2016年春時点のプリンタ 〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜 (2016年5月28日公開)
数が少なくなったA4単機能機の中で、上位機種に属する4機種である。エプソンのEP-306(16,172円)、PX-S740(16,980円)とキャノンのMAXIFY iB4030(14,800円)、PIXUS iP7230(14,600円)が該当する。いずれも1万円台中盤と価格差は小さいが、EP-306とPIXUS iP7230が家庭向け、PX-S740とMAXIFY iB4030はビジネス向けと対象ユーザーが異なり、特にMAXIFY iB4030は特殊な製品となっている。どのような違いがあるのか見ていこう |
シアン ライトシアン マゼンダ ライトマゼンダ イエロー |
シアン マゼンダ イエロー |
染料ブラック シアン マゼンタ イエロー |
シアン マゼンダ イエロー |
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(つよインク200) |
(つよインク200X) |
(ChromaLife100+) (MAXIFY用新顔料インク) | |||||
ブラック:800ノズル |
Y/染料BK:各512ノズル 顔料BK:1024ノズル |
ブラック:1280ノズル |
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(フチなし印刷不可) |
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(A4普通紙セット可能枚数) |
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○(L判〜2L・ハイビジョン |
○(L/KG/2L/はがき) |
○(250枚・普通紙A4/レター/リーガル)) |
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印刷 |
iPod touch iPad (iOS 5.0以降) Android 2.2以降 |
iPod touch iPad (iOS 5.0以降) Android 2.2以降 |
iPod touch iPad (iOS 5.1以降) Android 1.6以降 |
iPod touch iPad (iOS 6.1以降) Android 2.3.3以降 |
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(Wi-Fiダイレクト対応) |
(アクセスポイントモード対応) | ||||||
4機種はそれぞれ基本となる複合機が存在している。インク構成やインク滴、ノズル数や印刷スピード、さらに用紙のセット方式などを見るとを見ると、EP-306はEP-808Aの、PX-S740はPX-M740Fの、MAXIFY iB4030はMAXIFY MB5330のプリンタ部とほぼ同スペックであり、PIXUS iP7230もPIXUS MG7730のプリンタ部からグレーインクを抜き1世代前のインクを採用した様なスペックである。いずれも複合機の上位から中モデル(PX-M740FとMAXIFY MB5330はFAX付き複合機だが)と同等であることを考えると、十分高性能であると言える。 4機種の中で写真印刷画質が最も高いのはEP-306である。ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色に加えて、ライトシアンとライトマゼンダを搭載する6色構成である。最小インクドロップサイズも1.5plと極小であるため、全体を通して粒状感がほとんど無い高画質な印刷が可能である。特にライトインクを搭載するのは3機種中でEP-306のみであり、色の薄い部分でも粒状感が目立たないというメリットがある。また、この画質は複合機の最上位機種と同等であるため、画質面では最高レベルであると言える。インクは染料インクを採用しているため、写真用紙へ印刷した際に用紙の光沢感がそのまま出るため写真印刷に向いているといえる。一方で普通紙などへ印刷ではシャープさが弱くなる他、耐水性は弱いのは染料インクの宿命と言える。インクは「つよインク200」となっており、アルバム保存300年、耐光性50年、耐オゾン性10年と、耐保存性は高く、その点でも写真印刷に向いている。 