小ネタ集
2018年末時点のプリンタ
〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜
(2019年1月19日公開)

プリンタ比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンタ比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。


2万円中盤の複合機
 
 2万円中盤のこのクラスは、上位機種と比べると多少機能が省かれる物の、まだまだ高性能な一方、購入しやすい価格になっている。エプソンはEP-811A、キヤノンはPIXUS TS6230がこの価格帯となるが、価格は23,980円と24,880円と900円差でほぼ価格差はないと言える。また、上位機種から省く機能が、メーカーによって違いがあるため、結果的に両機種には様々な点で違いが出る。どういった違いがあるのか見ていこう。

プリント(画質・速度・コスト)
メーカー
エプソン
キャノン
型番
EP-811A
PIXUS TS6230
製品画像


実売価格(メーカーWeb/税抜き)
23,980円
24,880円
インク
色数
6色
5色
インク構成
ブラック
シアン
ライトシアン
マゼンタ
ライトマゼンダ
イエロー
顔料ブラック
染料ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成
各色独立
各色独立
顔料/染料系
染料
(つよインク200)
染料/顔料(黒)
(ChromaLife100)
インク型番
イチョウ
380XL/381XL(大容量)
380/381(標準容量)
380s/381s(小容量)
ノズル数
1080ノズル
4096ノズル
各色180ノズル
C/M/顔料BK:各1024ノズル
Y/染料BK:各512ノズル
最小インクドロップサイズ
1.5pl(AdvancedMSDT)
N/A
最大解像度
5760×1440dpi
4800×1200dpi
印刷速度
L判縁なし写真(メーカー公称)
13秒
18秒
A4普通紙カラー(ISO基準)
N/A
10.0ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準)
N/A
15.0ipm
印刷コスト
L判縁なし写真
26.5円
17.3円
A4カラー文書
15.0円
9.6円
A4モノクロ文書
N/A
N/A

 まずはプリントの基本となる画質と速度、印刷コストから見ていこう。。EP-811Aは6色インクで最小インクドロップサイズは1.5pl、印刷解像度は5760×1440dpiであり、非常に高画質な印刷が可能だ。これは上位機種EP-881Aと同等であり、EP-881Aの方がインクが改良された分の僅かな差があるだけで、ほぼ同等画質と言える。ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色に、ライトシアンとライトマゼンダを搭載しており、いずれも染料インクとなる。カラー原稿の色の薄い部分ではライトインクを使う事で粒状感が抑えられる。一方、PIXUS TS6230は5色インクとなる。染料インクのブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色と顔料ブラックインクを搭載する。写真印刷時は基本4色印刷となるため、6色印刷のEP-811Aと比べると一歩劣る事になる。また、印刷解像度は4800×1200dpiとやや低く、最小インクドロップサイズも2pl程度と言われているため、粒状感の面でもやや劣ることとなる。印刷結果は十分綺麗とも言えるが、細かく見れば写真の印刷画質はEP-811Aが一歩リードだ。
