2018年末時点のプリンタ 〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜 (2019年1月19日公開・2019年5月3日最終更新)
2018年8月2日にキャノン、2018年8月30日にエプソンから2018年末の年賀状商戦に向けた新製品が発表された。発売は9月〜10月になるが、例年より少し早い発表だ。そこで、2018年末時点での全体的な傾向、そして両メーカーの傾向を検証した上で、家庭向け複合機、FAX機能付きA3複合機、FAX付きA4複合機、エコタンク・特大容量搭載プリンタ、A2単機能プリンタ、A3単機能プリンタ、A4単機能プリンタ、コンパクト・モバイルプリンタ、年賀状プリンタの9種類を価格帯別に比較していく。各比較は、独立したページとして用意してあるので、下記のリンクから飛んで頂きたい。
家庭用プリンタに関しては、1年に1回の新機種が発表は続いているものの、近年では機能面での大きな変化が少ない状態が続いていた。また、全機種が新機種に移行するのでは無く、一部は継続販売というパターンも増えてきた。しかし、最近では新たな方向性である「低印刷コスト」が話題に上がっている。エプソンはエコタンク搭載プリンターとして他社に先行しており、機種数も徐々に増やしていた。今年はさらに1機種追加され、カラー複合機はついに6機種となった。また新機種だけで無く、既存の機種の一部にもホワイトモデルを追加し、ブラックとの2色展開とし、より強化している。一方のキャノンも、ようやく特大容量タンク搭載プリンターを2機種、今年の春に発売した。年末は機種の切り替えや追加は無いが、ようやく選択肢ができた格好だ。 その他両社とも、ラインナップの弱点を改善してきている傾向がある。エプソンは去年、長年継続販売していたA3単機能プリンターのうち、写真向けの機種を新機種へと移行した。今年は残る文書向けの機種も同じ本体の新機種へと移行した。キャノンに比べてA3単機能プリンターは古いために本体が大きかったが、一気に小型化を果たした。一方のキャノンはラインナップに無かったA3プリントA4スキャンの機種をついに発表した他、FAX機能付き複合機の下位モデルも発表した。A3プリントA4スキャンの機種はエプソンにはずいぶん前からあり、ようやく対抗製品が発表された形だ。FAX機能付き複合機も完全ビジネス向けのMAXIFYシリーズでは2万円以下の機種があったものの、一般的に使える機種としてはPIXUS TR7530が2万円を超えており、低価格帯が弱かったことから、今回の機種の追加になったものと思われる。 一方、本命の家庭向けの複合機は変化が少ない。エプソンはA4複合機では最上位と最下位モデルを除く3機種のみ新機種に移行、キャノンは最上位機種を除く6機種が新機種になったものの、下位3モデルに関しては徹底的に比較しても変更点が見つからないほどで、多少の機能やデザイン変更があったのは3機種のみだ。すでに機能面では搭載しきった感もあり、ラインナップも安定しているのか、変化の少ない最新モデルと言える。
それでは、最新のエプソンのラインナップは、2016年末と比べてどのようになっているか見てみよう。
複合機を見てみると、A3プリント対応のEP-10VAとEP-979A3、さらにA4プリント対応の最上位モデルEP-30VAと最下位のPX-049Aが継続販売となる。EP-880AがEP-881A、EP-810AがEP-811A、EP-710AがEP-711Aに純粋に1の位が1上がった形となる。3機種に共通する進化点として、「フチなし吸収材エラー時の印刷継続」機能がある。インクジェットプリンターのインクの吸収材は、2種類ある。一つは電源を切った際にインクカートリッジが戻る位置の下あたりにある、廃インクタンクである。クリーニングなどを実行した際に出るインクを吸収するものだ。一方、フチなし印刷を行う場合、用紙のフチギリギリに印刷するのは用紙の微妙なズレなどを考えると難しいため、少し大きめに印刷し用紙からはみ出す部分は吸収材で吸収させるという方式をとっている。用紙が通る部分のプラスチックが一部欠けておりその下にクッションのような吸収材が見えるが、これがフチなし吸収材だ。これまでのプリンターはどちらかが一杯になると警告が表示されてプリンターが一切動かなくなり、修理するしか方法がなかった。