小ネタ集
2017年末時点のプリンタ
〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜
(2017年12月12日公開)

プリンタ比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンタ比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。


A3対応の複合機
 
 家庭用複合機の内、A3プリントA4スキャンに対応した複合機の3機種を比較する。なお、いずれもエプソンの製品となるが、カラリオ V-editionに属するEP-10VA、カラリオのEP-979A3、エコタンク搭載プリンターのEW-M970A3Tと、いずれも別シリーズと言うだけあって、見た目は似ていても大きく異なる部分がある。また、価格もそれぞれ59,980円、35,980円、84,980円と大きく異なっている。それではどのような違いがあるのだろうか。

プリント(画質・速度・コスト)
メーカー
エプソン
エプソン
エプソン
型番
EP-10VA
EP-979A3
EW-M970A3T
製品画像
実売価格(メーカーWeb/税抜き)
59,980円
35,980円
84,980円
インク
色数
6色
6色
5色
インク構成
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
レッド
グレー
ブラック
シアン
ライトシアン
マゼンタ
ライトマゼンダ
イエロー
ブラック
フォトブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成
各色独立
各色独立
各色独立インクタンク
(挿すだけ満タンインク方式)
顔料/染料系
染料
(つよインク200)
Epson ClearChrome K2
染料
(つよインク200)
染料(黒+カラー)/顔料(黒)
(アルバム保存300年/耐光性50年/耐オゾン性10年)
インク型番
ヨット
80L(増量)
80(標準)
マラカス(顔料)
ハーモニカ(染料)
ノズル数
1080ノズル
1080ノズル
1080ノズル
各色180ノズル
各色180ノズル
染料各180ノズル
顔料360ノズル
最小インクドロップサイズ
1.5pl(AdvancedMSDT)
1.5pl(AdvancedMSDT)
1.5pl(AdvancedMSDT)
最大解像度
5760×1440dpi
5760×1440dpi
5760×1440dpi
印刷速度
L判縁なし写真(メーカー公称)
33秒
13秒
24秒
A4普通紙カラー(ISO基準)
N/A
N/A
10.0ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準)
N/A
N/A
13.0ipm
印刷コスト
L判縁なし写真
12.7円
20.6円
6.0円
A4カラー文書
6.0円
12.0円
1.3円
A4モノクロ文書
N/A
N/A
0.5円

