小ネタ集
2017年末時点のプリンタ
〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜
(2017年12月12日公開)

プリンタ比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンタ比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。


3万円の複合機
 
 3万円台というこのクラスは、売れ筋の価格帯と言え、エプソン、キヤノン共に価格のわりに機能が豊富な製品を投入している。エプソンのEP-880Aが30,980円、キヤノンのPIXUS TS8130が30,880円とほぼ同価格となっており直接のライバル製品と言える。エプソンはV-edition、キヤノンはXKシリーズを除く最上位となっており、機能的にはフル搭載に近く、その分似た部分も多いが、どういった部分に違いがあるのだろうか。

プリント(画質・速度・コスト)
メーカー
エプソン
キャノン
型番
EP-880A
PIXUS TS8130
製品画像





実売価格(メーカーWeb/税抜き)
30,980円
30,880円
インク
色数
6色
6色
インク構成
ブラック
シアン
ライトシアン
マゼンタ
ライトマゼンダ
イエロー
顔料ブラック
染料ブラック
グレー
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成
各色独立
各色独立
顔料/染料系
染料
(つよインク200)
染料/顔料(黒)
(ChromaLife100)
インク型番
クマノミL(増量)
クマノミ(標準)
380/381(標準容量)
380s/381s(小容量)
380XL(大容量・顔料ブラックのみ)
ノズル数
1080ノズル
6656ノズル
各色180ノズル
C/M:各1536ノズル
PB/Y/染料BK/顔料BK:各1024ノズル
最小インクドロップサイズ
1.5pl(AdvancedMSDT)
N/A
最大解像度
5760×1440dpi
4800×1200dpi
印刷速度
L判縁なし写真(メーカー公称)
13秒
18秒
A4普通紙カラー(ISO基準)
N/A
10.0ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準)
N/A
15.0ipm
印刷コスト
L判縁なし写真
20.6円
19.4円
A4カラー文書
12.0円
9.6円
A4モノクロ文書
N/A
N/A

 まずはプリントの基本となる画質と速度、印刷コストから見ていこう。。EP-880Aは6色インクで最小インクドロップサイズは1.5pl、印刷解像度は5760×1440dpiであり、非常に高画質な印刷が可能だ。上位機種のようなレッドやグレーインクを搭載したものではなく、ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色に、ライトシアンとライトマゼンダを搭載している。いずれも染料インクとなる。カラー原稿の色の薄い部分ではライトインクを使う事で粒状感が抑えられる。一方、PIXUS TS8130も同じ6色インクだが、構成が異なる。染料インクのブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色に加えて、グレーと顔料ブラックインクを搭載する。写真印刷時は基本4色+グレーインクの5色印刷となる。ベースにグレーインクを使う事で色の濃い部分での粒状感が抑えられる一方、モノクロに近い原稿での階調表現が優れており、中間色が赤や青っぽいグレーになりにくいという特徴がある。一方、EP-880Aが6色全てを使って印刷するに対して、PIXUS TS8130は5色で、しかも無彩色が2色なので、色の鮮やかさでは一歩劣る事になる。また、印刷解像度は4800×1200dpiとやや低く、最小インクドロップサイズは非公表となった。キヤノンはこれまで1plの場合9600×2400dpi、2plの場合は4800×1200dpiと決まっていたことに加え、去年までと同じ1plなら非公表にする必要が無いことを考えると、最小インクドロップサイズは2plの可能性もある。そうなると、粒状感の面でもやや劣ることとなる。写真の印刷画質はEP-880Aが一歩リードだ。
