2017年末時点のプリンタ 〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜 (2017年12月10日公開・2018年3月1日最終更新)
2017年8月31日にエプソン、キャノンの両社から2017年末の年賀状商戦に向けた新製品が発表された。発売は9月〜10月になるが、例年より少し早い発表だ。そこで、2017年末時点での全体的な傾向、そして両メーカーの傾向を検証した上で、家庭向け複合機、FAX機能付きA3複合機、FAX付きA4複合機、エコタンク搭載プリンタ、A2単機能プリンタ、A3単機能プリンタ、A4単機能プリンタ、コンパクト・モバイルプリンタ、年賀状プリンタの9種類を価格帯別に比較していく。各比較は、独立したページとして用意してあるので、下記のリンクから飛んで頂きたい。
ここ数年の家庭用プリンタに関しては、1年に1回の新機種が発表されてきたものの、機能面での大きな変化が少ない状態が続いていた。しかし、最近では新たな方向性である「低印刷コスト」が話題に上がっている。もともとキヤノンは印刷コストが安かったが、それでも他社に比べて2〜3割といったところで、大きな差では無かった。しかし、エプソンがEP-10VA用のインクをほぼ半額に価格改定し、一気に印刷コストでキヤノンを抜き去ると、昨年の1月にはエコタンク搭載プリンターを発売し、印刷コストが10分の1以下になるなど、一気に低印刷コストの流れが強まった。キヤノンとしても黙っているわけにはいかず、新モデルでは印刷コストを下げたモデルを発売した。エプソンもエコタンク搭載プリンターを拡充、初期モデルを新モデルに置き換えている 新機種はエプソンとキヤノンで傾向がやや異なる。エプソンは、家庭向けではA3対応複合機とA4対応複合機の最上位モデル、最下位モデルを継続販売とし、売れ筋モデルのみ新モデルに移行した一方、エコタンク搭載プリンターをカラーモデルで3機種から5機種に拡充すると共に、従来の3機種中2機種を新製品に移行した。またA3単機能プリンター2機種、FAX機能付きA3複合機2機種も新モデルに移行するなど、幅広く新製品に移行した印象だ。一方キヤノンは、家庭向けのA4複合機は5機種全機種が新モデルに移行、さらに最上位モデルが2モデルに分かれたので、全6モデルの新製品となる。さらに家庭向けの機種にFAX機能とADFを付けた機種を2機種追加している。一方、A3単機能プリンタやビジネスプリンターはそのままで、家庭向けのみ一新というイメージだ。 ラインナップ上は、エプソンもキヤノンも少し機種数が増えた印象だ。エプソンは最下位モデルPX-045Aが無くなった一方、中間にEP-810Aが追加され、家庭向け複合機の機種数は変わらない。それ以外も新機種は基本的に旧モデルからの置き換えである。長年継続販売されていたA4単機能プリンタPX-G930がようやく在庫のみとなり実質販売終了となる。一方、FAX付き複合機が新機種に置き換わる際に、PX-M5041FとPX-M650Fも新機種も発売されつつ、継続販売されるため、2機種増となる。それ以外、エコタンク搭載プリンターも2機種増えたため全体的にはラインナップが多くなっている。キヤノンは前述のように家庭向け複合機の最上位モデルが2モデルに分かれた事に加えて、FAX付き複合機2機種が追加された。それによって、PIXUS MX923という長く継続販売されていた機種が販売終了となったが、全体で見ると2機種増えた形となる。 このようにラインナップも大きな変化があり、メーカーの方向性の差が大きく出た今回の新機種だが、メーカー別により細かく見ていこう。
それでは、最新のエプソンのラインナップは、2016年末と比べてどのようになっているか見てみよう。
複合機を見てみると、A3プリント対応のEP-10VAとEP-979A3、さらにA4プリント対応の最上位モデルEP-30VAが継続販売となる。下位モデルでは、長らく最下位モデルとして販売され続けたPX-045Aがついにラインナップから外れ、PX-049Aが最下位モデルとなる。PX-049Aも継続販売である。EP-879AとEP-709Aだけが、新機種EP-880AとEP-710Aへと移行し、その間にEP-810Aという新しいグレードの製品が追加されている。ちなみに、エプソンの型番は、頭にインクの種類を示す「EP」(染料インク)かPX(顔料インク)を付け、その後の数字の上2桁(100と10の位)がグレードを、下1桁(1の位)が世代を表していた。去年でEP-879AやEP-709Aのように、「9」まで使い切り、今年は全く新しい型番になるのかが注目された。10年前、型番の頭が「PM」だった頃、PM-T990やPM-A890といった世代を表す下2桁が「90」まで使い切ってしまった後、、「EP」から始まる新型番へ移行した経緯がある。しかし結果的に今回は「9」の次は「10」という事で、グレードを表す10の位まで食い込んでしまったが、EP-880AやEP-710Aとなった。また、直接製品に関係ある点では無いが、エプソンは家庭向けプリンターは印刷コストとしてはL判写真しか公表していなかったが、今回よりA4カラー文書の印刷コストも公表されている。新機種だけで無く、継続販売の機種も含めて、現行機種は全て公表された。 細かく見てみると、EP-879Aの後継機種EP-880Aは、液晶が2.7型から4.3型になったのが大きな変更点だ。それ以外の機能にはほぼ違いが無い。細かい違いで言うと、今まで自動両面印刷では普通紙とハガキにしか対応していなかったが、新たにスーパーファイン紙にも対応した。エプソンからも純正の両面スーパーファイン紙が発売されている。本体のカラーバリエーションはEP-879Aのホワイト、ブラック、レッドに加えてニュートラルベージュが登場した。天板がベージュ、それ以外がホワイトである。4色展開はエプソン初となる。一方、EP-709Aの後継機種EP-710Aは、実は機能面での違いは無い。