プリンター徹底比較
2019年末時点のプリンター
~エプソンとキャノンのプリンターを比較~
(2020年4月20日公開・8月1日更新)

プリンター比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンター比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。


ファクス付きA4複合機(タンク方式)
 
 ファクス機能付きA4複合機の中で、インクカートリッジ方式では無く、大容量タンクを搭載した複合機である。今のところエプソン(エコタンク)、キャノン(ギガタンク)それぞれ1機種しかないが、エプソンはEW-M670FT(49,980円)、キャノンはG7030(44,980円)と価格的にも近く、比較しやすい。徹底的に比較し、どちらがオススメなのか見ていこう。

プリント(画質・速度・コスト)
型番
エプソン
キャノン
型番
EW-M670FT
G7030
製品画像

実売価格(メーカーWeb/税抜き)
49,980円
44,980円
インク
色数
4色
4色
インク構成
ブラック(顔料)
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック(顔料)
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成
エコタンク方式
(挿すだけ満タンインク方式・オフキャリッジ式)
ギガタンク方式
(挿して注入・満タン自動ストップ・オフキャリッジ式)
顔料/染料系
染料(カラー)/顔料(黒)
(アルバム保存300年/耐光性7年/耐オゾン性2年)
染料(カラー)/顔料(黒)
新顔料ブラック
インク型番
ヤドカリ(顔料)
ハリネズミ(染料)
30番
付属インクボトル
インクボトル各色1本
インクボトル(カラー)各色1本
インクボトル(ブラック)2本
ノズル数
784ノズル
1792ノズル
カラー:各128ノズル
黒:400ノズル
カラー:各384ノズル
黒:640ノズル
最小インクドロップサイズ
3.3pl
(MSDT)
N/A(2pl?)
最大解像度
4800×1200dpi
4800×1200dpi
PrecisionCoreプリントヘッド
印刷速度
L判縁なし写真(メーカー公称)
75秒
37秒
A4普通紙カラー(ISO基準)
8.0ipm
6.8ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準)
15.0ipm
13.0ipm
印刷コスト
L判縁なし写真
5.9円
N/A
A4カラー文書
0.9円
0.9円
A4モノクロ文書
0.4円
0.4円

