2020年末時点のプリンター 〜エプソン・キャノン・ブラザーのプリンターを比較〜 (2021年5月28日公開)
A3プリントA4スキャンに対応した複合機の5機種を比較する。エプソンからEW-M973A3T(85,000円)、EP-982A3(32,980円)、EW-M5610T(69,980円)、キャノンからTR9530(34,880円)、ブラザーからMFC-J5630CDW(34,000円)の5機種となる。5機種とも性格がかなり異なり、本来ならタンク方式とカートリッジ方式、ファクス機能付きと機能無しで分けて比較したいところだが、分けるほど機種数も多くないためまとめて比較する。タンク方式はEW-M973A3TとEW-M5610FTで、残る3機種がカートリッジ方式だ。一方、ファクス機能付きはEW-M5610FTとMFC-J5630CDWである。EW-M973A3TとEP-982A3は家庭向け、EW-M5610FTとTR9530はビジネス・家庭両用、MFC-J5630CDWはビジネス向けとなっており、異なる点も多い5機種だが、どの機種が用途に合うのかを細かく見ていこう。 |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() ![]() |
![]() |
|||
フォトブラック シアン マゼンタ イエロー グレー |
シアン ライトシアン マゼンタ ライトマゼンダ イエロー |
シアン マゼンタ イエロー |
染料ブラック シアン マゼンタ イエロー |
シアン マゼンタ イエロー |
|||
(挿すだけ満タンインク方式・オフキャリッジ式) |
(挿すだけ満タンインク方式・オフキャリッジ式) |
||||||
(つよインク) ClearChrome K2 Plus |
(つよインク200) |
(アルバム保存300年/耐光性7年/耐オゾン性2年) |
(ChromaLife100) |
(マゼンダに一部染料が含まれる) |
|||
80(標準) |
ハリネズミ(染料) |
380/381(標準容量) 380s/381s(小容量) |
LC3117(標準容量) |
||||
黒:400ノズル |
Y/染料BK:各512ノズル |
||||||
(AdvancedMSDT) |
|||||||
(税別) |
|||||||
標準容量:400ページ 小容量:200ページ |
標準容量:550ページ |
||||||
標準容量:3,180ページ 小容量:940ページ |
|||||||
標準容量:500ページ 小容量:250ページ |
標準容量:550ページ |
||||||
(税別) |
標準容量:1,210円 小容量:920円 |
標準容量:1,200円 |
|||||
標準:680円 |
標準容量:1,030円 小容量:730円 |
||||||
標準:680円 |
標準容量:1,030円 小容量:730円 |
標準容量:1,200円 |
まずはプリントの基本となる画質と速度、印刷コストから見ていこう。インクの色数で言うと、EW-M973A3TとEP-982A3が6色、TR9530が5色、EW-M5610FTとMFC-J5630CDWが4色となる。しかし、プリンターのインクには染料インクと顔料インクがある。染料インクは写真用紙に印刷した際に発色が良く、用紙の光沢感もそのまま出るため綺麗に印刷できるが、普通紙に印刷すると発色が悪く、インクが用紙に染みこむ際に広がるため線が太くなったり、小さい文字や中抜き文字が潰れたりしやすい。顔料インクは普通紙印刷時に表面で定着するためクッキリとした印刷が行え、耐水性も高いが、写真用紙などに印刷すると発色が悪く、紙本来の光沢感も薄れ、半光沢になってしまう。また光沢年賀状をはじめとする一部の光沢紙やフィルム紙、アイロンプリント紙など一部顔料インクが非対応の用紙もある。つまり普通紙なら顔料インクが、普通紙以外の写真用紙やハガキの通信面、ファイン紙などには染料インクが向いていることになる。 染料インクと顔料インクに分けて細かく見ていくと、EP-982A3が染料6色、EW-M973A3Tが染料5色+顔料ブラック、TR9530が染料4色+顔料ブラック、EW-M5610FTが染料3色+顔料ブラック、MFC-J5630CDWが顔料4色となる。まず、写真の印刷画質を見てみよう。写真は染料インクを使用するので、EP-982A3が6色で最も高画質だ。ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色に、ライトシアンとライトマゼンダという色の薄い2色を搭載する。これにより、色の薄い部分での粒状感が低減され、さらに最小インクドロップサイズも1.5plと小さい事もあり、滑らかで綺麗な印刷ができる。コレに近いのがEW-M973A3Tだ。染料インクは5色で、基本4色にグレーインクを搭載する。色の濃い部分をグレーをベースにすることで、粒状感が強くなりがちなブラックインクを使わず表現でき、全体として粒状感が低減されている。最小インクドロップサイズも非公開ながら、海外の同機能のモデルから1.5plと予測されるため、EP-982A3と同等だ。無彩色のインクをベースにするので、EP-982A3よりは色の鮮やかさでやや劣る傾向があるが、比較してみてかろうじて分かる程度の差しかない。