小ネタ集
2017年末時点のプリンタ
〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜
(2018年5月27日公開)

プリンタ比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンタ比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。


A3単機能プリンタ(3万円以上の機種)
 
 A3単機能機の中で、プロ向けでない製品の中では最上位となる3万円台という価格帯である。エプソンのEP-50V(49,980円)とPX-S5080(34,980円)がこの価格帯になるが、エプソンのみとなるため、やや安価だがキャノンのPIXUS iP8730(26,000円)とともに比較したいと思う。EP-50VPIXUS iP8730が家庭向けの機種なのに対して、PX-S5080はビジネス向けの製品である。どういった違いがあるのか、そして安価なPIXUS iP8730との違いはどこにあるのか検証する。

プリント(画質・速度・コスト)
メーカー
エプソン
キャノン
キャノン
型番
EP-50V
PX-S5080
PIXUS iP8730
製品画像
実売価格(メーカーWeb/税込み)
49,980円
34,980円
26,000円
インク
色数
6色
4色
6色
インク構成
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
レッド
グレー
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
顔料ブラック
染料ブラック
グレー
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成
各色独立
各色独立
各色独立
顔料/染料系
染料
(つよインク200)
顔料
(つよインク200X)
染料/顔料(黒)
(ChromaLife100+)
インク型番
ソリ
76番(大容量)
74番(標準容量)
350XL/351XL(大容量)
350/351(標準容量)
ノズル数
1080ノズル
1568ノズル
6656ノズル
全色:各180ノズル
カラー:各256ノズル
ブラック:800ノズル
Y/M/GY:各1536ノズル
Y/染料BK:各512ノズル
顔料BK:1024ノズル
最小インクドロップサイズ
1.5pl(AdvancedMSDT)
2.8pl(MSDT)
1pl
最大解像度
5760×1440dpi
4800×2400dpi
9600×2400dpi
印刷速度
L判縁なし写真(メーカー公称)
34秒
45秒
30秒
A4普通紙カラー(ISO基準)
N/A
10.0ipm
10.4ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準)
N/A
18.0ipm
14.5ipm
印刷コスト
L判縁なし写真
12.7円
19.2円
16.5円→17.3円
A4カラー文書
6.0円
7.6円
8.6円→9.2円
A4モノクロ文書
N/A
2.5円
N/A

