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2017年春時点のプリンタ 〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜 (2017年4月15日公開)
昨年までは無かった3万円以上のA4複合機である。エプソンのEP-30VAとEW-M770TキヤノンのPIXUS TS9030がこの価格帯の製品だ。EP-30VAは「V-edition」というプレミアムな画質と低印刷コストを売りにしたシリーズの製品であり、PIXUS TS9030は「プレミアムデザインモデル」といううたい文句で、どちらも「プレミアム」な機種という位置づけだ。一方のEW-M770Tはエコタンク搭載プリンターの最上位モデルで、他の2機種とは違ったコンセプトの機種と言える。EP-30VAが49,980円、EW-M770Tが69,980円、PIXUS TS9030が34,880円とかなりの価格差があるが、果たしてどのような違いがあるのだろうか。 |
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シアン マゼンタ イエロー レッド グレー |
染料ブラック シアン マゼンタ イエロー |
染料ブラック グレー シアン マゼンタ イエロー |
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(タンク式) |
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(つよインク200) (Epson ClearChrome K2) |
(ChromaLife100) |
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顔料ブラック:360ノズル |
Y/GY/染料BK/顔料BK:各1024ノズル |
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(A4普通紙セット可能枚数) |
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○(2L・ハイビジョン以下) |
○(2L・ハイビジョン以下) |
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背面:カバー連動) |
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印刷部 |
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フォーム印刷(罫線・マス目・便箋・スケジュール帳・五線譜・メッセージカード・折り紙封筒) | フォーム印刷(罫線・マス目・便箋・スケジュール帳・五線譜・メッセージカード・折り紙封筒) |
定型フォーム印刷(原稿用紙・方眼紙・五線譜・レポート用紙・スケジュール帳・チェックリスト・漢字練習帳) |
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印刷 |
iPod touch iPad (iOS 8.0以降) Android 4.0以降 (NFC対応) |
iPod touch iPad (iOS 8.0以降) Android 4.0以降 |
iPod touch iPad (iOS 7.0以降) Android 4.0以降 (NFC対応) |
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(Wi-Fiダイレクト対応) |
(Wi-Fiダイレクト対応) |
(ダイレクト接続対応) |
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EP-30VAとPIXUS TS9030は共に6色インクだが、その構成は大きく異なる。PIXUS TS9030は染料インクのブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色に加えて、グレーと顔料ブラックインクを搭載する。写真印刷時は基本4色+グレーインクの5色印刷となる。最小インクドロップサイズは1plと非常に小さい。このインク構成は下位モデルと同じで、画質的には同等だ。PIXUS TS9030のグレーインクはエプソンの6色機で採用される(EP-30VAは異なるが。後述)ライトシアンとライトマゼンダの代わりとして作用する。色の薄い部分にグレーインクを併用することで粒状感が抑えられる。最小インクドロップサイズも小さいので粒状感は皆無と言える。ただ色の再現力という点では「基本4色+グレー」ではカラー系のインクが3色となり、ライトシアン・ライトマゼンダを搭載する機種との比較では、やや鮮やかさが劣る形となる。