小ネタ集
2018年末時点のプリンタ
〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜
(2019年4月15日公開)

プリンタ比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンタ比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。


FAX機能付き複合機(2万円以下の機種+EW-M670FT)
 
 FAX機能付き複合機の中で下位機種に当たる2万円以下の機種である。エプソンからPX-M680F(19,980円)と、キャノンからTR4530(14,880円)、MAXIFY MB2730(19,800円)、MAXIFY MB2130(16,880円)となる。価格は比較的近く、TR4530を除く3機種はビジネス向けに位置づけられている一方、TR4530は家庭向けとも言える機種だ。PX-M680FMAXIFY MB2730は同価格だがどのような違いがあるのだろうか。また、TR4530MAXIFY MB2130はそれよりも安いが、機能面ではどの点が劣るのか詳しく見ていこう。また、価格は54,980円と高いが、EW-M670FTも比較対象としている。機能面ではPX-M680Fに近く比較しやすいこと、また、かなりの枚数が印刷できるインクが付属しており、その分を考えると実質的な本体価格は安いとも言えるためである。

プリント(画質・速度・コスト)
型番
エプソン
エプソン
キャノン
キャノン
キャノン
型番
PX-M680F
EW-M670FT
TR4530
MAXIFY MB2730
MAXIFY MB2130
製品画像


実売価格(メーカーWeb/税抜き)
19,980円
54,980円
14,880円
19,880円
16,880円
インク
色数
4色
4色
4色
4色
4色
インク構成
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
顔料ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成
各色独立
各色独立インクタンク
(挿すだけ満タンインク方式)
黒独立、カラー3色一体
各色独立
各色独立
顔料/染料系
顔料
(つよインク200X)
染料(カラー)/顔料(黒)
(アルバム保存300年/耐光性7年/耐オゾン性2年)
染料(カラー)/顔料(黒)
顔料
(MAXIFY用新顔料インク)
顔料
(MAXIFY用新顔料インク)
インク型番
86番(大容量)
85番(標準容量)
ヤドカリ(顔料)
ハリネズミ(染料)
345XL/346XL(大容量)
345/346(標準容量)
1300XL番(大容量)
1300番(標準容量)
1300XL番(大容量)
1300番(標準容量)
ノズル数
1568ノズル
784ノズル
1280ノズル
4352ノズル
4352ノズル
カラー:各256ノズル
黒:800ノズル
カラー:各128ノズル
黒:400ノズル
全色:各320ノズル
カラー:各1024ノズル
黒:1280ノズル
カラー:各1024ノズル
黒:1280ノズル
最小インクドロップサイズ
2.8pl(MSDT)
3.3pl(MSDT)
N/A
N/A
N/A
最大解像度
4800×2400dpi
4800×1200dpi
4800×1200dpi
600×1200dpi
600×1200dpi
PrecisionCoreプリントヘッド
印刷速度
L判縁なし写真(メーカー公称)
N/A
75秒
52秒
N/A
N/A
A4普通紙カラー(ISO基準)
10.0ipm
8.0ipm
4.4ipm
15.5ipm
13.0ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準)
20.0ipm
15.0ipm
8.8ipm
24.0ipm
19.0ipm
印刷コスト
L判縁なし写真
N/A
5.9円
N/A
N/A
N/A
A4カラー文書
11.4円
0.9円
14.1円
8.9円
8.9円
A4モノクロ文書
3.2円
0.4円
N/A
3.1円
3.1円

