小ネタ集
2018年末時点のプリンタ
〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜
(2019年4月15日公開)

プリンタ比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンタ比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。


A3対応FAX機能付き複合機
 
 A3ノビのプリントとA3のスキャンに対応したFAX機能付き複合機である。キャノンに該当する機種がないため、エプソンの3機種「PX-M5081F」「PX-M5080F」「EW-M5071FT」の比較となる。デザイン的には非常に似ており、機能面での差の小さい3機種だが、価格はそれぞれ42,980円、32,980円、109,980円とかなりの差となる。各機能を細かく見ていくことで、この価格差に見合う価値があるのかを検証する。

プリント(画質・速度・コスト)
メーカー
エプソン
エプソン
エプソン
型番
PX-M5081F
PX-M5080F
EW-M5071FT
製品画像
実売価格(メーカーWeb/税抜き)
42,980円
32,980円
109,980円
インク
色数
4色
4色
4色
インク構成
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成
各色独立
各色独立
各色独立インクタンク
顔料/染料系
顔料
(つよインク200X)
顔料
(つよインク200X)
染料(カラー)/顔料(黒)
(アルバム保存300年/耐光性7年/耐オゾン性半年〜1年)
インク型番
76番(大容量)
74番(標準容量)
76番(大容量)
74番(標準容量)
クツ(顔料)
ハサミ(染料)
ノズル数
1568ノズル
1568ノズル
1568ノズル
カラー:各256ノズル
黒:800ノズル
カラー:各256ノズル
黒:800ノズル
カラー:各256ノズル
黒:800ノズル
最小インクドロップサイズ
2.8pl(MSDT)
2.8pl(MSDT)
2.8pl(MSDT)
最大解像度
4800×2400dpi
4800×2400dpi
4800×2400dpi
PrecisionCoreプリントヘッド
印刷速度
L判縁なし写真(メーカー公称)
N/A
N/A
39秒(フチあり)
A4普通紙カラー(ISO基準)
10.0ipm
10.0ipm
10.0ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準)
18.0ipm
18.0ipm
18.0ipm
印刷コスト
L判縁なし写真
N/A
N/A
5.2円(フチあり)
A4カラー文書
7.6円
7.6円
0.8円
A4モノクロ文書
2.5円
2.5円
0.4円

