小ネタ集
2016年春時点のプリンタ
〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜
(2016年5月28日公開)

プリンタ比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンタ比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。


1万円以下のA4単機能機
 
 数が少なくなったA4単機能機の中で、下位機種に属する2機種である。エプソンのPX-105とキャノンのPIXUS iP2700となり、それぞれ9,505円と5,300円と、1万円以下という括りだが、価格差がある。上位機種と比べてかなりの機能が省かれており、シンプルな機種だが、2機種は大きく異なる製品である。どちらがおすすめなのか検証していこう。

メーカ
エプソン
キャノン
品番
PX-105
PIXUS iP2700
製品画像
実売価格(メーカーWeb/税込み)
9,505円
5,300円
プリンタ部
インク
色数
4色
4色
インク構成
ブラック
シアン
マゼンダ
イエロー
ブラック
シアン
マゼンダ
イエロー
カートリッジ構成
各色独立
黒+カラー3色一体
顔料/染料系
顔料
(つよインク200X)
染料(カラー)/顔料(黒)
(ChromaLife100+/耐光性のみ30年)
ノズル数
357ノズル
1472ノズル
カラー:各59ノズル
ブラック:180ノズル
カラー:各384ノズル
ブラック:320ノズル
最小インクドロップサイズ
3pl(MSDT)
2pl
最大解像度
5760×1440dpi
4800×1200dpi
給紙・排紙関連
対応用紙サイズ
L判〜A4
名刺〜A4
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面
○(100枚)
○(100枚)
前面
その他
自動両面印刷
用紙種類・サイズ登録
排紙トレイ自動開閉
自動電源オン/オフ
−/○
○/○
特殊機能
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
○(オートフォトファイン!EX)
○(自動写真補正II)
PictBridge
特定インク切れ時印刷
○(黒だけでモード・5日間のみ)
印刷速度
L判縁なし写真(メーカー公称)
74秒
46秒
A4普通紙カラー(ISO基準)
4.7ipm
4.8ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準)
9.0ipm
7.0ipm
印刷コスト
L判縁なし写真
28.0円
22.3円
A4カラー文書
13.1円
12.8円
A4モノクロ文書
4.1円
N/A
ネットワーク
印刷
スマートフォン連携
対応端末
写真プリント
ドキュメントプリント
Webページプリント
クラウド連携
スマートフォン経由/本体
−/−
−/−
オンラインストレージからの印刷
SNSからの印刷
写真共有サイトからの印刷
メールしてプリント
リモートプリント
スキャンしてリモートプリント
液晶ディスプレイ
操作パネル
インターフェイス
USB他
USB2.0×1
USB2.0×1
無線LAN
IEEE802.11n/g/b
有線LAN
100BASE-TX
外形寸法(横×奥×高)
392×264×148mm
445×250×130mm
重量
3.3kg
3.4kg
 