 それでは、プリントの画質・速度・コスト面を見てみよう。5機種ともブラック、シアン、マゼンダ、イエローの4色構成である。しかし、PX-M680FMAXIFY MB2730MAXIFY MB2130の3機種は全色顔料インク、EW-M670FTTR4530はブラックが顔料インク、カラーが染料インクを採用しており、異なる。PX-M680Fは最小インクドロップサイズが2.8plとやや大きく、同じエプソンの家庭用複合機の上位モデルは6色で1.5plである事と比べると、ある程度粒状感が有るといえる。またそれ以上に、顔料インクであるため、写真用紙に印刷した際に、表面の光沢感が薄れポストカードのようになってしまうほか、発色も悪いという問題もある。フチなし印刷が行えるため、写真印刷が全く行えないほどではないが、本格的な写真印刷には向かない。MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130の最小インクドロップサイズは非公表ながら、海外の同機能のモデルがカラー5pl、ブラック11plとなっており、これと同等である可能性が高い。最小インクドロップサイズが特に大きいことに加えて印刷解像度も600×1200dpiと低く、さらにフチなし印刷も行えないため、そもそも写真印刷は考えられていないと言えるだろう。一方のEW-M670FTTR4530はカラーは染料インクを採用しているため、発色が良く用紙本来の光沢感も出る事から、PX-M680FMAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130よりは写真印刷に向いているとは言える。とはいえ、最小インクドロップサイズはEW-M670FTが3.3plとPX-M680Fより大きく、TR4530は非公開となっているがおそらく2pl前後と思われるため、やはり家庭用複合機の上位モデルと比べると粒状感がある。さらに、4色の内ブラックインクが顔料インクで、写真用紙には使用できないため、染料のカラーの3色で黒を表現する。どうしても非常に濃い茶色にしかならず、全体にコントラストが弱くなるという問題がある。PX-M680Fとは違う問題があるこの2機種だが、5機種の中ではまだ写真印刷に向いていると言える。もちろん両機種ともフチなし印刷も可能だ。
 逆に普通紙印刷に関しては、5機種とも顔料インクを採用するため、染料インクよりメリハリのある印刷が行える。また、耐水性もあることから、濡れたりマーカーを引いても滲まないというメリットもある。ただしEW-M670FTTR4530を除く3機種はカラー、モノクロ問わずこの恩恵を得られるが、EW-M670FTTR4530はブラックインクだけ顔料インクなので、黒色部分だけだ。黒と言ってもグレー部分は染料のカラーインクを使用するし、背景に色が付いている場合は、染料インクの上に顔料インクが打てないため、やはりカラーインクで黒を表現することになるが、それでも文書やFAXなどでは黒色が多いため、十分効果を発揮するだろう。また、PX-M680FとEW-M670Fは普通紙への印刷解像度を360dpiから600dpiへアップした新しいプリントヘッドを採用しており、より普通紙印刷の画質は高くなっている。特にPX-M680Fは普通紙に印刷した際のシアンとマゼンタをより鮮やかにした他、エッジ処理も精密になり、さらのメリハリはアップしている。逆にMAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130は、最小インクドロップサイズがここまで大きいと、普通紙印刷でも文字以外の写真やグラフなどでは粒状感が他機種より目立つ可能性がある。ともあれ、5機種とも普通紙印刷画質を意識したプリンタである事は確かだ。
 印刷速度を見てみよう。写真の印刷速度が公表されているのは、染料インクを採用するEW-M670FTTR4530のみで、その点で見ても他の3機種は写真印刷を考えていない事が分かる。EW-M670FTは75秒、TR4530は52秒と多少の差はあるが、家庭用の写真向け複合機の上位機種では13秒といった機種も存在する事を考えれば、両機種ともかなり遅めだ。TR4530は上位モデルよりノズル数がかなり少なく、その点が影響したと言える。EW-M670FTはノズル数は家庭用の機種と比べるとやや少ない程度で、3つのサイズのドットを打ち分ける事で画質と速度を両立するMSDTにも対応しているが、ビジネス向けの機種と言うことで文書印刷用にチューニングされているためと考えられる。PX-M680FEW-M670FTと比べるとノズル数が倍だが、やはりビジネス向けの機種と言う事であまり速くはないだろう。PX-M680Fの上位機種の前モデルPX-M740Fが同じノズル数だったが、41秒だった。
 一方、文書の印刷速度は5機種とも公表されている。PX-M680はA4カラー文章が10.0ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、モノクロが20.0ipmとなっており、非常に高速だ。上位機種と比べるとカラー印刷はやや遅いが、十分高速な部類に入る。EW-M670FTは、ノズル数がモノクロ、カラー共に半分であるためもカラー文書が8.0ipm、モノクロ文書が15.0ipmと全体的に遅くなる。それでもインクジェットプリンタとしては十分高速だと言える。そして印刷速度を追求したMAXIFY MB2730はさらに高速だ。カラー15.5ipm、モノクロ24.0ipmと、モノクロはPX-M680Fの1.5倍、カラーは1.2倍となる。もともと文書印刷に特化した設計の上に、1枚目の印字中に2枚目を重ねて搬送させる「重ね連送」を行っており、高速化を図っている。MAXIFY MB2130は「重ね連送」を行わないため、それぞれ13.0ipmと19.0ipmになるが、カラー印刷はPX-M680Fより高速だ。一方、TR4530MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130よりノズル数がかなり少なく、カラーが4.4ipm、モノクロが8.8ipmとEW-M670FTと比べても半分程度の速度になる。印刷枚数が多い場合は他の4機種が良さそうだ。逆に、TR4530を除く4機種は差はあるとはいえ、普通紙印刷は高速に行える事が分かる。
 ちなみに使用するインクはPX-M680Fは「つよインク200X」であり、アルバム保存300年、耐光性45年、耐オゾン性30年と、染料インクの家庭用プリンタに劣らない耐保存性である。一方のEW-M670FTはインクに名称が無く、アルバム保存は同等の300年だが、耐光性は7年、耐オゾン性は2年となっている。つまり飾っておく場合はPX-M680Fと比べるとやや色あせしやすいことになる。TR4530はインクの耐保存性に関しての記載は無いが、アルバム保存100年に対応したChromaLife 100に対応していないということなので、100年より短い可能性が高い。MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130は「MAXIFY用新顔料インク」となっており、こちらも耐保存性は不明であるが文書向けインクなので、写真の耐保存性はそれほど高くないと思われる。
 印刷コストを見てみよう。まずは文書の印刷コストである。PX-M680FはA4カラー文書が11.4円、A4モノクロ文書が3.2円となる。上位モデルPX-M780Fなどと比べるとやや高くなるが、この印刷コスト自体は平均的な値だ。一方MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130はカラー文書8.9円、モノクロ文書3.1円とモノクロはPX-M680Fと同等だが、カラーが低く抑えられている。しかし、同じMAXIFYシリーズの上位機種よりはインクカートリッジが大容量ではないため、印刷コストは上がっている。TR4530は家庭用のインクカートリッジで、しかもカラー3色が一体型と言うこともあり、14.1円とかなり高くなる。いずれにしてもこの価格帯になると、印刷コストが上がるのは共通の傾向のようだ。さて、残るEW-M670FTだが、この機種は特殊だ。他の4機種はカセット状のインクカートリッジを採用しており、インクが無くなればインクカートリッジごと交換する従来の方式だ。これに対して、EW-M670FT本体の右側にエコタンクという大型タンクを搭載しており、ここにボトルからインクを補充する方式となる。ボトル1本でインクタンクが満タンになるが、かなり大容量となっている。満タンのインクタンクでカラー文書を印刷すると、顔料ブラックインクは7,500枚、カラーインクは約6,000枚まで使用できるいうのは、カートリッジタイプと比べて圧倒的に多い。それでいて、価格は2,150円と1,150円とかなり安めだ。例えばEP-M680Fのインクカートリッジはブラックインクが1,100ページ、カラーインクが600ページ印刷ができて、それぞれ3,790円と1,590円となる。そのため、EW-M670FTの印刷コストはA4カラー文書が0.9円、A4モノクロ文書が0.4円と圧倒的に安い。PX-M680Fとの比較では、カラーは約13分の1、モノクロは8分の1、MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130と比べても、カラーは約10分の1、モノクロは約8分の1となる。L判写真フチなしも5.9円となるが、これは用紙代約4.3円が込みなので、実質インク代は1.6円程度だ。他の4機種は写真の印刷コストを出していないので比較しにくいが、家庭用の複合機EP-881Aが20.6円、インク代だけなら16.3円程度である事を考えると、10分の1以下だ。その分、本体が高価だとも言えるが、ここにも、他機種との違いがある。一般的なプリンターに付属するインクは動作確認用で、初期充填を行うと残りはかなり少ない。それに対してEW-M670FTはインクボトルが丸々1本ずつ付属する。初期充填を済ませた後でもカラー文書を3,600枚以上印刷できるという事なので、PX-M680F換算ではブラックインクが約3.5本分、カラーインクが各色6本分に相当する。これを計算すると、3,790円×3.5本+1,590円×6本×3色となり、41,885円かかってしまう。つまり付属のインクを使い切る頃には、本体の価格は実質13,000円程度になり、その後も他機種より安い印刷コストで利用できる事になる。MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130は印刷コストがやや安いが、それでも状況は大きくは変わらないだろう。つまり、最初から大量に印刷することが予想される場合は、ランニングコストも併せて考えたいところだ。