 それでは、プリントの画質・速度・コスト面を見てみよう。3機種とも4色インク構成というのは同等だ。最小インクドロップサイズが2.8plで、印刷解像度が4800×2400dpiというのも同等だ。ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの4色を使うのは同等だが、インク自体が異なっている。PX-M5081F/PX-M5080Fは4色とも顔料インクとなる。顔料インクは普通紙への印刷時に染料インクのような用紙へのしみこみが少なく、インクが広がりにくいので、クッキリとしたメリハリのある印刷が行えるというメリットがある。そのため、細かな線や小さな文字、中抜き文字もつぶれず綺麗に印刷できる。また、耐水性も高いというメリットもあり、濡れた手で触ったりマーカーで線を引いても滲まない点も便利である。そのため、パソコンから普通紙への印刷や、普通紙コピー、年賀状印刷に向いている他、FAX機能を使う時も、受信したFAXを普通紙に印刷する際に高画質、高耐水で印刷が出来る。ただし、顔料インクにはデメリットもあり、写真用紙に印刷すると、発色はあまり良くなく、また写真用紙本来の光沢感も薄れポストカードのような鈍い光り方になってしまう。色数や最小インクドロップサイズから見ても写真向けとは言えないが、インクの面でも向いているとは言いがたい。一方、EW-M5071FTは同じ4色ながら、型番の「EW」が示すように、ブラックインクが顔料、カラーインクが染料となる。そのため、写真印刷時は染料インクを使用することが出来、発色が良く、紙本来の光沢感が出る。一方ブラックインクは顔料インクであるため、黒色部分に限定はされるがPX-M5081F/PX-M5080Fと同じく、メリハリがあり耐水性の高い印刷ができる。メリットが多いように見えるが、染料のブラックインクを持たないため、写真用紙などに印刷する際はカラー3色での印刷となる。黒色はカラー3色を混ぜて作り出すため、やや茶色っぽくなるため、コントラストの面ではやや劣ることになる。普通紙への印刷もカラー文書でもモノクロ文書でも高画質・高耐水のメリットが得られたPX-M5081F/PX-M5080Fと違って、EW-M5071FTは黒色の部分に関してだけである。しかも、グレーなどの中間色はカラーインクを混ぜて作り出すため、染料インク、また背景に色が付いていると、染料インクの上に顔料ブラックを乗せることができないため、同じく染料インクでの印刷となる。しかも前述のように染料ブラックは無いため、カラー3色で表現した黒となってしまう。つまり、顔料インクの恩恵が受けられるのは「背景色が無い」「完全な黒色」の部分だけである。とはいえ、意外とそういった場面は多く、文書の文字部分や受信したFAXなどに効果を発揮するだろう。カラー文書でも黒色だけでも顔料インクだと全体の印象はかなり良くなる。文書印刷に特化したインク構成のPX-M5081F/PX-M5080Fと、両方をそれなりの画質で印刷できるEW-M5071FTといったイメージだ。ちなみに、3機種とも「PrecisionCore」プリントヘッドの採用により、普通紙への印刷解像度が600dpiと高くなっており、文字の輪郭や細い線もより鮮明になっている他、より色鮮やかな発色で印刷できるようになっており、普通紙への印刷時に特有の沈んだ色ではなくなっている。
 ちなみにPX-M5081F/PX-M5080Fが採用するインクは「つよインク200X」となっており、写真を印刷した場合アルバム保存300年、耐光性45年、耐オゾン性30年となる。家庭用の写真印刷向け6色染料インクのプリンターが採用する「つよインク200」はアルバム保存300年、耐光性50年、耐オゾン性10年となっており、耐保存性の面では染料インクの機種に引けを取らない事が分かる。一方EW-M5071FTはインクに名称がないが、アルバム保存300年、耐光性7年、耐オゾン性半年以上1年未満と公表されている。アルバム保存は同等だが、耐光性と耐オゾン性では劣る事となるため、特に写真を飾っておいた場合などに色あせが速くなる。
 印刷速度を見てみよう。3機種ともカラーが各256ノズル、黒に至っては800ノズルとノズル数が非常に多くなっている。L判写真印刷速度はPX-M5081F/PX-M5080Fは公表されていないが、同じプリントヘッドや機能の前機種PX-M5041F/PX-M5040Fが45秒だった事を考えると、同レベルになると思われる。家庭用の6色プリンタではこれよりノズル数が少なくても13秒となっている事を考えるとかなり遅めだ。理由は不明だが、エプソンの顔料インクのプリンターは軒並み遅いので、普通紙印刷に特化したチューニングがされているのではと思われる。ちなみに、EW-M5071FTはカラーは染料インクだが、PX-M5041Fをベースに作られているので、同じような傾向となっている。L判写真印刷速度は39秒とやや速く見えるが、これはEW-M5071FTがフチなし印刷ができず(後述)、フチありでの計測となっているためだ。一方、普通紙への印刷速度は、3機種ともA4普通紙カラーが10ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、ノズル数の多いモノクロ印刷に至っては18ipmとなっており、いずれもインクジェットプリンタとしては非常に高速な部類となる。文書の印刷だけでなくコピーや受信したFAXの印刷がストレスのない速度で印刷ができる。
 ちなみにインクに関しては、PX-M5081F/PX-M5080Fが従来通りがのインクカートリッジ方式なのに対して、EW-M5071FTはエコタンク方式となる。まず、インクカートリッジ方式のPX-M5081F/PX-M5080Fだが各色独立インクカートリッジで、無くなった色だけ交換できる。標準タイプと大容量タイプの2種類が用意されるが、ビジネス向けと言うことで大容量タイプはかなり大容量となっており、カラーインクは1,100ページ、ブラックインクは2,200ページ印刷が可能となっている。価格はカラーが各1,930円、ブラックが4,830円と高価だが、印刷枚数が多いので印刷コストはカラー文書が7.6円、モノクロ文書が2.5円とインクジェットプリンターとしてはかなり安い。レーザープリンタよりも安いので、それらからの置き換えにも使える低印刷コストだ。
 一方、EW-M5071FTのエコタンク方式とは、本体右側にあるインクタンクに、ボトルからインクを補充して印刷する方式だ。ボトル1本でインクタンクが満タンになるが、かなり大容量となっている。満タンのインクタンクでカラー文書を印刷すると、カラーインクは約6,500枚、ブラックインクは6,000枚まで印刷できる。大容量のPX-M5081F/PX-M5080Fよりもカラーが6倍弱、ブラックも3倍弱印刷できることになる。それでいてカラーインクボトルが各900円、倍容量のブラックインクボトルが1,800円とPX-M5081F/PX-M5080Fと比べてかなり安い。結果、印刷コストはカラー文書が0.8円、モノクロ文書が0.4円と圧倒的な低価格となる。PX-M5081F/PX-M5080Fとの比較でもカラー文書は約10分の1、モノクロ文書が約6分の1となる。またインクは途中でも追加できるので、大量に印刷する前にインクを補充しておく事で、インク切れで印刷が止まっていたという自体も防げる他、複数台持っている場合はインクを共通で利用できるメリットもある。印刷枚数が多いならEW-M5071FTが圧倒的におすすめだ。ちなみに、他のエコタンク搭載プリンターは改良された「挿すだけ満タン」インク方式になっているが、EW-M5071FTは従来のエコタンクで、大きな注入口にインクを注ぎ、満タンになったら自分でやめる必要があるし、間違った色の注入口にもインクを入れられてしまうので注意が必要だ。また他のエコタンク搭載プリンターの様にインクボトルが丸々1本付属するという事は無く、付属するのはセットアップ用インクボトルと呼ばれる少量の物だ。とはいえPX-M5081F/PX-M5080Fもセットアップ用インクカートリッジしか付属しないので、同等と言えば問題ないともいえる。

