2017春時点のプリンタ 〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜 (2017年4月15日公開)
エコタンク搭載プリンターを比較する。今のところエプソンからしか発売されておらず、昨年春に発売されたEW-M660FTと、昨年末に追加されたEP-M570T、今年春に発売されたEW-M770Tの3機種のみだ。モノクロ印刷のみの複合機PX-M160TとプリンターPX-S160Tも発売されているが、ここではカラー対応の3機種のみを比較した。型番上はEW-M770Tが最上位、続いてEW-M660FT、下位モデルがEP-M570Tで、価格もEW-M770Tが69,980円、EW-M660FTが54,980円、EP-M570Tが39,980円と、価格上もEW-M770Tが上位モデル、EW-M570Tが下位モデルに見える。しかし、完全な上位・下位といった関係では無く、EW-660FTが搭載する機能でEW-M770Tが搭載しない機能もあれば、EP-M570Tが搭載する機能でEW-M660FTが搭載しない機能もある。どういった機能を搭載しているかを見ていくことで、使用用途によってどちらの機種が向いているかを検討していこう。 |
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染料ブラック シアン マゼンタ イエロー |
シアン マゼンタ イエロー |
シアン マゼンタ イエロー |
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(タンク式) |
(タンク式) |
(タンク式) |
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顔料ブラック:360ノズル |
黒:400ノズル |
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(MSDT) |
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(フチなし印刷不可) |
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(A4普通紙セット可能枚数) |
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○(2L・ハイビジョン以下) |
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印刷部 |
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フォーム印刷(罫線・マス目・便箋・スケジュール帳・五線譜・メッセージカード・折り紙封筒) |
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印刷 |
iPod touch iPad (iOS 8.0以降) Android 4.0以降 |
iPod touch iPad (iOS 8.0以降) Android 4.0以降 |
iPod touch iPad (iOS 8.0以降) Android 4.0以降 |
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(Wi-Fiダイレクト対応) |
(Wi-Fiダイレクト対応) |
(Wi-Fiダイレクト対応) |
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詳しく比較していく前にエコタンクについて説明しよう。エコタンクとは本体右側に搭載されたインクタンクのことだ。エコタンクにインクボトルからインクを補充して使用する形となる。つまり、インクカートリッジを購入して交換するのでは無く、インクだけを購入するというイメージだ。エコタンクは非常に大容量で、満タン状態から、インクカートリッジとは比べものにならない枚数を印刷可能だ。例えば、EW-M660FTの場合、A4カラー文書が印刷すると、インクボトル各1本で、ブラックインクは6000ページ、カラーインクは6500ページの印刷可能だ。