2016年春時点のプリンタ 〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜 (2016年5月28日公開)
FAX機能付き複合機の中で下位機種に当たる2万円以下の機種である。エプソンからPX-M650F(19,980円)、キャノンからMAXIFY MB2330(19,800円)、MAXIFY MB2030(16,800円)となる。価格は比較的近く、いずれもビジネス向けに位置づけられている。どのような違いがあるのだろうか。また、価格は59,980円と高いが、EW-M660FTも比較対象としている。PX-M650Fをベースに作られており、またかなりの量のインクが付属しているため、実質的な本体価格は安いとも言えるためである。 |
シアン マゼンタ イエロー |
シアン マゼンタ イエロー |
シアン マゼンタ イエロー |
シアン マゼンタ イエロー |
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(タンク式) |
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(つよインク200X) |
(MAXIFY用新顔料インク) |
(MAXIFY用新顔料インク) |
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黒:400ノズル |
黒:400ノズル |
黒:1280ノズル |
黒:1280ノズル |
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(MSDT) |
(MSDT) |
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(フチなし印刷不可) |
(フチなし印刷不可) |
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(A4普通紙セット可能枚数) |
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○(250枚・普通紙A4/レター/リーガル)) |
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印刷部 |
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印刷 |
iPod touch iPad (iOS 7.0以降) Android 4.0以降 |
iPod touch iPad (iOS 7.0以降) Android 4.0以降 |
iPod touch iPad (iOS 7.0以降) Android 2.3.3以降 |
iPod touch iPad (iOS 7.0以降) Android 2.3.3以降 |
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枠消しコピー |
枠消しコピー |
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(Wi-Fiダイレクト対応) |
(Wi-Fiダイレクト対応) |
(アクセスポイントモード対応) |
(アクセスポイントモード対応) |
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プリント機能を見てみよう。4機種ともブラック、シアン、マゼンダ、イエローの4色構成である。EW-M660FTを除く3機種は全色顔料インクを採用する。最小インクドロップサイズはPX-M650Fが3.3pl、MAXIFY MB2330/MAXIFY MB2030は解像度が600×1200dpiと極端に低いことから、最小インクドロップサイズは大きめと思われる。そのため、これら3機種の写真印刷画質は家庭用の複合機と比べて大きく劣る。また、MAXIFY MB2330/MAXIFY MB2030はフチなし印刷にすら対応していないため、そもそも写真印刷に向いているとは言いがたい。PX-M650Fはフチなし印刷が行えるため、写真印刷が全く行えないほどではないが、4色で3.3plでは粒状感が有り、全体に少しザラザラとした印象を受けるだろう。また、顔料ンクであるため、写真用紙に印刷した際に、表面の光沢感が薄れポストカードのようになってしまうほか、発色も悪いという問題もある。一方のEW-M660FTはブラックが顔料インク、カラーは染料インクを採用する。最小インクドロップサイズはPX-M650Fと同等の3.3plだが、染料インクが使える分発色が良く、用紙本来の光沢感も出る。