一方でEW-M973A3Tが勝る部分があり、モノクロ写真や、カラーでもグレーの部分の表現で、EP-982A3ではカラーインクを使ってグレーを表現するが、そうなると青白くなるなど、色転びしやすくなる。グレーインクを使用できるEW-M973A3Tでは色転びの無いグレーが表現でき、全体として色が安定する。また、アート紙への印刷時に顔料ブラックインクを使用することで、染料インクに比べてコントラストが高い印刷が可能になっている。アート紙は写真作品の印刷に用いられる物で、より高画質に印刷できるのは、メリットとなる人もいるだろう。続いてTR9530が染料4色である。基本の4色だけで、最小インクドロップサイズは非公開ながら2pl程度と言われており、前の2機種より大きくなるため、色の表現力や粒状感の面では一歩劣る。とはいえ、十分高画質で、スナップ写真程度であれば問題ない画質と言える。ここまでの3機種は写真印刷に耐えうる画質だ。 それでは、EW-M5610FTはというと、染料インクは3色しかない。カラー3色のみで染料ブラックを搭載しないため、黒色はカラー3色を重ねて表現する事になる。完全な黒にはならず濃い茶色や濃いグレーにしかならないため、全体にコントラストが低く感じられる他、影部分の表現など、暗い色の中の表現力で劣る。また最小インクドロップサイズ非公開ながら、同機能の海外モデルを参考にすると、3.3plと予測され、EW-M973A3TやEP-982A3の倍以上となる。粒状感の面でも大きく劣ることとなる。あまり写真向けの画質とは言えない。残るMFC-J5630CDWは染料インクを搭載しないため、顔料インクでの写真印刷となる。全色が顔料インクであるためブラックインクを使用できるとはいえ、全体に発色が悪く、用紙の光沢感も薄くなってしまう。最小インクドロップサイズは1.5plと小さいため粒状感の面では比較的マシだが、そもそも顔料インクでは、写真らしい印刷にならない。写真印刷用途には向かないと言えるだろう。 ちなみに、インクの耐保存性の面でも違いがある。EW-M973A3Tは「つよインク」、とEP-982A3は「つよインク200」と名称は異なるが、アルバム保存300年、耐光性50年、耐オゾン性10年となっており、耐保存性は非常に高い。さすが、写真印刷向けの機種と言える。それに対して、EW-M5610FTはアルバム保存は300年で同等だが、耐光性は7年、耐オゾン性は2年と劣るため、飾って置いた場合の色あせが早い事が考えられる。TR9530は「ChromaLife100」でアルバム保存100年をうたっているが、耐光性等はうたわれておらず、写真印刷に耐えうる画質ながら、耐保存性はEW-M973A3TやEP-982A3に劣るのは残念だ。MFC-J5630CDWは耐保存性に関しては特にうたわれていない。 一方、文書の印刷画質(普通紙への印刷画質)では顔料インクが重要になる。EP-982A3は全色染料インクであるため、普通紙印刷の画質は並だ。それに対して、EW-M973A3T、EW-M5610FT、TR9530は顔料ブラックを搭載しているため、ブラックインクを使用する部分に限ってだが、普通紙に高画質印刷が行える。黒と言っても、完全な黒ではないグレーの部分には染料のグレーやカラーインクを混ぜて作る場合があるし、背景色があるなどカラーの中に混ざっている場合も染料ブラックや染料カラーが使われる場合もあるなど、必ずしも顔料インクの恩恵を受けられるわけではないが、コピーや文書印刷では全体的に引き締まった印象となるのは確かだ。EP-982A3も、細線強調機能や文字くっきり機能を搭載し、普通紙では苦手な写真も色鮮やかになるようドライバーレベルで文書印刷画質を高めているため、染料インクとしては高画質で、ある程度差は縮まっているが、やはりこれら3機種の方が高画質だ。そして、MFC-J5630CDWは全色顔料インクを採用しているため、カラー、モノクロ問わず、クッキリとして耐水性の高い印刷が行える。家庭内でのコピーや文書印刷時に文字がクッキリしていて見やすい程度であれば、ブラックインクだけ顔料インクでも十分だが、本格的な文書印刷やビジネス利用では、やはり全色顔料インクが望ましいだろう。EW-M973A3Tはグレーインクを搭載しているため、文書内の写真やグラフでの粒状感がMFC-J5630CDWより抑えられる可能性はあるが、やはり、MFC-J5630CDWが最も高画質だ。どちらかと言えば、EW-M5610FTはMFC-J5630CDWには無い普通紙印刷向けの機能が搭載されている。それがPrecisionCoreプリントヘッドで、普通紙印刷時の解像度を600dpiに高めているのが特徴だ。そのため、顔料ブラックを使う黒文字や罫線、図面などで、小さな文字や細かな部分もより潰れずに表現できる。この点においてはMFC-J5630CDWも上回る。 印刷速度を見てみよう。写真の印刷速度はEP-982A3が最も早く13秒、次いでTR9530の18秒、EW-M973A3Tの19秒となる。多少の差はあるが、写真印刷向けの機種だけに非常に高速でストレスは無い。残る2機種は印刷速度が公表されていないが、EW-M5610FTはほぼ同じプリント機能のA4プリント機であるEW-M670FTが75秒であるため、EW-M5610FTもそれに近いと思われる。