単体で見れば十分に高画質であるため問題ないレベルで、比較すると差が分かるという程度だが。一方のEP-30VAは全色染料インクで基本4色に加えてレッドとグレーインクを搭載する。従来のライトシアンとライトマゼンダを搭載する6色とは異なる構成だ。そのため「Epson ClearChrome K2インク」と呼んで、従来の6色と区別している。最小インクドロップサイズは1.5plとこちらも非常に小さい。それに加えて、プロセレクション(写真のプロ向けのプリント単機能機)の製品に採用されている理論的色変換システム「LCCS」を搭載する。「LCCS」は写真をプリントする際のインク配分を論理的に算出する色生成技術で、階調性・色再現域・粒状性などの点からベストになるように複雑に計算されて打つインクが決定されるというものだ。さらに、光源によって色合いが異なる光源依存性も最適になる様に計算されるなど、かなり高度なものだ。さらに紙送りの精度も高めることで、基本4色だけでも従来の6色に相当する高画質な印刷ができる。そこにレッドインクにより、くすみがちな赤系統の表現力を高め、赤い物だけで無く夕日や肌の色などでも違いが出る。さらに従来の6色ではモノクロ写真の場合のグレーの部分はカラーインクを使って表現するため青白くなってしまうが、EP-30VAではグレーインクを搭載しているため綺麗なグレーの階調表現ができる。ライトシアン・ライトマゼンダを搭載する6色機よりさらに色鮮やかな印刷が可能となっている。残るEW-M7770Tは、5色インクとなる。染料インクのブラック、シアン、マゼンダ、イエローと顔料ブラックからなる。PIXUS TS9030からグレーインクを除いた構成と言える。写真印刷は4色印刷となるが、最小インクドロップサイズは1.5plと十分に小さいため、よく見比べなければ違いは分からないだろう。EP-30VA、EW-M770T、PIXUS TS9030は、いずれも十分綺麗に写真を印刷できるが、EP-30VA、PIXUS TS9030、EW-M770Tの順となる。特にEP-30VAがワンランクもツーランクもより鮮やかに印刷できると言える。 一方、普通紙印刷画質に付いては、EW-M770TとPIXUS TS9030の顔料ブラックインクが力を発揮する。顔料インクは、写真印刷は苦手だが、普通紙などへの印刷ではメリハリのある印刷結果が得られる。小さな文字や中抜き文字も潰れずに印刷が可能なほか、耐水性も高いため濡れた手で触ったりマーカーを引いても滲まない。そのため、写真用の染料ブラックと文字用の顔料ブラックの両方を搭載する。EP-30VAも「細線強調機能」や「文字くっきり機能」を搭載し、染料インクながらドライバレベルでの改良により画質を改善しており、差は昔よりは小さくなっているが、コピーや文書印刷では、やはり顔料インクを搭載するEW-M770TやPIXUS TS9030に軍配が上がる。しかし黒と言っても、完全な黒ではないグレーの部分には染料のグレー(PIXUS TS9030の場合)やカラーインクを使用するし、カラーの中に混ざっている場合は顔料と染料を混ぜられないことから、染料インクが使われるなど、背景が無く完全な黒という限定があるなど、必ずしも顔料インクの恩恵を受けられるわけではないが、そういった部分だけでも顔料インクが使えると、全体的に引き締まって見えるのは確かだ。 最小インクドロップサイズは非常に小さいが、EP-30VAとEW-M770TはAdvanced-MSDTという5つのインクサイズのインクを打ち分ける機能を搭載しており、必要に応じて大きなインクサイズを打ち分ける事で高速化と高画質化を両立しており、PIXUS TS9030はノズル数を非常に多くすることで、最小インクドロップサイズは小さくても高速化を実現している。結果、L判縁なし写真印刷で、EP-30VAは33秒、EW-M770Tは24秒、PIXUS TS9030が18秒となっている。EP-30VAは下位モデルのEP-879Aより遅いが、LCCSなど複雑な処理も行われている上に給紙も精度を重視した画質重視の設計であるため、速度より画質を取ったという形だろう。大量印刷する場合はEW-M770TやPIXUS TS9030の方がストレスが無いだろう。一方、普通紙への印刷速度はPX-30VAは公表されていないため、比較することはできないが、EW-M770Tは10ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、モノクロが13ipm、PIXUS TS9030はそれぞれ10ipmと15ipmとなっている。1分間にカラー原稿が10枚というのは非常に高速だと言えるだろう。 使用するインクはEP-30VAが「つよインク200」で、アルバム保存300年、耐光性50年、耐オゾン性10年となる。EW-M770Tはインクに名称こそないものの、アルバム保存300年、耐光性50年、耐オゾン性10年と同等となっている。一方、PIXUS TS90730は「ChromaLife100」でありアルバム保存100年を実現している。