プリンター徹底比較
2020年春・夏時点のプリンター
〜エプソンとキャノンのプリンターを比較〜
(2020年11月27日公開)

プリンター比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンター比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。


ファクス付きA4スキャンA3プリント/A4スキャンA4プリント複合機(タンク方式)
 
 ファクス機能付きA4複合機の中で、インクカートリッジ方式では無く、大容量タンクを搭載した複合機である。A3スキャン・A3プリント対応、A4スキャンA3プリント対応、A4スキャンA4プリント対応の機種が存在するが、今回は後者2つを同時に比較する。エプソンからは、A4スキャンA3プリント対応のEW-M5610FT(69,980円)、A4スキャンA4プリント対応のPX-M791FT(89,980円)、EW-M670FT(49,980円)、キャノンからはA4プリントA4スキャン対応のG7030(44,980円)となる。これを見ると分かる様に、A4スキャンA3プリント対応機種は1機種しか無いため、A4スキャンA4プリント対応機種と一緒に比較することにした。また、EW-M5610FTEW-M670FTに近く、比較しやすいという理由もある。また、PX-M791FTはA3プリント対応機種より高いA4プリント対応機種となるが、直接比較できる同価格帯の製品がないため、こちらに加えることとした。一方でEW-M670FTG7030は比較的価格が近く直接のライバル製品となる。この2機種にはどのような違いがあるのか、そしてこの2機種より上位機種となるPX-M791FTEW-M5610FTは価格差に見合った差があるのか、徹底的に比較していこう。

プリント(画質・速度・コスト)
型番
エプソン
エプソン
エプソン
キャノン
型番
PX-M791FT
EW-M5610FT
EW-M670FT
G7030
製品画像

実売価格(メーカーWeb/税抜き)
89,980円
69,980円
49,980円
44,980円
インク
色数
4色
4色
4色
4色
インク構成
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック(顔料)
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック(顔料)
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック(顔料)
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成
エコタンク方式
(挿すだけ満タンインク方式・オフキャリッジ式)
エコタンク方式
(挿すだけ満タンインク方式・オフキャリッジ式)
エコタンク方式
(挿すだけ満タンインク方式・オフキャリッジ式)
ギガタンク方式
(挿して注入・満タン自動ストップ・オフキャリッジ式)
顔料/染料系
顔料
(DURABrite ET)
染料(カラー)/顔料(黒)
(アルバム保存300年/耐光性7年/耐オゾン性2年)
染料(カラー)/顔料(黒)
(アルバム保存300年/耐光性7年/耐オゾン性2年)
染料(カラー)/顔料(黒)
新顔料ブラック
インク型番
IT08番
ヤドカリ(顔料)
ハリネズミ(染料)
ヤドカリ(顔料)
ハリネズミ(染料)
30番
付属インクボトル
インクボトル各色1本
インクボトル各色1本
インクボトル各色1本
インクボトル(カラー)各色1本
インクボトル(ブラック)2本
ノズル数
3200ノズル
784ノズル
784ノズル
1792ノズル
全色:各800ノズル
カラー:各128ノズル
黒:400ノズル
カラー:各128ノズル
黒:400ノズル
カラー:各384ノズル
黒:640ノズル
最小インクドロップサイズ
N/A(3.8pl(MSDT)?)
N/A(3.3pl(MSDT)?)
3.3pl
(MSDT)
N/A(2pl?)
最大解像度
4800×1200dpi
4800×1200dpi
4800×1200dpi
4800×1200dpi
PrecisionCoreプリントヘッド
○(600dpi)
(ノズル自己診断システム搭載)
○(600dpi)
○(600dpi)
印刷速度
L判縁なし写真(メーカー公称)
N/A
N/A
75秒
37秒
A4普通紙カラー(ISO基準)
25.0ipm
9.0ipm
8.0ipm
6.8ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準)
25.0ipm
17.0ipm
15.0ipm
13.0ipm
印刷コスト
L判縁なし写真
N/A
N/A
5.9円
N/A
A4カラー文書
2.0円
0.9円
0.9円
0.9円
A4モノクロ文書
0.8円
0.4円
0.4円
0.4円

