プリンター徹底比較
2019年末時点のプリンター
〜エプソンとキャノンのプリンターを比較〜
(2020年4月20日公開・8月1日更新)

プリンター比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンター比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。


A4複合機(カートリッジ方式・2万円台中盤)
 
 2万円中盤のこのクラスは、上位機種と比べると多少機能が省かれる物の、まだまだ高性能な一方、購入しやすい価格になっている。エプソンはEP-812A、キヤノンはPIXUS TS7330がこの価格帯となるが、価格はいずれも23,980円となっており、完全に同じだ。また、上位機種からどの機能を省くかという選択がメーカーによって異なっており、結果的に両機種には様々な点で違いが出ている。どういった違いがあるのか見ていこう。

プリント(画質・速度・コスト)
メーカー
エプソン
キャノン
型番
EP-812A
PIXUS TS7330
製品画像


実売価格(メーカーWeb/税抜き)
23,980円
23,980円
インク
色数
6色
5色
インク構成
ブラック
シアン
ライトシアン
マゼンタ
ライトマゼンダ
イエロー
顔料ブラック
染料ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成
各色独立
各色独立
顔料/染料系
染料
(つよインク200)
染料/顔料(黒)
(ChromaLife100)
インク型番
サツマイモ
380XL/381XL(大容量)
380/381(標準容量)
380s/381s(小容量)
ノズル数
1080ノズル
4096ノズル
各色180ノズル
C/M/顔料BK:各1024ノズル
Y/染料BK:各512ノズル
最小インクドロップサイズ
1.5pl(AdvancedMSDT)
N/A
最大解像度
5760×1440dpi
4800×1200dpi
印刷速度
L判縁なし写真(メーカー公称)
13秒
18秒
A4普通紙カラー(ISO基準)
N/A
10.0ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準)
N/A
15.0ipm
印刷コスト
L判縁なし写真
29.5円
17.3円
A4カラー文書
17.1円
9.6円
A4モノクロ文書
N/A
N/A

 まずはプリントの基本となる画質と速度、印刷コストから見ていこう。。EP-812Aは6色インクで最小インクドロップサイズは1.5pl、印刷解像度は5760×1440dpiであり、非常に高画質な印刷が可能だ。これは上位機種EP-882Aと同等であり、EP-882Aの方がインクが改良された分の僅かな差があるだけで、ほぼ同等画質と言える。ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色に、ライトシアンとライトマゼンダを搭載しており、いずれも染料インクとなる。カラー原稿の色の薄い部分ではライトインクを使う事で粒状感が抑えられる。一方、PIXUS TS7330は5色インクとなる。染料インクのブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色と顔料ブラックインクを搭載する。写真印刷時は基本の4色印刷となるため、6色印刷のEP-812Aと比べると一歩劣る事になる。また、印刷解像度は4800×1200dpiとやや低く、最小インクドロップサイズも2pl程度と言われているため、粒状感の面でもやや劣ることとなる。印刷結果は十分綺麗とも言えるが、細かく見れば写真の印刷画質はEP-812Aが一歩リードだ。
 一方、PIXUS TS7330は顔料ブラックを搭載しているため、ブラックインクを使用する部分に限ってだが、普通紙などへの印刷ではメリハリのある印刷結果が得られるというメリットがある。小さな文字や中抜き文字も潰れずに印刷が可能なほか、耐水性も高いため濡れた手で触ったりマーカーを引いても滲まない。EP-812Aは染料ブラックしか搭載していないため、この点ではPIXUS TS7330の画質が上だ。黒と言っても、完全な黒ではないグレーの部分には染料のカラーインクを混ぜて作る場合があるし、背景色があるなどカラーの中に混ざっている場合も染料ブラックが使われる場合もあるなど、必ずしも顔料インクの恩恵を受けられるわけではないが、コピーや文書印刷では全体的に引き締まった印象となるのは確かだ。一方、EP-812Aも、細線強調機能や文字くっきり機能を搭載し、普通紙では苦手な写真も色鮮やかになるようドライバーレベルで文書印刷画質を高めている。あくまで、染料インクのままでの改良となるが、画質は改善され、PIXUS TS7330との差はある程度縮まっている。
 最小インクドロップサイズは非常に小さいが、EP-812AはAdvanced-MSDTという5つのインクサイズのインクを打ち分ける機能を搭載しており、必要に応じて大きなインクサイズを打ち分ける事で高速化と高画質化を両立しており、一方PIXUS TS7330もノズル数を多くすることで高速化を図っているため、L判写真フチなし印刷速度はEP-812Aが13秒、PIXUS TS7330が18秒と、上位機種と同等となっている。一方、普通紙への印刷速度はEP-812Aでは公表されていないため比較することはできないが、PIXUS TS7330はカラーが10ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、モノクロが15ipmとなっており、こちらも上位機種と同等だ。家庭用プリンターとしては非常に高速な部類に入る。
 使用するインクはEP-812Aは「つよインク200」である。アルバム保存300年、耐光性50年、耐オゾン性10年となる。一方、PIXUS TS7330は「ChromaLife100」でありアルバム保存100年を実現している。どちらも十分なレベルの耐保存性を持ったインクであるが、EP-812Aの方がさらに耐保存性は高く、耐光性なども書かれているなど一歩上回る印象だ。ちなみに、両機種とも各色独立インクとなっており、なくなった色だけ交換できる。
 印刷する上で、印刷コストも気になるはずだ。EP-812AはL判写真1枚29.5円、PIXUS TS7330が17.3円と大きな差がある。EP-812Aは上位機種と異なり大容量インクがないだけで無く、割高となっており、印刷コストは9円近く上がっている。一方、PIXUS TS7330は上位機種と同じ大容量・標準容量・小容量の3種類の容量が用意される事に加え、上位機種と比べてインクが1色減っていることもあって印刷コストはやや下がっている。結果的に、両社の間で12円以上の差となっている。A4カラー文書の印刷速度もEP-812Aの17.1円に対して9.6円と開きがある。印刷枚数が多い場合はPIXUS TS7330の方がコストを気にせず使えるだろう。ちなみに、PIXUS TS7330の大容量に関しては6色セットはなく、印刷コストも標準容量と変わらない事から、一般的には標準と小容量を使うこととなる。L判写真は標準は17.3円だが、小容量で23.7円であり、これでもEP-812Aよりはかなり安い。