ところが2世代前のEP-879Aから、廃インクタンクに関してはメンテナンスボックスという名称でユーザー自身での交換が可能になっていた。この機能はEP-881Aでも継続されており、逆にEP-811AやEP-711Aには搭載されない。一方、フチなし吸収材の方は簡単に交換できる構造にはできないため、こちらは修理対応とされてきた。今回は修理対応ではあるものの、この吸収材にインクが落ちることがない「フチあり」印刷に関しては印刷を継続できるようにしたのだ。フチなし印刷はできないとはいえ、フチなし印刷はとりあえず置いておいて、急を要するフチあり印刷を行い、余裕のあるときに修理に出すという事ができるわけだ。いざというときに便利な変更点と言えるだろう。 それ以外の共通の新機能として、スマートスピーカーへの対応がある。AlexaとGoogleアシスタント対応端末に対応しており、声だけでテンプレートを印刷させることができる。2018年12月現在でプリントできるのはデザインペーパー、フォトプロップス、カレンダー、ノート、方眼紙、五線譜などのエプソン独自のものと、Alexaに登録された買い物リスト、やることリストなどとなる。ただし旧機種も同時に対応たため、新機種のみの機能ではない。 EP-881Aに関してはインクが変更されている。これまで「クマノミ」型番だったが「カメ」型番へと変更された。とはいえ画質などに影響は無く、量と価格が変更されている。「クマノミ」の増量タイプは1色1,260円、6色パックは7,330円だったが、「カメ」の増量タイプは1色1,200円、6色パックは6,980円となった。一方で印刷コストは同じL判写真1枚20.6円、A4カラー文書12.0円なので、少しだけ量を減らし、その分価格を下げたと言える。交換頻度は若干増えたが、販売価格が7,000円を切るという印象の方が重要だという事だろう。ちなみに標準容量のタイプも「クマノミ」の3,960円から「カメ」では3,840円に値下げされている。コピー機能に「リピートコピー」機能も搭載された。一般的な割り付けとは異なり、同じ内容を割り付ける機能だ。例えばA4やA5の原稿を、A4に2面や4面割り付けるといった使い方だ。チラシや手書きメモをコピーする際などに便利だ。また、定型でない原稿でも原稿サイズを認識し、用紙に並べ手印刷するという「自動」割り付けも行える。名前シールのコピーなどに便利だ。その他、カラーバリエーションは同じながら、EP-880Aの前面はどの色も光沢感がなかったが、EP-881Aではブラックとレッドは光沢のある質感に変更され、少々イメージが変わっている。 EP-811Aは前述のフチなし吸収材エラー時にフチあり印刷が可能になったほかは、液晶内のデザインが変更された。EP-810Aでは旧タイプのメニューデザインだったが、EP-881Aなどの新デザインへと変更された。それに伴ってカレンダー印刷やデザインペーパー印刷機能などが追加されている。コピー機能にリピートコピー機能も追加されている。デザインもほぼ一緒だが、操作パネル下、前面給紙カセット部の手かけがEP-810Aではくぼみだけだったのが、押込式のカバーが付き、よりフラットですっきりしたデザインに変更されている。EP-711Aは前述のフチなし吸収材エラー時にフチあり印刷が可能になった点が唯一の変更点だ。 FAX機能付き複合機に関してはA3、A4共に継続販売だ。一方エコタンク搭載プリンターは従来の5機種が継続販売で、1機種追加されている。追加されたのはEW-M630Tで、型番からわかるとおりEW-M571TとEW-M670FTの間の製品だ。機能的には、EW-M670FTからFAX機能とADFを省き、操作パネルをボタン式に、前面給紙カセットの給紙枚数を250枚から150枚に減らしただけの製品だ。FAX機能は不要だが、高速で高画質な普通紙印刷や前面給紙を希望する人に向けた製品と言える。EW-M571Tと比べると、普通紙の印刷画質と印刷速度の向上、背面給紙から前面給紙への変更、コピー機能の強化、有線LANの搭載や液晶の大型化などが図られた一方、SDカードスロットが省かれ、より文書印刷に特化した機種になっている。なお、EW-M630Tは本体色にブラックとホワイトの2色が選べるが、同時にEW-M770T、EW-M670FT、EW-M571Tにもホワイトモデルが追加されている。