 まずはプリントの基本となる画質と速度、印刷コストから見ていこう。両機種は基本が似ており、4色構成で顔料ブラックと染料のカラー3色(シアン、マゼンダ、イエロー)を採用しているのは共通だ。染料インクは様々な用紙に対応でき、写真用紙等に印刷した際に発色が良く、用紙本来の光沢感が出るため、写真印刷に向いている。一方で普通紙に印刷すると紙にしみこんで広がってしまうため、メリハリが弱くなる。その点で顔料インクならメリハリのある印刷が行え、小さな文字や中抜き文字も潰れずに印刷が可能なほか、耐水性も高いため濡れた手で触ったりマーカーを引いても滲まない。とは言え、全色を顔料インクとすると写真用紙などに印刷した際に発色が悪いほか、用紙の光沢感が薄れポストカードのようになってしまったり、一部使用できない用紙もある。つまりは染料インクと顔料インクは、用紙によって向き不向きがあるわけである。両機種とも顔料ブラックを搭載してるため普通紙への黒の印刷はメリハリがある印刷が行える。ただ顔料インクはブラックだけなので、黒色部分しかこの恩恵は得られない。また、黒と言っても、完全な黒ではないグレーの部分には染料のカラーインクを重ねて作り出す場合があり、背景色があるなどカラーの中に黒が混ざっている場合も染料インクを使う場合があり、必ずしも全ての黒色部分で顔料インクの恩恵を受けられるわけではないが、コピーや文書印刷でそういった部分は結構多く、一部だけでも全体的に引き締まった印象となるのは確かだ。さらにEW-M670FTはPrecisionCoreプリントヘッドを採用しており、普通紙への印刷解像度を従来の360dpiから600dpiに向上させており、より鮮明な印刷が可能となっている。
 一方、写真印刷や年賀状の通信面印刷時には、染料インクが力を発揮する。ただし、両機種とも染料ブラックを搭載していないため、カラー3色での印刷となる。黒色はカラーを重ねて表現するが、どうしても非常に濃い茶色やグレーにしかならず、全体にコントラストが弱くなってしまう。これは黒髪や影、夜景などの色を見れば一目瞭然な他、影や夜景などの黒の中の微妙な表現力が劣ってしまう。ただし、これは両機種とも同等なので、選ぶ上での材料にはならない。
 写真の画質を左右する要因の一つとして、最小インクドロップサイズがある。これはドットの大きさで、大きいと全体にザラザラした感じの粒状感が出てしまう。EW-M670FTは3.3pl、G7030は非公表ながら海外の同機能のモデルでは2plなので、おそらく2plと思われる。これを見るとG7030の方が粒状感が少ないといえる。とはいえ、ファクス機能を搭載しないインクカートリッジ方式の機種では6色染料インクで、最小インクドロップサイズは1.5plという機種があり、エコタンク搭載のファクス機能を搭載しない上位機種では染料ブラックを含む5色インクで、最小インクドロップサイズは同じく1.5plという機種がある。これと比べると、最小インクドロップサイズは大きめで、しかも染料ブラックが無いので、そこまで高画質とは言えない。あくまでマシなのはG7030という程度だ。
 もう一つ、インクの種類にも違いがある。もちろん発色などの面でも違いがある可能性はあるが、この点ははっきりと示されているわけではない。ただ、インクの耐保存性に違いがある。家庭用の6色プリンターの場合、エプソンは「つよインク200」という名称で、アルバム保存300年、耐光性50年、耐オゾン性10年をうたっており、キャノンも「ChromaLife 100」という名称で、アルバム保存100年をうたっている。しかしEW-M670FTはアルバム保存こそ300年で同等だが、耐光性7年、耐オゾン性2年となっており「つよインク200」よりは大きく劣る。特に飾っておいた場合などに色あせが早いと言える。G7030に関しては耐保存性は非公開だが、ChromaLife 100には準拠しないという事なので、100年より短い可能性が高い。
 ちなみに、印刷速度にも特色がある。まず写真印刷速度を見てみると、EW-M670FTが75秒、G7030が37秒と倍の違いがある。とはいえ、インクカートリッジ方式の6色プリンターは最速で13秒なので、G7030で3倍近く、EW-M670FTでは6倍近く時間がかかることになる。G7030はかろうじて使えるレベルではあるが、EW-M670FTでは枚数がある程度多いと相当根気強く待つ必要がある。エプソンのインクカートリッジ方式の機種では各色180ノズルで、Advanced-MSDTという5つのインクサイズのインクを打ち分ける機能を搭載しており、必要に応じて大きなインクサイズを打ち分ける事で高速化と高画質化を両立している。EW-M670Fはカラーが各128ノズル、ブラックが400ノズルで、カラーはやや少ないものの、6分の1の速度になるほどでは無いように思える。Advanced-MSDTではなく3つのインクサイズを打ち分けるMSDT対応という点もやや速度に影響しそうだが、そこまでではない。EW-M670FTは文書印刷向けにチューニングされている可能性が高い。一方キャノンのカートリッジ方式の機種は、シアンとマゼンダが各1536ノズル、イエローが512ノズル、グレーとブラックが各1024ノズルである一方、G7030はカラーが各384ノズル、ブラックが640ノズルなので、カラーは約24~75%、ブラック約63%のノズル数しか無く、特にシアンとマゼンダのノズル数は大きく減っており、この点が純粋に影響したと思われる。
 一方、文書の印刷速度は傾向が異なる。EW-M670FTは、A4カラーが8.0ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、モノクロが15.0ipmであり、かなり高速だ。特に顔料ブラックのノズル数が多いため、モノクロ印刷が特に高速だ。一方、写真印刷が最も速かったG7030は、カラーが6.8ipm、モノクロは13.0ipmとやや遅くなる。やはり文書印刷に特化したEW-M670FTに対して、写真も文書も両立させているG7030という構図だろう。とはいえ、G7030でも大きな差では無いため、実用上は違いは無いと言っても良いだろう。
 エコタンク・ギガタンクだが、いずれも2世代目のインク補充方式となっており従来より便利になっている。1世代目の製品は、ボトル先端に対して大きな注入口が開けられており、ここに先端を挿し込み、ボトルを握るなどして目視で満タンまで注入する形であった。それに対して2世代目では、ボトルの先端を注入口に挿し込むと、注入が始まり、満タンになると自動ストップするようになっている。ボトルの先端からインクをこぼす心配や、インクをあふれさせる心配が無く、非常に手軽になった。さらにEW-M670FTは「挿すだけ満タンインク方式」という名称になっており、先端の形状を色ごとに変えてあるため、間違えた色のタンクに注入してしまう危険性が無く、より安心感が増している。G7030はその点では一歩劣ることになる。
 ちなみに印刷コストだが、両機種ともエコタンク・ギガタンク方式と言うこともあって、A4カラー文書0.9円、A4モノクロ文書0.4円で全く同じだ。写真の印刷コストはEW-M670FTしか公表しておらず5.9円だが、これには写真用紙代(約4.3円)が含まれているので、これを除くと、1.6円となる。カートリッジ方式ではエプソンの家庭向け6色機であるEP-882Aはカラー文書が12.0円、L判写真は20.6円(用紙代を除くと16.3円)、キャノンではそれぞれ9.9円と19.4円(用紙代を除くと15.1円)なので圧倒的だ。また印刷コストが安いと言われているビジネス向けの機種で、同じくファクス付き複合機の場合、エプソンの上位モデルPX-M885F、キャノンの上位モデルMAXIFY MB5430で共にカラー文書6.1円、モノクロ文書1.8円なので、カラーは約7分の1、モノクロは4分の1以下の印刷コストになる。これはレーザープリンターなどと比べても圧倒的に安い。印刷コストを考えれば両機種は非常にお得だが、両機種の間に差があるわけでは無く、決め手にはならない。ちなみにインクボトル1本でインクタンクが満タンになる。満タン状態からカラー文書を印刷した場合、EW-M670FTはカラーインクが6,000ページ、ブラックインクが7,500ページ、G7030はカラーインクが7,700ページ、ブラックインクが6,000ページ印刷できる。1回の補充でかなりの枚数が印刷できるため、印刷枚数が多くても予備を置いておく数を減らせるし、インク切れで印刷が止まっていたというトラブルも起きにくい。また、これだけ大容量ながら、インクボトルの価格は、EW-M670FTはブラックが2,150円、カラーが1,150円、G7030はブラックが2,100円、カラーが各1,400円と非常に低価格だ。印刷枚数が多くでも、1回購入すると2万円というのではその際の負担が大きいが、そういった心配も無い(その結果が低印刷コストに現れているとも言えるが)。
 ちなみに、同梱のインクボトルは、両機種とも別売りのインクボトルと同じものが付属するため、一度インクタンクを満タンにできる事になる。そこから初期充填を行うと大量のインクを消費するが、それでもEW-M670FTは3,600枚以上の印刷が可能となっているため、購入後しばらくはインクを購入する必要が無い。カートリッジ方式の機種ではセットアップ用のインクカートリッジしか付属しておらず、初期充填で大半を使用してしまうため、本体と同時にインクカートリッジも購入する事になる。さらに、EW-M670FTが同梱インクで印刷できる3,600枚を印刷しようとすると、その間に何パックもインクカートリッジを購入する事になる。そのため、本体価格が高くても、付属のインクを使い切った頃には逆転する計算だ。G7030は初期充填後の印刷可能枚数を公表していないが、EW-M670FTとタンク容量は似ているため、ある程度は印刷できるだろう。特にブラックインクボトルはもう1本付属するので、残った分+6,000枚は必ず印刷できる事になる。