プリント(給紙・排紙関連)
型番
PX-M5081F
PX-M5080F
EW-M5071FT
製品画像
対応用紙サイズ
L判〜A3ノビ
L判〜A3ノビ
L判〜A3ノビ
(フチ無し印刷非対応)
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面
手差し給紙(1枚)
手差し給紙(1枚)
手差し給紙(1枚)
前面
カセット上段(250枚)
カセット下段(250枚・普通紙B5以上)
カセット(250枚)
カセット上段(250枚)
カセット下段(250枚・普通紙B5以上)
その他
排紙トレイ自動開閉
用紙種類・サイズ登録
○(カセット収納連動)
○(カセット収納連動)
○(カセット収納連動)
用紙幅チェック機能

 続いて、給紙・排紙関連の機能を見てみよう。給紙に関しては3機種とも前面給紙カセットからとなる。前面給紙カセットにA3ノビの用紙までセットできるが、A4用紙以下のサイズの場合は本体に完全収納できるが、B4やA3、A3ノビの場合は給紙カセットを伸ばす必要があり、本体から前に飛び出す形になる。排紙トレイよりは飛び出ていないので、使用時は気にならないだろうが、排紙トレイを収納した際には飛び出しが気になる場合もあるだろう。カセット1段にA4普通紙で250枚までセットできるので、大量給紙が可能だ。この前面給紙カセットがPX-M5080Fは1段だが、PX-M5081FEW-M5071FTは2段となるのが違いだ。つまりPX-M5081FEW-M5071FTは上下共に同じサイズの用紙をセットして500枚の給紙に対応することもできるし、A3とA4の様に別のサイズをセットすることも可能だ。ただし、下段はB5サイズ以上で普通紙のみの対応となる。ちなみに、3機種とも背面手差し給紙にも対応している。前面給紙カセットでは、前面から給紙して前面に排紙するため、内部で用紙を180度曲げる必要があり、一部の用紙ではうまく印刷できない場合がある。その点で背面給紙なら比較的まっすぐ用紙を送ることができる。こちらもA3ノビまで対応しているため、穴あき用紙や滑りやすい用紙、はがれやすいシール用紙などにも安心だろう。また、左右のガイドを合わせれば印刷できるため、サイズが特殊な封筒などの印刷も簡単だ。また前面給紙カセットにA3とA4用紙をセットしていて、1枚だけB4用紙に印刷したい場合などに、入れ替えの手間無く印刷できる様になっている。
 ちなみに、対応用紙は3機種ともL判からA3ノビとなるが、EW-M5071FTはフチなし印刷に非対応なのは注意が必要だ。写真印刷には向いていないとはいえ、フチなしの年賀状や、チラシで背景色を付ける場合などではPX-M5081FPX-M5080Fしか対応していない。
 3機種とも用紙の種類とサイズを登録しておく機能が搭載されている。液晶ディスプレイでメニューから登録も可能だが、前面給紙カセットを挿し込むと自動的に登録画面が表示されるため便利だ(されないようにもできる)。この登録内容と、印刷時の用紙設定が異なっている場合、メッセージが表示される仕組みだ。これに加えて、印刷時に実際の用紙幅をセンサーでチェックする機能もあり、できる限り印刷ミスによる用紙とインクの無駄遣いをなくす工夫がなされている。