次に画質が高いのはPIXUS iP7230である。5色構成となるが、色はブラック、シアン、マゼンダ、イエローの4色となっており、ブラックインクのみ染料インクと顔料インクの2種類を搭載する。そのため写真印刷時は4色印刷となり、色の薄い部分で粒状感が若干気になる。といっても最小インクドロップサイズが1plと極小でEP-306よりさらに小さいため、よく目をこらしてみないと粒状感は感じられず、写真全体がザラザラと見えるようなレベルではない。EP-306と比べるとやや劣るが、十分に写真印刷に耐えうる高画質である。またブラックだけだが顔料インクを搭載しているため、普通紙へのモノクロ印刷時にシャープな印刷結果が得られ耐水性も高いというメリットがある。ブラックインクだけであるため、モノクロ印刷やカラー印刷の黒色部分だけ、しかもグレーはカラーインクを混ぜて表現するため、完全な黒色で、さらに染料インクと混ぜられないため背景色などが無い箇所という限定はあるが、文書印刷などでは結構重宝するはずだ。インクは「ChromaLife 100+」であり、アルバム保存300年、耐光性40年、耐オゾン性10年と、こちらも耐保存性は非常に高く安心だ。 残る2機種PX-S740とMAXIFY iB4030はビジネス用の機種であり、写真画質より文書の印刷画質を重視したインク構成だ。PX-S740では4色インク構成で全色が顔料インクを採用している。インク滴も2.8plと前述の2機種と比べると劣ってしまう。最小インクドロップサイズはそれなりに小さいので写真印刷も行えるが、ライトインクがない事と併せるとEP-306よりは確実に粒状感は感じてしまう。また全色が顔料インクであるため写真用紙に印刷しても光沢感が薄くなり、ポストカードのような半光沢になってしまう他、発色もそれほどよくない。一方顔料インクのメリットとして、普通紙への印刷では染料インクに比べシャープな印刷が行える事がある。そのため普通紙へ印刷しても文字が滲んだように太くなることもなくくっきりしており、また白抜き文字などがつぶれることもなく、画像などもメリハリが出るため、普通紙への印刷画質はかなり高いと言える。また、今モデルより新ノズルとなり普通紙印刷時の解像度もアップしているため、より高画質だ。普通紙のカラー印刷では最小インクドロップサイズで勝る他の2機種よりも綺麗に見える場合もあるだろう。さらに水に強いという特徴もあるため、濡れた手で触ったりマーカーを引いても滲まないという特徴がある。もちろん全色顔料インクなので、PIXUS iP7230のような黒部分に限った話ではなく、カラー、モノクロのどちらでも同じ恩恵が得られる。そのため、普通紙への文書印刷だけでなく年賀状への印刷でも重宝するだろう。ちなみに、インクは「つよインク200X」でありアルバム保存200年、耐光性45年、耐オゾン性30年である。光沢感が薄くなることさえ気にならなければ、写真を印刷した際の色あせなどの問題はクリアしている。 残るMAXIFY iB4030だが、こちらも4色インク構成の顔料インクとなっている。PIXUS iP7230の顔料黒インクとは異なり、MAXIFY用新顔料インクを採用しているので、黒濃度が高くマーカーを引いた時もにじみにくく摩擦にも強くなっている。もちろん顔料インクであるため、普通紙への印刷画質が高く、耐水性が高いのもメリットである。このあたりはPX-S740と同じである。ただし画質面ではPX-S740より劣る可能性がある。最小インクドロップサイズに関しては非公開だが、印刷解像度が600×1200dpiと非常に低いため、最小インクドロップサイズも大きめである可能性は高い。確かに普通紙印刷ならば多少大きめでも、顔料インクであれば綺麗に見えるため問題ないとも言えるが、グラフや表の背景などのべた塗りの色や、写真部分に関しては粒状感が強く出る可能性がある。また、この印刷解像度は普通紙なら問題ないが、ファイン紙などの専用紙を使用する場合は物足りないと言える。もちろん写真印刷に関しては最小インクドロップサイズが大きいと予想される上に4色インクで、しかも顔料インクであることから非常に苦手と言える。 MAXIFY iB4030を除く3機種は写真印刷時に写真を自動補正する機能を備えている。EP-306とPX-S740が備える「オートフォトファイン!EX」は顔を自動判別し、シーンに合った補正をするもので、逆光写真や色かぶりも自然に補正してくれる。一方PIXUS iP7230の備える「自動写真補正II」も顔を自動検出し、顔とそれ以外の部分の露光状態を別々に解析して、それぞれに合った明るさに補正してくれる。