  まずはプリントの基本となる画質と速度、印刷コストから見ていこう。EP-50Vは6色インク構成となる。とはいえ通常の6色とは異なり、ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色に、レッドとグレーインクを搭載する。これを、「Epson ClearChrome K2インク」と呼んで、従来の6色と区別している。ライトインクがない分、色の薄い部分での粒状感などが悪くなりそうだが、そこは理論的色変換システム「LCCS」が力を発揮する。プロセレクション(写真のプロ向けのプリント単機能機)の製品に採用されてきたこの「LCCS」は写真をプリントする際のインク配分を論理的に算出する色生成技術で、階調性・色再現域・粒状性などの点からベストになるように複雑に計算されて打つインクが決定されるというものだ。さらに、光源によって色合いが異なる光源依存性も最適になる様に計算されるなど、かなり高度なものだ。さらに紙送りの精度も高めることで、基本4色だけでも高画質に印刷ができるという。そこにレッドインクにより、くすみがちな赤系統の表現力を高め、赤い物だけで無く夕日や肌の色などでも違いが出る。さらに従来の6色ではモノクロ写真の場合のグレーの部分はカラーインクを使って表現するため青白くなってしまうが、EP-50Vではグレーインクを搭載しているため綺麗なグレーの階調表現ができる。カラー、モノクロ両方の表現力をさらに高めた製品と言える。インクは全色染料の「つよインク200」であり、アルバム保存300年、耐光性50年、耐オゾン性30年と耐保存性は高い。また、染料インクを採用しているため、写真用紙へ印刷した際に用紙の光沢感がそのまま出るため写真印刷に向いているといえる。一方で普通紙などへ印刷ではシャープさが弱くなる他、耐水性は弱いのは染料インクの宿命と言える。
 一方、PX-S5080は逆の構成で、全色顔料インクを採用する機種だ。4色インク構成で、最小インクドロップサイズも2.8plとEP-50Vより大きく劣る。最小インクドロップサイズはそれなりに小さいので写真印刷も行えるが、EP-50Vだけでなく通常の6色インクのプリンターと比べてもライトインクがない分、確実に劣ってしまう。その上、全色顔料インクである事が写真印刷では問題となる。顔料インクで写真用紙に印刷すると、発色はあまり良くなく、また表面の光沢も薄れポストカードのような鈍い光り方になってしまう。写真印刷ができないわけではないが、画質的にもインク的にも向いていないといえる。一方で普通紙への印刷では滲みがなくコントラストの高いメリハリのある印刷が行るため、小さな文字や白抜き文字なども潰れずに印刷できる。さらにPrecissionCoreプリントヘッドの採用により、普通紙印刷時の解像度も360dpiから600dpiにアップしているため、より高画質だ。その上耐水性も高く、濡らしてしまった場合だけでなくマーカーを引くなどしても滲まない。そのため、文書印刷などを高画質に印刷できる。EP-50Vと比べてインク数も最小インクドロップサイズでも劣るが、普通紙への印刷ではPX-S5080の方が綺麗に見える場合が多い。普通紙印刷に特化していると言える。とはいえ、インクは「つよインク200X」であり、アルバム保存300年、耐光性45年、耐オゾン性30年となり、光沢感が薄れる点や粒状感を気にしなければ耐保存性は高い。
 最後にPIXUS iP8730だが、EP-50Vと同じく6色インク構成だが、その中身は異なる。染料インクはブラック、シアン、マゼンダ、イエローに加えてグレーインクが搭載され、色の濃い部分でブラックインクを使うよりも粒状感が抑えられる。また、モノクロに近い原稿での階調表現が優れており、中間色が赤や青っぽいグレーになることがないという特徴がある。もちろん染料インクであるため、写真用紙などの光沢感がそのまま出るため、写真印刷に向いている。EP-50Vと比べると1色少なくレッドインクを搭載しない他、LCCSなどの機能もない一般的なプリンターであるため、どうしても鮮やかさでは一歩劣る。しかし最小インクドロップサイズが1plと、EP-50Vより小さいため、粒状感は皆無であり、十分に高画質となっている。さらに、残る1色は顔料のブラックインクとなっているため、ブラックインクを使用する部分に限ってだが、普通紙などへの印刷ではメリハリのある印刷結果が得られる。カラー部分は染料インクを使用するのはもちろん、完全な黒ではなくグレーの部分はカラーインクを混ぜて作るため染料インク、また背景色がある場合など染料インクの上に顔料インクを打てないため、そういった部分も染料ブラックを使用するが、黒文字などが顔料インクなだけでも全体の仕上がりはぐっと引き締まる。インクは「ChromaLife100+」でありアルバム保存300年、耐光性40年、耐ガス性10年を実現している。ちなみに3機種とも各色独立インクとなっており、なくなった色だけ交換できる。