 一方、PIXUS TS6230は顔料ブラックを搭載しているため、ブラックインクを使用する部分に限ってだが、普通紙などへの印刷ではメリハリのある印刷結果が得られるというメリットがある。小さな文字や中抜き文字も潰れずに印刷が可能なほか、耐水性も高いため濡れた手で触ったりマーカーを引いても滲まない。EP-811Aは染料ブラックしか搭載していないため、この点ではPIXUS TS6230の画質が上だ。ただし、黒と言っても、完全な黒ではないグレーの部分には染料のカラーインクを混ぜて作り出すし、カラーの中に混ざっている場合は顔料と染料を混ぜられないことから、染料インクが使われるなど、背景が無く完全な黒という限定があるなど、必ずしも顔料インクの恩恵を受けられるわけではない点は注意が必要だ。とはいえ、コピーや文書印刷でそういった部分は結構多く、一部だけでも全体的に引き締まった印象となるのは確かだ。一方、EP-811Aも、細線強調機能や文字くっきり機能を搭載し、普通紙では苦手な写真も色鮮やかになるようドライバレベルで文書印刷画質を高めている。あくまで、染料インクのままでの改良となるが、画質は改善され、PIXUS TS6230との差はある程度縮まっている。
 最小インクドロップサイズは非常に小さいが、EP-811AはAdvanced-MSDTという5つのインクサイズのインクを打ち分ける機能を搭載しており、必要に応じて大きなインクサイズを打ち分ける事で高速化と高画質化を両立しており、一方PIXUS TS6230もノズル数を多くすることで高速化を図っているため、L判写真フチなし印刷速度はEP-811Aが13秒、PIXUS TS6230が18秒と、上位機種と同等となっている。一方、普通紙への印刷速度はEP-811Aでは公表されていないため比較することはできないが、PIXUS TS6230はカラーが10ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、モノクロが15ipmとなっており、こちらも上位機種と同等だ。家庭用プリンタとしては非常に高速な部類に入る。
 使用するインクはEP-811Aは「つよインク200」である。アルバム保存300年、耐光性50年、耐オゾン性10年となる。一方、PIXUS TS6230は「ChromaLife100」でありアルバム保存100年を実現している。どちらも十分なレベルの耐保存性を持ったインクであるが、EP-811Aの方がさらに耐保存性は高く、耐光性なども書かれているなど一歩上回る印象だ。ちなみに、両機種とも各色独立インクとなっており、なくなった色だけ交換できる。
 印刷する上で、印刷コストも気になるはずだ。EP-811AはL判写真1枚26.5円、PIXUS TS6230が17.3円と大きな差がある。EP-811Aは上位機種と異なり大容量インクがないため、印刷コストが上がっている一方、PIXUS TS6230は上位機種と同じ大容量・標準・小容量の3種類の容量が用意される事に加え、上位機種と比べてインクが1色減っていることもあって印刷コストは比較的低めだ。A4カラー文書の印刷速度もEP-811Aの15.0円に対して9.3円と開きがある。印刷枚数が多い場合はPIXUS TS6230の方がコストを気にせず使えるだろう。ちなみに、大容量に関しては昨年までは顔料ブラックしか無かったところに今年から全色発売された形だが、6色セットはなく、基本は標準と小容量となる。L判写真は標準は17.3円だが、小容量で23.7円であり、これでもEP-811Aよりはやや安い。ちなみに大容量を使っても標準と印刷コストは変わらない。

