小ネタ集
2018年末時点のプリンタ
〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜
(2019年4月15日公開)

プリンタ比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンタ比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。


FAX機能付き複合機(3万円以上の機種)
 
 FAX機能付きA4複合機の中で最上位機種(大型の機種を除く)に当たる3万円以上の機種である。エプソンのPX-M884FPX-M781F、キャノンのMAXIFY MB5430の3機種となるが、PX-M781FMAXIFY MB5430が完全に同価格で、低印刷コストと高速印刷に特化し、前面給紙カセット2段など同じような機能を持つ2機種となる。それに対してPX-M884Fは1万円高い。同価格の2機種にはどういった違いがあり、そしてPX-M884Fには1万円高いだけの価値があるのか検証しよう。

プリント(画質・速度・コスト)
メーカー
エプソン
エプソン
キャノン
型番
PX-M884F
PX-M781F
MAXIFY MB5430
製品画像
実売価格(メーカーWeb/税抜き)
39,980円
29,980円
29,880円
インク
色数
4色
4色
4色
インク構成
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成
各色独立(インクパック方式)
各色独立
各色独立
顔料/染料系
顔料
顔料
(つよインク200X)
顔料
(MAXIFY用新顔料インク)
インク型番
IP01B(大容量)
IP01A(標準容量)
84番(大容量)
83番(標準容量)
2300XL番(大容量)
2300番(標準容量)
ノズル数
3200ノズル
3200ノズル
4352ノズル
各色:800ノズル
各色:800ノズル
カラー:各1024ノズル
黒:1280ノズル
最小インクドロップサイズ
N/A(3.8pl?)
2.8pl(MSDT)
N/A(カラー5pl/ブラック11pl?)
最大解像度
4800×1200dpi
4800×1200dpi
600×1200dpi
PrecisionCoreプリントヘッド
○(ノズル自己判断システム搭載)
印刷速度
L判縁なし写真(メーカー公称)
N/A
N/A
N/A
A4普通紙カラー(ISO基準)
24.0ipm
22.0ipm
15.5ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準)
24.0ipm
24.0ipm
24.0ipm
印刷コスト
L判縁なし写真
N/A
N/A
N/A
A4カラー文書
6.1円
7.3円
6.1円
A4モノクロ文書
1.8円
2.2円
1.8円