3機種とも高精度で自動補正が行われるのは安心である 対応用紙は、4機種ともL判〜A4となっている。いずれも、名刺サイズなどL判サイズより小さな用紙には対応しない。また、MAXIFY iB4030はフチなし印刷が行えない点は注意が必要だ。給紙は4機種とも前面給紙が基本となる。EP-306とPIXUS iP7230は複合機の上位機種と同様、前面2段給紙となる。カセット式となっているため用紙をセットしたまま本体に完全に収納が可能なほか、2段式であるため2種類の用紙を同時にセット可能だ。上段にL判やハガキなどの小さな用紙を、下段にはA4やB5といった大きな用紙をセットするようになっている。EP-306は下段にA4普通紙が100枚、上段にハガキなら20枚までセット可能だ。一方PIXUS iP7230は下段にA4普通紙なら125枚、上段にハガキなら40枚までセット可能だ。セット可能枚数はPIXUS iP7230の方が上だ。しかし、PIXUS iP7230の下段はA4、A5、B5、レター、リーガルサイズのみの対応で、L判、KG、2L判、ハガキサイズに対応する上段と使用できるサイズが完全に分けられている。一方EP-306は下段にもL判やハガキサイズにの用紙も40枚までセットできる。印刷設定で上下段とも使用する設定にすれば、上下合わせてハガキを60枚まで一度にプリントできることになり、PIXUS iP7230を上回る。上段のみでも多くのハガキをセットできるPIXUS iP7230と、下段も使用すればさらに多くのハガキをセットできるEP-306となっている訳である。一方、PX-S740も前面給紙でカセット式だが、1段となっており一度にセットできる用紙は1種類だ。ただしA4普通紙なら一度に250枚セットできる大型のもので、EP-306やPIXUS iP7230より大量の印刷にも対応できる。MAXIFY iB4030も2段カセットだが、EP-306やPIXUS iP7230の2段カセットというよりはPX-S740のカセットを2段搭載したような形だ。そのためどちらのカセットにもA4までの用紙をセット可能で、1段にA4普通紙を250枚、2段で500枚までセットできる事になる。下段カセットは普通紙のみでA4、レター、リーガルサイズのみの対応だが、A4+A4やA4+B5という様に組み合わせて利用ができる。注意点として、前面給紙カセットは本体に収まっているように見えるが、実際にはこの状態では、たとえ小さな用紙であってもセットでする事はできない事だ。使用時にはカセットを伸ばして使う事になるため、本体にセットしても飛び出てしまう。使用時には排紙トレイを引き出すため、スペース的には問題ないと言えるが、未使用時にも用紙をセットしたままだと飛び出してしまい不便とも言える。 前面給紙・前面排紙と言うことで気になるのが、厚紙やラベル用紙、封筒などの二重になった紙である。メーカーとしては問題ない事になっているが、前面から給紙して前面から排紙するため、内部で大きく曲げられてしまうのは少し心配だ。そこで、EP-306とPX-S740では1枚ずつではあるが背面からの手差し給紙を可能としている。従来の背面給紙に近い位置だが、用紙をセットしておけるような大型のものではなく、小さな背面給紙カバーと、用紙を支える小さな「用紙サポート」を引き出せるだけだ。複数枚セットしても一度に給紙されてしまうため、本当に1枚ずつとなる。その分、コンパクトな本体でも背面給紙を可能としているわけである。さらに、通常の給紙カセットでは0.3mm厚の用紙までの対応だが、EP-306の背面手差し給紙では、倍の0.6mmの用紙に印刷ができる。今まで印刷できなかった厚紙にも印刷できる点も便利だろう。前面給紙のみのPIXUS iP7230やMAXIFY iB4030に比べて、1枚ずつだが背面からと言う方法が選択できるEP-306とPX-S740は安心感がある。 自動両面印刷は4機種とも対応している。ただしPX-S740とMAXIFY iB4030は普通紙のみとなるため、ハガキの通信面と宛名面を自動で両面印刷を行いたいならEP-306かPIXUS iP7230となる。同時両面ではないため、片面を印刷して乾燥時間があってから再度給紙され裏面が印刷されるため、時間はかかるが、両面原稿の印刷時や年賀状印刷などには便利だろう。CD/DVDレーベル印刷もEP-306とPIXUS iP7230が対応しており、オリジナルデザインのディスクが作成可能だ。