プリント(給紙・排紙関連)
型番
EP-811A
PIXUS TS6230
製品画像
対応用紙サイズ
L判〜A4
名刺〜A4
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面
○(1枚手差し/0.6mm厚まで)
○(100枚)
前面
カセット下段(100枚)
カセット上段(2L/ハイビジョン以下)
カセット(100枚/普通紙のみ)
その他
排紙トレイ自動開閉
用紙種類・サイズ登録
○(カセット収納連動)
○(カセット収納(前面)・用紙セット(背面)連動)
用紙幅チェック機能

 続いて、給紙・排紙関連の機能を見てみよう。給紙に関しては、エプソンとキヤノンで方針が異なる。EP-811Aは前面給紙を基本としており、大小2段のカセットとなっている。上段にL判やハガキサイズなどの小さな用紙を、下段にはA4やB5といった大きな用紙をセットするようになっている。完全に本体に収納可能なので、用紙をセットしたままにしてもホコリがかかるなどの心配がないのはメリットだ。下段にA4普通紙が100枚、上段に写真用紙やハガキなら20枚までセット可能だ。また、下段にもL判やハガキサイズにの用紙もセットでき、その場合、写真用紙やハガキなら40枚セット可能となるため、上下段ともに入れれば合計で60枚までセットできる。もちろん連続で使用が可能となる。下段の用紙を入れ替える手間をかければ、大量印刷の時に重宝するだろう。前面給紙・前面排紙と言うことで気になるのが、厚紙やラベル用紙などへの対応である。前面給紙カセットでも問題ない事になっているが、前面から給紙して前面から排紙するため、内部で180度曲げられてしまうのは少し心配だ。また封筒など二重になっている用紙への印刷も不安なほか、定型サイズでない場合前面給紙カセットのガイドをあわせにくい。そこで、簡易的ながら背面給紙も行える。従来の背面給紙に近い位置だが、用紙をセットしておけるような大型のものではなく、小さな背面給紙カバーと、用紙を支える小さな「用紙サポート」を引き出せるだけだ。印刷を実行して、用紙をセットする旨のメッセージが出てから用紙を差し込みスタートボタンを押す方式さらに、通常の給紙カセットでは0.3mm厚の用紙までの対応だが、背面手差し給紙では、倍の0.6mmの用紙に印刷ができるのは、通常の背面給紙よりも便利だろう。対応用紙はL判からA4サイズまでとなる。
 一方のPIXUS TS6230は前面給紙カセット+背面給紙となっている。EP-811Aと似ているようだが、こちらは前面が1段で、代わりに背面は手差しでは無く一般的な背面給紙となっている。前面にA4普通紙、背面にL判写真用紙という風に入れておけばEP-811Aと同じような使い方となる。注意点としては、前面給紙カセットは普通紙のみという事だ。サイズもA5〜A4サイズとなる。そのため、ハガキや写真用紙、ファイン紙などは全て背面給紙を利用することとなる。また、前面給紙カセットは一見すると本体に完全収納されているようだが、この状態ではB5以下の用紙しかセットできない。A4用紙をセットする場合は、カセットを伸ばす必要があり、そうすると本体に収納した際にカセット部が45mm前に飛び出る事となる。排紙トレイよりは前に飛び出ないため、使用時は気にならないが、一番利用されると思われるA4サイズで綺麗に収納できないのは残念と言える。一方で背面給紙は普通紙もセット可能で100枚まで、前面給紙カセットも100枚なので、合計200枚までセットできるのはメリットだ。もちろん連続で使用する事ができる。写真用紙やハガキは背面給紙のみで40枚となる。背面給紙は用紙のセット時に左右のガイドを合わせるだけで良く、セットしやすい。一方でデメリットもあり、用紙をセットするために上方に空間が必要なほか、トレイが後方に傾くため、本体の後方にある程度のスペースが必要になってしまう。また、用紙をセットしたままだとホコリをかぶってしまい、その用紙が給紙されると故障の原因になる場合があるため、使わないときは取り除くのが理想だ。普通紙以外の用紙も常にセットしておくという使い方の場合、前面カセットの方が便利だと言えるだろう。なお、背面給紙からの給紙の場合でも用紙厚は0.3mmまでで、EP-811Aのような厚紙には対応しない。一方で、PIXUS TS6230はL判より小さな名刺サイズの用紙に対応する。
 両機種とも用紙の種類とサイズを登録しておく機能が搭載されている。液晶ディスプレイでメニューから登録も可能だが、前面給紙カセットを挿し込む、またはPIXUS TS6230の背面給紙は用紙をセットした際に、自動的に登録画面が表示されるため便利だ(されないようにもできる)。この登録内容と、印刷時の用紙設定が異なっている場合、メッセージが表示される仕組みだ。なお、EP-811Aはこれに加えて、印刷時に実際の用紙幅をセンサーでチェックする機能もあり、できる限り印刷ミスによる用紙とインクの無駄遣いをなくす工夫がなされている。

プリント(付加機能)
型番
EP-811A
PIXUS TS6230
製品画像
自動両面印刷
○(ファイン紙対応)
○(普通紙のみ)
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
○(オートフォトファイン!EX)
○(自動写真補正)
特定インク切れ時印刷
○(黒だけでモード・5日間のみ)
自動電源オン/オフ
○/○
○/○
廃インクタンク交換/フチなし吸収材エラー時の印刷継続
−/○
−/−