4機種中、唯一写真印刷が普通に行える機種と言える。4色構成で最小インクドロップサイズも大きめであるため、家庭用複合機の上位モデルと比べると粒状感があるが、十分に写真印刷に耐える画質といえる。 逆に普通紙印刷に関しては、4機種とも顔料インクを採用するため、染料インクよりメリハリのある印刷が行える。また、耐水性もあることから、濡れたりマーカーを引いても滲まないというメリットもある。ただしEW-M660FTを除く3機種はカラー、モノクロ問わずこの恩恵を得られるが、EW-M660FTがブラックインクだけ顔料インクなので、黒色部分だけだ。それでも文書やFAXなどでは黒色が多いため、十分効果を発揮するだろう。また、EW-M660FTとPX-M650Fは普通紙への印刷解像度を360dpiから600dpiへアップした新しいプリントヘッドを採用しており、より普通紙印刷の画質は高くなっている。4機種とも普通紙印刷画質を意識したプリンタである事は確かだ。 使用できる用紙はいずれもL判からA4までとなる。ただし、MAXIFY MB2330/MAXIFY MB2030は前述のようにフチなし印刷を行う事ができない点は注意が必要だ。給紙に関しては、4機種とも前面カセット式となっているが、セット可能枚数が異なる。EW-M660FTとPX-M650Fは前面給紙カセットが1段である。A4普通紙で150枚までと、上位機種よりやや少なめだが、家庭用の機種よりは多めだ。MAXIFY MB2030も同じく1段だが、A4普通紙を250枚までとやや多くなっている。そして、MAXIFY MB2330は前面給紙カセットが2段である。同じサイズのカセットが2段なので両方にA4用紙をセットする事も可能だ。各カセットで250枚セット可能なので、合計500枚となり、大量の印刷やFAX受信が多い環境でも対応できる。下段は普通紙のみで、サイズもA4、レター、リーガルのみとなるが、下段にA4普通紙、上段にB5普通紙と言った使い方も可能だ。注意点として、MAXIFY MB2330/MAXIFY MB2030の前面給紙カセットは本体に収まっているように見えるが、実際にはこの状態では、たとえ小さな用紙であってもセットでする事はできない点だ。使用時にはカセットを伸ばして使う事になるため、本体にセットしても飛び出てしまう。使用時には排紙トレイを引き出すため、スペース的には問題ないと言えるが、未使用時にも用紙をセットしたままだと飛び出してしまい不便とも言える。ちなみに、4機種とも用紙種類とサイズの登録機能を搭載している。いずれも前面給紙カセットを挿し込むと自動的に登録画面が表示されるため便利だ(されないようにもできる)。そして、この登録内容と、印刷時の用紙設定が異なっている場合、メッセージが表示される仕組みだ。また、液晶ディスプレイでメニューから手動で登録も可能である。できる限り印刷ミスによる用紙とインクの無駄遣いをなくす工夫がなされている。 自動両面印刷機能も4機種とも対応している。普通紙のみ対応なのも共通で、ハガキへの両面印刷は行えない。とはいえ、文書印刷やコピー時に便利だ。 印刷速度を見てみよう。写真の印刷速度は、PX-M650FがL判写真フチなしで70秒となっているが、これはかなり遅めだ。下位モデルとはいえ、ノズル数は家庭用の機種と比べるとやや少ない程度で、最小インクドロップサイズが大きく、3つのサイズのドットを打ち分ける事で画質と速度を両立するMSDTにも対応しているのにこの遅さなのは、顔料インクのためと考えられる。一方のEW-M660FTは60秒とやや早めだ。最小インクドロップサイズや解像度、ノズル数がPX-M650Fと同等なのに高速なのは、染料インクのためと思われる。ただ、PX-M650Fをベースにした製品のためか、家庭用複合機の上位機種の13秒と比べるとかなり遅いと言える。なお、MAXIFYの2機種はフチなし印刷もできない事から、写真印刷速度は公開されていない。一方文書の印刷速度は4機種とも公表されている。PX-M650はA4カラー文章が7.3ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、モノクロが13ipmとなっており、写真印刷と異なりこちらは高速だ。上位機種と比べれば遅いが、十分高速な部類に入る。EW-M660FTもほぼ同等で、カラー文書が7.3ipm、モノクロ文書が13.7ipmとなる。そしてフチなし印刷も捨てて速度を追求したMAXIFY MB2330/MAXIFY MB2030はさらに高速だ。MAIXFY MB2330はカラー15ipm、モノクロ23ipmと、PX-M650Fのほぼ倍速で、EW-M660FTやPX-M650Fのモノクロ印刷より高速にカラー印刷が可能である。