 まずはプリントの基本となる画質と速度、印刷コストから見ていこう。EP-10VAEP-979A3は6色、EW-M970A3Tは5色となっている。まずは6色のEP-10VAEP-979A3を見てみよう。どちらも染料インクで6色構成、最小インクドロップサイズは1.5plであり、5760×1440dpiという解像度も同等だ。しかしインク構成は大きく異なる。EP-979A3は従来より続く6色モデルと同じインク構成で、A4複合機のEP-880AやEP-810A、EP-710Aと同じ構成だ。つまりブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色に加えてライトシアンとライトマゼンダを採用している。カラー原稿の色の薄い部分ではライトインクを使う事で粒状感が抑えられる。最小インクドロップサイズが小さいこともあって非常に綺麗な画質で印刷ができるため、一般的な用途にはこれで十分だ。一方、EP-10VAはブラック、シアン、マゼンダ、イエローに加えてレッドとグレーインクを採用する。これを、「Epson ClearChrome K2インク」と呼んで、従来の6色と区別している。ライトインクがない分EP-979A3より悪くなる部分もありそうだが、そこは理論的色変換システム「LCCS」が力を発揮する。プロセレクション(写真のプロ向けのプリント単機能機)の製品に採用されてきたこの「LCCS」は写真をプリントする際のインク配分を論理的に算出する色生成技術で、階調性・色再現域・粒状性などの点からベストになるように複雑に計算されて打つインクが決定されるというものだ。さらに、光源によって色合いが異なる光源依存性も最適になる様に計算されるなど、かなり高度なものだ。さらに紙送りの精度も高めることで、基本4色だけでも高画質に印刷ができるという。そこにレッドインクにより、くすみがちな赤系統の表現力を高め、赤い物だけで無く夕日や肌の色などでも違いが出る。さらに従来の6色ではモノクロ写真の場合のグレーの部分はカラーインクを使って表現するため青白くなってしまうが、EP-10VAではグレーインクを搭載しているため綺麗なグレーの階調表現ができる。カラー、モノクロ両方の表現力をさらに高めた製品と言える。では、EW-M970A3Tはというと、5色構成だが、顔料ブラックと、染料の4色の組み合わせなので、写真印刷は4色となる。つまり前述の基本4色のみとなる。最小インクドロップサイズや印刷解像度は同じだが、LCCSなども搭載していないため、実際にライトインクが無い分だけ画質が落ちることとなる。とはいえ、最小インクドロップサイズは十分に小さいため、EP-979A35と比べても、色の薄い部分で粒状感をわずかに感じる程度で、大きく劣るわけではない。よほどこだわらなければ、EW-M970A3Tでも十分に高画質の写真を印刷できる。
 一方普通紙への文書印刷となると傾向は異なる。染料インクは普通紙に印刷すると、紙にしみこむときに少し広がるため、どうしても線が太くなったり、小さな文字や中抜き文字がつぶれがちになったりする。また、色のメリハリも弱くなるほか、水に濡れると滲みやすい。EP-10VAEP-979A3は染料インクのみなので、こういった弱点がある。6色インクで最小インクドロップサイズも小さいためそれほど悪くはなく、「細線強調機能」や「文字くっきり機能」を搭載し、ドライバレベルで文書印刷画質を高めているが、やはり顔料インクと比べると劣る。その点では、EW-M970A3Tは顔料ブラックインクを搭載し、黒文字などがクッキリとメリハリのある印刷が行える。カラー部分は染料インクを使用するのはもちろん、完全な黒ではなくグレーの部分はカラーインクを混ぜて作るため染料インク、また背景色がある場合など染料インクの上に顔料インクを打てないため、そういった部分も染料ブラックを使用するが、黒文字などが顔料インクなだけでも全体の仕上がりはぐっと引き締まる。普通紙印刷画質に関してはEP-10VAEP-979A3を上回る場合も多いだろう。このように、写真と文書で傾向が異なるインク構成となっている。
 ちなみに、最小インクドロップサイズは非常に小さいが、3機種ともAdvanced-MSDTという5つのインクサイズのインクを打ち分ける機能を搭載しており、必要に応じて大きなインクサイズを打ち分ける事で高速化と高画質化を両立している。結果、L判縁なし写真印刷で、EP-979A3は13秒と非常に高速になっており、枚数の多い印刷でもストレスのない速度となっている。EW-M970A3Tは24秒とやや遅いが、全体で見れば十分高速な部類に入る。一方、EP-10VAは33秒と遅くなっている。LCCSなど複雑な処理も行われている上に給紙も精度を重視した画質重視の設計であるため、速度より画質を取ったという形だろう。