 その他、プリントの付加機能を見てみよう。まず両機種とも自動両面印刷機能を搭載している。ただし、EP-811Aは普通紙だけでなくハガキなどにも対応するため、年賀状で通信面と宛名面を用紙の差し替え無しで印刷できる一方、PIXUS TS6230は普通紙のみの対応となる。EP-811Aはそれに加えて、ファイン紙の自動両面印刷にも対応した。両面印刷ファイン紙は多数の製品が発売されており、両面印刷時の裏移りを抑えられるなど、両面印刷に適しており、高画質に両面印刷を行いたい時に便利だ。CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷機能もEP-811Aのみ搭載する。レーベル印刷のトレイを使わない時は、前面給紙カセットの下に収納できるようになっている。写真の自動補正機能としては、EP-811Aは「オートフォトファイン!EX」、PIXUS TS6230は「自動写真補正」と名称は違うものの、逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われる。EP-811Aはパソコンからの印刷時だけでなく、後述のダイレクト印刷時にも利用できる。付加機能ではEP-811Aが豊富だと言える。
 自動電源オン/オフ機能も両機種とも搭載している。自動電源オンは、印刷が実行されると自動的に電源がオンになる機能だ。無線/有線LAN接続ができるようになり、プリンタから離れた場所のパソコンやスマートフォンから印刷を実行することが増えたが、そういった際にわざわざプリンタの電源を入れに行く手間が省ける。ただし、排紙トレイが引き出された状態でないと印刷は実行されないため、排紙トレイを収納していると電源が入った状態で印刷が止まっている事になる。この点は上位機種とは異なる点だ。とはいえ排紙トレイを引き出せば印刷が実行されるところまでは進んでいるし、排紙トレイを出したままにしておけば自動的に印刷が行われる。また、指定した時間が経つと自動的に電源がオフになるため、電源オンのままにしてしまう事も無い。逆に自動電源オン機能があるので、電源を入れっぱなしにする必要もなくなる。
 EP-811Aの便利な機能が、フチなし吸収材エラー時の印刷継続機能だ。インクジェットプリンターのインクの吸収材は、2種類あり、1つはクリーニングの際などに排出されるインクを貯める廃インクタンク(メンテナンスボックス)、もう一つはフチなし印刷時に、用紙外にはみ出すインクを吸収させるフチなし吸収材 (用紙が通る部分のプラスチックが一部欠けておりその下にクッションのような吸収材)である。いずれも一杯になるとプリンターは停止してしまい修理に出して交換する必要があった。廃インクタンクは上位機種EP-881Aでは交換できるがEP-811Aでは修理対応となるが、フチなし吸収材に関しては、これを使用しないフチあり印刷に限っては印刷か継続できる機能と備える。フチなし印刷はできないとはいえ、フチなし印刷はとりあえず置いておいて、急を要するフチあり印刷を行い、余裕のあるときに修理に出すという事ができるわけだ。どちらも、長く使う事を考えた安心の機能だ。

スキャン
型番
EP-811A
PIXUS TS6230
製品画像
読み取り解像度
1200dpi(1200×2400dpi)
1200dpi(1200×2400dpi)
センサータイプ
CIS
CIS
原稿取り忘れアラーム
スキャンデーターのメモリカード保存
○(JPEG/PDF)

 続いて、スキャナ部を見てみよう。解像度は両機種とも1200dpiで同等だ。上位機種より解像度が下がっているが、反射原稿(紙などの原稿)にしか対応しないため、1200dpiでも十分すぎる解像度と言える。一般的に文書なら200〜300dpi、写真なら300〜600dpiで、よほど詳細にスキャンする場合でも1200dpiがせいぜいだ。実際写真サイズを1200dpiで取り込むと約4,200×6,000ドットとなり2500万画素相当となる点から見ても、十分だと言えるだろう。いずれもCIS方式で、厚い本の綴じ目近くなど、ガラス面から浮いてしまう原稿ではピントが合わなくなってしまう点は注意が必要だ。EP-811Aはスキャンした原稿をパソコンを使わずにメモリカードに保存する機能を搭載しているためパソコン無しで簡単にスキャンができる。また両機種とも原稿を取り忘れた際の警告機能が付いているのは便利だ。

ダイレクト印刷
型番
EP-811A
PIXUS TS6230
製品画像
カードスロット
対応メモリカード
SD
USBメモリ/外付けHDD/外付けDVD対応
○/○/○
−/−/−
メモリカードからUSBメモリ/外付けHDDへバックアップ
○/○
−/−
対応ファイル形式
JPEG
色補正機能
トリミング
フチ(白)/フチ(白)枠付き/フチ(黒)/フチ(黒)枠付き(フチ太さ4段階)
赤目補正
明るさ調整(5段階)
コントラスト(5段階)
シャープネス(5段階)
鮮やかさ(5段階)
フィルター(モノクロ/セピア)
手書き合成
PictBridge対応
○(USB/Wi-Fi)
○(Wi-Fi)
赤外線通信
各種デザイン用紙印刷
塗り絵印刷
フォーム印刷(罫線・マス目・便箋・スケジュール帳・五線譜・メッセージカード)
デザインペーパー
定型フォーム印刷(レポート用紙、原稿用紙/スケジュール用紙、方眼紙、チェックリスト、五線譜、漢字練習帳)
組み込みパターンペーパー