もともと文書印刷に特化した設計の上に、1枚目の印字中に2枚目を重ねて搬送させる「重ね連送」を行っており、高速化を図っている。MAXIFY MB2030は「重ね連送」を行わないため、それぞれ11ipmと16ipmになるが、それでもEW-M660FT/PX-M650Fより高速だ。差はあるが、4機種とも普通紙印刷は高速に行える事が分かる。 ちなみに使用するインクはPX-M650Fは「つよインク200X」であり、アルバム保存300年、耐光性45年、耐オゾン性30年と、染料インクの家庭用プリンタに劣らない耐保存性である。また、PX-M650Fは「オートフォトファイン!EX」を搭載しており、逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われるため、気楽に写真印刷が行えるようになっている。画質や速度面では写真印刷に向いているとは言いにくいが、耐保存性や自動補正の面では問題なく、ある程度の写真印刷は可能である。一方のEW-M660FTはインクに名称が無く、アルバム保存は同等の300年だが、耐光性は7年、耐オゾン性は半年以上1年未満となっている。つまり飾っておく場合はPX-M650Fと比べるとやや色あせしやすいことになる。EW-M660FTも「オートフォトファイン!EX」に対応している。MAXIFY MB2330/MAXIFY MB2030は「MAXIFY用新顔料インク」となっており、耐保存性は不明である。 印刷コストを見てみよう。まずは写真印刷を見てみると、PX-M650Fは27.8円と高めだ。上位機種より大容量のインクカートリッジが使えないこともあるが、顔料インクは写真印刷での印刷コストが高く付く傾向がある。一方文書印刷となると、A4カラー文書が13.5円、A4モノクロ文書が4.1円となる。上位機種PX-M740Fなどと比べると高めになっている。一方MAXIFY MB2330/MAXIFY MB2030はカラー文書8.9円、モノクロ文書3.0円とPX-M650Fより印刷コストは低めだ。しかし、同じMAXIFYシリーズの上位機種よりはインクカートリッジが大容量ではないため、印刷コストは上がっている。この価格帯になると、印刷コストが上がるのは共通の傾向のようだ。一方で、PX-M650とMAXIFY MB2330/MAXIFY MB2030の間にも差は結構あるため、枚数が多い場合この差が気になる場合もあるだろう。さて、あえて書かなかったEW-M660FTだが、この機種は特殊だ。他の3機種はカセット上のインクカートリッジを採用しており、インクが無くなればインクカートリッジごと交換する。これに対して、EW-M660FT本体の右側面の飛び出したところにエコタンクという大型タンクを搭載する。ここにボトルからインクを補充する方式で、インクの購入もボトルを購入することになる。このボトルが非常に安価でカラーページなら6500ページ、モノクロなら黒インクだけで6000ページ印刷ができ、カラーが各色900円、ブラックが1800円となる。一方、PX-M650Fはカラーが450ページ、モノクロは850ページ印刷でき、カラーが各色1290円、ブラックが3600円となり、MAXIFY MB2330/MAXIFY MB2030は印刷可能枚数は分からないがカラーが各色1790円、ブラックが3500円となる。つまり、他機種の数倍から十数倍印刷ができる量のインクボトルがかなり安価に販売されているわけである。結果、印刷コストはL判写真で5.5円、A4カラー文書が0.8円、A4モノクロ文書が0.4円と群を抜いて安くなる。しかもL判写真の印刷コストは 用紙代4.296円を含むので、インクコストは約1.2円となる。大量印刷をする場合は、かなりのコストダウンにつながるはずだ。また、高い本体価格も、最初から各ボトルが2セット付属しており、11,300枚印刷可能(カタログ値)である事を考えると、テスト用インクカートリッジしか付属しない他機種よりよっぽど安価だ。他機種で11,300枚分もインクカートリッジを購入すれば、この価格差程度では済まないだろう。実際、単純計算でPX-M650Fではブラックインクが約13本、カラーインクが各色約25本必要で、18万円以上になる。 続いて、スキャナ部を見てみよう。4機種とも解像度は1200dpiとなる。いずれもCIS方式で、厚い本の綴じ目近くなど、ガラス面から浮いてしまう原稿ではピントが合わなくなってしまう点は同様だ。上位機種より解像度が劣るように思えるが、反射原稿(紙などの原稿)にしか対応しないため、1200dpiでも十分すぎる解像度と言える。実際、写真サイズを1200dpiで取り込むと、約4,200×6,000ドットとなり2500万画素相当となる事から、十分な性能と言える。