プリント(給紙・排紙関連)
型番
EW-M670FT
G7030
製品画像
対応用紙サイズ
L判~A4
名刺~A4
給紙方向
(セット可能枚数(普通紙/ハガキ/写真用紙))
背面

(100枚/40枚/20枚)
前面
【カセット】
(250枚/30枚/20枚)
【カセット】
普通紙のみ
(250枚/-/-)
その他
排紙トレイ自動開閉
用紙種類・サイズ登録
○(カセット収納連動)
○(カセット収納(前面)・カバー(背面)連動)
用紙幅チェック機能
○(印刷時)

 続いて、給紙・排紙関連の機能を見てみよう。使用できる用紙は、最大サイズはA4までで共通だが、最小サイズはEW-M670FTがL判、G7030が名刺サイズに対応している。G7030は名刺サイズの用紙に直接印刷できるため、少量の印刷にも便利な他、フチなしデザインも作りやすい。
 給紙に関しても違いがある。EW-M670FTは前面給紙カセットのみとなる。カセット式であるため、用紙をセットしたままでもホコリが積もらず、また背面給紙と違って本体に用紙を完全収納できるので余分なスペースは必要ない。ただし1段なので、ビジネス向けの機種にあるような2種類の用紙を同時にはセットできず、その都度入れ替えが必要となる。A4普通紙のみというような使い方なら問題ないだろう。その一方で、セットできる枚数は250枚と、家庭向けの機種が100枚程度であるのと比べると多くなっている。印刷枚数が多かったり、ファクス受信頻度が多くでも安心だ。G7030は前面給紙カセット+背面給紙となっている。前面給紙カセットはEW-M670FTと同じく1段だが、背面給紙を利用する事で2種類の用紙を同時にセットできる。例えば前面給紙カセットにA4普通紙、背面給紙に写真用紙やハガキ、B5用紙といった別の用紙をセットする事も可能だ。ただし、前面給紙カセットは普通紙のみセットが可能だ。そのため、ハガキや写真用紙、ファイン紙などは全て背面給紙を利用することとなる。背面給紙は用紙のセット時に左右のガイドを合わせるだけで良く、セットしやすい一方で、デメリットもあり、用紙をセットしたままだとホコリをかぶってしまい、その用紙が給紙されると故障の原因になる場合があるため、使わないときは取り除くのが理想だ。また用紙をセットするために上方に空間が必要なほか、トレイが後方に傾くため、本体の後方にある程度のスペースが必要になってしまう。この事から、普段から2種類の用紙をセットしておくと言うよりは、よく使うA4普通紙を前面給紙カセットに常時セットしておき、背面給紙はその都度使う用紙をセットするために空けておくことで、入れ替えの手間を省けるというイメージだ。前面給紙カセットは250枚までセット可能なのはEW-M670FTと同等なので、背面給紙の分だけ便利と考えれば良いだろう。ただし、ハガキやファイン紙など、普通紙以外を常時セットしておきたい場合に限って、EW-M670FTは前面給紙カセットにセットしておけるが、G7030は背面給紙となるため注意が必要だ。
 両機種とも用紙の種類とサイズを登録しておく機能が搭載されている。液晶ディスプレイでメニューから登録も可能だが、前面給紙カセットを挿し込む、またはG7030の背面給紙は給紙口カバーを閉じた際に、自動的に登録画面が表示されるため便利だ(されないようにもできる)。この登録内容と、印刷時の用紙設定が異なっている場合、メッセージが表示される仕組みだ。できる限り印刷ミスによる用紙とインクの無駄遣いをなくす工夫がなされている。これに加えて、EW-M670FTは印刷時に実際の用紙幅をセンサーでチェックする機能もあり、設定よりも用紙幅が小さかった場合に用紙外にインクを打ってしまいプリンター内部を汚さないようになっている。