 それでは、プリントの画質・速度・コスト面を見てみよう。3機種とも4色インクとなっており、また全色顔料インクという点でも同等だ。顔料インクは普通紙への印刷時に染料インクのような用紙へのしみこみが少なく、インクが広がりにくいので、クッキリとしたメリハリのある印刷が行えるというメリットがある。そのため、細かな線や小さな文字、中抜き文字もつぶれず綺麗に印刷できる。また、耐水性も高いというメリットもあり、濡れた手で触ったりマーカーで線を引いても滲まない点も便利である。そのため、パソコンから普通紙への印刷や、普通紙コピー、年賀状印刷に向いている他、FAX機能を使う時も、受信したFAXを普通紙に印刷する際に高画質、高耐水で印刷が出来る。ただし、顔料インクにはデメリットもあり、写真用紙に印刷すると、発色はあまり良くなく、また写真用紙本来の光沢感も薄れポストカードのような鈍い光り方になってしまう。その点で普通紙に特化したインク構成と言える。
 PX-M781Fは4色顔料インクという点だけでなく、最小インクドロップサイズが2.8plと家庭用の写真印刷向けプリンターと比べると大きい点でも、写真印刷向けとは言えない。フチなし印刷にも対応し、写真用紙にも印刷は可能なので全く写真プリントができないわけではないが、やはり粒状感があり、少しザラザラとした印象を受けるだろう。前述のように発色も光沢感も悪い。ただし採用するインクは「つよインク200X」で、アルバム保存300年、耐光性45年、耐オゾン性30年と、非常に高くなっている。耐保存性の面では問題ない。また、印刷解像度は4800×1200dpiと高い。一方、普通紙印刷に関しては、前述の顔料インクである事に加えて、PrecisionCoreプリントヘッドを採用している。普通紙への印刷解像度を360dpiから600dpiへアップした他、普通紙印刷時の発色やエッジ処理にも工夫がなされ、普通紙印刷の画質は非常に高くなっている。
 PX-M884Fはより文書印刷に特化した機種で、フチなし印刷にも対応しない。また、最小インクドロップサイズに関しては公表されていないが、海外の同機能のモデルが3.8plであるため、PX-M884Fも3.8plの可能性が高く、PX-M781Fよりも粒状感は強くなる。インクに関しても顔料と言うことしか分からず、耐保存性は不明だ。一方普通紙印刷に関しては、PX-M781Fと同じくPrecisionCoreプリントヘッドに対応しており、非常に高画質だ。さらに、ノズル自己診断システムを搭載しており、プリントヘッドのドット抜けを印刷ジョブごとに自動的に検知し、画質を調整するため、ふと気づいたら印刷結果に問題があってやり直しという事を防ぐことができる。
 MAXIFY MB5430は最小インクドロップサイズを公表していないが、こちらも海外の同機能のモデルがカラー5pl、ブラック11plとなっており、これと同等である可能性が高い。ビジネス向けの機種の中でも特に大きいといえる。印刷解像度が600×1200dpiと低い事から、完全に普通紙専用という考え方だろう。PX-M884F同様、フチなし印刷に非対応なので、この面でも写真印刷向けとは言いがたい。採用するインクは「MAXIFY用新顔料インク」となっており、耐保存性に関する記載は一切無い。普通紙の印刷は、前述の顔料インクならではの高画質に加えて、特に黒の濃度が高くなっているという事で、特に文字の印刷画質は高い。一方で最小インクドロップサイズがここまで大きいと、文字以外の写真やグラフなどでは粒状感が他機種より目立つ可能性がある。
 3機種とも普通紙印刷に特化したインクと、機能を備えており、インクジェットプリンタの中でも普通紙印刷画質は非常に高くなっている。一方で写真は、せいぜい文書中に入っている物やイラスト程度までと割り切ったPX-M884FMAXIFY MB5430に対して、顔料インクながら耐保存性や画質面ではできる限り高画質に印刷できるように工夫され、写真印刷も可能なPX-M781Fの方が、様々なシーンで使いやすいとは言えるだろう。
 印刷速度に関しては3機種ともこだわっている。PX-M884Fはノズル数を各800ノズルと多くする一方で、最小インクドロップサイズを大きめとした事で、A4カラー文書、モノクロ文書共にが24ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)と非常に高速だ。ファーストプリントもカラーが5.3秒、モノクロが4.8秒となっており、1枚だけの原稿でもサッと印刷できる。PX-M781Fもノズル数が各800ノズルと多くなっている。最小インクドロップサイズがPX-M884Fより小さいが、3つのサイズのインクを打ち分ける事で画質と速度の両立を図るMSDTに対応しており、印刷する場所によって大きなドットを打つ事でも高速化を図っている上に、1枚目の印字中に2枚目を重ねて搬送させる「重ね連送」機能を搭載している。結果、A4カラー文書が22ipm、A4モノクロ文書が24ipmと、PX-M884Fとほぼ同等スピードとなっている。ファーストプリントはカラー、モノクロ共に6.5秒とやや遅いが十分ストレス無く使える。MAXIFY MB5430はカラーが各1024ノズル、ブラックが1280ノズルと多くなっていることに加えて、こちらも「重ね連送」機能を搭載しているため、A4カラー文書が15.5ipm、A4モノクロ文書が24ipmとなっている。ファーストプリントはモノクロ6秒、カラー7秒だ。それぞれ高速化のために工夫がなされていることもあって、モノクロに関しては3機種ともほとんど違いが無い。また、家庭用の機種が上位機種でも15ipm程度であることを考えると、かなり高速だ。一方カラープリントはMAXIFY MB5430だけがやや遅い。十分に高速とも言えるが、カラープリントも多用するならPX-M884FPX-M781Fの方がストレスは少なそうだ。
 最後に印刷コストだが、3機種とも大容量インクを用意しており、印刷コストもかなり安くなっている。PX-M884FはIP01系のインクだが、IP01の後ろに色(K/C/M/Y)が付き、その後ろに大容量ならB、標準ならAが付く。例えば大容量のシアンならIP01CBとなる。PX-M884Fはインクカートリッジでは無く、インクパック方式となっている。インクパックはインクの充填された袋状のもので先端にプラスチックの取り付け口が付いている。本体最下段に色ごとのトレイがあり、パックをトレイに装着して、トレイを本体に戻すという方式となる。パック式になったことで大容量となっており、大容量のIP01Bならブラックインクは10,000ページ、カラーインクは5,000ページの印刷が可能となっている。ブラックは17,480円、カラーは7,150円である。PX-M781Fは通常のインクカートリッジ方式だ。大容量の84番インクで、ブラックインクは2,600ページ、カラーインクは1,900ページ印刷が可能だ。価格はブラックが4,980円、カラーが各3,300円となる。MAXIFY MB5430もインクカートリッジ方式で、大容量の2300XLインクで、ブラックは2,500枚、シアン1,755枚、マゼンダ1,295枚、イエロー1,520枚の印刷が可能だ。ブラックが4,300円、カラーが2,190円となる。3機種ともインクは高価だが、インクパックのPX-M884Fは言うまでも無く、PX-M781FMAXIFY MB5430でも家庭向けの機種と比べるとかなり大容量になっている。そのためPX-M884FがA4カラー文書で6.1円、A4モノクロ文書で1.8円、PX-M781Fがそれぞれ7.3円と2.2円、MAXIFY MB5430がそれぞれ6.1円と1.8円となる。奇しくもPX-M884FMAXIFY MB5430は全く同じ印刷コスト、PX-M781Fはやや高くなるが、PX-M781Fでもインクジェットプリンターとしてはかなり安い方で、レザープリンターなどと比べても安いといえる。そのため、印刷コストの差が決め手になるほどではないが、検討する上での材料の一つとなるだろう。

プリント(給紙・排紙関連)
型番
PX-M884F
PX-M781F
MAXIFY MB5430
製品画像
対応用紙サイズ
L判〜A4
(用紙幅64mmまで対応)
(フチ無し印刷非対応)
L判〜A4
L判〜A4
(フチ無し印刷非対応)
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面
○(80枚)
前面
カセット(250枚)
オプションカセット増設対応(550枚・普通紙のみ)
カセット上段(250枚)
カセット下段(250枚・普通紙B5以上)
カセット上段(250枚)
カセット下段(250枚・普通紙A4/レター/リーガル)
その他
排紙トレイ自動開閉
−(取り外し式)
用紙種類・サイズ登録
○(カセット収納(前面)/用紙セット(背面)連動)
○(カセット収納連動)
○(カセット収納連動)
用紙幅チェック機能