そのほか、EP-306はPictBridgeにも対応しており、対応のデジタルカメラをUSBケーブルで接続する事で、デジタルカメラからの操作で写真プリントが行える。 印刷速度を見てみよう。L判写真の縁なし印刷速度では、EP-306が14秒、PIXUS iP7230が18秒とこの2機種はかなり高速で、大量の印刷でもストレス無く行えるだろう。EP-306は最小インクドロップサイズが1.5plと小さいものの、5つのサイズのインクを打ち分けるAdvanced-MSDTに対応しており、必要に応じて大きなドットを打つことで、画質と速度を両立している。PIXUS iP7230も最小インクドロップサイズは小さいが、ノズル数を多くすることで高速化している。一方PX-S740はカラーが各256ノズル、黒に至っては800ノズルとノズル数はEP-306より多いが、41秒と他の2機種と比べるとかなり遅い事が判る。Advanced-MSDTより劣る3つのサイズのインクを打ち分けるMSDT対応という事も影響していると思われるが、最小インクドロップサイズが大きく、ここまでノズル数が多い割に遅いのは顔料インクを採用しているためと考えられる。41秒でも、十分使えるレベルではあるが、他の機種と比べると差が大きい。写真印刷を大量にするなら他機種が良いだろう(もっとも顔料インクのPX-S740で写真印刷を主体に使うことは無いと思われるが)。MAXIFY iB4030はフチなし印刷が行えないため写真印刷速度が公表されていない。 一方、A4普通紙への文書印刷速度はL判写真とは傾向が異なる。こちらは単位をipmで表す。ipmはimage per minute、つまり1分あたりの印刷枚数であるため、数値の大きい方が高速になる。カラー文書の印刷はPX-S740は10.0ipm、PIXUS iP7230は10.0ipmとなり、L判写真印刷時とは異なり同じ速度になっている。さらにモノクロ文書ではPX-S740が19.0ipmとPIXUS iP7230の15ipmを上回っている。そしてMAXIFY MB5330はカラー15ipm、モノクロ23ipmとさらに高速だ。もともと文書印刷に特化した設計の上に、1枚目の印字中に2枚目を重ねて搬送させる「重ね連送」を行っており、高速化を図っている。PX-S740とMAXIFY iB4030はインクの種類の面だけでなく印刷速度の面でも普通紙印刷向きと言える。ちなみにPIXUS iP7230の15ipmもインクジェットプリンタとしてはかなり高速である。PX-S740が1分で19枚、PIXUS iP7230が15枚、MAXIFY iB4030が23枚と言うことは、100枚の原稿でも、それぞれ5分強と7分弱、4分強で終了する事になり、かなり高速と言える。ちなみに、EP-306はA4普通紙への印刷速度が公表されていないため、比較できないが写真印刷速度から考えるに遅くはないはずだ。 印刷コストを見てみよう。まずはL判写真の印刷コストである。EP-306が20.6円で標準的な値だ。一方PX-S740は22.9円とやや高くなる。大容量インクを採用しているものの、顔料インクでの写真印刷は印刷コストが上がる傾向があるため、EP-306より高くなっている。一方PIXUS iP7230は14.6円とかなり安い。EP-306とPIXUS iP7230との差は6円なので、100枚で600円。この差を大きいと感じるかは人によって違うだろうが、写真を大量印刷するならPIXUS iP7230がおすすめだ。写真のフチなし印刷のできないMAXIFU iB4030は写真の印刷コストは公表されていない。一方文書の場合、PX-S740がA4カラー文書9.4円、A4モノクロ文書3.2円となる。これは比較的安めと言え、PX-S740の本来の用途である普通紙印刷では印刷コストは安めだ。PIXUS iP7230はA4カラー文書のみ公表されているが8.1円と、写真印刷ほどの差は無いがPX-S740より安く、写真も文書も大量印刷でも安心と言える。そして、印刷コストを特に意識して設計されたMAXIFYシリーズの中でも大容量のインクを搭載できるMAXIFY iB4030はカラーが6.1円、モノクロが1.8円と圧倒的に安い。印刷コストだけを見れば非常に優秀と言える。 4機種ともはスマートフォンとの連携機能を搭載している。iPhoneやiPod touch、iPadと、Android端末などに対応しており、専用のアプリを無料でダウンロードすることで、それらから直接印刷が行える。