小ネタ集
新旧プリンター比較
2019年春発売のプリンターを旧機種と比較する
〜同種の同価格帯のエプソン・キヤノン製品を比較〜
(2019年8月16日公開・2019年10月4日最終更新)

プリンタ比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンタ比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。


エコタンク/ギガタンク搭載モノクロプリンター
 
 インクジェットプリンターにはモノクロプリント専用の機種というのが存在する。インクジェットプリンターと言えばカラープリントができるというのが一般的だが、カラープリントは一切しないというユーザーもおり、特にビジネス利用の人にはこの傾向がある。今まではモノクロ専用と言えばレーザープリンターを購入するのが一般的であったが、カラーレーザーからビジネス向けカラーインクジェットへの乗り換えの進んでおり、モノクロレーザーからの乗り換えにモノクロインクジェットプリンターも存在感を増してきた。その中でも、レーザープリンターに対して印刷コスト面で圧倒的に優位に立つ、エプソンのエコタンクやキャノンのギガタンク搭載プリンターを比較してみよう。現状、エプソンからはPX-S270TPX-S170TPX-S170UTPX-S160Tの4機種が、キャノンからはGM2030が該当する。それぞれ32,980円、24,980円、22,980円、19,980円、21,880円と価格に差があるが、果たしてどういった違いがあるのか、徹底的に検証しよう。

プリント(画質・速度・コスト)
メーカー
エプソン
エプソン
エプソン
エプソン
キャノン
型番
PX-S270T
PX-S170T
PX-S170UT
PX-S160T
GM2030
製品画像
実売価格(メーカーWeb/税抜き)
32,980円
24,980円
22,980円
19,980円
21,880円
インク
色数
1色
1色
1色
1色
1色/4色
カートリッジ構成
ブラック
ブラック
ブラック
ブラック
ブラック(顔料)
【カラーのインクカートリッジを装着時】
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成
「挿すだけ満タン」エコタンク
(オフキャリッジ)
「挿すだけ満タン」エコタンク
(オンキャリッジ)
「挿すだけ満タン」エコタンク
(オンキャリッジ)
エコタンク
(オフキャリッジ)
ブラック:ギガタンク(オフキャリッジ)
(挿して注入・満タン自動ストップ)
カラー:一体型カートリッジ(オンキャリッジ)
顔料/染料系
顔料
顔料
顔料
顔料
顔料(黒)/染料(カラー)
新顔料ブラック
インク型番
ヤドカリ
ヤドカリ
ヤドカリ
クツ
30番(ブラック)
341XL(カラー・大容量)/341(カラー・標準容量)
ノズル数
800ノズル
360ノズル
360ノズル
360ノズル
1792ノズル
カラーインク未装着時は640ノズル
ブラック:800ノズル
ブラック:360ノズル
ブラック:360ノズル
ブラック:360ノズル
ブラック:640ノズル
カラー:各384ノズル
最小インクドロップサイズ
N/A(2.8pl?)
N/A(3pl?)
N/A(3pl?)
3pl
N/A(2pl?)
最大解像度
1200×2400dpi
1440×720dpi
1440×720dpi
1440×720dpi
600×1200dpi
PrecisionCoreプリントヘッド
印刷速度
A4普通紙カラー(ISO基準)
N/A
N/A
N/A
N/A
6.8ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準)
20.0ipm
(最速39枚/分)
15.0ipm
(最速32枚/分)
15.0ipm
(最速32枚/分)
15.0ipm
(最速34枚/分)
13.6ipm
ファーストプリント
A4普通紙モノクロ
6.0秒
8.0秒
8.0秒
9.0秒
9.0秒
印刷コスト
A4カラー文書
N/A
N/A
N/A
N/A
7.2円(大容量)
11.1円(標準容量)
A4モノクロ文書
0.4円
0.4円
0.4円
0.3円
0.4円
印刷可能枚数
インクボトル1本
6000ページ
6000ページ
6000ページ
6000ページ
6000ページ
タンク1回補充
6000ページ
2000ページ
2000ページ
6000ページ
6000ページ