プリント(付加機能)
型番
PX-M5081F
PX-M5080F
EW-M5071FT
製品画像
自動両面印刷
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
○(オートフォトファイン!EX)
○(オートフォトファイン!EX)
○(オートフォトファイン!EX)
特定インク切れ時印刷
○(黒だけでモード・5日間のみ)
○(黒だけでモード・5日間のみ)
自動電源オン/オフ
−/○
−/○
−/○
廃インクタンク交換/フチなし吸収材エラー時の印刷継続
○/−
○/−
○/−

 その他、プリントの付加機能を見てみよう。自動両面印刷機能は3機種とも搭載しており、A3ノビまで対応している。もちろんハガキなどにも対応するため、年賀状で通信面と宛名面を用紙の差し替え無しで印刷できるなど、便利である。
 画質的には写真印刷には向かないPX-M5081F/PX-M5080Fも含めて、3機種とも写真自動補正機能「オートフォトファイン!EX」に対応している。逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われる。
 カラーインクが切れた時でも、モノクロ印刷が継続できる「黒だけでモード」は、PX-M5081FPX-M5080Fのみ搭載している。EW-M5071FTに搭載されていない理由として、そもそも1回のインク注入での印刷枚数が多い上に、途中で継ぎ足すことも出来るEW-M5071Fではインク切れ自体が起きにくいためと思われる。ちなみにPX-M5081FPX-M5080Fも、インクカートリッジが空の状態でのプリントは本体に負担が掛かることから5日間のみに限定されており、あくまで新しいインクカートリッジを買いに行くまでの緊急対応となる。
 その他、指定した時間が経つと自動的に電源がオフになる機能も搭載している。さらに、交換式メンテナンスボックス(廃インクタンクの交換)にも対応している。メンテナンスボックスとはクリーニング時に排出される廃インクを貯めるもので、満タンになると通常は修理に出して交換する必要があり、プリンターが使えない期間が発生し、交換費用もそれなりに掛かるが、3機種ともユーザー自身で簡単に交換できるようになっている。印刷枚数が多いと思われる機種だけに、この機能はうれしいところだ。ただし、フチなし印刷時に、用紙外にはみ出すインクを吸収させる「フチなし吸収材」 (用紙が通る部分のプラスチックが一部欠けておりその下にクッションのような吸収材)が満タンになった際には修理対応となる。

スキャン
型番
PX-M5081F
PX-M5080F
EW-M5071FT
製品画像
読み取り解像度
1200dpi
1200dpi
1200dpi
センサータイプ
CIS
CIS
CIS
原稿取り忘れアラーム
ADF
原稿セット可能枚数
35枚
35枚
35枚
原稿サイズ
A3/B4/A4/B5/B5/レター/リーガル
A3/B4/A4/B5/B5/レター/リーガル
A3/B4/A4/B5/B5/レター/リーガル
両面読み取り
読み取り速度
カラー
5.5ipm
5.5ipm
4.8ipm
モノクロ
11.0ipm
11.0ipm
8.3ipm
スキャンデーターのメモリカード保存
○(N/A)
○(N/A)
○(JPEG/PDF/TIFF)

 続いて、スキャナ部を見てみよう。3機種とも1200dpiのCISスキャナを搭載しており同等だ。A3サイズに対応しているのも大きな利点だ。家庭向けにはもっと高解像度の機種があるが紙などの反射原稿しかスキャンできないことを考えると1200dpiでも十分だ。一般的には文書なら200〜300dpi、写真なら300〜600dpi程度で、よほど綺麗に保存したい場合に1200dpiでスキャンすると言った程度だ。実際写真サイズを1200dpiで取り込むと約4,200×6,000ドットとなり2500万画素相当なので十分といえる。逆にスキャナ解像度が高いセンサーでは1ドットあたりの光の取り込み量が減り、スキャン速度が低下したりノイズが発生したりするため、バランスを取って1200dpiとしていると思われる。なお、3機種ともCIS方式であるため、分厚い本など浮いてしまう原稿は苦手で、ピントが合わずぼけたような画像となってしまう点は共通だ。
 また、3機種ともADFを搭載している。35枚までの原稿を重ねてセットすれば順に給紙してスキャンしてくれるため、複数の原稿のスキャンやコピー、FAX時に重宝する。このADFは両面スキャンにも対応している。片面をスキャンした後もう一度給紙し、裏面をスキャンするという方式でるため、倍の時間がかかるが、両面原稿でも安心だ。もちろんADFもA3に対応している。唯一ADFのスキャン速度が、PX-M5081F/PX-M5080Fがカラー5.5ipm、モノクロが11.0ipmなのに対して、EW-M5071Fは旧機種がベースなのでそれぞれ4.8ipmと8.3ipmとなる。大きな差ではないが、どちらにしてもプリント速度に対してスキャンの方が遅くなっているため、コピー時はスキャン速度がボトルネックとなっている。少しでも速くコピーしたい場合はPX-M5081F/PX-M5080Fの方が便利だ。
 3機種ともスキャンした原稿をパソコンを使わずメモリカード又はUSBメモリ(PX-M5081F/PX-M5080FはUSBメモリのみ)に保存する機能を搭載している。

