小ネタ集
2017年春時点のプリンタ
〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜
(2018年3月1日公開)

プリンタ比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンタ比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。


FAX機能付き複合機(3万円の機種)
 
 FAX機能付きA4複合機の中で最上位機種(大型の機種を除く)に当たる3万円の機種である。エプソンのPX-M781FとキャノンのMAXIFY MB5430が完全に同価格で、低印刷コストと高速印刷に特化し、前面給紙カセット2段など同じような機能を持つ2機種となる。どういった違いがあり、どの点で選べば良いのかを検証しよう。

プリント(画質・速度・コスト)
メーカー
エプソン
キャノン
型番
PX-M781F
MAXIFY MB5430
製品画像
実売価格(メーカーWeb/税抜き)
29,980円
29,980円
インク
色数
4色
4色
インク構成
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成
各色独立
各色独立
顔料/染料系
顔料
(つよインク200X)
顔料
(MAXIFY用新顔料インク)
インク型番
84番(大容量)
83番(標準容量)
2300XL番(大容量)
2300番(標準容量)
ノズル数
3200ノズル
4352ノズル
各色:800ノズル
カラー:各1024ノズル
黒:1280ノズル
最小インクドロップサイズ
2.8pl(MSDT)
N/A
最大解像度
4800×1200dpi
600×1200dpi
PrecisionCoreプリントヘッド
印刷速度
L判縁なし写真(メーカー公称)
N/A
N/A
A4普通紙カラー(ISO基準)
22.0ipm
15.5ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準)
24.0ipm
24.0ipm
印刷コスト
L判縁なし写真
N/A
N/A
A4カラー文書
7.3円
6.1円
A4モノクロ文書
2.2円
1.8円