ほぼ同じ機能のインクカートリッジの機種PX-M650Fではモノクロ文書850枚、カラー文書450枚で、上位機種PX-M740Fで大容量インクカートリッジを使用した場合でも、それぞれ1500ページと730ページである事を見れば、大容量である事が分かるだろう。しかも、インクボトルは1本でエコタンク1回分と大容量ながら、価格が1本900円〜1,200円(倍容量の顔料ブラックは1,800円〜2,400円)で販売されており、印刷コストが極端に安いことが特徴だ。また本体価格は機能の割には高く設定されているが、インクボトルが各色2本又は1本ずつ付属している。動作確認用のインクカートリッジしか付属しない他機種と比べると、しばらくの間インクボトルを購入する必要が無く、他機種でその分のインクカートリッジを購入すると、価格差は簡単に逆転する。つまり大量印刷をする人向けの機種なのである。 また、それぞれベースとなるカートリッジタイプの機種が存在している。EW-M770Tは、去年の最上位機種EP-808Aや今年の最上位機種EP-30VAに近い。操作パネルは異なるが、給紙部分や両面印刷、レーベル印刷などの機能、最小インクドロップサイズやノズル数も同等だ。EW-M660FTはビジネス用PX-M650Fに近い。操作パネルと本体カラーは異なるが、PX-M650Fの右側にエコタンクがくっついたような形だ(インクの種類は異なるが)。EP-M570Tは、2年前まであったPX-437Aにデザイン的にも機能的にも似ている。インクの顔料と染料の違いはあるが最小インクドロップサイズやノズル数は同じで、操作パネルも同等だ。 まずはプリント機能から見ていこう。3機種は似ているようで微妙に異なるインク構成となっている。3機種とも搭載するのはブラック、シアン、マゼンダ、イエローの4色である。しかし、EP-M570Tは4色とも染料インクを採用する一方、EW-M660FTはカラーは染料インク、黒は顔料インクを採用、そして最上位のEW-M770Tは染料と顔料両方の黒と染料カラーの5種類を搭載する。つまりEP-M570TとEW-M660FTは4色、EW-M770FTは5色構成と言える。3機種とも染料インクを搭載しているため、顔料インク非対応の用紙への印刷が行えるほか、写真用紙への印刷した際も発色が良く、用紙本来の光沢感も出るため写真印刷に向いている。ただしEW-M660FTは黒の染料インクを搭載していないため、写真用紙や顔料インク非対応の用紙に印刷した際、黒インクを使用できずカラー3色を混ぜて黒を表現する。結果やや茶色がかった黒になるため、黒インクが使えるEW-M770TやEP-M570Tと比べると色のメリハリが弱くなる傾向がある。また最小インクドロップサイズにも差がある。EW-M770Tは1.5plと非常に小さいのに対して、EW-M660FTは3.3pl、EP-M570Tは3plと大きめだ。つまり、最も写真印刷画質が高いのは染料インクを4色搭載し、最小インクドロップサイズも小さいEW-M770T、続いて最小インクドロップサイズはやや大きいが染料4色のEP-M570T、最後に染料黒を搭載しないEW-M660FTとなる。ただしEW-M770Tをもってしても、カートリッジタイプの上位機種である6色染料インクで1.5plには劣ることにはなる。とはいえ、十分に写真高画質で印刷できるし、EP-M570Tでも若干の粒状感の強さに目をつむれば、そしてEW-M660FTも黒のコントラストが若干弱くなる点に目をつむれば、十分に写真を印刷する実力はある。 一方普通紙への印刷の場合、染料インクでは若干滲んだ感じになるため、文字が太くなったり、小さな文字や中抜き文字がつぶれたりという事が起こる。その点で黒インクのみだが顔料インクを搭載するEW-M770TとEW-M660FTでは、黒文字はメリハリのある印刷が行える。また顔料インクは耐水性も高いため、濡れた手で触ったりマーカーを引いても滲まないというメリットもある。顔料インクは黒インクのみであるためカラーの部分は染料インクで印刷するし、黒と言ってもグレーの場合はカラーインクを混ぜて表現するため染料インク、また染料インクと顔料インクが混ざらないことからカラーの背景色が付いている上の黒文字も染料インクとなるなど、顔料の黒インクが必ずしも使えるわけではないが、黒だけでも顔料インクだと文書印刷やコピー時に見栄えが異なる。