 ダイレクト印刷を見てみよう。これはEP-811Aのみが対応している。対応メモリカードはSDカードのみとシンプルだが、最近のデジタルカメラやスマートフォンは一部の一眼レフなどを除きSDカードかその小型版のmicroSDになっており、問題はないだろう。またメモリカードに加えて、USBメモリからの印刷にも対応している。また、各種メモリカードからUSBメモリへのバックアップが可能な他、USBメモリ以外も外付けハードディスクへのバックアップや印刷、さらに外付けDVDドライブからの印刷も行える。PictBridgeは両機種とも対応しているが、EP-811AはUSB接続とWi-Fi接続の両方式のPictBridgeに対応しているのに対して、USBポートがないPIXUS TS6230ではWi-Fi接続のPictBridgeにしか対応しない点は注意が必要だ。EP-811Aは、ただ写真のダイレクト印刷が可能なだけで無く、機能も豊富だ。一部を拡大して印刷するトリミング機能と、フチあり・フチなしの選択と赤目補正機能は当然として、フチありの場合、白フチと黒フチ、さらに枠付きと枠無しを選べ、フチの太さも4段階から選べる。明るさやコントラスト、シャープネス、鮮やかさも5段階から調整可能で、セピア調やモノクロに変換も出来るため、好みの色合いで印刷ができる。
 EP-811Aはダイレクト印刷時の機能として代表的な手書き合成シートにも対応している。その他、塗り絵風の輪郭だけの印刷や、罫線、マス目、便箋、スケジュール帳、五線譜、メッセージカードが印刷できるフォーム印刷機能、プレゼントのラッピングやブックカバーに使えるデザインペーパー印刷機能を搭載している。一方のPIXUS TS6230は原稿用紙、方眼紙、五線譜、レポート用紙、スケジュール帳、チェックリスト、漢字練習帳が印刷できる定型フォーム印刷機能とデザインペーパーと同様の組み込みパターンペーパー印刷機能を備えている。

スマホ/クラウド対応
型番
EP-811A
PIXUS TS6230
製品画像
スマートフォン連携
対応端末
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 10.0以降)
Android 4.4以降
スマートスピーカー対応
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 10.0以降)
Android 4.4以降
スマートスピーカー対応
NFC対応
写真プリント
ドキュメントプリント
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
スキャン
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
クラウド連携
スマートフォン経由/本体
○/−
○/○
オンラインストレージからの印刷
SNSからの印刷
○(コメント付き可)
○(コメント付き可)
写真共有サイトからの印刷
メールしてプリント
○(PIXUSトークプリント/LINE使用)
リモートプリント
スキャンしてリモートプリント

 スマートフォンとの連携機能は両機種とも搭載しており、iPhoneやiPod touch、iPadと、Android端末に対応している。いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることでプリント又はスキャンが行える。メインで使用すると思われる写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。さらにドキュメント印刷にも対応している。PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もできる便利だ。また、両機種ともスマートフォン上からスキャンを実行し、データをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。出かける前に紙の情報をさっとスマートフォンに転送するといった使い方ができるため便利だろう。
 スマートフォンとの接続は、無線LAN(Wi-Fi)で行うが、無線LANルータを経由する方法と、ダイレクトに接続する「Wi-Fiダイレクト」(キヤノンはダイレクト接続)が選べる。無線LANルーター経由の方がより便利に使えるため、一般的にはこちらを利用すると思われるが、Wi-Fiダイレクトの場合でもそれほど難しくは無い。特にEP-811AはiOSの場合は液晶に表示されるQRコードを読み込み、Androidの場合は一覧に自動的に表示されるようになり、設定はより簡単になった。
 また、両機種ともスマートスピーカーに対応している。AlexaとGoogleアシスタント対応端末に対応しており、声だけでテンプレートを印刷させることができる。2018年12月現在でEP-811Aは、デザインペーパー、フォトプロップス、カレンダー、ノート、方眼紙、五線譜などのエプソン独自のものと、Alexaに登録された買い物リスト、やることリストなどとの印刷に対応する。PIXUS TS6230はナンプレ、ぬりえ、レポート用紙、チェックリスト、五線譜などキャノン独自のものの印刷と、プリンターの状態の確認が行える。今後増えていくことが予想される。
 クラウドとの連携機能も両機種とも搭載されており、オンラインストレージから印刷したり、SNSの写真を印刷する事ができる。SNSの写真はコメント付きでも印刷が可能だ。またPIXUS TS6230は写真共有サイトからの印刷も可能だ。ここで大きな違いは、EP-811Aはスマートフォンのアプリとして搭載しているのに対して、PIXUS TS6230はスマートフォン上だけでなく、プリンタ単体でもクラウドにアクセスし印刷ができる点が上げられる。実際の操作性はスマートフォンからの方が上だが、選択肢が広いという点ではPIXUS TS6230が便利だ。
 さらにネットワークを利用したプリント機能として、EP-811Aは、印刷したい写真や文書を本機にメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、スキャンした画像を離れた場所の対応複合機で印刷できる「メールdeリモート印刷」、通常のプリント同じ操作で、離れた場所のEP-811Aで印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。一方のPIXUS TS6230はLINEを利用した「PIXUSトークプリント」に対応しており、LINE上でPIXUS TS6230と友達設定をし、トーク画面から写真を送信すると印刷される。専用アプリを使用しないという点では便利だが、印刷できるのは写真のみとなる。リモートプリント機能はEP-811Aの方が豊富だ。