ダイレクト印刷
型番
PX-M5081F
PX-M5080F
EW-M5071FT
製品画像
カードスロット
対応メモリカード
SD/MS Duo
USBメモリ/外付けHDD/外付けDVD対応
○/−/−
○/−/−
○/○/−
メモリカードからUSBメモリ/外付けHDDへバックアップ
−/−
−/−
○/○
対応ファイル形式
JPEG/TIFF/PDF(スキャン to 外部メモリー機能で作成したファイルのみ)
JPEG/TIFF/PDF(スキャン to 外部メモリー機能で作成したファイルのみ)
JPEG/TIFF
色補正機能
フチなし/フチあり
赤目補正
フチなし/フチあり
赤目補正
赤目補正
手書き合成
PictBridge対応
赤外線通信
各種デザイン用紙印刷

 ダイレクト印刷は、3機種とも対応しているが、EW-M5071FTはSDカードとメモリスティックDuo、さらにUSBメモリに対応しているのに対して、PX-M5081F/PX-M5080FはUSBメモリのみと対応となる。デジタルカメラで撮影した写真をダイレクトに印刷するという場合はEW-M5071FTのみが対応と言えるだろう。一方、PX-M5081F/PX-M5080Fの機能は、基本的には、前述のスキャンしてメモリカードに保存した原稿の印刷という事になるだろう。PX-M5081F/PX-M5080Fは、この機能を使って保存した物に限られるがPDF形式にも対応していることも、やはりこういった用途が想定されているといえる。一方、EW-M5071Fの場合や、PX-M5081F/PX-M5080FでもUSBメモリに写真を移した場合は、写真の印刷が行える。その際には液晶画面を見て、写真を選択して枚数を設定、さらに「赤目補正」といった機能は搭載している。前述の写真補正機能「オートフォトファイン!EX」も使用できる。またフチなし印刷が可能なPX-M5081F/PX-5080Fはフチなし、フチありの選択も可能だ。最低限写真印刷に必要な機能はそろっている。ただし、写真の一部を切り取って拡大する「トリミング」機能は搭載しない。

スマホ/クラウド対応
型番
PX-M5081F
PX-M5080F
EW-M5071FT
製品画像
スマートフォン連携
対応端末
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 10.0以降)
Android 4.4以降
スマートスピーカー対応
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 10.0以降)
Android 4.4以降
スマートスピーカー対応
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 10.0以降)
Android 4.4以降
スマートスピーカー対応
NFC対応
写真プリント
ドキュメントプリント
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
スキャン
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
クラウド連携
スマートフォン経由/本体
○/−
○/−
○/−
オンラインストレージからの印刷
SNSからの印刷
写真共有サイトからの印刷
メールしてプリント
リモートプリント
スキャンしてリモートプリント

