小ネタ集
2018年末時点のプリンタ
〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜
(2019年5月3日公開)

プリンタ比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンタ比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。


エコタンク・特大容量タンク搭載複合機
 
 エコタンク・特大容量タンク搭載プリンターを比較する。去年まではエプソンからしか発売されていなかったが、今年からキャノンからも発売されたため、それらの中でカラー複合機全機種を比較する。ちなみに、エプソンの機種は「エコタンク」、キャノンの機種は「特大容量タンク」となる。エプソンからは、昨年春に発売されたEW-M770F、昨年末に旧モデルを置き換えたEW-M660FTとEW-M571Tと新たに追加されたEW-M5071FTとEW-M970A3T、今年の末に追加されたEW-M630Tの6機種となる。キャノンは今年の春に新発売されたG3310のみとなる。なおエプソンからはモノクロ印刷のみの複合機PX-M160TとプリンターPX-S170T/PX-S170UT/PX-S160Tも発売されているが、ここではカラー対応の6機種のみを比較した。エプソンの場合、型番上はA4プリントの機種ではEW-M770Tが最上位、続いてEW-M670FT、EW-M630T、下位モデルがEW-M571Tで、価格もEW-M770Tが59,980円、EW-M670FTが54,980円、EW-M630が41,980円、EW-M571Tが34,980円と、価格上もEW-M770Tが上位モデル、EW-M571Tが下位モデルに見える。しかし、完全な上位・下位といった関係では無く、EW-670FTが搭載する機能でEW-M770Tが搭載しない機能もあれば、EW-M571Tが搭載する機能でEW-M670FTが搭載しない機能もある。これら4機種にA3プリントとA4スキャンに対応したEW-M970A3T(84,980円)と、A3ノビプリントとA3スキャンに対応したEW-M5071FT(109.980円)の計6機種となる。キャノンのG3310は34,880円と、EW-M571Tと競合する製品だ。どういった機能を搭載しているかを見ていくことで、使用用途によってどの機種が向いているかを検討していくと共に、同価格のEW-M571TとG3310のどちらがおすすめなのかも見ていこう。

プリント(画質・速度・コスト)
型番
エプソン
エプソン
エプソン
エプソン
エプソン
エプソン
キャノン
型番
EW-M5071FT
EW-M970A3T
EW-M770T
EW-M670FT
EW-M630T
EW-M571T
G3310
製品画像




実売価格(メーカーWeb/税抜き)
109,980円
84,980円
59,880円
54,980円
41,980円
34,980円
34,880円
インク
色数
4色
5色
5色
4色
4色
4色
4色
インク構成
ブラック(顔料)
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック(顔料)
フォトブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック(顔料)
フォトブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック(顔料)
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック(顔料)
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック(顔料)
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック(顔料)
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成
エコタンク方式
エコタンク方式
(挿すだけ満タンインク方式)
エコタンク方式
(挿すだけ満タンインク方式)
エコタンク方式
(挿すだけ満タンインク方式)
エコタンク方式
(挿すだけ満タンインク方式)
エコタンク方式
(挿すだけ満タンインク方式)
特大容量タンク方式
顔料/染料系
染料(カラー)/顔料(黒)
(アルバム保存300年/耐光性7年/耐オゾン性半年〜1年)
染料(黒+カラー)/顔料(黒)
(アルバム保存300年/耐光性50年/耐オゾン性10年)
染料(黒+カラー)/顔料(黒)
(アルバム保存300年/耐光性50年/耐オゾン性10年)
染料(カラー)/顔料(黒)
(アルバム保存300年/耐光性7年/耐オゾン性2年)
染料(カラー)/顔料(黒)
(アルバム保存300年/耐光性7年/耐オゾン性2年)
染料(カラー)/顔料(黒)
(アルバム保存300年/耐光性7年/耐オゾン性2年)
染料(カラー)/顔料(黒)
インク型番
クツ(顔料)
ハサミ(染料)
マラカス(顔料)
ハーモニカ(染料)
マラカス(顔料)
ハーモニカ(染料)
ヤドカリ(顔料)
ハリネズミ(染料)
ヤドカリ(顔料)
ハリネズミ(染料)
ヤドカリ(顔料)
ハリネズミ(染料)
390番
付属インクボトル
セットアップ用インクボトル各色1本
インクボトル各色1本
インクボトル各色1本
インクボトル各色1本
インクボトル各色1本
インクボトル各色1本
インクボトル(カラー)各色1本
インクボトル(ブラック)2本
ノズル数
1568ノズル
1080ノズル
1080ノズル
784ノズル
784ノズル
357ノズル
1472ノズル
カラー:各256ノズル
黒:800ノズル
染料:各180ノズル
顔料:360ノズル
染料:各180ノズル
顔料:360ノズル
カラー:各128ノズル
黒:400ノズル
カラー:各128ノズル
黒:400ノズル
カラー:各59ノズル
黒:180ノズル
カラー:各384ノズル
黒:320ノズル
最小インクドロップサイズ
2.8pl(MSDT)
1.5pl(AdvancedMSDT)
1.5pl(AdvancedMSDT)
3.3pl(MSDT)
3.3pl(MSDT)
3pl(MSDT)
N/A(2pl?)
最大解像度
4800×2400dpi
5760×1440dpi
5760×1440dpi
4800×1200dpi
4800×1200dpi
5760×1440dpi
4800×1200dpi
PrecisionCoreプリントヘッド
印刷速度
L判縁なし写真(メーカー公称)
39秒(フチあり)
24秒
24秒
75秒
75秒
76秒
51秒
A4普通紙カラー(ISO基準)
10.0ipm
10.0ipm
10.0ipm
8.0ipm
8.0ipm
5.0ipm
5.0ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準)
18.0ipm
13.0ipm
13.0ipm
15.0ipm
15.0ipm
10.5ipm
8.8ipm
印刷コスト
L判縁なし写真
5.2円(フチあり)
6.0円
6.0円
5.9円
5.9円
5.9円
N/A
A4カラー文書
0.8円
1.3円
1.3円
0.9円
0.9円
0.9円
0.8円
A4モノクロ文書
0.4円
0.5円
0.5円
0.4円
0.4円
0.4円
0.3円