 それでは、プリントの画質・速度・コスト面を見てみよう。両機種とも4色インクとなっており、また全色顔料インクという点でも同等だ。顔料インクは普通紙への印刷時に染料インクのような用紙へのしみこみが少なく、インクが広がりにくいので、クッキリとしたメリハリのある印刷が行えるというメリットがある。そのため、細かな線や小さな文字、中抜き文字もつぶれず綺麗に印刷できる。また、耐水性も高いというメリットもあり、濡れた手で触ったりマーカーで線を引いても滲まない点も便利である。そのため、パソコンから普通紙への印刷や、普通紙コピー、年賀状印刷に向いている他、FAX機能を使う時も、受信したFAXを普通紙に印刷する際に高画質、高耐水で印刷が出来る。ただし、顔料インクにはデメリットもあり、写真用紙に印刷すると、発色はあまり良くなく、また写真用紙本来の光沢感も薄れポストカードのような鈍い光り方になってしまう。その点で普通紙に特化したインク構成と言える。
 PX-M781Fは4色顔料インクという点だけでなく、最小インクドロップサイズが2.8plと家庭用の写真印刷向けプリンターと比べると大きい点でも、写真印刷向けとは言えない。フチなし印刷にも対応し、写真用紙にも印刷は可能なので全く写真プリントができないわけではないが、やはり粒状感があり、少しザラザラとした印象を受けるだろう。前述のように発色も光沢感も悪い。ただし採用するインクは「つよインク200X」で、アルバム保存300年、耐光性45年、耐オゾン性30年と、非常に高くなっている。耐保存性の面では問題ない。また、印刷解像度は4800×1200dpiと高い。一方、普通紙印刷に関しては、前述の顔料インクである事に加えて、PrecisionCoreプリントヘッドを採用している。普通紙への印刷解像度を360dpiから600dpiへアップした他、普通紙印刷時の発色やエッジ処理にも工夫がなされ、普通紙印刷の画質は非常に高くなっている。一方、MAXIFY MB5430は最小インクドロップサイズを公表していないが、印刷解像度が600×1200dpiと低いため、それほど小さくは無いと思われる。その上、フチなし印刷に非対応なので、PX-M781F以上に写真印刷向けとは言いがたい。採用するインクは「MAXIFY用新顔料インク」となっており、耐保存性に関する記載は一切無い。普通紙の印刷は、前述の顔料インクならではの高画質に加えて、特に黒の濃度が高くなっているという事で、印刷画質は高い。どちらの機種も普通紙印刷に特化したインクと、機能を備えており、インクジェットプリンタの中でも普通紙印刷画質は非常に高くなっている。一方で写真印刷を一切考えないMAXIFY MB5430に対して、顔料インクながら耐保存性や画質面ではできる限り高画質に印刷できるように工夫されたPX-M781Fの方が、様々なシーンで使いやすいとは言えるだろう。
 印刷速度に関しては両機種ともこだわっており、1枚目の印字中に2枚目を重ねて搬送させる「重ね連送」機能を搭載している。また、ノズル数もかなり多く、PX-M781Fが各800ノズル、MAXIFY MB5430はカラーが各1024ノズル、ブラックが1280ノズルとなっている。また、PX-M781Fは3つのサイズのインクを打ち分ける事で画質と速度の両立を図るMSDTに対応しており、印刷する場所によって大きなドットを打つ事でも高速化を図っている。その結果、PX-M781FはA4カラー文書が22ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、A4モノクロ文書が24ipm、MAXIFY MB5430はそれぞれ15.5ipmと24ipmと、インクジェットプリンタの中でも非常に高速になっている。モノクロに関しては奇しくも2機種は同スピードだが、カラーに関してはPX-M781Fの方が40%以上高速で、モノクロと変わらない速度で印刷できる。カラー印刷が多い場合はPX-M781Fの方がストレス無く使えるだろう。
 最後に印刷コストだが、両機種とも大容量インクを用意しており、印刷コストもかなり安くなっている。PX-M781Fの場合大容量の84番インクで、ブラックインクは2,600ページ、カラーインクは1,900ページ印刷が可能だ。価格はブラックが4,980円、カラーが各3,300円となる。一方、MAXIFY MB5430は大容量の2300XLインクで、印刷可能枚数は不明だが、ブラックが4,300円、カラーが2,190円となる。どちらもインクカートリッジは高価だが、家庭向けの機種と比べるとかなり大容量になっている。そのためPX-M781FがA4カラー文書で7.3円、A4モノクロ文書で2.2円、MAXIFY MB5430がそれぞれ6.1円と1.8円となる。MAXIFY MB5430の方が印刷コストは安めだが、PX-M781Fもインクジェットプリンターとしてはかなり安い方で、レザープリンターなどと比べても安いといえる。そのため、印刷コストの差が決め手になるほどではないが、検討する上での材料の一つとなるだろう。

プリント(給紙・排紙関連)
型番
PX-M781F
MAXIFY MB5430
製品画像
対応用紙サイズ
L判〜A4
L判〜A4
(フチ無し印刷非対応)
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面
前面
カセット上段(250枚)
カセット下段(250枚・普通紙B5以上)
カセット上段(250枚)
カセット下段(250枚・普通紙A4/レター/リーガル)
その他
排紙トレイ自動開閉
用紙種類・サイズ登録
○(カセット収納連動)
○(カセット収納連動)
用紙幅チェック機能