プリント(給紙・排紙関連)
型番
PX-M680F
EW-M670FT
TR4530
MAXIFY MB2730
MAXIFY MB2130
製品画像
対応用紙サイズ
L判〜A4
L判〜A4
L判〜A4
L判〜A4
(フチ無し印刷非対応)
L判〜A4
(フチ無し印刷非対応)
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面
前面
カセット(250枚)
カセット(250枚)
トレイ(100枚)
カセット上段(250枚)
カセット下段(250枚・普通紙A4/レター/リーガル)
カセット(250枚)
その他
排紙トレイ自動開閉
用紙種類・サイズ登録
○(カセット収納連動)
○(カセット収納連動)
○(トレイ収納連動)
○(カセット収納連動)
○(カセット収納連動)
用紙幅チェック機能

 続いて、給紙・排紙関連の機能を見てみよう。使用できる用紙はいずれもL判からA4までとなる。ただし、MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130は前述のようにフチなし印刷を行う事ができない点は注意が必要だ。給紙に関しては、TR4530を除く4機種とも前面カセット式となっている。4機種ともカセット1段にセット可能な枚数は、A4普通紙で250枚とかなり多くなる。MAXIFY MB2730を除く3機種は、これが1段となる。一方MAXIFY MB2730はカセットが2段となっている。同じサイズのカセットが2段なので両方にA4用紙をセットする事も可能だ。各カセットで250枚セット可能なので、合計500枚となり、大量の印刷やFAX受信が多い環境でも対応できる。下段は普通紙のみで、サイズもA4、レター、リーガルのみとなるが、下段にA4普通紙、上段にB5普通紙と言った使い方も可能だ。4機種とも給紙カセットが本体から飛び出した形となっているが、MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130には注意点がある。MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130の前面給紙カセットはカタログなどでは本体に収まっているように見えるが、実際にはこの状態では、たとえ小さな用紙であってもセットでする事はできない点だ。使用時にはカセットを伸ばして使う事になるため、本体から飛び出てした状態が標準と考えた方が良いだろう。本体サイズも収納時の奥行きでは使えない点は注意が必要だ。PX-M680F/EW-M670FTはカセットを縮める事はできないが、排紙トレイなどと一体デザインとなっており、特にEW-M670FTはエコタンクも同じだけ飛び出しているため、前面給紙カセットだけが飛び出ているようなイメージは薄い。本体サイズの数値も給紙カセットの飛び出し分が含まれている。残るTR4530だが、前面給紙トレイ方式となる。前面給紙なのは同じだが、「トレイ」なので、前面のカバーを開けた上に乗せるというイメージだ。そのため用紙をセットしたままではカバーを閉じることができず、かといって他機種のようにカバーがあるわけでは無いので、ホコリが積もってしまう。この状態の用紙がプリンターに入ると故障の原因にもなるため、できれば使い終えたら用紙を取り除くことが望ましい。その点ではTR4530は不便と言える。給紙枚数も100枚と少ないため、大量印刷や常時電源を付けておき、プリントやFAX受信を頻繁に行うような使い方には向いていないだろう。
 ちなみに、5機種とも用紙種類とサイズの登録機能を搭載している。いずれもTR4530を除く4機種は前面給紙カセットを挿し込むと、TR4530は用紙をセットしやすいように引き出したトレイを元に戻すと自動的に登録画面が表示されるため便利だ(されないようにもできる)。そして、この登録内容と、印刷時の用紙設定が異なっている場合、メッセージが表示される仕組みだ。また、液晶ディスプレイでメニューから手動で登録も可能である。できる限り印刷ミスによる用紙とインクの無駄遣いをなくす工夫がなされている。さらにPX-M680FEW-M670FTは、印刷時に実際の用紙幅をセンサーでチェックし、用紙の無いところにはインクを打たないようにする機能も搭載する。設定ミスによりプリンター内部を汚さないように工夫がなされている。

プリント(付加機能)
型番
PX-M680F
EW-M670FT
TR4530
MAXIFY MB2730
MAXIFY MB2130
製品画像
自動両面印刷
○(普通紙のみ)
○(普通紙のみ)
○(普通紙のみ)
○(普通紙のみ)
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
○(オートフォトファイン!EX)
○(オートフォトファイン!EX)
○(自動写真補正)
特定インク切れ時印刷
○(黒だけでモード・5日間のみ)
自動電源オン/オフ
−/○
−/○
○/○
○(時刻指定)/○(時刻指定)
○(時刻指定)/○(時刻指定)
廃インクタンク交換/フチなし吸収材エラー時の印刷継続
−/−
○/−
−/−
−/−
−/−

