2017春時点のプリンタ 〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜 (2017年4月15日公開・6月17日追記)
FAX機能付き複合機の中で下位機種に当たる2万円以下の機種である。エプソンからPX-M680F(19,980円)とPX-M650F(19,980円)、キャノンからMAXIFY MB2730(19,800円)、MAXIFY MB2130(16,800円)となる。価格は比較的近く、いずれもビジネス向けに位置づけられている。どのような違いがあるのだろうか。また、価格は59,980円と高いが、EW-M660FTも比較対象としている。PX-M650Fをベースに作られており比較しやすいこと、また付属のインクがかなりの量であり、その分を考えると実質的な本体価格は安いとも言えるためである。 |
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シアン マゼンタ イエロー |
シアン マゼンタ イエロー |
シアン マゼンタ イエロー |
シアン マゼンタ イエロー |
シアン マゼンタ イエロー |
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(タンク式) |
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(つよインク200X) |
(つよインク200X) |
(MAXIFY用新顔料インク) |
(MAXIFY用新顔料インク) |
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黒:800ノズル |
黒:400ノズル |
黒:400ノズル |
黒:1280ノズル |
黒:1280ノズル |
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(MSDT) |
(MSDT) |
(MSDT) |
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(フチなし印刷不可) |
(フチなし印刷不可) |
(フチなし印刷不可) |
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(A4普通紙セット可能枚数) |
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○(250枚・普通紙A4/レター/リーガル)) |
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印刷部 |
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印刷 |
iPod touch iPad (iOS 7.0以降) Android 4.0以降 (NFC対応) |
iPod touch iPad (iOS 7.0以降) Android 4.0以降 |
iPod touch iPad (iOS 7.0以降) Android 4.0以降 |
iPod touch iPad (iOS 7.0以降) Android 4.0以降 |
iPod touch iPad (iOS 7.0以降) Android 4.0以降 |
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枠消しコピー コピー予約 IDコピー |
枠消しコピー コピー予約 IDコピー |
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(Wi-Fiダイレクト対応) |
(Wi-Fiダイレクト対応) |
(Wi-Fiダイレクト対応) |
(ダイレクト接続対応) |
(ダイレクト接続対応) |
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プリント機能を見てみよう。5機種ともブラック、シアン、マゼンダ、イエローの4色構成である。EW-M660FTを除く4機種は全色顔料インクを採用する。最小インクドロップサイズはPX-M680Fが2.8pl、PX-M650Fが3.3pl、MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130は解像度が600×1200dpiと極端に低いことから、最小インクドロップサイズは大きめと思われる。そのため、これら4機種の写真印刷画質は家庭用の複合機と比べて大きく劣る。また、MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130はフチなし印刷にすら対応していないため、そもそも写真印刷に向いているとは言いがたい。PX-M680F/PX-M650Fはフチなし印刷が行えるため、写真印刷が全く行えないほどではないが、4色で2.8pl又は3.3plでは粒状感が有り、全体に少しザラザラとした印象を受けるだろう。PX-M680Fの方がやや画質は上にも思えるが、家庭用複合機の上位モデルは6色で1.5plと比べると、PX-M680FとPX-M650Fの差は小さいと言える。