 続いて、給紙・排紙関連の機能を見てみよう。使用できる用紙はいずれもL判からA4までとなる。ただしMAXIFY MB5430はフチなし印刷には非対応である。MAXIFY MB5430は写真印刷には元々向いていないが、フチなしデザインのハガキや、チラシなどの他、背景色をフチなしで印刷したい場合などには注意が必要だ。その点ではPX-M781Fは安心だ。給紙に関しては、両機種とも前面カセットを基本としている。ビジネス向けと言う事もあり、カセット1段にA4用紙を250枚までセット可能などは両機種とも同等だ。そのカセットが2段あるため、A4用紙を2段ともセットして500枚使用する事もできるし、上段にB5、下段にA4という風に250枚ずつ違う用紙もセットできる。PX-M781Fの場合、下段はB5以上の普通紙のみ、MAXIFY MB5430の下段も、A4/リーガル/レターサイズの普通紙のみという制限がある。両機種ともカセットは少し前に飛び出した様なデザインとなる。MAXIFY MB5430の場合はカセットを縮めて本体に完全収納状態にできるが、その状態では用紙をセットできないため、基本的にはカセットを伸ばした状態で使う事になるだろう。
 両機種とも用紙種類とサイズの登録機能を搭載している。いずれも前面給紙カセットを挿し込むと自動的に登録画面が表示されるため便利だ(されないようにもできる)。そして、この登録内容と、印刷時の用紙設定が異なっている場合、メッセージが表示される仕組みだ。また、液晶ディスプレイでメニューから手動で登録も可能である。PX-M781Fは、印刷時に実際の用紙幅をセンサーでチェックする機能もあり、できる限り印刷ミスによる用紙とインクの無駄遣いをなくす工夫がなされている。

プリント(付加機能)
型番
PX-M781F
MAXIFY MB5430
製品画像
自動両面印刷
○(普通紙のみ)
○(普通紙のみ)
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
○(オートフォトファイン!EX)
特定インク切れ時印刷
○(黒だけでモード・5日間のみ)
自動電源オン/オフ
−/○
○(時刻指定)/○(時刻指定)
廃インクタンク交換

 自動両面印刷機能は両機種とも搭載している。ただし、いずれも普通紙のみの対応であり、ハガキの両面印刷は行えない点は注意が必要だ。また、PX-M781Fは「オートフォトファイン!EX」という写真の画質補正機能も搭載している。逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われるため、気楽に写真印刷が行えるようになっている。PX-M781Fはインクの種類や印刷速度面では写真印刷が得意とは言えないが、画質や光沢感が薄くなる点さえ許容できれば耐保存性は写真印刷として十分だ。ちなみに、MAXIFY MB5430はこういった機能は搭載していない。
 最近の機種では搭載機種が増えた「印刷が実行されると自動的に電源がオンになる」機能と、ほぼ必須になりつつある「指定した時間操作がないと自動で電源がオフになる」機能だが、FAX付きモデルでは状況が異なる。常時電源を入れておかなければFAX受信が行えないためである。そのため、PX-M781Fは自動電源オフのみ搭載している。そしてMAXIFY MB5430は自動電源オン・オフというよりは、時間指定による電源オン・オフが設定できる。オフィスの就業時間や、商店の営業時間などに合わせて決まった時間に電源を入れ、決まった時間に電源が切れるというものである。ある意味オフィス向けという機種では、この機能は便利な場合もあるだろう。
 一方、PX-M781Fの便利な点として、交換式メンテナンスボックス(廃インクタンクの交換)に対応している事がある。メンテナンスボックスとはクリーニング時に排出される廃インクを貯めるもので、満タンになると通常は修理に出して交換する必要があり、プリンターが使えない期間が発生し、交換費用もそれなりに掛かってしまう。しかしPX-M781Fはユーザー自身で簡単に交換できるようになっている。印刷枚数が多いと思われる機種だけに、使用できない期間の発生を防ぐことができるこの機能はうれしいところだ。

スキャン
型番
PX-M781F
MAXIFY MB5430
製品画像
読み取り解像度
1200dpi
1200dpi
センサータイプ
CIS
CIS
原稿取り忘れアラーム
ADF
原稿セット可能枚数
50枚
50枚
原稿サイズ
A4/B5/A5/レター/リーガル
216×356mm〜148×148mm
両面読み取り
○(同時両面)
読み取り速度
カラー
16.0ipm
23.0ipm(両面時)
モノクロ
16.0ipm
23.0ipm(両面時)
スキャンデーターのメモリカード保存
○(JPEG/PDF・USBメモリのみ)
○(JPEG/PDF・USBメモリのみ)