 続いて、給紙・排紙関連の機能を見てみよう。使用できる用紙はいずれもL判からA4までとなる。ただし、PX-M884FMAXIFY MB5430はフチなし印刷には非対応である。両機種とも写真印刷には元々向いていないが、フチなしデザインのハガキや、チラシなどの他、背景色をフチなしで印刷したい場合などには注意が必要だ。その点ではPX-M781Fは安心だ。一方、PX-M884Fは64mm幅まで対応しており、B6ハーフサイズのプライスカードなどの印刷に使えるという点では便利だ。また長尺用紙も、PX-M781Fは1,200mmまでなのに対して、PX-M884Fは6,000mmまで対応しており、よりビジネス用途での幅広い利用に対応している。ちなみにMAXIFY MB5430は最大長は355.6mmまでで、長尺用紙には対応していない。
 給紙に関しては、PX-M781FMAXIFY MB5430は前面カセットを基本としている。ビジネス向けと言う事もあり、カセット1段にA4用紙を250枚までセット可能などは両機種とも同等だ。そのカセットが2段あるため、A4用紙を2段ともセットして500枚使用する事もできるし、上段にB5、下段にA4という風に250枚ずつ違う用紙もセットできる。PX-M781Fの場合、下段はB5以上の普通紙のみ、MAXIFY MB5430の下段も、A4/リーガル/レターサイズの普通紙のみという制限がある。両機種ともカセットは少し前に飛び出した様なデザインとなる。MAXIFY MB5430の場合はカセットを縮めて本体に完全収納状態にできるが、その状態では用紙をセットできないため、基本的にはカセットを伸ばした状態で使う事になるだろう。一方、PX-M884Fは前面給紙カセットは250枚セット可能な1段のみだが、オプションでカセットを増設できる(最下段に1段追加される形となる)。オプションのカセットは普通紙のみだが、550枚までセットできるため、2段合わせて800枚の給紙が可能となる。価格は15,000円で高さも10cm大きくなるが、必要に応じて給紙枚数を増やせ、しかも本体購入後に増設が可能な点は便利だ。また、これに加えて背面給紙にも対応しており、こちらには普通紙を80枚までセットできる。前述の長尺用紙や、厚めの用紙に印刷する際にも安心だ。ちなみに、ハガキの給紙枚数は、PX-M884Fが前面給紙カセットで50枚、背面給紙で30枚、PX-M781Fが50枚、MAXIFY MB5430が40枚となる。
 対応する用紙厚にも違いがあり、PX-M781Fが坪量90g/m2まで、MAXIFY MB5430が105g/m2までなのに対して、PX-M884Fは前面給紙カセットでも160g/m2まで対応しており、背面給紙は256g/m2まで対応している。さらにPX-M884Fは「紙分離ローラー」も採用しており、通常の紙送りローラーと別のローラーが2枚目の紙送りを抑制することで、重送を防いで、紙詰まりを低減する機能も搭載している。このように、対応できる用紙のサイズや厚み、給紙枚数やその他の機能面でPX-M884Fは突出しており、さすが1万円の価格差があると言えるだろう。
 ちなみに、3機種とも用紙種類とサイズの登録機能を搭載している。いずれも前面給紙カセットを挿し込む、またはPX-M884Fの背面給紙の場合は用紙をセットすると自動的に登録画面が表示されるため便利だ(されないようにもできる)。そして、この登録内容と、印刷時の用紙設定が異なっている場合、メッセージが表示される仕組みだ。また、液晶ディスプレイでメニューから手動で登録も可能である。PX-M884FPX-M781Fは、印刷時に実際の用紙幅をセンサーでチェックする機能もあり、できる限り印刷ミスによる用紙とインクの無駄遣いをなくす工夫がなされている。

プリント(付加機能)
型番
PX-M884F
PX-M781F
MAXIFY MB5430
製品画像
自動両面印刷
○(普通紙のみ・湿温度センサー搭載)
○(普通紙のみ)
○(普通紙のみ)
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
○(オートフォトファイン!EX)
○(オートフォトファイン!EX)
特定インク切れ時印刷
○(黒だけでモード・5日間のみ)
○(黒だけでモード・5日間のみ)
自動電源オン/オフ
−/○
−/○
○(時刻指定)/○(時刻指定)
廃インクタンク交換/フチなし吸収材エラー時の印刷継続
○/−
○/−
−/−

 自動両面印刷機能は3機種とも搭載している。ただし、いずれも普通紙のみの対応であり、ハガキの両面印刷は行えない点は注意が必要だ。PX-M884Fは温湿度センサーを搭載しており、環境に応じて最適な両面印刷が行える。また、PX-M884FPX-M781Fは「オートフォトファイン!EX」という写真の画質補正機能も搭載している。逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われるため、気楽に写真印刷が行えるようになっている。特にPX-M781Fはインクの種類や印刷速度面では写真印刷が得意とは言えないが、画質や光沢感が薄くなる点さえ許容できれば耐保存性は写真印刷として十分でフチなし印刷も可能だ。ちなみに、MAXIFY MB5430はこういった機能は搭載していない。
 最近の機種では搭載機種が増えた「印刷が実行されると自動的に電源がオンになる」機能と、ほぼ必須になりつつある「指定した時間操作がないと自動で電源がオフになる」機能だが、FAX付きモデルでは状況が異なる。常時電源を入れておかなければFAX受信が行えないためである。そのため、PX-M884FPX-M781Fは自動電源オフのみ搭載している。そしてMAXIFY MB5430は自動電源オン・オフというよりは、時間指定による電源オン・オフが設定できる。オフィスの就業時間や、商店の営業時間などに合わせて決まった時間に電源を入れ、決まった時間に電源が切れるというものである。ある意味オフィス向けという機種では、この機能は便利な場合もあるだろう。
 一方、PX-M884FPX-M781Fの便利な点として、交換式メンテナンスボックス(廃インクタンクの交換)に対応している事がある。メンテナンスボックスとはクリーニング時に排出される廃インクを貯めるもので、満タンになると通常は修理に出して交換する必要があり、プリンターが使えない期間が発生し、交換費用もそれなりに掛かってしまう。しかしPX-M884F/PX-M781Fはユーザー自身で簡単に交換できるようになっている。印刷枚数が多いと思われる機種だけに、使用できない期間の発生を防ぐことができるこの機能はうれしいところだ。ただし、PX-M781Fはフチなし印刷時対応しているが、その際に用紙からはみ出たインクを吸収させる「フチなし吸収材」に関しては修理交換となる。