またEW-M660FTはFAXも搭載しているため、受信したFAXの印刷にも効果を発揮する。また、それとは別にEW-M660FTは普通紙への印刷解像度を360dpiから600dpiへアップした新しいプリントヘッド「PrecisionCore」を採用しており、より普通紙印刷の画質は高くなっている。EW-M770Tの方が最小インクドロップサイズは小さいが、線などのくっきりさはEW-M660FTの方が上になる場合もある。 使用できる用紙はいずれもL判からA4までとなる。ただし、EW-M660FTはフチなし印刷を行う事ができない点は注意が必要だ。給紙に関しては、EW-M770TとEW-M660FTが前面給紙カセットを採用しており、EP-M570Tは背面給紙だ。EW-M770Tは2段給紙になっており、上段にL判やハガキ、2L判と言った小さめの用紙を、下段にA4やB5といった用紙をセットする。下段はA4普通紙で100枚、上段は写真用紙やハガキが20枚までセットできる。また、下段にも写真用紙やハガキを40枚までセットできるので上下段合わせて60枚まで連続印刷が可能だ。前面給紙・前面排紙と言うことで気になるのが、厚紙やラベル用紙などである。前面給紙からでも問題なく印刷できる事になっているが、前面から給紙して前面へ排紙するため、内部で大きく曲げられてしまうのは少し心配だ。また封筒など二重になっている用紙への印刷も不安なほか、定型サイズでない場合前面給紙カセットのガイドをあわせにくい。そこで、簡易的ながら背面給紙も行える。従来の背面給紙に近い位置だが、用紙をセットしておけるような大型のものではなく、小さな背面給紙カバーと、用紙を支える小さな「用紙サポート」を引き出せるだけだ。印刷を実行して、セットする旨のメッセージが出てから用紙を差し込む方式であるため、本当に1枚ずつとなる。その分コンパクトな本体でも背面給紙を可能としているわけである。さらに、通常の給紙カセットでは0.3mm厚の用紙までの対応だが、背面手差し給紙では、倍の0.6mmの用紙に印刷ができる。今まで印刷できなかった厚紙にも印刷できる点も便利だろう。また、前面給紙カセットにセットした用紙以外に数枚印刷したい場合でも、入れ替える事無く印刷するといった使い方も出来る。一方EW-M660FTも同じく前面給紙カセット方式となるが、 こちらは1段だ。背面手差し給紙もない。一方でA4普通紙を150枚までセット可能なのは、EW-M770Tを上回る。文書印刷やFAXがメインの機種らしい構成だ。残るEP-M570Tは背面給紙となっており、A4普通紙を100枚までセット可能となっている。一度に2種類の用紙がセットでき、いざというとき用に背面手差し給紙も可能なEW-M770Tが最も便利なのは言うまでも無いが、EW-M660FTとEP-M570Tはどちらが便利か微妙な所だ。前面給紙カセットの方が用紙をセットしたままでもホコリの心配が無く、用紙セット時にも後方や上方にスペースが不要な点はメリットだが、用紙をセットする際に、ガイドを幅だけで無く奥行きも調整する必要があり、また前面給紙・前面排紙による厚紙への対応の心配や、裏表や前後も慣れるまで間違えやすいというデメリットもある。その点では背面給紙は左右幅だけガイドを合わせるだけでわかりやすく、向きも裏表も簡単だ。その反面、用紙をセットする際には、上方にスペースが必要な他、用紙トレイが後方に傾くために、後方にもスペースが必要だ。また用紙をセットしたままだとホコリが積もり、それを給紙すると故障の原因となるため、いちいち用紙を取り除く手間が発生する。それぞれ一長一短だが、A4用紙など決まった用紙を常にセットしておくなら前面給紙カセットが、様々な用紙を使うなら背面給紙が便利だろう。 ちなみに、3機種とも用紙種類とサイズの登録機能を搭載している。EW-M770FTとEW-M660FTは前面給紙カセットを挿し込むと、EP-M570Tは背面給紙トレイのカバーを閉めると自動的に登録画面が表示されるため便利だ(されないようにもできる)。そして、この登録内容と、印刷時の用紙設定が異なっている場合、メッセージが表示される仕組みだ。また、液晶ディスプレイでメニューから手動で登録も可能である。できる限り印刷ミスによる用紙とインクの無駄遣いをなくす工夫がなされている。 