型番上は、EW-M630Tだけブラックとホワイトが同時発売なので、EW-M630TB、EW-M630TWと色を示す「B」と「W」が付く一方、ホワイトが追加された3機種はブラックに関してはそのまま、ホワイトだけ「W」が付くので、ブラックがEW-M770T、ホワイトがEW-M770TWのようになる。なお、表には掲載していないが、エコタンクのモノクロプリンターとしてPX-S170TとPX-S170UTが追加されている。従来のPX-S160Tと比べると、「挿すだけ満タン」インクタンク方式となった他、給紙が前面給紙トレイからとなり、本体の耐久枚数も強化されている。 A2ノビ、A3ノビ、A4単機能プリンターに関しては1機種を除いて継続販売だ。その1機種はPX-S5010で、PX-1004の後継機種となる。昨年、写真向けのA3単機能プリンターEP-4004は6年ぶりに新機種EP-50Vとなったが、今回はPX-1004が新機種となった。EP-4004とPX-1004の時と同じく、同じ本体を利用しておりカラーだけホワイトになっている。A4普通紙が200枚入る前面給紙カセットと50枚セットできA3ノビ対応の背面給紙の2方向給紙で、A4までの自動両面印刷や、自動電源オン・オフ機能、排紙トレイの自動開閉、スマホ対応や2.4型の液晶を内蔵している点まで同じだ。インクは全色顔料インクで、黒を2本入れる4色5本構成となる。この点はPX-1004と同じだ。本体サイズもEP-50Vと同じだが、無線LANのみ、IEEE802.1acと11aに対応したのが新しい。PX-1004との比較では、世代が違いすぎで全く違うと言ってしまいたくなるほど。インクは59番からIB06(めがね)に変更され、カラーのノズル数が増加、A4普通紙印刷速度は、カラー5.5ipm、モノクロ15.0ipmから、それぞれ11.0ipmと18.0ipmとなった。カラーに関しては上位モデルPX-S5080より高速だ。印刷コストはA4カラー文書6.6円、モノクロ文書2.6円から、それぞれ8.6円、2.7円となった。給紙は、前述のように前面給紙カセット(A4まで)と、背面給紙(A3ノビまで)の2方向となり、背面給紙のみだったPX-1004より便利に、また給紙枚数も100枚から200+50枚に増加した。自動電源オン・オフや排紙トレイ自動開閉機能も搭載し、プリンターの前にいなくても自動で印刷が行われる。A4までだが自動両面印刷にも対応、また廃インクタンク(メンテナンスボックス)の交換にも対応し、長く使っても安心になっている。新たにスマホからのプリントにも対応、PX-S5010にメールをして添付ファイルを印刷する「メールプリント」機能や、自宅にいなくても普通の印刷操作で自宅のPX-S5010に印刷ができる「リモートプリント」機能も搭載している。インタフェースもUSBのみだったPX-1004から、無線LAN、有線LANの両方に対応、角度調整可能な2.4型液晶と操作パネルも搭載された。耐久枚数も1.8万枚から5万枚へと強化されている。それでいて、本体サイズは616×322×214mmから476×369×159mmに大幅に小型化している。 その他、年賀状が作成できるプリンタPF-81は機能そのまま、内蔵イラストと付属のイラストSDだけを2019年版に変更したPF-81-2019に、コンパクトプリンタPF-71とモバイルプリンタPX-S05は継続販売となる。
今年のラインナップが去年と比べてどのようになっているか、まずは見てみよう。
キャノンは家庭向けのA4複合機はPIXUS XK70を除く5機種が新機種に移行し、1機種追加されているものの変更点は少ない。その中で、共通の特徴が何点かある。まずインクに関して、昨年、インクカートリッジが381/380番に変更された際、標準容量インク(381/380)と小容量インク(381s/380s)の2種類となり、大容量インクは顔料ブラックのみとなった。それに伴い、全体的に印刷コストは上がっていた。今年は新たに、染料5色にも大容量タイプが用意されることとなった。つまり全色で大容量、標準容量、小容量が選べるようになったのだ。ただし、371/370番の時とは異なり、大容量インクと標準容量インクでは印刷コストに差はない。つまり、交換の手間が少なくなるというだけだ。印刷コストがそのまま大容量になったので、カートリッジ価格は高めで、従来よりあった顔料ブラックは1,630円、染料5色は各1,740円となり、全色そろえると1万円を超えてしまう事となった。