またMAXIFY MB2330/MAXIFY MB2030はスキャンした原稿をパソコンを使わずにUSBメモリに保存する機能を搭載しており、パソコン無しで簡単にスキャンができる。そしてFAX付きモデルと言うことで全機種がADFを搭載している。EW-M660FTとPX-M650Fが30枚、MAXIFY MB2330/MAXIFY MB2030が50枚まで一度にスキャンできるためにFAX送信時やコピー時にも便利だ。なお、上位機種と異なり、両面スキャンには対応していない。 MAXIFY MB2330/MAXIFY MB2030はUSBメモリからの画像印刷に対応しているが、そもそもフチなし印刷ができない事から、写真のダイレクト印刷が目的とは思えない。スキャンしてUSBメモリに画像形式で保存したものの印刷といった用途が考えられる。 スマートフォンとの連携機能も全機種が搭載しており、iPhoneやiPod touch、iPadと、Android端末に対応している。いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることでプリント又はスキャンが行える。写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、EW-M660FTとPX-M650Fはフチ無し設定まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。さらにドキュメント印刷にも対応している。PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もできる便利だ。また、スマートフォン上からスキャンを実行し、データをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。出かける前に紙の情報をさっとスマートフォンに転送するといった使い方ができるため便利だろう。さらに、クラウドとの連携機能も搭載されており、オンラインストレージから印刷する事が可能だ。ここで大きな違いは、EW-M660FT/PX-M650Fはスマートフォンのアプリとして搭載しているのに対して、MAXIFY MB2330/MAXIFY MB2030はスマートフォン上だけでなく本体でもクラウドにアクセスし印刷ができる点が上げられる。実際の操作性はスマートフォンからの方が上だが、選択肢が広いという点でMAXIFYの3機種は有利だ。クラウドからのプリント機能をよく使うという場合は、MAXIFYの3機種が便利だろう。 さらにネットワークを利用したプリント機能として、EW-M660FT/PX-650Fは、印刷したい写真や文書をプリンタにメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、通常のプリント同じ操作で、離れた場所の対応プリンタで印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。一方のMAXIFY MB2330/MAXIFY MB2030も、プリンタにメールすると自動で印刷できる「メールからプリント」機能のみ搭載しているが、EW-M660FT/PX-M650FがWord/Excel/PowerPoint/PDFの他、JPEG/GIF/PNG/TIFF/BMPの画像形式に対応しているのに対して、MAXIFY MB2330/MAXIFY MB2030はPDFとJPEGだけの対応というのは少し寂しい。リモートプリント機能はEW-M660FT/PX-M650Fがリードしているといえる。 コピー機能を見てみよう。単純なコピー機能としては、全機種が単純な等倍コピーだけでなく、拡大縮小コピーが可能だ。原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行う「オートフィット」機能や、25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える機能、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「自動変倍」機能も備えるなど、高性能な物だ。また2枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2アップにも対応し、さらにMAXIFY MB2330/MAXIFY MB2030は4枚の原稿を1枚に縮小する4アップにも対応している。その他、EW-M660FT/PX-M650Fは免許証やIDカードのような小さな原稿の裏と表を、1枚の紙に並べてコピーできる「IDコピー」機能を搭載、一方、MAXIFY MB2330/MAXIFY MB2030はADFを使って複数枚の原稿を複数部コピーするときに、1部ずつにまとめてコピーしてくれる「ページ順コピー」と、厚手の原稿で原稿の外の部分や、綴じ目の部分が黒くなってしまうのを軽減する「枠消しコピー」機能を備えている。 