 まずはプリントの基本となる画質と速度、印刷コストから見ていこう。いずれもモノクロプリンターと言うことで、使うインクは黒一色である……と言いたいところだが、GM2030はカラーカートリッジも搭載可能となっている。何はともあれ、5機種とも大容量のインクタンクを搭載しており、ここにインクボトルからインクを補充して印刷するという方式は同じだ。モノクロプリンターと言うことでブラックインク用のインクタンクのみを搭載する。しかし、このインクタンクの場所と補充方法にはそれぞれ違いがある。PX-S270TPX-S160TGM2030はオフキャリッジ式といって、印刷時に左右に動くヘッドから離れた場所に固定されたインクタンクを搭載する。インクタンクとヘッドの間は長いチューブでつながれている。一方、PX-S170T/PX-S170UTは、オンキャリッジ式といって、ヘッドと共に左右に動く部分にタンクが搭載されている。インクカートリッジ方式のプリンターのカートリッジを取り付ける部分がインクタンクになっているというイメージだ。インクタンクとヘッドまでの距離が近くヘッド共に動くため、長いチューブでつなぐ必要が無くインクが詰まる部分を少なくできるというメリットがある。しかし、逆にデメリットもあるが、それは後述する。もう一つ、インクの補充方式は、エプソンではPX-S160Tだけが1世代目ののエコタンクで、`PX-S270T/PX-S170T/PX-S170UTが2世代目に当たる「挿すだけ満タン」インク方式のエコタンクとなっている。ギガタンクは同じ名称でも1世代目と2世代目があるが、GM2030は2世代目となる。この「挿すだけ満タン」のエコタンクや、2世代目のギガタンクは、インクボトルをインク注入口に挿し込むとインクの注入が始まり、満タンになると自動ストップするようになっており、インクボトルもインクがこぼれにくい仕組みになっている。インクを注入口に挿し込み、注入が止まったら抜くという単純で安心な補充が可能だ。インクタンクも本体に内蔵されており、前面からインク残量の確認が可能だ。それに対してPX-S160は、本体の右側にインクタンクだけが飛び出ており、インク残量も側面からしか確認できない。そして何よりインク補充は、大きめの注入口にインクボトルの先端を挿し込んで注入し、目視で満タンまで入ったらインクボトルを抜く事になる。傾けるだけでインクが出てしまうため、インクがプリンターや置いている台の上、さらには手や服に付きやすく、またあふれさせてしまう危険性もある。インクの補充に関してはPX-S160T以外の4機種が圧倒的に便利だ。さて、ここまではインクタンク関係の説明だが、実はGM2030には面白い機能がある。それがカラーカートリッジを取り付けられるという点だ。一見するとブラックインクはギガタンクしか無いように見えるが、内部にカラーカートリッジを取り付けられるようになっているのである。もちろんカラーはギガタンクでは無いので、カラーの印刷コストは高く、またGM2030のWebページやカタログでは、カラーカートリッジ装着後は速やかに使い切る事を推奨しているが、いざという時にカラープリントも行える。もちろんモノクロプリンターなので、カラーインクを取り付けなくてもモノクロ印刷が可能だ。
 インクは4機種とも顔料インクを採用する(GM2030のカラーカートリッジは染料インク)。顔料インクは普通紙に印刷した際に用紙上でインクが広がりにくいため、クッキリとした黒を表現できるほか、小さな文字や中抜き文字も潰れないというメリットがある。また濡れたりマーカーを引いてもにじまないというのも特徴だ。顔料インクは写真用紙や光沢紙などが苦手なほか、アイロンプリント紙など一部使えない用紙があるが、モノクロプリント専用であるため、もっぱら普通紙への文書印刷がメインと考えられるため、問題にはならずメリットの方が大きいと言えるだろう。最小インクドロップサイズはPX-S160Tは3pl、その他の機種は非公開ながら、海外の同機能の機種から予測するに、PX-S270Tが2.8pl、PX-S170T/PX-S170UTが3pl、GM2030が2plと考えられる。また印刷解像度も、PX-S270Tが1200×2400dpiで最も高く、PX-S170T/PX-S170UT/PX-S160Tは1440×720dpi、GM2030が600×1200dpiと低めだ。