スキャン
型番
PX-M884F
PX-M781F
MAXIFY MB5430
製品画像
読み取り解像度
1200dpi
1200dpi
1200dpi
センサータイプ
CIS
CIS
CIS
原稿取り忘れアラーム
ADF
原稿セット可能枚数
50枚
50枚
50枚
原稿サイズ
A4/B5/A5/A6/レター/リーガル
A4/B5/A5/レター/リーガル
216×356mm〜148×148mm
両面読み取り
○(同時両面)
読み取り速度
カラー
24.0ipm
16.0ipm
23.0ipm(両面時)
モノクロ
24.0ipm
16.0ipm
23.0ipm(両面時)
スキャンデーターのメモリカード保存
○(JPEG/PDF・USBメモリーのみ)
○(JPEG/PDF・USBメモリーのみ)
○(JPEG/PDF・USBメモリーのみ)

 続いて、スキャナ部を見てみよう。解像度は3機種とも1200dpiのCISスキャナを搭載しており同等だ。家庭向けにはもっと高解像度の機種があるが、紙などの反射原稿しかスキャンできないことを考えると1200dpiでも十分だ。一般的には文書なら200〜300dpi、写真なら300〜600dpi程度で、よほど綺麗に保存したい場合に1200dpiでスキャンすると言った程度だ。実際写真サイズを1200dpiで取り込むと約4,200×6,000ドットとなり2500万画素相当なので十分といえる。逆にスキャナ解像度が高いセンサーでは1ドットあたりの光の取り込み量が減り、スキャン速度が低下したりノイズが発生したりするため、バランスを取って1200dpiとしていると思われる。なお、3機種ともCIS方式であるため、分厚い本など浮いてしまう原稿は苦手で、ピントが合わずぼけたような画像となってしまう点は共通だ。
 3機種ともスキャンした原稿をパソコンを使わずにUSBメモリーに保存する機能を搭載している。パソコン無しで簡単にスキャンが行えるできるため便利だ。JPEG又はPDF形式での保存にも対応している。そしてFAX付きモデルと言うことで3機種ともADFを搭載している。いずれも50枚までセットが可能である。3機種とも両面スキャンに対応しているが、PX-M884FPX-M781Fは片面にのみセンサーを搭載しており、片面をスキャン後、もう一度給紙して裏面をスキャンするという方式なのに対して、MAXIFY MB5430は両面にセンサーを搭載しており、1回の給紙で両面をスキャンできる。そのため、片面原稿と比べて両面原稿の場合はPX-M781Fは倍の時間が掛かるが、MAXIFY MB5430は同じ時間で行えるメリットがある。このADFは速度も公表されており、PX-M884Fがカラー・モノクロ共に24ipm、PX-M781Fが16ipm、MAXIFY MB5430が23ipmとなっており、PX-MM884FとMAXIFY MB5430がほぼ同じ速度、PX-M781Fがやや遅くなる。とはいえ下位モデルや旧モデルでは3〜5ipm程度というのも珍しくなく、十分高速だ。ちなみに、MAXIFY MB5430の速度だが同時両面スキャンが行えるために少々複雑になっている。スキャン速度の、ipmは、image per minute、つまり1分間に何面をスキャンできるかを表しているためだ。1度に片面しかスキャンできないPX-M884FPX-M781Fは純粋に1分間に24枚または16枚の原稿をスキャンできるが、両面スキャンができるMAIXFY MB5430は1分間11.5枚の原稿を同時に両面スキャンできるので倍の23ipmとなって事になる。両面スキャンの場合はそのスキャン速度で問題無いのだが、片面原稿の場合、PX-M884Fは24ipm、PX-M781Fは16ipmなのに対して、MAXIFY MB5430は11.5ipm程度になると予想される。もちろん処理時間などもあるため、完全に半分ではないかもしれないが、これに近い速度になるだろう。つまり両面原稿も片面原稿も高速なPX-M884F、両面原稿が高速だが片面原稿では遅くなるMAXIFY MB5430、両面原稿はMAXIFY MB5430より遅いが、片面原稿では速くなるPX-M781Fとなる。どちらをよく使うかによって、便利な機種が決まるだろう。