プリント(付加機能)
型番
EW-M670FT
G7030
製品画像
自動両面印刷
○(普通紙のみ)
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
○(オートフォトファイン!EX)
○(自動写真補正)
特定インク切れ時印刷
自動電源オン/オフ
-/○
○/○
廃インクタンク交換/フチなし吸収材エラー時の印刷継続
○/-
-/-

 その他、プリントの付加機能を見てみよう。自動両面印刷機能は両機種とも搭載している。ただし、G7030は普通紙のみ対応だが、EW-M670FTは普通紙だけでなくハガキにも対応するため、年賀状で通信面と宛名面を用紙の差し替え無しで印刷できるなど、便利である。一方、BD/DVD/Blu-rayレーベル印刷機能などは両機種とも搭載しない。写真の自動補正機能としては、EW-M670FTは「オートフォトファイン!EX」、G7030は「自動写真補正」と名称は違うものの、逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われる高性能なものを搭載している。
 自動電源オン機能はG7030のみ搭載している。印刷が実行されると自動的に電源がオンになる機能だ。無線LANや有線LANでのネットワーク接続ができるようになり、プリンターから離れた場所のパソコンやスマートフォンから印刷を実行することが増えたが、そういった際にわざわざプリンターの電源を入れに行く手間が省ける。ただし、操作パネルを閉じた状態だと印刷は実行されないため、操作パネルは持ち上げて少し開いておく必要がある。一方、指定した時間が経つと自動的に電源がオフになる機能は両機種とも搭載している。
 EW-M670FTが持つ便利な機能が、廃インクタンク(メンテナンスボックス)をユーザーが交換できる機能だ。廃インクタンクはクリーニングの際に排出されるインクを貯めておくタンクで、G7030を含む多くの機種は満タンになるとメッセージが表示され修理に出して交換するまで一切のプリントが止まってしまう。一方、EW-M670FTはインクカートリッジなどと一緒に交換用メンテナンスボックスが売られており(1,800円)、交換すれば印刷が再開できる。安くすむだけでなく、プリンターが手元に無い期間が無くなるため便利だ。ただし、フチなし吸収材(フチなし印刷時は用紙サイズより少し大きめにプリントする事で実現しており、そのはみ出したインクを吸収させるもの)が満タンになった場合は修理対応となる。

スキャン
型番
EW-M670FT
G7030
製品画像
読み取り解像度
1200dpi(1200×2400dpi)
1200dpi(1200×2400dpi)
センサータイプ
CIS
CIS
原稿取り忘れアラーム
ADF
原稿セット可能枚数
35枚
30枚
原稿サイズ
A4/レター/リーガル
A4/レター/リーガル
両面読み取り
読み取り速度
カラー
5.0ipm
N/A
モノクロ
5.0ipm
N/A
スキャンデーターのメモリーカード保存

 続いて、スキャナー部を見てみよう。解像度は両機種とも1200dpiとなっており差は無い。インクカートリッジ方式の上位機種にはもっと高解像度の機種があるが、実際には紙などの反射原稿しかスキャンできないことを考えると1200dpiでも十分だ。というのも、一般的には文書なら200~300dpi、写真なら300~600dpi程度で、よほど綺麗に保存したい場合や拡大して印刷する場合に1200dpiでスキャンすると言った程度だ。実際、L判写真を1200dpiで取り込むと約4,200×6,000ドットとなり2500万画素相当なので十分で、600dpiでも2,100×3,000ドットなので、L判サイズに印刷したり、スマートフォンの画面で見る分には十分きれいだといえる。逆にスキャナー解像度が高いセンサーでは1ドットあたりの光の取り込み量が減り、スキャン速度が低下したりノイズが発生したりするため、バランスを取って1200dpiとしていると思われる(もちろんコストの関係もあると考えられるが)。なお、CISセンサーであるため、分厚い本など浮いてしまう原稿は苦手で、ピントが合わずぼけたような画像となってしまう点も共通だ。
 両機種ともファクス機能を搭載してる事もあって、ADFを搭載している。ADFは原稿を複数枚セットすると、順番にスキャンしてくれる機能で、複数原稿のコピーやファクス時に重宝する。スキャンは片面のみで、ビジネス向けの上位モデルにあるような両面スキャンではないが、非常に便利だ。EW-M670FTは35枚、G7030は30枚までの原稿をセットできる。ただし、対応用紙はA4/レター/リーガルサイズで、B5などのサイズには非対応となっている。スキャン速度はEW-M670FTのみ公表しており、カラー・モノクロ共に5.0ipm(ipm=image per minute:1分間に何面をスキャンできるか)となっている。ビジネス向けの機種では速いものでは23.0ipm、遅いものでは2.0ipmと差が大きい。コピーの場合、印刷速度は5.0ipmより速いため、スキャン速度の方がボトルネックになる事を考えると、速いに越したことは無い。その点では、5.0ipmならばそれなりに使える速度だと言えるだろう。