 まずはプリントの基本となる画質と速度、印刷コストから見ていこう。4機種ともブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色構成である点は同じだ。しかし染料インクか顔料インクかという点で異なっている。染料インクは様々な用紙に対応でき、写真用紙等に印刷した際に発色が良く、用紙本来の光沢感が出るため、写真印刷に向いている。一方で普通紙に印刷すると紙にしみこんで広がってしまうため、メリハリが弱くなる。その点で顔料インクならメリハリのある印刷が行え、小さな文字や中抜き文字も潰れずに印刷が可能なほか、耐水性も高いため濡れた手で触ったりマーカーを引いても滲まない。とは言え、全色を顔料インクとすると写真用紙などに印刷した際に発色が悪いほか、用紙の光沢感が薄れポストカードのようになってしまったり、一部使用できない用紙もある。つまりは染料インクと顔料インクは、用紙によって向き不向きがあるわけである。
 PX-M791FTを除く3機種はブラックが顔料インク、カラー3色は染料インクである。顔料ブラックを搭載してるため普通紙への黒の印刷はメリハリがある印刷が行える。ただ顔料インクはブラックだけなので、黒色部分しかこの恩恵は得られない。また、黒と言っても、完全な黒ではないグレーの部分には染料のカラーインクを重ねて作り出す場合があり、染料インクと顔料インクを重ねられない事から、背景色があるなどカラーの中に黒が混ざっている場合も染料インクを使う場合があり、必ずしも全ての黒色部分で顔料インクの恩恵を受けられるわけではないが、コピーや文書印刷でそういった部分は結構多く、一部だけでも全体的に引き締まった印象となるのは確かだ。一方、カラーインクには染料インクを採用することで、普通紙以外への画質や、幅広い用紙への対応というメリットもある。とはいえ写真印刷に向いているかとなると、今度がブラックインクが顔料インクであるため使用できず、カラー3色を重ねて黒を表現する事になる。当然完全な黒にはならず、濃いグレーや濃い茶色になってしまうほか、影の中や夜の風景の表現など、黒の中の階調表現は苦手だ。そのため、染料の黒インクを搭載する機種と比べると画質は大きく劣る。普通紙もそれ以外の用紙も両方に対応できる構成とも言えるが、全部で4色ではどちらも中途半端になっているとも言える。
 一方、普通紙印刷に特化したのがPX-M791FTだ。インクは全色顔料インクであるため、写真用紙などへの印刷は苦手で、光沢のある年賀状やフィルム紙など非対応の用紙もあるが、普通紙への印刷時は、他の3機種とは異なり、カラー・モノクロ問わず高画質で高耐水の印刷が行える。レーザープリンターなどからの置き換えなどに適したインク構成と言えるだろう。
 写真の画質を左右する要因の一つとして、最小インクドロップサイズがある。これはドットの大きさで、大きいと全体にザラザラした感じの粒状感が出てしまう。EW-M670FTは3.3pl、他の3機種は非公表ながら海外の同機能のモデルを参考にすると、PX-M791FTは3.8pl、EW-M5610FTは3.3pl、G7030は2plと思われる。これを見るとG7030が最も粒状感が少ないといえる。とはいえ、ファクス機能を搭載しないインクカートリッジ方式の機種では6色染料インクで、最小インクドロップサイズは1.5plという機種があり、エコタンク搭載のファクス機能を搭載しない上位機種では染料ブラックを含む5色インクで、最小インクドロップサイズは同じく1.5plという機種がある。これと比べると、最小インクドロップサイズは大きめで、しかも染料ブラックが無いので、そこまで高画質とは言えない。あくまでマシなのはG7030という程度だ。一方の文書印刷に関してはエプソンの3機種はPrecisionCoreプリントヘッドを採用しており、普通紙への印刷解像度を従来の360dpiから600dpiに向上させているため、より鮮明な印刷が可能となっている。最小インクドロップサイズが大きめなので、文書中の写真やイラスト、グラフなどに若干の粒状感は出ると思われるが、PrecisionCoreプリントヘッドによる文字や地図や図面などの細かい線がしっかり表現される方が綺麗に見えるだろう。さらに、PX-M791FTは「ノズル自己診断システム」を搭載しており、ヘッドのドット抜けを印刷ジョブごとに自動検知して調整してくれる。何百枚も印刷したら、途中から筋が入ってやり直し……という無駄が軽減されるなど、より高性能になっている。
 もう一つ、インクの種類にも違いがある。もちろん発色などの面でも違いがある可能性はあるが、この点ははっきりと示されているわけではない。ただ、インクの耐保存性に違いがある。家庭用の6色プリンターの場合、エプソンは「つよインク200」という名称で、アルバム保存300年、耐光性50年、耐オゾン性10年をうたっており、キャノンも「ChromaLife 100」という名称で、アルバム保存100年をうたっている。しかしEW-M5610FTEW-M670FTはアルバム保存こそ300年で同等だが、耐光性7年、耐オゾン性2年となっており「つよインク200」よりは大きく劣る。特に飾っておいた場合などに色あせが早いと言える。G7030に関しては耐保存性は非公開だが、ChromaLife 100には準拠しないという事なので、100年より短い可能性が高い。PX-M791FTは「DURABrite ET」と、インクに名称が付けられているが、これは写真の耐保存性では無く、文書の耐保存性をうたったものだ。キャビネット保存で400年となっており、印刷した文書を長期保存ができる。このあたりも文書印刷に特化した機種ならではといえよう。
 ちなみに、印刷速度にも特色がある。まず写真印刷速度を見てみると、EW-M670FTが75秒、G7030が37秒と倍の違いがある。とはいえ、インクカートリッジ方式の6色プリンターは最速で13秒なので、G7030で3倍近く、EW-M670FTでは6倍近く時間がかかることになる。G7030はかろうじて使えるレベルではあるが、EW-M670FTでは枚数がある程度多いと相当根気強く待つ必要がある。エプソンのインクカートリッジ方式の機種では各色180ノズルで、Advanced-MSDTという5つのインクサイズのインクを打ち分ける機能を搭載しており、必要に応じて大きなインクサイズを打ち分ける事で高速化と高画質化を両立している。EW-M670Fはカラーが各128ノズル、ブラックが400ノズルで、カラーはやや少ないものの、6分の1の速度になるほどでは無いように思える。Advanced-MSDTではなく3つのインクサイズを打ち分けるMSDT対応という点もやや速度に影響しそうだが、そこまでではない。EW-M670FTは文書印刷向けにチューニングされている可能性が高い。一方キャノンのカートリッジ方式の機種は、シアンとマゼンダが各1536ノズル、イエローが512ノズル、グレーとブラックが各1024ノズルである一方、G7030はカラーが各384ノズル、ブラックが640ノズルなので、カラーは約24〜75%、ブラック約63%のノズル数しか無く、特にシアンとマゼンダのノズル数は大きく減っており、この点が純粋に影響したと思われる。EW-M5610FTは写真印刷速度は非公表ながら、ノズル数はEW-M670FTと同じなので、印刷速度は近いと思われる。PX-M791FTも非公表だが文書向けにチューニングされているのは確実でそれほど高速では無いだろう。
 一方、文書の印刷速度は傾向が異なる。PX-M791FTは文書印刷特化だけあって、カラーもモノクロも25.0ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)と非常に高速だ。これは卓上レーザープリンターにも匹敵するスピードで、卓上のインクジェットプリンターとしては最高速クラスだ。ノズル数がブラックが800ノズルとEW-M670FTの倍で、さらにカラーも同じ各800ノズルであるため、この高速印刷が可能となっている。一方EW-M5610FTはカラーが9.0ipm、モノクロが17.0ipm、EW-M670FTはそれぞれ8.0ipmと15.0ipmであり、十分に高速だ。特に顔料ブラックのノズル数が多いため、モノクロ印刷が高速だ。同じノズル数のEW-M5610FTEW-M670FTだが、発売が新しいEW-M5610FTの方が少しだけ高速になっている。一方、写真印刷は速かったG7030は、カラーが6.8ipm、モノクロは13.0ipmとやや遅くなる。枚数が少なければそれほど問題では無いが、PX-M791FTとの比較だと、モノクロは約半分、カラーは4分の1強となってしまう。例えば100枚モノクロ印刷した場合、PX-M791FTは4分、EW-M5610FTは5分53秒、EW-M670FTは6分40秒、G7030は7分42秒だ。カラー印刷ならそれぞれ4分、11分07秒、12分30秒、14分42秒だ。モノクロ印刷ではそれほどの差には感じないが、カラーだと差は大きい。この差をどう見るかが、機種を選ぶ一つの決め手になるだろう。
 エコタンク・ギガタンクだが、いずれも2世代目のインク補充方式となっており従来より便利になっている。1世代目の製品は、ボトル先端に対して大きな注入口が開けられており、ここに先端を挿し込み、ボトルを握るなどして目視で満タンまで注入する形であった。それに対して2世代目では、ボトルの先端を注入口に挿し込むと、注入が始まり、満タンになると自動ストップするようになっている。ボトルの先端からインクをこぼす心配や、インクをあふれさせる心配が無く、非常に手軽になった。さらにエプソンの3機種は「挿すだけ満タンインク方式」という名称になっており、先端の形状を色ごとに変えてあるため、間違えた色のタンクに注入してしまう危険性が無く、より安心感が増している。G7030はその点では一歩劣ることになる。
 ちなみに印刷コストだが、4機種ともエコタンク・ギガタンク方式と言うこともあって印刷コストは非常に安い。ただしPX-M791FTを除く3機種はA4カラー文書0.9円、A4モノクロ文書0.4円で全く同等であるのに対して、PX-M791FTはそれぞれ2.0円と0.8円で他の3機種の約2倍となっている。PX-M791FTでも印刷コストは非常に安いと言えるが、他機種よりは高いという点は注意が必要だ。写真の印刷コストはEW-M670FTしか公表しておらず5.9円だが、これには写真用紙代(約4.3円)が含まれているので、これを除くと1.6円となる。カートリッジ方式ではエプソンの家庭向け6色機であるEP-882Aはカラー文書が12.0円、L判写真は20.6円(用紙代を除くと16.3円)、キャノンではそれぞれ9.9円と19.4円(用紙代を除くと15.1円)なので圧倒的だ。また印刷コストが安いと言われているビジネス向けの機種で、同じくファクス付き複合機の場合、エプソンの上位モデルPX-M885F、キャノンの上位モデルMAXIFY MB5430で共にカラー文書6.1円、モノクロ文書1.8円なので、PX-M791FTを除く3機種ではカラーは約7分の1、モノクロは4分の1以下の印刷コストになる。PX-M791FTでも、カラーは3分の1、モノクロは半分以下である。これはレーザープリンターなどと比べても圧倒的に安い。印刷コストを考えれば非常にお得だといえるだろう。
 ちなみにインクボトル1本でインクタンクが満タンになる。満タン状態からカラー文書を印刷した場合、エプソンの3機種はカラーインクが6,000ページ、ブラックインクが7,500ページ、G7030はカラーインクが7,700ページ、ブラックインクが6,000ページ印刷できる。1回の補充でかなりの枚数が印刷できるため、印刷枚数が多くても予備を置いておく数を減らせるし、インク切れで印刷が止まっていたというトラブルも起きにくい。また、これだけ大容量ながら、インクボトルの価格は、EW-M670FTはブラックが2,150円、カラーが1,150円、G7030はブラックが2,100円、カラーが各1,400円と非常に低価格だ。PX-M791FTでもブラックが5,200円、カラーが各2,600円だ。印刷枚数が多くでも、1回購入すると2万円というのではその際の負担が大きいが、そういった心配も無い(その結果が低印刷コストに現れているとも言えるが)。
 ちなみに、同梱のインクボトルは、4機種とも別売りのインクボトルと同じものが1セット付属するため、購入時はまずインクタンクを満タンの状態にする事が出来る。G7030は更にブラックインクがもう1本付属する。そこから初期充填を行うと大量のインクを消費するが、それでもEW-M670FTの場合で見ると、3,600枚以上の印刷が可能となっているため、購入後しばらくはインクを購入する必要が無い。カートリッジ方式の機種ではセットアップ用のインクカートリッジしか付属しておらず、初期充填で大半を使用してしまうため、本体と同時にインクカートリッジも購入する事になる。さらに、同梱インクで印刷できる3,600枚を印刷しようとすると、その間に何パックもインクカートリッジを購入する事になる。そのため、本体価格が高くても、付属のインクを使い切った頃には逆転する計算だ。EW-M5610FTは初期充填後の印刷枚数は非公表だが、EW-M670FTと共通する部分も多いため、近い枚数が印刷できるだろう。PX-M791FTも非公表だが海外の同機能のモデルを参考にすると、ブラックインクは4,500枚、カラーインクは2,800枚印刷できるという。G7030も公表していないが、EW-M670FTとタンク容量は似ているため、ある程度は印刷できるだろう。特にブラックインクボトルはもう1本付属するので、残った分+6,000枚は必ず印刷できる事になる。

