小ネタ集
2017年末時点のプリンタ
〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜
(2018年2月10日公開)

プリンタ比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンタ比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。


1万5千円前後の機種+EW-M571T
 
 1万5千円前後というこのクラスは、特殊なモデルを除いた最上位機種のほぼ半額となる。機能面では様々な面で非搭載だったり、機能が低かったりするが、かろうじて「使える」レベルを維持している価格帯とも言える。このクラスは、エプソンのEP-710AとキヤノンのPIXUS TS5130がラインナップされており、価格はそれぞれ14,980円と15,880円となる。とはいえ全く方向性が違うとも言える2製品で、比較することでどちらがおすすめかが分かるだろう。EW-M571Tに関しては価格が39.980円となっているが、機能的にはこの価格帯の製品と比較するのがわかりやすいため、ここで比較している。価格が高いのも、印刷コストの安さだけでなく、付属のインクでかなりの枚数ができるため、インクセットだと考えればEP-710APIXUS TS5130より高いとも言えない。どういった違いがあるのか見ていこう。

プリント(画質・速度・コスト)
メーカー
エプソン
エプソン
キャノン
型番
EP-710A
EW-M571T
PIXUS TS5130
製品画像

実売価格(メーカーWeb/税抜き)
14,980円
39,980円
15,880円
インク
色数
6色
4色
4色
インク構成
ブラック
シアン
ライトシアン
マゼンタ
ライトマゼンダ
イエロー
ブラック(顔料)
シアン
マゼンタ
イエロー
顔料ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成
各色独立
各色独立インクタンク
(挿すだけ満タンインク方式)
黒独立、カラー3色一体
顔料/染料系
染料
(つよインク200)
顔料(黒)/染料(カラー)
(アルバム保存300年/耐光性7年/耐オゾン性2年)
染料(カラー)/顔料(黒)
(ChromaLife100)
インク型番
イチョウ
ヤドカリ(顔料)
ハリネズミ(染料)
340XL/341XL(大容量)
340/341(標準容量)
ノズル数
1080ノズル
357ノズル
1792ノズル
各色180ノズル
カラー:各59ノズル
黒:180ノズル
C/M/Y:各384ノズル
顔料BK:各640ノズル
最小インクドロップサイズ
1.5pl(AdvancedMSDT)
3pl(MSDT)
N/A
最大解像度
5760×1440dpi
5760×1440dpi
4800×1200dpi
印刷速度
L判縁なし写真(メーカー公称)
17秒
76秒
36秒
A4普通紙カラー(ISO基準)
N/A
5.0ipm
6.8ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準)
N/A
10.5ipm
13.0ipm
印刷コスト
L判縁なし写真
26.5円
5.9円
19.5円
A4カラー文書
15.0円
0.9円
13.1円
A4モノクロ文書
N/A
0.4円
N/A