ダイレクト印刷
型番
EW-M670FT
G7030
製品画像
ダイレクトプリント
メモリーカード
USBメモリー
赤外線通信
対応ファイル形式
色補正機能
手書き合成
メモリーカードからUSBメモリー/外付けHDDへバックアップ
-/-
-/-
PictBridge対応
各種デザイン用紙印刷

 ダイレクト印刷は両機種とも対応していない。G7030はPictBridgeに対応しているが、Wi-Fi方式にしか対応しておらず、対応機種が非常に限られるため、大きな差ではないと言える。

スマートフォン/クラウド対応
型番
EW-M670FT
G7030
製品画像
スマートフォン連携
アプリ
メーカー専用
EPSON iPrint
Canon PRINT Inkjet/SELPHY
AirPrint
対応端末
iOS 10.0以降
Android 5.0以降
iOS 11.0以降
Android 4.4以降
スマートスピーカー対応
○(Alexa/Googleアシスタント)
○(Alexa/Googleアシスタント)
Wi-Fiダイレクト接続支援機能
○(Bluetooth)
写真プリント
ドキュメントプリント
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
スキャン
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
クラウド連携
プリント
アプリ経由/本体
○/-
○/-
オンラインストレージ
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive)
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom)
SNS
○(Instagram/Facebook・コメント付き可)
○(Instagram/Facebook・コメント付き可)
写真共有サイト
○(googleフォト/image.canon)
スキャン
アプリ経由/本体
○/○
-/-
スキャンしてオンラインストレージにアップロード
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive)
(OneDriveはアプリからのみ)
メールしてプリント
○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/PDF/Word/Excel/PowerPoint/メール本文)
LINEからプリント
○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint)
リモートプリント
スキャンしてリモートプリント

 スマートフォンとの連携機能も両機種とも搭載しており、iOSとAndroid端末に対応している。いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることでプリント又はスキャンが行える。写真とドキュメント印刷、スキャンに対応しており、様々な内容をプリント可能だ。写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。ドキュメント印刷は、PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もでき便利だ。また、両機種ともスマートフォン上からスキャンを実行し、データーをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。新聞や雑誌、手書きの情報などをスマートフォンに電子化するといった使い方ができるため便利だろう。なお、iPhoneやiPadの場合、AirPrintを利用したプリントも可能だ。
 スマートフォンとの接続は、無線LAN(Wi-Fi)で行うが、無線LANルーターを経由する方法と、ダイレクトに接続する「Wi-Fiダイレクト」(キヤノンはダイレクト接続)が選べる。無線LANルーターを経由する方が、機能面でも制限が無く、印刷する度にプリンターと接続と切断を繰り返すのWi-Fiダイレクトと比べると便利なので、こちらを利用するのがお勧めだが、無線LANルーターが無い環境で使用する場合や、一時的に同じネットワークに入っていない他人にプリンターを使わせる場合にWi-Fiダイレクトは便利だ。Wi-Fiダイレクトの接続設定は手動でもそれほど難しくは無いが、G7030はBluetoothを利用した接続支援機能が提供される。とは言ってもBluetoothで直接印刷データーを送信するのではなく、接続自体はWi-Fiだが、あらかじめBluetoothでペアリングしておけば、Wi-Fiダイレクトの設定が簡単に行えるというものだ。Android限定となる。使う機会は限定されるとはいえ、少しでも簡単に接続できるよう工夫さえれている点は評価できる。
 また、両機種ともスマートスピーカーに対応している。AlexaとGoogleアシスタント対応端末に対応しており、声だけでテンプレートを印刷させることができる。2019年12月現在でEW-M670FTは、デザインペーパー、フォトプロップス、カレンダー、ノート、方眼紙、五線譜などのエプソン独自のものと、Alexaに登録された買い物リスト、やることリストなどの印刷に対応する。G7030はナンプレ、ぬりえ、レポート用紙、チェックリスト、五線譜などキャノン独自のもの印刷と、プリンターの状態の確認が行える。
 クラウドとの連携機能も両機種とも搭載している。クラウドからのプリントは両機種とも対応だ。オンラインストレージのファイルを印刷したり、SNSの写真を印刷する事ができる。SNSの写真はコメント付きでも印刷が可能だ。またG7030は写真共有サイトからの印刷も可能だ。両機種ともスマートフォン上のアプリからアクセスする形となり、プリンター本体にはアクセス機能は無い。一方、スキャンしてオンラインストレージへアップロードする機能はEW-M670FTのみ対応している。こちらは、スマートフォン上だけでなくプリンター本体の操作でもスキャンからアップロードまで完了する事ができる(OneDriveはスマートフォン用アプリ経由のみ)。アプリをわざわざ立ち上げなくても、サッとスキャンしてアップロードできるのは便利だ。
 さらにネットワークを利用したプリント機能として、EW-M670FTは、印刷したい写真や文書を本機にメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、LINE上でプリンターを友達登録し、トーク画面から写真を送信すると印刷される「LINEからプリント」、スキャンした画像を離れた場所の対応複合機で印刷できる「メールdeリモート印刷」、パソコンやスマートフォンから通常のプリントと同じ操作で、外出先など離れた場所から自宅のこれら機種で印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。一方のG7030はこういった機能は一体搭載していない。リモートプリント機能はEW-M670FTが圧倒的だ。