ボタンが丸形で、ボタンの周囲に溝が無いタイプになった事、液晶内もデザインがEP-880Aなどの新機種と同デザインになった事などが違いだ。 そして、間に追加されたEP-810Aだが、型番上はEP-808Aの2世代後の製品に見える。昨年EP-809Aが発売されると思いきや、後継機種の型番はEP-879Aになった。1世代飛んでEP-80xシリーズが復活したと言える。実際に本体はEP-808Aをベースにしており、本体デザインや本体サイズは、給紙カセットなどにEP-808Aの面影が残る。とはいえ、最上位モデルだったEP-808Aとは異なり、EP-880Aの下位モデルという扱いなので、機能面では少し削られた部分がある。一方、3年前にEP-807AとEP-707Aの間にEP-777Aという製品があったが、これよりは削られる機能は少ない。インクはEP-710Aと同じイチョウ型番で、印刷コストはL判写真フチなしで26.5円とEP-880Aより高くなる。対応用紙はEP-808Aをベースにしている事もあり、L判〜A4である。一方前面2段給紙カセットと、背面手差し給紙(厚紙対応)は残され、下位機種との差別化になる。自動電源オン機能は搭載されるが、排紙トレイの開閉は手動なので、排紙トレイを収納していると、印刷を実行しても電源が入るだけで印刷は実行されない。スキャナー解像度は1200dpiでEP-880Aと同等に見えるが、EP-880Aは1200×4800dpi、EP-810Aは1200×2400dpiでやや異なる。メモリカードからのダイレクトプリントはSDカードとUSBメモリに対応、赤外線通信は非対応だ。上位のEP-880Aは3種とも対応、下位のEP-710AはSDカードのみなので、ちょうど中間だ。操作パネルは液晶が2.7型とEP-880Aの4.3型、EP-710Aの1.44型の中間サイズとなる。操作パネルもタッチパネルでは無いが、静電式ボタンとなる。ちなみにEP-777Aなどで採用されていた静電式ボタンの「LEDナビ」とは異なり、ボタンが光る事は無い。有線LANも非搭載となり、USBと無線LANだけである。本体サイズは390×339×141mmで、EP-808Aの390×341×141mmとほぼ同等だ。EP-880Aよりは横幅があるが、EP-710よりは高さが抑えられている。本体カラーはホワイトとブラックの2色展開だ。 FAX付き複合機はA4対応が先行して今年5月に、A3対応が今回新製品になる前モデルが新モデルとなる。まずA4モデルを見てみると、PX-M741Fの後継がPX-M781F、PX-M740Fの後継がPX-M780F、PX-M650Fの後継がPX-M680Fとなる。ただし、PX-M741F/PX-M740Fに関してはホームページから消えているが、PX-M650Fに関しては掲載されている。PX-M680FとPX-M650Fの機能差が大きい事から、PX-M650FはPX-M680Fの下位モデルとして継続販売される物と思われる。3機種ともデザインが一新されている。PX-M781Fに関しては、本体はADFや液晶ディスプレイの出っ張りがなくなりすっきりしたデザインとなった。性能面ではノズル数がPX-M741Fのブラック800ノズル、カラー各256ノズルからカラーも800ノズルに増加、重ね連送機構も搭載する事により、A4カラー文書10ipm、モノクロ19ipmからそれぞれ22ipmと24ipmへと高速化している。また、PrecisionCoreプリントヘッドは引き続き採用し、最小インクドロップサイズは2.8plと同等ながら印刷解像度は4800×1200dpiに下がっている一方、シアン、マゼンタをより鮮やかに再現できる様になったほか、エッジ処理も精密になり文書の印刷画質はさらに上がっている。印刷コストもカラー文書9.4円から7.3円に、モノクロ文書3.2円から2.2円へと低下したほか、インクカートリッジ自体も大容量化し、カラー1900枚、モノクロ2600枚へと増加している。給紙に関しては基本前面給カセット2段というのは同等だが、背面手差し給紙は廃止されている。スキャナに関してはADFの給紙可能枚数が35枚から50枚に増加したほか、ADFのスキャン速度がカラー・モノクロ共に16ipmへと高速化されている(PX-M741Fはカラー4.5ipm、モノクロ7.3ipm)。プリント、コピー機能には大きな変化は無いが、細かい点で言うと自動濃度切り替え機能が無くなったほか、自動リダイヤルの回数や間隔が固定となった。ダイレクト印刷機能はカードスロットが無くなり、USBメモリのみの対応となった。一方USBメモリからのダイレクト印刷は、従来のJPEGとTIFFに加えて、スキャンtoメモリー機能又はスキャンtoフォルダー機能で生成されたPDFデータの印刷が可能となった。スマートフォン対応に関しては新たにNFCに対応している。操作性は大きく変更され、従来は本体前方に飛び出す形で斜めに固定されていた液晶と操作パネルは、家庭用のEP-880A同様、本体前面に取り付けられ、90度まで起こして角度調整が可能になった。また、液晶が3.5インチから4.3インチワイドに大型化している。一方、従来あったテンキーやスタートボタン、ホームボタンと行った物理ボタンは無くなり、液晶内に表示される方式になった。液晶部はEP-880Aにそっくりだが、液晶の左右以外に上部にもタッチセンサー式のボタンが並ぶ点で異なる。本体サイズはやや小型化したと言える。本体サイズは449×427×308mmから425×388×330mmに横幅と奥行きが小型化している。また、耐久枚数も8万枚から10万枚に向上している。 PX-M780FはPX-M781Fのカセットを1段にしたような製品だが、前機種のPX-M741FとPX-M740Fではカセット段数以外は液晶サイズくらいしか違いが無かったのに対して、PX-M780FはPX-M781Fに対していくつか機能差が付けられている。