 まずはプリントの基本となる画質と速度、印刷コストから見ていこう。。EP-710Aは6色インクで最小インクドロップサイズは1.5pl、印刷解像度は5760×1440dpiであり、非常に高画質な印刷が可能だ。これは上位機種EP-880Aと同等であり、EP-880Aの方がインクが改良された分の僅かな差があるだけで、ほぼ同等画質と言える。ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色に、ライトシアンとライトマゼンダを搭載しており、いずれも染料インクとなる。カラー原稿の色の薄い部分ではライトインクを使う事で粒状感が抑えられる。一方、PIXUS TS5130は4色インクとなる。顔料インクのブラックと、染料インクのシアン、マゼンダ、イエローの4色構成となる。上位機種と似ているが、染料ブラックインクを搭載していないため、写真印刷時はカラーの3色での印刷となる。黒色はカラーを混ぜて作るが、どうしても非常に濃い茶色にしかならず、全体にコントラストが弱くなる。また、印刷解像度は4800×1200dpiとやや低く、最小インクドロップサイズは非公表ではあるが、去年までを踏襲するなら2plとなり、粒状感の面でもやや劣ることとなる。写真印刷ができないわけではないが、EP-710Aと比べると差は大きく、写真印刷向けというは言いがたい。最後にEW-M571Tだが、こちらもPIXUS TS5130と同構成で、顔料ブラックと染料カラー3色となる。写真印刷時は3色印刷となり、ブラックインクが使えないのでコントラストが弱くなるのも同じだ。印刷解像度は5760×1440dpiとEP-710Aと同等だが、それよりも画質への影響が大きい最小インクドロップサイズは3plとPIXUS TS5130より大きいため、粒状感の面ではさらに劣ることになる。どちらにしても写真印刷画質を重視する人向けではない。
 一方、PIXUS TS5130EW-M571Tは顔料ブラックを搭載しているため、ブラックインクを使用する部分に限ってだが、普通紙などへの印刷ではメリハリのある印刷結果が得られるというメリットがある。小さな文字や中抜き文字も潰れずに印刷が可能なほか、耐水性も高いため濡れた手で触ったりマーカーを引いても滲まない。EP-710Aは染料ブラックしか搭載していないため、この点ではPIXUS TS5130EW-M571Tの画質が上だ。ただし、黒と言っても、完全な黒ではないグレーの部分には染料のカラーインクを混ぜて作り出すし、背景色があるなど、カラーの中に黒が混ざっている場合は顔料と染料を混ぜられないことから、逆に染料カラー3色で使うため逆に黒のコントラストが弱くなる。背景が無く完全な黒という限定があるなど、必ずしも顔料インクの恩恵を受けられるわけではない点は注意が必要だ。とはいえ、コピーや文書印刷でそういった部分は結構多く、一部だけでも全体的に引き締まった印象となるのは確かだ。一方、EP-710Aも、細線強調機能や文字くっきり機能を搭載し、ドライバレベルで文書印刷画質を高めている。あくまで、染料インクのままでの改良となるが、画質は改善され、PIXUS TS5130/EW-M571Tとの差はある程度縮まっている。
 EP-710Aは最小インクドロップサイズは非常に小さいが、Advanced-MSDTという5つのインクサイズのインクを打ち分ける機能を搭載しており、必要に応じて大きなインクサイズを打ち分ける事で高速化と高画質化を両立しており、L判写真フチなし印刷速度は1枚17秒と非常に高速だ。一方、EW-M571Tは3つのインクサイズのインクを打ち分けるMSDTに機能が落とされているだけでなく、カラーのノズル数が極端に少ないため、L判写真フチなし印刷速度は76秒とかなり遅くなる。PIXUS TS5130もノズル数を多くすることで高速化を図っているが、上位機種と比べるとノズル数が減っているため、L判写真フチなし印刷速度は36秒と、遅くなっている。EP-710Aと比べるとPIXUS TS5130は半分以下、EW-M571Tは4分の1程度の速度で、大量印刷する場合はEP-710Aの方がストレスがないだろう。一方、普通紙への印刷速度はEP-710Aでは公表されていないため比較することはできないが、EW-M571Tはカラーが5.0ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、モノクロが10.5ipm、PIXUS TS5130は6.8ipmと13.0ipmとなっており、比較的高速だ。また、EW-M571Tは普通紙向けの設計なのか、写真印刷機比べて差は小さくなっており、このくらいの差なら実用上は気にならないだろう。