 自動両面印刷機能も5機種とも対応している。ただしEW-M670FTを除く4機種は普通紙のみ対応なのに対して、EW-M670FTはハガキへの両面印刷にも対応している。通信面と宛名面を1回のセットで印刷出来るため便利だ。また、PX-M680F/EW-M670FTは「オートフォトファイン!EX」、TR4530は「自動写真補正」という写真の画質補正機能も搭載している。逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われるため、気楽に写真印刷が行えるようになっている。PX-M680Fは写真向けプリンターとは言えないが、写真の補正機能や耐保存性などの面でできる限り高画質に印刷できるよう工夫されているといえる。ちなみに、MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130はこういった機能は搭載していない。
 最近の機種では搭載機種が増えた印刷が実行されると自動的に電源がオンになる機能と、ほぼ必須になりつつある、指定した時間操作がないと自動で電源がオフになる機能だが、FAX付きモデルでは状況が異なる。常時電源を入れておかなければFAX受信が行えないためである。そのため、PX-M680F/EW-M670FTは自動電源オフのみ搭載している。TR4530は自動電源オンとオフの両方を備えているため、離れた場所から印刷を実行しても自動的に電源が入るため便利だ。ただ、前述のように常時用紙をセットしておきにくいため、自動で電源がオンになっても結局は用紙をセットしにプリンタの所まで行かなければならないとも言える。そしてMAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130は自動電源オン・オフというよりは、時間指定による電源オン・オフが設定できる。オフィスの就業時間や、商店の営業時間などに合わせて決まった時間に電源を入れ、決まった時間に電源が切れるというものである。ある意味オフィス向けという機種では、この機能は便利な場合もあるだろう。
 一方、EW-M670FTのみ便利な点として、交換式メンテナンスボックス(廃インクタンクの交換)に対応している事がある。メンテナンスボックスとはクリーニング時に排出される廃インクを貯めるもので、満タンになると通常は修理に出して交換する必要があり、プリンターが使えない期間が発生し、交換費用もそれなりに掛かってしまう。しかしEW-M670FTはユーザー自身で簡単に交換できるようになっている。印刷枚数が多いと思われる機種だけに、使用できない期間の発生を防ぐことができるこの機能はうれしいところだ。ただしフチなし印刷時にはみ出したインクを吸収させる「フチなし吸収材」が満タンになった際は修理対応となる。

スキャン
型番
PX-M680F
EW-M670FT
TR4530
MAXIFY MB2730
MAXIFY MB2130
製品画像
読み取り解像度
1200dpi
1200dpi
600dpi
1200dpi
1200dpi
センサータイプ
CIS
CIS
CIS
CIS
CIS
原稿取り忘れアラーム
ADF
原稿セット可能枚数
35枚
30枚
20枚
50枚
50枚
原稿サイズ
A4/レター/リーガル
A4/レター/リーガル
A4/レター/リーガル
216×356mm〜148×148mm
216×356mm〜148×148mm
両面読み取り
読み取り速度
カラー
7.0ipm
5.0ipm
N/A
N/A
N/A
モノクロ
7.0ipm
5.0ipm
N/A
N/A
N/A
スキャンデーターのメモリカード保存
○(JPEG/PDF・USBメモリのみ)
○(JPEG/PDF・USBメモリのみ)
○(JPEG/PDF・USBメモリのみ)

 続いて、スキャナ部を見てみよう。解像度はTR4530を除く4機種が1200dpi、TR4530が600dpiとなる。TR4530と他の4機種の間に差があり、さらに家庭向けにはもっと高解像度の機種があるが、実際には紙などの反射原稿しかスキャンできないことを考えると1200dpiでも十分で、600dpiでも大きな問題にはならない。というのも、一般的には文書なら200〜300dpi、写真なら300〜600dpi程度で、よほど綺麗に保存したい場合に1200dpiでスキャンすると言った程度だ。実際写真サイズを1200dpiで取り込むと約4,200×6,000ドットとなり2500万画素相当なので十分といえる。また、写真を同じサイズで印刷すると言った場合は、600dpiでも1200dpiでも印刷結果にほとんど差は無い。その点ではTR4530でも実用上は問題にならないし、他の4機種なら、いざというときに便利という程度だろう。なお、5機種ともCIS方式であるため、分厚い本など浮いてしまう原稿は苦手で、ピントが合わずぼけたような画像となってしまう点は共通だ。
 EW-M670FTTR4530を除く3機種はスキャンした原稿をパソコンを使わずにUSBメモリに保存する機能を搭載している。パソコン無しで簡単にスキャンが行えるできるため便利だ。JPEG又はPDF形式での保存にも対応している。そしてFAX付きモデルと言うことで5機種ともADFを搭載している。上位機種と異なり両面スキャンには対応しないが、複数枚の原稿のコピーやFAX送信時に重宝するだろう。ちなみにセット可能枚数はPX-M680Fが35枚、EW-M670FTが30枚、TR4530が20枚、MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130が50枚までと差がある。このADFは速度も公表されており、PX-M680Fがカラー・モノクロ共に7.0ipm、EW-M670FTがカラー・モノクロ共に5.0ipmとなる。同じADFでも速度に差がある。ADFの速度がプリント速度より遅いため、連続コピー時にはスキャンスピードの方がボトルネックとなる事から、連続コピーの速度を重視するならADFの速度も気になるところだ。ちなみにTR4530/MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130はADFの速度を公表しておらず不明だ。


ダイレクト印刷
型番
PX-M680F
EW-M670FT
TR4530
MAXIFY MB2730
MAXIFY MB2130
製品画像
カードスロット
対応メモリカード
USBメモリ/外付けHDD/外付けDVD対応
○/○/−
−/−/−
−/−/−
○/−/−
○/−/−
メモリカードからUSBメモリ/外付けHDDへバックアップ
−/−
−/−
−/−
−/−
−/−
対応ファイル形式
JPEG/TIFF/PDF(スキャンto外部メモリー機能で作成したPDFのみ)
JPEG/TIFF/PDF(本機でスキャンしてUSBメモリーに保存したPDFのみ)
JPEG/TIFF/PDF(本機でスキャンしてUSBメモリーに保存したPDFのみ)
色補正機能
>フチなし/フチあり
赤目補正
手書き合成
PictBridge対応
赤外線通信
各種デザイン用紙印刷

 ダイレクト印刷機能を見てみよう。とはいえ5機種ともメモリカードスロットは搭載しているわけではないため、メモリカードから写真を印刷といった事はできない。ただし、PX-M680FMAXIFY MB2730MAXIFY MB2130の3機種は、USBメモリからのダイレクト印刷に対応している。そのため、デジカメの写真を印刷するというよりは、前述のスキャンしてUSBメモリーに保存したデータを印刷する場合などが想定されているだろう。対応ファイル形式も一般的なJPEGとTIFFに加えて、3機種ともスキャンしてUSBメモリーに保存する際にPDF形式で作成したファイルからの印刷にも対応しているのも、こういった使い方が想定されているからだろう。
 なお、写真も印刷できないわけではない。USBメモリに写真を入れておけば一覧から写真を選んで写真のダイレクト印刷ができるし、その場合に用紙サイズやフチなし/ありの設定(PX-M680Fのみ)、日付表示の有無、赤目補正(PX-M680Fのみ)などもできる。PX-M680Fはオートフォトファイン!EXも利用可能だ。画質上は写真印刷には向いていないが、印刷ができないというわけではない。この点ではフチなし印刷が可能なPX-M680Fの方が、MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130よりも写真らしい印刷が可能と言えるだろう。