 まずはプリントの基本となる画質と速度、印刷コストから見ていこう。エコタンク・特大容量タンク搭載プリンターは基本が似ており、顔料ブラックと染料のカラー3色(シアン、マゼンダ、イエロー)を採用するのは全機種共通だ。これに染料ブラックを搭載するかどうかで4色構成か5色構成かの違いがある。EW-M970A3TEW-M770Tが5色構成、それ以外は4色構成だ。染料インクは様々な用紙に対応でき、写真用紙等に印刷した際に発色が良く、用紙本来の光沢感が出るため、写真印刷に向いている。一方で普通紙に印刷すると紙にしみこんで広がってしまうため、メリハリが弱くなる。その点で顔料インクならメリハリのある印刷が行え、小さな文字や中抜き文字も潰れずに印刷が可能なほか、耐水性も高いため濡れた手で触ったりマーカーを引いても滲まない。とはえい全色を顔料インクとすると写真用紙などに印刷した際に発色が悪いほか、用紙の光沢感が薄れポストカードのようになってしまう。つまりは染料インクと顔料インクは、用紙によって向き不向きがあるわけである。エコタンク・特大容量タンク搭載プリンターは顔料ブラックを搭載してるため普通紙への黒の印刷はメリハリがある印刷が行える。ただ顔料インクはブラックだけなので、黒色部分しかこの恩恵は得られない。また、黒と言っても、完全な黒ではないグレーの部分には染料のカラーインクを混ぜて作り出すし、背景色があるなど、カラーの中に黒が混ざっている場合は顔料と染料を混ぜられないことから、染料インクとなる。背景が無く完全な黒という限定があるなど、必ずしも顔料インクの恩恵を受けられるわけではない点は注意が必要だ。とはいえ、コピーや文書印刷でそういった部分は結構多く、一部だけでも全体的に引き締まった印象となるのは確かだ。
 一方、写真印刷や年賀状の通信面印刷時には、染料インクが力を発揮する。ここで、4色構成と5色構成で大きな差が出ることになる。5色の機種は顔料ブラックと別に染料ブラックを搭載しているため、写真印刷時も黒インクを使用でき、しっかりとした黒を表現できるため、綺麗な写真が印刷できる。一方で4色構成の機種は染料ブラックを搭載していないため、カラー3色での印刷となる。黒色はカラーを混ぜて作るが、どうしても非常に濃い茶色やグレーにしかならず、全体にコントラストが弱くなってしまう。これは黒の髪の毛や影の部分などを見れば一目瞭然だ。その点で5色インクを搭載したEW-M970A3TとEW-M770FTは写真印刷に向いていると言える。
 最小インクドロップサイズの面でもこれら2機種は写真印刷に向いている。EW-M970A3TEW-M770Tは1.5plと、インクカートリッジ方式の家庭向けの機種と同じサイズとなっており、非常に粒状感の少ない印刷が可能となっている。一方、4色インク構成のEW-M5071FTは2.8pl、EW-M670FTEW-M630Tは3.3pl、EW-M571Tは3plとほぼ倍のサイズになっており、黒インクが使えないことに加えて粒状感の面でも、写真印刷向けとは言いがたい。G3310は最小インクドロップサイズは非公開だが、同機能の海外モデルでは2plとなっているため、おそらく2plだろう。最小インクドロップサイズの面では4色インク構成の機種の中では小さいが、やはり黒インクが使えないことからEW-M770T/EW-M970A3Tと比べるとかなり劣ってしまう。
 もう一つ、インクの種類にも違いがある。もちろん発色などの面でもEW-M970A3TとEW-M770FTが使うインクは優秀な可能性があるが、この点ははっきりと示されているわけではない。ただ、インクの耐保存性に違いがある。家庭用の6色プリンターの場合、エプソンは「つよインク200」という名称で、アルバム保存300年、耐光性50年、耐オゾン性10年をうたっており、キャノンも「ChromaLife 100」という名称で、アルバム保存100年をうたっている。エコタンク搭載プリンターにはこういった名称はないが、EW-M970A3TEW-M770Tが採用するインクはアルバム保存300年、耐光性50年、耐オゾン性10年であり、名称こそないが「つよインク200」と同等レベルとなっている。一方EW-M670FT、EW-M630T、EW-M571Tはアルバム保存300年、耐光性7年、耐オゾン性2年、EW-M5071FTはアルバム保存300年、耐光性7年、耐オゾン性半年〜1年となっている。飾っておいた場合などの色あせに大きな違いがあるだろう。G3310に関しては耐保存性は非公開だが、ChromaLife 100には準拠しないという事なので、100年より短い可能性が高い。
 このように写真の印刷画質や耐保存性には違いがある。ただ、EW-M770FTとEW-M970A3Tが優れているのは確かだが、他の機種も印刷できないほどではない。画質にそこまでこだわらず、耐保存性も多少劣っても良いなら、それほど悪いわけではない。ただしEW-M5071FTはフチなし印刷ができず(後述)、その点でも写真印刷には向いていないと言える。
 一方普通紙の印刷画質は、7機種とも顔料ブラックを搭載しているため大差が無いように見える。しかし、EW-M5071FTと、EW-M670FTEW-M630Tの3機種はPrecision Coreプリントヘッドを採用しており、普通紙への印刷解像度を360dpiから600dpiへアップしている。そのため、小さな文字や線などがつぶれずにより綺麗に印刷できる様になっている。写真向けにインク数を増やしたEW-M970A3TとEW-M770FT、文書向けのプリントヘッドを採用したEW-M5071FTEW-M670FTT、EW-M630T、低価格であるためどちらも採用していないEW-M571Tといった構図になる。G3310だけキャノンであるため単純比較はできないがEW-M571Tと同じような傾向だろう。
 ちなみに、印刷速度にも特色がある。まず写真印刷速度を見てみると、最も速いのはEW-M770TEW-M970A3Tの2機種で、L判写真フチなしが22秒となる。インクカートリッジ方式の6色プリンターは最速で13秒なのでやや遅いが、十分高速と言える。ノズル数が比較的多いことに加えてAdvanced-MSDTという5つのインクサイズのインクを打ち分ける機能を搭載しており、必要に応じて大きなインクサイズを打ち分ける事で高速化と高画質化を両立しているためと思われる。一方EW-M670FT/EW-M630Tは75秒と3倍以上遅くなる。Advanced-MSDTより劣る、3つのインクサイズのインクを打ち分けるMSDTになってはいるが、ノズル数はそこまでの差ではない。EW-M970A3T/EW-M770FTが写真印刷向けに、EW-M670FT/EW-M630Tは文書向けに速度が出る設計なのではないかと思われる。EW-M970A3TとEW-M770FTと比べてノズル数がかなり多いEW-M5071FTも39秒で、しかもこれはフチあり印刷でのスピードである。やはりこういった設計の違いはあると思われる。EW-M571TはEW-M670FT/EW-M630Tより更にノズル数が少ないが、76秒と検討していると言える。G3310はキャノンとしてはノズル数が少なめだが、51秒と、低価格な割には高速となっている。とはいえEW-M770T/EW-M970A3Tの倍以上の時間がかかるので、写真を大量印刷するにはストレスがありそうだ。