 スマートフォンとの連携機能は3機種とも搭載しており、iPhoneやiPod touch、iPadと、Android端末に対応している。いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることでプリント又はスキャンが行える。メインで使用すると思われる写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定(EW-M5071FTを除く)まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。さらにドキュメント印刷にも対応している。PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もできる便利だ。また、両機種ともスマートフォン上からスキャンを実行し、データをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。出かける前に紙の情報をさっとスマートフォンに転送するといった使い方ができるため便利だろう。
 スマートフォンとの接続は、無線LAN(Wi-Fi)で行うが、無線LANルータを経由する方法と、ダイレクトに接続する「Wi-Fiダイレクト」が選べる。Wi-Fiダイレクトの場合、PX-M5081F/PX-M5080FはNFCに対応しており、タッチするだけで簡単に接続設定が行える。とはいえ対応機種はAndroidに限られる上、使うのはWi-Fiダイレクトの場合のみである。無線LANルーター経由の方がより便利に使えるため、一般的にはこちらを利用すると思われるし、Wi-Fiダイレクトの場合でも、手動設定でもそれほど難しくはない。NFC接続機能はあれば便利だが、無くてもそれほど困るわけではないだろう。
 また、3機種ともスマートスピーカーに対応している。AlexaとGoogleアシスタント対応端末に対応しており、声だけでテンプレートを印刷させることができる。2018年12月現在でデザインペーパー、フォトプロップス、カレンダー、ノート、方眼紙、五線譜などのエプソン独自のものと、Alexaに登録された買い物リスト、やることリストなどとの印刷に対応している。今後増えていくことが予想される。
 クラウドとの連携機能も3機種とも搭載されており、オンラインストレージから印刷が可能だ。さらにネットワークを利用したプリント機能として、3機種とも印刷したい写真や文書を本機にメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、スキャンした画像を離れた場所の対応複合機で印刷できる「メールdeリモート印刷」、通常のプリント同じ操作で、離れた場所のPX-M5081F/PX-M5080F/EW-M5071FTで印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。ただし、これら機能に3機種の違いは無い。

コピー機能
型番
PX-M5081F
PX-M5080F
EW-M5071FT
製品画像
等倍コピー
○(対応用紙はA3/B4/A4/B5/A5のみ)
拡大縮小
倍率指定
○(25〜400%)
○(25〜400%)
○(25〜400%)
オートフィット
定型変倍
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー
割り付け(2面/4面)
○/○
○/○
○/○
バラエティコピー
IDコピー
影消しコピー
パンチ穴消しコピー
IDコピー
影消しコピー
パンチ穴消しコピー
IDコピー
影消しコピー
パンチ穴消しコピー
ブック分割コピー

 コピー機能を見てみよう。単純なコピー機能としては、3機種とも単純な等倍コピーだけでなく、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「オートフィット」機能や、原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行える「定型変倍」機能に加え、25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える高性能な物だ。また、2枚又は4枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2アップ、4アップにも対応する。ただし、PX-M5081F/PX-M5080Fが対応する用紙はA3/B4/A4/B5/A5/A6/ハガキ/四切/六切/ハイビジョン/KG/2L判/L判/長形3号/4号/洋形1号/2号/3号/4号/角形2号/20号と多種なのに対して、 EW-M5071FTはA3/B4/A4/B5/A5のみとなる。ハガキや写真用紙、封筒サイズには対応しないのは注意が必要だ。もちろんフチなしコピーも行えない。
 3機種にはビジネス向けの機能も搭載されている。免許証などの両面の小さな原稿を、1枚の用紙に裏表並べてコピーできる「IDコピー」機能や、原稿サイズが出力サイズより小さい際に出来る余白の影を消す「影消しコピー」、パンチ穴を消す「パンチ穴消しコピー」機能も備えている。また加えてEW-M5071FTは本などを見開きで原稿台に置いた原稿を、1ページごと用紙にコピーする「ブック分割コピー」機能を搭載している。

FAX機能
型番
PX-M5081F
PX-M5080F
EW-M5071FT
製品画像
通信速度
33.6kbps
33.6kbps
33.6kbps
画質設定
モノクロ
8dot/mm×3.85line/mm(標準)
8dot/mm×7.7line/mm(精細)
8dot/mm×15.4line/mm(高精細)
16dot/mm×15.4line/mm(超高精細)
8dot/mm×3.85line/mm(標準)
8dot/mm×7.7line/mm(精細)
8dot/mm×15.4line/mm(高精細)
16dot/mm×15.4line/mm(超高精細)
8dot/mm×3.85line/mm(標準)
8dot/mm×7.7line/mm(精細)
8dot/mm×15.4line/mm(高精細)
16dot/mm×15.4line/mm(超高精細)
8dot/mm×7.7line/mm(写真)
カラー
200×200dpi
200×200dpi
200×200dpi
送信原稿サイズ
A3〜A5
A3〜A5
A3〜A5
記録紙サイズ
A3/B4/A4/B5/A5/リーガル/レター
A3/B4/A4/B5/A5/リーガル/レター
A3/B4/A4/B5/A5/リーガル/レター
受信ファックス最大保存ページ数
550枚/100件
550枚/100件
550枚/100件
データ保持(電源オフ/停電)
○/○
○/○
○/○
ワンタッチ
10件
短縮ダイヤル
200件
200件
200件
グループダイヤル
199宛先
199宛先
199宛先
順次同報送信
200宛先
200宛先
200宛先
自動リダイヤル
発信元記録
ポーリング受信/送信/予約
○/○/○
○/○/○
○/○/○
ファクス/電話自動切替
見てから送信
見てから印刷
PCファクス
送受信
送受信
送受信