自動両面印刷機能はEW-M770TとEW-M660FTが搭載しているが、EW-M770Tはハガキにも対応するのに対して、EW-M660FTは普通紙のの対応だ。また、CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷機能はEW-M770Tのみが対応する。最近では無線/有線LAN接続ができるようになり、プリンタから離れた場所のパソコンやスマートフォンから印刷を実行することが増えたため、自動電源オン機能を搭載する機種が増えてきており、エコタンク搭載プリンターでもEW-M770Tは対応する。ただし、排紙トレイは手動で引き出してやる必要があり、引き出すまで印刷は開始されないが、自動で電源がオンになれば便利なこともあるだろう。ちなみに3機種とも、指定した時間で自動で電源が切れる自動電源オフには対応している。また、写真自動補正機能「オートフォトファイン!EX」を3機種とも搭載しており、逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われる。画質や耐保存性では最高レベルとは言えないものの気楽に写真印刷が行えるようになっている。EW-M770Tの特徴として交換式メンテナンスボックスを搭載している事が挙げられる。クリーニング時などに排出された廃インクで吸収させる廃インクパッドは、一杯になると修理交換だったが、EW-M770Tでは自分で交換できるため、修理に出して使えない期間が発生しない。印刷枚数の多い機種であるため、特にメリットを感じやすいだろう。 印刷速度を見てみよう。写真の印刷速度は、EW-M770Tが24秒、EW-M660FTが60秒、EP-M570Tが74秒で、EW-M770Tが圧倒的に早い。EW-M66FTとEP-M570TではEW-M660FTの方が速く見えるが、EW-M660FTはフチなし印刷ができないためフチありでの計測となっているためだ。EW-M660FTとほぼ同性能のPX-M650Fでのフチなし印刷では70秒である事から、ほぼ同じ速度と考えての良さそうだ。また、インクカートリッジ方式の上位機種では13秒という機種もあるため、それと比べるとEW-M770Tでもやや遅いと言える。とはいえ、EW-M770Tは十分高速なクラスなので、写真の大量印刷を考えているならEW-770Tならストレスがなさそうだ。一方の文書の印刷速度だが、EW-M770FTはカラーが10.0ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、モノクロが13,0ipm、EW-M660FTはそれぞれ7.3ipmと13.7ipm、EP-M570Tは5.0ipmと10.0ipmとなる。カラーはEW-M770Tの方が、モノクロEW-M660FTの方が若干速くなる。これはノズル数が大きく影響しており、EW-M770Tはカラーと染料黒が各180ノズル、顔料黒が360ノズルなのに対して、EW-M660FTはカラーが各128ノズル、黒が400ノズルとなっている。元々普通紙向けの機種のEW-M660FTだが、カラーインクに対して黒インクのノズル数を圧倒的に増やす事で、文書印刷やFAX印刷に多いモノクロプリントを特に高速化しているわけだ。ちなみに、EP-M570Tはカラー各59ノズルとブラック180ノズルしかない事を考えると健闘しているともいえる。EW-M770TやEW-M660FTの速度はインクジェットプリンタとしては速い部類に入るし、EP-M570Tも決して遅くは無い。文書印刷はそれほどストレス無く行えると言える。 ちなみに、エコタンクの方式にも違いがある。一番わかりやすいのがEP-M570Tだ。4色とも染料インクであるため、いずれも70mlのインクボトルとなる。本体右側に飛び出ている部分がタンクで、カバーを開けてさらに各色の注ぎ口に付いているゴムキャップを外し、穴にインクを注入する。半透明の窓が付いているので、満タンの線まで注ぐことになる。インクボトルは1本900円で、購入時に各色2本ずつ付属する。購入時のインクでA4カラー文書を14,000枚印刷が可能だ。その後インクボトル1本で、カラーインクは7,500枚まで、ブラックインクは4,500枚まで印刷できる。印刷コストはL判写真1枚が5.6円、A4カラー文書が0.6円、A4モノクロ文書が0.3円となる。写真の印刷コストには写真用紙代(500枚で2,143円)も込みなので、これを除くと約1.3円となる。