 一方文書の印刷速度は傾向が異なる。EW-M770T/EW-M970A3Tは、A4カラーが10.0ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、モノクロが13.0ipmであり十分高速だ。一方EW-M5071FTはカラーは10.0ipmで同等、モノクロは18.0ipmとさらに高速だ。EW-M670FT/EW-M630Tもカラーは8.0ipmとやや劣るが、モノクロは15.0ipmとこちらもEW-M770T/EW-M970A3Tを上回る。はやり普通紙向けのヘッドを採用しているだけあって、普通紙の印刷スピードは優れている。EW-M571Tはカラーが5.0ipm、モノクロが10.5ipmと遅く、G3310はカラーが5.0ipm、モノクロが8.8ipmと7機種中最下位ではあるが、差は小さくなっており、こちらはストレスを感じるほど遅くはないだろう。
 印刷コストだが、L判写真はEW-M770T/EW-M970A3Tが6.0円、EW-M670FT/EW-M630T/EW-M571Tが5.9円となる。写真用紙代約4.3円が込みなので、これを除くと1.7円と1.6円となる。インクカートリッジ方式の6色プリンターEP-881Aが20.6円、用紙代を除くと16.3円であるとこと考えると約10分の1となる。圧倒的に低印刷コストだ。EW-M5071FTは5.2円となっているが、フチあり印刷での結果なので比較にはならない。また、G3310は写真の印刷コストを公表していない。一方、A4文書の印刷コストはEW-M5071FTがカラー0.8円、モノクロ0.4円、EW-M770T/EW-M970A3Tがカラー1.3円、モノクロ0.5円、EW-M670FT/EW-M630T/EW-M571Tがカラー0.9円、モノクロ0.4円、G3310がカラー0.8円、モノクロ0.3円となる。G3310が最も低印刷コストではあるが、EW-M5071FTやEW-M670FT/EW-M630T/EW-M571Tの差は僅かではある。EW-M770T/EW-M970A3Tは少し高めとなっているが。耐保存性が高いインクであるため価格が高いのか、染料ブラックの分だけ高く感じるのかは不明だ。とはいえ前述のEP-881Aはカラーが12.0円である事を考えると、いずれも圧倒的に安いことが分かる。また。モノクロで見れば、差は0.1円〜0.2円なので、1万枚印刷しても1,000円〜2,000円の差で、あまり気にするほどの差でもないだろう。
 ちなみに、エコタンク・特大容量タンク搭載プリンタは本体価格が高い傾向があるが、これは付属のインクで元が取れるという考え方がある。エコタンク・特大容量タンク搭載プリンターは、インクカートリッジの機種とは異なり、製品と同じインクボトルが付属するのが特徴の一つとなっているのだ。ただし、EW-M5071FTはセットアップ用インクボトルとなっており、当てはまらない点は注意が必要だ。例えば、EW-M770Tはインクボトル1本で、A4カラー文書を印刷した場合、カラーインクが5,000枚、ブラックインクが8,000枚、フォトブラックインクが11,500枚まで印刷ができる。付属のインクボトルも別売りのインクボトルも全く同じ物で、1本でタンクが満タンになるため、購入時に付属するインクでタンクを満タンの状態にできる。ただ、ここから初期充填を行うため、インクを消費してしまうが、それでも3,600枚以上の印刷が可能となっている。この間インクを購入する必要が無いのだ。一方、近い性能を持つインクカートリッジ方式のEP-881Aの場合、増量インクでもブラックインクは915枚、カラーインクは各395枚となるため、3,600枚印刷しようとするとブラックインクが約4本、カラーインクは各色約9本が必要となる。各1,200円なので、49本で58,800円となる。つまり3,600枚印刷した時点で考えるとEW-M770Tは付属のインクだけで印刷できるが、EP-881Aは約58,800円分もインクを購入している計算となる。また、EW-M770Tは「同梱インクで3,600枚以上プリント可能」という表現なので、実際には5色の内で最も最初に無くなるインクでも3,600枚の印刷が可能という事だと思われる。おそらく1本で印刷できる枚数が最も少ないカラーインクが3.600枚まで使えると考えられ、ブラックやフォトブラックに関してはさらに使える可能性が高い。となると、58,800円以上のインクが付属することになる。こう考えれば本体代の高さは、付属のインクを使い切った時には実質逆転している事になる。EW-M670FT/EW-M630T/EW-M571Tでも同じでカラーインクは6,000枚、ブラックインクは7.500枚まで印刷できるインクボトルが付属し、初期充填完了後も3,600枚印刷ができる。こちらの場合は、付属のインクを使い切った頃には十分元が取れているといえるだろう。G3310はインクボトル1本でカラーインクは7,000枚、ブラックインクは6,000枚印刷が可能となっており、カラーインクは各色1本だが、ブラックインクは2本付属する。初期充填完了後の印刷可能枚数は公表されていないが、エプソンの各機種と同じような傾向だとすると、ブラックインクが1本多い分だけよりお得だ。ただし、繰り返すようだが、EW-M5071FTのみこの計算式は当てはまらない点は注意したい。
 ちなみに、これらの話はインクカートリッジの機種との比較なので、エコタンク・大容量タンク搭載プリンター同士の比較では、ほぼ横並びとなり機種を選ぶ要素にはなりにくい。G3310のブラックインクが多いとはいえ、G3310のブラックインクボトルの価格は1,720円なので、それだけで決め手になるほどでは無いだろう。
 ちなみに7機種ともエコタンク・特大容量タンク呼ばれる、大型のインクタンクを搭載する点では同じだが、異なる点がある。EW-M5071FTは初代のエコタンク方式を採用している。本体右側に飛び出した部分にタンクが搭載されており、全体のフタを開け、さらに各色それぞれのゴムキャップを抜く。現れた大きめの注入口に、インクボトルからインクを注入する。そして、側面からインク残量が確認できるので、満タンになるまで確認しながら注入する。その際、間違った色のボトルに注入してしまわないように、また満タンのラインを越えて注入しないように注意が必要だ。インクボトル1本でタンクが満タンになるが、途中で継ぎ足すこともでき、残ったインクは保管しておく事になる。一方EW-M5071FT以外のエプソンの5機種は2世代目とも言うべき「挿すだけ満タンインク方式」となった。エコタンク部の全体のフタを開け、さらに各色のフタを開ける。ただのゴムキャップではなく、スイング式のプラスチックの先にゴム栓が付いているので、簡単だ。ここにインクボトルからインクを注入するのだが、挿し込むまでインクが出にくい構造になっているため、こぼす心配が大幅に減った。さらに注入口に挿し込むだけで満タンまで入って自動的に止まる仕組みになったため、入れすぎる心配も無い。さらに注入口の形状が色によって異なるため、誤ったインクボトルを挿し込むこともなくなるなど、かなり改善されている。タンク自体も、大部分が本体に埋め込まれ、飛び出ている部分はわずかになったほか。前面からインク残量も確認できるようになっている。G3310はEW-M5071FTの初代のエコタンクに近い構造だ。全体のフタを開けて、さらに各色それぞれのゴムキャップを外し、大きめの注入口にインクボトルの先端を挿し込んで、ボトルを握って注入していく。満タンの確認は目視で、間違った色のインクを補充してしまう事への対策も無い。ただし、インク残量の確認は正面からできるようになっているほか、ブラックインクのタンクを本体左側、カラー3色のタンクを右側に分散することで、本体からタンク部分が飛び出さないように工夫されている。このようにEW-M5071FTとG3310を除く5機種は、インクの補充が非常に簡単で安心になり、インクカートリッジの交換と大して変わらない手間になっている。この点では、これら5機種は優れていると言えるだろう。