 ちなみにインクに関しては、EP-710APIXUS TS5130が従来通りがのインクカートリッジ方式なのに対して、EW-M571Tはエコタンク方式となる。まず、インクカートリッジ方式のEP-710APIXUS TS5130だが、この2機種にも違いがある。EP-710Aは各色独立インクカートリッジで、無くなった色だけ交換できる。一方PIXUS TS5130は顔料ブラックは独立しているが、染料カラーインク3色は一体型となる。いずれか1色でもなくなった時点で全て交換となってしまう。その点では印刷コスト面では不利となる。では実際の印刷コストを見てみると、EP-710AがL判フチなし写真が26.5円、A4カラー文書が15.0円なのに対して、PIXUS TS5130はそれぞれ19.5円と13.1円となる。EP-710Aは標準容量のインクしか無いのに対して、PIXUS TS5130は大容量インクを用意しているのが功を奏してか、印刷コスト面ではPIXUS TS5130の方が安い。とはいえ、特定の色をよく使う場合などでは、PIXUS TS5130が不利で、場合によっては印刷コストが逆転する場合もあるだろう。
 一方、EW-M571Tのエコタンク方式とは、本体右側にあるインクタンクに、ボトルからインクを補充して印刷する方式だ。ボトル1本でインクタンクが満タンになるが、かなり大容量となっている。満タンのインクタンクでカラー文書を印刷すると、カラーインクは約6,000枚、顔料ブラックインクは7,500枚まで使用できるいうのは、カートリッジタイプと比べて圧倒的に多い。例えばEP-710Aのインクカートリッジは1本930円なので、6本で5,580円。これをA4カラー文書の印刷コストで割ると372枚である。PIXUS TS5130でも同じ計算をすると、カラー2,720円とブラック2,520円の合計5,240円を印刷コストで割ると400枚である。これを見ると、EW-M571Tは1本で15本分以上の量が入っていることになる。それでいて、カラーは各1.150円、ブラック2,150円で、4本買っても5,600円で、EP-710APIXUS TS5130と変わらない価格になる。結果印刷コストは、L判フチなし写真が5.9円、A4カラー文書が0.9円と圧倒的に安くなる。L判フチなし写真に関しては写真用紙代込みなので、これを除くと1.6円程度で、EP-710Aは22.2円、PIXUS TS5130は15.2円となる事を考えると、カラー文書と同じような差になる。このように圧倒的な低印刷コストなのが特徴だ。ちなみに、ボトルから補充というと難しそうに感じるが、EW-M571Tは2世代目とも言うべきエコタンク「挿すだけ満タンインク方式」で、ボトルを注入口に挿すだけで満タンまで注入されてストップする。注入口も色によって形状が異なるため間違ったインクを注入することもない。また、ボトルに残ったインクはスクリュー式のフタがになっているので、そのまま保管できる。インクは途中で追加もできるので、大量に印刷する前にインクを補充しておく事で、インク切れで印刷が止まっていたという自体も防げる点でもEW-M571Tは便利だ。もう一点、EP-710APIXUS TS5130といった一般的なプリンターに付属するインクは動作確認用で、量はかなり少ない。それに対してEW-M571Tはインクボトルが丸々1本ずつ付属する。初めからインクカートリッジ15個程度の分の量が付属している事を考えると、それだけで本体代の差は逆転すると言えるだろう。
 使用するインクはEP-710Aが「つよインク200」で、アルバム保存300年、耐光性50年、耐オゾン性10年となる。EW-M571Tはインクに名称がないが、アルバム保存300年、耐光性7年、耐オゾン性2年を有している。アルバム保存は同等だが、耐光性や耐オゾン性ではEP-710Aに劣る。PIXUS TS5130は「ChromaLife100」でありアルバム保存100年を実現している。3機種とも十分なレベルの耐保存性を持ったインクであるが、EP-710Aが最も耐保存性が高く、次いでEW-M571Tとなる。