ただし、給紙時が特に丁寧なのか、A3フチあり写真の場合EP-979A3が1分55秒、EW-M970A3Tが1分54秒なのに対してEP-10VAが2分23秒とL版写真ほど差は無いため、大判印刷ならそれほど気になる差でないはずだ。文書の印刷速度はEW-M970A3Tしか公表されていないが、A4カラー文書が10.0ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、A4モノクロ文書が13.0ipmというのは十分高速だ。ちなみに、EW-M970A3Tでは、総ノズル数はEP-10VAEP-979A3と同等だが、インク色数は1色少ない。そこで顔料ブラックだけ倍のノズル数になっているため、モノクロ文書は特に高速になっている。EP-979A3はカラー文書はEW-M970A3Tに近い速度が出るだろうが、モノクロは少し劣る可能性がある。
 使用するインクは構成は違うものの、EP-10VAEP-979A3は「つよインク200」であり、アルバム保存300年、耐光性50年、耐オゾン性10年をうたっており、EW-M970A3Tは「つよインク200」の名称こそないものの、全く同等の耐保存性を保持している。そのため、3機種とも十分な耐保存性を持っていると言える。もちろん各色独立インクとなっており、なくなった色だけ交換できる。ここで大きく異なるのが、EP-10VAEP-979A3はインクカートリッジ方式、EW-M970A3Tはエコタンク方式である事だ。インクカートリッジ方式は従来同様、インクの入ったカートリッジを購入して、交換する方式だ。それに対してエコタンク方式とは、本体右側にインクを入れるタンクを搭載しており、インクボトルを購入して、ここにインクを注入する方式である。インクボトル1本でインクタンクが満タンになるが、インクカートリッジと比べるとかなり大容量なので印刷枚数は多い。インク交換の手間が省けるだけ無く、インク切れで印刷が止まっていたという自体も軽減できる。インクは途中で注入しても良いし、インクボトルも一度で使い切る必要がない。EW-M970A3Tのエコタンクは、2世代目とも言うべき「挿すだけ満タンインク方式」となっており、ボトルを注入口に挿し込むだけで満タンまで入って自動的に止まるため簡単だ。またインクの残ったボトルも、キャップがスクリュー式となっているため保存しやすく、また注入口の形状が色によって異なるため、誤ったインクボトルを挿し込むこともないため安心だ。タンク自体は、少し右側に飛び出す物の、ほとんどの部分が本体に埋め込まれており、前面からインク残量も確認できるようになっている。一方のインクカートリッジ方式のEP-10VAEP-979A3も考え方が異なり、EP-979A3と比べると、EP-10VAはインクカートリッジが半額程度になっており、大判写真を印刷する用途でも印刷コストが抑えられるようになっている。結果、印刷コストはL判写真フチなしでEP-10VAが12.7円、EP-979A3が20.6円、EW-M970A3Tが6.0円となる。しかもこれは、写真用紙代(500枚で2,143円)込みなので、1枚4.286円を除くと、インク代はEP-10VAが8.414円、EP-979A3が16.314円、EW-M970A3Tが1.714円となる。EP-979A3と比べると、EP-10VAは半分、EW-M970A3Tは9分の1程度となっており差は大きい。また、A4カラー文書の印刷コストも、EP-10VAが6.0円、EP-979A3が12.0円、EW-M970A3Tが1.3円とやはり同じ傾向となる。印刷枚数が多い人には重要な所だろう。ちなみにEW-M970A3Tは付属インクが多いという特徴もある。EP-10VAEP-979A3はセットアップ用インクカートリッジしか付属しておらず、たいした枚数は印刷できない。それに対してEW-M970A3Tは製品のインクボトルが丸々1セット付属する。このインクボトル1本ずつで、A4カラー文書を印刷すると、カラーインクは5,000ページ、ブラックインクは8,000ページ、フォトブラックインクは11,500ページまで使用できるという。一方、EP-979A3はインクカートリッジが各1,260円なので6本で7,560円、これをA4カラー文書の印刷コストで割ると630枚となる。つまりかなり雑な計算だが、全てのインクを均等に使えた場合、A4カラー文書を630枚しか印刷できないのだ。同じくEP-10VAは1本810円なので6本で4,860円、これを印刷コストで割ると810枚となる。EW-M970A3Tで一番早く無くなるカラーインクを基準にしても、EP-979A3の約8本分、EP-10VAの約6本分になり、それぞれ60,480円や29,160円分となる。それだけで本体価格の差は十分に元が取れる。そう考えると、EW-M970A3Tは本体価格は高いが、インクセットと考えれば十分に安いと言える。