またそれ以上に、顔料インクであるため、写真用紙に印刷した際に、表面の光沢感が薄れポストカードのようになってしまうほか、発色も悪いという問題もある。一方のEW-M660FTはブラックが顔料インク、カラーは染料インクを採用する。最小インクドロップサイズはPX-M650Fと同等の3.3plだが、染料インクが使える分発色が良く、用紙本来の光沢感も出る。4機種中、唯一写真印刷が普通に行える機種と言える。4色構成で最小インクドロップサイズも大きめであるため、家庭用複合機の上位モデルと比べると粒状感があるが、十分に写真印刷に耐える画質といえる。ところがEW-M660FTもフチなし印刷ができないため、写真印刷を実際にするには問題がある。 逆に普通紙印刷に関しては、5機種とも顔料インクを採用するため、染料インクよりメリハリのある印刷が行える。また、耐水性もあることから、濡れたりマーカーを引いても滲まないというメリットもある。ただしEW-M660FTを除く4機種はカラー、モノクロ問わずこの恩恵を得られるが、EW-M660FTがブラックインクだけ顔料インクなので、黒色部分だけだ。それでも文書やFAXなどでは黒色が多いため、十分効果を発揮するだろう。また、PX-M680F/EW-M660FT/PX-M650Fの3機種は普通紙への印刷解像度を360dpiから600dpiへアップした新しいプリントヘッドを採用しており、より普通紙印刷の画質は高くなっている。特にPX-M680Fは普通紙に印刷した際のシアンとマゼンタをより鮮やかにした他、エッジ処理も精密になり、さらのメリハリはアップしている。ともあれ、5機種とも普通紙印刷画質を意識したプリンタである事は確かだ。 使用できる用紙はいずれもL判からA4までとなる。ただし、EW-M660FTとMAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130は前述のようにフチなし印刷を行う事ができない点は注意が必要だ。給紙に関しては、5機種とも前面カセット式となっているが、セット可能枚数が異なる。PX-M680F/EW-M660FT/PX-M650F/MAXIFY MB2130は前面給紙カセットが1段である。給紙セット可能枚数は、PX-M680FとMAXIFY MB2130がA4普通紙で250枚まで、EW-M660FTとPX-M650Fは150枚までとなる。EW-M660FT/PX-M650Fは上位機種よりやや少なめだが、家庭用の機種よりは多めだ。そして、MAXIFY MB2730は前面給紙カセットが2段である。同じサイズのカセットが2段なので両方にA4用紙をセットする事も可能だ。各カセットで250枚セット可能なので、合計500枚となり、大量の印刷やFAX受信が多い環境でも対応できる。下段は普通紙のみで、サイズもA4、レター、リーガルのみとなるが、下段にA4普通紙、上段にB5普通紙と言った使い方も可能だ。注意点として、MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130の前面給紙カセットは本体に収まっているように見えるが、実際にはこの状態では、たとえ小さな用紙であってもセットでする事はできない点だ。使用時にはカセットを伸ばして使う事になるため、本体にセットしても飛び出てしまう。使用時には排紙トレイを引き出すため、スペース的には問題ないと言えるが、未使用時にも用紙をセットしたままだと飛び出してしまい不便とも言える。ちなみに、5機種とも用紙種類とサイズの登録機能を搭載している。いずれも前面給紙カセットを挿し込むと自動的に登録画面が表示されるため便利だ(されないようにもできる)。そして、この登録内容と、印刷時の用紙設定が異なっている場合、メッセージが表示される仕組みだ。また、液晶ディスプレイでメニューから手動で登録も可能である。できる限り印刷ミスによる用紙とインクの無駄遣いをなくす工夫がなされている。 自動両面印刷機能も5機種とも対応している。普通紙のみ対応なのも共通で、ハガキへの両面印刷は行えない。とはいえ、文書印刷やコピー時に便利だ。 印刷速度を見てみよう。写真の印刷速度は、PX-M650FがL判写真フチなしで70秒となっているが、これはかなり遅めだ。下位モデルとはいえ、ノズル数は家庭用の機種と比べるとやや少ない程度で、最小インクドロップサイズが大きく、3つのサイズのドットを打ち分ける事で画質と速度を両立するMSDTにも対応しているのにもかかわらずである。理由としては文書印刷にチューニングされているためか、顔料インクを採用しているためが考えられるが、実際の所は不明だ。一方のEW-M660FTは60秒とやや早めだが、これはフチなし印刷が行えずフチあり印刷での速度であるため。PX-M650Fと同じ最小インクドロップサイズ、解像度、ノズル数であるため特に高速化されているわけでは無いと思われる。また、PX-M650Fと同じヘッドであるため、染料インクを搭載している物の印刷は遅めだ。なお、PX-M680FとMAXIFYの2機種は写真印刷速度は公開されていない。 一方文書の印刷速度は5機種とも公表されている。PX-M680はA4カラー文章が10.0ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、モノクロが20ipmとなっており、非常に高速だ。