プリント(給紙・排紙関連)
型番
EP-710A
EW-M571T
PIXUS TS5130
製品画像
対応用紙サイズ
L判〜A4
カード・名刺〜A4
名刺〜A4
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面
○(100枚)
○(100枚)
前面
カセット(100枚)
カセット(100枚/普通紙のみ)
その他
排紙トレイ自動開閉
用紙種類・サイズ登録
○(カセット収納連動)
○(カバー連動)
○(カセット収納(前面)・カバー(背面)連動)
用紙幅チェック機能

 続いて、給紙・排紙関連の機能を見てみよう。給紙に関しては、EP-710Aは前面給紙のみで、カセットは1段となる。上位機種のように2種類の用紙をセットしておくことはできないため、例えばA4用紙をセットしていて、L判写真を印刷したいときなどは用紙を入れ替える必要がある。カセットは完全に本体に収納可能なので、用紙をセットしたままにしてもホコリがかかるなどの心配がないのはメリットだ。A4普通紙なら100枚、ハガキなら40枚までセット可能だ。一方のEW-M571Tは背面給紙のみとなる。前面給紙のみのEP-710Aと同じく、違う用紙にセットするときは入れ替える必要があるが、背面給紙は用紙のセット時に左右のガイドを合わせるだけで良く、用紙のセットがしやすいというメリットがある。またEP-710Aのような前面給紙・前面排紙は厚紙やラベル用紙などへの対応が心配だ。前面給紙カセットでも問題ない事になっているが、内部で180度方向転換しなければならないEP-710Aに対して、背面給紙のEW-M571Tはこの心配は少なくなる(内部が完全に直線ではないため、心配はゼロにはならないが)。一方でデメリットもあり、用紙をセットするために上方に空間が必要なほか、トレイが後方に傾くため、本体の後方にある程度のスペースが必要になってしまう。また、用紙紙をセットしたままだとホコリをかぶってしまうため、ホコリをかぶった用紙が給紙されると故障の原因になる場合があるため、使わないときは取り除くのが理想だ。A4普通紙で100枚、ハガキで30枚となる。最後にPIXUS TS5130だが、前面給紙カセット1段+背面給紙の2方向給紙となる。前面にA4普通紙、背面にL判写真用紙という風に入れておけば入れ替える手間無く2種類の用紙を使い分けることができ、他の2機種より便利だ。A4普通紙は前面給紙カセットに100枚、背面給紙も100枚セット可能なので、合計200枚までセットできるのはメリットだ。もちろん連続で使用する事ができる。ハガキは背面給紙のみで40枚となる。最も便利なのは、このPIXUS TS5130だろう。ただ完璧ではない。まず、注意点としては、前面給紙カセットは普通紙のみという事だ。そのため、ハガキや写真用紙、ファイン紙などは全て背面給紙を利用することとなる。もちろん背面給紙はEW-M571Tと同じく上方と後方にスペースが必要で、ホコリも積もるため余った用紙は取り除く方が良い。となると、写真用紙などを常時セットしておくという使い方の場合EP-710Aでは前面給紙カセットにセットしたままにしておけるが、PIXUS TS5130では写真用紙は背面のみになるため、スペースも取り不便でもある。また、前面給紙カセットは一見すると本体に完全収納されているようだが、この状態ではB5以下の用紙しかセットできない。A4用紙をセットする場合は、カセットを伸ばす必要があり、そうすると本体に収納した際にカセット部が44mm前に飛び出る事となる。排紙トレイよりは前に飛び出ないため、利用時は気にならないが、一番利用されると思われるA4サイズで綺麗に収納できないのは残念と言える。これを見ると、A4普通紙と、もう一種類の用紙を使うという人はPIXUS TS5130が、1種類の用紙を常時セットしておきたい人はEP-710Aが便利だと言える。
 ちなみに3機種とも用紙の種類とサイズを登録しておく機能が搭載されている。液晶ディスプレイでメニューから登録も可能だが、前面給紙カセットを挿し込む、またはPIXUS TS5130の背面給紙は手前の用紙カバーを閉じた際に、自動的に登録画面が表示されるため便利だ(されないようにもできる)。この登録内容と、印刷時の用紙設定が異なっている場合、メッセージが表示される仕組みだ。なお、EP-710AEW-M571Tはこれに加えて、印刷時に実際の用紙幅をセンサーでチェックする機能もあり、できる限り印刷ミスによる用紙とインクの無駄遣いをなくす工夫がなされている。

プリント(付加機能)
型番
EP-710A
EW-M571T
PIXUS TS5130
製品画像
自動両面印刷
○(普通紙のみ)
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
○(オートフォトファイン!EX)
○(オートフォトファイン!EX)
○(自動写真補正II)
特定インク切れ時印刷
○(黒だけでモード・5日間のみ)
自動電源オン/オフ
−/○
−/○
○/○
廃インクタンク交換