プリント(給紙・排紙関連)
型番
PX-M791FT
EW-M5610FT
EW-M670FT
G7030
製品画像
対応用紙サイズ
定型用紙
L判〜A4
(用紙幅64mmまで対応)
名刺〜A3ノビ
L判〜A4
名刺〜A4
長尺用紙
長さ6,000mmまで
長さ1,200mmまで
長さ1,200mmまで
長さ676mmまで
給紙方向
(セット可能枚数(普通紙/ハガキ/写真用紙))
背面

L判・64mm幅〜A4
(50枚・20枚・20枚)

名刺〜A3ノビ
(20枚・1枚・1枚)

名刺〜A4
(100枚/40枚/20枚)
前面
【カセット上段】
L判〜A4
(250枚/65枚/50枚)
【カセット下段】
A5〜A4
普通紙のみ
(250枚/−/−)
【カセット】
L判〜A4
(250枚/30枚/20枚)
【カセット】
L判〜A4
(250枚/30枚/20枚)
【カセット】
A5〜A4
普通紙のみ
(250枚/−/−)(
その他
排紙トレイ自動開閉
用紙種類・サイズ登録
○(カセット収納(前面)/用紙セット(背面)連動)
用紙サイズ自動検知機能搭載
○(カセット収納(前面)/用紙セット(背面)連動)
○(カセット収納連動)
○(カセット収納(前面)・カバー(背面)連動)
用紙幅チェック機能
○(印刷時)
○(印刷時)
○(印刷時)

 続いて、給紙・排紙関連の機能を見てみよう。使用できる用紙は、最大サイズはEW-M5610FTを除く3機種はA4まで、EW-M5610FTはA4サイズの倍のA3の、更に一回り大きいA3ノビまで対応している。一方、最小サイズはPX-M791FTEW-M670FTがL判、EW-M5610FTG7030が名刺サイズに対応している。EW-M5610FTG7030は名刺サイズの用紙に直接印刷できるため、少量の印刷にも便利な他、フチなしデザインも作りやすい。一方、PX-M791FTは用紙幅はL判の89mmより小さい64mmまで対応している。このサイズは、B6ハーフサイズのプライスカードに用いられ、小売店などで重宝されそうだ。長尺印刷に関しては、PX-M791FTが6,000mm(6m)まで対応しており、こちらは垂れ幕や横断幕などの印刷にも使用できる。EW-M5610FTEW-M670FTも1,200mm(1.2m)まで対応しているが、G7030は676mmまでとなっている。
 給紙に関しても違いがある。EW-M670FT以外は前面給紙+背面給紙となり、EW-M670FTは前面給紙のみとなる。前面給紙はカセット式であるため、用紙をセットしたままでもホコリが積もらず、また背面給紙と違って本体に用紙を完全収納できるので余分なスペースは必要ない。4機種ともカセット1段にセットできる枚数は250枚と、家庭向けの機種が100枚程度であるのと比べると多くなっている。印刷枚数が多かったり、ファクス受信頻度が多くでも安心だ。PX-M791FTではこのカセットが2段となっているのがメリットだ。A4普通紙とB5普通紙や、A4普通紙とA4両面普通紙といった風に2種類の用紙を使い分けることもできるし、2段とも同じ用紙をセットして500枚までの印刷に対応することもできる。下段はA4〜A5サイズの普通紙のみの対応だが、2段あると様々な使い方ができて便利だろう。一方、PX-M791FTの上段や、EW-M5610FTEW-M670FTは普通紙以外の用紙にも対応するが、G7030の前面給紙は普通紙のみである点は注意したい。また、EW-M5610FTはA3ノビ対応だが、前面給紙カセットはA4までの対応となる。
 背面給紙はEW-M670FT以外の機種が対応するが、機能的には大きく異なる。一番大型なのはG7030で、普通紙を100枚までセットできる一般的な背面給紙だ。ハガキも40枚までセットできる。PX-M791FTEW-M5610FTは使用しない時はたたんでおけるがその分給紙枚数は少なめだ。PX-M791FTは普通紙50枚、ハガキ20枚で、EW-M5610FTは普通紙20枚、それ以外は1枚ずつとなる。EW-M5610FTは普通紙以外を使用する場合は注意が必要だ。ちなみにEW-M5610FTG7030の名刺サイズは背面給紙からのみ対応だ。背面給紙は用紙のセット時に左右のガイドを合わせるだけで良く、セットしやすい一方で、デメリットもあり、用紙をセットしたままだとホコリをかぶってしまい、その用紙が給紙されると故障の原因になる場合があるため、使わないときは取り除くのが理想だ。また用紙をセットするために上方に空間が必要なほか、トレイが後方に傾くため、本体の後方にある程度のスペースが必要になってしまう。この事から、普段から2種類の用紙をセットしておくと言うよりは、A4普通紙など、よく使う用紙を前面給紙カセットに常時セットしておき、背面給紙はその都度使う用紙をセットするために空けておくことで、入れ替えの手間を省けるというイメージだ。ちなみにハガキの給紙枚数で見ると、PX-M791FTは前面給紙カセットから65枚と大量給紙ができるので背面給紙20枚と合わせて85枚、EW-M5610FTは前面30枚+背面1枚で31枚、EW-M670FTは前面30枚のみ、G7030は背面40枚のみとなる。
 4機種とも用紙の種類とサイズを登録しておく機能が搭載されている。液晶ディスプレイでメニューから登録も可能だが、前面給紙カセットの場合は用紙を挿し込んだ際に、背面給紙の場合は、PX-M791FTEW-M5610FTは用紙をセットした際、G7030の背面給紙は給紙口カバーを閉じた際に、自動的に登録画面が表示されるため便利だ(されないようにもできる)。この登録内容と、印刷時の用紙設定が異なっている場合、メッセージが表示される仕組みだ。できる限り印刷ミスによる用紙とインクの無駄遣いをなくす工夫がなされている。これに加えて、エプソンの3機種は印刷時に実際の用紙幅をセンサーでチェックする機能もあり、設定よりも用紙幅が小さかった場合に用紙外にインクを打ってしまいプリンター内部を汚さないようになっている。