まず、ノズル数や画質面では同等ではあるものの、重ね連送機構が非搭載であるため、印刷速度はA4カラー、モノクロ共に20ipmとなっている。ADFも両面スキャンに非対応である他、給紙可能枚数も35枚となっている。スキャン速度もカラー8ipm、モノクロ12ipmと遅くなる。FAX機能ではオンフックダイヤル機能が非搭載である。液晶ディスプレイは2.7インチに小型化している。本体サイズは425×378×249mmとなる。前機種PX-M740Fとの比較では印刷は高速化、普通紙への高画質化の他、印刷コストも下がっている。一方でADFの両面スキャン機能が無くなっている一方で、ADFのスキャン速度はアップしている(PX-M740Fはカラー4.5ipm、モノクロ7.3ipm)。メモリカードスロットも非搭載となる。USBメモリは対応で、ダイレクト印刷時にPDFファイル(条件はPX-M781Fと同様)の印刷が可能な他、スマートフォン対応関係ではNFCに対応している。操作パネルが固定式から角度調整式になった他、物理ボタンが無くなりテンキーやスタートボタンも液晶内に表示されるようになった。 PX-M680Fは、従来のPX-M650FとPX-M740Fの関係とは異なり、上位モデルPX-M780Fに近い性能を持ち本体デザインも同等だ。PX-M780Fとの違いは、印刷解像度が4800×2400dpiとPX-M780Fより高い一方、ノズル数はモノクロは800ノズルで同等ではある物の、カラーは各256ノズルとなる。そのためA4カラー文書10ipm、モノクロ20ipmとカラー文書の印刷速度が劣る。また、インクカートリッジも異なるため、印刷コストはカラー11.4円、モノクロ3,2円と高くなる。この2点が大きな違いだ。給紙機能や各種印刷機能、コピー、FAX、ダイレクト印刷機能なども同等だ。操作パネルも同等で、本体サイズも同等である。前述以外の違いで言うとADFのスキャン速度が、カラー、モノクロとも7ipmにやや低速化している事と、耐久枚数か8万枚となっているくらいである。ちなみにPX-M650Fと比べると進化点は多い。前述のノズル数の増加による印刷速度の向上が挙げられる。ちなみにPX-M680Fのノズル数は、上位モデルの旧モデルPX-M740Fと同等になっている。印刷解像度も4800×1200dpiから4800×2400dpiにアップ、最小インクドロップサイズも3.3plから2.8plに小さくなっている。前面給紙カセットにセット可能な枚数も150枚から250枚に増加している。印刷コストもA4カラー文書13.5円から11.4円に、A4モノクロ文書は4.1円から3.2円に下がっている。新たにUSBメモリに対応、ダイレクト印刷が可能になったほか、スキャンしてメモリカードに保存する機能も搭載している。ADFのスキャン速度は、カラー、モノクロ共に3.0ipmから7.0ipmに高速化している。NFCに対応したほか、スキャンして遠隔地の対応プリンタで印刷する機能も搭載した。コピーも2in1だけでなく4in1にも対応したほか、IDコピー以外に影消しコピー、パンチ穴消しコピー機能を搭載した。FAX機能も強化され、受信FAXの保存件数が100枚から180枚に、短縮ダイヤルが60件から100件に、グループダイヤルも59宛先から99宛先に、順次同報送信も30宛先から100宛先にそれぞれ増加している。操作パネルは角度調整が可能になった。液晶サイズは2.7型と同等だが、物理ボタンが無くなり、テンキーやスタートボタンも液晶内に表示されるようになった。本体サイズは425×360×230mmから425×378×249mmとやや大型化している。 一方、A3対応モデルは、前面給紙カセット2段のPX-M5041FかPX-M5081Fに、1段のPX-5040FがPX-5080Fに移行した。A4モデルのような劇的な変化はなく、細かな改善が中心だ。プリント機能は画質、速度、給紙方式まで全く同じだ。背面手差しも残っている。スキャナは、ADFの速度がカラー4.8ipmから5.5ipmに、モノクロ8.3ipmから11.0ipmに高速化している。一方、メモリカードスロットは廃止され、USBメモリのみの対応となった。スマホ対応の面ではNFCが搭載されている。操作パネルの面では、本体前面に搭載されて起こして角度調整が可能になった。ただし、垂直に立てた収納状態でも、本体に完全に収納されるのではなく、操作パネルの厚み分だけ前に飛び出したようなデザインだ。液晶サイズは同じ4.3型ながら、メニューデザインは新モデルのものに一新されている。一方でテンキーやスタートボタンなどは引き続き物理ボタンで残されている。ワンタッチダイヤル機能が無くなり、これらのボタンが無くなったが、代わりにクイックダイヤルボタンが用意され、このボタン+電話帳の登録番号でダイヤルできる。その他耐久枚数が8万枚から15万枚に大きく引き上げられた。本体サイズは数値上は奥行きがやや小さくなった様に見えるが、これは液晶が収納できるようになったためで、本体は同じ形状だ。ちなみに、PX-M5081FとPX-M5080Fには前面給紙カセットの段数以外の違いは無い。ちなみにPX-M5041Fも継続販売されている。 A3単機能プリンタの内、PX-M5041Fのプリント機能だけの様な機種PX-S5040もPX-S5080に移行した。NFCの搭載と、耐久枚数が8万枚から15万枚に向上したのが主な違いで、液晶や操作パネルも含めて、その他の機能は同じだ。一方、A3単機能プリンタの中で一番存在感の薄かったEP-4004がEP-50Vという新製品となった。EP-4004の上位に写真作品印刷向けのプロセレクションシリーズSC-PX5VIIやSC-PX7VIIがあり、下位モデルには文書向けPX-1004がある。写真作品というほどではないが、綺麗に写真印刷が出来るA3プリンターとしてEP-4004はラインナップされていたが、A4複合機にA3手差し給紙機能を備えたEP-97xシリーズが登場してからは存在感が薄くなっていた。