 FAX機能も3機種はほぼ同等のもの搭載する。スーパーG3に対応しており、モノクロ、カラーFAXを行う事が出来る。ADFを搭載しているため、複数枚の原稿の送信も便利である。もちろん両面スキャンしFAXできるため便利だ。33.6Kbpsで通信可能であり、その場合の伝送速度はモノクロで約3秒となる。また読取走査線密度はモノクロで8dot/mm×3.85line/mmの標準モード、8dot/mm×7.7line/mmの精細モードに加えて、さらに高画質な8dot/mm×15.4line/mmの高精細モードと、16dot/mm×15.4line/mmの超高精細モードが設定できる。EW-M5071FTのみ写真モードも設定できるが、精細モードと解像度は同じなので大きな差はないだろう。カラーは200×200dpiだ。送信原稿サイズはA3〜A5サイズで、受信したFAXの印刷もA3〜A5に対応している。受信したFAXは550枚又は100件分まで保存でき、電源オフだけでなく、停電時やコンセントが抜けた場合でも受信した内容が保持されるのは安心である。3機種に差は無いが、かなり高性能になっている。ダイヤル機能としては短縮ダイヤルに200件登録できるが、EW-M5071TFはこれに加えて10件のワンタッチダイヤルも登録できる。正確には1〜5までのボタンとシフトボタンの組み合わせで10件となっており、より簡単にダイヤルできる。一方、PX-M5081F/PX-M5080Fはクイックダイヤルボタンが用意され、このボタン+電話帳の登録番号でダイヤルができるようになっている。その他、グループダイヤル、順次同報送信、自動リダイヤル、ボーリング受信・送信・予約機能を備えているため、一般的な家庭用FAX電話以上の事が可能だ。また、送信するFAXを液晶で確認してから送信する「見てから送信」と、受信したFAXの内容を液晶で確認した上で印刷するか決めることで用紙を節約できる「見てから印刷」機能も備える。さらに、パソコン内のデータを直接FAXできる「PCファクス」機能を備えているのも便利である。送信(パソコン上のデータを画像として送信)だけでなく、受信(パソコン上にFAXのデータを受信)することもできる。なお、FAX機能だけで受話器がないため通話機能は無いが、モジュラージャックのインとアウトを備えており、アウトに電話機を接続すると通話が可能となる。その際、ファクス/電話自動切り替え機能にも対応している。3機種はワンタッチダイヤルなど微妙な差はあるが、ほぼ同じと考えて良いだろう。

操作パネル/インタフェース/本体サイズ
型番
PX-M5081F
PX-M5080F
EW-M5071FT
製品画像
液晶ディスプレイ
4.3型
(角度調整可)
4.3型
(角度調整可)
4.3型
操作パネル
タッチパネル液晶+物理ボタン
(角度調整可)
タッチパネル液晶+物理ボタン
(角度調整可)
タッチパネル液晶+物理ボタン
インターフェイス
USB他
USB2.0×1
USB2.0×1
USB2.0×1
無線LAN
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
有線LAN
100BASE-TX
100BASE-TX
100BASE-TX
対応OS
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP1
MacOS 10.6.8〜
耐久枚数
15万枚
15万枚
8万枚
外形寸法(横×奥×高)
567×452×418mm
567×452×340mm
666×486×418mm
重量
22.3kg
18.8kg
23.5kg
本体カラー
ホワイト
ホワイト
ブラック