コピー機能
型番
EP-811A
PIXUS TS6230
製品画像
等倍コピー
拡大縮小
倍率指定
○(25〜400%)
○(25〜400%)
オートフィット
定型変倍
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー
○(退色復元対応)
○(色あせ補正対応)
割り付け(2面/4面)
○/−
○/○
バラエティコピー
見開きコピー
IDコピー
ミラーコピー
塗り絵コピー
リピートコピー
背景除去機能
文字くっきり機能
枠消しコピー
IDコピー

 コピー機能を見てみよう。単純なコピー機能としては、両機種とも単純な等倍コピーだけでなく、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「オートフィット」機能や、原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行う「定型変倍」機能、さらに25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える機能を搭載した高性能な物だ。またCD/DVD/Blu-rayレーベル印刷に対応したEP-811Aは、レーベルコピーにも対応する。さらに、両機種とも原稿面に写真を複数枚置き、焼き増し風のコピーを行うことも出来る。この際、EP-811Aは「退色復元」、PIXUS TS6230は「色あせ補正」と名称は異なるが、両機種とも昔の色あせした写真も自動で補正してくれる機能も備えている。両機種とも2枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2アップにも対応する。さらにPIXUS TS6230は4枚の原稿を1枚に縮小する4アップにも対応している。その他、EP-811Aはコピー時にも「塗り絵印刷」が行える他、アイロンプリント紙への印刷時に使える「ミラーコピー」、免許証などの裏表をそれぞれスキャンして1枚の用紙に並べて印刷する「IDコピー」、同じ内容を2面、4面、または用紙サイズに合わせて自動的に割り付ける「リピートコピー」機能を搭載する。また、背景の色を白にして見やすくする「背景除去機能」も備えている。一方PIXUS TS6230は厚手の原稿など原稿台のカバーが浮いてしまう場合に黒くなる部分を消去する「枠消しコピー」機能と、免許証などの裏表をそれぞれスキャンして1枚の用紙に並べて印刷する「IDコピー」機能を備える。それぞれ機能は異なるが、複合機単独で様々なコピーが行えるよう工夫されている。

操作パネル/インタフェース/本体サイズ
型番
EP-811A
PIXUS TS6230
製品画像
液晶ディスプレイ
2.7型
(90度角度調整可)
3.0型
(90度角度調整可)
操作パネル
静電式ボタン式
(90度角度調整可)
タッチパネル液晶+物理ボタン
(90度角度調整可)
インターフェイス
USB他
USB2.0×1
USB2.0×1
無線LAN
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(ダイレクト接続対応)
有線LAN
対応OS
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.10.5〜(AirPrint利用)
外形寸法(横×奥×高)
390×339×141mm
372×315×139mm
(前面給紙カセット伸張時372×360×139mm)
重量
6.9kg
6.2kg
本体カラー
ホワイト/ブラック
ブラック/ホワイト