ただ、これは去年の機種でも使えるため、インクのバリエーションが増えたに過ぎない。従来127×127mmのスクエアサイズの用紙に対応していた機種は89×89mmのスクエア用紙に新たに対応した。オリジナルマグネットシートにも対応したが、これは旧機種でも利用可能だ。またレーベル印刷に対応している機種は、レーベル印刷用トレイの挿し込み口を利用した「オリジナルネイルプリントシール」に対応した。また、定型フォーム印刷機能を搭載していた機種には、新たに組み込みパターンペーパー印刷機能が追加された。カラフルなパターン模様を全面に印刷できる。スクラップブックの台紙やブックカバーなどに利用できるという。スマホ関連では、新たにスマートスピーカーに対応、音声操作でナンプレや塗り絵、レポート用紙、チェックリスト、五線譜などを印刷できるようになったが、これは旧機種でも利用可能だ。また「PIXUSトークプリント」というアプリも追加されたが、こちらも旧機種でも利用できる。これはLINEを利用した写真印刷方法で、プリンター本体に表示されるQRコードから、プリンターをLINEの友達に追加する。あとは写真をトーク画面から送信するとプリントされる仕組みだ。このように細かな新機能が追加されているものの、一部は旧機種でも利用可能で、今年の機種のみ対応しているのは89×89mm用紙とオリジナルネイルプリントシール対応、組み込みパターンペーパーの印刷の3点となる。 PIXUS XK80はPIXUS XK50の後継機種だ。PXIUS XK70は継続販売なので、上位機種と下位機種で数字の大小が逆転したことになる。共通の追加機能3点以外では、L判写真印刷コストが12.5円から12.6円になったこと、デザインがPIXUS XK70と同じ角張ったデザインになり、奥行きが5mm小さくなったほか、本体色がグレーメタリックからメタリックシルバーに変更されたくらいだ。PIXUS T8230はPIXUS TS8130の後継機種で、デザインがPIXUS XK70と同じ角張ったデザインとなり、イメージが変わった。A4カラー文書の印刷コストが9.6円から9.9円に上がっているが、これはPIXUS TS8130が染料は標準インク、顔料ブラックは大容量インクを利用した場合なのに対して、染料インクも大容量インクに対応したためPIXUS TS8230は全色大容量または標準インクに統一した場合の印刷コストになっているためだ。その他は前述の共通の追加機能3点だけだ。PIXUS TS8230はPIXUS TS6130の後継機種だ。一番の変化はL判写真の印刷速度で31秒から18秒に高速化し、上位機種と同等になっている事だ。普通紙の印刷速度は変わっていない。PIXUS TS8230同様、インクの組み合わせの違いにより印刷コストに微妙な違いが出ているほかは、89×89mmスクエア用紙対応とパターンペーパー印刷機能のみだ。PIXUS TS5130SはPIXUS TS130の後継機種だが、上位機種と異なり型番に100が追加されるのでは無く、後ろにSが付いただけだ。実際細かく見ても変更点が皆無となっている。これはPIXUS TS3130の後継機種PIXUS TS3130Sにも言えることだ。一方、特殊な機種がPIXUS TS5030Sである。この機種の前機種のPIXUS TS5030は2年前の機種で、去年この機種の後継機種としてPIXUS TS5130が登場しているのである。今年はPIXUS TS5130に後継機種が発売されただけで無く、1つ前の機種からも後継機種が登場して、2つに分かれた格好となったのだ。元々PIXUS TS5030とPIXUS TS5130は後継製品と呼べないほど正反対の機種だっただけに、ラインナップ上は問題なさそうだ。機能としてはPIXUS TS5030と全く変化が無く、唯一、本体カラーにブラックとホワイトに加えてグレーが追加されたくらいだ。逆に、2年前の機種をベースにしているため、ラインナップの中では異質な存在である。インクは380/381番ではなく370/371番で、そのために印刷コストも安い。また、対応OSにWindows Vistaが入っている(他の機種はWindows 7以降)。 新たに登場したのがA3プリントA4スキャンの複合機だ。それがTR9530である。