インクカートリッジ方式のEP-879Aの場合、20.6円なので、写真用紙代を除くと約16.3円となる。実に12分の1となり印刷コストの低さが分かる。ちなみに使用するインクはカートリッジタイプのような「つよインク」といった名称は無いが、耐保存性はアルバム保存は300年、耐光性は7年、耐オゾン性は半年以上1年未満をうたっている。インクカートリッジの上位機種が採用する「つよインク200」はアルバム保存300年、耐光性50年、耐オゾン性10年となっているので、アルバム保存なら同等だが、飾っておく場合はやや弱いと言えるだろう。 続いてEW-M660FTだが、こちらは顔料黒と染料カラーとなる。染料カラーはEW-M570Tと同じインクで1本70ml、ブラックインクは倍容量で1本140mlとなっている。それぞれ900円と1,800円だ。同じく本体右側に飛び出ているタンクのフタを開け、とゴムキャップを外し、穴にインクを注入する。タンクはボトル1本が入るサイズなので、ブラックだけ大きなタンクとなっている。購入時に各2本ずつ付属する。購入時のインクでA4カラー文書を11,300枚印刷が可能だ。その後インクボトル1本で、カラーインクは6,500枚まで、ブラックインクは6,000枚まで印刷できる。印刷コストはL判写真1枚が5.5円(写真用紙代を除くと約1.2円)、A4カラー文書が0.8円、A4モノクロ文書が0.4円となる。写真の印刷コストが安く見えるのはフチあり印刷での計算のためだ。インクボトル1本で印刷できる枚数がカラーインクがEP-M570Tよりやや少なく、ブラックインクも倍容量の割に印刷できる枚数は倍より少ない事から、印刷コストはやや上がる。染料ブラックが無いせいなのか、「PrecisionCore」による物なのかは不明だ。ちなみにインクが同じである事から、耐保存性は同じだ。 これら2機種に対して、EW-M770Tは第2世代のエコタンクと言える。インクボトルはEP-M570TやEW-M660FTとは異なるものとなる。エコタンクも大部分が本体に入り込んでおり、横に大きく飛び出ているという形では無い。強いて言うなら手前に少しだけ飛び出ており、ここが透明になっていてインク残量が見える。インクカートリッジにアクセスするには、スキャナ部を持ち上げ、タンク部分のフタを手前に開く。さらに各色のフタを奥に開く。すると出てくるのは複雑な形の挿し込み口だ。他の2機種が大きく口が開いていたのとは全く異なる。 これが新しい「挿すだけ満タン」インク方式である。インクボトルを挿し込む事で、ボトル内の十字のゴムの切れ目が開き注入が始まり、満タンになると注入が止まるようになっている。他の機種のように注入開始時にこぼしてしまったり、入れすぎてあふれてしまったりという無くなる。また、インクボトルとタンクの挿し込み口の形が色ごとに異なるため、間違えて注入するのも防ぐ事ができる。またボトルのキャップもスクリュー式になっているため、余ったインクも置いておきやすい。インク自体も改良されており、写真を印刷した場合、アルバム保存は300年、耐光性50年、耐オゾン性10年と、耐光性と耐オゾン性が強化されている。これはカートリッジタイプの「つよインク200」と同等だ。アルバム保存だけで無く、飾っておく場合にも安心と言える。使い勝手や耐保存性は強化されたが、その分インクボトルの価格が若干上がり、カラーと染料ブラックは1,200円、倍容量の顔料ブラックは2,400円となった。印刷コストも少し上がり、L判写真1枚が6.0円(写真用紙代を除くと約1.7円)、A4カラー文書が1.3円、A4モノクロ文書が0.5円となる。少し上がったとは言え十分低印刷コストだ。ちなみに、同梱のインクボトルは各1本ずつとなっている。インクボトル1セットでA4カラー文書を、カラーインクは5,000枚まで、染料ブラックは11,500枚まで、顔料ブラックインクは8,000枚まで印刷できる。これらを見るとカートリッジタイプの本体に後付けでエコタンクを付けた第1世代のEW-M660FTとEP-M570T、エコタンク込みで本体がデザインされ、インクも使いやすく改良され、耐保存性も向上した第2世代のEW-M770Tとなる。印刷コストを選ぶならEW-M660FTやEP-M570Tが良いが、使い勝手を考えればEW-M770Tとなる。 