コピー機能
型番
EW-M670FT
G7030
製品画像
等倍コピー
拡大縮小
倍率指定
○(25~400%)
○(25~400%)
オートフィット
定型変倍
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー
割り付け(2面/4面)
○/-
○/○
その他のコピー機能
濃度調整
濃度調整
バラエティコピー
IDコピー
影消しコピー
パンチ穴消しコピー
ページ順コピー
枠消しコピー
IDコピー
コピー予約

 コピー機能を見てみよう。両機種とも単純な等倍コピーだけでなく、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「オートフィット」機能や、原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行う「定型変倍」機能、さらに25~400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える機能を搭載した高性能な物だ。さらに、2枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2面割り付けにも対応する。G7030は4枚の原稿を1枚に縮小する4面割り付けにも対応している。その他、濃度調整機能は両機種とも搭載する。
 バラエティコピー機能を見てみよう。EW-M670FTは、免許証などのコピー時に、裏と表を2回スキャンすると、1枚の用紙に上下に並べてコピーできる「IDコピー」、本などをコピーした際の中央部の浮いてしまう部分や、分厚い原稿の周囲に出来る影を消してくれる「影消しコピー」と、パンチ穴を消してコピーする「パンチ穴消しコピー」など文書コピーに便利な機能を備える。一方、G7030はも、ADF利用時に複数ページの原稿を1部ずつコピーする「ページ順コピー」、厚手の原稿など原稿台のカバーが浮いてしまう場合に黒くなる部分を消去する「枠消しコピー」機能、「IDコピー」機能の他、コピー実行中でも次の原稿の読み取り操作ができる「コピー予約」も可能だ。それぞれ機能は異なるが、複合機単独で様々なコピーが行えるよう工夫されている。

ファクス機能
型番
EW-M670FT
G7030
製品画像
通信速度
33.6kbps
33.6kbps
画質設定
モノクロ
8dot/mm×3.85line/mm(標準)
8dot/mm×7.7line/mm(精細)
8dot/mm×7.7line/mm(写真)
8dot/mm×3.85本/mm(標準)
8dot/mm×7.7本/mm(ファイン)
8dot/mm×7.7本/mm(写真)
300×300dpi(ファインEX)
カラー
200×200dpi
200×200dpi
送信原稿サイズ
A4
N/A
記録紙サイズ
A4/リーガル/レター
A4/リーガル/レター
受信ファクス最大保存ページ数
100枚/100件
50枚/20件
データー保持(電源オフ/停電)
○/○
○/-
ワンタッチ
アドレス帳
100件
20件
グループダイヤル
99宛先
19宛先
順次同報送信
100宛先
21宛先
自動リダイヤル
発信元記録
ポーリング受信/送信/予約
○/-/-
-/-/-
ファクス/電話自動切替
見てから送信
見てから印刷
受信ファクスを
メール送信
共有フォルダ保存
外部メモリー保存
PCファクス
送受信
送信のみ