プリント(給紙・排紙関連)
型番
EW-M5071FT
EW-M970A3T
EW-M770T
EW-M670FT
EW-M630T
EW-M571T
G3310
製品画像
対応用紙サイズ
L判〜A3ノビ
(フチ無し印刷非対応)
L判〜A3
L判〜A4
L判〜A4
L判〜A4
カード・名刺〜A4
名刺〜A4
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面
○(1枚手差し/A3まで)
○(写真用紙5枚・普通紙10枚/A3まで/0.6mm厚まで)
○(1枚手差し/0.6mm厚まで)
○(100枚)
○(100枚)
前面
カセット上段(250枚)
カセット下段(250枚・普通紙B5〜A3以上)
カセット下段(100枚/A4以下)
カセット上段(2L/ハイビジョン以下)
カセット下段(100枚)
カセット上段(2L/ハイビジョン以下)
カセット(250枚)
カセット(150枚)
その他
排紙トレイ自動開閉
用紙種類・サイズ登録
○(カセット収納連動)
○(カセット収納連動)
○(カセット収納連動)
○(カセット収納連動)
○(カセット収納連動)
○(カバー連動)
用紙幅チェック機能
○(ハガキ向き検知機能搭載)

 続いて、給紙・排紙関連の機能を見てみよう。使用できる用紙は、EW-M5071FTがA3ノビまで、EW-M970A3TがA3まで、残る5機種はA4までとなる。最小サイズはEW-M571TG3310のみが名刺サイズに対応、他の機種はL判が最小となる。最も価格の安い2機種だけ名刺サイズに対応しているというのは一見すると不思議だが、前面給紙からは名刺サイズほどまで小さい用紙は扱いにくいようで、背面給紙であるEW-M571TG3310のみが対応できたというところだろう。注意点としてはEW-M5071FTはフチなし印刷には非対応という点だ。画質や速度面から写真印刷用に購入する機種ではないが、いざ写真をプリントしようと思った時だけでなく、フチなしデザインの年賀状や、背景色の付いた文書を印刷する際にも注意が必要だ。
 給紙に関しては各機種に特色がある。まず、EW-M5071FTはビジネス向けプリンタをベースにしているため、前面給紙カセットを2段搭載して大量給紙に対応している。どちらも同じサイズのカセットで、A3又はA3ノビに対応している。それぞれA4普通紙で250枚セット可能だ。両方にA4普通紙をセットする事で500枚までの給紙に対応することもできるし、A3とA4の様に別のサイズを250枚ずつセットすることも可能だ。ただし、下段はB5〜A3の普通紙のみの対応となる。また、カセットを本体に完全に収納できるのはA4用紙までで、それ以上の場合はカセットを伸ばす必要があり前に飛び出す事となる。これに加えて、背面手差し給紙にも対応している。前面給紙カセットでは、前面から給紙して前面に排紙するため、内部で用紙を180度方向転換する必要があり、一部の用紙ではうまく印刷できない場合がある。その点で背面給紙なら比較的まっすぐ用紙を送ることができる。こちらもA3ノビまで対応しているため、穴あき用紙や滑りやすい用紙、はがれやすいシール用紙などにも安心だろう。また、左右のガイドを合わせれば印刷できるため、サイズが特殊な封筒などの印刷も簡単だ。また前面給紙カセットにA3とA4用紙をセットしていて、1枚だけB4用紙に印刷したい場合などに、入れ替えの手間無く印刷できる様になっている。
 EW-M970A3TEW-M770Tは基本的には同じだ。2機種とも前面給紙を基本としており2段となっているが、EW-M5071FTとは異なり大小2段となっている。下段はA4までの全ての用紙に対応、A4普通紙を100枚までセット可能だ。一方上段は2L判サイズまでとなっているため、L判写真用紙やハガキはこちらが基本となる。いずれも20枚までセット可能だ。ただし、下段にも小さい用紙はセット可能であるため、写真やハガキを大量印刷する場合は、上下段で60枚までセット可能となる。もちろん連続で使用する設定が可能だ。これに加えて、背面給紙を備えているが、ここには違いがある。EW-M770Tは手差し給紙となっており、1枚ずつとなる。印刷を実行し、画面にセットするように表示されてから用紙を差し込み、スタートボタンを押す方法となり、本当に1枚ずつしか使用できない。その分、非常に簡易的な構造となっており、後方のスペースがほとんど無くても使用できる。一方、EW-M970A3Tは、写真用紙5枚、普通紙10枚の連続給紙に対応しており、EW-M770Tよりは少ししっかりした構造だ。またEW-M970A3TはA3プリントに対応しているが、これはこの背面給紙からのみとなる。こうすることにより、コンパクトながらA3に対応することが可能となったわけである。ちなみに両機種ともEW-M5071FTとは異なり、背面給紙は厚紙の給紙に対応している。前面給紙カセットや、EW-M5071FTの背面手差し給紙は0.3mm厚までの対応だが、EW-M970A3TとEW-M770Tの背面給紙は0.6mm厚まで対応している。厚紙への印刷の他、写真を貼り合わせた年賀状への宛名印刷にも使用できる。また、EW-M5071FT同様、封筒などの用紙や、前面給紙カセットにセットしたのとは別の用紙に数枚印刷したい場合に入れ替えの手間を省くという使い方もできる。
 EW-M670FTEW-M630Tはシンプルで前面給紙カセット1段のみだ。文書向けプリンターと言うことで普通紙のみで基本的には問題ないと言うことだろう。代わりに文書印刷では印刷枚数が多い場合もあり、またEW-M670FTはFAX機能も搭載しているため、A4普通紙をEW-M670FTは250枚、EW-M630Tは150枚までと、上位機種のEW-M770T多く給紙できるようになっている。ハガキは30枚、写真用紙は20枚までセットできる。一方、EW-M571TとG3310は背面給紙のみとなる。A4普通紙は100枚までで、背面給紙とはいえ厚紙には非対応となる。EW-M571Tはハガキ30枚、写真用紙20枚、G3310はハガキ40枚、写真用紙20枚までセット可能だ。給紙方法は用紙をセットしやすい反面、用紙をセットしたままではホコリが積もってしまいプリンター本体に良くないため、毎回取り除くことが望ましい。また、後方と上方にスペースが必要になってしまう。利便性を考えるなら他の5機種がおすすめだが、5機種の中でも用途によって便利な給紙方法が違うため、合っているものを選びたいところだ。
 G3310を除くエプソンの6機種は用紙の種類とサイズを登録しておく機能が搭載されている。液晶ディスプレイでメニューから登録も可能だが、前面給紙カセットを挿し込む、またはEW-M571Tは給紙口カバーを閉じた際に、自動的に登録画面が表示されるため便利だ(されないようにもできる)。この登録内容と、印刷時の用紙設定が異なっている場合、メッセージが表示される仕組みだ。できる限り印刷ミスによる用紙とインクの無駄遣いをなくす工夫がなされている。これに加えて、印刷速度に影響は出るが、印刷時に実際の用紙幅をセンサーでチェックする機能もあり、設定よりも用紙幅が小さかった場合にプリンタ内部を汚さないようになっている。さらにEW-M970A3Tのみの機能として、ハガキの向きを検知する機能を備えている。郵便番号枠を検知するため、裏表の間違いや上下の間違いを検知できる。前面給紙の場合、向きや裏表がややこしくなるため、こちらも便利な機能だ。

プリント(付加機能)
型番
EW-M5071FT
EW-M970A3T
EW-M770T
EW-M670FT
EW-M630T
EW-M571T
G3310
製品画像
自動両面印刷
○(A3まで)
○(A4まで)
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
○(オートフォトファイン!EX)
○(オートフォトファイン!EX)
○(オートフォトファイン!EX)
○(オートフォトファイン!EX)
○(オートフォトファイン!EX)
○(オートフォトファイン!EX)
N/A
特定インク切れ時印刷
自動電源オン/オフ
−/○
○/○
○/○
−/○
−/○
−/○
○/○
廃インクタンク交換/フチなし吸収材エラー時の印刷継続
○/−
○/−
○/−
○/−
○/−
−/−
−/−

 その他、プリントの付加機能を見てみよう。自動両面印刷機能はG3310を除くエプソンの6機種が搭載している。EW-M5071FTはA3まで対応だが、EW-M970A3TはA4までの対応(というより背面給紙からの両面印刷はできない)となるため注意が必要だ。いずれもハガキの両面印刷にも対応している。一方、BD/DVD/Blu-rayレーベル印刷機能はEW-M970A3TEW-M770Tのみ搭載する。レーベル印刷のトレイを使わない時は、前面給紙カセットの下に収納できるようになっている。写真の自動補正機能としては、G3310以外の6機種とも「オートフォトファイン!EX」に対応する。逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われるため、手軽に写真印刷が行える。ダイレクト印刷に対応した機種(後述)はパソコンからの印刷時だけでなく、ダイレクト印刷時にも利用できる。G3310に関しては搭載しているか不明だ。
 自動電源オン機能はEW-M970A3TEW-M770TG3310のみが搭載している。印刷が実行されると自動的に電源がオンになる機能だ。無線LANや有線LAN(一部機種を除く)でのネットワーク接続ができるようになり、プリンタから離れた場所のパソコンやスマートフォンから印刷を実行することが増えたが、そういった際にわざわざプリンタの電源を入れに行く手間が省ける。ただし、排紙トレイが引き出された状態でないと印刷は実行されないため、排紙トレイを収納していると電源が入った状態で印刷が止まっている事になる。一方、指定した時間が経つと自動的に電源がオフになる機能は7機種とも搭載している。
 EW-M571TG3310を除く5機種は交換式メンテナンスボックス(廃インクタンクの交換)にも対応している。メンテナンスボックスとはクリーニング時に排出される廃インクを貯めるもので、満タンになると通常は修理に出して交換する必要があり、プリンターが使えない期間が発生し、交換費用もそれなりに掛かるが、この5機種はユーザー自身で簡単に交換できるようになっている。印刷枚数が多いと思われるプリンターだけに、この機能はうれしいところだ。

スキャン
型番
EW-M5071FT
EW-M970A3T
EW-M770T
EW-M670FT
EW-M630T
EW-M571T
G3310
製品画像
読み取り解像度
1200dpi(1200×2400dpi)
1200dpi(1200×2400dpi)
1200dpi(1200×2400dpi)
1200dpi(1200×2400dpi)
1200dpi(1200×2400dpi)
1200dpi(1200×2400dpi)
600dpi(600×1200dpi)
センサータイプ
CIS
CIS
CIS
CIS
CIS
CIS
CIS
原稿取り忘れアラーム
ADF
原稿セット可能枚数
35枚
30枚
原稿サイズ
A3/B4/A4/B5/B5/レター/リーガル
A4/レター/リーガル
両面読み取り
読み取り速度
カラー
4.8ipm
5.0ipm
モノクロ
8.3ipm
5.0ipm
スキャンデーターのメモリカード保存
○(JPEG/PDF/TIFF)
○(JPEG/PDF)
○(JPEG/PDF)
○(JPEG/PDF)