スマホ/クラウド対応
型番
PX-M680F
EW-M670FT
TR4530
MAXIFY MB2730
MAXIFY MB2130
製品画像
スマートフォン連携
対応端末
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 10.0以降)
Android 4.4以降
スマートスピーカー対応
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 10.0以降)
Android 4.4以降
スマートスピーカー対応
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 10.0以降)
Android 4.4以降
スマートスピーカー対応
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 10.0以降)
Android 4.4以降
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 10.0以降)
Android 4.4以降
NFC対応
写真プリント
ドキュメントプリント
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
スキャン
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
クラウド連携
スマートフォン経由/本体
○/−
○/−
○/−
○/○
○/○
オンラインストレージからの印刷
SNSからの印刷
○(コメント付き可)
○(コメント付き可)
写真共有サイトからの印刷
メールしてプリント
リモートプリント
スキャンしてリモートプリント

 スマートフォンとの連携機能も5機種とも搭載しており、iPhoneやiPod touch、iPadと、Android端末に対応している。いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることでプリント又はスキャンが行える。写真とドキュメント印刷、スキャンに対応しており、様々な内容をプリント可能だ。写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定(PX-M680F/EW-M670FTのみ)まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。ドキュメント印刷は、PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もできる便利だ。また、5機種ともスマートフォン上からスキャンを実行し、データをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。出かける前に紙の情報をさっとスマートフォンに転送するといった使い方ができるため便利だろう。
 スマートフォンとの接続は、無線LAN(Wi-Fi)で行うが、無線LANルータを経由する方法と、ダイレクトに接続する「Wi-Fiダイレクト」(キヤノンはダイレクト接続)が選べる。Wi-Fiダイレクトの場合PX-M680FはNFCでの接続設定に対応している。少しでも簡単に接続できるよう工夫さえれている点は評価できるが、対応機種はAndroidに限られる上、使うのはWi-Fiダイレクトの場合のみである。無線LANルーター経由の方がより便利に使えるため、こちらを利用する場合は意味が無いし、Wi-Fiダイレクトの場合でも、手動設定でもそれほど難しくはない。NFCがあれば、プリンターと同じネットワークに入っていない人が来た場合でも、さっと印刷ができて便利だが、無くてもそれほど不便ではないだろう。
 また、PX-M680FEW-M670FTTR4530はスマートスピーカーに対応している。AlexaとGoogleアシスタント対応端末に対応しており、声だけでテンプレートを印刷させることができる。2018年12月現在でPX-M680F/EW-M670FTは、デザインペーパー、フォトプロップス、カレンダー、ノート、方眼紙、五線譜などのエプソン独自のものと、Alexaに登録された買い物リスト、やることリストなどの印刷に対応する。TR4530はナンプレ、ぬりえ、レポート用紙、チェックリスト、五線譜などキャノン独自のものの印刷と、プリンターの状態の確認が行える。今後増えていくことが予想される。
 クラウドとの連携機能も5機種とも搭載されており、オンラインストレージから印刷が可能だ。ここで大きな違いは、PX-M680F/EW-M670FT/TR4530はスマートフォンのアプリとして搭載しているのに対して、MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130はスマートフォン上だけでなく、プリンタ単体でもクラウドにアクセスし印刷ができる点が上げられる。実際の操作性はスマートフォンからの方が上だが、選択肢が広いという点ではMAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130が便利だ。
 さらにネットワークを利用したプリント機能として、PX-M680F/EW-M670FTは印刷したい写真や文書を本機にメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、PX-M680F/EW-M670FTでスキャンした画像を離れた場所の対応複合機で直接印刷できる「メールdeリモート印刷」、通常のプリント同じ操作で、外出先など離れた場所から自宅のPX-M680F/EW-M670FTで印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。一方のTR4530/MAXIFT MB2730/MAXIFY MB2130はこれらの機能は搭載しない。クラウドのアクセスはMAXIFYの2機種が便利で、リモートプリント機能はエプソンの2機種が便利だ。

コピー機能
型番
PX-M680F
EW-M670FT
TR4530
MAXIFY MB2730
MAXIFY MB2130
製品画像
等倍コピー
拡大縮小
倍率指定
○(25〜400%)
○(25〜400%)
○(25〜400%)
○(25〜400%)
○(25〜400%)
オートフィット
定型変倍
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー
割り付け(2面/4面)
○/○
○/−
○/○
○/○
○/○
バラエティコピー
IDコピー
影消しコピー
パンチ穴消しコピー
IDコピー
影消しコピー
パンチ穴消しコピー
ページ順コピー
枠消しコピー
IDコピー
ページ順コピー
枠消しコピー
コピー予約
IDコピー
ページ順コピー
枠消しコピー
コピー予約
IDコピー

 コピー機能を見てみよう。単純なコピー機能としては、5機種とも単純な等倍コピーだけでなく、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「オートフィット」機能や、原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行う「定型変倍」機能、さらに25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える機能を搭載した高性能な物だ。また、4機種とも2枚の原稿を1枚に縮小してコピーする機能にも対応する。さらにEW-M670FTを除く4機種は4枚の原稿を1枚に縮小する事も可能だ。その他、PX-M680F/EW-M670FTは免許証などの裏表をそれぞれスキャンして1枚の用紙に並べて印刷する「IDコピー」、原稿の周囲や、冊子のとじ目部分などの影を消してくれる「影消しコピー」、パンチ穴を写らないようにコピーする「パンチ穴消しコピー」に対応する。一方、TR4530は複数ページの原稿を、1部ずつコピーする「ページ順コピー」、原稿の周囲や、冊子のとじ目部分などの影を消してくれる「枠消しコピー」、「IDコピー」の対応する。MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130はこれらの機能に加えて、コピー実行中でも次の原稿の読み取り操作ができる「コピー予約」も可能だ。それぞれ機能は異なるが、複合機単独で様々なコピーが行えるよう工夫されている。

