2015年末時点のプリンタ 〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜 (2015年11月18日公開)
複合機で1万円台〜2万円台の製品である。エプソンのEP-707A(10,980円)とPX-M650A(17,980円)、キャノンのPIXUS MG6930(24.800円)とPIXUS MG5730(16,800円)がこの価格帯の製品となる。下は10,980円、上は24,800円という大きなくくりになってしまったが、それには理由がある。まず、本来PIXUS MG6930と同価格帯であったエプソンの製品は、EP-777Aの後継機種になるはずだったのだがEP-77xAシリーズ自体が無くなり、直接のライバル製品が無くなってしまった。そのため、一つだけ飛び出た価格となっているが、1万円台中盤の製品と比較するしか無い。価格差の価値があるかを見ていこう。一方、EP-707Aは1年前のモデルの継続販売で価格が下がっているが、本来は16,980円の製品であるため、PIXUS MG5730と同価格帯だ。今後はPIXUS MG5730ほどの勢いで価格が下がらないと思われ、価格差は縮まると思われるため、この価格帯での比較となっている。 |
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シアン マゼンタ イエロー ライトシアン ライトマゼンタ |
シアン マゼンタ イエロー |
染料ブラック グレー シアン マゼンタ イエロー |
染料ブラック シアン マゼンタ イエロー |
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(つよインク200) |
(つよインク200X) |
(ChromaLife100) |
(ChromaLife100) |
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黒:400ノズル |
Y/染料BK:各512ノズル 顔料BK:1024ノズル |
Y/染料BK:各512ノズル |
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(A4普通紙セット可能枚数) |
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○(L/KG/2L/はがき) | |||||||
印刷部 |
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フォーム印刷(罫線・マス目・便箋・スケジュール帳・五線譜) |
定型フォーム印刷(原稿用紙・方眼紙・五線譜・レポート用紙・スケジュール帳・チェックリスト・漢字練習帳) |
定型フォーム印刷(原稿用紙・方眼紙・五線譜・レポート用紙・スケジュール帳・チェックリスト・漢字練習帳) |
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印刷 |
iPod touch iPad (iOS 7.0以降) Android 4.0以降 |
iPod touch iPad (iOS 7.0以降) Android 4.0以降 |
iPod touch iPad (iOS 7.0以降) Android 2.3.3以降 (NFC対応) |
iPod touch iPad (iOS 7.0以降) Android 2.3.3以降 |
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BOOKコピー ミラーコピー |
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(Wi-Fiダイレクト対応) |
(Wi-Fiダイレクト対応) |
(ダイレクト接続対応) |
(ダイレクト接続対応) |
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プリント機能を見てみよう。EP-707Aはブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色にライトシアンとライトマゼンダを加えた6色インク構成で、最小インクドロップサイズも1.5plと非常に小さく、解像度が5760×1440dpiである事から、非常に高画質な印刷が可能だ。これは最上位モデルと同等であり、画質面では最上位モデルと同じ綺麗さが得られる。インクは染料インクで、写真用紙などに印刷した際に用紙の光沢感がそのまま出るほか、発色も良い。また対応する用紙も多い。一方で、普通紙に印刷した際は少し滲んだようになるため、文字が太くなったり、中抜き文字が潰れそうになってしまうため、やや画質は落ちる。