 その他、プリントの付加機能を見てみよう。両面印刷機能はEW-M571TPIXUS TS5130が搭載する。ただし、PIXUS TS5130は普通紙のみの対応なので、ハガキの両面印刷を行いたい場合はEW-M571Tのみとなる。一方、BD/DVD/Blu-rayレーベル印刷機能はEP-710Aのみ搭載する。レーベル印刷のトレイを使わない時は、前面給紙カセットの下に収納できるようになっている。写真の自動補正機能としては、EP-710AEW-M571Tは「オートフォトファイン!EX」、PIXUS TS5130は「自動写真補正II」と名称は違うものの、逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われる。EP-710AEW-M571Tはパソコンからの印刷時だけでなく、後述のダイレクト印刷時にも利用できる。付加機能にはそれぞれの機種で特徴が出ている。
 自動電源オン機能はPIXUS TS5130だけが搭載している。印刷が実行されると自動的に電源がオンになる機能だ。無線LAN接続ができるようになり、プリンタから離れた場所のパソコンやスマートフォンから印刷を実行することが増えたが、そういった際にわざわざプリンタの電源を入れに行く手間が省ける。ただし、排紙トレイが引き出された状態でないと印刷は実行されないため、排紙トレイを収納していると電源が入った状態で印刷が止まっている事になる。一方、指定した時間が経つと自動的に電源がオフになる機能は3機種とも搭載している。

スキャン
型番
EP-710A
EW-M571T
PIXUS TS5130
製品画像
読み取り解像度
1200dpi(1200×2400dpi)
1200dpi(1200×2400dpi)
1200dpi(1200×2400dpi)
センサータイプ
CIS
CIS
CIS
原稿取り忘れアラーム
スキャンデーターのメモリカード保存
○(JPEG/PDF)
○(JPEG/PDF)

 続いて、スキャナ部を見てみよう。解像度は3機種とも1200dpiで同等だ。上位機種より解像度が下がっているが、反射原稿(紙などの原稿)にしか対応しないため、1200dpiでも十分すぎる解像度と言える。一般的に文書なら200〜300dpi、写真なら300〜600dpiで、よほど詳細にスキャンする場合でも1200dpiがせいぜいだ。実際写真サイズを1200dpiで取り込むと約4,200×6,000ドットとなり2500万画素相当となる点から見ても、十分だと言えるだろう。いずれもCIS方式で、厚い本の綴じ目近くなど、ガラス面から浮いてしまう原稿ではピントが合わなくなってしまう点は注意が必要だ。EP-710AEW-M571Tはスキャンした原稿をパソコンを使わずにメモリカードに保存する機能を搭載しているためパソコン無しで簡単にスキャンができる。一方PIXUS TS5130には原稿を取り忘れた際の警告機能が付いているのは便利だ。

ダイレクト印刷
型番
EP-710A
EW-M571T
PIXUS TS5130
製品画像
カードスロット
対応メモリカード
SD
SD
USBメモリ/外付けHDD/外付けDVD対応
−/−/−
−/−/−
−/−/−
メモリカードからUSBメモリ/外付けHDD/外付けDVDへバックアップ
−/−/−
−/−/−
−/−/−
対応ファイル形式
JPEG
JPEG
手書き合成
PictBridge対応
○(Wi-Fi)
○(Wi-Fi)
赤外線通信
各種デザイン用紙印刷
塗り絵印刷
フォーム印刷(罫線・マス目・便箋・スケジュール帳・五線譜)
フォーム印刷(罫線・マス目・便箋・スケジュール帳・五線譜)
定型フォーム印刷(レポート用紙、原稿用紙/スケジュール用紙、方眼紙、チェックリスト、五線譜、漢字練習帳)