プリント(給紙・排紙関連)
型番
EP-10VA
EP-979A3
EW-M970A3T
製品画像
対応用紙サイズ
L判〜A3
L判〜A3
L判〜A3
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面
○(写真用紙5枚・普通紙10枚/A3まで/0.6mm厚まで)
○(1枚手差し/A3まで/0.6mm厚まで)
○(写真用紙5枚・普通紙10枚/A3まで/0.6mm厚まで)
前面
カセット下段(100枚/A4以下)
カセット上段(2L/ハイビジョン以下)
カセット下段(100枚/A4以下)
カセット上段(2L/ハイビジョン以下)
カセット下段(100枚/A4以下)
カセット上段(2L/ハイビジョン以下)
その他
排紙トレイ自動開閉
用紙種類・サイズ登録
○(カセット収納連動)
○(カセット収納連動)
○(カセット収納連動)
用紙幅チェック機能
○(ハガキ向き検知機能搭載)
○(ハガキ向き検知機能搭載)

 続いて給紙・排紙関連の機能を見てみよう。印刷可能な用紙はL判〜A3で共通だ。前面給紙カセットと背面給紙の組み合わせで、A3やB4用紙は背面給紙からしか使用できない。前面給紙カセットは上下2段で、下段はA4まで、上段は小型になっており2Lサイズ以下となる。A4普通紙は下段に100枚までセットでき、L判写真用紙やハガキを上段に20枚までセットできる。上段のセット枚数が少ないが、下段にもセット可能でその場合は40枚までセットできるため、合計で60枚まで用紙交換無しで印刷できる。これは家庭用プリンターとしてはかなり多い方で、年賀状や写真の大量印刷時には重宝する。しかし、このあたりは3機種とも同機能で差は無い。しかし背面給紙に関しては違いがある。EP-979A3の背面給紙は「手差し給紙」となっており、1枚ずつとなる。小さな背面給紙カバーと、用紙を支える小さな「用紙サポート」を引き出せるだけの簡易的な構造で、印刷を実行して、セットする旨のメッセージが出てから用紙を差し込みスタートボタンを押す方式であるため、実際にに1枚ずつしかセットできない。大量印刷の場合は本格的なA3プリンタが必要だが、時々数枚程度であれば十分に使う事ができる。また、前面給紙、前面排紙では用紙が内部で180度曲げられるため、印刷は可能とはなっている物の、厚紙やシール用紙、滑りやすい用紙などは苦手な傾向があるほか、封筒などの2重になった紙もしわになる事がある。そういった場合に背面手差し給紙なら、背面から前面へ比較的まっすぐに用紙が送られるため、こういった問題が起こりにくい。それもあって、背面給紙は通常の倍の厚みの0.6mmまでの厚紙に対応している。また前面にセットしているのとは異なる用紙を数枚だけ印刷したい場合に、わざわざ入れ替える必要が無いというメリットもある。そして、EP-10VAEW-M970A3Tの背面給紙はこれを強化した形である。もう少し大型になり、普通紙で10枚、専用紙で5枚までの連続給紙が可能となった。本格的なA3プリンターほど枚数は多くないが、1枚ずつの手差しよりはかなり便利である。印刷枚数が多い場合はこちらの方が便利だろう。
 EP-10VAEP-979A3は印刷時に自動的に排紙トレイが伸張される。その際に排紙トレイに当たる操作パネル部分は少し持ち上がる。電源を切るときは自動的に排紙トレイが収納され、操作パネルも閉じられる。後述の自動電源オン機能と組み合わせて非常に便利だ。
 3機種とも用紙の種類とサイズを登録しておく機能が搭載されている。液晶ディスプレイでメニューから登録も可能だが、前面給紙カセットを挿し込むと自動的に登録画面が表示されるため便利だ(されないようにもできる)。この登録内容と、印刷時の用紙設定が異なっている場合、メッセージが表示される仕組みだ。また、印刷時に実際の用紙幅をセンサーでチェックする機能もあり、できる限り印刷ミスによる用紙とインクの無駄遣いをなくす工夫がなされている。さらに、EP-10VAEW-M970A3Tにはハガキ向き検知機能が搭載されている。郵便番号枠を認識することで、ハガキの上下や裏表の間違いを検知し、印刷が止まる機能だ。前面給紙だと、どうしても用紙の裏表や向きを間違いやすいので、ハガキが無駄にならない便利な機能だ。

プリント(付加機能)
型番
EP-10VA
EP-979A3
EW-M970A3T
製品画像
自動両面印刷
○(A4まで)
○(A4まで)
○(A4まで)
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
○(オートフォトファイン!EX・高彩モード対応)
○(オートフォトファイン!EX)
○(オートフォトファイン!EX)
特定インク切れ時印刷
○(黒だけでモード・5日間のみ)
○(黒だけでモード・5日間のみ)
自動電源オン/オフ
○/○
○/○
○/○
廃インクタンク交換