 このように写真印刷に特化したEP-50V、普通紙印刷に特化したPX-S5080、写真印刷と普通紙印刷のどちらもある程度得意なPIXUS iP8730という構図である。
 印刷速度はEP-50VがL判写真用紙の縁なし印刷1枚が34秒、PX-S5080が45秒、PIXUS iP8730は30秒と大きな差はない。EP-50Vは1.5plと最小インクドロップサイズが非常に小さいが、5つのサイズのインク滴を打ち分ける「Advanced-MSDT」に対応しており、必要に応じて大きいサイズのインクを打つことで、画質と速度を両立している。ノズル数も全色180ノズルと、エプソンのプリンターとしては多い方だが、一般的な6色の複合機が13秒である事を考えるとやや遅めだ。LCCSの複雑な処理に時間が掛かるのか、紙送りなどを高精度に行っているのかといろいろ想像はできるが、原因は不明だ。PX-S5080はカラーが各256ノズル、黒に至っては800ノズルとノズル数が非常に多くなっているが、L判写真縁なし印刷は45秒とやや遅めだ。Advanced-MSDTより劣る3つのサイズのインクを打ち分けるMSDT対応という事も影響していると思われるが、ここまでノズル数が多い割には遅い理由は不明だ。PX-S5080は文書印刷向けチューニングがなされているためではないかと思われる。一方のPIXUS iP8730も1plと最小インクドロップサイズは非常に小さいが、ノズル数を多くすることで高速化している。複合機の上位機種ほどではないが、ストレス無く使用できるレベルだ。一方A4普通紙への文書印刷速度だが、写真印刷とは違った結果となっている。PIXUS iP8730はA4普通紙カラー原稿で10.4ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、モノクロ原稿で14.5ipmとなっている。これはインクジェットプリンタとしてはかなり高速な部類だ。しかし、PX-S5080はカラー10.0ipm、モノクロ18.0ipmと、モノクロ印刷ではこれを上回る。写真印刷では1.5倍かかっていたPX-S5080が逆転している訳である。やはり普通紙が得意な機種だけあると言えよう。ただしPIXUS iP8730でもカラーは同等以上だし、モノクロも十分高速で問題はない。ちなみにEP-50Vについては印刷速度が公表されていない。
 印刷コストを見てみよう。まず、L版写真フチなしの印刷コストである。EP-50Vは12.7円、PX-S5080は19,2円、PIXUS iP8730が17.3円となる。いずれも写真用紙代込みで、EP-50VPX-S5080は500枚で2,143円なので1枚4.286円、PIXUS iP8730が400枚で1,705円なので1枚4.2625円である。1枚4.3円とすると、インクコストだけを計算するとEP-50Vが8.4円、PX-S5080Sが14.9円、PIXUS iP8730が13.0円となる。EP-50Vの印刷コストが抜きに出て安いが、これは、EP-50VがV-editionというシリーズに属しており、インクカートリッジの価格を安くして、低印刷コストをうたっているためである。同シリーズの最初の製品であるEP-10VAが、発売後に本体価格を上げ、代わりにインクカートリッジを半額とした流れを受け継いでいる。A4やA3などの大判で写真印刷をしても安心と言える。一方、PX-S5080は印刷コストが高くなりがちな顔料インクである事もあって19.2円となっているが、染料インクのプリンターと比べても平均的な値で、特に高いというわけではない。
 文書の印刷コストとなると状況が少し変わる。、EP-50Vは前述の理由により低印刷コストにこだわってるため、A4カラー文書が6.0円と安い。PIXUS iP8730の9.2円と比べてもかなりの安さだ。しかしPX-S5080を見ると7.6円と迫る勢いだ。顔料インクのPX-S5080は画質だけでなく印刷コスト面でも普通紙印刷に向いていると言える。差はあるとはいえ、EP-50VPX-S5080のこの印刷コストは十分に安いため、大量印刷も安心でも安心と言える。