3機種とも十分なレベルの耐保存性を持ったインクであるが、EP-30VAとEW-M770Tの方がさらに耐保存性は高く、耐光性なども書かれているなど一歩上回る印象だ。ちなみに、EP-30VAとPIXUS TS9030は各色独立インクとなっており、なくなった色だけ交換できる。EW-M770Tはエコタンク方式であるため、ボトルからタンクに注入する形となり、各色独立と言える。 印刷する上で、印刷コストも気になるはずだ。L判写真1枚は、EP-30VAが12.7円、EW-M770Tは6.0円、PIXUS TS9030が15.9円となる。EW-M770Tが極端に安くEP-30VAも安いが、PIXUS TS9030もプリンタ全体から見ればかなり安い方になる。ただ、差はかなり大きく、EW-M770TとPIXUS TS9030では約10円の差となる。100枚印刷しても990円とそれほど大きくは無いが、印刷枚数が多い場合には無視できない差だと言える。また、普通紙への印刷コストは、EP-30VAは公表されていない物の、EW-M770TはA4カラー文書1.3円、A4モノクロ文書が0.5円で、PIXUS TS9030の8.9円と比べると7分の1程度だ。EP-M770Tの印刷コストが非常に安いのは、一般的なインクカートリッジタイプでは無く、インクボトルからタンクに注入する方式だからだ。インクボトルはカートリッジタイプに比べて圧倒的に量が多いわりに、価格は1,200円(倍の容量の顔料ブラックは2,400円)とインクカートリッジと変わらない。そのため、印刷コストが極端に安いのだ。ボトルを注入口に挿し込めば満タンまで注入されて止まる新しいエコタンク「挿すだけ満タンインク方式」で、従来より簡単だ。また、タンクとボトルの注入口の形が色ごとに異なるため、入れ間違いも防げるようになっている。タンクに残った状態で追加注入し、残ったインクをボトルのまま保存しておくことも可能だ。また、他機種では動作確認用のインクカートリッジしか同梱しないのに対して、EW-M770Tでは製品と同じものが1本ずつ同梱される。そのためカラー文書の印刷で、カラーインクは5,000枚、顔料ブラックは8,000枚、フォトブラックインクは11,500枚まで同梱インクで印刷できる。EW-M770Tは同梱インクでかなりの枚数が印刷可能で、その後も非常に低印刷コストで印刷できる 従来とは異なる考え方の製品と言える。本体の価格が高いのもインクボトルが付属することを考えると納得できる。他機種で、インクカートリッジをインクボトル1本分購入すると、価格差ではとうてい足りない事を考えると、十分元は取れる。 給紙に関しては、3機種で方針が異なる。EP-30VAとEW-M770Tは前面給紙を基本としており、大小2段のカセットとなっている。上段にL判やハガキなどの小さな用紙を、下段にはA4やB5といった大きな用紙をセットするようになっている。完全に本体に収納可能なので、用紙をセットしたままにしてもホコリがかかるなどの心配がないのはメリットだ。下段にA4普通紙が100枚、上段に写真用紙やハガキなら20枚までセット可能だ。また、下段にもL判やハガキサイズにの用紙もセットでき、その場合、ハガキなら40枚セット可能となるため、上下段ともにハガキを入れれば合計で60枚までセットできる。もちろん連続で使用が可能となる。下段の用紙を入れ替える手間をかければより大量給紙ができる。最小用紙サイズはL判で名刺などのより小さな用紙には対応していない。前面給紙・前面排紙と言うことで気になるのが、厚紙やラベル用紙などである。メーカーとしては問題ない事になっているが、前面から給紙して前面から排紙するため、内部で大きく曲げられてしまうのは少し心配だ。また封筒など二重になっている用紙への印刷も不安なほか、定型サイズでない場合前面給紙カセットのガイドをあわせにくい。そこで、簡易的ながら背面給紙も行える。従来の背面給紙に近い位置だが、用紙をセットしておけるような大型のものではなく、小さな背面給紙カバーと、用紙を支える小さな「用紙サポート」を引き出せるだけだ。印刷を実行して、セットする旨のメッセージが出てから用紙を差し込む方式であるため、本当に1枚ずつとなる。その分コンパクトな本体でも背面給紙を可能としているわけである。さらに、通常の給紙カセットでは0.3mm厚の用紙までの対応だが、背面手差し給紙では、倍の0.6mmの用紙に印刷ができる。今まで印刷できなかった厚紙にも印刷できる点も便利だろう。 一方のPIXUS TS9030は前面給紙カセット+背面給紙となっている。EP-30VAやEW-M770Tと似ているようだが、こちらは前面が1段で、代わりに背面は手差しでは無く一般的な背面給紙となっている。前面にA4普通紙、背面にL判写真用紙という風に入れておけばEP-30VAと同じような使い方となる。注意点としては、前面給紙カセットは普通紙のみという事だ。サイズもA5〜A4サイズとなる。