プリント(給紙・排紙関連)
型番
EP-812A
PIXUS TS7330
製品画像
対応用紙サイズ
L判〜A4
名刺〜A4
給紙方向
(セット可能枚数(普通紙/ハガキ/写真用紙))
背面
○手差し
(1枚/1枚/1枚)
(0.6mm厚紙対応)

(100枚/40枚/20枚)
前面
【カセット下段】
(100枚/40枚/20枚)
【カセット上段】
2L/ハイビジョン以下
(−/20枚/20枚)
【カセット】
普通紙のみ
(100枚/−/−)
その他
排紙トレイ自動開閉
用紙種類・サイズ登録
○(カセット収納連動)
○(給紙口カバー閉じ(背面)連動)
用紙幅チェック機能
○(印刷時)
○(セット時・用紙サイズ表示)

 続いて、給紙・排紙関連の機能を見てみよう。給紙に関しては、エプソンとキヤノンで方針が異なる。EP-812Aは前面給紙を基本としており、大小2段のカセットとなっている。上段にL判やハガキサイズなどの小さな用紙を、下段にはA4やB5といった大きな用紙をセットするようになっている。完全に本体に収納可能なので、用紙をセットしたままにしてもホコリがかかるなどの心配がないのはメリットだ。下段にA4普通紙が100枚、上段に写真用紙やハガキなら20枚までセット可能だ。また、下段にもL判やハガキサイズにの用紙もセットでき、その場合、ハガキなら40枚、写真用紙は20枚セット可能となるため、上下段ともに入れれば合計でハガキは60枚、写真用紙は40枚までセットできる。もちろん連続で使用可能だ。下段の用紙を入れ替える手間をかければ、大量印刷の時に重宝するだろう。前面給紙・前面排紙と言うことで気になるのが、厚紙やラベル用紙、封筒などの2重になった紙への対応である。前面給紙カセットでも問題ない事になっているが、前面から給紙して前面から排紙するため、内部で180度曲げられてしまうのは少し心配だ。そこで、簡易的ながら背面給紙も行える。一般的なの背面給紙に近い位置だが、用紙をセットしておけるような大型のものではなく、小さな背面給紙カバーと、用紙を支える小さな「用紙サポート」を引き出せるだけだ。印刷を実行して、用紙をセットする旨のメッセージが出てから用紙を差し込みスタートボタンを押す方式なので、1枚ずつの「手差し給紙」だが、いざという時に便利だろう。また、前面給紙カセットにセットしている用紙と異なる用紙を数枚だけ使いたい場合に、入れ替えずに背面手差し給紙を使うこともできる点でも便利だ。さらに、通常の給紙カセットや背面給紙では0.3mm厚の用紙までの対応だが、EP-812Aの背面手差し給紙では、倍の0.6mmの用紙に印刷ができるのも便利だろう。対応用紙はL判からA4サイズまでとなる。
 一方のPIXUS TS7330は前面給紙カセット+背面給紙となっている。EP-812Aと似ているようだが、こちらは前面が1段で、代わりに背面は手差しでは無く一般的な背面給紙となっている。前面にA4普通紙、背面にL判写真用紙という風に入れておけばEP-812Aと同じような使い方となる。注意点としては、前面給紙カセットは普通紙のみという事だ。サイズもA4/B5/A5サイズのみとなる。そのため、ハガキや写真用紙、ファイン紙や普通紙でも非定型の用紙などは全て背面給紙を利用することとなる。