 一方、PIXUS TS8130は顔料ブラックを搭載しているため、ブラックインクを使用する部分に限ってだが、普通紙などへの印刷ではメリハリのある印刷結果が得られるというメリットがある。小さな文字や中抜き文字も潰れずに印刷が可能なほか、耐水性も高いため濡れた手で触ったりマーカーを引いても滲まない。EP-880Aは染料ブラックしか搭載していないため、この点ではPIXUS TS8130の画質が上だ。ただし、黒と言っても、完全な黒ではないグレーの部分には染料のグレーを使用するし、カラーの中に混ざっている場合は顔料と染料を混ぜられないことから、染料インクが使われるなど、背景が無く完全な黒という限定があるなど、必ずしも顔料インクの恩恵を受けられるわけではない点は注意が必要だ。とはいえ、コピーや文書印刷でそういった部分は結構多く、一部だけでも全体的に引き締まった印象となるのは確かだ。一方、EP-880Aも、細線強調機能や文字くっきり機能を搭載し、ドライバレベルで文書印刷画質を高めている。あくまで、染料インクのままでの改良となるが、画質は改善され、PIXUS TS8130との差はある程度縮まっている。
 最小インクドロップサイズは非常に小さいが、EP-880AはAdvanced-MSDTという5つのインクサイズのインクを打ち分ける機能を搭載しており、必要に応じて大きなインクサイズを打ち分ける事で高速化と高画質化を両立しており、PIXUS TS8130はノズル数を非常に多くすることで高速化を実現している。結果、L判縁なし写真印刷で、EP-880Aが13秒、PIXUS TS8130が18秒と非常に高速になっており、枚数の多い印刷でもストレスのない速度となっている。一方、普通紙への印刷速度はEP-880Aでは公表されていないため比較することはできないが、PIXUS TS8130はカラーが10ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、モノクロが15ipmとなっている。この速度は家庭用としては非常にに高速だと言えるだろう。
 使用するインクはEP-880Aは「つよインク200」である。アルバム保存300年、耐光性50年、耐オゾン性10年となる。一方、PIXUS TS8130は「ChromaLife100」でありアルバム保存100年を実現している。どちらも十分なレベルの耐保存性を持ったインクであるが、EP-880Aの方がさらに耐保存性は高く、耐光性なども書かれているなど一歩上回る印象だ。ちなみに、両機種とも各色独立インクとなっており、なくなった色だけ交換できる。
 印刷する上で、印刷コストも気になるはずだ。EP-880AはL判写真1枚20.6円、PIXUS TS8130が19.4円と大きな差は無い。最近ではエコタンク搭載プリンターや、上位機種のように印刷コストを大きく下げた機種が存在するため高く見えるが、このあたりが平均レベルだ。普通紙へのA4カラー文書の場合はEP-880Aが12.0円、PXIUS TS8130が9.6円と少し差がある。これは、PIXUS TS8130のインクは標準と小容量しかラインナップがないが、顔料ブラックだけ大容量がラインナップされており、割安になっているためだ。文書印刷ならPIXUS TS8130がややお得だが、決め手になるほどの差ではないだろう。