 操作パネルと液晶ディスプレイは本体前面に取り付けられ、液晶ディスプレイだけでなく操作パネル全体を持ち上げて角度調整が可能となっている点では2機種とも同等だ。最大90度まで起こすことができるので、垂直から水平まで見やすい角度で操作ができるよう工夫されている。液晶もEP-811Aが2.7型、PIXUS TS6230が3.0型とほぼ同等だ。だだし、EP-811Aは、静電式のボタンでの操作となるのに対して、PIXUS TS6230はタッチパネル液晶になっている点が異なる。PIXUS TS6230も「スタート」や「ストップ」、「ホーム」、「戻る」といったボタンは、物理ボタンで用意されるが、それ以外の操作は液晶を直接タッチして操作できるので使いやすい。EP-811Aも静電式ボタンであるため、見た目はPIXUS TS6230以上にすっきりはしているが、操作性ではやや劣る。とはいえ液晶が大きいため、操作性が悪いわけでは無い。本体での操作が多いならPIXUS TS6230の方が使いやすいだろう。
 インタフェースは両機種ともUSB2.0に加えて、無線LAN(Wi-Fi)接続にも対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、無線LAN(Wi-Fi)ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。その場合、EP-811A/PIXUS TS6230を無線LANルーターに接続しておけば、家庭内のどのパソコンでもプリント可能となり非常に便利だろう。またスマートフォンやタブレットからの印刷も可能となる。またWi-Fiダイレクト(キヤノンはダイレクト接続)に対応しているため、無線LANルータの無い環境でも、スマートフォンやタブレットと直接Wi-Fi接続が可能となっている点も共通の便利な点だ。
 対応OSはメーカーによる差が大きい。EP-811AはWindows XP SP3以降は全て対応する。MacOSもダウンロード対応とはなるが10.6.8以降に対応する。マイクロソフトのサポートの終了したWindows XPやVistaにも対応するのは安心だ。一方、PIXUS TS6230はWindows 7 SP1/8.1/10のみの対応だ。Windows XPやVistaだけでなく、Windows 8も非対応である点は注意が必要だ。MacOSも10.10.5以降となっただけでなく、ドライバはキヤノンからは提供されず、AirPrintを使用する方法となった。
 本体サイズを見てみよう。EP-811Aが390×339×141mm、PIXUS TS6230が372×315×139mmとなる。全体的にPIXUS TS6230がコンパクトに見える。しかし、前述のようにPIXUS TS6230はA4用紙を前面給紙カセットに入れる場合はカセットが前に45mm飛び出るため、奥行きは360mmとなる。その分を考えればEP-811Aの方が設置スペースは小さいとも言える。また背面給紙を使用する場合、EP-811Aでは手差しであるため給紙するまで手支えてやれば、壁ギリギリでも使えるが、PIXUS TS6230は背面給紙が斜めに開く分、後方にスペースが必要だ。その点で見ればEP-811Aの方が実際の設置スペースは小さくて済むだろう。ちなみに本体のカラーバリエーションは両機種ともホワイトとブラックを用意している。



 上位機種から省かれた機能が両機種で異なるため、結果的に方向性の違いが出ている。上位機種EP-881Aのように、様々な用途で使いたいが、少し安く購入したいという人にはEP-811Aがおすすめだ。画質や速度面ではEP-881Aと同等で、自動両面印刷やレーベル印刷、メモリカードからのダイレクトプリントにも対応する点でも同等だ。自動電源オンやタッチパネル液晶がないなど、多少使い勝手は劣るが、オールマイティーに使える性能を備えていると言える。EP-811Aの問題は印刷コストだろう。EP-881Aより写真印刷で約6円、A4カラー文書で約3円高い。その点ではPIXUS TS6230は上位機種より安く、EP-811Aとの比較では写真が9.2円、A4カラー文書が5.4円安い。ただし画質が劣る点や、両面印刷が普通紙のみでレーベル印刷機能にも非対応であるなど、様々な面でEP-811Aに劣る面が多い。メモリカードからのダイレクトプリントにも非対応である事からも、写真印刷向けではなく、文書印刷やコピーが主体の人向けだ。顔料ブラックインクを搭載する点でも有利で、タッチパネル液晶もコピーなどの操作に便利だ。文書印刷やコピーがメインで、印刷コストを抑えたい場合はPIXUS TS6230が、写真印刷もするという場合や、使い方が定まっていない場合も、機能が豊富なEP-811Aがオススメだ。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/


EP-811AW
(ホワイト)
EP-811AB
(ブラック)
PIXUS TS6230BK
(ブラック)
PIXUS TS6230WH
(ホワイト)