 続いて、スキャナ部を見てみよう。解像度は両機種とも1200dpiのCISスキャナを搭載しており同等だ。家庭向けにはもっと高解像度の機種があるが紙などの反射原稿しかスキャンできないことを考えると1200dpiでも十分だ。一般的には文書なら200〜300dpi、写真なら300〜600dpi程度で、よほど綺麗に保存したい場合に1200dpiでスキャンすると言った程度だ。実際写真サイズを1200dpiで取り込むと約4,200×6,000ドットとなり2500万画素相当なので十分といえる。逆にスキャナ解像度が高いセンサーでは1ドットあたりの光の取り込み量が減り、スキャン速度が低下したりノイズが発生したりするため、バランスを取って1200dpiとしていると思われる。なお、3機種ともCIS方式であるため、分厚い本など浮いてしまう原稿は苦手で、ピントが合わずぼけたような画像となってしまう点は共通だ。
 両機種ともスキャンした原稿をパソコンを使わずにUSBメモリに保存する機能を搭載している。パソコン無しで簡単にスキャンが行えるできるため便利だ。JPEG又はPDF形式での保存にも対応している。そしてFAX付きモデルと言うことで両機種ともADFを搭載している。共に50枚までセットが可能である。両機種とも両面スキャンに対応しているが、PX-M781Fは片面にのみセンサーを搭載しており、片面をスキャン後、もう一度給紙して裏面をスキャンするという方式なのに対して、MAXIFY MB5430は両面にセンサーを搭載しており、1回の給紙で両面をスキャンできる。そのため、片面原稿と比べて両面原稿の場合はPX-M781Fは倍の時間が掛かるが、MAXIFY MB5430は同じ時間で行えるメリットがある。このADFは速度も公表されており、PX-M781Fがカラー・モノクロ共に16ipm、MAXIFY MB5430が23ipmで、MAXIFY MB5430の方が高速に見える。しかし、ipmは、image per minute、つまり1分間に何面をスキャンできるかを表しているため、PX-M781Fは1分間に16枚の原稿をスキャンできるのに対して、MAIXFY MB5430は1分間11.5枚の原稿を同時に両面スキャンできるので倍の23ipmとなっているのである。両面スキャンの場合は、16ipmと23ipmというのは正しいだろう。一方片面原稿の場合、PX-M781Fは16ipmなのに対して、MAXIFY MB5430は11.5ipm程度になると予想される。もちろん処理時間などもあるため、完全に半分ではないかもしれないが、これに近い速度になるだろう。つまり両面原稿ならMAXIFY MB5430が、片面原稿ならPX-M781Fが速いと言えるのである。どちらをよく使うかによって、便利な機種が決まるだろう。

ダイレクト印刷
型番
PX-M781F
MAXIFY MB5430
製品画像
カードスロット
対応メモリカード
USBメモリ/外付けHDD/外付けDVD対応
○/○/−
○/−/−
メモリカードからUSBメモリ/外付けHDD/外付けDVDへバックアップ
−/−/−
−/−/−
対応ファイル形式
JPEG/TIFF/PDF(スキャンto外部メモリー機能で作成したPDFのみ
JPEG/TIFF/PDF(本機でスキャンしてUSBメモリーに保存したPDFのみ)
手書き合成
PictBridge対応
赤外線通信
各種デザイン用紙印刷

ダイレクト印刷機能を見てみよう。両機種ともメモリカードスロットは搭載せず、USBメモリにのみ対応となる。そのため、デジカメの写真を印刷するというよりは、前述のスキャンしてUSBメモリーに保存したデータを印刷する場合などが想定されているだろう。対応ファイル形式も一般的なJPEGとTIFFに加えて、両機種ともスキャンしてUSBメモリーに保存する際にPDF形式で作成したファイルからの印刷にも対応しているのも、こういった使い方が想定されているからだろう。
 なお、写真も印刷できないわけではない。USBメモリに写真を入れておけば一覧から写真を選んで写真のダイレクト印刷ができるし、その場合に用紙サイズやフチなし/ありの設定(PX-M781Fのみ)、日付表示の有無、赤目補正(PX-M781Fのみ)などもできる。PX-M781Fはオートフォトファイン!EXも利用可能だ。画質上は写真印刷には向いていないが、印刷ができないというわけではない。この点ではフチなし印刷が可能なPX-M781Fの方が、写真らしい印刷が可能と言えるだろう。