プリント(給紙・排紙関連)
型番
EP-880A
PIXUS TS8130
製品画像
対応用紙サイズ
名刺〜A4
名刺〜A4
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面
○(1枚手差し/0.6mm厚まで)
○(100枚)
前面
カセット下段(100枚)
カセット上段(2L/ハイビジョン以下)
カセット(100枚/普通紙のみ)
その他
排紙トレイ自動開閉
用紙種類・サイズ登録
○(カセット収納連動)
○(カセット収納(前面)・カバー(背面)連動)
用紙幅チェック機能

 続いて、給紙・排紙関連の機能を見てみよう。給紙に関しては、エプソンとキヤノンで方針が異なる。EP-880Aは前面給紙を基本としており、大小2段のカセットとなっている。上段にL判やハガキなどの小さな用紙を、下段にはA4やB5といった大きな用紙をセットするようになっている。完全に本体に収納可能なので、用紙をセットしたままにしてもホコリがかかるなどの心配がないのはメリットだ。下段にA4普通紙が100枚、上段に写真用紙やハガキなら20枚までセット可能だ。また、下段にもL判やハガキサイズにの用紙もセットでき、その場合、ハガキなら40枚セット可能となるため、上下段ともにハガキを入れれば合計で60枚までセットできる。もちろん連続で使用が可能となる。下段の用紙を入れ替える手間をかければより大量給紙ができる。前面給紙・前面排紙と言うことで気になるのが、厚紙やラベル用紙などへの対応である。前面給紙カセットでも問題ない事になっているが、前面から給紙して前面から排紙するため、内部で180度曲げられてしまうのは少し心配だ。また封筒など二重になっている用紙への印刷も不安なほか、定型サイズでない場合前面給紙カセットのガイドをあわせにくい。そこで、簡易的ながら背面給紙も行える。従来の背面給紙に近い位置だが、用紙をセットしておけるような大型のものではなく、手差し給紙部を使用する際に開くカバーで、簡易的に支えることができるだけで、カバーも伸びたりする物ではない。用紙を1枚差し込んだ状態で印刷を実行すると、給紙され、印刷が完了すると2枚目を挿し込んでスタートボタンを押すように言われる形で、1枚ずつである事から、手差し給紙と呼ばれる。その分コンパクトな本体でも背面給紙を可能としているわけである。さらに、通常の給紙カセットでは0.3mm厚の用紙までの対応だが、背面手差し給紙では、倍の0.6mmの用紙に印刷ができる。今まで印刷できなかった厚紙にも印刷できる点も便利だろう。最小用紙サイズは名刺サイズでL判より小さな用紙には対応しているが、名刺サイズは背面手差しからの給紙となり、1枚ずつとなる。
 一方のPIXUS TS8130は前面給紙カセット+背面給紙となっている。EP-880Aと似ているようだが、こちらは前面が1段で、代わりに背面は手差しでは無く一般的な背面給紙となっている。前面にA4普通紙、背面にL判写真用紙という風に入れておけばEP-880Aと同じような使い方となる。注意点としては、前面給紙カセットは普通紙のみという事だ。サイズもA5〜A4サイズとなる。そのため、ハガキや写真用紙、ファイン紙などは全て背面給紙を利用することとなる。また、前面給紙カセットは一見すると本体に完全収納されているようだが、この状態ではB5以下の用紙しかセットできない。A4用紙をセットする場合は、カセットを伸ばす必要があり、そうすると本体に収納した際にカセット部が35mm前に飛び出る事となる。排紙トレイよりは前に飛び出ないため、使用時は気にならないが、一番利用されると思われるA4サイズで綺麗に収納できないのは残念と言える。一方で背面給紙は普通紙もセット可能で100枚まで、前面給紙カセットも100枚なので、合計200枚までセットできるのはメリットだ。もちろん連続で使用する事ができる。ハガキは背面給紙のみで40枚となる。背面給紙は用紙のセット時に左右のガイドを合わせるだけで良く、セットしやすい。一方でデメリットもあり、用紙をセットするために上方に空間が必要なほか、トレイが後方に傾くため、本体の後方にある程度のスペースが必要になってしまう。また、用紙をセットしたままだとホコリをかぶってしまうため、ホコリをかぶった用紙が給紙されると故障の原因になる場合があるため、使わないときは取り除くのが理想だ。普通紙以外の用紙も常にセットしておくという使い方の場合、前面カセットの方が便利だと言えるだろう。なお、背面給紙からの給紙の場合でも用紙厚は0.3mmまでで、EP-30VAのような厚紙には対応しない。PIXUS TS8130も名刺サイズの用紙に対応する。
 両機種とも用紙の種類とサイズを登録しておく機能が搭載されている。液晶ディスプレイでメニューから登録も可能だが、前面給紙カセットを挿し込む、またはPIXUS TS8130の背面給紙は手前の用紙カバーを閉じた際に、自動的に登録画面が表示されるため便利だ(されないようにもできる)。この登録内容と、印刷時の用紙設定が異なっている場合、メッセージが表示される仕組みだ。なお、EP-880Aはこれに加えて、印刷時に実際の用紙幅をセンサーでチェックする機能もあり、できる限り印刷ミスによる用紙とインクの無駄遣いをなくす工夫がなされている。
 一方排紙トレイで便利なのが、自動開閉機能だ。印刷が実行されると自動的に排紙トレイが伸張する。後述の自動電源オン機能と組み合わせると非常に便利だ。逆に電源を切るときは自動的に排紙トレイが収納される。

プリント(付加機能)
型番
EP-880A
PIXUS TS8130
製品画像
自動両面印刷
○(ファイン紙対応)
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
○(オートフォトファイン!EX)
○(自動写真補正II)
特定インク切れ時印刷
○(黒だけでモード・5日間のみ)
自動電源オン/オフ
○/○
○/○
廃インクタンク交換