ダイレクト印刷
型番
PX-M884F
PX-M781F
MAXIFY MB5430
製品画像
カードスロット
対応メモリカード
USBメモリー/外付けHDD/外付けDVD対応
○/−/−
○/○/−
○/−/−
メモリカードからUSBメモリー/外付けHDDへバックアップ
−/−
−/−
−/−
対応ファイル形式
JPEG/TIFF/PDF(スキャン to 外部メモリー機能で作成したPDFのみ)
JPEG/TIFF/PDF(スキャン to 外部メモリー機能で作成したPDFのみ)
JPEG/TIFF/PDF(本機でスキャンしてUSBメモリーに保存したPDFのみ)
色補正機能
赤目補正
フチなし/フチあり
赤目補正
手書き合成
PictBridge対応
赤外線通信
各種デザイン用紙印刷

ダイレクト印刷機能を見てみよう。3機種ともメモリカードスロットは搭載せず、USBメモリーにのみ対応となる。そのため、デジカメの写真を印刷するというよりは、前述のスキャンしてUSBメモリーに保存したデータを印刷する場合などが想定されているだろう。対応ファイル形式も一般的なJPEGとTIFFに加えて、3機種ともスキャンしてUSBメモリーに保存する際にPDF形式で作成したファイルからの印刷にも対応しているのも、こういった使い方が想定されているからだろう。
 なお、写真も印刷できないわけではない。USBメモリーに写真を入れておけば一覧から写真を選んで写真のダイレクト印刷ができるし、その場合に用紙サイズや日付表示の有無の設定もできる。PX-M781Fはフチなし/ありの設定も可能で、PX-M884FPX-M781Fは赤目補正の他、自動写真補正機能の「オートフォトファイン!EX」も利用可能だ。画質上やフチなし印刷ができない機種もあるなど、写真印刷には向いていないが、印刷ができないというわけではない。この点ではフチなし印刷が可能なPX-M781Fは、写真らしい印刷が可能と言えるだろう。

スマホ/クラウド対応
型番
PX-M884F
PX-M781F
MAXIFY MB5430
製品画像
スマートフォン連携
対応端末
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 10.0以降)
Android 4.4以降
スマートスピーカー対応
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 10.0以降)
Android 4.4以降
スマートスピーカー対応
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 10.0以降)
Android 4.4以降
NFC対応
写真プリント
ドキュメントプリント
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
スキャン
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
クラウド連携
スマートフォン経由/本体
○/−
○/−
○/○
オンラインストレージからの印刷
SNSからの印刷
写真共有サイトからの印刷
メールしてプリント
リモートプリント
スキャンしてリモートプリント

 スマートフォンとの連携機能も3機種とも搭載しており、iPhoneやiPod touch、iPadと、Android端末に対応している。いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることでプリント又はスキャンが行える。写真とドキュメント印刷、スキャンに対応しており、様々な内容をプリント可能だ。写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定(PX-M781Fのみ)まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。ドキュメント印刷は、PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もでき便利だ。また、3機種ともスマートフォン上からスキャンを実行し、データをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。出かける前に紙の情報をさっとスマートフォンに転送するといった使い方ができるため便利だろう。
 スマートフォンとの接続は、無線LAN(Wi-Fi)で行うが、無線LANルータを経由する方法と、ダイレクトに接続する「Wi-Fiダイレクト」(キヤノンはダイレクト接続)が選べる。Wi-Fiダイレクトの場合PX-M884FPX-M781FはNFCを利用した接続設定に対応している。少しでも簡単に接続できるよう工夫さえれている点は評価できるが、対応機種はAndroidに限られる上、使うのはWi-Fiダイレクトの場合のみである。無線LANルーター経由の方がより便利に使えるため、こちらを利用する場合は意味が無いし、Wi-Fiダイレクトの場合でも、手動設定でもそれほど難しくはない。NFCがあれば、プリンターと同じネットワークに入っていない人が来た場合でも、さっと印刷ができて便利だが、無くてもそれほど不便ではないだろう。
 また、PX-M884FPX-M781Fはスマートスピーカーに対応している。AlexaとGoogleアシスタント対応端末に対応しており、声だけでテンプレートを印刷させることができる。2018年12月現在でデザインペーパー、フォトプロップス、カレンダー、ノート、方眼紙、五線譜などのエプソン独自のものと、Alexaに登録された買い物リスト、やることリストなどとの印刷に対応している。今後増えていくことが予想される。
 クラウドとの連携機能も3機種とも搭載されており、オンラインストレージから印刷が可能だ。ここで大きな違いは、PX-M884FPX-M781Fはスマートフォンのアプリとして搭載しているのに対して、MAXIFY MB5430はスマートフォン上だけでなく、プリンタ単体でもクラウドにアクセスし印刷ができる点が上げられる。実際の操作性はスマートフォンからの方が上だが、選択肢が広いという点ではMAXIFY MB5430が便利だ。
 さらにネットワークを利用したプリント機能として、PX-M884F/PX-M781Fは印刷したい写真や文書を本機にメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、PX-M884F/PX-M781Fでスキャンした画像を離れた場所の対応複合機で直接印刷できる「メールdeリモート印刷」、通常のプリント同じ操作で、外出先など離れた場所から自宅のPX-M884F/PX-M781Fで印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。一方のMAXIFT MB5430はこれらの機能は搭載しない。クラウドのアクセスはMAXIFY MB5430が便利で、リモートプリント機能はPX-M884F/PX-M781Fが便利だ。