 続いて、スキャナ部を見てみよう。EW-M5071FTはA3サイズまで、他の6機種はA4サイズまでの対応となる。解像度はG3310以外の6機種が1200dpi、G3310は600dpiだ。G3310と他の6機種に差があるし、家庭向けにはもっと高解像度の機種があるが、実際には紙などの反射原稿しかスキャンできないことを考えると1200dpiでも十分で、600dpiでも実用上は大きな問題は無い。というのも、一般的には文書なら200〜300dpi、写真なら300〜600dpi程度で、よほど綺麗に保存したい場合や拡大して印刷する場合に1200dpiでスキャンすると言った程度だ。実際、L判写真を1200dpiで取り込むと約4,200×6,000ドットとなり2500万画素相当なので十分で、600dpiでも2,100×3,000ドットなので、L判サイズに印刷したり、スマホの画面で見る分には十分きれいだといえる。逆にスキャナ解像度が高いセンサーでは1ドットあたりの光の取り込み量が減り、スキャン速度が低下したりノイズが発生したりするため、バランスを取って1200dpiや600dpiとしていると思われる(もちろんコストの関係もあると考えられるが)。1200dpiに対応していれば、いざという時に、より詳細にスキャンできるが、600dpiでも普段の使用では問題ないだろう。なお、CISセンサーであるため、分厚い本など浮いてしまう原稿は苦手で、ピントが合わずぼけたような画像となってしまう点は共通だ。
 また、FAX機能(後述)を搭載するEW-M5071FTEW-M670FTはADFを搭載している。EW-M5071FTは35枚まで、EW-M670FTは30枚までの原稿を重ねてセットすれば順に給紙してスキャンしてくれるため、複数の原稿のスキャンやコピー、FAX時に重宝する。またEW-M5071FTのADFは両面スキャンにも対応している。片面をスキャンした後もう一度給紙し、裏面をスキャンするという方式でるため、倍の時間がかかるが、両面原稿でも安心だ。もちろんADFもA3に対応している他、B5サイズまでの各サイズの対応している。一方EW-M670FTはレターとリーガルサイズを除けばA4サイズのみの対応である。大きなサイズから小さなサイズまで対応し両面スキャンも行えるEW-M5071FTと比べると、EW-M670FTは機能面では劣る、ちなみにADFの読み取り速度は、カラーはほぼ同等、モノクロはEW-M5071FTの方が66%高速だ。
 メモリカードに対応しているEW-M5071FTEW-M970A3TEW-M770TEW-M571Tはスキャンした原稿をパソコンを使わずメモリカード又はUSBメモリ(EW-M571Tを除く)に保存する機能を搭載している。パソコンが起動していなくても、本体の操作だけでサッとスキャンしてメモリカードやUSBメモリに保存して持ち出せて便利だ。

ダイレクト印刷
型番
EW-M5071FT
EW-M970A3T
EW-M770T
EW-M670FT
EW-M630T
EW-M571T
G3310
製品画像
カードスロット
対応メモリカード
SD/MS Duo
SD
SD
SD
USBメモリ/外付けHDD/外付けDVD対応
○/○/−
○/○/○
○/○/○
−/−/−
−/−/−
−/−/−
−/−/−
メモリカードからUSBメモリ/外付けHDDへバックアップ
○/○
○/○
○/○
−/−
−/−
−/−
−/−
対応ファイル形式
JPEG/TIFF
JPEG
JPEG
JPEG
色補正機能
フチなし/フチあり
赤目補正
トリミング
フチなし/フチあり
赤目補正
明るるさ調整(5段階)
コントラスト調整(5段階)
シャープネス調整(5段階)
鮮やかさ(5段階)
フィルター(モノクロ/セピア)
トリミング
フチなし/フチあり
赤目補正
明るるさ調整(5段階)
コントラスト調整(5段階)
シャープネス調整(5段階)
鮮やかさ(5段階)
フィルター(モノクロ/セピア)
フチあり/フチなし
赤目補正
手書き合成
PictBridge対応
○(USB/Wi-Fi)
○(USB/Wi-Fi)
赤外線通信
各種デザイン用紙印刷
塗り絵印刷
フォーム印刷(罫線・マス目・便箋・スケジュール帳・五線譜・メッセージカード・折り紙封筒)
塗り絵印刷
フォーム印刷(罫線・マス目・便箋・スケジュール帳・五線譜・メッセージカード・折り紙封筒)
定型フォーム印刷(レポート用紙、原稿用紙/スケジュール用紙、方眼紙、チェックリスト、五線譜、漢字練習帳)

 ダイレクト印刷を見てみよう。これはEW-M5071FTEW-M970A3TEW-M770TEW-M571Tが対応しているが、その内容は機種によって異なっている。EW-M5071FTはSDカードとメモリースティックDuoに対応する。最近のデジタルカメラやスマートフォンは一部の一眼レフなどを除きSDカードかその小型版のmicroSDになっているが、一昔前のソニー製デジタルカメラはメモリースティックDuoとなっており、こちらにも対応する。さらにUSBメモリにも対応する。また、前面のUSBポートはUSBメモリだけでなく外付けHDDを接続する事も可能(CDやDVDの光学ドライブには非対応)で、これらに保存されている写真の印刷が可能な他、メモリカードからこれらへのバックアップも可能となっている。EW-M970A3TとEW-M770TはEW-M5071Tと同じくメモリカードとUSBメモリに対応するが、若干機能が異なる。まずメモリカードはSDカードのみ対応であるが、現在では大きな問題は無いだろう。前面のUSBポートはUSBメモリや外付けHDDに対応し、印刷とメモリカードからのバックアップが行えるが、加えてCD/DVDなどの光学ドライブにも対応しており、これらからの写真印刷が可能だ。写真店でCD-R等に写真を入れてもらったり、他人からCD-R等に入れてもらった写真も直接印刷ができるのは便利だろう。EW-M571TはSDカードのみの対応で、USBポートは搭載していない。
 写真印刷時の設定は、EW-M5071FTEW-M571Tは、フチあり/フチなし設定(EW-M571Tのみ)の他は印刷品質と赤目補正、オートフォトファイン!EXを使用するかどうかの設定くらいだが、EW-M970A3TEW-M770Tは加えて明るさ、コントラスト、シャープネス、鮮やかさを5段階から調整できるほか、セピア調やモノクロへの変換、写真の一部を切り出して印刷することも可能など、かなり高性能となっている。また、写真と手書きを合成して印刷できる「手書き合成シート」これら2機種のみ対応している。PictBridge対応もこれら2機種である。その他、EW-M970A3TとEW-M770Tは塗り絵風の輪郭だけの印刷や、罫線、マス目、便箋、スケジュール帳、五線譜、メッセージカード、折り紙封筒などが印刷できるフォーム印刷機能を搭載している。一方、EW-M571Tは塗り絵印刷には非対応だが、フォーム印刷機能は搭載している(ただしメッセージカードと折り紙封筒は非対応)。残る4機種にはこういった機能は搭載されていない。家庭向けの3機種は、単体でいろいろなフォーム用紙を印刷可能となっており便利だ。

スマホ/クラウド対応
型番
EW-M5071FT
EW-M970A3T
EW-M770T
EW-M670FT
EW-M630T
EW-M571T
G3310
製品画像
スマートフォン連携
対応端末
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 10.0以降)
Android 4.4以降
スマートスピーカー対応
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 10.0以降)
Android 4.4以降
スマートスピーカー対応
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 10.0以降)
Android 4.4以降
スマートスピーカー対応
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 10.0以降)
Android 4.4以降
スマートスピーカー対応
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 10.0以降)
Android 4.4以降
スマートスピーカー対応
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 10.0以降)
Android 4.4以降
スマートスピーカー対応
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 10.0以降)
Android 4.4以降
NFC対応
写真プリント
ドキュメントプリント
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
スキャン
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
クラウド連携
スマートフォン経由/本体
○/−
○/−
○/−
○/−
○/−
○/−
○/−
オンラインストレージからの印刷
SNSからの印刷
○(コメント付き可)
○(コメント付き可)
○(コメント付き可)
○(コメント付き可)
○(コメント付き可)
○(コメント付き可)
写真共有サイトからの印刷
メールしてプリント
リモートプリント
スキャンしてリモートプリント
○(受信のみ)