 2機種の概要を見てみよう。インク構成や最小インクドロップサイズ、ノズル数や印刷スピードを見ると、PX-105の性能は、複合機の最下位モデルPX-047AやPX-045Aと比べるとノズル数が多く、印刷速度がやや速い。1年前のPX-047Aの上位モデルのPX-437Aと同等性能といえる。一方PIXUS iP2700は基本となる複合機は見当たらない。ただ最下位機種のPIXUS MG3530よりもノズル数が少なく印刷速度が遅い他、自動両面印刷機能が無いなど、性能的にさらに劣る機種である。複合機の最下位機種より性能が低いだけに、性能はそれなりの物だと言える。
 まずは印刷画質を見てみよう。PX-105とPIXUS iP2700はどちらもブラック、シアン、マゼンダ、イエローの4色構成となっている。PX-105は最小インクドロップサイズが3plと上位機種に比べると大きめだ。ライトマゼンダやライトシアンを搭載しないこともあって、色の薄い部分ではカラーの粒状感が、色の濃い部分ではブラックの粒状感が目立ち、全体にザラザラとした印象を受ける。ただし、全く写真印刷が行えないレベルかと言われれば、よく見なければ十分に高画質であるため、写真印刷も行える画質だ。ただし、PX-105は全色顔料インクを採用するため、写真用紙へ印刷しても発色が良くなく、また光沢感が薄くなりポストカードのような半光沢になってしまう点は注意が必要だ。一方で顔料インクの特徴として普通紙への印刷時に染料インクに比べシャープな印刷が行えるという事が挙げられる。そのため普通紙へ印刷しても文字が滲んだように太くなることもなくくっきりしており、また白抜き文字などがつぶれることもなく、画像などもメリハリが出るため、普通紙への印刷画質はかなり高いと言える。普通紙印刷に関しては最小インクドロップサイズの小さな上位機種に迫る画質になる場合もある。また耐水性も高いため、濡れた手で触ったりマーカーを引いても滲まないという特徴がある。普通紙や年賀状への印刷に特に向いている機種と言える。インクは「つよインク200X」でアルバム保存300年、耐光性45年、耐オゾン性30年と耐保存性は非常に高い。光沢感が薄くなることさえ気にならなければ、写真を印刷した際の色あせなどの問題はクリアしている。
 一方のPIXUS iP2700は最小インクドロップサイズは2plとPX-105よりは小さい。そのため粒状感はやや抑えられる。インク構成は同じ4色でもブラックインクのみ顔料インク、カラーインク3色は染料インクとなっている。染料インクを搭載するため、写真印刷時に光沢感が失われず、用紙本来の光沢感が出るため、写真印刷に向いていると言える。一方、ブラックインクが顔料インクであるため、写真印刷時にブラックインクが使用できない。カラー3色を混ぜて黒に近い色を表現するが、濃い茶色にしかならないため、メリハリは多少弱くなる。PIXUS iP2700の印刷結果を単体で見ると問題ないレベルだが、比べてみるとはっきりと違いがわかるレベルである。写真印刷時の画質は、粒状感ではPIXUS iP2700の方が優秀だが、コントラストの面では劣るため、画質は同じレベルだと言える。一方顔料ブラックのおかげで、モノクロ印刷部ではPX-105と同じ顔料インクのメリットは得られる。ただ、完全な黒ではないグレーの部分には染料のグレーやカラーインクを使用して表現するし、カラーの中に混ざっている場合は顔料と染料を混ぜられないことから、黒インクが使えないなど、背景が無く完全な黒という限定があり、必ずしも顔料インクの恩恵を受けられるわけではない点は注意が必要だ。普通紙印刷時の黒文字や年賀状の宛名面などに効果を発揮するだろうが、本格的に顔料インクのメリットを得たいならPX-105の様な全色顔料インクが必要だ。インクは「ChromaLife 100+」であり、アルバム保存300年、耐光性30年、耐オゾン性10年を誇っている。こちらも耐保存性は非常に高い。なお、同じ「ChromaLife 100+」インクを使う機種は他にもあるが、それらより耐光性のみ40年から30年になっている。
 両機種とも写真印刷時に写真を自動補正する機能を備えている。PX-105が備える「オートフォトファイン!EX」は顔を自動判別し、シーンに合った補正をするもので、逆光写真や色かぶりも自然に補正してくれる。一方PIXUS iP2700の備える「自動写真補正II」も顔を自動検出し、顔とそれ以外の部分の露光状態を別々に解析して、それぞれに合った明るさに補正してくれる。両機種とも高精度で自動補正をしてくれるという事である。これらの点では上位機種に劣る事はない。
 印刷速度は、L判縁なし1枚がPX-105が74秒、PIXUS iP2700が46秒と両機種とも上位機種より遅くなっている。PX-105は最小インクドロップサイズが大きい事に加え、3つのサイズのインクを打ち分けるMSDTに対応しているため、必要に応じて大きなインクを打つことで速度と画質を両立させているが、ノズル数がかなり少なく、特にカラーインクのノズル数は59ノズルしかない事、上位機種の5つのサイズのインクを打ち分けるAdvanced-MSDTと比べると劣ること、さらにインクが顔料インクである事から、74秒と遅めになっている。一方PIXUS iP2700はPX-105より最小インクドロップサイズが小さいが、ノズル数を多くすることで高速化を果たしている。それでも上位機種よりはノズル数は少なめであるため46秒となってしまっている。両機種間にも結構な差があるため、具体的な時間で見てみると、例えばL判写真を100枚印刷する場合、上位機種のEP-306では23分20秒、PIXUS iP2700では1時間16分40秒、PX-105では2時間3分20秒となる。この印刷時間を見て、気になるという場合は上位機種を検討した方が良さそうである。一方、A4普通紙への印刷の場合は、異なった結果となる。こちらは単位をipmで表す。ipmはimage per minute、つまり1分あたりの印刷枚数であるため、数値の大きい方が高速になる。カラー文書の印刷はPX-105は4.7ipm、PIXUS iP2700は4.8ipmとなり、ほぼ同じ速度となる。ちなみに上位機種のPX-S740が10.0ipm、PIXUS iP7230も10.0ipmであることを考えると、遅いことに変わりはないが2機種の差は無いに等しい。さらにモノクロ印刷ではPX-105は9.0ipm、PIXUS iP2700が7.0ipmとPX-105が逆転する。PX-S740の19.0ipmやPIXUS iP7230の15.0ipmよりは遅いが比較的高速だ。これは、PX-105はカラーインクのノズル数が59ノズルなのに対して、ブラックインクのノズル数が180ノズルと、複合機の最上位機種と同等となっている事が一因だ。インクだけでなく印刷速度の面から見ても、写真が得意なPIXUS iP2700と普通紙印刷が得意なPX-105という構図が見える。
 次に印刷コストだが、L判写真フチなしの場合、PX-105が28.0円、PIXUS iP2700が22.3円と上位機種と比べると高めだ。A4文書の場合でも、カラーはPX-105が13.1円、PIXUS iP2700が12.8円とこちらも高めだが、2機種では差が無くなっている。PX-105の採用する顔料インクの場合、写真用紙への印刷では印刷コストが上がる傾向があるため、普通紙印刷がメインなら差は無いと考えても良いだろう。むしろ、PX-105は上位機種と同じく各色独立インクカートリッジを採用しており、無くなった色だけ交換可能であるが、PIXUS iP2700はブラックインクは独立しているものの、カラー3色は一体カートリッジとなっており一色でも無くなると全て交換となる。特に年賀状などの印刷では使用する色に偏りが出やすく、また書類でも特定の色で統一したデザインを採用する場合などでは、PX-105の独立インクカートリッジの方がおすすめと言える。
 対応用紙は、PX-105がL判からA4サイズまでなのに対し、PIXUS iP2700はL判サイズより小さな名刺サイズにも対応している。始めから名刺サイズにカットされた用紙が使用できるため、名刺印刷を考えている人は便利である。一方、上位機種の備えているような前面給紙や自動両面印刷、CD/DVDレーベル印刷機能は省かれており、背面からの給紙のみのシンプルな構成である。セットできる枚数は、両機種ともA4普通紙で100枚となる。ちなみに、PIXUS iP2700は排紙トレイが省略されている点は注意が必要だ。印刷が終了して排紙された用紙が、プリンタから完全に飛び出してしまうため、机の中央に置いて使うなど机の上を排紙トレイ代わりに使用できるなら良いが、机や端の方に置くと床に落ちてしまうし、パソコンデスクなどでパソコンの上のプリンタ台に置くと用紙がパソコンの上に落ちてくることになる。また机の上に置いていても用紙は散らばりやすい。設置場所によっては困ることになりそうだ。ここまでコストダウンの影響が出ていると言える。
 インタフェースは両機種ともUSB2.0に対応している。さらにPX-105はこの価格帯では珍しくネットワーク接続に対応している。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人にはネットワーク接続によりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。しかも有線LAN、無線LANの両対応であるため、安定している有線LANと、ケーブルレスの無線LANの好きな方を選べる。もちろん無線LANはIEEE802.11nに対応しているため、無線LANで接続した場合も、遅さを感じさせなくなっているなど、上位機種並みである。ちなみにネットワーク接続には対応するが、スマートフォンやタブレットからのプリントには非対応である。
 本体サイズはPX-105が392×264×148mm、PIXUS iP2700が445×250×130mmである。設置面積はPX-105の方が若干小さく、高さはPIXUS iP2700の方が小さい。どちらも上位機種と比べるとコンパクトだ。