何しろ、EP-97xシリーズは、A3ノビよりやや小さいA3までで、1枚ずつの手差し給紙とは言え、複合機でありながら本体サイズはEP-4004より小さく、画質は同等、印刷速度は上で、コピーやメモリカードからのダイレクト印刷も出来るにも関わらず価格が安かった。さらにEP-97xシリーズの派生として、A3の写真用紙が5枚、普通紙は10枚までの連続給紙に対応し、EP-4004より画質が上で印刷コストが安いEP-10VAが登場して、いよいよ居場所が無くなってきていた。これまで約6年間新機種も登場しておらず、後継機種は無くラインナップから消えるのではとも思われていた。しかし今回一新された新機種が登場した。EP-10VAをベースにした様な機種で、EpsonClearChrome K2インクと呼ばれる、基本4色にレッドとグレーインクを搭載した新しい構成となった。論理的色変換システムLCCSも搭載する。このおかげで赤の表現とモノクロの表現力が大きく増している。インク構成はEP-10VAと同じだが、EP-880Aの様にインクカートリッジを縦に並べる搭載方法で、インクカートリッジは新しい「ソリ」型番となった。印刷コストもL判写真フチなしで、EP-4004の21.1円から12.7円に大きく下がった。ノズル数も増えたが、高画質化のためか、印刷測度は37秒から34秒へとほとんど変わっていない。背面給紙だけだったEP-4004と違い、EP-50Vは前面給紙カセットと背面給紙の2方向となった。EP-10VAも似ているが、こちらは前面給紙カセットが大小2段で、A4普通紙が100枚、背面は普通紙10枚、専用紙5枚の簡易的な物だ。一方EP-50Vは前面給紙は1段だが、200枚までセット可能で(最大A4)、背面給紙も普通紙50枚までセット可能だ。EP-10VAと同じく、厚紙対応だ。EP-4004の流れもくみつつ、より便利になっている。対応サイズもEP-4004と同じくA3ノビまで対応、一方最小サイズは名刺サイズとなり、より小さい用紙に印刷できるようになった。排紙トレイの自動開閉機能や、自動電源オン/オフ、用紙サイズ・種類の登録機能の、最新モデルらしく搭載する。またA4までだが自動両面印刷に対応している。さらに廃インクタンク(メンテナンスボックス)をユーザ自身で交換可能となり、廃インクタンクが一杯になっても修理に出す必要がなくなった。一方で細かい点だがPictBridgeには非対応となった。スマホやネットワーク対応機能も最新機種らしく、Wi-Fiダイレクトに対応したほか、スマホ内の写真や文書だけでなく、SNSの写真印刷に対応した。また、パソコンからの場合、外出先でも一般的なプリントとほぼ同じ操作で自宅のEP-50Vで印刷が可能なリモートプリントにも対応した。本体には新たに2.4型液晶と操作パネルを搭載し、本体だけで各種設定やインク残量の確認、エラー内容の確認が可能となった。USBと無線LANだけでなく有線LANにも対応した。それでいて本体サイズは476×369×159mmと、EP-4004の616×322×215mmと比べて横幅が14cm、高さが6.4cmも小さくなっている。前面給紙カセット対応になり、奥行きは4.7cm大きくなったが、全体で見れば大幅な小型化が行われている。その他のA3対応プリンターは継続販売だ。 A4単機能プリンタやコンパクトプリンタ、年賀状プリンタも基本的に継続販売だ。ただし、長年継続販売されていたPX-G930がついに販売終了となる。年賀状作成ができるPF-81-2017はPF-81-2018になったが、2018年度版イラスト集が付属するだけで、本体に変更はない。 最後にエコタンク搭載プリンターである。まず、A3ノビプリントとA3スキャン対応の機種が追加された。EW-M5071FはPX-M5041Fをベースにした機種で、ほとんどの機能は同じだ。エコタンク搭載プリンターの通例として、顔料と染料の混在方式となる。EW-M5071Fの場合、ブラックが顔料、カラーが染料の4色構成で染料ブラックは搭載されない。エコタンクは従来方式で、現行モデルでは唯一「挿すだけ満タンインク方式」ではない。また、初のエコタンク搭載プリンターEW-M660FTにあった制限がEW-M5071Fにもあり、フチなし印刷非対応、コピー時に使用できる用紙もA3/B4/A4/B5/A5のみとなる。本体カラーもブラックになっている。一方でそれ以外の印刷速度や給紙機構、スキャナやダイレクト印刷、インタフェースはPX-M5041Fを踏襲している。印刷コストはA4カラー文書で、PX-M5041Fが7.6円のところEW-M5071FTは0.8円、A4モノクロ文書が2.5円に対して0.4円と劇的に安くなる。ちなみに、これまでのエコタンク搭載プリンターはインクボトルが1本又は2本付属するのも特徴だったが EW-M5071FTはセットアップ用インクボトルしか付属しない。もう一つ、追加されるモデルとしてEW-M970A3Tがある。A4スキャンとA4プリントがメインの複合機だが、背面給紙のみA3用紙に対応する。EP-979A3をエコタンク搭載プリンターにしたモデルとも言えるし、EW-M770TのA3対応版とも言える。実際に、EW-M970A3Tが違うのは背面給紙がA3に対応している点がほとんどだ。インクも同じで印刷コストなども同じだ。ただ、背面給紙に関しては手差しではなく連続給紙が可能で、普通紙10枚、写真用紙5枚までセットができる。また細かい点だが、ハガキの向きを検出する機能も搭載する。このあたりはEP-10VAと同等機能だ。ちなみに「挿すだけ満タンインク方式」に対応しており、インクタンクも本体に大半が埋め込まれている。EP-979A3との比較で言うと、プリント機能面で言うと、エコタンク搭載である事はもちろん、インクが顔料ブラック+染料4色構成になるため若干画質が低下する事、「つよインク200」ではないこと(ただし耐保存性は同等)、L判写真フチなし印刷測度が24秒とやや遅いこと、逆に印刷コストはL判写真フチなしが6.0円、A4カラー文書が1.3円、A4モノクロ文書が0.5円と安い事が挙げられる。