 ダイレクト印刷を見てみよう。これはEP-710AEW-M571Tが対応している。対応メモリカードはSDカードのみとシンプルだが、最近のデジタルカメラやスマートフォンは一部の一眼レフなどを除きSDカードかその小型版のmicroSDになっており、問題はないだろう。EW-M570Tはフチあり、フチなし設定の他は赤目補正くらいだが、EP-710Aは加えて明るさ、コントラスト、シャープネス、鮮やかさを5段階から調整できるほか、セピア調やモノクロへの変換、写真の一部を切り出して印刷することも可能など、かなり高性能となっている。また、写真と手書きを合成して印刷できる「手書き合成シート」もEP-710Aのみ対応している。PictBridgeはEP-710APIXUS TS5130が対応しているが、両機種ともUSBポートがないため、Wi-Fi接続のPictBridgeにしか対応せず、対応機種は少なめだ。その他、EP-710Aは塗り絵風の輪郭だけの印刷や、罫線、マス目、便箋、スケジュール帳、五線譜が印刷できるフォーム印刷機能を搭載している。EW-M571Tは塗り絵印刷には非対応だが、フォーム印刷機能は搭載している。一方のPIXUS TS5130は原稿用紙、方眼紙、五線譜、レポート用紙、スケジュール帳、チェックリスト、漢字練習帳が印刷できる定型フォーム印刷機能を備えている。いずれも、単体でいろいろなフォーム用紙を印刷可能となっており便利だ。

スマホ/クラウド対応
型番
EP-710A
EW-M571T
PIXUS TS5130
製品画像
スマートフォン連携
対応端末
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 9.0以降)
Android 4.1以降
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 9.0以降)
Android 4.1以降
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 9.0以降)
Android 4.1以降
(Bluetooth対応)
NFC対応
写真プリント
ドキュメントプリント
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
スキャン
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
クラウド連携
スマートフォン経由/本体
○/−
○/−
○/−
オンラインストレージからの印刷
SNSからの印刷
○(コメント付き可)
○(コメント付き可)
○(コメント付き可)
写真共有サイトからの印刷
メールしてプリント
リモートプリント
スキャンしてリモートプリント
○(受信のみ)
○(受信のみ)

 スマートフォンとの連携機能は3機種とも搭載しており、iPhoneやiPod touch、iPadと、Android端末に対応している。いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることでプリント又はスキャンが行える。メインで使用すると思われる写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。さらにドキュメント印刷にも対応している。PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もできる便利だ。また、両機種ともスマートフォン上からスキャンを実行し、データをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。出かける前に紙の情報をさっとスマートフォンに転送するといった使い方ができるため便利だろう。
 スマートフォンとの接続は、無線LAN(Wi-Fi)で行うが、無線LANルータを経由する方法と、ダイレクトに接続する「Wi-Fiダイレクト」(キヤノンはダイレクト接続)が選べる。Wi-Fiダイレクトの場合PIXUS TS5130はBluetooth接続機能を搭載しており、Bluetoothでお互いを認証しておけば接続設定が簡単という機能だ。接続設定に使うだけで、印刷操作は「Canon PRINT Inkjet」上で行い、データー転送にはWi-Fiが使用される(Bluetoothで写真データを送るわけではない)。少しでも簡単に接続できるよう工夫さえれている点は評価できるが、対応機種はAndroidに限られる上、使うのはWi-Fiダイレクトの場合のみである。無線LANルーター経由の方がより便利に使えるため、一般的にはこちらを利用すると思われるし、Wi-Fiダイレクトの場合でも、手動設定でもそれほど難しくはない。Bkuetooth接続設定機能はあれば便利だが、無くてもそれほど不便ではないだろう。
 クラウドとの連携機能も3機種とも搭載されており、オンラインストレージから印刷したり、SNSの写真を印刷する事ができる。SNSの写真はコメント付きでも印刷が可能だ。またPIXUS TS5130は写真共有サイトからの印刷も可能だ。さらにネットワークを利用したプリント機能として、EP-810AとEW-M571Tは、印刷したい写真や文書を本機にメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、スキャンした画像を離れた場所の対応複合機で印刷できる「メールdeリモート印刷」、通常のプリント同じ操作で、離れた場所のEP-810AやEW-M571Tで印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。一方のPIXUS TS5130はこれらの機能は搭載しない。リモートプリント機能はEP-710AEW-M571Tの圧勝だ。