FAX機能
型番
PX-M680F
EW-M670FT
TR4530
MAXIFY MB2730
MAXIFY MB2130
製品画像
通信速度
33.6kbps
33.6kbps
33.6kbps
33.6kbps
33.6kbps
画質設定
モノクロ
8dot/mm×3.85本/mm(標準)
8dot/mm×7.7本/mm(精細)
8dot/mm×15.4本/mm(高精細)
16dot/mm×15.4本/mm(超高精細)
8dot/mm×3.85本/mm(標準)
8dot/mm×7.7本/mm(精細)
8dot/mm×7.7本/mm(写真)
8dot/mm×3.85本/mm(標準)
8dot/mm×7.7本/mm(ファイン)
8dot/mm×7.7本/mm(写真)
300×300dpi(ファインEX)
8dot/mm×3.85本/mm(標準)
8dot/mm×7.7本/mm(ファイン)
300×300dpi(ファインEX)
8dot/mm×3.85本/mm(標準)
8dot/mm×7.7本/mm(ファイン)
300×300dpi(ファインEX)
カラー
200×200dpi
200×200dpi
200×200dpi
200×200dpi
200×200dpi
送信原稿サイズ
A4/B5/A5
A4
N/A
N/A
N/A
記録紙サイズ
A4/A5/リーガル/レター
A4/リーガル/レター
A4/リーガル/レター
A4/リーガル/レター
A4/リーガル/レター
受信ファックス最大保存ページ数
180枚/100件
100枚/100件
50枚/20件
250枚/30件
250枚/30件
データ保持(電源オフ/停電)
○/○
○/○
○/−
○/−
○/−
ワンタッチ
短縮ダイヤル
100件
100件
20件
100件
100件
グループダイヤル
99宛先
99宛先
19宛先
99宛先
99宛先
順次同報送信
100宛先
100宛先
21宛先
101宛先
101宛先
自動リダイヤル
発信元記録
ポーリング受信/送信/予約
○/−/−
○/ー/−
−/−/−
−/−/−
−/−/−
ファクス/電話自動切替
見てから送信
見てから印刷
PCファクス
送受信
送受信
送信のみ
送信のみ
送信のみ

 FAX機能も基本はほぼ同等だが、細かなところで違いが出ている。5機種ともスーパーG3に対応しており、モノクロ、カラーFAXを行う事が出来る。ADFを搭載しているため、複数枚の原稿の送信も便利である。33.6Kbpsで通信可能であり、その場合の伝送速度はモノクロで約3秒となる。また読取走査線密度はモノクロで8dot/mm×3.85本/mmの標準モード、8dot/mm×7.7本/mmの精細モード・ファインモードが5機種とも選べる。加えてPX-M680Fはさらに高画質な8dot/mm×15.4本/mmの高精細モードと、16dot/mm×15.4本/mmの超高精細モードを、EW-M670FTは解像度は精細と変わらないが写真モードを、TR4530もファインと同じ解像度の写真モードと、300dpi×300dpiのファインEXモード、MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130もファインEXを選択できる。多少の違いはあるが大きな差ではないだろう。カラーは200×200dpiだ。受信したFAXの印刷はPX-M680FがA4かA5、他の4機種はA4なので、A5用紙に印刷できるという点ではPX-M680Fが優れているが、一般的にはA4用紙で問題ないだろう。受信したFAXはPX-M680Fが180枚又は100件分、TR4530が50枚または20件、EW-M670FTが100枚又は100件、MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130が250枚又は30件分となる。保存できる件数はPX-M781FとEW-M670FTが、保存できる枚数はMAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130が多いという事で、この4機種は優劣付けがたいが、TR4530は価格が安いだけあって少なめだ。FAXをよく使う人は注意したい。ここで大きな違いは、TR4530/MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130は電源オフ時は受信したFAXが保持されるが、停電時やコンセントが抜けた場合には保持されないのに対して、PX-M680F/EW-M670FTはそういった場合でも受信した内容が保持される。使い方によっては、電気が供給されなくても受信内容が保持される方が便利だろう。ダイヤル機能としては、5機種とも短縮ダイヤルに登録できる他、グループダイヤル、順次同報送信、自動リダイヤルなどの基本的な機能を搭載している。ただしTR4530以外の4機種は100件登録できるが、TR4530は20件とかなり少なめだ。PX-M680F/EW-M670FTはボーリング受信に対応しているほか、送信するFAXを液晶で確認してから送信する「見てから送信」と、受信したFAXの内容を液晶で確認した上で印刷するか決めることで用紙を節約できる「見てから印刷」機能も備える。さらに、パソコン内のデータを直接FAXできる「PCファクス」機能自体は5機種とも搭載しているものの、TR4530/MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130は送信(パソコン上のデータを画像として送信)のみ対応だが、PX-M680F/EW-M670FTは送信だけでなく受信(パソコン上にFAXのデータを受信)することもできる。なお、5機種ともFAX機能だけで受話器がないため通話機能は無いが、モジュラージャックのインとアウトを備えており、アウトに電話機を接続すると通話が可能となる。その際、PX-M680F/EW-M670FTはファクス/電話自動切り替え機能にも対応しているのも便利だ。このように5機種は基本的な機能は似ているが、細かな点ではややPX-M680F/EW-M670FTの方が便利に作られている一方、TR4530はメモリー量が少なく、受信したFAXの保存ページ数も短縮ダイヤル等の件数も少なくなっている。