 その他のプリント関連機能を見てみよう。3機種とも自動両面印刷を備えている。もちろんハガキにも対応している。またCD/DVD/BDレーベルの印刷も行える。写真の自動補正機能としては「オートフォトファイン!EX」という機能を搭載しており、逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われる。もちろんパソコンからの印刷時だけでなく、後述のダイレクト印刷時や写真のコピー時にも利用できる。さらにPX-10VAでは「高彩モード」が選択でき、新たに採用したレッドインクの力で、くすみががちな赤系の表現をより色鮮やかに印刷できるようになっている。
 カラーインクが切れた時でも、モノクロ印刷が継続できる「黒だけでモード」は、EP-10VAEP-979A3に搭載されている。プリンタに負荷が掛かるため、インクを購入するまでの一時しのぎという事で5日間に限定されるが、安心な機能だ。EW-M970A3Tには搭載されていないが、そもそも1回のインク注入での印刷枚数が多い上に、途中で継ぎ足すことも出来るEW-M970A3Tではインク切れ自体が起きにくいという判断と思われる。一方、EW-M970A3Tのみ廃インクタンク(メンテナンスボックス)をユーザーが交換できるようになった。EP-10VAEP-979A3では廃インクタンクがいっぱいになるとメッセージが表示され修理に出さなくてはならなかったが、EW-M970A3Tではそういった事が無くなった。印刷枚数が多いと思われる機種だけにうれしい機能だ。自動電源オン・オフ機能は3機種とも搭載している。印刷が実行されると自動的に電源がオンになり、EP-10VAEP-979A3は排紙トレイも自動的に出てくる。用紙はあらかじめカセットにセットしておけることから、プリンタの前に行くことなく印刷が実行できるわけである。最近はスマホや離れたところに置いているパソコンから印刷する機会も増えているため、非常に便利だ。ただしEW-M970A3Tは前述の排紙トレイの自動オープン機能がないため、トレイを引き出してやらないと印刷は実行されない点は注意が必要だ。

スキャン
型番
EP-10VA
EP-979A3
EW-M970A3T
製品画像
読み取り解像度
4800dpi(4800×4800dpi)
4800dpi(4800×2400dpi)
1200dpi(1200×2400dpi)
センサータイプ
CIS
CIS
CIS
原稿取り忘れアラーム
スキャンデーターのメモリカード保存
○(JPEG/PDF)
○(JPEG/PDF)
○(JPEG/PDF)

 続いて、スキャナ部を見てみよう。EP-10VAEP-979A3が4800dpi、EW-M970A3Tが1200dpiとなる。EP-10VAEP-979A3の4800dpiは複合機としては最高レベルの解像度と言える。それと比べると、EW-M970A3Tの1200dpiというのは大きく劣るように見える。しかし、実際は紙などの反射原稿しかスキャンできないため、一般的に文書なら200〜300dpi、写真でも300〜600dpiで、よほどキレイに取り込みたい場合でも1200dpiがせいぜいだ。実際、L判写真を1200dpiでスキャンすると4,200×6,000ドットとなり、2500万画素相当となる。4800dpiでスキャンすると16,000×24,000ドットで3億8400万画素相当だ。パソコンで扱うには大きすぎるしファイルサイズも無駄に大きい。つまり4800dpiは一般的にはオーバスペックで、EW-M970A3Tの1200dpiでも十分だとも言える。いずれもCIS方式で、厚い本の綴じ目近くなど、ガラス面から浮いてしまう原稿ではピントが合わなくなってしまう点は注意が必要だ。両機種ともスキャンした原稿をパソコンを使わずにメモリカードに保存する機能を搭載しているためパソコン無しで簡単にスキャンができる。また原稿を取り忘れた際のアラーム機能も搭載しているなど、細かい点で工夫がなされているが、この点では3機種共通だ。スキャナ性能は3機種に実用上の差はほぼ無いと言える。

ダイレクト印刷
型番
EP-10VA
EP-979A3
EW-M970A3T
製品画像
カードスロット
対応メモリカード
SD/MS Duo/CF
SD/MS Duo/CF
SD
USBメモリ/外付けHDD/外付けDVD対応
○/○/○
○/○/○
○/○/○
メモリカードからUSBメモリ/外付けHDD/外付けDVDへバックアップ
○/○/○
(外部機器共有対応)
○/○/○
(外部機器共有対応)
○/○/○
(外部機器共有対応)
対応ファイル形式
JPEG
JPEG
JPEG
手書き合成
PictBridge対応
○(USB/Wi-Fi)
○(USB/Wi-Fi)
○(USB/Wi-Fi)
赤外線通信
各種デザイン用紙印刷
塗り絵印刷
フォーム印刷(罫線・マス目・便箋・スケジュール帳・五線譜・メッセージカード・折り紙封筒)
塗り絵印刷
フォーム印刷(罫線・マス目・便箋・スケジュール帳・五線譜・メッセージカード・折り紙封筒)
塗り絵印刷
フォーム印刷(罫線・マス目・便箋・スケジュール帳・五線譜・メッセージカード・折り紙封筒)