一方で背面給紙は普通紙もセット可能で100枚まで、前面給紙カセットも100枚なので、合計200枚までセットできるのはメリットだ。もちろん連続で使用する事ができる。写真用紙やハガキは背面給紙のみで、ハガキは40枚、写真用紙は20枚となる。背面給紙は用紙のセット時に左右のガイドを合わせるだけで良く、セットしやすい。一方でデメリットもあり、用紙をセットするために上方に空間が必要なほか、トレイが後方に傾くため、本体の後方にある程度のスペースが必要になってしまう。また、用紙をセットしたままだとホコリをかぶってしまい、その用紙が給紙されると故障の原因になる場合があるため、使わないときは取り除くのが理想だ。普通紙以外の用紙も常にセットしておくという使い方の場合、前面カセットにセットできるEP-812Aの方が便利だと言えるだろう。なお、背面給紙からの給紙の場合でも用紙厚は0.3mmまでで、EP-812Aのような厚紙には対応しない。PIXUS TS7330はL判より小さな名刺サイズの用紙に対応する。
 両機種とも用紙の種類とサイズを登録しておく機能が搭載されている。液晶ディスプレイでメニューから登録も可能だが、EP-812Aは前面給紙カセットを挿し込むと、PIXUS TS7330の背面給紙は給紙口カバーを閉じると、自動的に登録画面が表示されるため便利だ(されないようにもできる)。この登録内容と、印刷時の用紙設定が異なっている場合、メッセージが表示される仕組みだ。また、両機種とも用紙幅をチェックするセンサーも搭載されている。しかし、エプソンとキャノンで使い方が異なる。EP-812Aは印刷時に用紙幅をチェックし、用紙サイズが小さい場合に、用紙外にインクを打ってしまいプリンター内部が汚れるのを防ぐ機能である。一方、PIXUS TS7330は用紙セット時に用紙幅をチェックし、用紙の登録に活用する。前面給紙カセットの場合は、普通紙のみで、非定型の用紙もセットできないことから、横幅から用紙サイズが確定できるので、用紙の登録画面自体が表示されず、センサーで認識した用紙サイズを自動登録することで手間を省いている。背面給紙の場合は、予測されるサイズが表示されるが、用紙の種類は認識できず、サイズも非定型や横幅が似ている用紙の場合もあるため、登録画面が表示される。このように、用紙のセット一つでも、様々な便利機能が搭載されている。
 一方、排紙トレイで便利なのが、PIXUS TS7330の搭載する自動開閉機能だ。印刷が実行されると自動的に排紙トレイが伸張する。後述の自動電源オン機能と組み合わせると非常に便利だ。逆に電源を切るときは自動的に排紙トレイが収納される。

プリント(付加機能)
型番
EP-812A
PIXUS TS7330
製品画像
自動両面印刷
○(ファイン紙対応)
○(普通紙のみ)
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
○(オートフォトファイン!EX)
○(自動写真補正)
特定インク切れ時印刷
○(黒だけでモード・5日間のみ)
自動電源オン/オフ
○/○
○/○
廃インクタンク交換/フチなし吸収材エラー時の印刷継続
−/○
−/−