ちなみにこの機種と後述のTR4530に関してはPIXUSのブランド名が付かず、他のPIXUS TR8530などと同シリーズながらPIXUSを冠するものとそうでない機種が混在する形となった。TR9530は他のTR/PIXUS TRシリーズとは異なりFAX機能は搭載していない。基本的にはPIXUS TS6230をベースにしているが、背面給紙をA3に対応させている。前面給紙カセットはA4までだ。この点ではエプソンのEP-979A3やEP-10VAなどと同じ方式だ。ただ、PIXUS TS6230の背面給紙は手差しでは無く一般的なトレイであるため、A3用紙も連続給紙が可能だ。画質面や速度面ではPIXUS TS6230と同等だが、自動両面印刷はハガキ対応、ディスクのレーベル印刷にも対応し、液晶も4.3型に大型化するなど、一部上位モデルPIXUS TS8230の機能も含んでいる。またADFを搭載しているため、20枚までの連続給紙に対応しているほか、ADF手動両面コピーやページ順コピーを搭載している。さらにA3プリントに対応したことで、A3原稿を2回に分けてスキャンすることで、自動で合成して継ぎ目のないA3サイズでコピーできる「大判原稿コピー」と、A4のバラ原稿を自動で割り付けし、A3見開き冊子の形でコピーができる「冊子レイアウトコピー」機能が新たに搭載されている。本体サイズは468×366×193mmで高さと奥行きはADFの分もあるとして、横幅はPIXUS TS6230の372mmの96mm大きくなっている。A4とA3の横幅の違いは87mmなので、ほぼ使えるようになった用紙の差だけ本体も大きくなったと言える。 もう一機種TR4530も追加されている。こちらはFAX付き複合機の下位機種という扱いだ。PIXUS TS3130SをベースにFAX機能とADFを搭載したような機種だ。インクカートリッジやノズル数、印刷コストは同じだが、普通紙の印刷速度は若干高速化されている。また給紙方式は前面給紙トレイとなった。カセット方式ではなく、前面パネルを開いた上に用紙をセットする方式なので、用紙をセットしたままだと前面パネルが閉じられず、ほこりも積もる。普通紙のみだが自動両面印刷にも対応した。ADFを搭載し20枚までの原稿を連続スキャンできる。液晶は2行のモノクロながらPIXUS TS3130Sのセグメント液晶(2桁の数字と固定表示)では無く、漢字も表示できる。そのため拡大縮小コピーや「ページ順コピー」「枠消しコピー」「IDコピー」機能も備える。操作パネルは上面左側に縦長に配置されるが、FAX用のテンキーの他、一般のボタンも増えているため、ボタン数はかなり多めとなった。FAX機能は、一つ上位のPIXUS TR7530と比べると、通信速度や画質設定、自動リダイヤルやグループダイヤルなど一通りの機能は同様に備えているものの、受信ファックスの保存ページが、PIXUS TR7530の250枚/30件から50枚/20件、短縮ダイヤルが100件から20件と、全体にメモリー量が少なくなっている。その他のFAX機能付き複合機、MAXIFYシリーズ4機種とPIXUS TRシリーズ2機種は継続販売となる。 2018年春には特大容量タンク搭載の複合機と単機能プリンターが各1機種ずつ発売された。エプソンのエコタンク搭載プリンター同様、本体内蔵のインクタンクにボトルからインクを補充する方式で、印刷コストが大幅に安い機種だ。海外ではすでに販売されていたが、満を持して国内でも発売開始となった。複合機がG3310、単機能プリンターがG1310である。いずれもPIXUSやMAXIFYのブランド名は冠さずGシリーズとなっている。G3310はPIXUS TS3130Sと似た本体に特大容量タンクを搭載したような機種である。ノズル数はやや多いため普通紙の印刷速度はやや速く、カラー5.0ipm、モノクロ8.8ipmとなる。L判写真は51秒だ。印刷コストはA4カラー文書が0.8円、A4モノクロ文書が0.3円となる。なお、インクタンクの方式は、エプソンの1世代目のエコタンクと同じ、大きめの注入口にタンクの先端を射し込んで、ボトルを押して目視で満タンまで注入する方式だ。挿すと注入が始まり、自動で満タンになるとストップし、違う注入口には挿さらないように工夫されている、「挿すだけ満タン」インク方式となった、エプソンのエコタンクと比べると古い方式となる。