それでは肝心のFAX機能を見てみよう。全機種ともスーパーG3に対応しており、モノクロ、カラーFAXを行う事が出来る。ADFを搭載しているため、複数枚の原稿の送信も便利である。33.6Kbpsで通信可能であり、その場合の伝送速度はモノクロで約3秒というのも共通だ。また読取走査線密度はモノクロで「8pels/mm×3.85line/mm又は8pels/mm×7.7line/mm、カラーで200×200dpiなのも共通である。さらに、MAXIFY MB2330/MAXIFY MB2030はモノクロ時に300×300dpiのファインEXモードを備えているが、大きな差ではないだろう。ちなみにEW-M660FT/PX-M650Fはエプソン上位機種のような詳細モードは搭載していない。ダイヤル機能でも全機種が短縮ダイヤルに対応しており、EW-M660FT/PX-M650Fは60件、MAXIFY MB2330/MAXIFY MB2030は100件登録できるため十分だ。受信したファクスの最大保存ページ数はEW-M660FT/PX-M650Fが100枚又は100件、MAXIFY MB2330/MAXIFY MB2030が250枚又は30件となっている。枚数はMAXIFY MB2330/MAXIFY MB2030が多いが、よほどFAXが多くない限りはPX-M650Fでも家庭で使う分には十分なメモリ量を備えているといえる。また電源を切ってもメモリに保存された受信FAXの内容は記憶しているので安心だ。ただし、停電時やコンセントが抜けた場合でも受信した内容が保持されるのはEW-M660FT/PX-M650Fのみとなる。MAXIFY MB2330/MAXIFY MB2030はデーターは破棄されてしまうため、夜にはブレーカーを落とすという場合や、使わないときにどこかにしまっておくという人は注意が必要だ。EW-M660FT/PX-M650FとMAXIFY MB2330/MAXIFY MB2030では件数は異なるが、グループダイヤル、順次同報送信、手動送信、自動リダイヤル機能を備えているため、一般的な家庭用FAX電話以上の事が可能だ。また、「PCファクス」機能も4機種とも備えている。パソコン内で作成したデーターを、一度印刷する事無く、直接FAXとして送信できる「送信」機能は非常に便利だ。一方、受信したFAXをパソコン上に保存できる「受信」機能はEW-M660FT/PX-M650Fみ対応である。 操作パネルはPX-M650FとMAXIFY MB2330がタッチパネル液晶を採用しており、操作性は良好だ。液晶ディスプレイもPX-M650Fが2.7型、MAXIFY MB2330は3.0型と比較的大きく、視認性も良好だ。タッチパネル液晶を採用することにより、直感的にモード切替や設定が行えるほか、カーソルキーや枚数の「+」「−」ボタンをなくすことができ、ボタン数が減り分かりやすい。PX-M650FとMAXIFY MB2330の異なる点として、PX-M650Fはテンキーは独立した物理キーとして、MAXIFY MB2330はテンキーも液晶ディスプレイ内に表示する点が挙げられる。PX-M650Fの場合、FAX機能もメインとして使用されるビジネス向けの機種であるため、あえて電話番号や文字入力に使用するテンキーは独立し、見栄えよりも押しやすさを優先して物理ボタンになったと思われる。一方、MAXIFY MB2330は使用頻度が高い「スタート」「ストップ」「ホーム」「戻る」のボタンに関しては物理的なボタンとしているものの、テンキーに関してはボタン数が急に増えることから液晶ディスプレイ内に表示することで、使用時だけ表示することができすっきりすると言う考え方だ。どちらが良いとも言えないが、FAX機能を頻繁に使うなら物理ボタンのPX-M650Fが、それほど多くないなら、他の操作時にキーが少なく分かりやすいMAXIFY MB2330が便利と言えるだろう。残るEW-M660FTとMAXIFY MB2030はタッチパネル液晶ではなく、単純な物理ボタン操作となる。当然キー数は多くなってはしまうが、慣れてしまえば問題はないだろう。液晶ディスプレイはEW-M660FTが2.2型のモノクロ、MAXIFY MB2030が2.5型と十分な大きさである。EW-M660FTはモノクロだが、写真のダイレクト印刷を行うわけでは無いため、そこまで操作性を損なうわけでは無い。ちなみに全機種とも、操作パネルと液晶ディスプレイは本体前面に斜めに取り付けられている。斜めになっているためどの方向からでも使いやすいが、残念ながら角度調整は出来ないため設置する場所によっては使いにくい場合もあるだろう。 