また、カラーモデルでは5760×1440dpiや4800×1200dpi程度である事を考えると印刷解像度が低いように見えるが、実際にはカラーモデルでも普通紙に印刷するときの解像度はそこまで高くない。モノクロ専用と言うことで、写真用紙など高解像度が必要な用紙には印刷しないという事で、解像度は低めに設定されているようだ。その中でもPX-S270Tは1200dpi×2400dpiで、PrecisionCoreプリントヘッドを採用しているため、普通紙への印刷はより高詳細に印刷でき、図面のような細い線や小さな文字も潰れずに印刷できるだろう。
 印刷速度は、PX-S270Tが20ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)と最も高速で、PX-S170T/PX-S170UTPX-S160Tが15ipm、GM2030が13.6ipmとやや劣る。とはいえ、この印刷速度は十分に高速で、特にPX-S270Tの20ipm(最速39枚/分)というのは、印刷する内容によってはレーザープリンターにも勝る速度だ。ファーストプリント(1枚目の印刷時間)もPX-S270Tが6.0秒で最も速く、PX-S170T/PX-S170UTが8.0秒、PX-S160TGM2030が9.0秒と差はあるが、いずれの機種も10秒以内となっており、1枚目から印刷が高速なインクジェットプリンターの強みが出ているという所だろう。ちなみに、GM2030はカラー印刷も可能だが、その場合は6.8ipmと半分程度の速度となる。
 印刷コストは、エコタンク/ギガタンク方式だけあって非常に低価格だ。PX-S160Tを除く4機種は0.4円、PX-S160Tは0.3円で、一般的には卓上型レーザープリンターで3〜4円、インクジェットでも3円を切ると安い方で、2円を切る機種はかなり印刷コストにこだわった機種と言われるが、それらと比べても圧倒的だ。また、印刷コストが安い機種は、一般的にカートリッジが5,000円から、場合によっては2万円以上と高価ながら大量印刷できるために1枚あたりに換算すると安いというパターンが多いが、この5機種は補充用インクボトルも非常に低価格だ。PX-S270TPX-S170TPX-S170UTの3機種はヤドカリ型番のインクボトルで、1本2,150円、PX-S160Tはクツ型番のインクボトルで、1本1,800円、GM2030は30番のインクボトルで2,100円となる。いずれも6,000枚の印刷が可能で、かなりの枚数が印刷できることになる。ちなみに6,000枚というのが正確な値だとすると、実際の印刷コストはPX-S270TPX-S170TPX-S170UTは0.358円、PX-S160Tが0.3円、GM2030が0.35円となる。小数点2位以下は繰り上げとなる様で、0.1円の差があるように見えるが、実際には0.05円ほどの差で、印刷コストの差は気にしなくても良いだろう。ちなみにGM2030はカラー印刷も可能だが、カラーインクはカートリッジ方式の上に、3色が一体型の341番インクを使うことになるため、一気に印刷コストは上がる。大容量の341XLを使用した場合で7.2円、標準容量の341なら11.1円となる。カラーも本格的に使うならカラーもギガタンク方式sのG5030なら0.S9円前後なのでこちらを利用する方がお得だ。あくまでたまにカラーを印刷するという人向けである。
 ちなみに、インクボトル1本で6,000枚印刷できるのは共通だが、1本まるまるタンクの補充できるかは機種によって異なる。これが、前述のオンキャリッジ式かオフキャリッジ式かが影響する。オフキャリッジ式では大型のインクタンクとできるため、1本全てを補充できる。PX-S270TPX-S160TGM2030がそれにあたる。一方、オンキャリッジ式のPX-S170T/PX-S170UTではあまり重量を増やせないため、タンクが小型で2,000枚分しか入らない。インクボトル1本を3回に分けて補充する形だ。もちろん途中で補充も可能だし、補充自体も挿し込むだけで自動で満タンでストップするのでそれほど手間ではないが、使っている内にインクが切れていて印刷が止まっていたという事態は、他の3機種より発生しやすいことになる。