プリント(給紙・排紙関連)
型番
EP-50V
PX-S5080
PIXUS iP8730
製品画像
対応用紙サイズ
カード・名刺〜A3ノビ
L判〜A3ノビ
L判〜A3ノビ
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面
○(50枚/0.6mm厚対応)
○(1枚手差し)
○(150枚)
前面
カセット(200枚/A4まで)
カセット上段(250枚)
カセット下段(250枚・普通紙B5〜A3)
その他
排紙トレイ自動開閉
用紙種類・サイズ登録
○(カセット収納(前面)・用紙セット(背面)連動)
○(カセット収納連動)
用紙幅チェック機能

  続いて、給紙・排紙関連の機能を見てみよう。対応する用紙は、EP-50Vが名刺〜A3ノビ、PX-S5080PIXUS iP8730はL判〜A3ノビとなっている。名刺サイズにカットされた用紙に印刷できるEP-50Vは、名刺印刷を考えている人には、印刷後に切り取る手間が無い他、フチ無しのデザインも行いやすく非常に便利だろう。給紙に関しては、それぞれの機種で特徴がある。一番シンプルなのはPIXUS iP8730で背面給紙のみとなっている。一度にセット可能な枚数はA4普通紙が150枚と家庭向けよりやや多いが一般的だ。背面給紙・前面排紙であるため用紙が内部で大きく曲げられることがなく、厚紙への印刷も安心で、写真用紙などにもローラー跡が強く付く心配もない。またセットも簡単だ。一方で用紙をセットしたままだとホコリが積もってしまい、プリンター本体に悪影響を与えため、毎回取り除くのが望ましい他、トレイが後方に倒れるため、上方と後方にスペースが必要となる。EP-50Vは前面給紙カセット背面給紙を併用する。前面給紙カセットはA4サイズまでとなっているが、大型なので普通紙を250枚までセットできる。一方A3サイズなどA4サイズを超える用紙は背面からとなる。こちらは50枚までセット可能で、一般的な背面給紙よりは少ないが、よく使うA4用紙を前面給紙カセットに入れておけばホコリが積もる心配が無く、それ以外の用紙はセットしやすい背面からという使い方を想定しているのだろう。もちろん前面給紙カセットはハガキや写真用紙もセットできる。背面給紙のもう一つの特徴として、0.6mm厚までの厚紙に対応している事がある。一般的なプリンターが0.3mmまでなので、倍の厚みまで使用できる。いざというときに便利だろう。最後にPX-S5080だが、前面給紙を基本としている。給紙カセットを2段搭載し、それぞれに普通紙で250枚ずつセット可能と、圧倒的な給紙枚数である。下段にはB5〜A3の普通紙という制限があるが、2段ともA3やA4普通紙をセットして500枚の大量使用に備えても良いし、上段にA4、下段にA3というように使い分けることもできる。注意点としてはA4までの用紙の場合、カセットは内部に完全に収納できるが、それ以上のサイズの場合、トレイを伸ばす必要があり、前に飛び出してしまう。使用時は排紙トレイを伸ばすため問題ないとも言えるが注意が必要だ。前面給紙・前面排紙と言うことで気になるのが、厚紙やラベル用紙などである。メーカーとしては問題ない事になっているが、前面から給紙して前面から排紙するため、内部で大きく曲げられてしまうのは少し心配だ。また封筒など特殊なサイズの用紙への印刷も不安である。そこで、PX-S5080では1枚ずつではあるが背面からの手差し給紙を可能としているのが大きな特徴だ。従来の背面給紙に近い位置だが、用紙をセットしておけるような大型のものではなく、折りたたみ式の簡易的なものだ。複数枚セットしても一度に給紙されてしまうため、本当に1枚ずつとなる。その分、背面に大げさなトレイを設けること無く背面給紙を可能としているわけである。厚紙や、封筒の様な特殊なサイズに印刷する場合だけでなく、前面給紙カセットにセットしたのとは異なる用紙を1枚印刷したい場合に、わざわざ入れ替えることなく印刷できるというメリットもある。ただし、こちらはEP-50Vのような厚紙には対応していない。
 このように、各製品に特徴があるが、A3やB4を日常的に使うなら、これらの用紙を前面給紙カセットに入れられるPX-S5080が、日常的にはA4用紙までという人や、厚紙などにも印刷したいという人はEP-50Vが便利だろう。
 一方 排紙トレイで便利なのが、EP-50Vが搭載する自動開閉機能だ。印刷が実行されると自動的に排紙トレイが伸張する。後述の自動電源オン機能と組み合わせると、プリンターの前にいなくても電源が自動で入り、自動で排紙トレイが伸張し、印刷が実行される。あとは印刷が完了した頃に取りに来るだけだ。逆に電源を切るときは自動的に排紙トレイが収納される。
 EP-50VPX-S5080は用紙の種類とサイズを登録しておく機能が搭載されている。液晶ディスプレイでメニューから登録も可能だが、前面給紙カセットを挿し込む、またはEP-50Vの背面給紙は用紙をセットした時点で、自動的に登録画面が表示されるため便利だ(されないようにもできる)。この登録内容と、印刷時の用紙設定が異なっている場合、メッセージが表示される仕組みだ。これに加えて、印刷速度に影響は出るが、印刷時に実際の用紙幅をセンサーでチェックする機能もあり、できる限り印刷ミスによる用紙とインクの無駄遣いをなくす工夫がなされている。