一方PX-M650Aは4色構成の顔料インクを採用する。最小インクドロップサイズも3.3plとEP-707Aの倍以上である上に、ライトインクもないため、写真印刷などでは粒状感があり、EP-707Aより劣る画質となる。それでも写真印刷が全く行えないほどではないが、やはり、少しザラザラとした印象を受けるだろう。また、顔料インクであるため、写真用紙に印刷した際に、表面の光沢感が薄れポストカードのようになってしまうほか、発色も悪いという問題もある。一方、普通紙印刷ではメリハリのある印刷が行えるほか、耐水性もあることから、濡れたりマーカーを引いても滲まないというメリットもある。また、PX-M650Aでは普通紙への印刷解像度を360dpiから600dpiへアップした新しいプリントヘッドを採用しており、より普通紙印刷の画質は高くなっている。普通紙印刷に特化していると言える。一方のPIXUS MG6930もEP-707Aと同じ6色構成だが構成が異なる。染料インクはブラック、シアン、マゼンダ、イエローに加えてグレーインクが搭載され、ベースにグレーインクを使う事で色の濃い部分での粒状感が抑えられる。最小インクドロップサイズも1plで、解像度も9600×2400dpiと高く、非常に高画質に印刷できる。EP-707Aと比べると、グレーをベースに使う分発色の面ではやや劣るが、比べなければ分からないレベルだ。また、モノクロに近い原稿での階調表現が優れており、中間色が赤や青っぽいグレーになりにくいという特徴がある。さらに、染料ブラックに加えて顔料ブラックを搭載しているため、ブラックインクを使用する部分に限ってだが、普通紙などへの印刷ではメリハリのある印刷結果が得られる。小さな文字や中抜き文字も潰れずに印刷が可能なほか、耐水性も高いため濡れた手で触ったりマーカーを引いても滲まない。最後にPIXUS MG5730だが、こちらは5色構成で、染料のブラック、シアン、マゼンダ、イエローと顔料ブラックという、PIXUS MG6930からグレーインクを抜いたような構成だ。写真印刷は4色で行う上、最小インクドロップサイズも2plと大きくなるため、EP-707AやPIXUS MG6930よりは画質が落ちる。とはいえ、単独で見れば十分綺麗で、染料インクである事から写真用紙本来の光沢感が出せ、発色も良い。また、顔料ブラックインクのおかげで普通紙への印刷もメリハリのある印刷が行える。PIXUS MG6930とPIXUS MG5730のモノクロの普通紙への印刷画質はEP-707Aより上だ。一方で、完全な黒ではないグレーの部分では染料カラーインクやグレーインクを混ぜて表現をするし、カラーの中に混ざっている場合は顔料と染料を混ぜられないことから、染料インクが使われるなど、背景が無く完全な黒という限定があるなど、必ずしも顔料インクの恩恵を受けられるわけではない。その点では、全色顔料インクで普通紙への印刷解像度も高いPX-M650Aには劣る事になる。これを見ると、写真印刷に特化し普通紙印刷はそれほど得意で無いなEP-707A、文書印刷に特化し写真印刷は苦手なPX-M650A、どちらもそれなりに得意なPIXUS MG5730、そのPIXUS MG5730より写真印刷が得意なPIXUS MG6930という構図が見える。 EP-707Aの場合、最小インクドロップサイズは非常に小さいがAdvanced-MSDTという5つのインクサイズのインクを打ち分ける機能を搭載しており、必要に応じて大きなインクサイズを打ち分ける事で高速化と高画質化を両立しており、ノズル数も上位機種と同じであることから、L判縁なし写真印刷が19秒と上位機種とほとんど変わらない印刷速度となっている。L版フチなし印刷では上位機種EP-808Aの13秒と比べると1.5倍時間がかかるように感じるが、A4サイズにしても61秒と67秒でやはり6秒差なので、給排紙の時間だけで印刷が行われれば上位機種と同じ速度と言うことになる。一方、PIXUS MG6930はのノズル数を多くすることで高速化を実現しており、L版フチなし写真印刷が18秒とこちらも非常に高速だ。ここまで高速だと、大量印刷でもストレス無く行え、写真や年賀状印刷に力を発揮するだろう。PIXUS MG5730はPIXUS MG6930と比べるとノズル数が少なくなっており、L判写真フチなし印刷は1枚36秒と、EP-707AやPIXUS MG6930の半分の速度となる。これでもそこまで遅いわけでは無いが、少しでも早く印刷したいという人にはこの差は気になるだろう。最後に、PX-M650Aはノズル数が784ノズルと少なく、特にカラーのノズル数が少ない上に、Advvanced-MSDTより劣る3つのサイズのインクを打ち分けるMSDTとなっているため、L判写真縁なし印刷は69秒とやや遅めだ。