メインで使用すると思われる写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定(MAXIFY iB4030を除く)まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。また、写真以外のプリントにも対応する(PIXUS iP7230は発売当初は写真のみだったが、今年アプリが新しくなり対応するようになった)。ドキュメント印刷はPDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している。また、Webページの印刷もできるため便利だ。さらに、クラウドとの連携機能もPIXUS iP7230意外に搭載されているため、スマートフォン/タブレット上からオンラインストレージ上のデータにアクセスし、そのファイルを印刷することも可能だ。ここで大きな違いは、EP-306とPX-S740はスマートフォンのアプリとして搭載しているのに対して、MAXIFY iB4030はスマートフォン上だけでなく本体でもクラウドにアクセスし印刷ができる点が上げられる。実際の操作性はスマートフォンからの方が上だが、選択肢が広いという点でMAXIFY iB4030は有利だ。クラウドからのプリント機能をよく使うという場合は、MAXIFY iB4030が便利だろう。一方、EP-306ではSNSの写真をコメント付きで印刷が可能である。 さらにネットワークを利用したプリント機能として、EP-306とPX-S740は、印刷したい写真や文書をプリンタにメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、通常のプリント同じ操作で、離れた場所の対応プリンタで印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。一方のMAXIFY iB4030も、プリンタにメールすると自動で印刷できる「メールからプリント」機能のみ搭載しているが、EP-306とPX-S740がWord/Excel/PowerPoint/PDFの他、JPEG/GIF/PNG/TIFF/BMPの画像形式に対応しているのに対して、MAXIFY iB4030はPDFとJPEGだけの対応というのも少し寂しい。リモートプリント機能はEP-306とPX-S740がリードしているといえる。 インタフェースは4機種ともUSB2.0接続に加えてネットワーク接続にも対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人にはネットワーク接続によりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。ただしEP-306とPX-S740、MAXIFY iB4030は有線LAN、無線LANの両方に対応しているが、PIXUS iP7230は無線LANのみの対応である。無線LANの電波が届きにくい位置に設置する場合は、有線LAN接続が可能なEP-306とPX-S740、MAXIFY iB4030の方が便利だ。さらにPX-S740とMAXIFY iB4030はモノクロながら液晶ディスプレイを備えている。PX-S740は2.2型、MAXIFY iB4030は2行表示と複合機と比べると簡易的なものだが、、各種設定やインク残量表示などが行える点で、有るのと無いのとでは大きな違いがある。また液晶ディスプレイを備えていることから、アクセスポイント無しでスマートフォン/タブレットと直接接続できる「Wi-Fi Direct」機能(MAXIFY iB4030は「アクセスポイントモード」)を備えている。液晶ディスプレイが無いとその設定が行えないため、液晶ディスプレイを備えたために搭載できた機能と言えよう。 本体サイズはEP-306が390×338×141mm、PX-205は449×380×171mm、PIXUS iP7230は451×368×128mm、MAXIFY iB4030が463×394×290となる。これを見るとEP-306がエプソンの複合機同様、横幅や奥行きが小さいのが分かるだろう。高さはPIXUS iP7230の方が低いが、EP-306は背面手差しトレイ部分が飛び出ているためで、それ以外の高さは低めだ。一方、前面給紙カセットのセット可能枚数が大きいPX-S740は高さが大きくなっている上に、幅も奥行きも大きめであるため、全体に大柄な印象だ。