 その他、プリントの付加機能を見てみよう。まず両機種とも自動両面印刷機能を搭載している。普通紙だけでなくハガキなどにも対応するため、年賀状で通信面と宛名面を用紙の差し替え無しで印刷できるなど、便利である。EP-880Aはそれに加えて、ファイン紙の自動両面印刷にも対応した。両面印刷ファイン紙は多数の製品が発売されており、両面印刷時の裏移りを抑えられるなど、両面印刷に適しており、高画質に両面印刷を行いたい時に便利だ。CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷機能も両機種とも備えている。レーベル印刷のトレイを使わない時は、EP-880Aは前面給紙カセットの裏に、PIXUS TS8130は排紙トレイの下に収納できる。写真の自動補正機能としては、EP-880Aは「オートフォトファイン!EX」、PIXUS TS8130は「自動写真補正II」と名称は違うものの、逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われる。もちろんパソコンからの印刷時だけでなく、後述のダイレクト印刷時にも利用できる。
 自動電源オン/オフ機能も両機種とも搭載している。自動電源オンは、印刷が実行されると自動的に電源がオンになる機能だ。無線/有線LAN接続ができるようになり、プリンタから離れた場所のパソコンやスマートフォンから印刷を実行することが増えたが、そういった際にわざわざプリンタの電源を入れに行く手間が省ける。前述のように排紙トレイも自動的に伸張するため、印刷が完了した頃に取りに行くだけと非常に便利だ。また、指定した時間が経つと自動的に電源がオフになるため、電源オンのままにしてしまう事も無い。逆に自動電源オン機能があるので、電源を入れっぱなしにする必要もなくなる。
 EP-880Aの便利な機能が、ユーザーによる廃インクタンク交換機能だ。廃インクタンク(メンテナンスボックス)は、クリーニングなどの際に排出されるインクを溜めるタンクだが、これがいっぱいになるとメッセージが表示され印刷が完全に止まり、修理に出さなくてはならなかった。EP-880Aではユーザー自身で交換ができるため、修理に出してしばらくプリンタが手元にないという事が無くなる。長く使う事を考えた安心の機能だ。

スキャン
型番
EP-880A
PIXUS TS8130
製品画像
読み取り解像度
1200dpi(1200×4800dpi)
2400dpi(2400×4800dpi)
センサータイプ
CIS
CIS
原稿取り忘れアラーム
スキャンデーターのメモリカード保存
○(JPEG/PDF)

 続いて、スキャナ部を見てみよう。解像度はPIXUS TS8130が2400dpi(2400×4800dpi)、EP-880Aが1200dpi(1200×4800dpi)である。解像度に差があるように見えるが、反射原稿(紙などの原稿)にしか対応しないため、1200dpiでも十分すぎる解像度と言える。一般的に文書なら200〜300dpi、写真なら300〜600dpiで、よほど詳細にスキャンする場合でも1200dpiがせいぜいだ。実際写真サイズを2400dpiで取り込むと約8,400×12,000ドットとなり1億画素相当となる事から、ファイルサイズが大きくなりすぎてパソコンでは扱いにくい。読み取り解像度が高く設定できる事にデメリットはないが、ややオーバースペックであり、実用上は差は無いと言える。いずれもCIS方式で、厚い本の綴じ目近くなど、ガラス面から浮いてしまう原稿ではピントが合わなくなってしまう点は注意が必要だ。EP-880Aはスキャンした原稿をパソコンを使わずにメモリカードに保存する機能を搭載しているためパソコン無しで簡単にスキャンができる。また両機種とも原稿を取り忘れた際の警告機能が付いているのは便利だ。

ダイレクト印刷
型番
EP-880A
PIXUS TS8130
製品画像
カードスロット
対応メモリカード
SD
SD
USBメモリ/外付けHDD/外付けDVD対応
○/○/○
−/−/−
メモリカードからUSBメモリ/外付けHDD/外付けDVDへバックアップ
○/○/○
(外部機器共有対応)
−/−/−
対応ファイル形式
JPEG
JPEG/TIFF
手書き合成
○(ディスクレーベル対応)
PictBridge対応
○(USB/Wi-Fi)
○(Wi-Fi)
赤外線通信
各種デザイン用紙印刷
塗り絵印刷
フォーム印刷(罫線・マス目・便箋・スケジュール帳・五線譜・メッセージカード・折り紙封筒)
カレンダー印刷
定型フォーム印刷(レポート用紙、原稿用紙/スケジュール用紙、方眼紙、チェックリスト、五線譜、漢字練習帳)