顔料インクと言うことも影響しているようだ。もともと写真印刷には向いていない機種だけに、印刷速度も遅めと言える。 一方、普通紙印刷となると状況が異なる。PX-M650AではA4カラー文章が7.3ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、モノクロが13ipmとなっている。一方PIXUS MG6930がそれぞれ10.0ipmと15.0ipm、PIXUS MG5730はそれぞれ9.0ipmと12.6ipmであるため、ノズル数の少ないカラー印刷はやや遅いものの差は小さくなり、モノクロ印刷に関してはPIXUS MG5630をより速くPIXUS MG6930に迫る速度だ。モノクロ印刷に関してはPX-M650Aでも非常に高速である事が分かる。もちろんPIXUS MG6930やPIXUS MG5730も高速と言える。特にPIXUS MG5730は写真印刷ほどPIXUS MG6930と差が無いため、文書印刷がメインなら速度的に問題は無い。ちなみに家庭向けのEP-707Aは普通紙印刷速度が非公開である。写真印刷が得意なEP-707AとPIXUS MG6930は写真印刷が早く、どちらそれなりに得意なPIXUS MG5730は写真も文書印刷もやや早く、文書印刷が得意なPX-M650Aは文書印刷が早いという風に、インクの特性に合った印刷速度と言える。 ちなみに使用するインクはEP-707Aは「つよインク200」である。アルバム保存300年、耐光性50年、耐オゾン性10年となる。PX-M650Aは「つよインク200X」であり、アルバム保存300年、耐光性45年、耐オゾン性30年と、EP-707Aに劣らない耐保存性である。PIXUS MG6930とPIXUS MG5730は「ChromaLife100」でありアルバム保存100年を実現している。4機種とも十分なレベルの耐保存性を持ったインクであるがEP-707AとPX-M650Aの方がアルバム保存年数が高く、耐光性の高さもうたっているなど、より保存性が高いと言えるだろう。また、PX-M650Aは画質や速度面で写真印刷は苦手だが、耐保存性の面では写真印刷も問題ないことが分かる。 給紙に関しては、4機種で分かれるとこれだ。EP-707Aは前面給紙でカセット式になっており、用紙を完全に収納可能なのは上位機種と同等だ。ただしカセットは1段式となっており、同時にセットできる用紙は1種類のみだ。EP-707AはA4普通紙で100枚、ハガキや写真用紙は40枚と十分な量をセットできるが、違う用紙を使用する際に入れ替えが発生する。PX-M650Aも同じく前面給紙で1段のカセット式だ。ただ、ビジネス向けのPX-M650Aは150枚とやや多めになっている。一方PIXUS MG6930は価格的に上位機種になるため、前面給紙なのは同じだが、2段カセットとなっている。上段がL判、KG、2L判、ハガキサイズに対応、下段がA4、A5、B5、レター、リーガルサイズ対応と、サイズによって分けられており、下段にA4普通紙なら125枚、上段に写真用紙やハガキなら40枚までセット可能だ。入れ替えの手間が無い分便利で、それぞれにセット可能な枚数も十分なものだ。一方PIXUS MG5730も同じ前面給紙だが、カセット式では無くトレイ式となっている。前面パネルを手前に開くと、その上が給紙トレイで、内側をもう一段開いたところが排紙トレイとなっている。カセット式ではないため、用紙を挿し込むだけで完全に本体に収納することができず、用紙をセットしたままでは給紙トレイは折りたためない。そのため用紙を取り除くか、開けっ放しにしておくかになる。取り除くのは面倒だし、開けっ放しではホコリが積もってしまう。カセット式と比べると不便である。セット可能な枚数はA4普通紙で100枚と一般的だ。 4機種とも用紙種類とサイズの登録機能を搭載している。EP-707AとPX-M650A、PIXUS MG6930は前面給紙カセットを挿し込むと自動的に登録画面が表示されるため便利だ(されないようにもできる)。PIXUS MG5730も給紙トレイを手前に引き出すことができるため、それを収納すると登録画面が表示される。この登録内容と、印刷時の用紙設定が異なっている場合、メッセージが表示される仕組みだ。また、液晶ディスプレイでメニューから手動で登録も可能である。さらに、EP-707Aは印刷時に実際の用紙幅をセンサーでチェックする機能もあり、できる限り印刷ミスによる用紙とインクの無駄遣いをなくす工夫がなされている。 無線LAN接続ができるようになり、プリンタから離れた場所のパソコンやスマートフォンから印刷を実行することが増えたと言える。PIXUS MG6930とPIXUS MG5730は印刷が実行されると、自動的に電源がオンになる機能を搭載している。