EP-979A3の印刷コストはL判写真フチなしで20.6円、A4カラー文書が12.0円である。前述の背面給紙が連続給紙に対応したことやハガキ向き検出機能を搭載した一方、排紙トレイの自動開閉機能は非搭載だ。メンテナンスボックス(廃インクタンク)をユーザー自身で交換できるようにもなっている。スキャナ面では解像度が1200dpiになり、原稿取り忘れアラームが非搭載となった。ダイレクト印刷機能は搭載するが、対応メモリカードはSDカードのみで、USBメモリには対応するが赤外線通信は非対応だ。スマホ・クラウド対応機能やコピー機能はほぼ同等だが、NFCは搭載されない。液晶は2.7型と小型になり、タッチパネルではなくボタン式となる。耐久枚数は5万枚と一般的な家庭用複合機と比べると強化されている。本体サイズは526×415×168mmで、EP-979A3の479×356×148mmと比べると一回り大きいが、エコタンクを搭載していることを考えると小さいと言える。インクボトルが1セット付属する。A4プリント対応の上位モデル発売が一番新しい事もありEW-M770Tは継続販売となる。 FAX付きモデルEW-M660FTやEW-M670FTとなった。デザインが一新され、PX-M780Fに似たデザインとなる。EW-M660FTとの比較では、エコタンクは「挿すだけ満タンインク方式」に変更され、インクも顔料がヤドカリ、染料がハリネズミとなった。EW-M770FTとは異なるインクで、カラーインクは1本70ml入りだが、ブラックインクは140mlから127mlに微減している。一方、写真の耐保存性は少し向上し、アルバム保存300年、耐光性7年は同じだが、耐オゾン性が半年以上1年未満から2年へと向上した。一方で画質面では変化はない。印刷測度はやや向上し、A4普通紙印刷でカラーが7.3ipmから8.0ipmに、モノクロが13.7ipmから15.0ipmになった。印刷コストはA4カラー文書が0.9円、A4モノクロ文書が0.4円で、カラーだけ0.1円高くなった。新たにフチなし印刷に対応、前面給紙カセットもセット可能枚数が250枚へ増加した。自動両面印刷もハガキに対応、メンテナンスボックス(廃インクタンク)の交換も可能となった。スキャナ面では大きな変化はないが、ADFの読み取り速度が3.0ipmから5.0ipmに向上した。コピー機能では、対応用紙がEW-M660FTのA4/B5のみだったのが、A4〜A6/六切/ハイビジョン/KG/2L判/L判/洋形封筒1〜4号、長形封筒3号/4号/ハガキと格段に増えた。「IDコピー」機能以外に「影消しコピー」と「パンチ穴消しコピー」機能も搭載された。FAX機能も強化され、短縮ダイヤル、グループダイヤル、順次同報送信の件数が増えたほか、ファックス/電話自動切り替え機能や、見てから送信、見てから印刷機能も搭載された。操作パネルは、斜めに固定されていたEW-M660FTと違い、前面に搭載され起こして角度調整が可能となった。液晶も2.2型モノクロから、2.4型カラーになり、タッチパネル操作となっている。本体サイズは375×347×231mmで、EW-M660FTの515×360×241よりかなり小型化された。付属するインクボトルは2セットか1セットに減っている。 エコタンク搭載カラー複合機の下位モデルEP-M570TはEW-M571Tになった。型番の頭が「EP」から「EW」になった事から分かるように、4色染料から、ブラックが顔料、カラーが染料に変更された。また、挿すだけ満タンインク方式となり、EW-M670FT同様耐保存性も若干向上した。ちなみにEW-M670FTと同じインクである。最小インクドロップサイズや解像度、ノズル数は変化がないので、写真印刷はブラックインクが使えない分コントラストが弱くなる一方、文書の黒部分はメリハリのある印刷が行えるようになった。L判写真フチなしは76秒(EP-M570Tは74秒)、A4カラー文書は5.0ipm(同5.3ipm)、A4モノクロ文書が10.5ipm(同10.0ipm)と若干変化はあるがほぼ同等だ。印刷コストはL判写真フチなしは5.9円(EP-M570Tは5.6円)、A4カラー文書は0.9円(同0.6円)、A4モノクロ文書が0.4円(同0.3円)と少し上がっている。背面給紙である点は同じだが、L判より小さい名刺サイズの印刷に対応、自動両面印刷機能も搭載した。スキャンしてメモリカードに保存する機能も搭載した。コピー機能は2面割り付けに対応したほか「IDコピー」機能も搭載された。EW-M670FTに似たデザインだが、液晶サイズはEP-M570と同等の1.44型ででボタン操作なのも同じだ。本体サイズは375×347×187mmと、EP-M570Tの445×304×169mmと比べて横幅は大きく減り、高さと奥行きは大きくなっている。付属するインクボトルは2セットか1セットに減っている。
今年のラインナップが去年と比べてどのようになっているか、まずは見てみよう。