プリント(給紙・排紙関連)
型番
PX-S270T
PX-S170T
PX-S170UT
PX-S160T
GM2030
製品画像
対応用紙サイズ
名刺・ハガキ・A6〜A4
(最小サイズ54×86mm)
ハガキ・A6〜A4
(最小サイズ89×127mm)
ハガキ・A6〜A4
(最小サイズ89×127mm)
ハガキ・A6〜A4
(最小サイズ89×127mm)
名刺〜A4
(対応用紙は普通紙・ハガキ(光沢タイプでないもの)、封筒のみ)
フチなし印刷
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面
○(手差し/1枚)
○(100枚)
○(100枚)
前面
カセット(250枚・89×127mm以上)
トレイ(150枚)
トレイ(150枚)
カセット(250枚/普通紙のみ)
その他
排紙方向
天面・前面
前面
前面
前面
前面
排紙トレイ自動開閉
用紙種類・サイズ登録
用紙幅チェック機能

 続いて、給紙・排紙関連の機能を見てみよう。対応する用紙は、いずれも最大はA4サイズだが、最小サイズはPX-S270TGM2030は名刺サイズ、PX-S170T/PX-S170UTPX-S160Tはハガキ又はA6サイズとなる。ただし、後者の場合でもユーザー定義サイズとしては89×127mm、ちょうどL判サイズまで設定できるが、写真印刷をすることはないと思われるため、規定のサイズではハガキ又はA6という表現になっている。名刺サイズの用紙に印刷ができるPX-S270TGM2030は、名刺を作成する際に切り取る手間が無い他、数枚の印刷にも対応しやすい点で便利だ。ちなみに、GM2030は対応用紙が限られており、普通紙と高品位専用紙、封筒の他は、表面に光沢処理のないハガキ(郵便はがき、インクジェット郵便はがき、郵便往復はがき、キヤノン写真はがき・マット)しか使えない。カラーカートリッジを取り付ければカラープリントが可能ではあるが、写真用紙に印刷出来るわけではない点は注意が必要だ。エプソンの4機種はもう少し対応用紙が広く、フォトマット紙やスーパーファイン紙などにも対応している。ちなみに5機種ともフチなし印刷はできない。
 給紙に関してはそれぞれ特徴があり、PX-S270Tは前面給紙カセットと背面手差し、PX-S170T/PX-S170UTが前面給紙トレイ、PX-S160Tは背面給紙、GM2030は背面給紙カセットと背面給紙となる。PX-S270TPX-S170T/PX-S170UTは前面給紙と言うことで似ているようだが、PX-S270Tはカセット式で、用紙をセットしたカセットを本体に完全収納できる。用紙をセットしたままでもホコリが積もる心配が無い。一方PX-S170T/PX-S170UTはトレイ式なので、前面のカバーを開けたところに用紙を乗せるだけだ。用紙をセットしたままだと前面カバーは閉じられないし、本体に収納したりカバーがあるわけでは無いので用紙をセットしたままだとホコリが積もってしまう。前面給紙と言うことで、本体後方にスペースが不要である点は同じだが、用紙をセットしたままにしておくという使い方の場合はPX-S270Tの方が良いことになる。給紙枚数もPX-S270Tは250枚、PX-S170T/PX-S170UTは150枚までと差がある。もう一つ、PX-S270Tには背面手差し給紙がある。前面給紙の場合、給紙された用紙は一度プリンター後方で180度方向転換をし、前に進みながら印刷される。そのため、厚い紙だと方向転換時に詰まってしまうことがある他、封筒などの2重になった紙や、接着の弱いラベル用紙なども心配だ(もちろん前面給紙からこれらの用紙に印刷可能ではある)。