 その他、プリントの付加機能を見てみよう。まず両機種とも自動両面印刷機能を搭載している。ただし、EP-812Aは普通紙だけでなくハガキなどにも対応するため、年賀状で通信面と宛名面を用紙の差し替え無しで印刷できる一方、PIXUS TS7330は普通紙のみの対応となる。EP-812Aはそれに加えて、ファイン紙の自動両面印刷にも対応した。両面印刷ファイン紙は多数の製品が発売されており、両面印刷時の裏移りを抑えられるなど、両面印刷に適しており、高画質に両面印刷を行いたい時に便利だ。CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷機能もEP-812Aのみ搭載する。レーベル印刷のトレイを使わない時は、前面給紙カセットの下に収納できるようになっている。写真の自動補正機能としては、EP-812Aは「オートフォトファイン!EX」、PIXUS TS7330は「自動写真補正」と名称は違うものの、逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われる。EP-812Aはパソコンからの印刷時だけでなく、後述のダイレクト印刷時にも利用できる。付加機能ではEP-812Aが豊富だと言える。
 自動電源オン/オフ機能も両機種とも搭載している。自動電源オンは、印刷が実行されると自動的に電源がオンになる機能だ。無線LAN接続ができるようになり、プリンターから離れた場所のパソコンやスマートフォンから印刷を実行することが増えたが、そういった際にわざわざプリンターの電源を入れに行く手間が省ける。ただし、両機種とも排紙トレイが引き出された状態でないと印刷は実行されない。EP-812Aでは、排紙トレイを収納していると電源が入った状態で印刷が止まっている事になる。排紙トレイを出したままにしておけば自動的に印刷が行われるが、いささか不便だ。この点はPIXUS TS7330は排紙トレイが自動で伸張されるので、完全に印刷まで自動化されている。離れた場所からのプリントがメインならPIXUS TS7330は便利だろう。また両機種とも、指定した時間が経つと自動的に電源がオフになるため、電源オンのままにしてしまう事も無い。逆に自動電源オン機能があるので、電源を入れっぱなしにする必要もなくなる。
 EP-812Aの便利な機能が、フチなし吸収材エラー時の印刷継続機能だ。インクジェットプリンターのインクの吸収材は2種類あり、1つはクリーニングの際などに排出されるインクを貯める廃インクタンク(メンテナンスボックス)だが、こちらは上位機種と異なり、満タンになると印刷が完全に止まってしまい修理対応となる。この点はEP-812APIXUS TS7330も同じだ。もう一つは、フチなし吸収材だ。フチなし印刷は、用紙サイズピッタリに印刷すると用紙の微妙なズレによってフチができてしまう事から、少し大きめにプリントして、はみ出した部分はフチなし吸収材に吸収させる方法となっている。このフチなし吸収材が満タンになると、PIXUS TS7330はプリントが完全に止まってしまうが、EP-812Aはフチあり印刷に関しては継続ができるようになっている。急ぎのプリントを行っておいて、余裕のあるときに修理に出せるため便利な機能だ。

スキャン
型番
EP-812A
PIXUS TS7330
製品画像
読み取り解像度
1200dpi(1200×2400dpi)
1200dpi(1200×2400dpi)
センサータイプ
CIS
CIS
原稿取り忘れアラーム
スキャンデーターのメモリーカード保存
○(JPEG/PDF)

 続いて、スキャナー部を見てみよう。解像度は両機種とも1200dpiで同等だ。上位機種より解像度が下がっているが、反射原稿(紙などの原稿)にしか対応しないため、1200dpiでも十分すぎる解像度と言える。一般的に文書なら200〜300dpi、写真なら300〜600dpiで、よほど詳細にスキャンする場合でも1200dpiがせいぜいだ。実際写真サイズを1200dpiで取り込むと約4,200×6,000ドットとなり2500万画素相当となる点から見ても、十分だと言えるだろう。いずれもCIS方式で、厚い本の綴じ目近くなど、ガラス面から浮いてしまう原稿ではピントが合わなくなってしまう点は注意が必要だ。EP-812Aはスキャンした原稿をパソコンを使わずにメモリーカードに保存する機能を搭載しているためパソコン無しで簡単にスキャンができる。また両機種とも原稿を取り忘れた際の警告機能が付いているのは便利だ。