続いて、スキャナ部を見てみよう。3機種とも解像度は1200dpiとなる。インクカートリッジの機種の上位機種ではさらに高い解像度になっているものもあるが、反射原稿(紙などの原稿)にしか対応しないため、1200dpiでも十分すぎる解像度と言える。実際写真サイズを1200dpiで取り込むと約4,200×6,000ドットとなり2500万素相当となる事から十分だ。一般的には文書は200〜300dpi、写真も300〜600dpiといった所だろう。ただ、いずれもCIS方式で、厚い本の綴じ目近くなど、ガラス面から浮いてしまう原稿ではピントが合わなくなってしまう点は注意が必要だ。3機種の内EW-M660FTはFAX機能が付いていることから、スキャナ部にADFが搭載されているのが異なる点だ。片面読み取りとなるが、30枚までの原稿を連続でスキャンできるため、FAX送信時やコピー時にも便利だ。一方EW-M770Tはスキャンした原稿をパソコンを使わずにメモリカードに保存する機能を搭載しているためパソコン無しで簡単にスキャンができる。 メモリカードからのダイレクトプリント機能はEW-M770TとEP-M570Tが搭載している。対応メモリカードはSDカードのみだが、最近のデジタルカメラやスマートフォンはSDカードやその小型版のmicroSDなので問題ないだろう。さらにEW-M770TはメモリカードだけでなくUSBメモリからの印刷にも対応している。また、各種メモリカードからUSBメモリへのバックアップが可能な他、USBメモリ以外に対応の外付けハードディスクや外付けDVDドライブへのバックアップやそれらからの印刷も行える。その上、EW-M770Tをネットワーク接続をしている場合、他のパソコンから外付けハードディスクのデータにアクセスが可能な「外部機器共有」機能も備えている。つまり複合機単体でメモリカード内の写真やスキャンした写真や原稿を外付けHDDに保存でき、それらに家庭内のどのパソコンからもアクセスできるわけである。もちろん写真データ以外も共有可能であるため、簡易NASとしても使用できる。その他、EW-M770TはPictBridgeにも対応している。 EW-M770TとEP-M570Tはフォーム印刷機能も搭載しているので、ノート罫線・マス目・便箋・スケジュール帳・五線譜などを印刷することも可能だ。ちなみに同じフォーム印刷機能という名前だが、メッセージカードと折り紙封筒はEW-M770Tのみ対応だ。また、写真から塗り絵を印刷することも可能だ。 スマートフォンとの連携機能は3機種とも搭載しており、iPhoneやiPod touch、iPadと、Android端末に対応している。いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることでプリント又はスキャンが行える。写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定(EW-M660FTを除く)まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。さらにドキュメント印刷にも対応している。PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もできる便利だ。また、スマートフォン上からスキャンを実行し、データをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。出かける前に紙の情報をさっとスマートフォンに転送するといった使い方ができるため便利だろう。さらに、クラウドとの連携機能も搭載されており、オンラインストレージから印刷する事が可能だ。またEW-M770TとEP-M570TはSNSの写真をコメント付きで印刷する機能も搭載している。 さらにネットワークを利用したプリント機能として、3機種とも印刷したい写真や文書をプリンタにメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、通常のプリント同じ操作で、離れた場所の対応プリンタで印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。さらにEW-M770TとEP-M570Tはスキャンした画像を離れた場所の対応複合機で印刷できる「メールdeリモート印刷」も備え、簡易FAX的な使い方もできる。