キャノンの今年の機種には共通の特徴がある。まず上位モデルで印刷コストが下がり、下位モデルで印刷コストが上がっていることが挙げられる。例えば6色インクの場合、去年の機種はL判フチなし写真が15.9円、A4カラー文書が8.9円だった。これが上位モデルでは12.5円と5.7円に下がった一方、中位モデルでは19.4円と9.6円に上がり、他社に対するアドバンテージが薄くなっている。5色モデルも、去年の機種はL判フチなし写真が15.1円、A4カラー文書が8.3円だったのが、今年のモデルでは17.2円と9.3円に上がっている。これはインクが370/371番から上位モデルがN10/N11番に、中位モデル以下が380/381番に変更されたのを機に、380/381番には従来あった大容量インクカートリッジ(370XL/371XL)がなくなった事が原因だ。代わりに小容量が追加され、標準(380/381)と小容量(380s/381s)の2種類になった。標準容量が従来よりは多くなっているとは言え、大容量がなくなり印刷コストが上がった。ただし顔料ブラックのみ大容量が残されている。ちなみに380/381と370/371はインクに改良は施されていない。一方上位モデル用のN10/N11インクはインク構成も変更、インク自体も改良され、大容量と標準容量のインクカートリッジが用意される。同じカートリッジサイズで内容量を増やすのは難しいので、ほぼ同量で、販売価格を下げることで印刷コストを下げている。 もう一つの違いは、上位機種の印刷解像度が下がり、最小インクドロップサイズが非公開となった。カタログに記載が無いのではなく、問い合わせても回答が得られなかった。従来は上位モデルが9600×2400dpiで1pl、下位モデルで4800×1200dpiで2plであった。最小インクドロップサイズが小さくなると密にインクを打つ必要があり、解像度が高くなるのは当然だ。ところが今年の機種は最上位モデルまで全て4800×1200dpiとなった。従来のパターンだと、最小インクドロップサイズは2plになるし、そもそも1plならば非公表にする必要がない点からも2plになっている可能性がある。とすると画質面では低下する。 それ以外に細かい点だが、前面給紙カセットに若干の変更が加えられた。前面給紙カセットは一見すると本体に完全収納されているが、この状態ではB5未満の用紙しかセットできない。A4やB5用紙をセットする場合は、カセットを伸ばす必要があり、本体から35mm〜44mm飛び出す形となる。去年のモデルでは、このカセットの伸縮は手動だった。新モデルでは、カセットを引き出す際に自動的に伸張するようになった。つまり、用紙をセットしていない時は縮めてすっきり収納しておいても、A4やB5用紙をセットする際に自動的にセットできるサイズになるという訳だ。もちろん、カセットを収納する時は自動で縮まったりはしない(そうでないとセットした用紙がぐちゃぐちゃになってしまう)。一見便利だが、B5より小さな用紙をセットしている場合、せっかく縮めておいても、カセットを取り出す度にカセットが伸張してしまう事になる。ただ、ハガキや写真用紙は前面給紙カセットには入れられないので、一般的にはA4やB5の普通紙を使う人が多いという判断なのだろう。また、NFCが全面的に廃止された一方、Bluetooth接続機能が搭載された。ただ、これはBluetoothを使って写真を送信すれば印刷されると言った機能では無い。Bluetoothでお互いを認証しておけば、ダイレクト接続(Wi-Fiダイレクト)の際の接続が簡単という機能だ。Bluetoothは接続時に使用するだけで、印刷操作は「Canon PRINT Inkjet」上で行い、データー転送にはWi-Fiが使用される。どちらが便利かは不明だが、NFCの搭載されていなかった、TS6000番台、TS5000番台の機種まで搭載されたため、これらの機種に関しては機能アップと言える。 対応OSもマイクロソフトのサポートに合わせて変更された。去年のモデルはWindows 10/8.1./8/8/ 7 SP1/Vista SP2だったが、今年のモデルはWindows10/8.1/7 SP1のみとなった。Windows Vistaが非対応となっただけでなく、Windows 8も非対応となった。また、MacOSのドライバは、去年までもドライバディスクには収録されずダウンロード対応だったが、今回からはキヤノンからは提供されず、AirPrintを使用する方法となった。対応バージョンもMacOS 10.8.5以上から、MacOS 10.10.5以上になっている。 それでは、これ以外の違いを見てみよう。複合機は5モデルから6モデルに増加した。PIXUS TS9030の後継機種がPIXUS XKシリーズ2機種になったためだ。PIXUS XKシリーズの上位モデルPIXUS XK70はPIXUS TS9030を引き継ぐ製品だ。本体カラーこそメタリックグレーになったが、デザインは同等、液晶サイズなども同じで、PIXUS TS9030の売りだったクリエイティブフィルターも搭載している。。価格は5,000円アップの44,880円となる。インクはN10/N11番インクで、従来のグレーインクに変わってフォトブルーインクを搭載する一方、それ以外のインクも光沢紙における色域を拡大している。ただし前述のように解像度は下がっており、最小インクドロップサイズも大きくなっている可能性がある。印刷コストは下がり、L判フチなし写真で12.5円、A4カラー文書5.7円となる。印刷速度はA4文書は変わらない物の、L判フチなし写真は18秒から14秒に高速化した。その他、無線LANがIEEE802.11n/a/g/b対応となっており、5GHz帯のIEEE802.11aに対応した。ダイレクト接続時は5GHz帯は使用できないが、家庭内の電子レンジや電話の子機など様々な物に影響を受けやすい2.4GHz帯に比べて安定した接続ができる5GHz帯対応は便利になったと言えるだろう。 PIXUS XKの下位モデルPIXUS XK50は、PIXUS TS8030の本体デザインの機種で、クリエイティブフィルターも搭載していない。本体カラーはメタリックグレーだ。インクはPIXUS XK70と同じくフォトブルーインクを搭載したN10/N11番インクで、印刷コストも安い。L判写真フチなし印刷が14秒に高速化されているのも同じだ。一方で液晶サイズが4.3型に小型化したほか、有線LAN接続も非対応となっている。無線LANはPIXUS TS9030と同様のIEEE802.11n/g/bとなる。一方で価格は39,880円でPIXUS TS9030と同じだ。 