 スマートフォンとの連携機能は7機種とも搭載している。iPhoneやiPod touch、iPadと、Android端末に対応しており、いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることでプリント又はスキャンが行える。メインで使用すると思われる写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定(EW-M5071FTを除く)まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。さらにドキュメント印刷にも対応している。PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もできる便利だ。また、スマートフォン上からスキャンを実行し、データをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。出かける前に紙の情報をさっとスマートフォンに転送するといった使い方ができるため便利だろう。スマートフォンとの接続は、無線LAN(Wi-Fi)で行うが、無線LANルータを経由する方法と、ダイレクトに接続する「Wi-Fiダイレクト」(G3310での名称はダイレクト接続)の両方に対応している。
 また、G3310を除く6機種はスマートスピーカーに対応している。AlexaとGoogleアシスタント対応端末に対応しており、声だけでテンプレートを印刷させることができる。2018年12月現在でデザインペーパー、フォトプロップス、カレンダー、ノート、方眼紙、五線譜などのエプソン独自のものと、Alexaに登録された買い物リスト、やることリストなどとの印刷に対応している。今後増えていくことが予想される。
 クラウドとの連携機能も7機種とも搭載しており、オンラインストレージから印刷に対応している。EW-M5071FTを除く6機種はSNSの写真を印刷する事ができる。SNSの写真はコメント付きでも印刷が可能だ。さらにG3310を除くエプソンの6機種はネットワークを利用したプリント機能として、印刷したい写真や文書を本機にメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、スキャンした画像を離れた場所の対応複合機で印刷できる「メールdeリモート印刷」、通常のプリント同じ操作で、離れた場所の同機能を搭載したプリンターで印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。ただし、EW-M571Tはメールdeリモート印刷は受信(印刷)のみで、スキャンして送信する機能は備えていない。G3310はこういった機能は搭載しておらず、ネットワークプリントの機能はエプソンの6機種が便利と言える。

コピー機能
型番
EW-M5071FT
EW-M970A3T
EP-M770T
EW-M670FT
EW-M630T
EW-M571T
G3310
製品画像
等倍コピー
○(対応用紙はA3/B4/A4/B5/A5のみ)
○(対応用紙はA4/レターの普通紙のみ)
拡大縮小
倍率指定
○(25〜400%)
○(25〜400%)
○(25〜400%)
○(25〜400%)
○(25〜400%)
○(25〜400%)
オートフィット
定型変倍
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー
○(退色復元対応)
○(退色復元対応)
割り付け(2面/4面)
○/○
○/−
○/−
○/−
○/−
○/−
−/−
バラエティコピー
IDコピー
影消しコピー
パンチ穴消しコピー
ブック分割コピー
BOOKコピー
ミラーコピー
BOOK2アップ
塗り絵コピー
背景除去機能
BOOKコピー
ミラーコピー
BOOK2アップ
塗り絵コピー
背景除去機能
IDコピー
影消しコピー
パンチ穴消しコピー
IDコピー
IDコピー

 コピー機能はG3310とそれ以外のエプソンの6機種では機能が大きく異なるので、まずエプソンの6機種から見てみよう。単純なコピー機能としては、6機種とも単純な等倍コピーだけでなく、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「オートフィット」機能や、25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える機能を搭載した高性能な物だ。EW-M571Tを除く5機種は、原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行う「定型変倍」機能も搭載している。なお、対応用紙としては、EW-M970A3TEW-M770TはA4やB5などの用紙の他、L判やハガキサイズにも対応しており、EW-M670T、EW-M630T、EW-M571Tは加えて各種封筒にも対応しているが、EW-M5071FTはA3/B4/A4/B5/A5のみとなる点は注意が必要だ。
 さらに、CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷に対応したEW-M970A3TEW-M770Tはレーベルコピーにも対応する。また、この2機種はスキャナに写真を複数枚置き、焼き増し風のコピーを行うことも出来る。この際「退色復元」機能をオンにすれば、昔の色あせした写真も自動で補正してくれる機能も備えている。5機種とも2枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2面割り付けにも対応する。さらにEW-M5071FTは4枚の原稿を1枚に縮小する4面割り付けにも対応している。その他、EW-M5071FTとEW-M670FTは、免許証などの両面の小さな原稿を、1枚の用紙に裏表並べてコピーできる「IDコピー」機能や、原稿サイズが出力サイズより小さい際に出来る余白の影を消す「影消しコピー」、パンチ穴を消す「パンチ穴消しコピー」機能を備えている。さらにEW-M5071FTは本などを見開きで原稿台に置いた原稿を1ページごと用紙にコピーする「ブック分割コピー」も備えている。一方、EW-M970A3TとEW-M770Tはコピー時にも「塗り絵印刷」が行える他、アイロンプリント紙への印刷時に使える「ミラーコピー」、本をコピーする際に片面ずつスキャンして両面もしくは左右に割り付ける「BOOKコピー」「BOOK2アップ」、背景の色を白にして見やすくする「背景除去機能」を備えている。一方EW-M630TとEW-M571Tは「IDコピー」機能のみを備える。それぞれ機能は異なるが、複合機単独で様々なコピーが行えるよう工夫されている。
 では、G3310のコピー機能はというと、液晶が数字とアイコンのみしか表示できない簡易的な物であるため(後述)、コピーの設定は一切行えず、A4/レターサイズの用紙への等倍コピーのみとなる。コピー機能の便利さではエプソンの6機種の方が圧倒的に便利だ。

FAX機能
型番
EW-M5071FT
EW-M970A3T
EW-M770T
EW-M670FT
EW-M630T
EW-M571T
G3310
製品画像
通信速度
33.6kbps
33.6kbps
画質設定
モノクロ
8dot/mm×3.85本/mm(標準)
8dot/mm×7.7本/mm(精細)
8dot/mm×15.4本/mm(高精細)
16dot/mm×15.4本/mm(超高精細)
8dot/mm×7.7本/mm(写真)
8dot/mm×3.85本/mm(標準)
8dot/mm×7.7本/mm(精細)
8dot/mm×7.7本/mm(写真)
カラー
200×200dpi
200×200dpi
送信原稿サイズ
A3〜A5
A4
記録紙サイズ
A3/B4/A4/B5/A5/リーガル/レター
A4/リーガル/レター
受信ファックス最大保存ページ数
550枚/100件
100枚/100件
データ保持(電源オフ/停電)
○/○
−/−
−/−
○/○
−/−
−/−
−/−
ワンタッチ
10件
短縮ダイヤル
200件
100件
グループダイヤル
199宛先
99宛先
順次同報送信
200宛先
100宛先
自動リダイヤル
発信元記録
ポーリング受信/送信/予約
○/○/○
−/−/−
−/−/−
○/−/−
−/−/−
−/−/−
−/−/−
ファクス/電話自動切替
見てから送信
見てから印刷
PCファクス
送受信
送受信