そのため、ハガキや写真用紙、ファイン紙などは全て背面給紙を利用することとなる。また、前面給紙カセットは一見すると本体に完全収納されているようだが、この状態ではB5以下の用紙しかセットできない。A4用紙をセットする場合は、カセットを伸ばす必要があり、そうすると本体に収納した際にカセット部が数センチ前に飛び出る事となる。排紙トレイよりは前に飛び出ないため、利用時は気にならないが、一番利用されると思われるA4サイズで綺麗に収納できないのは残念と言える。一方で背面給紙は普通紙もセット可能で100枚まで、前面給紙カセットも100枚なので、合計200枚までセットできるのはメリットだ。もちろん連続で使用する事ができる。ハガキは背面給紙のみで40枚となる。背面給紙は用紙のセット時に左右のガイドを合わせるだけで良く、セットしやすい一方でデメリットもある。用紙をセットするために上方に空間が必要なほか、トレイが後方に傾くため、本体の後方にある程度のスペースが必要になってしまう。また、用紙紙をセットしたままだとホコリをかぶってしまうため、ホコリをかぶった用紙が給紙されると故障の原因になる場合がある。普通紙以外の用紙も常にセットしておくという使い方の場合、前面カセットの方が便利だと言えるだろう。なお、背面給紙からの給紙の場合でも用紙厚は0.3mmまでで、EP-30VAのような厚紙には対応しない。一方でL判より小さい名刺サイズに対応するため、名刺サイズの用紙に直接印刷をすることが可能のはメリットだ。 3機種とも用紙の種類とサイズを登録しておく機能が搭載されている。液晶ディスプレイでメニューから登録も可能だが、前面給紙カセットを挿し込む、またはPIXUS TS9030の背面給紙は手前の用紙カバーを閉じた際に、自動的に登録画面が表示されるため便利だ(されないようにもできる)。この登録内容と、印刷時の用紙設定が異なっている場合、メッセージが表示される仕組みだ。なお、PX-30VAとEW-M770Tはこれに加えて、印刷時に実際の用紙幅をセンサーでチェックする機能もあり、できる限り印刷ミスによる用紙とインクの無駄遣いをなくす工夫がなされている。 無線/有線LAN接続ができるようになり、プリンタから離れた場所のパソコンやスマートフォンから印刷を実行することが増えたため、電源や排紙トレイの自動化が進んでいる。3機種とも印刷が実行されると自動的に電源がオンになる機能を備えている。それに加えて、EP-30VAとPIXUS TS9030は排紙トレイが自動的に出てくる。また、排紙トレイに引っかかる操作パネルは自動的に少し角度が上がる。EW-M770Tは排紙トレイは手動で引き出す必要があり、引き出すまで印刷は始まらないが、引き出した状態にしておけば自動的に電源が入った後、印刷が実行される。3機種とも用紙はあらかじめカセットにセットしておけることから、プリンタの前に行くことなく印刷が実行できるため非常に便利だ。強いて言うならEP-30VAとEW-M770Tは普通紙だけで無くL判写真用紙やハガキもカセットにセットできるため、どちらに印刷する場合でも完全自動化ができるため、より便利だ。その後指定した時間が経てば自動的に電源はオフになる。その際、EP-30VAとPIXUS TS9030の排紙トレイは自動的に収納される。またEP-30VAは上がっていた操作パネルは垂直に戻り収納されるなど、こちらは完全自動である。PIXUS TS9030は操作パネルは収納されない。 その他、自動両面印刷機能は3機種とも搭載している。普通紙だけでなくハガキなどにも対応するため、年賀状で通信面と宛名面を用紙の差し替え無しで印刷できるなど、便利である。また、CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷機能も3機種とも備えている。レーベル印刷のトレイを使わない時は、EP-30VAとEW-M770Tは前面給紙カセットの下に、PIUXUS TS9030は排紙トレイの下に収納できる。写真の自動補正機能としては、PX-30VAとEW-M770Tは「オートフォトファイン!EX」、PIXUS TS9030は「自動写真補正II」と名称は違うものの、逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われる。もちろんパソコンからの印刷時だけでなく、後述のダイレクト印刷時にも利用できる。さらにPX-30VAでは「高彩モード」が選択でき、新たに採用したレッドインクの力で、くすみががちな赤系の表現をより色鮮やかに印刷できるようになっている。 続いて、スキャナ部を見てみよう。解像度はEP-30VAとPIXUS TS9030は共に2400dpi、EW-M770Tは1200dpiとなる。解像度に差があるが、反射原稿(紙などの原稿)にしか対応しないため、1200dpiでも十分すぎる解像度と言える。実際写真サイズを2400dpiで取り込むと約8,400×12,000ドットとなり1億画素相当となる事から、オーバースペックとも言える。