給紙は背面で、自動両面印刷機能などは搭載せず、スキャナは600dpi、メモリカードからのダイレクト印刷機能なども持たない。液晶はPIXUS TS3130と比べると同じセグメント液晶ながら、1.2型と小さくなり、2桁の数字以外はアイコンしか表示されず、用紙サイズの選択が無くなった。そのためコピーかA4普通紙への等倍コピーのみとなる。Windows 10/8.1/7には対応するがMacには完全非対応なので注意が必要だ。USB接続と無線LAN接続に対応し、本体サイズは445×330×163mmと最近の複合機としては大きめだ。G1310はG3310からスキャナ部分を取り外したような機種で、プリント部の機能は同等だ。デザインもスキャナ部が無くなっただけである。ただし、無線LANを搭載していないため、スマホには非対応となっている。 単機能プリンタとしてはA2対応の1機種、A3ノビ対応の4機種、モバイルの1機種は継続販売だ。A4対応の3機種のうちビジネス向けのMAXIFYとPIXUSシリーズの上位モデルは継続販売、下位モデルのPIXUS iP2700は久々に新機種となりPIXUS TS203となった。PIXUS iP2700では排紙トレイもないという徹底的なコストダウンが図られていたが、PIXUS TS203では排紙トレイも搭載された。デザインは全体に平面的になっている。インク構成やカラー3色一体カートリッジという点は踏襲しながら、インクは310/311番から、345/346となった。だたし、310/311番インクはChromaLife 100+となっており、アルバム保存300年、耐光性30年、耐オゾン性10年をうたっていたが、345/346番は、その下のChromaLife 100(アルバム保存100年)にも対応しておらず、写真の耐保存性は下がっている。ノズル数も若干減り、L判写真は46秒から52秒、A4カラー文書は4.8ipmから4.0ipmに下がった。A4モノクロ文書だけ、7.0ipmから7.7ipmに高速化している。印刷コストもL判写真は23.3円から21.7円に下がった一方、A4カラー文書は13.6円から14.1円に上がっている。対応用紙はPIXUS iP2700の名刺〜A4対応から、PIXUS TS203ではL判〜A4サイズと、名刺に非対応となっただけで無く、正式に対応しているのはL版/KG/はがき/A4/レターのみとなり、B5、A5、2L、六切サイズ、各種封筒、往復ハガキが「使用可能用紙サイズ」から削除されている。とはいえ、非定型の場合は89×127mmから215.9〜676mmまで対応しており、サイズを指定すればB5などのサイズにも対応できる。一方、フチ無し印刷に関しては、はがき・L判・KGのみとなっており、2LやA4など、これより大きなサイズのフチなし印刷はできない。また、セット可能な枚数もPIXUS iP2700の100枚からPIXUS TS203では60枚と減らされており、ハガキも40枚から20枚に減っている。PIXUS TS203では新たに用紙サイズを登録する機能が搭載されている。登録内容と、印刷時の用紙設定が異なっている場合、メッセージが表示される仕組みで、印刷ミスを減らすためだが、複合機のように液晶を使って用紙サイズと用紙種類を自由に選択できるのとは異なる。切り替えボタンにより、「レター/KG」と「A4/はがき/L判」の2択を選ぶだけだ。インタフェースはUSB2.0のみで、無線LANなどは搭載されていない。対応OSは新製品という事で、Windows 7 SP1以上(8非対応)またはMacOS 10.10.15以上となる。Macの場合、専用ドライバは用意されず、MacOS標準印刷機能を利用する。サイズはPIXUS iP2700の445×250×130mmから426×255×131mmとなり、若干小型化している。
各機種を詳しく見てみよう。価格帯別の比較、独立したページとして用意してあるので、下記のリンクから飛んで頂きたい。なお価格は、このページの作成時点(2018年10〜11月)でのメーカーのオンラインショップの価格(税別)としている。家電量販店やパソコンショップなどの実際の価格とは異なる場合があるのでご了承いただきたい。 (H.Intel) 今回の関連メーカー エプソンホームページ http://www.epson.jp/ キャノンホームページ http://canon.jp/ |