スマホ/クラウド対応
型番
PX-M781F
MAXIFY MB5430
製品画像
スマートフォン連携
対応端末
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 9.0以降)
Android 4.1以降
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 9.0以降)
Android 4.1以降
NFC対応
写真プリント
ドキュメントプリント
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
スキャン
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
クラウド連携
スマートフォン経由/本体
○/−
○/○
オンラインストレージからの印刷
SNSからの印刷
写真共有サイトからの印刷
メールしてプリント
リモートプリント
スキャンしてリモートプリント

 スマートフォンとの連携機能も両機種とも搭載しており、iPhoneやiPod touch、iPadと、Android端末に対応している。いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることでプリント又はスキャンが行える。写真とドキュメント印刷、スキャンに対応しており、様々な内容をプリント可能だ。写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定(PX-M781Fのみ)まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。ドキュメント印刷は、PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もでき便利だ。また、両機種ともスマートフォン上からスキャンを実行し、データをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。出かける前に紙の情報をさっとスマートフォンに転送するといった使い方ができるため便利だろう。
 スマートフォンとの接続は、無線LAN(Wi-Fi)で行うが、無線LANルータを経由する方法と、ダイレクトに接続する「Wi-Fiダイレクト」(キヤノンはダイレクト接続)が選べる。Wi-Fiダイレクトの場合PX-M781FはNFCを利用した接続設定に対応している。少しでも簡単に接続できるよう工夫さえれている点は評価できるが、対応機種はAndroidに限られる上、使うのはWi-Fiダイレクトの場合のみである。無線LANルーター経由の方がより便利に使えるため、こちらを利用する場合は意味が無いし、Wi-Fiダイレクトの場合でも、手動設定でもそれほど難しくはない。NFCがあれば、プリンターと同じネットワークに入っていない人が来た場合でも、さっと印刷ができて便利だが、無くてもそれほど不便ではないだろう。
 クラウドとの連携機能も両機種とも搭載されており、オンラインストレージから印刷が可能だ。ここで大きな違いは、PX-M781Fはスマートフォンのアプリとして搭載しているのに対して、MAXIFY MB5430はスマートフォン上だけでなく、プリンタ単体でもクラウドにアクセスし印刷ができる点が上げられる。実際の操作性はスマートフォンからの方が上だが、選択肢が広いという点ではMAXIFY MB5430が便利だ。
 さらにネットワークを利用したプリント機能として、PX-M781Fは印刷したい写真や文書を本機にメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、PX-M781Fでスキャンした画像を離れた場所の対応複合機で直接印刷できる「メールdeリモート印刷」、通常のプリント同じ操作で、外出先など離れた場所から自宅のPX-M781Fで印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。一方のMAXIFT MB5430はこれらの機能は搭載しない。クラウドのアクセスはMAXIFY MB5430が便利で、リモートプリント機能はPX-M781Fが便利だ。

コピー機能
型番
PX-M781F
MAXIFY MB5430
製品画像
等倍コピー
拡大縮小
倍率指定
○(25〜400%)
○(25〜400%)
オートフィット
定型変倍
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー
割り付け(2面/4面)
○/○
○/○
バラエティコピー
IDコピー
影消しコピー
パンチ穴消しコピー
ページ順コピー
枠消しコピー
コピー予約
IDコピー