ダイレクト印刷
型番
EP-812A
PIXUS TS7330
製品画像
ダイレクトプリント
メモリーカード
SD
USBメモリー

(外付けHDD/外付けDVDドライブ対応)
赤外線通信
対応ファイル形式
JPEG
色補正機能
トリミング
フチあり/フチなし
赤目補正
明るさ調整(5段階)
コントラスト(5段階)
シャープネス(5段階)
鮮やかさ(5段階)
フィルター(モノクロ/セピア)
手書き合成
メモリーカードからUSBメモリー/外付けHDDへバックアップ
○/○
−/−
PictBridge対応
○(USB/Wi-Fi)
○(Wi-Fi)
各種デザイン用紙印刷
塗り絵印刷
フォーム印刷(罫線・マス目・便箋・スケジュール帳・五線譜・メッセージカード)
デザインペーパー
証明写真印刷
シール印刷
フォトブック印刷
写真コラージュ
ディスクレーベル印刷
CDジャケット印刷

 ダイレクト印刷を見てみよう。これはEP-812Aのみが対応している。対応メモリーカードはSDカードのみとシンプルだが、最近のデジタルカメラやスマートフォンは一部の一眼レフなどを除きSDカードかその小型版のmicroSDになっており、問題はないだろう。またメモリーカードに加えて、USBメモリーからの印刷にも対応している。また、各種メモリーカードからUSBメモリーへのバックアップが可能な他、USBメモリー以外も外付けハードディスクへのバックアップや印刷、さらに外付けDVDドライブからの印刷も行える。PictBridgeは両機種とも対応しているが、EP-812AはUSB接続とWi-Fi接続の両方式のPictBridgeに対応しているのに対して、USBポートがないPIXUS TS7330ではWi-Fi接続のPictBridgeにしか対応しない点は注意が必要だ。EP-812Aは、ただ写真のダイレクト印刷が可能なだけで無く、機能も豊富だ。一部を拡大して印刷するトリミング機能と、フチあり・フチなしの選択と赤目補正機能は当然として、明るさやコントラスト、シャープネス、鮮やかさも5段階から調整可能で、セピア調やモノクロに変換も出来る。写真の自動補正機能「オートフォトファイン!EX」を使えば、自動でも十分綺麗に補正されるが、好みの色合いで印刷したい場合に重宝するだろう。
 EP-812Aはダイレクト印刷時の機能として代表的な手書き合成シートにも対応している。その他、EP-882Aは塗り絵風の輪郭だけの「塗り絵印刷」機能や、罫線、マス目、便箋、スケジュール帳、五線譜、メッセージカードなどが印刷できる「フォーム印刷」機能、ラッピングやブックカバーなどに使える全面模様の用紙を印刷できる「デザインペーパー印刷」、3種類の証明写真サイズの写真印刷ができる「証明写真印刷」機能、ラベル用紙に印刷して複数面のシールにできる「シール印刷」、写真を1〜数枚並べたフォトブックを印刷する機能を搭載する。背景柄や複数の写真を組み合わせられる「写真コラージュ」も行えるほか、写真を1枚又は複数枚並べて、「ディスクのレーベル面」と「CDジャケット」を印刷する事も可能だ。PIXUS TS7330はメモリーカードからのダイレクト印刷だけでなく、こういったプリンター単体で印刷する機能も一切搭載していない。ダイレクト印刷機能はEP-812Aの圧勝と言えるだろう。

スマートフォン/クラウド対応
型番
EP-812A
PIXUS TS7330
製品画像
スマートフォン連携
アプリ
メーカー専用
EPSON iPrint
EPSON Smart Panel
Canon PRINT Inkjet/SELPHY
AirPrint
対応端末
iOS 10.0以降
Android 5.0以降
(EPSON Smart Panel使用時のiOSは11.0以降)
iOS 11.0以降
Android 4.4以降
スマートスピーカー対応
○(Alexa/Googleアシスタント)
○(Alexa/Googleアシスタント/LINE Clova)
Wi-Fiダイレクト接続支援機能
○(QRコード読み取り(iOS)/アプリ上で選択して本体で許可(Android))
○(Bluetooth)
写真プリント
ドキュメントプリント
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
スキャン
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
クラウド連携
プリント
アプリ経由/本体
○/−
○/−
オンラインストレージ
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive)
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom)
SNS
○(Instagram/Facebook・コメント付き可)
○(Instagram/Facebook・コメント付き可)
写真共有サイト
○(googleフォト/image.canon)
スキャン
アプリ経由/本体
○/○
○/−
スキャンしてオンラインストレージにアップロード
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive)
(OneDriveはアプリからのみ)
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive)
メールしてプリント
○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/PDF/Word/Excel/PowerPoint/メール本文)
LINEからプリント
○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint)
リモートプリント
スキャンしてリモートプリント