プリント(付加機能)
型番
PX-M791FT
EW-M5610FT
EW-M670FT
G7030
製品画像
自動両面印刷
○(普通紙のみ・1枚目反転と同時に2枚目印刷)
○(A4まで)
○(普通紙のみ)
自動両面
印刷速度
A4カラー文書
21.0ipm
5.0ipm
4.5ipm
N/A(2.8ipm?)
A4モノクロ文書
21.0ipm
7.0ipm
6.5ipm
N/A(2.9ipm?)
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
○(オートフォトファイン!EX)
○(オートフォトファイン!EX)
○(オートフォトファイン!EX)
○(自動写真補正)
特定インク切れ時印刷
自動電源オン/オフ
−/○
−/○
−/○
○/○
廃インクタンク交換/フチなし吸収材エラー時の印刷継続
○/○
○/○
○/−
−/−

 その他、プリントの付加機能を見てみよう。自動両面印刷機能は4機種とも搭載している。EW-M5610FTも自動両面印刷はA4までの対応なので、4機種ともA4までで同等だ。ただし、PX-M791FTG7030は普通紙のみ対応だが、EW-M5610FTEW-M670FTは普通紙だけでなくハガキにも対応するため、年賀状で通信面と宛名面を用紙の差し替え無しで印刷できるなど、便利である。一方、PX-M791FTは1枚目表の印刷時に2枚目を給紙しておき、1枚目を裏返している間に2枚目表を印刷、2枚目を裏返している間に1枚目裏を印刷するという、「両面高速紙送り機構」を採用している。自動両面印刷の場合、表を印刷した後、そのままもう一度プリンター内に吸い込まれ、プリンター後方で180度方向転換することで、裏返しているわけだが、これに時間がかかってしまい、両面印刷時は印刷速度が極端に低下してしまう。また印刷する内容によっては表面の印刷後に乾燥時間も必要になる。PX-M791FTでは、この裏返すのに時間がかかる間、もしくは乾燥待ちの間に2枚目の表を印刷することで、時間を無駄にしないという手法だ。そのため、自動両面印刷速度を見てみると、PX-M791FTはカラー、モノクロ共に21ipmと、片面印刷の25ipmと比べてもほとんど低下していない。一方、EW-M5610FTはカラー5.0ipm、モノクロ7.0ipm、EW-M670FTはそれぞれ4.5ipmと6.5ipmと大きく低下する。片面の印刷速度にも差があるが、両面印刷だと更に差が開く格好だ。G7030は両面印刷時の速度を公開していないが、海外の同機能のモデルを参考にすると、モノクロ2.9ipm、カラーが2.8ipmとなっている事から、EW-M5610FTEW-M670FTよりさらに速度は低下する。両面原稿をメインで考えるなら、この速度は重要だ。
 一方、BD/DVD/Blu-rayレーベル印刷機能などは4機種とも搭載しない。写真の自動補正機能としては、エプソンの3機種はは「オートフォトファイン!EX」、G7030は「自動写真補正」と名称は違うものの、逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われる高性能なものを搭載している。
 自動電源オン機能はG7030のみ搭載している。印刷が実行されると自動的に電源がオンになる機能だ。無線LANや有線LANでのネットワーク接続ができるようになり、プリンターから離れた場所のパソコンやスマートフォンから印刷を実行することが増えたが、そういった際にわざわざプリンターの電源を入れに行く手間が省ける。ただし、操作パネルを閉じた状態だと印刷は実行されないため、操作パネルは持ち上げて少し開いておく必要がある。一方、指定した時間が経つと自動的に電源がオフになる機能は4機種とも搭載している。
 エプソンの3機種が持つ便利な機能が、廃インクタンク(メンテナンスボックス)をユーザーが交換できる機能だ。廃インクタンクはクリーニングの際に排出されるインクを貯めておくタンクで、G7030を含む多くの機種は満タンになるとメッセージが表示され修理に出して交換するまで一切のプリントが止まってしまう。一方、エプソンの3機種はインクカートリッジなどと一緒に交換用メンテナンスボックスが売られており(PX-M791FT用は2.380円、EW-M5610FT/EW-M670FT用は1,800円)、交換すれば印刷が再開できる。安くすむだけでなく、プリンターが手元に無い期間が無くなるため便利だ。一方、フチなし吸収材(フチなし印刷時は用紙サイズより少し大きめにプリントする事で実現しており、その際に用紙からはみ出したインクを吸収させるもの)が満タンになった場合は、4機種とも修理対応となる。ただしPX-M791FTEW-M5610FTは、満タンになってもフチなし吸収材にインクが落ちることがない「フチあり」印刷に関しては印刷を継続できるようになっている。フチなし印刷はできないとはいえ、フチなし印刷はとりあえず置いておいて、急を要するフチあり印刷を行い、余裕のあるときに修理に出すという事ができるわけだ。

スキャン
型番
PX-M791FT
EW-M5610FT
EW-M670FT
G7030
製品画像
読み取り解像度
1200dpi(1200×2400dpi)
1200dpi(1200×2400dpi)
1200dpi(1200×2400dpi)
1200dpi(1200×2400dpi)
センサータイプ
CIS
CIS
CIS
CIS
原稿取り忘れアラーム
ADF
原稿セット可能枚数
50枚
35枚
35枚
30枚
原稿サイズ
A4/B5/A5/レター/リーガル
A4/レター/リーガル
A4/レター/リーガル
A4/レター/リーガル
両面読み取り
読み取り速度
カラー
9.0ipm
5.0ipm
5.0ipm
N/A
モノクロ
27.5ipm
5.0ipm
5.0ipm
N/A
スキャンデーターのメモリーカード保存
○(JPEG/PDF)