 ファクス機能は搭載している機能はほぼ同等だが、細かなところで違いが出ている。両機種ともスーパーG3に対応しており、モノクロ、カラーファクスを行う事が出来る。ADFを搭載しているため、複数枚の原稿の送信も便利である。33.6Kbpsで通信可能であり、その場合の伝送速度はモノクロで約3秒となる。また読取走査線密度はモノクロで8dot/mm×3.85本/mmの標準モード、8dot/mm×7.7本/mmの精細モード/ファインモード、解像度と変わらないが写真が含まれた原稿に適した写真モードを選べるが、加えてG7030は300×300dpiのファインEXを選択できる。多少の違いはあるが大きな差ではないだろう。カラーは200×200dpiだ。受信したファクスはEW-M670FTが100枚または100件、G7030が50枚又は20件となる。枚数、件数共にEW-M670FTが多いため受信件数が多い場合は便利だ。また、G7030は電源オフ時は受信したファクスが保持されるが、停電時やコンセントが抜けた場合には保持されないのに対して、EW-M670FTはそういった場合でも受信した内容が保持される。使い方によっては、電気が供給されなくても受信内容が保持される方が便利だろう。
 ダイヤル機能としては、両機種ともアドレス帳機能を搭載、EW-M670FTは100件、G7030は20件登録できる。G7030の登録件数はかなり少ないため、EW-M670FTの方が安心と言えるだろう。その他、グループダイヤル、順次同報送信、自動リダイヤルなどの基本的な機能を搭載している。さらに、EW-M670FTはボーリング受信に対応しているほか、送信するファクスを液晶で確認してから送信する「見てから送信」と、受信したファクスの内容を液晶で確認した上で印刷するか決めることで用紙を節約できる「見てから印刷」機能も備えるなど機能面ではEW-M670FTの方が豊富だ。
 さらに、パソコン内のデーターを直接ファクスできる「PCファクス」機能自体は両機種とも搭載しているものの、 G7030は送信(パソコン上のデーターを画像として送信)のみ対応だが、EW-M670FTは送信だけでなく受信(パソコン上にファクスのデーターを受信)することもできる。なお、両機種ともファクス機能だけで受話器がないため通話機能は無いが、モジュラージャックのインとアウトを備えており、アウトに電話機を接続すると通話が可能となる。その際、EW-M670FTはファクス/電話自動切り替え機能にも対応しているのも便利だ。このように両機種は基本的な機能は似ているが、保存件数や様々な便利な機能を搭載しているEW-M670FTの方が高性能だ。とりあえずファクス機能があれば便利というくらいなら問題ないが、ある程度ファクス機能もよく使うという場合はEW-M670FTの方が良いだろう。

操作パネル/インターフェース/本体サイズ
型番
EW-M670FT
G7030
製品画像
液晶ディスプレイ
2.4型
(角度調整可)
2行モノクロ
(90度角度調整可)
操作パネル
タッチパネル液晶
(角度調整可)
ボタン式
(90度角度調整可)
インターフェイス
USB他
USB2.0×1
USB2.0×1
無線LAN
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(ダイレクト接続対応)
有線LAN
100BASE-TX
100BASE-TX
対応OS
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8~
Windows 10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.11.6~(AirPrint利用)
耐久枚数
5万枚
6万枚
外形寸法(横×奥×高)
375×347×231mm
403×369×234mm
重量
6.8kg
9.6kg
本体カラー
ブラック/ホワイト
ブラック