コピー機能
型番
EP-710A
EW-M571T
PIXUS TS5130
製品画像
等倍コピー
拡大縮小
倍率指定
○(25〜400%)
○(25〜400%)
○(25〜400%)
オートフィット
定型変倍
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー
○(退色復元対応)
○(色あせ補正対応)
割り付け(2面/4面)
○/−
○/−
○/○
バラエティコピー
BOOKコピー
ミラーコピー
BOOK2アップ
塗り絵コピー
背景除去機能
文字くっきり機能
IDコピー
枠消しコピー
IDコピー

 コピー機能を見てみよう。単純なコピー機能としては、3機種とも単純な等倍コピーだけでなく、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「オートフィット」機能や、25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える機能を搭載した高性能な物だ。EP-710APIXUS TS5130は原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行う「定型変倍」機能も搭載している。さらにまたCD/DVD/Blu-rayレーベル印刷に対応したEP-710Aは、レーベルコピーにも対応する。EP-710APIXUS TS5130は原稿面に写真を複数枚置き、焼き増し風のコピーを行うことも出来る。この際、EP-710Aは「退色復元」、PIXUS TS5130は「色あせ補正」と名称は異なるが、両機種とも昔の色あせした写真も自動で補正してくれる機能も備えている。3機種とも2枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2アップにも対応する。さらにPIXUS TS5130は4枚の原稿を1枚に縮小する4アップにも対応している。その他、EP-710Aはコピー時にも「塗り絵印刷」が行える他、アイロンプリント紙への印刷時に使える「ミラーコピー」、本をコピーする際に片面ずつスキャンして両面もしくは左右に割り付ける「BOOKコピー」「BOOK2アップ」、背景の色を白にして見やすくする「背景除去機能」を備えている。一方EW-M571Tは免許証などの裏表をそれぞれスキャンして1枚の用紙に並べて印刷する「IDコピー」機能を備える。PIXUS TS5130は厚手の原稿など原稿台のカバーが浮いてしまう場合に黒くなる部分を消去する「枠消しコピー」機能と、「IDコピー」機能を搭載する。それぞれ機能は異なるが、複合機単独で様々なコピーが行えるよう工夫されている。

操作パネル/インタフェース/本体サイズ
型番
EP-710A
EW-M571T
PIXUS TS5130
製品画像
液晶ディスプレイ
1.44型
1.44型
(角度調整可)
2.5型
(90度角度調整可)
操作パネル
ボタン式
ボタン式
(角度調整可)
物理ボタン
(90度角度調整可)
インターフェイス
USB他
USB2.0×1
USB2.0×1
USB2.0×1
無線LAN
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(ダイレクト印刷対応)
有線LAN
対応OS
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.10.5〜(AirPrint利用)
耐久枚数
N/A
3万枚
N/A
外形寸法(横×奥×高)
390×338×163mm
375×347×187mm
425×315×147mm
重量
5.9kg
5.5kg
6.5kg
本体カラー
ホワイト
ブラック
ブラック/ホワイト