そして、MAXIFY iB4030は幅、奥行き、高さのすべてで他の3機種より大きい。大量給紙の前面給紙カセットが2段であるとはいえ、高さがEP-306やPIXUS iP7230の倍以上有るのは圧迫感がある。さらに、前述のように、用紙をセットするとカセットが前に飛び出るため、さらに奥行きは大きくなる。コンパクトさを求めるならEP-306だがPIXUS iP7230も十分コンパクトで、PX-S740でもそれほど大きいとは感じないはずだ。しかし、MAXIFY iB4030は設置スペースなどを含めて注意が必要な大きさである。 ここで気になるのが複合機とのサイズの差だが、このサイズを見ると、「単機能機だからコンパクト」とは言えない状況になりつつある。エプソン同士で比較すると、複合機の上位機種EP-808Aは390×341×141mmとなっており、4機種で最もコンパクトなEP-306ですら複合機EP-806Aと奥行きが3mm小さいだけに過ぎない。一方キャノン同士の比較でも、複合機の上位機種PIXUS MG7730は435×370×148mmであり、高さは20mm小さいが、奥行きは1mmの差しか無く、幅はPIXUS iP7230の方が16mm大きいことになる。またPX-S740と同等のプリント機能のFAX付き複合機PX-M740Fは449×417×243mmで、高さはADFを搭載している分大きいが、幅に関しては同等だ。複合機では近年急激に小型化が進んでいる一方、前面給紙カセットの採用で奥行きがA4用紙の縦の長さ+αが必要になり、設置スペースの面でもA4単機能プリンタが有利とは言えない状況になりつつある事から、大きさだけで単機能機を選ぶのは時代遅れと言える。 この3機種から選ぶとなると、まず写真印刷が主な目的なら、EP-306がオススメである。6色インクで印刷も高速であり、染料インクであるため写真印刷に向いている。レーベル印刷や両面印刷にも対応し、前面2段給紙カセットも便利だ。無線・有線LANに対応するなど、スキがない。画質は少し落ちても文書の印刷がきれいな方がよいというなら、PIXUS iP7230も悪くない。画質も十分高画質で、写真印刷速度やレーベル印刷、両面印刷機能などは同じく搭載しているから、写真画質と文書画質の重要度で選べばよいだろう。また印刷コストも安いため、印刷枚数が多い場合もおすすめだ。本体サイズもEP-306よりやや大きいが、設置スペースによほど制限が無ければ気にするほどでは無いだろう。逆に、写真は印刷せず、普通紙や年賀状への印刷が主な目的なら、顔料インクのPX-S740かMAXIFY iB4030がおすすめである。顔料インクの上に普通紙への印刷解像度も高いため普通紙への印刷画質が高く耐水性も高い。さらに普通紙への印刷は、特にモノクロ印刷は高速である。この2機種の場合、とにかく文書の印刷が高速で大量という場合はMAXIFY iB4030でも良いが、基本的にはPX-S740がおすすめだ。MAXIFY iB4030は印刷コストが圧倒的に安いものの、本体サイズがかなり大きく、フチなし印刷ができないなど、かなり思い切った製品だと言える。その点で、PX-S740の方が一般的で、かといって印刷速度も高速で、普通紙印刷画質も顔料プリンタの中でも高画質な部類だ。印刷コストも普通紙ならそれほど高くない。よほどのこだわりがなければ文書印刷主体の人ならPX-S740となる。ただし、最近では複合機との価格差も小さい。EP-306を複合機にした製品は24,980円とそれなりに価格差はあるが、給紙トレイ数や一部機能に違いはあるがEP-306と画質が同じで速度も近い複合機EP-708Aなら14,980円と1,172円安い。PX-S740とプリンタ性能が同じ複合機PX-M740Fは23,980円と高価だが7,000円強でコピーやスキャンだけで無くFAX機能まで搭載している。PIXUS iP7230とほぼ同性能で画質がさらに上の複合機PIXUS MG6930は17,800円で3,200円差、少し劣るPIXUS MG5730なら14.800円と価格差はわずかである。コピーもスキャンもダイレクト印刷(PIXUS MG5630を除く)もできるにも関わらず、価格差は数千円だったり、逆に安かったりという場合もある。この価格帯のA4単機能プリンタを検討している人は、一度複合機もセットで検討してみてはいかがだろうか。 (H.Intel) 【今回の関連メーカーホームページ】 エプソンhttp://www.epson.co.jp/ キャノンhttp://canon.jp/ |