プリンタの前に行くことなく印刷が実行できるわけである。その際、PIXUS MG6930は排紙トレイも自動で開くため、排紙トレイが閉じていて内部で用紙が詰まる事も無く、前面給紙カセットに用紙をセットしたままにできるので、完全に自動と言える。一方のPIXUS MG5730は給紙がトレイ式であり、排紙トレイも自動では開かない。電源だけが自動でオンになっても用紙をセットし排紙トレイを出す必要はあるため、使い勝手面では微妙だ。本当に使えるのはPIXUS MG6930であろう。ちなみにEP-707AとPIXUS MG6930、PIXUS MG5730は、指定した時間が経てば自動的に電源はオフになる機能も備えている。 その他、自動両面印刷機能はPX-M650AとPIXUS MG6930、PIXUS MG5730が搭載している。PIXUS MG6930はハガキにも対応だが、PX-M650AとPIXUS MG5730は普通紙のみの対応である。年賀状で通信面と宛名面を一度に印刷したい場合はPIXUS MG6930となる。一方、CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷機能はEP-707AとPIXUS MG6930がが備えている。写真の自動補正機能としては、エプソンの2機種は「オートフォトファイン!EX」、キャノンの2機種は「自動写真補正II」と名称は違うものの、逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われる。EP-707AとPIXUS MG6930はパソコンからの印刷時だけでなく、後述のダイレクト印刷時にも利用できる。 続いて、スキャナ部を見てみよう。解像度はPIXUS MG6930のみ2400dpi、残る3機種が1200dpiで大きな差があるように感じる。反射原稿(紙などの原稿)にしか対応しないため、1200dpiでも十分すぎる解像度と言える。実際写真サイズを1200dpiで取り込むと約4,200×6,000ドットとなり2500万画素相当となる事から、十分な性能と言える。スペック上は大きな差でも実用上は差は小さいと言える。また、いずれもCIS方式で、厚い本の綴じ目近くなど、ガラス面から浮いてしまう原稿ではピントが合わなくなってしまう点も同様だ。EP-707Aはスキャンした原稿をパソコンを使わずにメモリカードに保存する機能を搭載しているためパソコン無しで簡単にスキャンができる。一方PX-M650AはADFを搭載しており、30枚までの原稿を連続で読み取り、パソコンに取り込んだりコピーしたりできる。片面読み取りだが、原稿が多い場合は重宝するだろう。 ダイレクト印刷は、EP-707AとPIXUS MG6930のみ対応している。EP-707AはSDカードのみ、PIXUS MG6930がSDカードとメモリースティックDuoに対応している。最近のデジタルカメラやスマートフォンは一眼レフなどを除きSDカードかその小型版のmicroSDになっており、SDカードに対応していれば問題ないだろう。もう少し前に遡ってソニーが採用していたメモリースティックDuoに対応しているPIXUS MG6930はより対応の幅が広い。なお、エプソンの上位機種はUSBメモリに対応するがEP-707Aは対応していない。そのほか、EP-707A、PIXUS MG6930、PIXUS MG6730はWi-Fi接続のみだがPictBridgeに対応している。また、EP-707AとPIXUS MG6930は手書き合成シートにも対応しており、手書きと写真を合成して印刷する事ができる。PIXUS MG6930はCD/DVD/BDのレーベル面の手書き合成も可能だ。その他、EP-707Aは塗り絵風の輪郭だけの印刷や、罫線、マス目、便箋、スケジュール帳、五線譜が印刷できるフォーム印刷機能を搭載している。ちなみに同じフォーム印刷機能という名称だが、上位機種と異なりメッセージカードと折り紙封筒には非対応である。一方のPIXUS MG6930とPIXUS MG5730も、カレンダー印刷機能や、原稿用紙、方眼紙、五線譜、レポート用紙、スケジュール帳、チェックリスト、漢字練習帳が印刷できる定型フォーム印刷機能を備えている。家庭向けのこれら3機種はこういった機能も豊富でプリンタ単体でも様々な印刷が可能だ。 スマートフォンとの連携機能も4機種とも搭載しており、iPhoneやiPod touch、iPadと、Android端末に対応している。いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることでプリント又はスキャンが行える。メインで使用すると思われる写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。