いずれにしても3機種ともネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言える。 コピー機能を見てみよう。単純なコピー機能としては、3機種とも等倍コピーだけでなく、拡大縮小コピーが可能だ。原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行う「オートフィット」機能や、25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える機能、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「自動変倍」機能も備えるなど、高性能な物だ。ただし、EW-M660FTはコピー時に選択できる用紙サイズはA4とB5に限られる一方、EW-M770TとEP-M570TはA4/B5/ハガキ/KG/2L判/L判に対応する。ハガキサイズなどへのコピーを行う場合は注意が必要だ。逆に、2枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2アップ機能はEW-M770TとEW-M660FTのみ対応だ。また、EW-M770Tはコピー時にも「塗り絵印刷」が行える他、見開きの本を左右ページで別々にコピーする「BOOKコピー」、アイロンプリント紙への印刷時に使える「ミラーコピー」、背景の色を白にして見やすくする「背景除去機能」を備えている。一方、EW-M660FTは、免許証やIDカードのような小さな原稿の裏と表を、1枚の紙に並べてコピーできる「IDコピー」機能を備えている。EP-M570Tはそういった機能は搭載していない。コピー機能は、必ずしも上位機種は下位機種の機能を全て備えているのでは無く、それぞれの機種の得意分野に合わせた機能が搭載されている。 FAX機能はEW-M660FTのみが搭載しており、大きな相違点の一つとなっている。機能的にはスーパーG3に対応しており、モノクロ、カラーFAXを行う事が出来る。ADFを搭載しているため、複数枚の原稿の送信も便利である。33.6Kbpsで通信可能であり、その場合の伝送速度はモノクロで約3秒、読取走査線密度はモノクロで「8pels/mm×3.85line/mm又は8pels/mm×7.7line/mm、カラーで200×200dpiと一般的だ。60件の短縮ダイヤルに対応しており、グループダイヤル、順次同報送信、手動送信、自動リダイヤル機能を備えているため、一般的な家庭用FAX電話以上の事が可能だ。受信したファクスの最大保存ページ数は100枚又は100件となる。電源を切るだけでなく、停電時やコンセントを抜いた場合でもメモリに保存された受信FAXの内容は記憶しているので安心だ。また、「PCファクス」機能も備えており、パソコン内で作成したデーターを、一度印刷する事無く、直接FAXとして送信できるたり、逆に受信したFAXをパソコン上に保存できる。 操作パネルもそれぞれ特徴がある。3機種とも液晶ディスプレイを搭載しており、タッチパネル液晶では無いため、ボタン操作となっているのは共通だ。最上位のEW-M770Tは2.7型と比較的大きな液晶を搭載している。液晶と操作パネルは本体前面に配置され、持ち上げる事で操作パネルごと90度まで好きな角度に調整できる。低い位置や高い位置に置いても操作しやすく液晶も見やすい。EP-M570Tも似ているが、液晶ディスプレイは1.44型と小さめだ。ダイレクト印刷時の写真確認や、コピーなどの各種設定の表示が小さかったり、一覧性が悪くなる。同じく本体前面に搭載され持ち上げて角度調整ができるが、45度ほどまでしか上がらず、途中では固定できないため、実質2段階調整となる。残るEW-M660FTは、2.2型の液晶を備えるが、写真のダイレクト印刷機能を搭載していないことから、モノクロ表示となる。とはいえバックライトも搭載しているため、視認性は悪くない。ボタンを使用して操作するが、FAX機能を搭載するため、テンキーを搭載している分ボタン数が多くなるのは仕方がないところだろう。液晶と操作パネルは本体前面に斜めに取り付けられている。斜めになっているためどの方向からでも使いやすいが、堅牢性重視のためか残念ながら角度調整は出来ない。