操作パネル/インタフェース/本体サイズ
型番
PX-M680F
EW-M670FT
TR4530
MAXIFY MB2730
MAXIFY MB2130
製品画像
液晶ディスプレイ
2.7型
(角度調整可)
2.4型
(角度調整可)
2行モノクロ
3.0型
2.5型
操作パネル
タッチパネル液晶
(角度調整可)
タッチパネル液晶
(角度調整可)
物理ボタン
タッチパネル液晶+物理ボタン
物理ボタン
インターフェイス
USB他
USB2.0×1
USB2.0×1
USB2.0×1
USB2.0×1
USB2.0×1
無線LAN
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(ダイレクト接続対応)
IEEE802.11n/g/b
(ダイレクト接続対応)
IEEE802.11n/g/b
(ダイレクト接続対応)
有線LAN
100BASE-TX
100BASE-TX
100BASE-TX
対応OS
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.10.5〜(AirPrint利用)
Windows 10/8.1/8/7/Vista SP2
MacOS 10.8.5〜
Windows 10/8.1/8/7/Vista SP2
MacOS 10.8.5〜
耐久枚数
8万枚
5万枚
N/A
N/A
N/A
外形寸法(横×奥×高)
425×378×249mm
375×347×231mm
435×295×189mm
463×389×320mm
463×389×260mm
重量
8.7kg
6.8kg
5.9kg
12.1kg
10.6kg
本体カラー
ホワイト
ブラック/ホワイト
ブラック
ブラック
ブラック

 操作パネルを見てみよう。TR4530MAXIFY MB2130を除く3機種がタッチパネル液晶を採用、TR4530MAXIFY MB2130はボタン式を採用している。液晶サイズはPX-M680Fが2.7型、EW-M670FTが2.4型、MAXIFY MB2730が3.0型、MAXIFT NB2130が2.5型と差はある物の、カラー表示が可能で十分なサイズとなっている一方、TR4530は文字のみ2行表示が可能なモノクロ液晶で、グラフィカルな表示ができない点ではわかりにくい。タッチパネル液晶を採用するPX-M680FEW-M670FTMAXIFY MB2730はボタン数が減り、また、モードボタンや設定項目などでは、表示された選択肢そのものをタッチして操作できる事に加えて、使わないボタンが表示されることも無いため、非常に分かりやすい。液晶内に表示されると、バックライトが入っているため、薄暗い場所でも操作がしやすいというメリットもある。ただし、どこまでをタッチパネル液晶に集約するかは異なっている。
 PX-M680Fでは、物理ボタンは電源ボタンだけで、ほとんどの操作をタッチパネル液晶に集約しており、テンキーやスタートボタンも全て液晶内に表示される。一部よく利用すると思われる機能はタッチセンサー式ボタンで液晶周囲に配置される。液晶の左にホームボタン、右にヘルプボタン、上に消耗品情報表示、ネットワーク接続状況表示、機器出力音設定画面表示、お気に入りの設定一覧表示のボタンとなる。操作パネルと液晶ディスプレイは本体前面に取り付けられ、90度まで起こして角度調整が可能だ。設置する高さに応じて見やすいように調整が可能なので、非常に使いやすいと言える。EW-M670FTも同じく電源ボタン以外は全てタッチパネル液晶での操作となっている。PX-M680Fのように周囲にタッチセンサー式のボタンもなく、液晶内で全ての操作をすることになる。こちらも、操作パネルと液晶ディスプレイは本体前面に取り付けられ、90度まで起こして角度調整が可能なため、非常に使いやすいと言える。一方のMAXIFY MB2730はタッチパネル液晶での操作をを基本としつつ「スタート」「ストップ」「ホーム」「戻る」のボタンを物理的なボタンとしている。使用頻度の高いボタンは物理ボタンとすることで、操作性を損なわないようにしている。MAXIFY MB2730の液晶ディスプレイと操作パネルは本体前面から上面にかけて大きく面取りされた部分に埋め込まれている。斜めを向いているためどの方向からでも見やすいが、角度調整できるPX-M680F/EW-M670FTほどではない。物理キーの有無はどちらが便利かは一概には言えないが、液晶と操作パネルの角度調整が可能な点では、PX-M680F/EW-M670FTの方がどこに設置したとしても使いやすいと言えるだろう。残るTR4530MAXIFY MB2130はタッチパネル液晶になっていないため、全て物理ボタンとなる。TR4530は本体上面の左側に縦長に並んでおり、液晶パネルの下は「戻る」「左右カーソル」「OK」が並んでおり、その下にモードボタンと「メニュー/ワイヤレスコネクト」ボタン、その下にテンキー、その下に「カラースタート」「モノクロスタート」「ストップ」ボタンが並ぶ。一方MAXIFY MB2130MAXIFY MB2730と同じく、液晶と操作パネルは斜めに固定されており、「電源」「ホーム」「4方向カーソル」「OK」「戻る」「カラースタート」「モノクロスタート」「ストップ」の他に液晶下に3つのボタンと、テンキーが並んでいる。両機種ともボタン数が多く、操作も直感的ではないため操作性では劣ることになる。また液晶も固定式であるため、その点でも操作性・視認性は劣ることとなる。強いて言うなら、4方向カーソルと、液晶下のボタンがあり、カラー表示が可能なMAXIFY MB2130の方が操作性は良いだろう。とはいえ、本体操作が多いなら、タッチパネル操作が可能なPX-M680F/EW-M670FT/MAXIFY MB2730がおすすめだ。
 インタフェースは5機種ともUSB2.0に加えて、ネットワーク接続に対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人にはネットワーク接続機能によりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。ただし、TR4530MAXIFY MB2130を除く3機種は無線LANだけでなく有線LANにも対応しているが、TR4530MAXIFY MB2130は無線LANだけの対応となる。ルーターが近い場合や、壁にLANコネクタが用意されている場合、無線LANでは不安定な場合などに有線LANは重宝するため、そういった使い方を考えている人はMAXIFY MB2130は非対応となる。一方無線LANはWi-Fiダイレクト(キャノンでは名称はダイレクト接続)に対応しているため、無線LANルータの無い環境でも、スマートフォンやタブレットと直接Wi-Fi接続が可能となっているのも便利な点だ。
 対応OSはPX-M680F/EW-M670FTがWindows 10/8.1/8/7/Vista/XPに対応しているのに対して、MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130はWindows XPには非対応となる。MacOSの対応も、PX-M680F/EW-M670FTは10.6.8以降、MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130は10.8.5以降と違いがある。さらに、TR4530はWinodws 7のSP1以降のみ対応で、Windows 8にも非対応(Windows 8.1には対応)、MacOSも10.10.5以降で、しかも専用ドライバが用意されずAirPrintを利用するなど、かなり限定される。使用するパソコンのOSには注意したいところだ。耐久枚数はPX-M680Fが8万枚、EW-M670FTが5万枚をうたっており、一般的な家庭用プリンターが1万〜1万5000枚である事を考えるとかなり高耐久に作られている安心感がある。MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130もビジネス向けをうたっているため、ある程度高耐久である事は予想されるが具体的な数値は出ていない。TR4530は家庭用の機種をベースにしているため、それほど高耐久で無いことが予想される。
 本体サイズを見てみよう。コンパクトさが追求される家庭向けプリンタと比べて、ビジネスプリンタは速度や給紙枚数の多さ、高耐久性が求められるため、大型になりがちだ。家庭用複合機の上位機種EP-881Aの場合349×340×142mmとなっており、これと比較してみよう。PX-M680Fは425×378×249mmと全体的に大きい。前面給紙トレイのセット可能枚数が250枚と多い事とADFを搭載していることもあって高さが大きくなっており、存在感がある。しかし、設置面積は意外と大きくはなく、横幅は一昔前の家庭用複合機より小さく、奥行きもEP-881Aより4cmも変わらない。ADFと250枚給紙を考えると十分コンパクトだと言えるだろう。EW-M670FTは375×347×231mmとなっており、さらにコンパクトだ。高さはADFを搭載していることもあって高くなるのは仕方が無い(しかもADFはトレイ開閉式なので、使用時は255mmになる)が、EP-881Aと比べて横幅は26mm、奥行きは7mmしか大きくない。しかも奥行きは右側のエコタンク部分の出っ張りを含めているので、それ以外の場所はむしろ小さいとも言える。設置面積では家庭向けの中でもコンパクトなプリンターに匹敵するコンパクトさだ。TR4530は435×295×189mmと横幅以外は小さく、奥行きはEP-881Aよりも小さい。ただし、用紙の給紙方法がカセット式では無くトレイ式なので、用紙をセットする場合は奥行きは411mmになる。またEW-M670FTと同じくADFのトレイが開閉式で、使用時は231mmになるため、使用時はPX-M680Fよりやや大きくなる。残るMAXIFYの2機種はかなり大柄だ。MAXIFY MB2130は463×389×260mmとPX-M680Fと比べても一回り大きい印象だ。しかも、このサイズは前面給紙カセット縮めた状態で用紙をセットする事ができない。A4用紙をセットした状態で置いておくとすると、奥行きは459mmになってしまう。こちらもADFは開閉式なので、A4用紙をセットしADFを展開すると、463×459×298mmとなる。PX-M680FEW-M670FTと違い、前面に液晶などが搭載されておらず完全な「面」なのも圧迫感がある。そして前面給紙カセットが2段のMAXIFY MB2730は、さらにこれより高さが6cm大きくなる。MAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130は設置面積はPX-M680Fと比べて63%も大きく、かなり不利だと言えるだろう。