いずれもCIS方式で、厚い本の綴じ目近くなど、ガラス面から浮いてしまう原稿ではピントが合わなくなってしまう点は注意が必要だ。EP-30VAとEW-M770Tはスキャンした原稿をパソコンを使わずにメモリカードに保存する機能を搭載しているためパソコン無しで簡単にスキャンができる。また、EP-30VAとPIXUS TS9030は原稿を取り忘れた際に警告してくれる機能を搭載しているのは便利だ。 ダイレクト印刷は、EW-M770TとPIXUS TS9030がSDカードのみ、EP-30VAがSDカードに加えてメモリースティックDuoとコンパクトフラッシュにも対応する。最近のデジタルカメラやスマートフォンは一眼レフなどを除きSDカードかその小型版のmicroSDになっているためEW-M770TやPIXUS TS9030でも問題は無いが、少し前のソニーのカメラや一部の一眼レフにも対応している点でEP-30VAの方が安心感はある。なお、RAWデータのダイレクト印刷は行えない。さらにEP-30VAとEW-M770TはメモリカードだけでなくUSBメモリからの印刷にも対応している。また、各種メモリカードからUSBメモリへのバックアップが可能な他、USBメモリ以外に対応の外付けハードディスクや外付けDVDドライブへのバックアップやそれらからの印刷も行える。その上、EP-30VAとEW-M770Tをネットワーク接続をしている場合、他のパソコンから外付けハードディスクのデータにアクセスが可能な「外部機器共有」機能も備えている。つまり複合機単体でメモリカード内の写真やスキャンした写真や原稿を外付けHDDに保存でき、それらに家庭内のどのパソコンからもアクセスできるわけである。もちろん写真データ以外も共有可能であるため、簡易NASとしても使用できる。そのほか、EP-30VAは赤外線通信による印刷に対応しているため、ガラケーからも印刷可能だ。複雑なのでまとめると、EP-30VAはSD/メモリースティック/コンパクトフラッシュ/USBメモリ/赤外線通信対応、EW-M770TがSD/USBメモリ対応、PIXUS TS9030がSDカード対応となる。 PictBridgeは3機種とも対応しているが、EP-30VAとEW-M770TはUSB接続とWi-Fi接続の両方式のPictBridgeに対応しているのに対して、USBポートを省略したPIXUS TS9030ではWi-Fi接続のPictBridgeにしか対応しない点は注意が必要だ。SDカードだけに簡素化したPIXUS TS9030に対して、機能の豊富さではEP-30VAやEW-M770Tに軍配が上がると言える。 下位機種に比べてダイレクト印刷時にも色補正ができるのもこの価格帯のウリとなっている。EP-30VAの場合、選んだ写真の色補正一覧を印刷し、その中から好みの物を選ぶことができるほか、Exif情報と共に写真一覧を印刷できる。また、明るさやコントラスト、鮮やかさ、レッド・グリーン・ブルーそれぞれの色調補正も可能だ。またモノクロ写真の色補正にも対応する。その他「レトロ」「セピア」「トイフォト」「ハイキー」「ポップ」「デイドリーム」「モノクロ」「クロスプロセス」といった8種類のフィルターを適用することもできる。さらに、フチなしと白フチだけでなく、黒枠付きの白フチ、黒フチ、白枠付きの黒フチが選べるほか、カラーのフチも選べる。フチの太さも4段階から選択可能だ。一方、PIXUS TS9030も「クリエイティブフィルター」という機能を搭載しているが、「明るく」「暗く」「モノクロ」「セピア」「アンティーク調」「ビンテージ調」「鮮やか」「温かく」「シネマ調」のフィルターを選べるだけである。EW-M770TはEP-879Aなど下位機種と同等だが、明るさやコントラスト、シャープネス、鮮やかさを5段階で設定できるほか、「モノクロ」「セピア」のフィルター設定も可能だ。またEP-30VAと同じく、撮影情報付印刷が可能な他各種のフチが設定できるなど、十分高性能だ。また、EW-M770TやPIXUS TS9030では印刷時に調整するしかできないが、EP-30VAでは補正後の画像を別名でメモリカードに保存できるのも便利だ。ダイレクト印刷時にEP-30VAの方が、よりこだわったプリントが可能だと言える。 ダイレクト印刷時の機能として代表的な手書き合成シートは3機種とも対応している。またPIXUS TS9030は写真やハガキだけでなくCD/DVD/Blu-rayレーベルの手書き合成にも対応している。その他、EP-30VAとEW-M770Tは塗り絵風の輪郭だけの印刷や、罫線、マス目、便箋、スケジュール帳、五線譜、メッセージカード、折り紙封筒が印刷できるフォーム印刷機能を搭載している。一方のPIXUS TS9030ではカレンダー印刷機能や、原稿用紙、方眼紙、五線譜、レポート用紙、スケジュール帳、チェックリスト、漢字練習帳が印刷できる定型フォーム印刷機能を備えており、3機種とも単体でも機能は豊富であるといえる。 