 続いて、スキャナー部を見てみよう。解像度は4機種とも1200dpiとなっており差は無い。インクカートリッジ方式の上位機種にはもっと高解像度の機種があるが、実際には紙などの反射原稿しかスキャンできないことを考えると1200dpiでも十分だ。というのも、一般的には文書なら200〜300dpi、写真なら300〜600dpi程度で、よほど綺麗に保存したい場合や拡大して印刷する場合に1200dpiでスキャンすると言った程度だ。実際、L判写真を1200dpiで取り込むと約4,200×6,000ドットとなり2500万画素相当なので十分で、600dpiでも2,100×3,000ドットなので、L判サイズに印刷したり、スマートフォンの画面で見る分には十分きれいだといえる。逆にスキャナー解像度が高いセンサーでは1ドットあたりの光の取り込み量が減り、スキャン速度が低下したりノイズが発生したりするため、バランスを取って1200dpiとしていると思われる(もちろんコストの関係もあると考えられるが)。なお、CISセンサーであるため、分厚い本など浮いてしまう原稿は苦手で、ピントが合わずぼけたような画像となってしまう点も共通だ。
 4機種ともファクス機能を搭載してる事もあって、ADFを搭載している。ADFは原稿を複数枚セットすると、順番にスキャンしてくれる機能で、複数原稿のコピーやファクス時に重宝する。このうちPX-M791FTは両面スキャン対応、他の3機種は片面スキャンとなる。両面スキャンは片面をスキャン後、もう一度給紙して裏面をスキャンする方式なので倍以上の時間がかかるが、両面原稿のスキャンやコピー、FAX送信に便利だ。また、セットできる原稿の枚数もPX-M791FTが50枚で最多、EW-M5610FTEW-M670FTが35枚、G7030が30枚と差がある。対応用紙も、PX-M791FT以外の3機種はレターやリーガルサイズを除くと、A4サイズのみだが、PX-M791FTはB5とA5サイズにも対応しているなど機能的にはPX-M791FTが圧倒的だ。また、スキャン速度を見てみると、PX-M791FTはカラースキャンは9.0ipm(ipm=image per minute:1分間に何面をスキャンできるか)、モノクロは27.5ipmとなる。一方、EW-M5610FTEW-M670FTはカラー、モノクロ共に5.0ipmだ。カラースキャンの速度差は大きくないが(それでも1.8倍あるが)、モノクロは大きな差があり、PX-M791FTは5.5倍高速だ。同じADFでも使い勝手には大きな差がある。また、PX-M791FTはスキャンしたデーターをパソコンを使わずUSBメモリー又はSDカード等(要カードリーダー)に保存できる機能も搭載している。

ダイレクト印刷
型番
PX-M791FT
EW-M5610FT
EW-M670FT
G7030
製品画像
ダイレクトプリント
メモリーカード
メモリーカードリーダー対応
USBメモリー

(外付けHDD対応)
赤外線通信
対応ファイル形式
JPEG/TIFF/PDF(スキャン to 外部メモリー機能で作成したPDFのみ)
色補正機能
フチあり/フチなし
赤目補正
手書き合成
メモリーカードからUSBメモリー/外付けHDDへバックアップ
−/−
−/−
−/−
−/−
PictBridge対応
各種デザイン用紙印刷

 ダイレクト印刷を見てみよう。とはいえ、機能を搭載しているのはPX-M791FTのみだ。前面にUSBポートがあり、ここにUSBメモリーを接続すれば、パソコン無しでプリントができる。対応ファイル形式はJPEGとTIFFに加えて、前述のスキャンしてメモリカードに保存する機能で作成したPDFにも対応している。同機能を使ってデーター化しておいたものを、再度プリントすることが可能となっている。またUSBポートには、パソコン用のメモリカードリーダーや外付けハードディスクにも対応している。前者を取り付ければ、SDカードなど各種メモリーカードからのプリントも可能だ。写真印刷の場合は、液晶に表示される一覧から選んでプリントができるため、家庭用のプリンターと同じ操作方法で印刷が可能だ。フチあり/フチなしの切り替えと、赤目補正程度しかできないが、自動で写真を補正する「オートフォトファイン!EX」も利用できるため、簡単な写真印刷なら問題ないだろう(画質的には写真向きとは言えないが)。

スマートフォン/クラウド対応
型番
PX-M791FT
EW-M5610FT
EW-M670FT
G7030
製品画像
スマートフォン連携
アプリ
メーカー専用
EPSON iPrint
EPSON Smart Panel
EPSON iPrint
EPSON Smart Panel
EPSON iPrint
Canon PRINT Inkjet/SELPHY
AirPrint
対応端末
iOS 10.0以降
Android 5.0以降
(EPSON Smart Panel使用時のiOSは11.0以降)
iOS 10.0以降
Android 5.0以降
(EPSON Smart Panel使用時のiOSは11.0以降)
iOS 10.0以降
Android 5.0以降
iOS 11.0以降
Android 4.4以降
スマートスピーカー対応
○(Alexa/Googleアシスタント)
○(Alexa/Googleアシスタント)
○(Alexa/Googleアシスタント)
○(Alexa/Googleアシスタント)
Wi-Fiダイレクト接続支援機能
○(QRコード読み取り(iOS)/アプリ上で選択して本体で許可(Android))
○(QRコード読み取り(iOS)/アプリ上で選択して本体で許可(Android))
○(Bluetooth)
写真プリント
ドキュメントプリント
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
スキャン
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
クラウド連携
プリント
アプリ経由/本体
○/−
○/−
○/−
○/−
オンラインストレージ
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive)
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive)
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive)
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom)
SNS
○(Instagram/Facebook・コメント付き可)
○(Instagram/Facebook・コメント付き可)
○(Instagram/Facebook・コメント付き可)
○(Instagram/Facebook・コメント付き可)
写真共有サイト
○(googleフォト/image.canon)
スキャン
アプリ経由/本体
○/○
○/○
○/○
−/−
スキャンしてオンラインストレージにアップロード
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive)
(OneDriveはアプリからのみ)
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive)
(OneDriveはアプリからのみ)
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive)
(OneDriveはアプリからのみ)
メールしてプリント
○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/PDF/Word/Excel/PowerPoint/メール本文)
○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/PDF/Word/Excel/PowerPoint/メール本文)
○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/PDF/Word/Excel/PowerPoint/メール本文)
LINEからプリント
○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint)
○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint)
リモートプリント
スキャンしてリモートプリント

 スマートフォンとの連携機能も4機種とも搭載しており、iOSとAndroid端末に対応している。いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることでプリント又はスキャンが行える。写真とドキュメント印刷、スキャンに対応しており、様々な内容をプリント可能だ。写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。ドキュメント印刷は、PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もでき便利だ。また、両機種ともスマートフォン上からスキャンを実行し、データーをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。新聞や雑誌、手書きの情報などをスマートフォンに電子化するといった使い方ができるため便利だろう。なお、iPhoneやiPadの場合、AirPrintを利用したプリントも可能だ。
 スマートフォンとの接続は、無線LAN(Wi-Fi)で行うが、無線LANルーターを経由する方法と、ダイレクトに接続する「Wi-Fiダイレクト」(キヤノンはダイレクト接続)が選べる。無線LANルーターを経由する方が、機能面でも制限が無く、印刷する度にプリンターと接続と切断を繰り返すのWi-Fiダイレクトと比べると便利なので、こちらを利用するのがお勧めだが、無線LANルーターが無い環境で使用する場合や、一時的に同じネットワークに入っていない他人にプリンターを使わせる場合にWi-Fiダイレクトは便利だ。Wi-Fiダイレクトの接続設定は手動でもそれほど難しくは無いが、EW-M670FTを除く3機種は手軽に接続出来る工夫がなされている。PX-M791FTEW-M5610FTはiOSの場合は本体の液晶に表示されるQRコードを読み込めば接続が完了し、Androidの場合は一覧から選んで、本体の液晶にメッセージが表示されるので接続の許可を選べば接続が完了する。セキュリティーキーの入力などが不要で、設定はより簡単になっている。一方のG7030はBluetoothを利用した接続支援機能が提供される。Bluetoothで直接印刷データーを送信するのではなく、接続自体はWi-Fiだが、あらかじめBluetoothでペアリングしておけば、Wi-Fiダイレクトの設定が簡単に行えるというものだ。こちらはAndroid限定だ。使う機会は限定されるとはいえ、少しでも簡単に接続できるよう工夫さえれている点は評価できる。
 また、4機種ともスマートスピーカーに対応している。AlexaとGoogleアシスタント対応端末に対応しており、声だけでテンプレートを印刷させることができる。2020年7月現在でエプソンの3機種は、デザインペーパー、フォトプロップス、カレンダー、ノート、方眼紙、五線譜などのエプソン独自のものと、Alexaに登録された買い物リスト、やることリストなどの印刷に対応する。G7030はナンプレ、ぬりえ、レポート用紙、チェックリスト、五線譜などキャノン独自のもの印刷と、プリンターの状態の確認が行える。
 クラウドとの連携機能も4機種とも搭載している。クラウドからのプリントは4機種とも対応だ。オンラインストレージのファイルを印刷したり、SNSの写真を印刷する事ができる。SNSの写真はコメント付きでも印刷が可能だ。またG7030は写真共有サイトからの印刷も可能だ。4機種ともスマートフォン上のアプリからアクセスする形となり、プリンター本体にはアクセス機能は無い。一方、スキャンしてオンラインストレージへアップロードする機能はエプソンの3機種が対応している。こちらは、スマートフォン上だけでなくプリンター本体の操作でもスキャンからアップロードまで完了する事ができる(OneDriveはスマートフォン用アプリ経由のみ)。アプリをわざわざ立ち上げなくても、サッとスキャンしてアップロードできるのは便利だ。
 さらにネットワークを利用したプリント機能として、エプソンの3機種は、印刷したい写真や文書を本機にメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、LINE上でプリンターを友達登録し、トーク画面から写真を送信すると印刷される「LINEからプリント」、スキャンした画像を離れた場所の対応複合機で印刷できる「メールdeリモート印刷」、パソコンやスマートフォンから通常のプリントと同じ操作で、外出先など離れた場所から自宅のこれら機種で印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。一方のG7030はこういった機能は一切搭載していない。リモートプリント機能はエプソンの3機種が圧倒的だ。