さらにドキュメント印刷にも対応している。PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もできるので便利だ。また、4機種ともスマートフォン上からスキャンを実行し、データをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。出かける前に紙の情報をさっとスマートフォンに転送するといった使い方ができるため便利だろう。さらに、クラウドとの連携機能も搭載されており、オンラインストレージから印刷する事が可能だ。またビジネス向けのPX-M650Fを除く3機種は、SNSの写真ををコメント付きでも印刷が可能だ。またキャノンの2機種は写真共有サイトからの印刷も可能だ。ここで大きな違いは、エプソンの2機種はスマートフォンのアプリとして搭載しているのに対して、キヤノンの2機種はスマートフォン上だけでなくプリンタ本体からもクラウドにアクセスし印刷ができる点が上げられる。実際の操作性はスマートフォンからの方が上だが、選択肢が広いという点ではキヤノンの2機種が有利だ。クラウドからのプリント機能をよく使うという場合は、PIXUS MG6930やPIXUS MG5730の方が便利だろう。 さらにネットワークを利用したプリント機能として、EP-707AとPX-M650Aは、印刷したい写真や文書を本機にメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、通常のプリント同じ操作で、離れた場所のEP-707A/PX-M650Aで印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。さらにEP-707Aはスキャンした画像を離れた場所の対応複合機で印刷できる「メールdeリモート印刷」機能も備えている。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。 コピー機能を見てみよう。単純なコピー機能としては、4機種とも単純な等倍コピーだけでなく、拡大縮小コピーが可能だ。原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行う「オートフィット」機能や、25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える機能を搭載している他、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「自動変倍」機能も備えるなど、高性能な物だ。またCD/DVD/Blu-rayレーベル印刷に対応したEP-707AとPIXUS MG6930はレーベルコピーにも対応である。またPX-M650Aを除く3機種は原稿面に写真を複数枚置き焼き増し風のコピーを行うことも出来る。この際、EP-707Aは「退色復元」、PIXUS MG6930とPIXUS MG6730では「色あせ補正」と名称は異なるが、3機種とも昔の色あせした写真も自動で補正してくれる機能も備えている。また2枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2アップにも対応する。さらにPIXUS MG6930とPIXUS MG5630では4枚の原稿を1枚に縮小する4アップにも対応している。その他、EP-707Aはコピー時にも「塗り絵印刷」が行える他、見開きの本を左右ページで別々にコピーする「BOOKコピー」、アイロンプリント紙への印刷時に使える「ミラーコピー」機能を備える。また、文字領域と画像領域を認識し、それぞれが見やすくなるよう別々の画像処理を行う「領域判定コピー」機能を搭載しているなど、機能は豊富だ。一方PX-M650Aは免許証やIDカードのような小さな原稿の裏と表を、1枚の紙に並べてコピーできる「IDコピー」機能を備える。またPIXUS MG6930とPIXUS MG5630は厚手の原稿など原稿台のカバーが浮いてしまう場合に黒くなる部分を消去する「枠消しコピー」機能を備える。 操作パネルは4機種に特徴がある。まずはEP-707Aである。1.44型の液晶ディスプレイと操作ボタンが、本体の前面に斜めに取り付けられている。角度調整はできず、液晶ディスプレイも小さいことから、視認性はかなり悪い。ボタン数も極端に少なくなっているので、複数の機能を兼用しているボタンが多く、操作性もそれほど良いとは言えない。それでも、各種設定やコピー、メモリカードからのダイレクト印刷などに効果を発揮するだろう。PIXUS MG6930とPIXUS MG5730も本体前面に斜めに取り付けられ、角度調整ができない点ではEP-707Aと同様だが、液晶ディスプレイがそれぞれ3.0型と2.5型となっており比較的大きく、操作ボタンも機能で独立しており多めであるため、使いやすい。