設置する場所によっては使いにくい場合もあるだろう。ちなみに本体の耐久枚数は、EW-M770TとEW-M660FTが5万枚、EP-M570Tが3万枚と差がある。とはいえ、家庭向けの機種の耐久枚数は1万2000枚から1万5000枚と言われており、大量印刷すると思われるエコタンク搭載プリンターだけあって、3機種とも家庭向けの機種よりは強くなっている。 インタフェースは3機種ともUSB2.0に加えて、ネットワーク接続に対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人にはネットワーク接続によりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。またネットワーク接続をすればスマートフォンやタブレットからの印刷も可能となる。EW-M770TとEW-M660FTは無線LANと有線LANの両方に、EP-M570Tは無線LANのみの対応となる。無線LANの届きにくいような遠いところの場合や、LANケーブルが壁の中を通してある家の場合、また設定の簡単さから有線LANを選びたい場合は注意が必要だ。なお、Wi-Fiダイレクトに対応しているため、無線LANルータの無い環境でも、スマートフォンやタブレットと直接Wi-Fi接続が可能となっており、より便利である。 本体サイズを見てみよう。3機種ともエコタンク搭載プリンターということで、本体サイズは大きくなりがちだ。EW-M770Tは425×359×161mm、EW-M660FTが515×360×241mm、EP-M570Tが445×304×169mmである。横幅は最上位モデルが最も小さいというのは意外に思えるが、エコタンクが本体側にかなり埋め込まれているために実現したと言える。ベースとなるEP-808Aが390×341×141mmなので、全体に一回り大きいが、エコタンクを搭載しつつ、横幅が35mmしか増えていない。EP-M570は奥行きが小さいため一見するとコンパクトだが、横幅と高さはEW-M770Tより少し大きい。奥行きも、背面給紙である事を考えると、使用時には給紙トレイが後方に倒れるスペースが必要だし、用紙分の高さも必要だ。EW-M660FTはもともとコンパクトさより堅牢性を重視したビジネス向けプリンタをベースにしているのでサイズが大きい。ただ、エコタンクの飛び出ている部分は高さが低くなっているため、横幅は数値よりは小さく見える。また高さも、ADF部の原稿台を含んでいるため、数値ほど圧迫感はない。いずれにしても、使用時、収納時のどちらを考えてもEW-M770Tがコンパクトなのは確かなようだ。 3機種はエコタンク搭載プリンターと言う点では同等だが、細かく見るとそれぞれ特徴がある事が分かる。また、必ずしも上位機種が下位機種の全ての機能を搭載しているわけではないので難しいところだ。雑に言うならビジネス利用特化のEW-M660FTと家庭向けのEP-M570T、ビジネスと家庭での両方に向くEW-M770Tとなる。印刷コストが安いからと言って、他の機能を我慢するのはいやだという人には、本体価格は気にしないのであればEW-M770Tがおすすめだ。本体の機能は豊富で、画質も耐保存性も高く印刷速度も速い。本体もコンパクトで操作性も良い。エコタンク自体も使いやすくなっている。価格は特に高いが、印刷コストとインクボトルが1セット同梱される事を考えれば、印刷枚数が多い人に取ってはお買い得だ。とはいえ、ありとあらゆる機能が搭載されているという事は、人によっては使わない機能も当然あるだろう。使わない機能のために高い価格を出したくはないだろう。使い道が決まっているなら他の2機種でも十分だと言える。文書印刷やコピーがメインで写真印刷はしないというならEW-M660FTで問題ない。普通紙の印刷画質はEW-M770Tを上回る場合もあるし、印刷コストも安い。またFAX機能が必要な人にもお勧めと言えるだろう。一方、写真印刷やハガキ印刷がメインで、画質は最高を求めない、またとりあえず特殊な機能は不要だが、エコタンク搭載プリンターを試してみたいとうならEP-M570Tでも良いだろう。 (H.Intel) 【今回の関連メーカーホームページ】 エプソンhttp://www.epson.co.jp/ キャノンhttp://canon.jp/ ![]() ![]() |