 FAX機能を搭載するのは、型番のTの前に「F」が付く、EW-M5071FTEW-M670FTのみとなる。両機種は基本的には同等のもの搭載する。スーパーG3に対応しており、モノクロ、カラーFAXを行う事が出来る。ADFを搭載しているため、複数枚の原稿の送信も便利である。もちろんEW-M5071FTは両面スキャンも利用可能だ。33.6Kbpsで通信可能であり、その場合の伝送速度はモノクロで約3秒となる。また読取走査線密度はモノクロで8dot/mm×3.85本/mmの標準モード、8dot/mm×7.7本/mmの精細モードと写真モードを備える。EW-M5071FTはこれに加えて、さらに高画質な8dot/mm×15.4line/mmの高精細モードと、16dot/mm×15.4line/mmの超高精細モードが設定できるが大きな差はないだろう。カラーは200×200dpiだ。送信原稿サイズはEW-M5071FTがA3〜A5サイズに対応、EW-M670FTはA4のみとなる。受信したFAXの印刷もリーガルとレターを除けば、EW-M5071FTはA3〜A5に対応しているのに対してEW-M670FTはA3のみとなる。A4以外の用紙を使いたい場合はEW-M5071FTの方が便利だ。
 受信したFAXは本体に保存できるが、EW-M5071FTが550枚又は100件分、EW-M670FTが100枚又は100件分とEW-M5071FTの方がメモリ容量は多くなっている。いずれも保存したFAXは電源オフだけでなく、停電時やコンセントが抜けるなど電源供給がない状態でも保持されるのは安心である。ダイヤル機能としては短縮ダイヤルにEW-M5071FTが200件、EW-M670FTが100件登録できる。EW-M5071TFはこれに加えて10件のワンタッチダイヤルも登録できる。正確には1〜5までのボタンとシフトボタンの組み合わせで10件となっており、より簡単にダイヤルできる。その他、グループダイヤル、順次同報送信、自動リダイヤル機能なども備え、家庭向けの物よりかなり高性能になっている。EW-M5071FTはポーリング受信・送信・予約機能を搭載、EW-M670FTもポーリング受信には対応する。また、送信するFAXを液晶で確認してから送信する「見てから送信」と、受信したFAXの内容を液晶で確認した上で印刷するか決めることで用紙を節約できる「見てから印刷」機能も備える。さらに、パソコン内のデータを直接FAXできる「PCファクス」機能を備えているのも便利である。送信(パソコン上のデータを画像として送信)だけでなく、受信(パソコン上にFAXのデータを受信)することもできる。なお、FAX機能だけで受話器がないため通話機能は無いが、モジュラージャックのインとアウトを備えており、アウトに電話機を接続すると通話が可能となる。その際、ファクス/電話自動切り替え機能にも対応している。両機種には一部の機能や保存件数などには差があるが、十分高性能な機能を搭載しているという点では近いと言えるだろう。

操作パネル/インタフェース/本体サイズ
型番
EW-M5071FT
EW-M970A3T
EW-M770T
EW-M670FT
EW-M630T
EW-M571T
G3310
製品画像
液晶ディスプレイ
4.3型
2.7型
(90度角度調整可)
2.7型
(90度角度調整可)
2.4型
(角度調整可)
2.4型
(角度調整可)
1.44型
(角度調整可)
1.2型
(モノクロ・セグメント)
操作パネル
タッチパネル液晶+物理ボタン
ボタン式
(90度角度調整可)
ボタン式
(90度角度調整可)
タッチパネル液晶
(角度調整可)
ボタン式
(角度調整可)
ボタン式
(角度調整可)
ボタン式
インターフェイス
USB他
USB2.0×1
USB2.0×1
USB2.0×1
USB2.0×1
USB2.0×1
USB2.0×1
USB2.0×1
無線LAN
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(ダイレクト接続対応)
有線LAN
100BASE-TX
100BASE-TX
100BASE-TX
100BASE-TX
100BASE-TX
対応OS
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 10/8.1/7
耐久枚数
8万枚
5万枚
5万枚
5万枚
5万枚
3万枚
N/A
外形寸法(横×奥×高)
666×486×418mm
526×415×168mm
425×359×161mm
375×347×231mm
375×347×187mm
375×347×187mm
445×330×163mm
重量
23.5kg
10.5kg
8.0kg
6.8kg
5.8kg
5.5kg
6.3kg
本体カラー
ブラック
ブラック
ブラック/ホワイト
ブラック/ホワイト
ブラック/ホワイト
ブラック/ホワイト
ブラック

 操作パネルと液晶ディスプレイを見ていこう。この中でG3310は特殊であるため後述する。液晶サイズはEW-M5071FTが4.3型、EW-M970A3TEW-M770Tが2.7型、EW-M670FTEW-M630Tが2.4型、EW-M571Tは1.44型となる。下位モデルになるほど液晶が小型になっている。4.3型ともなればかなり大きいが、2.7型や2.4型でも使いにくいと言うほどではない。ただEW-M571Tの1.44型はかなり小さく、メニューの文字が小さいだけでなく、メモリカード内の写真の選ぶ際にも視認性が悪くなる。ただ、最も大きいEW-M5071FTが最も使いやすいかと言えば、液晶と操作パネルの角度が固定されているという問題がある。EW-M5071FTを除く5機種は、液晶ディスプレイと操作パネルは本体前面に搭載しているが、操作パネル全体を持ち上げて角度調整が可能となっている。最大90度まで起こすことができるので、垂直から水平まで見やすい角度で操作ができるよう工夫されている。一方のEW-M5071FTは本体前面から斜めに飛び出すように固定されている。斜めなので比較的使いやすいが、置き場所によってはやや視認性は落ちる可能性がある。その点ではEW-M970A3T、EW-M770T、EW-M670FT、EW-M630Tなどの液晶が比較的大きく、角度調整ができる機種は使いやすい。
 操作パネルも各機種で違いがある。タッチパネルなのはEW-M5071FTEW-M670FTである。FAXは各種機能や短縮ダイヤルの選択など、表示項目が多いのでタッチパネルが使いやすい。一方で、この2機種にも違いがある。EW-M5071FTはタッチパネル液晶ながら、物理ボタンも併用している。ホームや戻る、カラースタート、モノクロスタート、ストップ、リセット、割り込み、ジョブ確認などの利用頻度の高いボタンの他、テンキーとワンタッチダイヤルも物理キーとなる。テンキーなどは押した感触のある物理キーの方が使いやすいという人も多く、利便性を重視した結果、こういった操作パネルとなったのだろう。一方、EW-M670FTは電源ボタン以外は物理ボタンがなく、テンキーやスタートボタンも液晶内に表示される。液晶サイズの違いだけでなくこういった面からもEW-M5071FTの方が使いやすいだろう。残る4機種、EW-M970A3T、EW-M770T、EW-M630T、EW-M571Tは物理ボタンでの操作となる。直感的な操作性という点ではEW-M5071FTとEW-M670Tには及ばない。
 では、G3310というと、本体上面の右側に縦に操作パネルが並んでおり、液晶は1.2型と非常に小さく、当然角度調整はできない。それ以上に、液晶はモノクロのセグメント表示で、バックライトも無い点は問題だ。2桁の数字(十の位は1のみ)以外は、ネットワークの状態やセットアップを示すアイコンなど固定表示のみで、情報量は非常に少ない。そのため、エラーの内容や、設定項目は数字でしか表示されず、マニュアルを見ないと、どの番号が何を表しているのかが分からない。ボタンも「電源」「LAN」「ダイレクト」「インフォメーション」「セットアップ」「+」「ストップ」「モノクロスタート」「カラースタート」しかない。操作も煩雑になり、例えば自動電源オフ機能を解除する場合、セットアップの19番なので、セットアップボタンを押した後、「+」ボタンを18回押して、数字を19にした後、モノクロスタートボタンを押すという操作になる。操作性では、エプソンの6機種中最も液晶の小さいEW-M571Tと比べても大きく劣ることになる。やはりカラーで自由に内容が表示できる液晶がある方が、操作性は良いだろう。