上位機種と比べるとカラー印刷はやや遅いが、十分高速な部類に入る。EW-M660FTは、ノズル数がモノクロ、カラー共に半分であるためもカラー文書が7.3ipm、モノクロ文書が13.7ipmと全体的に遅くなる。またPX-M650FもEW-M660FTと同じノズル数であるため、それぞれ7.3ipmと13.0ipmとなる。これでも十分高速だと言える。そして印刷速度を追求したMAXIFY MB2730はさらに高速だ。カラー15.5ipm、モノクロ24ipmと、モノクロはPX-M680Fの1.5倍、カラーは1.2倍となる。EW-M660FTやPX-M650Fのモノクロ印刷より高速にカラー印刷が可能とも言える。もともと文書印刷に特化した設計の上に、1枚目の印字中に2枚目を重ねて搬送させる「重ね連送」を行っており、高速化を図っている。MAXIFY MB2130は「重ね連送」を行わないため、それぞれ13ipmと19ipmになるが、カラー印刷はPX-M680Fより高速だ。とはいえ差はあるが、5機種とも普通紙印刷は高速に行える事が分かる。ちなみに5機種ともモノクロ印刷が高速な傾向がある。これはカラーインクとモノクロインクでノズル数に差があるためだ。例えばPX-M680Fの場合ブラックは800ノズルに対してカラーは各256ノズルとなる。とはいえノズル数の増加はコスト増につながるため簡単に増やせない。例えばPX-M680Fの計1568ノズルを4色で平均的に割ると392ノズルとなり、思ったほどカラーが増えない割に黒が大きく減ってしまう。それならば文書印刷でモノクロ印刷が多いだけで無く、FAXプリントなどもモノクロ印刷になるためと思われるため、モノクロに限定してノズル数を割り振って高速化しているわけである。逆に言えばカラー印刷速度を重視するなら、上位モデルとの差は大きく、モノクロに限定するなら差は小さい事になる。 ちなみに使用するインクはPX-M680FとPX-M650Fは「つよインク200X」であり、アルバム保存300年、耐光性45年、耐オゾン性30年と、染料インクの家庭用プリンタに劣らない耐保存性である。また、PX-M680F/PX-M650Fは「オートフォトファイン!EX」を搭載しており、逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われるため、気楽に写真印刷が行えるようになっている。画質や速度面では写真印刷に向いているとは言いにくいが、耐保存性や自動補正の面では問題なく、ある程度の写真印刷は可能である。一方のEW-M660FTはインクに名称が無く、アルバム保存は同等の300年だが、耐光性は7年、耐オゾン性は半年以上1年未満となっている。つまり飾っておく場合はPX-M680F/PX-M650Fと比べるとやや色あせしやすいことになる。EW-M660FTも「オートフォトファイン!EX」に対応している。MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130は「MAXIFY用新顔料インク」となっており、耐保存性は不明である。 印刷コストを見てみよう。まずは文書の印刷コストである。PX-M680FはA4カラー文書が11.4円、A4モノクロ文書が3.2円となる。上位モデルPX-M780Fなどと比べるとやや高くなるが、この印刷コスト自体は平均的な値だ。一方PX-M650Fはそれぞれ13.5円と4.1円となり、PX-M680Fより更に高くなる。一方MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130はカラー文書8.9円、モノクロ文書3.1円とモノクロはPX-M680Fと同等だが、カラーが低く抑えられている。しかし、同じMAXIFYシリーズの上位機種よりはインクカートリッジが大容量ではないため、印刷コストは上がっている。この価格帯になると、印刷コストが上がるのは共通の傾向のようだ。一方で、それぞれの機種間にもある程度の差があるため、枚数が多い場合この差が気になる場合もあるだろう。さて、あえて書かなかったEW-M660FTだが、この機種は特殊だ。他の4機種はカセット状のインクカートリッジを採用しており、インクが無くなればインクカートリッジごと交換する従来の方式だ。これに対して、EW-M660FT本体の右側面の飛び出したところにエコタンクという大型タンクを搭載する。ここにボトルからインクを補充する方式で、インクの購入もボトルを購入することになる。このボトルが非常に安価でカラーページなら6500ページ、モノクロなら黒インクだけで6000ページ印刷ができるにもかかわらず、カラーが各色900円、ブラックが1800円となっている。他機種と比較してみると、PX-M680Fはカラーが600枚、モノクロが1000枚印刷でき、カラーが各1,590円、ブラックが3,790円である。PX-M650Fはカラー450ページ、モノクロ850ページ印刷でき、カラーインクがが各色1,290円、ブラックが3,600円となる。MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130は印刷可能枚数は分からないがカラーが各色1,790円、ブラックが3,500円となる。つまり、他機種の数倍から十数倍印刷ができる量のインクボトルが、他機種のインクカートリッジより安価に販売されているわけである。