PIXUS TS8130はPIXUS TS8030の後継機種だが、インクカートリッジが変更され380/381番となった。大容量インクがなくなり、小容量インクがラインナップされる。そのため印刷コストはL判フチなし写真で19.4円、A4カラー文書9.6円と高くなった。また前述のように印刷解像度が下がっているほか、最小インクドロップサイズが大きくなっている可能性がある。同じく前述のようにNFCが無くなりBluetoothによる接続設定となった。それ以外の機能は踏襲しており、本体デザインも変わらない。カラーバリエーションはブラウンがなくなり、ブラック、ホワイト、レッドの3色となった。 PIXUS TS6130はPIXUS TS6030の後継機種だが、こちらもインクカートリッジの変更以外は大きな違いが無い。ただし価格が22,880円と3,000円下がっている。印刷コストはL判フチなし写真で17.2円、A4カラー文書9.3円と大きく上がっている。L判写真フチなし印刷速度が33秒から31秒にやや高速化された。PIXUS TS6030はNFCを搭載してい点も上位機種との差別化だったが、PIXUS TS6130では上位機種同様Bluetoothによる接続設定が可能になっている。 PIXUS TS5130はPIXUS TS5030の後継機種だが、方向性が大きく変わった。PIXUS TS5030では5色インクで印刷速度も遅いが、SDカードスロットを搭載し、上位機種もできないメモリカードからのダイレクトプリントに対応、その一方で背面給紙のみで自動両面印刷機能も非搭載だった。ある意味画質にそれほどこだわらない人向けの写真印刷プリンターだった。それがPIXUS TS5130では文書向けに大きく転換した。インクは4色となり、染料ブラックが非搭載となった。また去年までの下位モデルPIXUS MG3630と同じ340/341番インクを採用したため、カラー3色が一体型カートリッジとなった。そのため印刷コストがL判フチなし写真で19.5円、A4カラー文書13.1円と大きく上がっている。一方ノズル数が減ったため、印刷測度はL判フチなし写真が33秒から36秒、A4カラー文書が9.0ipmから6.8ipmに低下している。A4モノクロ文書のみ12.6ipmから13.0ipmとほぼ維持している。給紙方式は上位機種と同じ前面給紙カセットと背面給紙の2方向給紙に変更、対応用紙もL判より小さい名刺サイズに対応した。普通紙のみだが自動両面印刷にも対応した。一方でSDカードスロットは廃止され、それに関連した手書き合成機能とカレンダー印刷機能も非搭載となった。スマホとのBluetoothによる接続設定機能は搭載された。コピー機能も強化され写真の焼き増し風コピーに対応、2面割り付けだけでなく4面割り付けにも対応、枠消しコピー機能も追加された。写真の確認として使用しなくなったためか、液晶は3.0型から2.5型に小型化した。一方で本体は425×315×147mmと、PIXUS TS5030の372×315×126mmと比べると、横幅が大きく増した。価格は4,000円安い15,880円となっている。 昨年は新機種が出ず、PIXUS MGシリーズのままだったPIXUS MS3630もPIXUS TSシリーズの仲間入りを果たし、PIXUS TS3130となった。デザインや機能は一新されている。またカラーバリエーションはレッドがなくなりブラックとホワイトになった。インクは4色で、カラー3色一体カートリッジという点は同じだが、新しく345/346番インクとなった。印刷コストが上がり、L判フチなし写真で21.7円、A4カラー文書14.1円に上がった。一方、 インクは「ChromaLife100」の表記が消え、耐保存性は低下している。ノズル数も減り、印刷測度はL判フチなし写真が37秒から52秒、A4カラー文書が5.7ipmから4.0ipm、A4モノクロ文書が9.9ipmから7.7ipmに低下している。給紙は背面給紙に変更された。PIXUS MG3630も前面給紙カセットではなくトレイだったので、どちらが便利かは一長一短だが、高い位置に設置する場合は注意が必要だ。またセット可能枚数が普通紙100枚、ハガキ40枚から、普通紙60枚、ハガキ20枚までに減っている。また自動両面印刷機能が非搭載となった。スキャナは1200dpiから600dpiに性能が低下している。操作パネルはスキャナ面の左側に縦長に配置されるのは同等だが、新たに1.5型のモノクロセグメント液晶が搭載された。1桁の数字以外は、決められたマークや文字の表示か非表示かしか選べないが、モード切替やエラーコードが表示されるだけわかりやすい。また、このおかげでコピー時の用紙の選択肢が増えた。PIXUS MG3630の場合、使用できる用紙サイズはA4(レター含む)普通紙とL版の写真用紙のみで、A4普通紙はフチありで等倍コピー、L判写真用紙はフチ無しでオートフィット(用紙サイズに合わせて自動でサイズを拡大縮小)であった。一方PIXUS TS3130はA4、レター、リーガル、B5、A5サイズの普通紙はフチありで等倍コピー、L版、2L版、KGサイズの写真用紙と、インクジェットハガキはフチ無しでオートフィットとなる。フチあり、フチ無しの切り替えや、等倍とオートフィットの切り替えはできず、用紙によって固定なのは同じだが、使用できる用紙サイズや種類が大幅に増えている。利便性がアップしたと言える。本体サイズは435×316×145mmで、横幅と高さは微減、奥行きは微増となる。 FAX機能付き複合機の内、ビジネス向けのMAXIFYシリーズ4機種は継続販売となる。一方、PIXUSシリーズの2機種、PIXUS TR8530とPIXUS TR7530が新発売となっている。これまでFAX付き複合機と言えばPIXUS MXシリーズがあった。しかし2013年2月21日にPIXUS MX923とPIXUS MX523を発売して以来、新機種は登場していなかった。