インタフェースは4機種ともUSB2.0に加えて、ネットワーク接続に対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人にはネットワーク接続によりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。またネットワーク接続をすればスマートフォンやタブレットからの印刷も可能となる。ビジネス向けの機種という事もあり、4機種とも無線LANだけでなく有線LANも搭載しており、速度と安定性の有線LANと、ケーブルレスで手軽な無線LANのどちらでも選ぶことができる。なお、Wi-Fiダイレクト(MAXIFY MB2330/MAXIFY MB2030はアクセスポイントモードという名称)に対応しているため、無線LANルータの無い環境でも、スマートフォンやタブレットと直接Wi-Fi接続が可能となっており、より便利である。 本体サイズを見てみよう。PX-M650Fは425×360×230mmで、FAX無し複合機の上位機種EP-808Aの390×341×141mmと比べると大きいが、横幅が35mm、奥行きが19mmの差というのはかなりコンパクトになっている。高さがあるのはADFのためで、仕方の無いところだろう。また、上位機種であるPX-M740Fの449×417×243mmと比べると、一回り小さくなっている印象だ。設置スペース面ではPX-M650Fは優秀だ。EW-M660FTは右側面にエコタンクを搭載している部のお菊なっており、515×360×241mmとなる。とはいえ、エコタンク部分は高さが低く、それより上はPX-M650Fとほぼ同じ横幅になるので、実際にはそれほど大きいという印象は無い。一方MAXIFY MB2330/MAXIFY MB2030は大きめだ。トレイが1段のMAXIFY MB2030でも463×389×260mmと大きい。しかもMAXIFY MB2030のADFは収納式なので、使用時には高さが298mmとなる。本体の上にADFが付いているような形状のPX-M650Fと比べると、260mmまでが本体部分に見えるためかなり縦長に見える。しかも、前述のようにこの状態は用紙カセットを最もコンパクトにした状態で用紙をセットする事ができない。A4用紙をセットした状態でADFも使用できる状態では463×459×298mmとなりかなり大きい。そして、給紙カセットが2段のMAXIFY MB2330では収納時でも463×389×320mmと高さが60mmも高くなり、巨大という印象だ。A4用紙をセットしADFを展開した状態では463×459×358mmとなる。サイズ面ではMAXIFY MB2330/MAXIFY MB2030はかなり不利と言える。 4機種の内、一般的におすすめなのはPX-M650Fである。印刷速度はMAXIFY MB2330/MAXIFY MB2030より遅いし、セット可能な用紙の枚数も少ないが、顔料4色で新プリントヘッドのおかげで普通紙への印刷画質は高く、その他の機能も上位機種より劣るが一通り備えている。なにより本体サイズが小さく設置スペースに困らないのは大きい。タッチパネル液晶による操作性も悪くない。しかし、印刷枚数が多く印刷コストを気にする場合はEW-M660FTがおすすめだ。カラーインクが染料インクという事以外はPX-M650Fと同等で、印刷コストが極端に安い。本体の価格が4万円高いが、各色2本付属したインクボトルの分を、PX-M650Fで購入しようとすると、4万円ではとうてい足りない金額となる。当分の間のインクをセットにして槍安で購入し、なおかつ買い足すときは安いインクが使えるというイメージだ。また、染料インクを採用するため、唯一写真印刷に向いているといえる。画質や耐保存性を考えれば家庭用の複合機の方がおすすめだが、非常に大量印刷する場合や大判印刷を多く行う場合におすすめと言える。一方、MAXIFY MB2330/MAXIFY MB2030は普通紙への高速印刷に特化している。確かに文書印刷やFAXには便利だと思われるが、本体がかなり大きい。設置スペースに余裕があるとしても、フチなし印刷ができない、印刷解像度が低く普通紙以外への用紙での画質が気になるといった点がある。普通紙の印刷速度がとにかく重要というので無ければ、クセが強い製品だけにおすすめしにくい。よほどMAXIFY MB2330/MAXIFY MB2030に気に入った機能が無いなら、一般的にそつなく整っているPX-M650Fか印刷コストを考えたEW-M660FTが良いだろう。 (H.Intel) 【今回の関連メーカーホームページ】 エプソンhttp://www.epson.co.jp/ キャノンhttp://canon.jp/ |