 操作パネルを見てみよう。3機種ともワイドの4.3型液晶を搭載する点では同等だ。タッチパネルに対応しているのも同じである。またテンキーなど、一部は物理ボタンとして用意する事で、操作性を高めているのも同じだ。PX-M5081F/PX-M5080Fは操作パネルと液晶が本体前面に配置され、持ち上げて90度まで角度調整が可能だ。見やすい角度に調整ができるため、操作性が良い。一方のEW-M5071FTもほぼ同じ位置に搭載されているが、斜めに飛び出した状態で固定されている。斜めになっているのでどの角度からでもある程度使いやすいが、角度調整できるPX-M5081F/PX-M5080Fと比べると、やや操作性で劣る。また、液晶内のデザインもPX-M5081F/PX-M5080Fは他の新機種と同等になっているが、EW-M5071FTは旧デザインを採用している。
 インタフェースは3機種ともUSB2.0と有線/無線LANの接続に対応している。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人には有線LAN/無線LANによりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。無線LANは、IEEE802.11n接続に対応しており、無線LANで接続した場合でもプリントやスキャンで待たされることが無いようになっている。また無線LANの電波が届きにくい場合や、壁にLANのコネクタがある家などにも対応できるよう有線LANも搭載しているのも便利だ。前述のように、アクセスポイントがない状態で、直接スマートフォンやタブレットとプリンタを接続できる「Wi-Fiダイレクト」機能も対応している。

 ちなみに耐久枚数はPX-M5081F/PX-M5080Fは15万枚、EW-M5071FTは8万枚をうたっている。家庭用の機種が1万〜1万5000枚程度と言われているため、どちらも大量印刷でも安心と言えるが、設計の新しいPX-M5081F/PX-M5080Fの方がより強化されている。

 本体サイズはPX-M5081Fが567×452×418mm、PX-M5080Fが567×452×340mmで、カセット段数の分高さが異なるだけで横幅と奥行きは同等だ。カセット1段が78mmとなる。一方、EW-M5071FTは666×486×418mmとなる。高さはカセット2段であるためPX-M5081Fと同じ、奥行きは34mm大きいが、これは液晶と操作パネル部が飛び出した状態で固定されているためで、本体部分は同じだ。横幅に関してはエコタンクが飛び出している分約10cm大きくなっているが、タンク部分だけの飛び出しなので、数値の差の割には大きく見えない。EW-M5071FTだけ横幅が大きいというより、PX-M5081Fと同じ大きさだが、側面の下の方にエコタンクがくっついているというイメージだ。本体カラーはPX-M5081F/PX-M5080Fがホワイト、EW-M5071FTがブラックと正反対となっている。



 基本的に似た3機種だけに、異なる点だけを見て決めれば良いため、選びやすいといえる。一番わかりやすいのはEW-M5071FTだ。インクや操作パネルなどの違いはあるが、エコタンクが最大の特徴である。つまり印刷コストが安く本体価格が高い。同じ前面給紙カセット2段のPX-M5081Fとの価格差は67,000円。文書の印刷コストはA4カラーで6.8円、A4モノクロ文書で2.1円安い。他のエコタンク搭載プリンターと違い、付属するインクボトルはセットアップ用なので、付属のインク分を考慮する必要が無く、純粋に価格の差を印刷コストの差で割るだけだ。計算するとA4カラーで9,853枚、A4モノクロで31,904枚以上印刷するなら特になる。A3サイズなら約半分の枚数と考えられる。もともと給紙枚数も多く、FAX機能も付いており、印刷枚数が多い事が想定され、また耐久枚数が8万枚と言うことを考えると、買い換えまでに十分元が取れると考えられる。ただし、印刷枚数は少ないがA3スキャナとA3プリンターが欲しいという人には当てはまらない。また、カラーインクが染料インクである点や、フチなし印刷ができない点が問題なければと言う事が前提だ。逆に全色顔料インクである事が必須、またはフチなし印刷機能が必要な場合はPX-M5081FPX-M5080Fがおすすめだ。印刷コストはEW-M5071FTと比べると高く感じるが、インクジェットプリンターの中では安い方だし、レーザープリンターと比べても安いため、十分低印刷コストのプリンターと言える。それでいて、前述の全色顔料やフチなし印刷対応だけでなく、耐久枚数の強化や操作性の向上、ADFの速度アップなど、EW-M5071FTより細かな点で使いやすい。後が安いとは言え、最初に10万円以上ものお金を出すのを躊躇する場合もあり、その点では購入しやすい価格だ。PX-M5081FPX-M5080Fは純粋に前面給紙カセットが2段か1段の違いだけなので、本体が大きく1万円出しても2段ある方が便利と感じるか、少しでも高さを抑えて安く買いたいと考えるかによって決まるだろう。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/


PX-M5081F
PX-M5080F
EW-M5071FT