スマートフォンとの連携機能も4機種とも搭載しており、iPhoneやiPod touch、iPadと、Android端末に対応している。いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることでプリント又はスキャンが行える。EP-30VAとPIXUS TS9030はNFCにも対応しているため、Android限定にはなるが、タッチするだけで接続設定ができるなど、上位機種ならではの便利な機能も搭載している。メインで使用すると思われる写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。さらにドキュメント印刷にも対応している。PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もできる便利だ。また、3機種ともスマートフォン上からスキャンを実行し、データをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。出かける前に紙の情報をさっとスマートフォンに転送するといった使い方ができるため便利だろう。さらに、クラウドとの連携機能も搭載されており、オンラインストレージから印刷したり、SNSの写真を印刷する事ができる。SNSの写真はコメント付きでも印刷が可能だ。またPIXUS TS9030は写真共有サイトからの印刷も可能だ。ここで大きな違いは、EP-30VAとEW-M770Tはスマートフォンのアプリとして搭載しているのに対して、PIXUS TS9030はスマートフォン上だけでなくPIXUS TS9030からも印刷ができる点が上げられる。実際の操作性はスマートフォンからの方が上だが、選択肢が広いという点ではPIXUS TS9030が便利だ。 さらにネットワークを利用したプリント機能として、EP-30VAとEW-M770Tは印刷したい写真や文書をEP-30VA/EW-M770Tにメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、スキャンした画像を離れた場所の対応複合機で印刷できる「メールdeリモート印刷」、通常のプリント同じ操作で、離れた場所のEP-30VA/EW-M770Tで印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。一方のPIXUS TS9030はこれらの機能は搭載しない。リモートプリント機能はEP-30VA/EW-M770Tの圧勝だ。 コピー機能を見てみよう。単純なコピー機能としては、両機種とも単純な等倍コピーだけでなく、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「自動変倍」機能や、原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行う「オートフィット」機能、さらに25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える機能を搭載した高性能な物だ。またCD/DVD/Blu-rayレーベルコピーも3機種とも対応である。また原稿面に写真を複数枚置き、焼き増し風のコピーを行うことも出来る。この際、EP-30VA/EW-M770Tは「退色復元」、PIXUS TS9030では「色あせ補正」と名称は異なるが、両機種とも昔の色あせした写真も自動で補正してくれる機能も備えている。また、両機種とも2枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2アップにも対応する。さらにPIXUS TS9030では4枚の原稿を1枚に縮小する4アップにも対応している。その他、EP-30VA/EW-M770Tはコピー時にも「塗り絵印刷」が行える他、見開きの本を左右ページで別々にコピーする「BOOKコピー」、アイロンプリント紙への印刷時に使える「ミラーコピー」、背景の色を白にして見やすくする「背景除去機能」を備えている。またコピー時には文字と写真領域を判定してそれぞれを見やすいように補正する「領域判定コピー」を行っている。一方PIXUS TS9030には厚手の原稿など原稿台のカバーが浮いてしまう場合に黒くなる部分を消去する「枠消しコピー」機能と、免許証などの裏表をそれぞれスキャンして1枚の紙に印刷する「IDコピー」機能を備える。それぞれ機能は異なるが、複合機単独で様々なコピーが行えるよう工夫されている。 操作パネルはEP-30VAとPIXUS TS9030はタッチパネル液晶を基本とする点では同じである。スタートや戻ると言ったボタンも液晶内に表示されるので、物理的なボタンは電源ボタンのみというのも同じだ。本体前面に配置され、液晶ディスプレイだけでなく操作パネル全体を持ち上げて角度調整が可能だ。最大90度まで起こすことができるので、垂直から水平まで見やすい角度で操作ができるよう工夫されているのも共通だ。