 操作パネルと液晶ディスプレイを見ていこう。一番使いやすいのはPXISU TS5130だ。液晶ディスプレイと操作パネルは本体前面に搭載しているが、操作パネル全体を持ち上げて角度調整が可能となっている。最大90度まで起こすことができるので、垂直から水平まで見やすい角度で操作ができるよう工夫されている。液晶も2.5型と、この価格帯としては大きめで視認性は高い。EW-M571Tも本体前面に液晶ディスプレイと操作パネルを搭載し。角度調整が可能だが、90度までは持ち上がらない。また液晶ディスプレイが1.44型と小さく、視認性やメニューの一覧性はかなり劣る。視認性はさておき、液晶を搭載しているだけでコピーの詳細設定やWi-Fi接続設定、ダイレクト印刷時の写真選択などができるため、とりあえず小さくても搭載したといった感じだ。EP-710Aも1.44型の液晶という点ではEW-M571Tと同じだが、本体の前面から上面にかけて斜めになった部分に搭載されており角度調整はできない。斜めになっているので、比較的使いやすいが、置き場所によってはやや視認性は落ちる可能性がある。本体での操作が多いならPIXUS TS5130が使いやすいだろう。
 インタフェースは3機種ともUSB2.0に加えて、無線LAN(Wi-Fi)接続にも対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、無線LAN(Wi-Fi)ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。その場合、プリンターも無線LANルーターに接続しておけば、家庭内のどのパソコンでもプリント可能となり非常に便利だろう。またスマートフォンやタブレットからの印刷も可能となる。またWi-Fiダイレクト(キヤノンはダイレクト接続)に対応しているため、無線LANルータの無い環境でも、スマートフォンやタブレットと直接Wi-Fi接続が可能となっている点も共通の便利な点だ。
 対応OSはメーカーによる差が大きい。EP-710AEW-M571TはWindows XP SP3以降は全て対応する。MacOSもダウンロード対応とはなるが10.6.8以降に対応する。マイクロソフトのサポートの終了したWindows XPやVistaにも対応するのは安心だ。一方、PIXUS TS5130はWindows 7 SP1/8.1/10のみの対応だ。Windows XPやVistaだけでなく、Windows 8も非対応である点は注意が必要だ。MacOSも10.10.5以降となっただけでなく、ドライバはキヤノンからは提供されず、AirPrintを使用する方法となった。
 本体サイズを見てみよう。EP-710Aが390×338×163mm、EW-M571Tが375×347×187mm、PIXUS TS5130が425×315×147mmとなる。本体右側にエコタンクを搭載するEW-M571Tが、以外にも横幅が最も小さく、逆に液晶ディスプレイを本体前面に搭載し、前面給紙カセットもないが、高さはEW-M571Tの方が大きい。PIXUS TS5130は横幅が3機種で最も大きく、奥行きと高さは最も小さい。とはいえ、前述のように前面給紙カセットが44mm飛び出す事を考えると奥行きはむしろ大きくなる。奥行きもEW-M571TPIXUS TS5130は背面給紙があるため、後方と上方にスペースが必要だ。それを考えると、必要なスペースはEP-710Aが最も小さいと言える。ちなみに本体の耐久性は、EP-710APIXUS TS5130は公開はしていないが、一般的に家庭向けの機種は1万〜1万5000枚程度と言われている。それに対してEW-M571Tは3万枚と2〜3倍となっている。印刷枚数が多い人向けの機種だけに、耐久性も高めているのはうれしいところだ。本体カラーは、EP-710Aはホワイトのみ、EW-M571Tがブラックのみ、PIXUS TS5130のみブラックとホワイトのカラーバリエーションを用意している。



 3機種は方向性が異なるので選びやすいはずだ。まずは写真や年賀状の印刷をメインで考えているならEP-710Aだろう。唯一の6色印刷に加えて印刷も高速だ。また、SDカードからのダイレクト印刷やレーベル印刷機能も備える。唯一写真用紙を前面給紙カセットにセットできるため、セットしたままにしておくという使い方にも向いている。ただし本体の操作性はそれほど良くなく、また印刷コストも高いため、印刷枚数はそれほど多くない人向けと言えるだろう。逆に、コピーや文書印刷をメインに考えるならPIXUS TS5130がおすすめだ。液晶も大きいためコピーなどの操作がしやすく、また顔料ブラックを搭載しているのでコピーや文書の印刷が綺麗だ。普通紙のみだが両面印刷にも対応し、用紙も前面給紙カセットと背面給紙の両方にセットできる点も便利だ。ただし、インクカートリッジがカラー3色一体なので、印刷コスト面ではあまり良いとは言えない。写真は印刷せず、文書やコピーのみで印刷枚数があまり多くない人向けだ。一方、画質はあまり求めないが印刷コストを追求するならEW-M571Tだろう。本体価格は高いが、前述のようにインクボトルが各色1本ずつ付いている事を考えればおつりが来るだろう。画質や印刷速度、操作性、用紙のセット機能などでは劣る物の、最低限必要な機能は搭載しているし、画質にこだわらなければSDカードからのダイレクト印刷にも対応する。なにより、この印刷コストの圧倒的な安さは、これまでのプリンターの使い方を変える可能性がある。より気軽に印刷して楽しめる様になるだろう。
 

(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/


EP-710A
EW-M571T
PIXUS TS5130BK
PIXUS TS5130WH