 インタフェースは7機種ともUSB2.0に加えて、ネットワーク接続にも対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、無線LAN(Wi-Fi)ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。その場合、プリンターも無線LANルーターに接続しておけば、家庭内のどのパソコンでもプリント可能となり非常に便利だろう。またスマートフォンやタブレットからの印刷も可能となる。またWi-Fiダイレクトに対応しているため、無線LANルータの無い環境でも、スマートフォンやタブレットと直接Wi-Fi接続が可能となっている点も共通の便利な点だ。ただし、EW-M571TG3310を除く5機種は無線LANと有線LANの両方に対応しているが、EW-M571TG3310は無線LANのみの対応となる。ルーターが近い場合や、壁にLANコネクタが用意されている場合、無線LANでは不安定な場合などに有線LANは重宝するため、そういった使い方を考えている人は注意が必要だ。
 対応OSはメーカーによって大きな差がある。エプソンの6機種はWindows XP SP3以降は全て対応する。MacOSもダウンロード対応とはなるが10.6.8以降に対応する。マイクロソフトのサポートの終了したWindows XPやVistaにも対応するのは安心だ。一方キャノンのG3310はWindows 10/8.1/7 SP1のみ対応だ。Windows XPやVistaだけでなくWindows 8にも非対応(8.1は対応)なのは注意が必要だ。またMacOSには完全に非対応となるなど、使用できる機種がエプソンの機種と比べるとかなり限定される。
 本体サイズを見てみよう。最も大きいのはA3ノビプリントとA3スキャンに対応したEW-M5071FTとなるのは当然だ。666×486×418mmというサイズはかなり存在感がある。ただしベースとなるPX-M5041Fの567×486×418mmに約10cm幅のエコタンクをくっつけたような形となる。そのため約10cmはエコタンク部分だけなので、666mmというサイズの割には小さく感じる。続いて大きいのはA3プリント対応のEW-M970A3Tだ。526×415×168mmとなるが、A3ノビとA3の違いはあるとは言え、横幅が14cmも小さい。家庭向けのコンパクトさにこだわった機種をベースにしていることに加えて、エコタンク部分の半分以上が大半が本体に埋め込まれている事が理由だろう。ADFがなく、給紙枚数も少ないこともあって、高さも168mmとかなり薄型だ。それほど大きさを感じないのも高さが小さいためだろう。EW-M970A3TのA4版とも言うべきEW-M770Tは425×359×161mmと、さらに横幅が10cm小さいほか、奥行きも5.6cm小さい。かなりコンパクトと言え、一昔前の複合機と比べても小さいといえるだろう。EW-M670FT、EW-M630T、EW-M571Tは基本的には同じ本体を採用している。EW-M670FTが375×347×231mm、EW-M630TとEW-M571Tが375×347×187mmと高さ以外は同等だ。高さはADFの分の違いとなる。エコタンク部分がEW-M770Tなどと比べて縦長になった事に加えて、1色減っているため、完全に本体に内蔵されており、横幅はカートリッジ方式のプリンターと比べても小さい部類に入る。一方で高さはEW-M630TやEW-M571Tでも187mmとEW-M770Tより少し高くなっている。特にEW-M571Tは排紙トレイの下に余分な高さがあるように感じる。これは3機種とも同じ本体をベースにしているためで、EW-M670FT/EW-M630Tの前面給紙カセット部分が、背面給紙のEW-M571Tでもスペースとして存在しているためだ。これは、コストダウンの関係に加えて、この部分を削るとエコタンクの高さが足らなくなるため、こういった形になったと思われる。とはいえ3機種とも設置スペースで見れば非常に優秀だ。ただしEW-M670FTとEW-M630Tは実際にこのスペースで用紙がセットできるが、EW-M571Tは背面給紙であるため、後方と上方にスペースが必要となる。一方のEW-M670FTとEW-M630Tはエコタンクの前方への飛び出しが前面給紙カセットの飛び出る長さと同等になっているなど無駄が無い設計とも言える。G3310は445×330×163mmと高さはEW-M571Tなどと比べると低いが、横幅が7cmも大きく、特大容量タンクを左右に分けたわりには横幅が大きい。高さが低く抑えられているとはいえ、EW-M571Tと同じく背面給紙であるため、結局上方に用紙をセットするスペースが必要になることを考えると、設置スペース面では劣ることになる。
 耐久枚数はEW-M5071FTが8万枚で最も高く、次いでEW-M970A3TEW-M770TEW-M670FTEW-M630Tが5万枚、EW-M571Tが少し劣り3万枚となる。一般的に家庭向けの機種は1万〜1万5000枚程度と言われているため、それと比べればどの機種も強く作ってあるといえる。ただしG3310に関しては耐久枚数に関しては書かれておらず、家庭向けと同等レベルの可能性もある。
 本体カラーは、EW-M770TEW-M670FTEW-M630TEW-M571Tの4機種はブラックとホワイトの2色が選べ、それ以外の3機種はブラックのみとなる。



 いずれも低印刷コストである点は共通しているが、いくつかの分け方がある。例えばA3スキャンA3ノビプリントのEW-M5071FT、A4スキャンA3プリントのEW-M970A3T、A4スキャンA4プリントの残る5機種という分け方がある。また、写真印刷にも向いているEW-M970A3TEW-M770Tに対して、文章向けの残る5機種という分け方もある。FAX機能の付いたEW-M5071FTとEW-M670FT、付いていない残り5機種とも言える。これらから必要な機能を考えれば自ずと機種が決まってくるだろう。
 まずA3スキャン、もしくはA3より大きいA3ノビのプリントが必要ならEW-M5071FTとなる。ただ、本体が大きいことはさておき、他の機種と比べるとフチなし印刷ができず、挿すだけ満タンインク方式ではないという問題がある。フチなし印刷が必要ならインクカートリッジ方式のPX-M5081Fを選択肢に入れる必要が出てくる。また、同梱のインクがセットアップ用の物なので、同梱インクが多いので本体価格が高くても元が取れるという考え方はできず、実質印刷コストの差で元が取れる必要がある。また、写真印刷を考えている人には画質面でも不満がある。この点がクリアできるなら、A3スキャンやA3ノビプリントが必要な人にはベストな選択肢となるだろう。一方スキャンはA4までで十分だがA3プリントはしたい、またはA3サイズの写真印刷がしたいという人にはEW-M970A3Tがおすすめだ。EW-M5071FTと比べるとかなりコンパクトながら、写真は綺麗で印刷が速く、耐保存性も高い。一方プリントもA4までで良いが、写真印刷やCD/DVD/BDレーベル印刷がしたいという人にはEW-M770Tがおすすめだ。逆にA4で文書主体という人にはEW-M670FT、EW-M630T、EW-M571T、G3310のいずれかとなる。まずFAX機能やADFが必要ならEW-M670FTがおすすめだ。一方、FAXやADFは必要ないが、普通紙の印刷速度や画質にこだわるならEW-M630Tがベストだ。下位モデルEW-M571Tと比べて価格差は7,000円だが、印刷速度が速く、普通紙印刷画質も高く、前面給紙カセットで使い勝手やスペース面でも有利、さらに本体の操作性も良い。価格差以上に機能差があるので、EW-M571Tとで迷ったらEW-M630Tをおすすめしたい。
 一方、いずれもそれほどこだわらないが、安くエコタンク搭載プリンターを手に入れたい人にはEW-M571TG3310となる。価格は同等のこの2機種は直接のライバル製品となるが、オススメはEW-M571Tだ。ここまではっきりどちらかの機種だけをオススメするのは珍しいのだが、そこまでの差があると言える。EW-M571Tは画質や写真の印刷速度、印刷コストではG3310に劣るとは言え、大きな差では無く、逆に普通紙印刷速度、インクの耐保存性、両面印刷対応、SDカードからのダイレクト印刷対応、リモートプリント機能など勝る部分が多い。それに加えてカラー液晶を搭載しているため、コピー機能も豊富で各種設定やエラーなども分かりやすい。さらに最も重要なのがインクの充填のしやすさで、この部分の差は大きい。対応OSも幅広く、耐久枚数も高い。価格が同じだと完全な機能比較となってしまい、G3310が優れている部分もあるが差が小さく決め手にはならない一方、EW-M571Tにしか搭載されていない機能が多い事から、EW-M571Tが使いやすく、様々な場面で便利に使えるだろう。
 このように、用途に応じて7機種のどれがおすすめかは変わってくる。どういった用途に使うかが決まれば、自ずと機種も決まってくるだろう。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/


EW-M5071FT
EW-M970A3T
EW-M770T
(ブラック)
EW-M770TW
(ホワイト)
EW-M670FT
(ブラック)
EW-M670FTW
(ホワイト)
EW-M630FB
(ブラック)
EW-M630FW
(ホワイト)
EW-M571T
(ブラック)
EW-M571TW
(ホワイト)
G3310