 ダイレクト印刷は、EP-10VAEP-979A3がSDカード、メモリースティックDuo、コンパクトフラッシュのメモリカードに対応している。一方EW-M970A3TはSDカードのみの対応となる。ただ、最近のデジタルカメラやスマートフォンは、一部の一眼レフなどを除きSDカードかその小型版のmicroSDになっており、SDカードのみのEW-M970A3Tでも問題はないだろう。加えて、メモリースティックDuoスロットがあれば一昔前のソニー製デジタルカメラに対応でき、コンパクトフラッシュスロットがあれば、コンパクトフラッシュの一眼レフにも対応できるといった程度だ。ちなみに、RAWデータのダイレクト印刷は行えない。さらにメモリカードだけでなくUSBメモリからの印刷にも対応している。また、各種メモリカードからUSBメモリへのバックアップが可能な他、USBメモリ以外に対応の外付けハードディスクや外付けDVDドライブへのバックアップやそれらからの印刷も行える。その上、ネットワーク接続をしている場合、他のパソコンから外付けハードディスクのデータにアクセスが可能な「外部機器共有」機能も備えている。つまり複合機単体でメモリカード内の写真やスキャンした写真や原稿を外付けHDDに保存でき、それらに家庭内のどのパソコンからもアクセスできるわけである。もちろん写真データ以外も共有可能であるため、簡易NASとしても使用できる。そのほか、EP-10VAEP-979A3は赤外線通信による印刷に対応している。その他、PictBridgeのUSB接続とWi-Fi接続の両方式にも対応しているなど、機能は豊富だ。ダイレクト印刷時の機能も豊富だ。EW-M970A3Tでも、写真の一部を拡大印刷できるだけでなく、明るさ、コントラスト、シャープネス、鮮やかさの調整ができる他、赤目補正やセピア調又はモノクロへの変換が可能だ。そしれEP-10VAEP-979A3はさらに機能が強化され選んだ写真の色補正一覧を印刷し、その中から好みの物を選ぶことができるほか、Exif情報と共に写真一覧を印刷できる。また、レッド・グリーン・ブルーそれぞれの色調補正も可能で、補正後の画像は別名でメモリカードに保存できるのも便利だ。フィルターもセピアとモノクロだけでなく、レトロやハイキー、トイフォト、ポップと言った8種類を搭載している。白フチと黒フチの他、カラーフォトフレームを設定できるほか、白フチと黒フチの場合は画像とフチの間に逆の色の枠を付けることも可能で、さらにフチの太さを4段階から選択できる。プリンタ単体でかなりこだわったプリントが可能となる。EP-10VAEP-979A3は基本的に機能は同じだが、EP-10VAはモノクロ写真にも対応している。EW-M970A3Tは基本的な機能を、EP-10VAEP-979A3は複合機の中では圧倒的な機能を搭載していると言える。
 ダイレクト印刷時の機能として代表的な手書き合成シートも3機種とも対応している。その他、塗り絵風の輪郭だけの印刷や、罫線、マス目、便箋、スケジュール帳、五線譜、メッセージカード、折り紙封筒が印刷できるフォーム印刷機能を搭載している。単体でも機能は豊富であるといえる。

スマホ/クラウド対応
型番
EP-10VA
EP-979A3
EW-M970A3T
製品画像
スマートフォン連携
対応端末
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 9.0以降)
Android 4.1以降
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 9.0以降)
Android 4.1以降
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 9.0以降)
Android 4.1以降
NFC対応
写真プリント
ドキュメントプリント
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
スキャン
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
クラウド連携
スマートフォン経由/本体
○/−
○/−
○/−
オンラインストレージからの印刷
SNSからの印刷
○(コメント付き可)
○(コメント付き可)
○(コメント付き可)
写真共有サイトからの印刷
メールしてプリント
リモートプリント
スキャンしてリモートプリント