 ダイレクト印刷を見てみよう。両機種とも対応している。対応メモリカードはSDカードのみとシンプルだが、最近のデジタルカメラやスマートフォンは一部の一眼レフなどを除きSDカードかその小型版のmicroSDになっており、問題はないだろう。EP-880Aは加えてメモリカードだけでなくUSBメモリからの印刷にも対応している。また、各種メモリカードからUSBメモリへのバックアップが可能な他、USBメモリ以外に対応の外付けハードディスクや外付けDVDドライブへのバックアップやそれらからの印刷も行える。その上、EP-880Aをネットワーク接続をしている場合、他のパソコンから外付けハードディスクのデータにアクセスが可能な「外部機器共有」機能も備えている。つまり複合機単体でメモリカード内の写真やスキャンした写真や原稿を外付けHDDに保存でき、それらに家庭内のどのパソコンからもアクセスできるわけである。もちろん写真データ以外も共有可能であるため、簡易NASとしても使用できる。そのほか、赤外線通信による印刷に対応しているため従来型携帯電話からの写真印刷も簡単だ。PictBridgeは両機種とも対応しているが、EP-880AはUSB接続とWi-Fi接続の両方式のPictBridgeに対応しているのに対して、USBポートを省略したPIXUS TS8130ではWi-Fi接続のPictBridgeにしか対応しない点は注意が必要だ。PIXUS TS8130は印刷時にフチあり、フチなしの選択と赤目補正の設定しかできないが、EP-880Aはフチありの場合、白フチと黒フチ、さらに枠付きと枠無しを選べ、フチの太さも4段階から選べる。明るさやコントラスト、シャープネス、鮮やかさの調整も5段階から可能で、セピア調やモノクロに変換も出来るため、好みの色合いで印刷ができる。機能の豊富さではEP-880Aに軍配が上がると言える。
 ダイレクト印刷時の機能として代表的な手書き合成シートも両機種とも対応している。またPIXUS TS8130は写真やハガキだけでなくCD/DVD/Blu-rayレーベルの手書き合成にも対応している。その他、EP-880Aでは塗り絵風の輪郭だけの印刷や、罫線、マス目、便箋、スケジュール帳、五線譜、メッセージカード、折り紙封筒が印刷できるフォーム印刷機能を搭載している。一方のPIXUS TS8130は写真を用いたカレンダー印刷機能の他、原稿用紙、方眼紙、五線譜、レポート用紙、スケジュール帳、チェックリスト、漢字練習帳が印刷できる定型フォーム印刷機能を備えている。両機種とも単体でも機能は豊富であるといえる。

スマホ/クラウド対応
型番
EP-880A
PIXUS TS8130
製品画像
スマートフォン連携
対応端末
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 9.0以降)
Android 4.1以降
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 9.0以降)
Android 4.1以降
(Bluetooth対応)
NFC対応
写真プリント
ドキュメントプリント
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
スキャン
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
クラウド連携
スマートフォン経由/本体
○/−
○/○
オンラインストレージからの印刷
SNSからの印刷
○(コメント付き可)
○(コメント付き可)
写真共有サイトからの印刷
メールしてプリント
リモートプリント
スキャンしてリモートプリント

 スマートフォンとの連携機能も両機種とも搭載しており、iPhoneやiPod touch、iPadと、Android端末に対応している。いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることでプリント又はスキャンが行える。メインで使用すると思われる写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。さらにドキュメント印刷にも対応している。PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もできる便利だ。また、両機種ともスマートフォン上からスキャンを実行し、データをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。出かける前に紙の情報をさっとスマートフォンに転送するといった使い方ができるため便利だろう。  スマートフォンとの接続は、無線LAN(Wi-Fi)で行うが、無線LANルータを経由する方法と、ダイレクトに接続する「Wi-Fiダイレクト」(キヤノンはダイレクト接続)が選べる。Wi-Fiダイレクトの場合PIXUS TS8130はBluetooth接続機能を搭載しており、Bluetoothでお互いを認証しておけば接続設定が簡単という機能だ。接続設定に使うだけで、印刷操作は「Canon PRINT Inkjet」上で行い、データー転送にはWi-Fiが使用される(Bluetoothで写真データを送るわけではない)。少しでも簡単に接続できるよう工夫さえれている点は評価できるが、対応機種はAndroidに限られる上、使うのはWi-Fiダイレクトの場合のみである。無線LANルーター経由の方がより便利に使えるため、一般的にはこちらを利用すると思われるし、Wi-Fiダイレクトの場合でも、手動設定でもそれほど難しくはない。Bluetooth接続設定機能はあれば便利だが、無くてもそれほど不便ではないだろう。
 クラウドとの連携機能も両機種とも搭載されており、オンラインストレージから印刷したり、SNSの写真を印刷する事ができる。SNSの写真はコメント付きでも印刷が可能だ。またPIXUS TS8130は写真共有サイトからの印刷も可能だ。ここで大きな違いは、EP-880Aはスマートフォンのアプリとして搭載しているのに対して、PIXUS TS8130はスマートフォン上だけでなく、プリンタ単体でもクラウドにアクセスし印刷ができる点が上げられる。実際の操作性はスマートフォンからの方が上だが、選択肢が広いという点ではPIXUS TS8130が便利だ。
 さらにネットワークを利用したプリント機能として、EP-880Aは、印刷したい写真や文書を本機にメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、スキャンした画像を離れた場所の対応複合機で印刷できる「メールdeリモート印刷」、通常のプリント同じ操作で、離れた場所のEP-880Aで印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。一方のPIXUS TS8130はこれらの機能は搭載しない。リモートプリント機能はEP-880Aの圧勝だ。