コピー機能
型番
PX-M791FT
EW-M5610FT
EW-M670FT
G7030
製品画像
等倍コピー
拡大縮小
倍率指定
○(25〜400%)
○(25〜400%)
○(25〜400%)
○(25〜400%)
オートフィット
定型変倍
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー
割り付け(2面/4面)
○/○
○/−
○/−
○/○
その他のコピー機能
プレビュー
濃度調整
背景除去機能
コントラスト調整
鮮やかさ調整
色調補正(レッド・グリーン・ブルー個別)
シャープネス調整
色相調整
濃度調整
濃度調整
濃度調整
バラエティコピー
IDコピー
影消しコピー
パンチ穴消しコピー
ソート(1部ごと)コピー
IDコピー
影消しコピー
パンチ穴消しコピー
IDコピー
影消しコピー
パンチ穴消しコピー
ページ順コピー
枠消しコピー
IDコピー
コピー予約

 コピー機能を見てみよう。4機種とも単純な等倍コピーだけでなく、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「オートフィット」機能や、原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行う「定型変倍」機能、さらに25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える機能を搭載した高性能な物を搭載している。さらに、2枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2面割り付けにも対応する。PX-M791FTG7030は4枚の原稿を1枚に縮小する4面割り付けにも対応している。その他、濃度調整機能は4機種とも搭載する。PX-M791FTはそれに加えて、プレビュー機能にも対応し、コピー前に原稿を確認できるため失敗が少なくなるほか、プレビュー画像を見て拡大・縮小率を調整できる。さらに、背景色を白にして見やすくする「背景除去機能」の他、コントラスト、鮮やかさ、色調、シャープネス、色相の調整が可能だ。色調調整は、レッド・グリーン・ブルーを個別に調整できる。かなり高度な色の調整が可能で、好みの色に調整したり、原本に近い色合いに調整したりと言ったことができる。
 バラエティコピー機能を見てみよう。エプソンの3機種は、免許証などのコピー時に、裏と表を2回スキャンすると、1枚の用紙に上下に並べてコピーできる「IDコピー」、本などをコピーした際の中央部の浮いてしまう部分や、分厚い原稿の周囲に出来る影を消してくれる「影消しコピー」と、パンチ穴を消してコピーする「パンチ穴消しコピー」など文書コピーに便利な機能を備える。それに加えて、PX-M791FTはADF利用時に複数ページの原稿を1部ずつコピーする「ソート(1部ごと)コピー」にも対応している。一方、G7030はも、ADF利用時に1部ずつコピーする「ページ順コピー」、厚手の原稿など原稿台のカバーが浮いてしまう場合に黒くなる部分を消去する「枠消しコピー」機能、「IDコピー」機能の他、コピー実行中でも次の原稿の読み取り操作ができる「コピー予約」も可能だ。それぞれ機能は異なるが、複合機単独で様々なコピーが行えるよう工夫されている。
 ちなみにADFを利用して複数枚の原稿をコピーする場合、その速度には大きな差がある。PX-M791FTではモノクロコピーの場合は、スキャナーが27.5ipm、プリントが25ipmなので、理論上はプリントスピードを十分に発揮できる。カラーはスキャナーが9.0ipmであるため、プリントスピードよりは遅いが、理論上9.0ipmでコピーができる。それに対して他のEW-M5610FTEW-M670FTはADFの速度がプリント速度より明らかに遅いため、5.0ipmが最高となる。特にモノクロコピーを多用するなら、PX-M791FTはストレス無く行える事になる。

ファクス機能
型番
PX-M791FT
EW-M5610FT
EW-M670FT
G7030
製品画像
通信速度
33.6kbps
33.6kbps
33.6kbps
33.6kbps
画質設定
モノクロ
8dot/mm×3.85本/mm(標準)
8dot/mm×7.7本/mm(精細)
8dot/mm×15.4本/mm(高精細)
16dot/mm×15.4本/mm(超高精細)
8dot/mm×3.85line/mm(標準)
8dot/mm×7.7line/mm(精細)
8dot/mm×7.7line/mm(写真)
8dot/mm×3.85line/mm(標準)
8dot/mm×7.7line/mm(精細)
8dot/mm×7.7line/mm(写真)
8dot/mm×3.85本/mm(標準)
8dot/mm×7.7本/mm(ファイン)
8dot/mm×7.7本/mm(写真)
300×300dpi(ファインEX)
カラー
200×200dpi
200×200dpi
200×200dpi
200×200dpi
送信原稿サイズ
A4/B5/A5
A4
A4
N/A
記録紙サイズ
A4/A5/リーガル/レター
A3/B4/A4/B5/A5/リーガル/レター
A4/リーガル/レター
A4/リーガル/レター
受信ファクス最大保存ページ数
550枚/200件
100枚/100件
100枚/100件
50枚/20件
データー保持(電源オフ/停電)
○/○
○/○
○/○
○/−
ワンタッチ
アドレス帳
200件
100件
100件
20件
グループダイヤル
199宛先
99宛先
99宛先
19宛先
順次同報送信
200宛先
100宛先
100宛先
21宛先
自動リダイヤル
発信元記録
ポーリング受信/送信/予約
○/○/−
○/−/−
○/−/−
−/−/−
ファクス/電話自動切替
見てから送信
見てから印刷
受信ファクスを
メール送信
共有フォルダ保存
外部メモリー保存
○(USBメモリー/メモリーカード(カードリーダー接続))
PCファクス
送受信
送受信
送受信
送信のみ