 スマートフォンとの連携機能は両機種とも搭載しており、iOSとAndroid端末に対応している。いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることでプリント又はスキャンが行える。メインで使用すると思われる写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。さらにドキュメント印刷にも対応している。PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もでき便利だ。また、両機種ともスマートフォン上からスキャンを実行し、データーをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。新聞や雑誌、手書きの情報などをスマートフォンに電子化するといった使い方ができるため便利だろう。なお、iPhoneやiPadの場合、AirPrintを利用したプリントも可能だ。
 スマートフォンとの接続は、無線LAN(Wi-Fi)で行うが、無線LANルーターを経由する方法と、ダイレクトに接続する「Wi-Fiダイレクト」(キヤノンはダイレクト接続)が選べる。無線LANルーターを経由する方が、機能面でも制限が無く、印刷する度にプリンターと接続と切断を繰り返すのWi-Fiダイレクトと比べると便利なので、こちらを利用するのがお勧めだが、無線LANルーターが無い環境で使用する場合や、一時的に同じネットワークに入っていない他人にプリンターを使わせる場合にWi-Fiダイレクトは便利だ。Wi-Fiダイレクトの接続設定は手動でもそれほど難しくは無いが、両機種とも手軽に接続出来る工夫がなされている。EP-812Aは、iOSの場合は本体の液晶に表示されるQRコードを読み込めば接続が完了し、Androidの場合は一覧から選んで、本体の液晶にメッセージが表示されるので接続の許可を選べば接続が完了する。セキュリティーキーの入力などが不要で、設定はより簡単になっている。一方のPIXUS TS7330はBluetoothを利用した接続支援機能が提供される。Bluetoothで直接印刷データーを送信するのではなく、接続自体はWi-Fiだが、あらかじめBluetoothでペアリングしておけば、Wi-Fiダイレクトの設定が簡単に行えるというものだ。こちらはAndroid限定だ。使う機会は限定されるとはいえ、少しでも簡単に接続できるよう工夫さえれている点は評価できる。
 また、両機種ともスマートスピーカーに対応している。AlexaとGoogleアシスタント対応端末に対応しており、声だけでテンプレートを印刷させることができる。PIXUS TS7330はLINE Clova対応端末にも対応している。2019年12月現在でEP-812Aは、デザインペーパー、フォトプロップス、カレンダー、ノート、方眼紙、五線譜などのエプソン独自のものと、Alexaに登録された買い物リスト、やることリストなどとの印刷に対応する。PIXUS TS7330はナンプレ、ぬりえ、レポート用紙、チェックリスト、五線譜などキャノン独自のものの印刷と、プリンターの状態の確認が行える。今後増えていくことが予想される。
 クラウドとの連携機能も両機種とも搭載されている。プリントの場合、オンラインストレージのファイルを印刷したり、SNSの写真を印刷する事ができる。SNSの写真はコメント付きでも印刷が可能だ。またPIXUS TS7330は写真共有サイトからの印刷も可能だ。スキャンの場合、スキャンしてオンラインストレージへアップロードできる。ここで大きな違いは、PIXUS TS7330はプリントと同じくスマートフォン上でスキャンしてアップロードするのに対して、EP-812Aはスマートフォン上だけでなくEP-812A本体の操作でもスキャンからアップロードまで完了する事ができる(OneDriveはスマートフォン用アプリ経由のみ)。アプリをわざわざ立ち上げなくても、サッとスキャンしてアップロードできるEP-812Aの方が便利だ。
 さらにネットワークを利用したプリント機能として、EP-812Aは、印刷したい写真や文書を本機にメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、LINE上でプリンターを友達登録し、トーク画面から写真を送信すると印刷される「LINEからプリント」、スキャンした画像を離れた場所の対応複合機で印刷できる「メールdeリモート印刷」、パソコンやスマートフォンから通常のプリントと同じ操作で、外出先など離れた場所から自宅のEP-812Aで印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。一方のPIXUS TS7330はLINEのトーク画面から印刷する「PIXUSトークプリント」のみ対応している。リモートプリント機能はEP-812Aの方が豊富だ。