結果、印刷コストはL判写真で5.5円、A4カラー文書が0.8円、A4モノクロ文書が0.4円と群を抜いて安くなる。しかもL判写真の印刷コストは 用紙代4.296円を含むので、インクコストは約1.2円となる。フチありにはなるが、大量印刷をする場合は、かなりのコストダウンにつながるはずだ。また、高い本体価格も、最初から各ボトルが2セット付属しており、11,300枚印刷可能(カタログ値)である事を考えると、テスト用インクカートリッジしか付属しない他機種よりよっぽど安価だ。他機種で11,300枚分もインクカートリッジを購入すれば、この価格差程度では済まないだろう。実際、単純計算でPX-M650Fではブラックインクが約13本、カラーインクが各色約25本必要で、18万円以上になる。 続いて、スキャナ部を見てみよう。5機種とも解像度は1200dpiとなる。いずれもCIS方式で、厚い本の綴じ目近くなど、ガラス面から浮いてしまう原稿ではピントが合わなくなってしまう点は同様だ。FAX無しの機種より解像度が劣るように思えるが、反射原稿(紙などの原稿)にしか対応しないため、1200dpiでも十分すぎる解像度と言える。実際、写真サイズを1200dpiで取り込むと、約4,200×6,000ドットとなり2500万画素相当となる事から、十分な性能と言える。また、高解像度のセンサーを使うと低解像度時の速度が低下するので、バランスを取ったとも言える。PX-M680FとMAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130はスキャンした原稿をパソコンを使わずにUSBメモリに保存する機能を搭載しており、パソコン無しで簡単にスキャンができる。そしてFAX付きモデルと言うことで全機種がADFを搭載している。PX-M680Fが35枚、EW-M660FTとPX-M650Fが30枚、MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130が50枚まで一度にスキャンできるためにFAX送信時やコピー時にも便利だ。なお、上位機種と異なり、両面スキャンには対応していない。ちなみに、ADFの速度だが、PX-M680Fがカラー、モノクロ共に7.0ipm、EW-M660FT/PX-M650Fが3.0ipmと大きな差がある。連続スキャンを多用するという場合は、この差は気になるはずだ。ちなみにMAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130の速度は公表されていないが、前機種がカラー10ipm、モノクロ18ipmだった事を考えると、かなり高速なはずだ。 この価格帯になると、メモリカードからのダイレクトプリント機能は搭載していない(メモリカードが使えない)。ただし、PX-M680FとMAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130はUSBメモリからの画像印刷に対応している。PX-M680Fはフチなし印刷ができるので、画質はともかくとして、写真印刷が行える。MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130はフチなし印刷ができない事や画質面から考えると、写真のダイレクト印刷が目的とは思えないが、スキャンしてUSBメモリに画像形式で保存したものを、再度印刷といった用途が考えられる。もちろんPX-M680Fもこういった用途で使用できる。ただし、印刷できるのはJPEGとTIFFといった画像となる。PX-M680FはPDFにも対応をうたっているが、エプソンのプリンタの「スキャン to メモリー機能」「スキャン to フォルダー機能」で生成されたPDFファイルのみとなる。 スマートフォンとの連携機能も全機種が搭載しており、iPhoneやiPod touch、iPadと、Android端末に対応している。PX-M680FはNFCにも対応しているため、Android限定にはなるが、タッチするだけで接続設定ができるなど、より簡単になっている。いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることでプリント又はスキャンが行える。写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、PX-M650Fはフチ無し設定まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。さらにドキュメント印刷にも対応している。PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もできる便利だ。また、スマートフォン上からスキャンを実行し、データをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。出かける前に紙の情報をさっとスマートフォンに転送するといった使い方ができるため便利だろう。さらに、クラウドとの連携機能も搭載されており、オンラインストレージから印刷する事が可能だ。ここで大きな違いは、PX-M680F/EW-M660FT/PX-M650Fはスマートフォンのアプリとして搭載しているのに対して、MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130はスマートフォン上だけでなく本体でもクラウドにアクセスし印刷ができる点が上げられる。