 ファクス機能は搭載している機能はほぼ同等だが、細かなところで違いが出ている。4機種ともスーパーG3に対応しており、モノクロ、カラーファクスを行う事が出来る。ADFを搭載しているため、複数枚の原稿の送信も便利である。33.6Kbpsで通信可能であり、その場合の伝送速度はモノクロで約3秒となる。また読取走査線密度はモノクロで8dot/mm×3.85本/mmの標準モード、8dot/mm×7.7本/mmの精細モード/ファインモードは4機種共通だ。PX-M791FTはさらに高画質な8dot/mm×15.4本/mmの高精細モード、16dot/mm×15.4本/mmの超高精細モードを選択できる。一方EW-M5610FTEW-M670FTは、解像度は精細モードと変わらないが写真が含まれた原稿に適した写真モードを選べる。G7030も写真モードを選べる他、300×300dpiのファインEXを選択できる。多少の違いはあるが大きな差ではないだろう。カラーは200×200dpiで共通だ。送信原稿サイズはPX-M791FT以外はA4に限定されるが、PX-M791FTはB5とA5にも対応する。受信したファクスの印刷も、EW-M670FTG7030はリーガルとレターを除くとA4に限定されるが、PX-M791FTはA5に対応、A3プリントが行えるEW-M5610FTはA3、B4、B5、A5にも対応する。
 受信したファクスはPX-M791FTが550枚又は200件、EW-M5610FTEW-M670FTが100枚または100件、G7030が50枚又は20件となる。枚数、件数には大きな差があるため、受信件数が多い場合は注意が必要だ。また、G7030は電源オフ時は受信したファクスが保持されるが、停電時やコンセントが抜けた場合には保持されないのに対して、エプソンの3機種ははそういった場合でも受信した内容が保持される。使い方によっては、電気が供給されなくても受信内容が保持される方が便利だろう。
 ダイヤル機能としては、4機種ともアドレス帳機能を搭載、PX-M791FTは200件、EW-M5610FTEW-M670FTは100件、G7030は20件登録できる。G7030の登録件数はかなり少ないため、エプソンの3機種の方が安心と言えるだろう。その他、グループダイヤル、順次同報送信、自動リダイヤルなどの基本的な機能を搭載している。さらに、エプソンの3機種はボーリング受信に対応しているほか、PX-M791FTはポーリング送信にも対応する。また、エプソンの3機種は送信するファクスを液晶で確認してから送信する「見てから送信」と、受信したファクスの内容を液晶で確認した上で印刷するか決めることで用紙を節約できる「見てから印刷」機能も備えるなど機能面ではG7030よりも豊富だ。またPX-M791FTは受信したファクスをメール送信したり、共有フォルダに転送したり、USBメモリーやメモリカード(要カードリーダー)に保存する事もできる。ファクスの共有が行いやすいため、多人数で使う場合に便利だろう。
 さらに、パソコン内のデーターを直接ファクスできる「PCファクス」機能自体は4機種とも搭載しているものの、G7030は送信(パソコン上のデーターを画像として送信)のみ対応だが、エプソンの3機種は送信だけでなく受信(パソコン上にファクスのデーターを受信)することもできる。なお、4機種ともファクス機能だけで受話器がないため通話機能は無いが、モジュラージャックのインとアウトを備えており、アウトに電話機を接続すると通話が可能となる。その際、エプソンの3機種はファクス/電話自動切り替え機能にも対応しているのも便利だ。このように4機種は基本的な機能は似ているが、保存件数や様々な便利な機能をに細かな差がある。PX-M791FTが最も高性能で、EW-M5610FTEW-M670FTも大きな差では無いが、G7030はかなり簡易的だと言える。とりあえずファクス機能があれば便利というくらいなら問題ないが、ある程度ファクス機能もよく使うという場合はエプソンの3機種の方が良いだろう。

操作パネル/インターフェース/本体サイズ
型番
PX-M791FT
EW-M5610FT
EW-M670FT
G7030
製品画像
液晶ディスプレイ
4.3型
(角度調整可)
2.7型
(80度角度調整可)
2.4型
(角度調整可)
2行モノクロ
(90度角度調整可)
操作パネル
タッチパネル液晶
(角度調整可)
タッチパネル液晶
(80度角度調整可)
タッチパネル液晶
(角度調整可)
ボタン式
(90度角度調整可)
インターフェイス
USB他
USB2.0×1
USB2.0×1
USB2.0×1
USB2.0×1
無線LAN
IEEE802.11ac/n/a/g/b
5GHz対応
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(ダイレクト接続対応)
有線LAN
100BASE-TX
100BASE-TX
100BASE-TX
100BASE-TX
対応OS
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.11.6〜(AirPrint利用)
耐久枚数
20万枚
10万枚
5万枚
6万枚
外形寸法(横×奥×高)
425×500×350mm
498×358×245mm
375×347×231mm
403×369×234mm
重量
18.3kg
10.2kg
6.8kg
9.6kg
本体カラー
ホワイト
ホワイト
ブラック/ホワイト
ブラック