 スマホ・クラウド対応機能を見てみよう。iPhoneやiPod touch、iPadと、Android端末に対応している。いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることでプリント又はスキャンが行える。メインで使用すると思われる写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。さらにドキュメント印刷にも対応している。PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もできる便利だ。また、スマートフォン上からスキャンを実行し、データをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。出かける前に紙の情報をさっとスマートフォンに転送するといった使い方ができるため便利だろう。スマホとの接続は、無線LAN(Wi-Fi)で行うが、無線LANルータを経由する方法と、ダイレクトに接続する「Wi-Fiダイレクト」が選べる。EP-10VAEP-979A3はNFCに対応しており、Wi-Fiダイレクト接続の場合に、タッチするだけで簡単に接続設定が行える。とはいえ、対応機種はAndroidに限られる上、使うのはWi-Fiダイレクトの場合のみである。無線LANルーター経由の方がより便利に使えるため、一般的にはこちらを利用すると思われるし、Wi-Fiダイレクトの場合でも、手動設定でもそれほど難しくはない。NFCはあれば便利だが、無くてもそれほど不便ではないだろう。
 さらに、クラウドとの連携機能も搭載されており、オンラインストレージから印刷したり、SNSの写真を印刷する事ができる。SNSの写真はコメント付きでも印刷が可能だ。さらにネットワークを利用したプリント機能として印刷したい写真や文書を本機にメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、スキャンした画像を離れた場所の対応複合機で印刷できる「メールdeリモート印刷」、通常のプリント同じ操作で、外出先などの離れた場所から自宅のEP-10VA/EP-979A3/EW-M970A3Tに印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。

コピー機能
型番
EP-10VA
EP-979A3
EW-M970A3T
製品画像
等倍コピー
拡大縮小
倍率指定
○(25〜400%)
○(25〜400%)
○(25〜400%)
オートフィット
定型変倍
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー
○(退色復元対応)
○(退色復元対応)
○(退色復元対応)
割り付け(2面/4面)
○/−
○/−
○/−
バラエティコピー
BOOKコピー
ミラーコピー
BOOK2アップ
塗り絵コピー
背景除去機能
文字くっきり機能
BOOKコピー
ミラーコピー
BOOK2アップ
塗り絵コピー
A3原稿二つ折りコピー
背景除去機能
文字くっきり機能
BOOKコピー
ミラーコピー
BOOK2アップ
塗り絵コピー
背景除去機能

 コピー機能を見てみよう。単純なコピー機能としては、3機種とも単純な等倍コピーだけでなく、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「オートフィット」機能や、原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行う「定型変倍」機能、さらに25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える機能を搭載した高性能な物だ。またCD/DVD/Blu-rayレーベルコピーも3機種とも対応である。また原稿面に写真を複数枚置き、焼き増し風のコピーを行うことも出来る。この際「退色復元」機能を使えば、昔の色あせした写真も自動で補正してくれる機能も備えている。3機種とも2枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2アップにも対応する。その他、コピー時にも「塗り絵印刷」が行える他、見開きの本を左右ページで別々にコピーする「BOOKコピー」、アイロンプリント紙への印刷時に使える「ミラーコピー」、背景の色を白にして見やすくする「背景除去機能」を備えている。さらにEP-979A3はA3原稿二つ折りコピー機能を搭載している。スキャナはA4までだが、2回スキャンすることでA3コピーを可能とする機能だ。中央部にずれや隙間が生じることもあるが、従来の「A3用紙に2アップ」の設定では、周囲と同じだけ余白ができてしまっていたが、この機能ならできるだけ余白の無いようにしてくれる。