実際の操作性はスマートフォンからの方が上だが、選択肢が広いという点でMAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130は有利だ。クラウドからのプリント機能をよく使うという場合は、MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130が便利だろう。 さらにネットワークを利用したプリント機能として、PX-M680F/EW-M660FT/PX-650Fは、印刷したい写真や文書をプリンタにメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、通常のプリント同じ操作で、離れた場所の対応プリンタで印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。さらにPX-M680Fは、「スキャンtoクラウド」機能を利用して、PX-M680Fでスキャンした画像を離れた場所の対応複合機で印刷できる機能を搭載しているのが便利だ。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。一方のMAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130はこういった機能は搭載していない。リモートプリント機能はPX-M680F/EW-M660FT/PX-M650Fがリードしているといえる。 コピー機能を見てみよう。単純なコピー機能としては、全機種が単純な等倍コピーだけでなく、拡大縮小コピーが可能だ。原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行う「オートフィット」機能や、25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える機能、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「自動変倍」機能も備えるなど、高性能な物だ。ただし、EW-M660FTはコピー時に選択できる用紙サイズはA4とB5に限られる。ハガキサイズなどへのコピーはできない。2枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2アップは全機種が対応し、さらにPX-M680FとMAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130は4枚の原稿を1枚に縮小する4アップにも対応している。その他、PX-M680Fは免許証やIDカードのような小さな原稿の裏と表を、1枚の紙に並べてコピーできる「IDコピー」機能、原稿の外の部分にできる影を消してくれる「影消しコピー」機能、「パンチ穴消しコピー」機能を備えるなど、ビジネス向けの機能が豊富だ。一方、MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130はADFを使って複数枚の原稿を複数部コピーするときに、1部ずつにまとめてコピーしてくれる「ページ順コピー」と、厚手の原稿で原稿の外の部分や、綴じ目の部分が黒くなってしまうのを軽減する「枠消しコピー」機能、さらに「IDコピー」機能も備えているなど、こちらも機能が豊富だ。EW-M660FT/PX-M650Fは「IDコピー」機能のみを搭載している。 それでは肝心のFAX機能を見てみよう。全機種ともスーパーG3に対応しており、モノクロ、カラーFAXを行う事が出来る。ADFを搭載しているため、複数枚の原稿の送信も便利である。33.6Kbpsで通信可能であり、その場合の伝送速度はモノクロで約3秒というのも共通だ。また読取走査線密度はモノクロで「8pels/mm×3.85line/mm又は8pels/mm×7.7line/mm、カラーで200×200dpiなのも共通である。さらに、PX-M680Fは8dot/mm×15.4本/mm の高詳細モードと16dot/mm×15.4本/mmの超高精細モードを持ち、MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130はモノクロ時に300×300dpiのファインEXモードを持っているが、大きな差ではないだろう。ダイヤル機能でも全機種が短縮ダイヤルに対応しており、PX-M680Fが100件、EW-M660FT/PX-M650Fは60件、MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130は100件登録できるため十分だ。受信したファクスの最大保存ページ数はPX-M680Fが180枚又は100件、EW-M660FT/PX-M650Fが100枚又は100件、MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130が250枚又は30件となっている。枚数はMAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130が多いが、よほどFAXが多くない限りはEW-M660FT/PX-M650Fの100件でも家庭で使う分には十分なメモリ量を備えているといえる。