最後にPX-M650Aだが、こちらはFAX機能付きのPX-M650Fという機種と共通化しているため、本体の前方に飛び出す様に斜めに液晶ディスプレイと操作パネルが配置されている。またカーソルやスタートボタンの他にテンキーが搭載されるが、FAX機能のないPX-M650Aでは使い道は限られるだろう。メモリカードからのダイレクト印刷などが無いことから、液晶ディスプレイは2.2型のモノクロ液晶となっている。とはいえサイズは大きめなので、視認性は高い。操作性とでは一番使いやすいのはPIXUS MG6930、ほとんど同じレベルでPIXUS MG5730、次いでPX-M650A、最後にEP-707Aという順番だろう。 インタフェースは4機種ともUSB2.0に加えて、無線LANに対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人には無線LANによりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。またネットワーク接続をすればスマートフォンやタブレットからの印刷も可能となる。またWi-Fiダイレクト(PIXUS MG6930とMG5730はダイレクト接続という名称)に対応しているため、無線LANルータの無い環境でも、スマートフォンやタブレットと直接Wi-Fi接続が可能となっている点も共通の便利な点だ。さらにビジネス向けのPX-M650Aは有線LANにも対応するため、無線LANでは接続が安定しない場合や、壁に有線LAN端子が埋め込まれている場合などはこちらを利用できる。 本体サイズを見てみよう。EP-707Aは390×338×163mmで、上位機種と比べると高さは高くなっているが、幅と奥行きはほぼ同じサイズである。設置面積はかなり小さくてすむ。PX-M650Aは425×360×230mmとなっており、ADFを搭載しているため高さは仕方が無いとしても、幅、奥行き共に大きくなっている。そして、それよりPIXUS MG6730は大きく435×370×148mmとなっており、PIXUS MG5630はそれよりも大きい455×369×148mmとなる。設置面積ではEP-707A比でPIXUS MG6930が約22%、PIXUS MG5730で27%大きくなる。設置スペースに余裕がないならEP-707Aがおすすめだ。 4機種のうちで一番方向性の異なるのがPX-M650Aである。普通紙印刷に特化し、家庭向けのレーベル印刷やフォーム印刷、メモリカードからのダイレクト印刷機能はなく、代わりにADFを搭載している。写真は印刷せず、文書印刷用というなら、PX-M650Aは非常におすすめだ。普通紙印刷は速く4機種で最も綺麗だ。同じような機能でFAX機能付きの複合機は多いが、FAX機能は不要という人には良い選択肢となるだろう。残る3機種だが、写真印刷を重視するならEP-707AかPIXUS MG6930となる。写真の印刷が綺麗で速く、メモリカードからのダイレクトプリントも可能だ。またレーベル印刷なども可能だ。とはいえ2機種には大きな価格差がある。画質や印刷速度の点だけならEP-707Aで十分だ。一方メモリカードからのダイレクトプリントやコピーなどの操作性を重視するなら、また前面の2段給紙や自動電源オンと自動排紙トレイオープン、自動両面印刷などの機能に魅力を感じるならPIXUS MG6930となる。ただ、今のところは価格差が大きすぎるとも言える。用紙は入れ替えれば良く、両面印刷も片面ずつ印刷することもできる。写真印刷はパソコンやスマホからが多く、コピーも凝った設定はしないというなら、多少の手間には妥協してEP-707Aの方が全体的にはおすすめと言える。残るPIXUS MG5730だが、画質や速度面ではEP-707Aに劣り、ダイレクト印刷機能も無く、用紙も1段カセットより劣る1段トレイ、レーベル印刷もできず、それでいて価格は6,000円高い。今のところ、PIXUS MG5730を選ぶ理由は無いに等しい。唯一液晶ディスプレイが大きいのと普通紙のモノクロ印刷では有利であるため、コピーや文書印刷がメインならPIXUS MG5730もありだが、それなら同価格のPX-M650Aの方がより特化している。PIXUS MG5730は今後価格がEP-707Aに近いレベルまで下がった場合に、写真印刷もするがそこまでこだわらず、コピー操作などがしやすい方が良いという人にとっての選択肢になるだろう。 (H.Intel) 【今回の関連メーカーホームページ】 エプソンhttp://www.epson.co.jp/ キャノンhttp://canon.jp/ ![]() ![]() |