 コピー機能を見てみよう。単純なコピー機能としては、両機種とも単純な等倍コピーだけでなく、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「オートフィット」機能や、原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行う「定型変倍」機能、さらに25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える機能を搭載した高性能な物だ。また、両機種とも2枚又は4枚の原稿を1枚に縮小してコピーする機能にも対応する。その他、PX-M781Fは免許証などの裏表をそれぞれスキャンして1枚の用紙に並べて印刷する「IDコピー」、原稿の周囲や、冊子のとじ目部分などの影を消してくれる「影消しコピー」、パンチ穴を写らないようにコピーする「パンチ穴消しコピー」に対応する。一方、MAXIFY MB5430も複数ページの原稿を、1部ずつコピーする「ページ順コピー」、原稿の周囲や、冊子のとじ目部分などの影を消してくれる「枠消しコピー」、「IDコピー」の他、コピー実行中でも次の原稿の読み取り操作ができる「コピー予約」も可能だ。それぞれ機能は異なるが、複合機単独で様々なコピーが行えるよう工夫されている。

FAX機能
型番
PX-M781F
MAXIFY MB5430
製品画像
通信速度
33.6kbps
33.6kbps
画質設定
モノクロ
8dot/mm×3.85本/mm(標準)
8dot/mm×7.7本/mm(精細)
8dot/mm×15.4本/mm(高精細)
16dot/mm×15.4本/mm(超高精細)
8dot/mm×3.85本/mm(標準)
8dot/mm×7.7本/mm(ファイン)
300×300dpi(ファインEX)
カラー
200×200dpi
200×200dpi
送信原稿サイズ
A4/B5/A5
N/A
記録紙サイズ
A4/A5/リーガル/レター
A4/リーガル/レター
受信ファックス最大保存ページ数
180枚/100件
250枚/30件
データ保持(電源オフ/停電)
○/○
○/−
ワンタッチ
短縮ダイヤル
100件
100件
グループダイヤル
99宛先
99宛先
順次同報送信
100宛先
101宛先
自動リダイヤル
発信元記録
ポーリング受信/送信/予約
○/−/−
−/−/−
ファクス/電話自動切替
見てから送信
見てから印刷
PCファクス
送受信
送信のみ

 FAX機能も基本はほぼ同等だが、細かなところで違いが出ている。両機種ともスーパーG3に対応しており、モノクロ、カラーFAXを行う事が出来る。ADFを搭載しているため、複数枚の原稿の送信も便利である。もちろん両面スキャンしFAXできるため便利だ。33.6Kbpsで通信可能であり、その場合の伝送速度はモノクロで約3秒となる。また読取走査線密度はモノクロで8dot/mm×3.85本/mmの標準モード、8dot/mm×7.7本/mmの精細モードが選べるが、加えてPX-M781Fはさらに高画質な8dot/mm×15.4本/mmの高精細モードと、16dot/mm×15.4本/mmの超高精細モードを、MAXIFY MB5430も300×300dpiのファインEXを選択できる。多少の違いはあるが大きな差ではないだろう。カラーは200×200dpiだ。受信したFAXの印刷はPX-M781FがA4かA5、MAXIFY MB5430がA4なので、A5用紙に印刷できるという点ではPX-M781Fが優れているが、一般的にはA4用紙で問題ないだろう。受信したFAXはPX-M781Fが180枚又は100件分、MAXIFY MB5430が250枚又は30件分となる。保存できる件数はPX-M781Fが、保存できる枚数はMAXIFY MB5430が多いという事で、優劣付けがたい。ここで大きな違いは、MAXIFY MB5430は電源オフ時は受信したFAXが保持されるが、停電時やコンセントが抜けた場合には保持されないのに対して、PX-M781Fはそういった場合でも受信した内容が保持される。使い方によっては、電気が供給されなくても受信内容が保持される方が便利だろう。
 ダイヤル機能としては、両機種とも短縮ダイヤルに100件登録できる他、グループダイヤル、順次同報送信、自動リダイヤルなどの基本的な機能を搭載している。PX-M781Fはボーリング受信に対応しているほか、送信するFAXを液晶で確認してから送信する「見てから送信」と、受信したFAXの内容を液晶で確認した上で印刷するか決めることで用紙を節約できる「見てから印刷」機能も備える。さらに、パソコン内のデータを直接FAXできる「PCファクス」機能自体は両機種とも搭載しているものの、MAXIFY MB5430は送信(パソコン上のデータを画像として送信)のみ対応だが、PX-M781Fは送信だけでなく受信(パソコン上にFAXのデータを受信)することもできる。なお、両機種ともFAX機能だけで受話器がないため通話機能は無いが、モジュラージャックのインとアウトを備えており、アウトに電話機を接続すると通話が可能となる。その際、PX-M781Fはファクス/電話自動切り替え機能にも対応しているのも便利だ。このように両機種は基本的な機能は似ているが、細かな点ではややPX-M781Fの方が便利に作られていると言えるだろう。