コピー機能
型番
PX-M884F
PX-M781F
MAXIFY MB5430
製品画像
等倍コピー
拡大縮小
倍率指定
○(25〜400%)
○(25〜400%)
○(25〜400%)
オートフィット
定型変倍
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー
割り付け(2面/4面)
○/○
○/○
○/○
バラエティコピー
IDコピー
影消しコピー
パンチ穴消しコピー
IDコピー
影消しコピー
パンチ穴消しコピー
ページ順コピー
枠消しコピー
コピー予約
IDコピー

 コピー機能を見てみよう。単純なコピー機能としては、3機種とも単純な等倍コピーだけでなく、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「オートフィット」機能や、原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行う「定型変倍」機能、さらに25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える機能を搭載した高性能な物だ。また、3機種とも2枚又は4枚の原稿を1枚に縮小してコピーする機能にも対応する。その他、PX-M884FPX-M781Fは免許証などの裏表をそれぞれスキャンして1枚の用紙に並べて印刷する「IDコピー」、原稿の周囲や、冊子のとじ目部分などの影を消してくれる「影消しコピー」、パンチ穴を写らないようにコピーする「パンチ穴消しコピー」に対応する。一方、MAXIFY MB5430も複数ページの原稿を、1部ずつコピーする「ページ順コピー」、原稿の周囲や、冊子のとじ目部分などの影を消してくれる「枠消しコピー」、「IDコピー」の他、コピー実行中でも次の原稿の読み取り操作ができる「コピー予約」も可能だ。それぞれ機能は異なるが、複合機単独で様々なコピーが行えるよう工夫されている。

FAX機能
型番
PX-M884F
PX-M781F
MAXIFY MB5430
製品画像
通信速度
33.6kbps
33.6kbps
33.6kbps
画質設定
モノクロ
8dot/mm×3.85本/mm(標準)
8dot/mm×7.7本/mm(精細)
8dot/mm×15.4本/mm(高精細)
16dot/mm×15.4本/mm(超高精細)
8dot/mm×7.7本/mm(写真)
8dot/mm×3.85本/mm(標準)
8dot/mm×7.7本/mm(精細)
8dot/mm×15.4本/mm(高精細)
16dot/mm×15.4本/mm(超高精細)
8dot/mm×3.85本/mm(標準)
8dot/mm×7.7本/mm(ファイン)
300×300dpi(ファインEX)
カラー
200×200dpi
200×200dpi
200×200dpi
送信原稿サイズ
A4/B5/A5
A4/B5/A5
N/A
記録紙サイズ
A4/A5/リーガル/レター
A4/A5/リーガル/レター
A4/リーガル/レター
受信ファックス最大保存ページ数
550枚/200件
180枚/100件
250枚/30件
データ保持(電源オフ/停電)
○/○
○/○
○/−
ワンタッチ
短縮ダイヤル
200件
100件
100件
グループダイヤル
199宛先
99宛先
99宛先
順次同報送信
200宛先
100宛先
101宛先
自動リダイヤル
発信元記録
ポーリング受信/送信/予約
○/○/−
○/−/−
−/−/−
ファクス/電話自動切替
見てから送信
見てから印刷
PCファクス
送受信
送受信
送信のみ

 FAX機能も基本はほぼ同等だが、細かなところで違いが出ている。3機種ともスーパーG3に対応しており、モノクロ、カラーFAXを行う事が出来る。ADFを搭載しているため、複数枚の原稿の送信も便利である。もちろん両面スキャンしFAXできるため便利だ。33.6Kbpsで通信可能であり、その場合の伝送速度はモノクロで約3秒となる。また読取走査線密度はモノクロで8dot/mm×3.85本/mmの標準モード、8dot/mm×7.7本/mmの精細モード/ファインモードが選べるが、加えてPX-M884F/PX-M781Fはさらに高画質な8dot/mm×15.4本/mmの高精細モードと、16dot/mm×15.4本/mmの超高精細モードを、さらにPX-M884Fは操作線密度は8dot/mm×7.7本/mmだが写真モードも選べる。一方、MAXIFY MB5430も300×300dpiのファインEXを選択できる。多少の違いはあるが大きな差ではないだろう。カラーは200×200dpiだ。受信したFAXの印刷はPX-M884FPX-M781FがA4かA5、MAXIFY MB5430がA4なので、A5用紙に印刷できるという点ではPX-M884F/PX-M781Fが優れているが、一般的にはA4用紙で問題ないだろう。受信したFAXはPX-M884Fが550枚または200件、PX-M781Fが180枚又は100件分、MAXIFY MB5430が250枚又は30件分となる。枚数、件数共にPX-M884Fが最も多いため受信件数が多い場合は便利だ。同価格のPX-M781FMAXIFY MB5430では保存できる件数はPX-M781Fが、保存できる枚数はMAXIFY MB5430が多いという事で、優劣付けがたい。ここで大きな違いは、MAXIFY MB5430は電源オフ時は受信したFAXが保持されるが、停電時やコンセントが抜けた場合には保持されないのに対して、PX-M884F/PX-M781Fはそういった場合でも受信した内容が保持される。使い方によっては、電気が供給されなくても受信内容が保持される方が便利だろう。
 ダイヤル機能としては、両機種とも短縮ダイヤル機能を搭載、PX-M884Fは200件、PX-M781FMAXIFY MB5430は100件登録できる他、グループダイヤル、順次同報送信、自動リダイヤルなどの基本的な機能を搭載している。PX-M884Fはボーリング送受信、PX-M781Fはボーリング受信に対応しているほか、この2機種は送信するFAXを液晶で確認してから送信する「見てから送信」と、受信したFAXの内容を液晶で確認した上で印刷するか決めることで用紙を節約できる「見てから印刷」機能も備える。また、細かい機能で見ると、PX-M884Fのみ搭載する機能もあり、送信予約や、同じ宛先の文書をまとめて送信する「バッチ送信」、送信失敗文書の保存機能、送信したFAXをメモリーやフォルダにバックアップする機能、受信したFAXをメールで送信したり、他のFAXに転送する機能などを搭載している。さらに、パソコン内のデータを直接FAXできる「PCファクス」機能自体は3機種とも搭載しているものの、MAXIFY MB5430は送信(パソコン上のデータを画像として送信)のみ対応だが、PX-M884FPX-M781Fは送信だけでなく受信(パソコン上にFAXのデータを受信)することもできる。なお、両機種ともFAX機能だけで受話器がないため通話機能は無いが、モジュラージャックのインとアウトを備えており、アウトに電話機を接続すると通話が可能となる。その際、PX-<884F/PX-M781Fはファクス/電話自動切り替え機能にも対応しているのも便利だ。このように3機種は基本的な機能は似ているが、価格の高いPX-M884Fは細かな点で機能が豊富で、同価格の2製品ではややPX-M781Fの方が便利に作られていると言えるだろう。