 液晶ディスプレイと操作パネルを見てみよう。両機種とも本体前面に取り付けられ、液晶ディスプレイだけでなく操作パネル全体を持ち上げて角度調整が可能となっている。 G7030は最大90度まで、EW-M670FTもかなりの角度まで起こすことができるので、垂直から水平まで見やすい角度で操作ができるよう工夫されている。低い位置に設置しても高い位置に設置しても使いやすいだろう。
 しかし、操作パネルと液晶ディスプレイには大きな差がある。EW-M670FTは2.4型のカラー液晶を搭載しており、しかもタッチパネル液晶となっている。液晶サイズは大きくは無いが、ギリギリ操作性を損ねるほどでは無いだろう。スタートやストップなども全て本体内に表示されるので、電源ボタン以外は「ホーム」ボタンと「ヘルプ」ボタンのみ物理ボタンとなっており、非常にすっきりしている。カラー液晶でグラフィカルな表示が行われるので分かりやすく、また、メニューや設定項目、各種ボタンが液晶内に表示されるので、直に項目をタッチして操作ができるため直感的に操作できる。またバックライトのある液晶内なので、暗いところでも操作しやすい。ちなみにファクス用のテンキーも液晶内に表示されるため、押した感触が無いため電話番号が押しにくいと感じる場合はあるだろう。一方G7030EW-M670FTと比べるとかなり劣る。液晶は2行文字表示のモノクロ液晶だ。サイズは実測値でEW-M670FTと幅は同じくらいだが、高さが3分の1ほどで、かなり小さい。漢字表示はできるが、文字情報だけなので分かりにくくなってしまう。その上、バックライトを搭載していないため、暗いところでの操作ができないという以上に、薄暗いだけでも視認性が極端に悪くなってしまうのもデメリットだ。操作パネルを見てみると、液晶が小さいこともあって機能を選択するトップ画面が無いため、「コピー」「スキャン」「ファクス」「セットアップ」といった各機能にダイレクトに入れるボタンが液晶左に並んでいる。代わりに液晶内の操作は、設定画面を表示する「メニュー」ボタンの他、「左右カーソル」と「OK」「戻る」と最低限のボタン数となっている。上下カーソルが無いため操作が分かりにくく、階層も深くなってしまい操作が煩雑になってしまう。これらボタンに加えて、Wi-Fi設定時に使う「ワイヤレスコネクト」に加えて、「カラースタート」「モノクロスタート」と「ストップ」、さらにファクスと用のテンキーが並ぶ。物理キーが3つしかなかったEW-M670FTに対して26個も並び、液晶が小さいこともあってボタンだらけという印象で、この点も操作する上で分かりにくくなっている。操作性は圧倒的にEW-M670FTが上で、本体での操作が多いならG7030はかなり辛いと言えるだろう。
 インターフェースは両機種ともUSB2.0に加えて、ネットワーク接続に対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、無線LAN(Wi-Fi)ルーターで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。その場合、プリンターを無線LANルーターに接続しておけば、家庭内のどのパソコンでもプリント可能となり非常に便利だろう。またスマートフォンやタブレットからの印刷も可能となる。またWi-Fiダイレクト(キヤノンは名称はダイレクト接続)に対応しているため、無線LANルーターの無い環境でも、スマートフォンやタブレットと直接Wi-Fi接続が可能となっている点も共通の便利な点だ。ネットワーク接続に関しては、無線LANに加えて、有線LAN接続にも対応する。無線LANの電波が届きにくい、壁にLANコネクターがある、手軽に接続したいなどの理由で有線LAN接続を使用する事も可能だ。
 対応OSは差が大きい。EW-M670FTはWindows XP SP3以降は全て対応する。MacOSもダウンロード対応とはなるが10.6.8以降に対応する。マイクロソフトのサポートの終了したWindows XPやVistaにも対応するのは安心だ。一方、G7030はWindows 7 SP1/8.1/10のみの対応だ。Windows XPやVistaだけでなく、Windows 8も非対応である点は注意が必要だ。MacOSも10.11.6以降となっているだけでなく、ドライバーはキヤノンからは提供されず、AirPrintを使用する方法となっているため、インク残量確認や一部の印刷設定、本体の動作設定ができない点でWindowsで利用する場合に比べて不便になっている。
 本体サイズを見てみよう。EW-M670FTは375×347×231mmで、高さはADFを搭載することと前面給紙カセットが大型である事もあって、やや大きいが、幅と奥行きは家庭用のインクカートリッジの機種と比べても引けを取らないコンパクトさだ。しかも奥行きに関しては、エコタンクと前面給紙カセット部分だけが出ているデザインなので、全体的にはサイズ以上に小さく見える。G7030は403×369×234mmで、高さはほぼ同じだが、幅が28mm、奥行きが22mm大きく、全体に一回り大きいという印象だ。加えてG7030は背面給紙を利用する場合は、後方にさらにスペースが必要だ。設置スペースは大きな差では無いが、若干EW-M670FTの方が有利だ。耐久枚数はEW-M670FTが5万枚、G7030が6万枚となっており、家庭向けの機種が1万~1万5000枚である事を考えるとかなり強化されている。



 両機種は似ている点と異なる点がある。似ている点としては、インク構成とそれに伴う印刷画質、文書の印刷速度、印刷コストなどだ。コピー機能やADFの機能、スマートフォン対応やインターフェース、耐久性にも大きな違いは無いし、本体サイズも決め手になるほどの差では無い。ではどの点が違うかというと、EW-M670FTのメリットは多い。ファクス機能もG7030より豊富だし、なにより本体の操作性が圧倒的に上だ。コピーやファクスが多いならEW-M670FTがオススメだ。また、インクの補充がさらに便利になっている事、ハガキの両面印刷に対応していること、廃インクタンクの交換が可能である事、メールやLINE、リモートでのプリントが可能である事などが気に入った場合もEW-M670FTがオススメだ。逆にG7030のメリットは前面+背面の2方向給紙に対応していることだ。A4普通紙+もう1種類を使うことが多いなら、G7030の方が便利だろう。ただし、本体での操作が多いなら、操作性と用紙の交換の手間のどちらを取るかという話になってしまうため、パソコンやスマートフォンからの操作が多い場合に限ってとなる。その他、写真印刷時の粒状感の少なさとと印刷速度はメリットだ。本格的に写真印刷を行うには向いていないが、画質はそれほどこだわらないので、時々は写真印刷も考えているならG7030のほうが便利だろう。また、価格が5,000円の差があるため、操作性やファクス機能などの差は気にならないので、安い方がというならG7030でも良いだろう。EW-M670FTの方が全体的に高性能で使いやすいが、その部分に5,000円の価値を感じるかどうかが決め手と言えるだろう。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/


EW-M670FT
(ブラック)
EW-M670FTW
(ホワイト)
G7030