでの事で、EP-808Aも文字くっきりモードの搭載により、PIXUS MG7730もインクの改良により弱点を多少なりとも改善しており、大きな違いではない。比較的大きな違いと言えば、EP-808Aは1枚ずつの手差しではあるが背面からの給紙が可能である点、操作パネルの角度調整が可能な点が挙げられる。そしてなにより本体サイズが高性能複合機とは思えないほどコンパクトなのも魅力だ。一方のPIXUS MG7730は本体でクラウドにアクセス可能な事や、給紙枚数が多い点などが挙げられる。これらのどちらに魅力を感じるかで機種は決まってくるだろう。ただ、全体的に見ればEP-808Aの方が機能が豊富でコンパクトで使いやすいようには感じる。顔料ブラックインクや本体でのクラウド対応に特に魅力を感じないならEP-808Aの方が良さそうだ。それ以外に本体カラーによって家のインテリアやパソコンの色と合わせるという方法もあるだろう。 そして、EP-808Aから5,000円出すとEP-978A3が購入できる。一方、EP-10VAは15,000円アップとなる。A3/B4プリントをしたいならこれら2機種を選ぶことになるが、違いとして目立つのはEP-978A3がA3用紙は1枚ずつの手差しなのに対して、EP-10VAは連続給紙が可能である事だ。とはいえこの点で決めるのは勿体ない。EP-10VAの連続給紙も普通紙で10枚、写真用紙などは5枚までで、本格的にA3文書をプリントするというのなら、少ないだろう。そうなるとA3プリンタを購入した方が、サイズはさておき、100枚程度の連続給紙が可能で価格も安い。それよりもこの2機種を決める上では画質の差が重要となる。EP-808Aレベルで十分だと感じるならEP-978A3がおすすめだ。5,000円の価格差でA3がプリントできるなら、将来性を考えてこちらでも良いだろう。一方、レッドインクとグレーインクに加えLCCSといったプロセレクションの製品に採用される機能を搭載してきたEP-10VAの画質は家庭用プリンタとしては一線を画す色鮮やかさだ。写真の画質を特に重視するなら、そしてそれにさらに1万円の価値があると感じるならEP-10VAといえるだろう。 (H.Intel) 【今回の関連メーカーホームページ】 エプソンhttp://www.epson.co.jp/ キャノンhttp://canon.jp/ |