操作パネル/インタフェース/本体サイズ
型番
PX-M884F
PX-M781F
MAXIFY MB5430
製品画像
液晶ディスプレイ
4.3型
(75度角度調整可)
4.3型
(90度角度調整可)
3.5型
操作パネル
タッチパネル液晶+物理ボタン
(75度角度調整可)
タッチパネル液晶
(90度角度調整可)
タッチパネル液晶+物理ボタン
インターフェイス
USB他
USB2.0×1
USB2.0×1
USB2.0×1
無線LAN
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(ダイレクト接続対応)
有線LAN
1000BASE-T
100BASE-TX
100BASE-TX
対応OS
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 10/8.1/8/7/Vista SP2
MacOS 10.8.5〜
耐久枚数
15万枚
10万枚
N/A
外形寸法(横×奥×高)
425×578×449mm
425×388×330mm
463×394×351mm
重量
19.1kg
12.2kg
12.9kg
本体カラー
ホワイト
ホワイト
ブラック

 操作パネルは3機種ともタッチパネル液晶を採用している。液晶サイズもPX-M884FPX-M781Fが4.3型、MAXIFY MB5430が3.5型と差はある物の十分なサイズとなっている。タッチパネル液晶を採用するためボタン数が減り、また、モードボタンや設定項目などでは、その項目名を直接タッチして選択できるし、使わないボタンが表示されることも無いため、非常に分かりやすい。液晶内に表示されると、バックライトが入っているため、薄暗い場所でも操作がしやすいというメリットもある。ただし、どこまでをタッチパネル液晶に集約するかは異なっている。PX-M781Fが最もボタン数が少なく、物理ボタンは電源ボタンだけで、ほとんどの操作をタッチパネル液晶に集約している。テンキーやスタートボタンも全て液晶内に表示される。ただし、液晶の左右、液晶と一体化するような黒色デザイン部分にはタッチセンサー式ボタンがあり、液晶左にホームボタン、右にヘルプボタンが搭載されている。どの状態でも使用するこの2つのボタンだけは、独立させることで利便性を高めている。操作パネルと液晶ディスプレイは本体前面に取り付けられ、90度まで起こして角度調整が可能だ。設置する高さに応じて見やすいように調整が可能なので、非常に使いやすいと言える。PX-M884Fは液晶部分はPX-M781Fと同じだ。タッチパネル液晶とその左にタッチセンサー式ホームボタン、右にヘルプボタンとなっている。ただし、PX-M884Fでは一部キーが物理ボタンで用意されている。FAXで使うテンキーと「クイックダイヤル」ボタン、「クリア」ボタンの他、「割り込み」「リセット」「用紙設定」「ジョブ/状態」といった、各種機能の呼び出しボタンが並んでいる。テンキーなどは、液晶内に用意されるよりも、物理ボタンの方が押した感触があるため素早く押せて、間違えにくいという特徴があるため、FAXなどをよく使う環境ではこちらの方がより便利だ。PX-M781Fと同じく本体前面に取り付けられて。持ち上げて角度調整が可能だ。調整角度は75度とPX-M781Fよりやや小さいが、利便性を損なうほどではないだろう。MAXIFY MB5430はタッチパネル液晶を基本としつつ、「スタート」「ストップ」「ホーム」「戻る」のボタンを物理的なボタンとしている。使用頻度の高いボタンは物理ボタンとすることで押しやすさを重視した格好だ。液晶ディスプレイと操作パネルは本体前面から上面にかけて大きく面取りされた部分に埋め込まれている。斜めを向いているためどの方向からでも見やすいが、角度調整できるPX-M884F/PX-M781Fほどではない。どこまでを物理キーにすると便利かについては一概には言えないが、液晶と操作パネルの角度調整が可能で液晶も大きなPX-M884FPX-M781Fの方が、どこに設置したとしても使いやすいと言えるだろう。
 インタフェースは3機種ともUSB2.0に加えて、有線LANと無線LANに対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人には有線・無線LANによりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。無線LANだけでなく有線LANにも対応しているため、ルーターが近い場合や、壁にLANコネクタが用意されている場合、無線LANでは不安定な場合などに重宝する。一方無線LANはWi-Fiダイレクト(MAXIFY MB5430は名称はダイレクト接続)に対応しているため、無線LANルータの無い環境でも、スマートフォンやタブレットと直接Wi-Fi接続が可能となっているのも便利な点だ。PX-M884Fのみ、有線LANが1000BASE-Tに対応しており、PX-M781FMAXIFY MB5430よりも印刷データーやスキャンデータなどの高速転送が可能だ。
 対応OSはPX-M884FPX-M781FがWindows 10/8.1/8/7/Vista/XPに対応しているのに対して、MAXIFY MB5430はWindows XPには非対応だ。MacOSもPX-M781Fは10.6.8以降、MAXIFY MB5430は10.8.5以降と違いがある。使用するパソコンのOSには注意したいところだ。耐久枚数はPX-M884Fが15万枚、PX-M781Fが10万枚をうたっており、一般的な家庭用プリンターが1万〜1万5000枚である事を考えるとかなり高耐久に作られている安心感がある。MAXIFY MB5430もビジネス向けをうたっているため、ある程度高耐久である事は予想されるが具体的な数値は出ていない。
 本体サイズを見てみよう。コンパクトさが追求される家庭向けプリンタと比べて、ビジネスプリンタは速度や給紙枚数の多さ、高耐久性が求められるため、大型になりがちだ。家庭用複合機の上位機種EP-881Aの場合349×340×142mmとなっており、これと比較してみよう。PX-M884Fは425×578×449mmとなっており、かなり大きいことが分かる。横幅は76mm大きいだけだが、奥行きは238mmも大きく、高さは307mmも大きい。奥行きに関しては背面給紙にも対応していることに加えて、増設の給紙カセットの対応やインクパックシステムの構造なども関係しているだろう。また高さに関しても、前面給紙カセットの下にインクパックの収納スペースが必要なほか、ADFも搭載していることもある。ただ、いずれにしてもコンパクトさよりも機能や使い勝手、耐久性などを重視しているといえる。PX-M781Fは425×388×330mmとEP-881Aと比べると全体的に大きい。トレイが2段という事もあって高さが大きくなっており、存在感がある。しかし、設置面積は意外と大きくはなく、横幅は一昔前の家庭用複合機より小さく、奥行きもEP-881Aと5cmも変わらない。また、PX-M884Fと比べるとかなり小型化していると言える。ADFを搭載し、500枚まで給紙できること考えると十分コンパクトだと言えるだろう。一方、MAXIFY MB5430は463×394×351mmとPX-M884Fほどではないが、PX-M781Fと比べても一回り大きい印象だ。しかも、このサイズは前面給紙カセットを最もコンパクトにした状態で用紙をセットする事ができない。A4用紙をセットした状態で置いておくとすると、奥行きは459mmになってしまう。またPX-M884FPX-M781Fと異なり、ADFが収納式であるため、ADF使用時だと高さは389mmになる。つまりPX-M884F/PX-M781Fと同じ条件でA4用紙をセットしADFを展開すると、463×459×389mmとなる。サイズ面ではPX-M781Fが圧倒的に有利だと言える。