PIXUS MX523は早々に販売終了となったが、PIXUS MX923だけは継続販売されてきた。途中、ビジネス向けに特化したFAX付き複合機のMAXIFYシリーズが4機種発売され、いよいよPIXUS MX923も終了かと思われたが、ラインナップに残り続け、ついに今回新機種PIXUS TRシリーズが発売されたのである。2機種ともPIXUS TS6130をベースにFAX機能とADFを搭載したような機種だ。上位モデルのPIXUS TR8530は25,880円で、PIXUS MX923より4,000円安くPIXUS TS6130より3,000円高い。5色インク構成という点はPIXUS MX923と同じだが、PIXUS TS6130と同じ380/381番インクに変更され、印刷コストが上がっている。L判フチなし写真で17.2円、A4カラー文書9.3円となる。一方解像度は下がり、最小インクドロップサイズも大きくなっている可能性がある。ノズル数がやや減ったため、A4文書の印刷測度は同じだが、L判写真フチなし印刷測度は18秒から31秒に低下している。前面2段カセットだったPIXUS MX923から前面カセット+背面の2方向給紙となった。大小2種類の用紙だったPIXUS MX923と比べると、前面と背面の両方に普通紙をセットできるが、PIXUS MX923の下段カセットは一般より大きく250枚までセット可能だったので、PIXUS TR8530で両方にセットしても枚数では劣る。一方で最新機種と言うことで、用紙の種類・サイズの登録機能が搭載され、異なる場合にメッセージが表示されるようになった。PIXUS MX923では、印刷が実行されると、前面カバー兼排紙トレイが自動的に前に倒れる「排紙トレイ自動オープン」機能が搭載されていたが、PIXUS TR8530の排紙トレイは引き出す方式になり、手動となった。逆に自動電源オン・オフ機能は新たに搭載された。また、自動両面印刷機能は同様に搭載するが、PIXUS MX923がハガキにも対応していたのに対して、PIXUS TR8530は普通紙のみだ。スキャナはADFを搭載するという点では同じだが、PIXUS MX923が原稿を35枚までセット可能で両面スキャンにも対応していたのに対して、PIXUS TR8530は20枚までで片面のみだ。スキャナ解像度も2400dpiから1200dpiに低下している。一方でADF使用時はPIXUS MX923は600dpiに制限されていたので、ADF使用時はPIXUS TR8530の方が高解像度でスキャンできる。PIXUS MX923が搭載していた「本体だけでスキャンしてメモリカードに保存する機能」は、ある年を境にPIXUSシリーズで一斉に非搭載となっていたが、久しぶりに搭載された。またSDカードスロットを搭載している一方、PIXUS MX923にあったUSBポートは廃止された。ちなみにPIXUS TR8530は基本PIXUS TS6130と同等機能だが、ADFとSDカードスロットは異なる点だ。最新機種と言うことで、スマホ・クラウド関連の機能も進化している。PIXUS MX923では必ず無線LANルーターを介しての接続しかできなかったが、PIXUS TR8530ではダイレクト接続(Wi-Fiダイレクト)接続も可能になった。Bluetoothによる接続設定機能も搭載された。また、PIXUS MX923のクラウド対応はPIXUS MX923本体でのアクセスのみで、オンラインストレージからの印刷のみだったが、PIXUS TR8530では本体とスマホのどちらからでもアクセス可能になり、オンラインストレージからの印刷以外に、SNSの写真をコメント付きで印刷が可能になり、写真共有サイトからの写真印刷も可能となった。一方、プリンターにメールをすることで添付ファイルを印刷できる機能「メールからプリント」は非搭載となった。ただし、この機能はキャノンが2017年11月30日にサービスを終了することになっており、これ以降はPIXUS MX923でも使用できなくなる。コピー機能には新たにADF手動両面コピー機能とIDコピー機能が搭載された。FAX機能はPIXUS MX923と同等の物が搭載されている。操作パネルも新デュアルファンクションパネルからタッチパネル液晶に変更され、液晶サイズも3.0型から4.3型へと大型化し操作性は大きく向上した。また、斜めに固定されていたPIXUS MX923と違い、90度角度調整が可能なので、視認性も良い。本体サイズは438×358×190mmと、PIXUS TS6130と比べると全体に大きいが、PIXUS MX923の491×396×231mmと比べると1周りも2周りも小さくなった。 PIXUS TR7530はPIXUS TR8530の下位機種だが、大きくは変わらない。基本デザインも同じで、画質や印刷速度、印刷コスト、給紙方式なども同等だ。違いとしてはSDカードスロットが省略され、ダイレクト印刷機能が無くなったこと、それに伴いスキャンしてメモリカードに保存する機能も非搭載となった事が挙げられる。また液晶が3.0型に小型化し、タッチパネル液晶ではあるものの、「ホーム」「戻る」や「スタート」ボタンなどが物理ボタンで別に用意される。また、有線LANは非搭載だ。本体サイズは438×350×190mmでほぼ同サイズだ。 その他、A2/A3単機能プリンタ、A4単機能プリンタ、モバイルプリンタは全機種が継続販売となる。
各機種を詳しく見てみよう。価格帯別の比較、独立したページとして用意してあるので、下記のリンクから飛んで頂きたい。なお価格は、このページの作成時点(2017年10月)でのメーカーのオンラインショップの価格(税別)としている。家電量販店やパソコンショップなどの実際の価格とは異なる場合があるのでご了承いただきたい。 (H.Intel) 今回の関連メーカー エプソンホームページ http://www.epson.jp/ キャノンホームページ http://canon.jp/ |