プリント(付加機能)
型番
EP-50V
PX-S5080
PIXUS iP8730
製品画像
自動両面印刷
○(A4まで・ファイン紙対応)
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
○(オートフォトファイン!EX・高彩モード対応)
○(オートフォトファイン!EX)
○(自動写真補正II)
特定インク切れ時印刷
○(黒だけでモード・5日間のみ)
○(黒だけでモード・5日間のみ)
○(残った色で一時的に印刷可)
自動電源オン/オフ
○/○
−/○
○/○
(USB接続時のみ)
PictBridge対応
○(Wi-Fi)
廃インクタンク交換

 その他、プリントの付加機能を見てみよう。自動両面印刷機能はEP-50VPX-S5080が対応している。ただし、 PX-S5080はA3サイズまでの自動両面印刷に対応しているのに対して、EP-50VはA4サイズまでとなる。一方EP-50Vは普通紙とハガキに加えて、ファイン紙の自動両面印刷にも対応している。両面印刷ファイン紙は多数の製品が発売されており、両面印刷時の裏移りを抑えられるなど、両面印刷に適しており、高画質に両面印刷を行いたい時に便利だ。CD/DVDレーベル印刷機能に関しては、家庭向けと位置づけられているEP-50VPIXUS iP8730が対応している。写真の自動補正機能としてEP-50VPX-S5080は「オートフォトファイン!EX」を、PIXUS iP8730は「自動写真補正II」を備えている。「オートフォトファイン!EX」は顔を自動判別し、シーンに合った補正をするもので、逆光写真や色かぶりも自然に補正してくれる機能である。一方「自動写真補正II」も顔を自動検出し、顔とそれ以外の部分の露光状態を別々に解析して、それぞれに合った明るさに補正してくれる機能である。つまり、3機種とも高精度で自動補正をする機能を搭載している。PictBridgeに関してはPIXUS iP8730がWi-Fi方式にのみ対応しているが、対応するデジタルカメラは少ない。最近、搭載機種が増えつつある自動電源オン機能だが、EP-50VPIXUS iP8730が対応している。電源が切れた状態でも印刷が実行されると自動的に電源がオンになり、指定した時間がたつと自動的に電源がオフになる。最近のプリンターはネットワーク接続ができるため、必ずしもパソコンのそばにあるとは限らず、またスマホなどからのプリントも考えられるため、わざわざプリンタの前まできて電源を入れる必要がないのは便利だ。EP-50Vは排紙トレイも自動で伸張するため完全に自動だが、PIXUS iP8730は前面カバーを開け排紙トレイを開けた状態にしておく必要がある。一方、指定した時間が経つと自動的に電源がオフになる機能は3機種とも搭載している。ただし、PIXUS iP8730はUSB接続時のみ利用できる。
 その他の便利機能として、EP-50VPX-S5080は交換式メンテナンスボックス(廃インクタンクの交換)にも対応している。メンテナンスボックスとはクリーニング時に排出される廃インクを貯めるもので、満タンになると通常は修理に出して交換する必要があり、プリンターが使えない期間が発生し、交換費用もそれなりに掛かるが、これら2機種はユーザー自身で簡単に交換できるようになっている。EP-50Vは印刷コストが安く、PX-S5080はビジネス用である事から、印刷枚数が多いと思われるため、この機能はうれしいところだ。