PX-S270TPX-S170T/PX-S170UTの前面給紙の場合、90g/m2までの用紙にしか対応しない。そこでPX-S270Tの背面給紙の出番である。こちらであれば256g/m2の用紙にまで対応できるため、多少厚かったり硬い紙でも印刷可能だ。1枚ずつしかセットできないが、その分コンパクトになっているため、使わないときは折りたたんでおけば邪魔にならない。また前面給紙にセットした用紙と異なる用紙、例えばA4用紙をセットしている状態で、1、2枚だけB5用紙に印刷したいという様な場合に、わざわざ入れ替えるのも面倒だ。そんな場合にも背面手差しは便利である。また、あまりにも小さい用紙は方向転換時に詰まってしまうことから、名刺サイズの用紙は、この背面手差しからのみ対応している。
 一方PX-S160Tは背面給紙のみだ。用紙のセットはシンプルだが、こちらも用紙をセットしたままだとホコリが積もってしまう上に、背面給紙トレイが後方に傾くこともあって、後方と上方にスペースが必要になる。給紙枚数も100枚までと少なめだ。ただし背面給紙なので、対応用紙厚は256g/m2までと、PX-S270Tの背面手差しと同じなので、多少分厚い紙や硬い紙でも安心ではある。
 GM2030は背面給紙と前面給紙の組み合わせで、一見するとPX-S270Tと似ているが、こちらの背面給紙は手差しではない。前面給紙はカセット式なのでホコリの問題が無く、こちらに250枚までセットできる。一方背面給紙も備えており、こちらにも100枚までセットできる。また、前面給紙カセットは普通紙専用なので、ハガキなどは背面給紙を利用するほか、名刺サイズの用紙も背面からとなる。ホコリの積もらない前面給紙カセットに普通紙を常時セットしておける一方、背面給紙は後方と上方にスペースが必要になるとはいえ、普段使わない用紙はこちらにセットする事で使い分けができるし、背面給紙と言うことで曲がりにくい用紙にも対応できる。ただし、対応用紙は105g/m2までと、PX-S270Tの背面手差しやPX-S160Tよりは劣ることになる。
 さて、インクジェットプリンターでは排紙に関しては前面というのが一般的だ。PX-S170TPX-S170UTPX-S160TGM2030もやはり前面排紙となる。一方、PX-S270Tだけは天面排紙となっている。つまり、本体の上に印刷した用紙が出てくるわけである。レーザープリンターでは一般的なこの方式だが、インクジェットプリンターでは非常に珍しい。前面給紙カセットから給紙された用紙はプリンター後方で方向転換し前方に向かいながら印刷される。その後、今度はプリンタ前方で方向転換し、天板の前方から後ろに向けて紙が出てくる。メリットとしては印刷時に排紙トレイを伸ばす必要が無いため、机ギリギリやや棚に置いていた場合、排紙トレイや印刷した紙が飛び出して邪魔になるという事が無い。給紙も前面給紙カセットで完全に用紙を収納できるため、印刷時にサイズが変わらないのは魅力だ。一方、PX-S270Tは厚紙や曲げにくい用紙のために背面手差し給紙が可能だが、天面排紙のために印刷後に曲げる必要があるなら意味が無い。そこで前面給紙も選ぶことができるようになっている。排紙方向はレバーによる切り替えなので給紙方向と排紙方向の組み合わせは自由だ。PX-S270Tは使い勝手の面でも設置スペースの面でも非常に便利に作られていると言える。ちなみにGM2030以外の4機種は用紙幅のチェック機能が搭載されている。印刷設定の用紙サイズより実際の用紙サイズが小さい場合、用紙外にインクを打ってしまうのを防止する機能で、プリンター内部を汚さないよう工夫されている。