 2機種は顔料インクか染料インクかという違いがあるため分かりやすい。普通紙への文書印刷や年賀状印刷が目的で、写真印刷は行わないか、行った場合光沢感が薄くなっても気にならないなら、顔料インクの方がシャープで耐水性もあるためPX-105が良いだろう。一方、写真印刷もある程度行うならPIXUS iP2700が良いだろう。PX-105と比べると染料インクであるだけでなく、写真の印刷速度が速いのはメリットだ。その他ネットワーク接続を行いたいならPX-105となる。ちなみにPIXUS iP2700は発売開始がかなり前であるため、店頭ではさらに半額近い価格になっている場合もあり、とにかく低価格でプリンタを手に入れたいならPIXUS iP2700という選び方もある。ただし、PIXUS iP2700は排紙トレイがなかったりと言う点が問題なければである。ちなみに、これらの機種を複合機を比較すると以外と差は小さい。例えばPX-105の場合、印刷速度はやや落ちるが、スキャンや簡単なコピー機能を搭載したPX-047AならPX-105より525円安いの8,980円、さらにネットワーク接続が不要なPX-045Aなら2,000円安い7,600円となる。。しかも本体サイズは390×300×145mmと奥行きが36mm大きい以外はほぼ同サイズだ。また6色インクで高画質で印刷も高速、コピーだけで無くダイレクトプリントもスマホからのプリントもできるEP-707Aも10,980円と1,475円高いだけだ。一方のPIXUS iP2700に近いプリント機能を持っている複合機PIXUS MG3630は9,800円だ。ダイレクト印刷機能を持たずコピー機能も簡易的なものだが、スキャンもコピーも出来るだけでなく、PIXUS iP2700よりやや印刷速度が速く、自動両面印刷機能を持ち、スマホからの印刷・スキャンも行え、無線LAN接続も可能で、4,500円差である。本体サイズは449×304×152mmと若干大きくはなるが、大きな差ではないし、こちらは排紙トレイもある。PX-105とPIXUS iP2700だけでなく複合機も一緒に検討し見るのも良いかもしれない。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/


PX-105
PIXUS iP2700