スマホ/クラウド対応
型番
EP-50V
PX-S5080
PIXUS iP8730
製品画像
スマートフォン連携
対応端末
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 9.0以降)
Android 4.1以降
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 9.0以降)
Android 4.1以降
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 9.0以降)
Android 4.1以降
NFC対応
写真プリント
ドキュメントプリント
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
クラウド連携
スマートフォン経由/本体
○/−
○/−
−/−
オンラインストレージからの印刷
SNSからの印刷
○(コメント付き可)
写真共有サイトからの印刷
メールしてプリント
リモートプリント
スキャンしてリモートプリント
○(受信のみ)

 スマートフォンとの連携機能は3機種とも搭載しており、iPhoneやiPod touch、iPadと、Android端末に対応している。いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることで行える。メインで使用すると思われる写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。さらにドキュメント印刷にも対応している。PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もできる便利だ。また、EP-50VPX-S5080はクラウドとの連携機能も搭載されており、スマートフォン/タブレット上からオンラインストレージ上のデータにアクセスし、そのファイルを印刷することも可能だ。さらにEP-50Vは、SNSの写真をコメント付きで印刷できる機能も搭載している。それ以外にも、ネットワークを利用した機能として、印刷したい写真や文書をメールに添付してEP-50VPX-S5080に送ると自動で印刷できる「メールプリント」、通常のプリント同じ操作で、屋外からでもEP-50V/PX-S5080で印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。さらにPX-S5080は、スキャンしてリモートプリントの受信にも対応している。PX-S5080はスキャナを搭載しないため、送信はできないが、同機能に対応した複合機でスキャンして離れた場所のPX-S5080で印刷する事ができる。簡易FAXのような使い方ができるわけだ。EP-50VPX-S5080はネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。

操作パネル/インタフェース/本体サイズ
型番
EP-50V
PX-S5080
PIXUS iP8730
製品画像
液晶ディスプレイ
2.4型
(90度角度調整可)
2.2型モノクロ
操作パネル
物理ボタン式
(90度角度調整可)
物理ボタン式
インターフェイス
USB他
USB2.0×1
USB2.0×1
USB2.0×1
無線LAN
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
有線LAN
100BASE-TX
100BASE-TX
対応OS
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 10/8.1/8/7/Vista SP1/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
耐久枚数
N/A
15万枚
N/A
外形寸法(横×奥×高)
476×369×159mm
567×424×304mm
590×331×159mm
重量
8.5kg
15.0kg
8.5kg
本体カラー
ブラック
ホワイト
ブラック