また電源を切ってもメモリに保存された受信FAXの内容は記憶しているので安心だ。ただし、停電時やコンセントが抜けた場合でも受信した内容が保持されるのはPX-M680F/EW-M660FT/PX-M650Fのみとなる。MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130はデーターは破棄されてしまうため、夜にはブレーカーを落とすという場合や、使わないときにどこかにしまっておくという人は注意が必要だ。PX-M680FとEW-M660FT/PX-M650FとMAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130では件数は異なるが、グループダイヤル、順次同報送信、手動送信、自動リダイヤル機能を備えているため、一般的な家庭用FAX電話以上の事が可能だ。また、「PCファクス」機能も5機種とも備えている。パソコン内で作成したデーターを、一度印刷する事無く、直接FAXとして送信できる「送信」機能は非常に便利だ。一方、受信したFAXをパソコン上に保存できる「受信」機能はPX-M680F/EW-M660FT/PX-M650Fみ対応である。 操作パネルはPX-M680F、PX-M650F、MAXIFY MB2730の3機種がタッチパネル液晶を採用しており、操作性は良好だ。液晶ディスプレイもPX-M680F/PX-M650Fが2.7型、MAXIFY MB2730は3.0型と比較的大きく、視認性も良好だ。タッチパネル液晶を採用することにより、直感的にモード切替や設定が行えるほか、カーソルキーや枚数の「+」「−」ボタンをなくすことができ、ボタン数が減り分かりやすい。PX-M680F、PX-M650F、MAXIFY MB2730のそれぞれ異なる点として、どこまでを物理キーで用意するかが挙げられる。PX-M680Fは物理的なボタンは電源ボタンだけで、ほとんどの操作をタッチパネル液晶に集約しており、テンキーやスタートボタンも全て液晶内に表示される。一部よく利用すると思われる機能はタッチセンサー式ボタンで液晶周囲に配置される。液晶の左にホームボタン、右にヘルプボタン、上に消耗品情報表示、ネットワーク接続状況表示、機器出力音設定画面表示、お気に入りの設定一覧表示のボタンとなる。非常にすっきりした操作パネルとなっている。逆に、PX-M650Fは「ホーム」や「戻る」、「スタート」ボタンだけで無く、テンキーも独立した物理キーとして用意している。よく使うキーを物理ボタンとした事で、押しやすさを重視した格好だが、ボタン数が多くなりわかりにくくなると言う問題もある。MAXIFY MB2730は使用頻度が高い「スタート」「ストップ」「ホーム」「戻る」のボタンに関しては物理的なボタンとしているものの、テンキーに関してはボタン数が急に増えることから液晶ディスプレイ内に表示することで、使用時だけ表示することができすっきりすると言う考え方だ。3パターンのどれが良いかは一概には言えないので、実際に店頭で操作してみるか、テンキーなどのボタンの使用頻度によって決めれば良いだろう。残るEW-M660FTとMAXIFY MB2130はタッチパネル液晶ではなく、単純な物理ボタン操作となる。当然キー数は多くなってはしまうが、慣れてしまえば問題はないだろう。液晶ディスプレイはEW-M660FTが2.2型のモノクロ、MAXIFY MB2130が2.5型と十分な大きさである。EW-M660FTはモノクロだが、写真のダイレクト印刷を行うわけでは無いため、そこまで操作性を損なうわけでは無い。 ちなみに操作パネルの位置だが、PX-M680Fは本体前面に取り付けられており、90度まで持ち上げて角度調整が可能だ。一方のEW-M660FT/PX-M650Fは、本体前面から斜めに飛び出した形で固定して取り付けられており、MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130は上面から前面にかけて大きく面取りされた部分に固定して取り付けられている。斜めになっているためどの方向からでも使いやすいが、角度調整は出来ないため設置する場所によっては使いにくい場合もあるだろう。その点で言えばPX-M680Fは好きな角度の調整できて非常に使いやすい。 インタフェースは5機種ともUSB2.0に加えて、ネットワーク接続に対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人にはネットワーク接続によりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。またネットワーク接続をすればスマートフォンやタブレットからの印刷も可能となる。ビジネス向けの機種という事もあり、MAXIFY MB2130を除く4機種は無線LANだけでなく有線LANも搭載しており、速度と安定性の有線LANと、ケーブルレスで手軽な無線LANのどちらでも選ぶことができる。なお、Wi-Fiダイレクト(MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130はダイレクト接続という名称)に対応しているため、無線LANルータの無い環境でも、スマートフォンやタブレットと直接Wi-Fi接続が可能となっており、より便利である。 