 この5機種から選ぶに当たって、まず重要なのは印刷コストだろう。ビジネス向けと言う事もあって印刷コストは比較的低めだが、それでも下位モデルという事で少し高くなっている中、EW-M670FTの印刷コストは圧倒的に安い。印刷枚数が多いのなら、印刷コストだけでEW-M670FTに決めてしまっても良いくらいだ。印刷速度などはPX-M680FMAXIFY MB2730/MAXIY MB2130には劣るとは言え十分高速で、他の機能も一通り備え、それでいてコンパクトだ。本体の価格の高さも、最初に1セットのインクボトルが付属しており、初期充填を済ませた状態でもカラー文書が3600枚まで追加コストがいらないという事であれば、十分元が取れるだろう。唯一問題となるとすると、カラーインクが染料インクと言う事だ。写真印刷もするなら逆に良いのだが、文書のみで、画質や耐水性にこだわるなら、ここがネックとなる可能性はある。
 逆に、そこまで印刷枚数が多くない、もしくは印刷コストを考えても最初に大きな金額を出費するのが難しいという場合は他の4機種から選ぶことになる。まず、写真もある程度印刷したい、または、一通りの機能が搭載されていれば、それぞれの機能はそれほど高性能で無くて良いというのであればTR4530がおすすめだ。カラー3色とはいえ染料インクと搭載しておりフチなし印刷が可能であるため、写真印刷にもある程度利用できる。印刷速度、印刷コスト、用紙のセット方法、FAXの機能、操作性などでは他の4機種に劣るが、FAXまでついてこの価格は大きなメリットだ。
 一方、文書印刷主体なら、前述の全色顔料インクの機種の方が良いだろう。PX-M680FMAXIFY MB2730MAXIFY MB2130の3機種の内、印刷スピードと印刷コストを重視するならMAXIFYの2機種となる。ただ、それ以外の部分でクセが強いのは事実だ。印刷解像度が低くフチなし印刷ができず、本体が大きく操作性が悪い。どうしても印刷コストが気になるならEW-M670FTでも良いわけで、印刷コストと印刷速度を両立させたい、そして前述の問題点を許容できるならMAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130でも良いだろう。MAXIFY MB2730MAXIFY MB2130かは、前面給紙カセットが2段が必要かという事もあるが、印刷スピードに少しでもこだわる、又は有線LAN接続が必要な場合もMAXIFY MB2730を選択することになる。ただこういう特殊な希望がないなら、一般的にはPX-M680Fをおすすめとしたい。印刷画質は高くフチなし印刷もでき、本体も比較的小さく操作性も良好だ。自動両面印刷やADF、USBメモリ対応、スマホやネットワークプリント対応で、コピーやFAX機能も十分高性能だ。印刷スピードもMAXIFY MB2130との比較ならモノクロは上回っており、MAXIFY MB2730との比較でも大きな差ではないため、十分高速と言える。印刷コストもモノクロはMAXIFY MB2730/MAXIFY MB2130とほぼ同等だ。
 以上から、印刷コストに特にこだわるならEW-M670FTが、性能よりも本体価格重視、または写真印刷もしたいならTR4530が、文書メインならPX-M680Fが一般的にはおすすめと言えるだろう。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/


PX-M680F
EW-M670FT
EW-M670FTW
TR4530
MAXIFY MB2730
MAXIFY MB2130