プリント(付加機能)
型番
PX-S270T
PX-S170T
PX-S170UT
PX-S160T
GM2030
製品画像
自動両面印刷
○(普通紙のみ)
○(普通紙のみ)
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
自動電源オン/オフ
−/○
−/○
−/○
−/○
○/○
PictBridge対応
廃インクタンク交換

 その他、プリントの付加機能を見てみよう。自動両面印刷機能はPX-S270TGM2030のみ搭載している。いずれもハガキには非対応で、普通紙の両面印刷のみだ。自動電源オン機能はGM2030のみ搭載している。印刷が実行されると自動的に電源がオンになる機能だ。ネットワーク接続ができるようになり、プリンタから離れた場所のパソコンやスマートフォンから印刷を実行することが増えたが、そういった際にわざわざプリンタの電源を入れに行く手間が省けるため便利だ。一方、指定した時間が経つと自動的に電源がオフになる機能は5機種とも搭載している。
 一方PX-S270Tのみ搭載しているのが交換式メンテナンスボックス(廃インクタンクの交換)だ。メンテナンスボックスとはクリーニング時に排出される廃インクを貯めるもので、満タンになると通常は修理に出して交換する必要があり、プリンターが手元に無い期間が発生し、交換費用もそれなりに掛かる。しかしPX-S270Tでは交換用のメンテナンスボックスがインクと共に売られており、ユーザー自身で簡単に交換できるようになっている。印刷枚数が多いと思われるプリンターだけに、この機能はうれしいところだ。

スマホ/クラウド対応
型番
PX-S270T
PX-S170T
PX-S170UT
PX-S160T
GM2030
製品画像
スマートフォン連携
対応端末
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 10.0以降)
Android 4.4以降
スマートスピーカー対応
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 10.0以降)
Android 4.4以降
スマートスピーカー対応
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 10.0以降)
Android 4.4以降
スマートスピーカー対応
iPhone
iPod touch
iPad
(iOS 10.0以降)
Android 4.4以降
NFC対応
写真プリント
ドキュメントプリント
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
クラウド連携
スマートフォン経由/本体
○/−
○/−
−/−
○/−
○/−
オンラインストレージからの印刷
SNSからの印刷
○(コメント付き可)
写真共有サイトからの印刷
メールしてプリント
LINEでプリント
○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint)
リモートプリント
スキャンしてリモートプリント

 スマートフォンとの連携機能はPX-S170UTを除く4機種が搭載しており、iPhoneやiPod touch、iPadと、Android端末に対応している。いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることでプリント又はスキャンが行える。写真印刷も可能だが、メインで使用すると思われるドキュメント印刷の場合、PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もできる便利だ。
 スマートフォンとの接続は、無線LANルータを経由する方法と、ダイレクトに接続する「Wi-Fiダイレクト」(キヤノンはダイレクト接続)が選べる。無線LANルーター経由の場合は、プリンターと無線LANルーター間は無線LANまたは有線LAN(対応機種のみ)で接続し、スマートフォンも同じ無線LANルーターに接続しておくだけで、いつでも印刷が行える。こちらの方がより便利に使えるため、一般的にはこちらを利用すると思われるが、Wi-Fiダイレクトの場合でもそれほど難しくは無い。
 また、PX-S270T/PX-S170T/PX-S160Tはスマートスピーカーに対応している。AlexaとGoogleアシスタント対応端末に対応しており、声だけでデザインペーパー、フォトプロップス、カレンダー、ノート、方眼紙、五線譜などのエプソン独自のものと、Alexaに登録された買い物リスト、やることリストなどの印刷に対応する。
 クラウドとの連携機能も4機種とも搭載されており、オンラインストレージから印刷する事が可能だ。また、GM2030はSNSの写真をコメント付きでも印刷したり、写真共有サイトからの印刷も可能だ。一方、さらにネットワークを利用したプリント機能はPX-S270T/PX-S170T/PXS160Tが豊富だ。印刷したい写真や文書をこれらプリンターにメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、LINE上でプリンターと友達設定をし、トーク画面からファイルを送ると自動で印刷される「LINEでプリント」、通常のプリント同じ操作で、離れた場所のプリンターで印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載している。様々な使い方が提案されているこの3機種はいざという時便利だと言えるだろう。