コピー機能
型番
EP-812A
PIXUS TS7330
製品画像
等倍コピー
拡大縮小
倍率指定
○(25〜400%)
○(25〜400%)
オートフィット
定型変倍
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー
○(退色復元対応)
割り付け(2面/4面)
○/−
○/−
その他のコピー機能
プレビュー
濃度調整
背景除去機能
濃度調整
バラエティコピー
見開きコピー
IDコピー
ミラーコピー
塗り絵コピー
リピートコピー

 コピー機能を見てみよう。単純なコピー機能としては、両機種とも単純な等倍コピーだけでなく、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「オートフィット」機能、さらに25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える機能を搭載した高性能な物だ。EP-812Aは原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行う「定型変倍」機能も搭載している。またCD/DVD/Blu-rayレーベル印刷に対応したEP-812Aは、レーベルコピーにも対応する。さらに、ともEP-812Aは原稿面に写真を複数枚置き、焼き増し風のコピーを行うことも出来、昔の色あせした写真も自動で補正してくれる「退色復元」機能も備えている。両機種とも2枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2面割り付けにも対応する。その他、EP-812AはA4やB5の本や冊子を1枚の用紙に印刷できる「見開きコピー」、免許証などの裏表をそれぞれスキャンして1枚の用紙に並べて印刷する「IDコピー」、アイロンプリント紙への印刷時に使える「ミラーコピー」、メモリーカードからのダイレクト印刷時と同じく輪郭だけの塗り絵風に変換してコピーする「塗り絵印刷」が行える他、同じ内容を2面、4面、または用紙サイズに合わせて自動的に割り付ける「リピートコピー」機能を搭載する。手書きメモやネームシールなどをコピーするのに便利だ。また、背景の色を白にして見やすくする「背景除去機能」も備えている。PIXUS TS7330はこういった機能は搭載しておらず、基本的な拡大縮小と2面割り付けだけだ。コピー機能もEP-812Aの方が圧倒的に機能が豊富だ。

操作パネル/インターフェース/本体サイズ
型番
EP-812A
PIXUS TS7330
製品画像
液晶ディスプレイ
2.7型
(90度角度調整可)
1.44型
モノクロ有機EL
操作パネル
静電式ボタン式
(90度角度調整可)
物理ボタン
インターフェイス
USB他
USB2.0×1
USB2.0×1
無線LAN
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(ダイレクト接続対応)
有線LAN
対応OS
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.11.6〜(AirPrint利用)
外形寸法(横×奥×高)
390×339×141mm
376×359×141mm
重量
6.9kg
6.3kg
本体カラー
ホワイト
ブラック/ホワイト/ネイビー