 最近では単機能プリンタでも操作パネルを備える機種が増えてきているが、EP-50VPX-S5080もその機種だ。EP-50Vは2.4型のカラー液晶を搭載しており、液晶横の物理ボタンで様々な操作が行える。液晶と操作パネルは本体前面に搭載されるが、90度まで起こして角度調整ができるため、見やすい・操作しやすい角度にする事ができる。液晶は複合機と比べれば大きくはないが十分なサイズだ。PX-S5080は2.2型のモノクロ液晶を搭載する。モノクロとは言えバックライトを搭載しており、グラフィカルな表示ではないが文字は見やすい。同じく液晶横のボタンで操作する。これらは、本体の前面から上面にかけて面取りされた部分に内蔵されており、斜めになっているため、どの角度でもある程度見やすくはなっているが、角度調整できるEP-50Vよりはやや劣る。PIXUS iP8730には液晶は搭載されない。液晶があると、前述のセットした用紙の登録が行えるだけでなく、インク残量や各種設定が行え、エラー発生時にはその内容も確認できる。利便性は大きく向上するといえる。
 インタフェースは3機種ともUSB2.0に加えてネットワーク接続が可能だ。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人には、家庭内のどのパソコンからでも印刷できるため非常に便利だろう。ただしPIXUS iP8730は無線LANのみである一方、EP-50VPX-S5080は有線LANにも対応する。無線LANはIEEE802.11nに対応しているので、無線LAN接続時でもストレス無く使用できるが、ルーターが近い場合や、壁にLANコネクタが用意されている場合、無線LANでは不安定な場合などに有線LANは重宝するため、そういった使い方を考えている人は注意が必要だ。また、3機種ともスマートフォンやタブレットからの印刷にも対応しているが、無線LANルータの無い環境でも、スマートフォンやタブレットと直接Wi-Fi接続が可能なWi-Fiダイレクトに対応しているのはEP-50VPX-S5080となる。Wi-Fiダイレクトの設定には液晶がないと非常に不便なため、これら2機種が液晶を搭載している事がWi-Fiダイレクト対応にもつながっていると言える。
 対応OSは3機種ともWindows 10/8.1/8/7/Vista/XPとMacOS 10.6.8以降となる。Windows XPはSP3が必要だ。PIXUS iP8730はWindows Vistaの場合SP1以降が必要であるが、3機種はほぼ同じと言える。耐久枚数はPX-S5080のみ公表されているが15万枚をうたっている。一般的な家庭用プリンターが1万〜1万5000枚である事を考えるとかなり高耐久に作られている安心感がある。
 本体サイズは、EP-50Vが476×369×159mm、PX-S5080は567×424×304mm、PIXUS iP8730は590×331×159mmである。EP-50Vの横幅の小ささは突出していると言える。同じA3ノビに対応しているとは思えないほどだ。奥行きはPIXUS iP8730の方が38mm小さいが、EP-50Vは前面給紙カセットを搭載している事を考えれば十分小さいと言えるだろう。A4までの用紙であれば、前面給紙カセットに入れられるEP-50Vに対して、背面給紙のスペースが必要なPIXUS iP8730では、逆転することになる。PX-S5080は横幅こそPIXUS iP8730よりやや小さいが、奥行きがEP-50Vと比べても55mm、高さも145mmも高い。ビジネス用プリンターであるためコンパクトさよりも耐久性が求められる事に加えて、前面給紙カセットも250枚を2段と多い事も原因だ。設置スペースに限りがある人は注意が必要だ。



 この3機種を見ると、価格の安いPIXUS iP8730でも基本的な機能は搭載している事が分かる一方、EP-50VPX-S5080はやはり価格の差があるだけの事はある。PIXUS iP8730と比べると、写真の印刷画質と、印刷コストで優れるEP-50V、普通紙の印刷画質と印刷スピード、耐久性に優れるPX-S5080だ。また自動両面印刷や、前面給紙カセット、交換式メンテナンスボックス、液晶と操作パネルの搭載、有線LAN対応などの面でも優れている。
 それではどの機種が良いのだろうか。まず写真印刷がメインならEP-50Vがおすすめだ。EpsonClearChrome K2インクとLCCSのおかげで、写真の画質は一般的な6色プリンターと比べても1段上で、耐保存性も高い。一方で印刷コストは低く抑えられており、印刷枚数が多かったり、A3やA4サイズのプリントも安心して行える。A4サイズまでなら前面給紙カセットに250枚もセットできるし、自動電源オンと排紙トレイの自動開閉で、普段の文書印刷も便利に作られている。一方文書メインならPX-S5080だ。PrecisionCoreのプリントヘッドと全色顔料インクによって、普通紙への印刷画質は非常に高い。印刷速度も速く、印刷コストもEP-50Vほどではないが低く抑えられている。本体の耐久枚数が高いのも魅力だ。PIXUS iP8730は写真と文書のどちらもそれなりに、他の機能も基本的な物だけというプリンターだが、3万円以上となると写真か文書のどちらかに特化したプリンターで、他にも使いやすい機能を搭載した機種が購入できる。やはり3万円以上の予算を考えている人にはPIXUS iP8730では勿体ないと言える。写真メインならEP-50V、文書メインならPX-S5080で決まりだ。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/


EP-50V
PX-S5080
PIXUS iP8730