液晶サイズはEP-30VAが4.3型、PIXUS TS9030が5.0型となる。PIXUS TS9030の方が大きいが、両機種とも十分大画面であるため、操作性は良好だ。一方のEW-M770Tはタッチパネル液晶とはなっておらず、ボタン操作となる。液晶サイズも2.7型と他機種より小型だ。とはいえ、平均的なサイズは確保しており視認性は悪くない。また、EP-30VAやPIXUS TS9030と同じく液晶ディスプレイだけでなく操作パネル全体を持ち上げて90度まで角度調整が可能なので、設置場所によらず使いやすいように調整できるのは共通だ。 インタフェースは3機種ともUSB2.0に加えて、有線/無線LANに対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人には有線LAN/無線LANによりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。またネットワーク接続をすればスマートフォンやタブレットからの印刷も可能となる。またWi-Fiダイレクト(PIXUS TS9030はダイレクト接続)に対応しているため、無線LANルータの無い環境でも、スマートフォンやタブレットと直接Wi-Fi接続が可能となっている点も両機種共通の便利な点だ。この際、前述のNFCが力を発揮する場合もあるだろう。 本体サイズを見てみよう。EP-30VAが390×341×141mm、EW-M770Tが425×359×161mm、PIXUS TS9030は472×324×140mmで、EP-30VAとPIXUS TS9030の比較では、僅かずつだが全体にPIXUS TS9030が小さい。ただしPIXUS TS9030は前述のようにA4用紙を前面給紙カセットにセットする場合は、カセットが少し前に飛び出る。また背面給紙を利用する場合は後方にもスペースが必要だ。EP-30VAは基本的に前面給紙カセットだけで使えるし、背面手差しも後方にスペースが無く、用紙ガイドが引き出せなくても、給紙されるまで用紙を手で支えてやれば使用できる。そのため、奥行きに関しては使用時を考えるとEP-30VAの方が小さい場合が多く(PIXUS TS9030でこのサイズで使用できるのはB5以下の普通紙のみを使用し、背面給紙を使用しない場合のみ)、横幅に関してはPIXUS TS9030の方がやや小さいと言った感じだ。使用時のことも考えて検討したいところだ。EW-M770Tはエコタンクを搭載する分全体的に大きくはなっている。とはいえ一昔前の複合機と比べれば同等か、小さくなっていると言えるため、買い換えの場合はサイズが大きくなる心配はする必要はなさそうだ。 3機種の内、一番特殊なのはEW-M770Tだ。画質や機能では他の2機種と比べれば、やや劣るが、印刷コストが極端に安い。つまり、写真をできるだけ綺麗に印刷したいのでは無く、十分綺麗な画質で大量印刷したいという人には最適な機種だ。他の2機種より劣るとは言え、最小インクドロップサイズは非常に小さいため、十分高画質に印刷できる。また、書類やホームページなど文書印刷やチラシの印刷、コピーを大量にしたいという人にも最適な機種だろう。本体価格の高さも、インクボトルが1本ずつ付属していることを考えれば十分元が取れる。残る2機種は似た方向性の機種なので選びにくい。去年までと異なりコンパクトさや操作性がほぼ同等になっているため、その点では選べないと言える。しかし、この2機種を選ぶ上で、「どの程度写真をこだわって印刷するか」が重要となる。より綺麗な写真を印刷したい、または色補正などをこだわったり、大判印刷でも印刷コストを気にしないで印刷したいという場合はEP-30VAだ。レッドインクとグレーインクを含む6色に加えてLCCSにも対応し画質は通常の6色機よりワンランク上で、印刷コストも安い。写真の色編集機能も豊富で、厚紙への印刷も可能だ。価格はEP-30VAの方が1万円高いが、機能の豊富さを考えれば十分におすすめと言える。一方写真もそれなりに綺麗に印刷したいが文書も綺麗で印刷も速くというオールマイティーに使える機種を考えるならPIXUS TS9030がおすすめだ。EP-30VAほどこだわった機能は少ないが、基本的な機能は高いレベルで搭載している。ただPIXUS TS9030を選ぶとなると、下位機種PIXUS TS8030との機能差が小さいのが気になるところだ。写真画質重視ならEP-30VA、印刷コスト重視ならEW-M770T、写真と文書のどちらかに突出していなくて良いが、全体的にある程度のレベルを求めるならPIXUS TS9030か、下位モデルのPIXUS TS8030も候補に入れると良さそうだ。 (H.Intel) 【今回の関連メーカーホームページ】 エプソンhttp://www.epson.co.jp/ キャノンhttp://canon.jp/
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