コピー機能
型番
EP-880A
PIXUS TS8130
製品画像
等倍コピー
拡大縮小
倍率指定
○(25〜400%)
○(25〜400%)
オートフィット
定型変倍
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー
○(退色復元対応)
○(色あせ補正対応)
割り付け(2面/4面)
○/−
○/○
バラエティコピー
IDコピー
ミラーコピー
塗り絵コピー
背景除去機能
文字くっきり機能
枠消しコピー
IDコピー

 コピー機能を見てみよう。単純なコピー機能としては、両機種とも単純な等倍コピーだけでなく、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「オートフィット」機能や、原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行う「定型変倍」機能、さらに25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える機能を搭載した高性能な物だ。またCD/DVD/Blu-rayレーベルコピーにも対応する。さらに、両機種とも原稿面に写真を複数枚置き、焼き増し風のコピーを行うことも出来る。この際、EP-880Aは「退色復元」、PIXUS TS8130は「色あせ補正」と名称は異なるが、両機種とも昔の色あせした写真も自動で補正してくれる機能も備えている。両機種とも2枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2アップにも対応する。さらにPIXUS TS8130は4枚の原稿を1枚に縮小する4アップにも対応している。その他、EP-880Aはコピー時にも「塗り絵印刷」が行える他、アイロンプリント紙への印刷時に使える「ミラーコピー」、免許証などの裏表をそれぞれスキャンして1枚の用紙に並べて印刷する「IDコピー」、背景の色を白にして見やすくする「背景除去機能」を備えている。一方PIXUS TS8130は厚手の原稿など原稿台のカバーが浮いてしまう場合に黒くなる部分を消去する「枠消しコピー」機能と「IDコピー」機能を備える。それぞれ機能は異なるが、複合機単独で様々なコピーが行えるよう工夫されている。

操作パネル/インタフェース/本体サイズ
型番
EP-880A
PIXUS TS8130
製品画像
液晶ディスプレイ
4.3型
(90度角度調整可)
4.3型
(90度角度調整可)
操作パネル
タッチパネル液晶
(90度角度調整可)
タッチパネル液晶
(90度角度調整可)
インターフェイス
USB他
USB2.0×1
USB2.0×1
無線LAN
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(ダイレクト印刷対応)
有線LAN
100BASE-TX
対応OS
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.10.5〜(AirPrint利用)
外形寸法(横×奥×高)
349×340×142mm
372×324×139mm
重量
6.7kg
6.5kg
本体カラー
ホワイト/ブラック/レッド/ニュートラルベージュ
ブラック/ホワイト/レッド