操作パネル/インタフェース/本体サイズ
型番
PX-M781F
MAXIFY MB5430
製品画像
液晶ディスプレイ
4.3型
(角度調整可)
3.5型
操作パネル
タッチパネル液晶
(角度調整可)
タッチパネル液晶+物理ボタン
インターフェイス
USB他
USB2.0×1
USB2.0×1
無線LAN
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(ダイレクト接続対応)
有線LAN
100BASE-TX
100BASE-TX
対応OS
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 10/8.1/8/7/Vista SP2
MacOS 10.8.5〜
耐久枚数
10万枚
N/A
外形寸法(横×奥×高)
425×388×330mm
463×394×351mm
重量
12.2kg
12.9kg
本体カラー
ホワイト
ブラック

 操作パネルは両機種ともタッチパネル液晶を採用している。液晶サイズもPX-M781Fが4.3型、MAXIFY MB5430が3.5型と差はある物の十分なサイズとなっている。タッチパネル液晶を採用するためボタン数が減り、また、モードボタンや設定項目などでは、その項目名を直接タッチして選択できるし、使わないボタンが表示されることも無いため、非常に分かりやすい。液晶内に表示されると、バックライトが入っているため、薄暗い場所でも操作がしやすいというメリットもある。ただし、どこまでをタッチパネル液晶に集約するかは異なっている。PX-M781Fでは、物理ボタンは電源ボタンだけで、ほとんどの操作をタッチパネル液晶に集約しており、テンキーやスタートボタンも全て液晶内に表示される。一部よく利用すると思われる機能はタッチセンサー式ボタンで液晶周囲に配置される。液晶の左にホームボタン、右にヘルプボタン、上に消耗品情報表示、ネットワーク接続状況表示、機器出力音設定画面表示、お気に入りの設定一覧表示のボタンとなる。操作パネルと液晶ディスプレイは本体前面に取り付けられ、90度まで起こして角度調整が可能だ。設置する高さに応じて見やすいように調整が可能なので、非常に使いやすいと言える。MAXIFY MB5430はタッチパネル液晶を基本としつつ、「スタート」「ストップ」「ホーム」「戻る」のボタンを物理的なボタンとしている。使用頻度の高いボタンは物理ボタンとすることで押しやすさを重視した格好だ。液晶ディスプレイと操作パネルは本体前面から上面にかけて大きく面取りされた部分に埋め込まれている。斜めを向いているためどの方向からでも見やすいが、角度調整できるPX-M781Fほどではない。物理キーの有無はどちらが便利かは一概には言えないが、液晶と操作パネルの角度調整が可能で液晶も大きなPX-M781Fの方が、どこに設置したとしても使いやすいと言えるだろう。
 インタフェースは両機種ともUSB2.0に加えて、有線LANと無線LANに対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人には有線・無線LANによりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。無線LANだけでなく有線LANにも対応しているため、ルーターが近い場合や、壁にLANコネクタが用意されている場合、無線LANでは不安定な場合などに重宝する。一方無線LANはWi-Fiダイレクト(MAXIFY MB5430は名称はダイレクト接続)に対応しているため、無線LANルータの無い環境でも、スマートフォンやタブレットと直接Wi-Fi接続が可能となっているのも便利な点だ。
 対応OSはPX-M781FがWindows 10/8.1/8/7/Vista/XPに対応しているのに対して、MAXIFY MB5430はWindows XPには非対応だ。MacOSもPX-M781Fは10.6.8以降、MAXIFY MB5430は10.8.5以降と違いがある。使用するパソコンのOSには注意したいところだ。耐久枚数はPX-M781Fが10万枚をうたっており、一般的な家庭用プリンターが1万〜1万5000枚である事を考えるとかなり高耐久に作られている安心感がある。MAXIFY MB5430もビジネス向けをうたっているため、ある程度高耐久である事は予想されるが具体的な数値は出ていない。
 本体サイズを見てみよう。コンパクトさが追求される家庭向けプリンタと比べて、ビジネスプリンタは速度や給紙枚数の多さ、高耐久性が求められるため、大型になりがちだ。家庭用複合機の上位機種EP-880Aの場合349×340×142mmとなっており、これと比較してみよう。PX-M781Fは425×388×330mmと全体的に大きい。トレイが2段という事もあって高さが大きくなっており、存在感がある。しかし、設置面積は意外と大きくはなく、横幅は一昔前の家庭用複合機より小さく、奥行きもEP-880Aと5cmも変わらない。ADFを搭載し、500枚まで給紙できること考えると十分コンパクトだと言えるだろう。一方、MAXIFY MB5430は463×394×351mmとPX-M781Fと比べても一回り大きい印象だ。しかも、このサイズは前面給紙カセットを最もコンパクトにした状態で用紙をセットする事ができない。A4用紙をセットした状態で置いておくとすると、奥行きは459mmになってしまう。またPX-M781Fと異なり、ADFが収納式であるため、ADF使用時だと高さは389mmになる。つまりPX-M781Fと同じ条件でA4用紙をセットしADFを展開すると、463×459×389mmとなる。サイズ面ではMAXIFY MB5430はかなり不利と言える。