操作パネル/インタフェース/本体サイズ
型番
EP-10VA
EP-979A3
EW-M970A3T
製品画像
液晶ディスプレイ
4.3型
(90度角度調整可)
4.3型
(90度角度調整可)
2.7型
(90度角度調整可)
操作パネル
タッチパネル液晶
(90度角度調整可)
タッチパネル液晶
(90度角度調整可)
ボタン式
(90度角度調整可)
インターフェイス
USB他
USB2.0×1
USB2.0×1
USB2.0×1
無線LAN
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
有線LAN
100BASE-TX
100BASE-TX
100BASE-TX
対応OS
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP1
MacOS 10.6.8〜
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
耐久枚数
N/A
N/A
5万枚
外形寸法(横×奥×高)
479×395×163mm
479×356×148mm
526×415×168mm
重量
9.5kg
8.8kg
10.5kg
本体カラー
ブラック
ホワイト
ブラック

 操作パネルの位置は3機種とも共通だ。本体前面に取り付けられ、90度まで起こすことができるので、見やすい角度に調整できる。設置する場所によらず使いやすい。ただし、操作パネルや液晶には違いがある。EP-10VAEP-979A3は4.3型のタッチパネル液晶を搭載しており、液晶ディスプレイ内に、戻るやスタートのボタンも表示する。そのため、液晶ディスプレイ外のボタンは電源ボタンだけというシンプルな構成だ。液晶が大型なので見やすく、タッチパネル操作は直感的に操作ができるので使いやすい。一方のEW-M970A3Tはタッチパネルでない液晶を搭載し、液晶の右側に各種ボタンを用意する。液晶も2.7型とやや小さめだ。とはいえ操作性は悪くないため、慣れれば問題ないだろう。
 インタフェースは3機種とも共通で、USB2.0に加えて、有線/無線LANに対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人には有線LAN/無線LANによりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。またネットワーク接続をすればスマートフォンやタブレットからの印刷も可能となる。また前述のようにWi-Fiダイレクトに対応しているため、無線LANルータの無い環境でも、スマートフォンやタブレットと直接Wi-Fi接続が可能となっている点も共通だ。
 本体サイズを見てみよう。同じ本体をベースにしているため見た目は似ている。EP-979A3は479×356×148mmとA3プリントができて複合機という事を考えれば非常に小さい。そして、背面給紙が強化された分だけEP-10VAはやや大きくなり、479×395×163mmとなる。奥行きの39mmに関しては実際に大きくなっているが、高さの15mmは背面給紙部分だけなので、数値の差ほど大きさに差があるようには見えない。EW-M970A3Tの場合は右側にエコタンクを搭載し、前方にもやや飛び出ていること、背面給紙はEP-10VA同様強化されていることから516×415×168mmとやや大柄だ。高さも背面給紙部分だけでなく全体に168mmある。とはいえエコタンクを搭載しながら横幅は37mmしか増えておらず、奥行きもEP-10VAに対してエコタンクが前に飛び出ている分くらいしか大きくなっていない。十分コンパクトと言えるだろう。3機種とも置き場所のサイズ制限がシビアなので無ければ、特に問題にするほどの差はなさそうだ。
 ちなみに、本体の耐久枚数は、EW-M970A3Tが5万枚となっている。EP-10VAEP-979A3は公表していないが、家庭向けプリンターは1万〜1万5000枚程度が一般的なので、EW-M970A3Tはかなり強化されている。印刷枚数が多いプリンターらしい強化点と言える。



 3機種はメーカーが同じでA3プリントA4スキャン対応というだけでなく、見た目も似ている。しかしそれぞれ特徴があり、対象とするユーザーが異なるため選びやすい。まず写真を綺麗に印刷したいという目的があるならEP-10VAがおすすめだ。画質が綺麗なだけでなく印刷コストが安いので大量印刷や大判印刷も安心だ。A3用紙が連続給紙できるのも便利だろう。逆に画質は並み、又は文書印刷がメインだが、とにかく印刷枚数が多いという人はEW-M970A3Tがおすすめだ。印刷コストが安いだけでなく付属のインクが多い点でもお得だ。また、1回のインク補充で印刷枚数が多く、途中で追加もできるため、大量印刷してもインク切れで止まっていたという事が置きにくい。本体の耐久枚数が多いのもポイントだ。どちらも当てはまらず、写真印刷はしたいが普通に綺麗ならよく、それほど大量印刷でもない、普段はA4用紙以下がメインだが、たまにはA3やB4ができれば便利という人にはEP-979A3がおすすめと言えるだろう。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/


EP-10VA
EP-979A3
EW-M970A3T