 操作パネルは両機種ともタッチパネル液晶を基本とする点で同じである。液晶サイズも4.3型と同じだ。いずれも、液晶ディスプレイと操作パネルは本体前面に取り付けられ、液晶ディスプレイだけでなく操作パネル全体を持ち上げて角度調整が可能となっている。最大90度まで起こすことができるので、垂直から水平まで見やすい角度で操作ができるよう工夫されている。内部のメニュー構成は異なるが、両機種とも操作性の面では差は無いと言えるだろう。
 インタフェースは両機種ともUSB2.0に加えて、ネットワーク接続に対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、無線LAN(Wi-Fi)ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。その場合、EP-880A/PIXUS TS8130を無線LANルーターに接続しておけば、家庭内のどのパソコンでもプリント可能となり非常に便利だろう。またスマートフォンやタブレットからの印刷も可能となる。またWi-Fiダイレクト(キヤノンはダイレクト接続)に対応しているため、無線LANルータの無い環境でも、スマートフォンやタブレットと直接Wi-Fi接続が可能となっている点も共通の便利な点だ。ただし、無線LAN接続は両機種とも可能だが、有線LAN接続が可能なのはEP-880Aのみとなる。無線LANの電波が届きにくい、壁にモジュラージャックがある、手軽に接続したいなどの理由で有線LAN接続を使用する場合は注意が必要だ。
 対応OSはメーカーによる差が大きい。EP-880AはWindows XP SP3以降は全て対応する。MacOSもダウンロード対応とはなるが10.6.8以降に対応する。マイクロソフトのサポートの終了したWindows XPやVistaにも対応するのは安心だ。一方、PIXUS TS8130はWindows 7 SP1/8.1/10のみの対応だ。Windows XPやVistaだけでなく、Windows 8も非対応である点は注意が必要だ。MacOSも10.10.5以降となっただけでなく、ドライバはキヤノンからは提供されず、AirPrintを使用する方法となった。
 本体サイズを見てみよう。EP-880Aが349×340×142mm、PIXUS TS8130が372×324×139mmとなる。幅はEP-880Aが、奥行きはPIXUS TS8130が、高さは同等に見える。しかし、前述のようにPIXUS TS8130はA4用紙を前面給紙カセットに入れる場合はカセットが前に35mm飛び出るため、その分を考えればEP-880Aの方が小さいとも言える。また背面給紙を使用する場合、EP-880Aでは手差しであるため給紙するまで手支えてやれば、壁ギリギリでも使えるが、PIXUS TS8130は背面給紙が斜めに開く分、後方にスペースが必要だ。その点で見ればEP-880Aの方が実際の設置スペースは小さくて済むだろう。ちなみに本体のカラーバリエーションが豊富なのもこの価格帯の特徴だ。EP-880Aはホワイト、ブラック、レッド、ニュートラルベージュ(ホワイトの天板だけがベージュ)の4色、PIXUS TS8130はホワイト、ブラック、レッドの3色から選ぶことができる。



 最後に、どちらがおすすめかを考えてみよう。印刷速度や自動両面印刷、レーベル印刷といったプリンタ機能、ダイレクト印刷機能、コピー機能、スマホからの印刷機能、操作パネルなどはかなり似ていると言える。大きな違いで言うと、インク構成と給紙方式の2点があるだろう。インク構成は、写真がとにかく綺麗なEP-880Aと写真の画質はやや落ちる代わりに黒文字が綺麗なPIXUS TS8130となる。一方給紙は前面2段カセット+背面手差しのEP-880Aと、背面1段カセット+背面給紙のPIXUS TS8130だ。これらを見ると、写真重視のEP-880Aと文書重視のPIXUS TS8130という構図が見える。EP-880Aは画質だけでなく、前面給紙カセットにL判写真用紙をセット可能で、セットしたままにしておけるだけでなく(PIXUS TS8130は背面給紙からになるためセットしたままだとホコリが積もる)、上下段とも写真用紙をセットする事で大量給紙ができる。ダイレクト印刷もSDカードだけでなくUSBメモリや赤外線通信にも対応する。写真の色補正機能も豊富だ。一方のPIXUS TS8130は顔料ブラックインクが文書印刷に向いているだけでなく、前面と背面の両給紙に普通紙をセットできるため、普通紙の給紙枚数が多い。また、本体でクラウド上のファイルにアクセス可能など、文書印刷に便利な機能が搭載されている。もちろん両機種とも上位機種なので機能が豊富で、どちらを買っても高いレベルで満足がいくがいくはずだが、強いているなら写真印刷を重視するならEP-880A、文書印刷を重視するならPIXUS TS8130となる。またコンパクトさ重視なら前面給紙カセットが完全収納でき、後方のスペースも不要なEP-880Aの方が良いだろう。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/


EP-880AW
(ホワイト)
EP-880AB
(ブラック)
EP-880AR
(レッド)
EP-880AN
(ニュートラルベージュ)
PIXUS TS8130BK
(ブラック)
PIXUS TS8130WH
(ホワイト)
PIXUS TS8130RD
(レッド)