 3機種は文書向けのインク構成、高速印刷、低印刷コスト、両面ADF、FAXを機能を搭載している点で似た製品に思えるが、細かく見ていくと違いが見えてくる。PX-M884Fは他の2機種より1万円高いだけあり、機能面では抜きに出ている。印刷速度、印刷コスト、給紙機能、スキャン、FAX機能、操作性、耐久性などどれを見ても欠点が少ない。欠点と言えばフチなし印刷ができない点と、本体サイズが大きいことくらいだろうか。プリント機能やFAX機能にPX-M884Fだけが搭載する機能も多いだけでなく、給紙カセットの増設が可能であったりと将来的な拡張も可能としている点でも安心感がある。できるだけ機能に妥協したくない、またPX-M884Fだけの機能に惹かれるところがあればPX-M884Fで決まりだ。一方同価格のPX-M781FMAXIFY MB5430から選ぶ場合はどこを重視するかになる。MAXIFY MB5430はとにかく低印刷コストと、ビジネス用途での利便性を重視している事が見て取れる。そのためクセの強い製品になっており、印刷解像度が低い、フチなし印刷ができない、本体が大きいなどがその例だ。逆に言うと、PX-M781Fはビジネス向けに重視していながらそれ以外の用途にも使えるように基本的な機能は備えている。そこで、MAXIFY MB5430は限られた人に向いているといえるだろう。印刷コストの安さはもちろん、両面同時スキャン、本体でのクラウドアクセスが気に入ったなら、MAXIFY MB5430という選択肢もありだ。ただし、フチなし印刷ができない点や本体サイズ、操作性などの劣る点が妥協できるならという条件付きだ。逆にそれ以外ならPX-M781Fの方が使いやすいだろう。本体サイズもやや小さく、フチなし印刷も可能で、普通紙以外への印刷画質も高い。FAX機能やネットワークを利用した便利な機能も豊富で操作パネルも使いやすい。耐久枚数が高く、交換式メンテナンスボックスに対応するなど長く使える機能が搭載されているのも安心だ。印刷速度に関しても、先に発売され速いと言われていたMAXIFY MB5430に対して、後に発売されたPX-M781Fはモノクロは同等、カラーは圧倒的に速くなっており速度面でも有利だ。また、MAXIFY MB5430特有の機能も、印刷コストに関してはPX-M781Fでも十分低価格だし、PX-M781Fも同時ではないが両面スキャンに対応している。一般的におすすめできるのはPX-M781Fだといえる。
 
(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/


PX-M884F
PX-M781F
MAXIFY MB5430