 操作パネルと液晶ディスプレイは本体前面に取り付けられているているが、両社で大きく異なる。EP-812Aは液晶が中央に配置され、その右にタッチセンサー式のボタンが並ぶ。液晶ディスプレイだけでなく操作パネル全体を持ち上げて角度調整が可能となっており、最大90度まで起こすことができるので、垂直から水平まで見やすい角度で操作ができるよう工夫されている。液晶は2.7型と比較的大きめのカラー液晶で、ボタンも4方向カーソルや「+」「−」、「OK」、「戻る」と言った主要なキーを一通り備えており、操作性は悪くない。一方PIXUS TS7330は本体右に寄せて液晶が配置され、その左と下に物理ボタンが並ぶ縦長の配置だ。液晶や操作パネルは固定式で角度調整はできない。本体前面が軽く斜めになっており、前方だけで無く上の方からでも操作は可能だが、やはり真正面に角度調整できるEP-812Aと比べると見にくいと言える。また、液晶は、1.44型のモノクロ液晶である。有機ELとなっているため黒地にクッキリとした白字でコントラストは高いが、液晶が小さいことに加えてモノクロでは視認性は悪い。また、ボタンも、4方向カーソルではなく上下カーソルのみで、「+」「−」ボタンも無いなど、ボタン数が非常に少なくなっている。液晶が小さいこともあって、各種メニューの階層が深くなっており、この点でも操作性は悪くなっている。PIXUS TS7330はスマートフォンからの操作を基本としているという事で、本体から離れた場所で操作しても状態が分かるように、前面パネルの下の角、排紙トレイ部分のへこみの角の部分にライン状の「LEDのステータスバー」を搭載し、給紙中やエラー、プリント完了などが分かるようになっているが、やはり本体の操作性はEP-812Aが圧倒的に良い。
 インターフェースは両機種ともUSB2.0に加えて、無線LAN(Wi-Fi)接続にも対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、無線LAN(Wi-Fi)ルーターで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。その場合、EP-812A/PIXUS TS7330を無線LANルーターに接続しておけば、家庭内のどのパソコンでもプリント可能となり非常に便利だろう。またスマートフォンやタブレットからの印刷も可能となる。またWi-Fiダイレクト(キヤノンはダイレクト接続という名称)に対応しているため、無線LANルーターの無い環境でも、スマートフォンやタブレットと直接Wi-Fi接続が可能となっている点も共通の便利な点だ。
 対応OSはメーカーによる差が大きい。EP-812AはWindows XP SP3以降は全て対応する。MacOSもダウンロード対応とはなるが10.6.8以降に対応する。マイクロソフトのサポートの終了したWindows XPやVistaにも対応するのは安心だ。一方、PIXUS TS7330はWindows 7 SP1/8.1/10のみの対応だ。Windows XPやVistaだけでなく、Windows 8も非対応である点は注意が必要だ。MacOSも10.11.6以降となっただけでなく、ドライバーはキヤノンからは提供されず、AirPrintを使用する方法となっているため、インク残量確認や一部の印刷設定、本体の動作設定ができない点でWindowsで利用する場合に比べて不便になっている。
 本体サイズを見てみよう。EP-812Aが390×339×141mm、PIXUS TS7330が376×359×141mmとなる。EP-812Aの方が奥行きがやや小さく、PIXUS TS7330の方が横幅がやや小さい。PIXUS TS7330は下部の方が前面給紙カセットに合わせて奥行きが大きくなっているだめ、上部の奥行きは359mmより小さくなってる。多少の差はあるが、両機種とも非常にコンパクトになっている。ただし、背面給紙を使用する場合、EP-812Aでは手差しであるため給紙するまで手支えてやれば、壁ギリギリでも使えるが、PIXUS TS7330は背面給紙が斜めに開く分、後方にスペースが必要だ。その点で見ればEP-812Aの方が実際の設置スペースは小さくて済むだろう。ちなみに本体のカラーバリエーションはEP-812Aはホワイトのみだが、PIXUS TS7330はホワイトとブラック、ネイビーの3色を用意している。



 上位機種から省かれた機能が両機種で異なるため、結果的に方向性の違いが出ている。上位機種EP-882Aのように、様々な用途で使いたいが、少し安く購入したいという人にはEP-812Aがおすすめだ。画質や速度面ではEP-882Aと同等で、自動両面印刷やレーベル印刷、メモリーカードからのダイレクトプリントにも対応する点でも同等だ。自動電源オンやタッチパネル液晶がないなど、多少使い勝手は劣るが、PIXUS TS7330と比べれば十分に使いやすいレベルになっており、オールマイティーに使える性能を備えていると言える。EP-812Aの問題は印刷コストだろう。EP-882Aより写真印刷で約9円、A4カラー文書で約5円高い。印刷枚数が多い場合は、この印刷コストの高さは気になるだろう。その点ではPIXUS TS7330は上位機種より安く、EP-812Aとの比較では写真が12.2円、A4カラー文書が7.5円も安い。ただし、それ以外の点では劣る部分も多い。画質面では写真印刷では劣る上、両面印刷が普通紙のみでレーベル印刷やメモリーカードからのダイレクト印刷にも非対応、さらにコピー機能も基本的な機能のみだ。また、本体の操作性がEP-812Aと比べると大きく劣るのも気になる点だ。その点では、文書印刷がメインで、コピーなど本体での操作をあまり行わない人向けと言える。印刷コストを抑えたい場合はPIXUS TS7330だが、他の劣る部分に納得できるならという条件付きだ。写真印刷もするという場合や、コピーやメモリーカードからのダイレクト印刷を利用する場合、使い方が定まっていない場合も、機能が豊富なEP-812Aがオススメだ。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/


EP-812A
PIXUS TS7330BK
(ブラック)
PIXUS TS7330WH
(ホワイト)
PIXUS TS7330NV
(ネイビー)