本体サイズを見てみよう。PX-M680Fは425×378×249mmで、FAX無し複合機の上位機種EP-879Aの349×340×142mmと比べると大きいが、横幅が76mm、奥行きが38mmの差というのはかなりコンパクトになっている。高さがあるのは用紙トレイが大型なのとADFのためで、仕方の無いところだろう。PX-M650Fは425×360×230mmで、奥行きと高さがさらに小型である。また、PX-M680のようにADFが本体に内蔵されたようなデザインと異なり、本体の上にADFの原稿トレイが乗ったようなデザインであるため、高さはより低く感じる。 設置スペース面ではPX-M680F/PX-M650Fは優秀だ。EW-M660FTは右側面にエコタンクを搭載している部の大きくなっており、515×360×241mmとなる。とはいえ、エコタンク部分は高さが低く、それより上はPX-M650Fとほぼ同じ横幅になるので、実際にはそれほど大きいという印象は無い。一方MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130は大きめだ。トレイが1段のMAXIFY MB2130でも463×389×260mmと大きい。しかもMAXIFY MB2130のADFは収納式なので、使用時には高さが298mmとなる。PX-M650Fと比べると、かなり縦長に見えるし、PX-M680Fよりも高さがある。しかも、前述のようにこの状態は用紙カセットを最もコンパクトにした状態で用紙をセットする事ができない。A4用紙をセットした状態でADFも使用できる状態では463×459×298mmとなりかなり大きい。そして、給紙カセットが2段のMAXIFY MB2730では収納時でも463×389×320mmと高さが60mmも高くなり、巨大という印象だ。A4用紙をセットしADFを展開した状態では463×459×358mmとなる。サイズ面ではMAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130はかなり不利と言える。 5機種の内、一般的におすすめなのはPX-M680Fである。印刷速度はMAXIFY MB2730より遅いものの、カラーではMAXIFY MB2130を上回り十分高速で、印刷コストも上位機種ほどでは無いが安めだ。顔料4色で新プリントヘッドのおかげで普通紙への印刷画質は高く、その他のADFやスマホ対応、USBメモリ対応、コピーの各種機能も一通り備えている。フチなし印刷もできる。本体サイズが比較的小さく設置スペースに困らないのは大きい。角度調整が可能なタッチパネル液晶による操作性も良いだろう。万人にお勧めでき、この価格帯では弱点が少ない製品だ。PX-M650FはメーカーWebサイトではPX-M680Fと同価格だが、店頭では数千円安い設定になっている場合が多い。給紙枚数、印刷速度や印刷コスト、スキャン速度の他、細かい点ではコピー機能やFAX機能など細かい点でPX-M680Fより劣っており、この価格差なら印刷コストを考えればPX-M680Fの方が良いだろう。一方、印刷枚数が多く印刷コストを気にする場合はEW-M660FTがおすすめだ。カラーインクが染料インクという事とフチなし印刷ができない以外はPX-M650Fとほぼ同等で、印刷コストが極端に安い。本体の価格が4万円高いが、各色2本付属したインクボトルの分を、PX-M650Fで購入しようとすると、4万円ではとうてい足りない金額となる。当分の間のインクをセットにし格安で購入し、なおかつ買い足すときは安いインクが使えるというイメージだ。染料インクを採用しているので、顔料インクでは使えない用紙も使える。文書印刷やコピー、FAXが主体で、印刷枚数が多いならEW-M660FTで決まりだ。残る、MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130は普通紙への高速印刷と低印刷コストに特化しているため、この点に魅力を感じるなら選択肢としてありだ。確かに文書印刷やFAXには便利だと思われるが、PX-M680Fが発売されて、印刷速度、印刷コスト共に近くなったため、大きなアドバンテージとは言いがたい。その一方で本体がかなり大きいという問題がある。設置スペースに余裕があるとしても、フチなし印刷ができない、印刷解像度が低く普通紙以外への用紙での画質が気になるといった点がある。クセが強い製品だけにおすすめしにくい。強いて言うならカラープリントではPX-M680Fに対して印刷速度、印刷コスト面でアドバンテージがあるので、ここが特に重視するのであれば、そしてその他の問題点を許容できるならMAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130もありだろう。それ以外は、一般的にそつなく整っているPX-M680Fか、印刷コストを考えたEW-M660FT、どうしてもコンパクトさと本体価格をが重視するならPX-M650Fが良いだろう。 (H.Intel) 【今回の関連メーカーホームページ】 エプソンhttp://www.epson.co.jp/ キャノンhttp://canon.jp/ ![]() ![]() |