 液晶ディスプレイと操作パネルを見てみよう。4機種とも本体前面に取り付けられ、液晶ディスプレイだけでなく操作パネル全体を持ち上げて角度調整が可能となっている。G7030は最大90度まで、エプソンの3機種もかなりの角度まで起こすことができるので、垂直から水平まで見やすい角度で操作ができるよう工夫されている。低い位置に設置しても高い位置に設置しても使いやすいだろう。
 しかし、操作パネルと液晶ディスプレイには大きな差がある。PX-M791FTは4.3型のカラー液晶を搭載しており、しかもタッチパネル液晶となっている。液晶の左に「ホーム」と「排紙トレイ収納」、右に「ヘルプ」ボタンを用意する以外は、全てタッチパネル操作となっている。それらのボタンもタッチセンサー式なので、見た目は非常にスッキリしている。メニューや設定項目、各種ボタンが液晶内に表示されるので、直に項目をタッチして操作ができるため直感的に操作できる。ちなみにファクス用のテンキーも液晶内に表示されるため、押した感触が無いため電話番号が押しにくいと感じる場合はあるだろう。EW-M5610FTEW-M670FTも同じくタッチパネル液晶となっている。EW-M5610FTが2.7型、EW-M670FTが2.4型とPX-M791FTと比べると大きくは無いが、ギリギリ操作性を損ねるほどでは無いだろう。3機種ともカラー液晶でグラフィカルな表示が行われるので分かりやすく、またバックライトのある液晶内なので、暗いところでも操作しやすい。一方G7030はエプソンの3機種と比べるとかなり劣る。液晶は2行文字表示のモノクロ液晶だ。サイズは実測値でEW-M670FTと比べても幅は同じくらいだが、高さが3分の1ほどで、かなり小さい。漢字表示はできるが、文字情報だけなので分かりにくくなってしまう。その上、バックライトを搭載していないため、暗いところでの操作ができないという以上に、薄暗いだけでも視認性が極端に悪くなってしまうのもデメリットだ。操作パネルを見てみると、液晶が小さいこともあって機能を選択するトップ画面が無いため、「コピー」「スキャン」「ファクス」「セットアップ」といった各機能にダイレクトに入れるボタンが液晶左に並んでいる。代わりに液晶内の操作は、設定画面を表示する「メニュー」ボタンの他、「左右カーソル」と「OK」「戻る」と最低限のボタン数となっている。上下カーソルが無いため操作が分かりにくく、階層も深くなってしまい操作が煩雑になってしまう。これらボタンに加えて、Wi-Fi設定時に使う「ワイヤレスコネクト」に加えて、「カラースタート」「モノクロスタート」と「ストップ」、さらにファクスと用のテンキーが並ぶ。電源ボタン以外はタッチセンサーボタン3つしかなかったPX-M791FTや、物理キーが3つしかなかったEW-M5610FTEW-M670FTに対して、G7030は26個も並び、液晶が小さいこともあってボタンだらけという印象で、この点も操作する上で分かりにくくなっている。操作性は圧倒的にエプソンの3機種が上で、本体での操作が多いならG7030はかなり辛いと言えるだろう。
 インターフェースは4機種ともUSB2.0に加えて、ネットワーク接続に対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、無線LAN(Wi-Fi)ルーターで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。その場合、プリンターを無線LANルーターに接続しておけば、家庭内のどのパソコンでもプリント可能となり非常に便利だろう。またスマートフォンやタブレットからの印刷も可能となる。またWi-Fiダイレクト(キヤノンは名称はダイレクト接続)に対応しているため、無線LANルーターの無い環境でも、スマートフォンやタブレットと直接Wi-Fi接続が可能となっている点も共通の便利な点だ。ネットワーク接続に関しては、無線LANに加えて、有線LAN接続にも対応する。無線LANの電波が届きにくい、壁にLANコネクターがある、手軽に接続したいなどの理由で有線LAN接続を使用する事も可能だ。さらに、PX-M791FTはIEEE80.211ac/aにも対応し、5GHz帯にも対応する。IEEE802.11acは、他の3機種のIEEE802.11nと比べると通信速度が圧倒的に速いため、無線LAN接続時でも待たされる心配が無い。さらに、IEEE802.11ac/n/a通信時は、5GHz帯の電波を使用できる。他機種の2.4GHz帯は、Bluetoothや電話の子機と同じ帯域で、電子レンジなどの影響も受けやすいが、5GHz帯は無線LAN専用といえるので、通信が安定する。
 対応OSは差が大きい。エプソンの3機種はWindows XP SP3以降は全て対応する。MacOSもダウンロード対応とはなるが10.6.8以降に対応する。マイクロソフトのサポートの終了したWindows XPやVistaにも対応するのは安心だ。一方、G7030はWindows 7 SP1/8.1/10のみの対応だ。Windows XPやVistaだけでなく、Windows 8も非対応である点は注意が必要だ。MacOSも10.11.6以降となっているだけでなく、ドライバーはキヤノンからは提供されず、AirPrintを使用する方法となっているため、インク残量確認や一部の印刷設定、本体の動作設定ができない点でWindowsで利用する場合に比べて不便になっている。
 本体サイズを見てみよう。PX-M791FTは425×500×350mmで大柄だ。横幅はそれほど大きくは無く、高さも前面給紙カセットが2段である事を考えると仕方が無いと思えるが、奥行きが意外と大きい。エコタンクの飛び出した部分を含んでいるとはいえ、350mm前後の機種が多い中で500mmはかなりの大きさだ。設置スペースは気をつける必要がある。一方、同じA4対応でもEW-M670FTは375×347×231mmで、高さはADFを搭載することと前面給紙カセットが大型である事もあって、やや大きいが、幅と奥行きは家庭用のインクカートリッジの機種と比べても引けを取らないコンパクトさだ。しかも奥行きに関しては、エコタンクと前面給紙カセット部分だけが出ているデザインなので、全体的にはサイズ以上に小さく見える。唯一のA3プリント対応のEW-M5610FTは498×358×245mmとやはり大きめだ。とはいえ、奥行きと高さはEW-M670FTとさほど変わらず、横幅も、用紙がA4(幅210mm)に対してA3ノビ(幅340mm)と、130mm大きな用紙に対応しながら、123mmの増加に抑えており、十分コンパクトと言える。G7030は403×369×234mmで、高さはEW-M670FTとほぼ同じだが、幅が28mm、奥行きが22mm大きく、全体に一回り大きいという印象だ。なお、EW-M670FT以外は背面給紙を利用する場合は、後方にさらにスペースが必要である点は注意が必要だ。設置スペースだけで見えると、EW-M670FTは優秀だと言える。耐久枚数はPX-M791FTが20万枚、EW-M5610FTが10万枚、EW-M670FTが5万枚、G7030が6万枚となっており、家庭向けの機種が1万〜1万5000枚である事を考えると、4機種とも強化されているが、4機種の間にも差がある。プリンターの場合5年が寿命と言われているため、5年間で割ると、PX-M791FTが月3333枚、EW-M5610FTが月1667枚、EW-M670FTが月833枚、G7030が月1000枚が目安となる。



 4機種は同じエコタンク・ギガタンク方式でFAX機能を搭載した複合機ではあるが、3つに分類される。まずとにかく高性能なPX-M791FTだ。文書印刷がメインで、印刷速度、給紙枚数、自動両面印刷、ADF、コピー機能、FAX機能、操作性、無線LAN、耐久性のどれをとっても優秀である。弱点と言えば、他機種よりも印刷コストが高い事と本体サイズが大きいことだが、前者はカートリッジ方式のプリンターやレーザープリンターと比べれば十分に安価なので大きな問題では無いだろう。速度や機能、操作性にこだわるという場合や、多人数で使う場合などにはPX-M791FTがオススメだ。2つめの分類はA3ノビに対応したEW-M5610FTだ。機能的にはEW-M670FTと変わらないが、4機種中唯一A3ノビプリントに対応している。B4/A3/A3ノビは背面給紙からのみで、1度に10枚まで、スキャンはA4という事で、B4/A3/A3ノビをメインに使う機種では無いが、たまにA4を超えるサイズもプリントするというならぴったりだ。ちなみに、A3対応もPX-M791FTレベルの機能も両方必要と言うことであれば、PX-M791FTのA3対応版ともいうべきPX-M6712FTという製品があるがスキャンもA3対応で本体がかなり大きくなるため、コンパクトでA3対応と言うことであればEW-M5610FTがベストだ。一方、PX-M791FTほど高性能で無く、EW-M5610FTの様にA3プリントも不要というなら、EW-M670FTG7030だ。この2機種は機能面でも価格面でも直接のライバル製品となる。両機種は似ている点と異なる点がある。似ている点としては、インク構成とそれに伴う印刷画質、文書の印刷速度、印刷コストなどだ。コピー機能やADFの機能、スマートフォン対応やインターフェースなどで、耐久性にも大きな違いは無いし、本体サイズも決め手になるほどの差では無い。ではどの点が違うかというと、EW-M670FTのメリットは多い。ファクス機能もG7030より豊富だし、なにより本体の操作性が圧倒的に上だ。コピーやファクスが多いならEW-M670FTがオススメだ。また、インクの補充がさらに便利になっている事、ハガキの両面印刷に対応していること、廃インクタンクの交換が可能である事、メールやLINE、リモートでのプリントが可能である事などが気に入った場合もEW-M670FTがオススメだ。逆にG7030のメリットは前面+背面の2方向給紙に対応していることだ。A4普通紙+もう1種類を使うことが多いなら、G7030の方が便利だろう。ただし、本体での操作が多いなら、操作性と用紙の交換の手間のどちらを取るかという話になってしまうため、パソコンやスマートフォンからの操作が多い場合に限ってとなる。その他、写真印刷時の粒状感の少なさとと印刷速度はメリットだ。本格的に写真印刷を行うには向いていないが、画質はそれほどこだわらないので、時々は写真印刷も考えているならG7030のほうが便利だろう。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/


PX-M791FT
EW-M5610FT
EW-M670FT
(ブラック)
EW-M670FTW
(ホワイト)
G7030