操作パネル/インタフェース/本体サイズ
型番
PX-S270T
PX-S170T
PX-S170UT
PX-S160T
GM2030
製品画像
液晶ディスプレイ
操作パネル
インターフェイス
USB他
USB2.0×1
USB2.0×1
USB2.0×1
USB2.0×1
USB2.0×1
無線LAN
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(ダイレクト接続対応)
有線LAN
100BASE-TX
100BASE-TX
100BASE-TX
対応OS
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 10/8.1/7 SP1
耐久枚数
10万ページ
10万ページ
10万ページ
5万ページ
N/A
外形寸法(横×奥×高)
375×347×151mm
375×267×161mm
375×267×161mm
425×267×148mm
403×369×166mm
重量
4.5kg
3.7kg
3.7kg
3.4kg
6.0kg
本体カラー
ホワイト
ホワイト
ホワイト
ブラック
ブラック

 操作パネルと液晶ディスプレイを見ていこう。とはいえ、5機種とも単機能プリンターと言うこともあり、液晶ディスプレイは搭載しない。せいぜいエラーやインク残量、Wi-FiのLEDランプと、インク交換やWi-Fi接続に使うボタンが搭載されているだけだ。その点で5機種に違いは無い。
 インタフェースは5機種それぞれ違いがあり、PX-S270TPX-S160TGM2030はUSB接続に加えて無線LANと有線LANに対応する。前述のスマホとの接続以外に、複数台のパソコンとも接続して、どのパソコンからでも印刷ができるため便利だ。無線LANはケーブルが不要ではあるが、安定性に欠けるほか、初期設定も多少複雑だ。ルーターが近い場合や、壁にLANコネクタが用意されている場合、無線LANでは不安定な場合などに有線LANは重宝するため、どちらも選択できるのは便利だ。PX-S170TはUSB接続に加えて無線LAN接続にも対応するが有線LANには対応しない。有線LAN接続を考えている人は注意が必要だ。そしてPX-S170UTPX-S170TのUSB接続限定版という位置づけなのでUSB接続だけとなる。
 対応OSはメーカーによる差が大きい。エプソンの4機種はWindows XP SP3以降は全て対応する。MacOSもダウンロード対応とはなるが10.6.8以降に対応する。マイクロソフトのサポートの終了したWindows XPやVistaにも対応するのは安心だ。一方、キャノンのGM2030はWindows 7 SP1/8.1/10のみの対応だ。Windows XPやVistaだけでなく、Windows 8も非対応である点は注意が必要だ。さらにMacOSには完全非対応であるため、Macユーザーはエプソンの4機種から選ぶことになる。
 本体サイズを見てみよう。PX-S270Tが375×347×151mmだが、家庭向けのカートリッジ方式の複合機であるエプソンのEP-881Aが349×340×142mm、EP-811Aが390×339×141mmである事を考えると、ビジネス向けとはいえ特に大きいわけでは無い。しかも前面カセットからの給紙で天面排紙なら使用時にもこれ以上サイズが必要ない点では、非常にコンパクトと言える。PX-S170T/PX-S170UTは375×267×161mmと横幅は同じで高さは1cm大きいが、奥行きは7.2cm小さい。ただ、前面給紙がカセット式で無いことや前面排紙であるため、使用時の奥行きは512mmまで大きくなる。PX-S160Tは425×267×148mmとなる。横幅はエコタンクが外付け状態であるためその分も大きくなっている。奥行きは小さめだが、前面排紙である事に加えて、背面給紙で後方にもスペースが必要なので、使用時には530mm以上になる。GM2030は403×369×166mmと全体的に大柄だ。しかも前面排紙というだけで無く、背面給紙を使用する場合にはよりスペースは大きくなり695mmとなる。収納時の事を考えるのか使用時のことを考えるかで大きく変わってくる。使用時はPX-S270Tが最も小さく、収納時はPX-S170T/PX-S170UTが最も小さくなる。
 ちなみに本体の耐久性は、PX-S270TPX-S170TPX-S170UTが10万ページ、PX-S160Tが5万ページとなっている。一般的に家庭向けの機種は1万〜1万5000ページ程度と言われているため、かなり強く作られていることが分かる。印刷枚数が多い人向けの機種だけに、耐久性も高めているのはうれしいところだ。GM2030は耐久枚数が非公表なので、その点は不安が残る。