 両機種は両面ADFと2段給紙カセットを搭載している点で似た製品に思えるが、細かく見ていくと違いが見えてくる。MAXIFY MB5430はとにかく低印刷コストと、ビジネス用途での利便性を重視している事が見て取れる。そのためクセの強い製品になっており、印刷解像度が低い、フチなし印刷ができない、本体が大きいなどがその例だ。逆に言うと、PX-M781Fはビジネス向けに重視していながらそれ以外の用途にも使えるように基本的な機能は備えている。そこで、MAXIFY MB5430は限られた人に向いているといえるだろう。印刷コストの安さはもちろん、両面同時スキャン、本体でのクラウドアクセスが気に入ったなら、MAXIFY MB5430という選択肢もありだ。ただし、前述のフチなし印刷ができない点などが問題なければといえる。逆にそれ以外ならPX-M781Fの方が使いやすいだろう。本体サイズもやや小さく、フチなし印刷も可能で、普通紙以外への印刷画質も高い。FAX機能やネットワークを利用した便利な機能も豊富で操作パネルも使いやすい。耐久枚数が高く、交換式メンテナンスボックスに対応するなど長く使える機能が搭載されているのも安心だ。印刷速度に関しては、先に発売され速いと言われていたMAXIFY MB5430に対して、後に発売されたPX-M781Fはモノクロは同等、カラーは圧倒的に速くなっており速度面でも有利だ。一般的におすすめできるのはPX-M781Fだ。また、MAXIFY MB5430特有の機能も、印刷コストに関してはPX-M781Fでも十分低価格だし、PX-M781Fも同時ではないが両面スキャンに対応しているし、そもそもスキャン速度が高速なので両面スキャンの速度もそれほど大きな差ではない。MAXIFY MB5430特有の機能が気に入った場合でも他の部分で気になるところがあるならPX-M781Fの方が安心かもしれない。
 
(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/


PX-M781F
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