 5機種はいずれもモノクロプリンターと言うだけで無く、インクタンク方式で印刷コストが安く、顔料ブラックインクで普通紙の印刷が綺麗という点で同じだ。ではどこが決め手になるだろうか。まず純粋なモノクロプリンターとして比較する前に、たまにカラープリントをするというならGM2030を購入するのが安心だろう。写真印刷などはできないが、カラーの年賀状やカラー文書を印刷する可能性があるなら、普段はモノクロプリンター、いざという時はカラープリンターとして使える唯一の選択肢と言える。
 ではモノクロプリンターとして比較してみよう。印刷枚数が多く、常に電源を入れていて使うという使い方をするなら、多少本体価格が高くてもPX-S270Tがおすすめだ。印刷速度が速く大量印刷でもストレス無く使える上、インクタンクも大型だ。さらに常時使用状態にするという場合、使用時のスペースも重要だが、天面排紙のPX-S270Tは、排紙トレイが飛び出すことも無いため、電源オフと変わらない感覚で電源を入れておいていつでも使える。もちろん給紙枚数も250枚と多く、カセット式なので用紙を入れたままで問題ない。自動両面印刷、交換式メンテナンスボックス、無線LANと有線LANに対応、耐久枚数も10万枚とスキが無い。一方、給紙枚数や自動両面印刷にこだわるが、設置スペースは気にならないならGM2030もありだ。印刷速度は他の4機種より若干劣るが十分高速で、前面給紙カセットに250枚と背面給紙に100枚、または2種類の用紙を同時にセットできるのは便利だ。背面にスペースをとりたくない場合は、前面給紙カセットだけでもPX-S270Tと同じ給紙枚数だ。耐久枚数が不明だったり、Macに非対応だったりという点はありつつも、自動両面印刷や有線LAN似もしっかり対応しており、安価な割に比較的高性能だと言える。逆に常時使用しないが、使用するときは一気に大量に印刷するというなら、収納時のサイズが小さいPX-S170TPX-S170UTがおすすめだ。前面給紙はカセット式では無いため常時セットしておくには向かないが、その分コンパクトだ、セットする際は前面から行えるし、150枚まで給紙ができる。印刷速度もPX-S270Tほどではないが高速で、大量印刷でもストレスがない。インクタンクが小さいことも、大量印刷前に満タンまで補充することで対応できる。本体の耐久枚数も高い。ただ自動両面印刷に非対応だったり、PX-S170Tでも有線LANに非対応だったりという点が問題なければである。割り切ってUSB接続だけで良いという場合はPX-S170UTにすることで少し安く購入できる。できるだけ安く手に入れたいならPX-S160Tだ。本体価格だけで無く印刷コストも他機種より安い。インクの補充方式が唯一旧方式だったり、背面給紙だけだったりと不便な点はあるが、PX-S170UTより安い価格で、PX-S170Tにもない有線LANに対応しており、印刷速度も遜色ないなど、基本性能は意外と高い。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/


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