一方、文書の印刷速度は、最も高速なのがMFC-J5630CDWでA4カラー文書が20ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、モノクロが22ipmである。他機種に比べて圧倒的に早く、特に遅くなりがちなカラープリントも高速だ。さすが文書向けの機種といえる。EW-M973A3Tはカラー12.0ipm、モノクロ16.0ipm、EW-M5610FTは9.0ipmと17.0ipm、TR9530が10ipmと15ipmで大きな差は無い。EW-M973A3Tがどちらも高速だが、モノクロプリントならEW-M5610FTの方が高速だ。また、写真印刷では遅い(と予想される)EW-M5610FTだが、文書印刷に関しては十分高速だ。MFC-J5630CDWが高速ではあるが、他の3機種も十分なレベルで、よほど印刷速度にこだわらなければストレス無く使えるだろう。EP-982A3は文書印刷速度は非公開である。 印刷コストを見る前に、インク方式を見ておこう。EP-982A3、TR9530、MFC-J5630CDWは従来通りのインクカートリッジ方式だ。インクが無くなったらインクカートリッジごと交換となる。カートリッジは各色独立しておりなくなった色だけ交換できる。一方、EW-M973A3TとEW-M5610FTはいずれもエコタンク方式だ。本体にインクタンクが内臓されており、インクボトルを購入して、タンクに補充する。第2世代ともいうべき、「挿すだけ満タンインク方式」となっており、ボトルを注入口に挿すと注入が始まり、満タンで自動ストップする。注入口とボトル先端の形状が色ごとに変えてあるため、間違ったタンクに注入する危険性も無い。一見するとボトルから補充と言うと大変そうに感じられるが、実際の手間はカートリッジ方式と変わらないレベルだ。このカートリッジ方式かタンク方式かが印刷コストに大きく影響する。 印刷コストを見ると、L版フチなし写真の場合、EW-M973A3Tが6.9円、EP-982A3が20.6円、TR9530が17.3円となる。これには写真用紙代約4.3円が含まれているため、インク代だけで見ると、2.6円、16.3円、13.0円となる。EW-M973A3Tの安さが際立つ結果だ。EP-982A3Tと比べて6分の1以下、TR9530と比べても5分の1となる。ちなみに、EP-982A3やTR9530の印刷コスト高く見えるが、カートリッジ方式としては標準的である。EW-M5610FTとMFC-J5630CDWは写真の印刷コストは非公開だが、EW-M5610FTに関してはほぼ同じプリント機能のA4プリント機であるEW-M670FTが5.9円であるため、EW-M5610FTもそれに近いと思われ、EW-M973A3Tよりさらに低印刷コストになる。 カラー文書の印刷コストでも、EW-M973A3Tが1.6円、EP-982A3が12.2円、EW-M5610FTが0.9円、TR9530が9.6円、MFC-J5630CDWが6.0円となる。やはりエコタンク方式のEW-M973A3TとEW-M5610FT、特にEW-M5610FTの安さが際立っている。MFC-J5630CDWはカートリッジ方式にしては安価な方で、EP-982A3の約半分となっているが、それでもEW-M973A3Tは約4分の1、EW-M5610FTは約7分の1と圧倒的だ。モノクロ文書に関しても、差は多少縮まるが、やはりエコタンク方式の2機種が圧倒的に安い。印刷枚数が多いなら、この印刷コストの差は無視できない差である。 この差の要因はインクの価格とインク1本での印刷枚数だ。カートリッジ方式のEP-982A3では、一般的に使われる増量インクで1本1,260円、6色買うとで7,580円となる。TR9530では、一般的に使われる標準容量なら顔料ブラックが1,210円、染料ブラックとカラーが各1,030円で、5色買うとで5,330円である。それに対してエコタンク方式はインクボトル1本でインクタンクがちょうど満タンになるが、EW-M973A3Tでは各1,860円で、6色買うと11.160円と、同じ6色のEP-982A3と比べても高めだ。EW-M5610FTはブラックが2,150円、カラーが各1,150円で、4色買うと5,600円だが、4色の割には高いと言えるだろう。しかし印刷可能枚数に大きな差がある。A4カラー文書を印刷した場合、それぞれのインクが何枚印刷できるかを比較してみると、TR9530は標準容量カートリッジで、顔料ブラックインクは400ページ、カラーインクは約500ページ印刷が出来る(染料ブラックは文書印刷にはあまり使用しないので約3,180ページと多くなっている)。EP-982A3は印刷可能枚数は公表されていないが、インクの価格を印刷コストで割ると、増量インクでA4カラー文書が平均620ページ印刷できる計算となる。それに対して、EW-M973A3Tの場合、顔料ブラックは6,700ページ、染料ブラックは7,300ページ、カラーインクは各6,200ページも印刷が可能だ。EW-M5610FTも顔料ブラックは7,500ページ、カラーインクは各6,000ページでほぼ同等だ。インクカートリッジの価格はEP-982A3やTR9530と比べるとやや高いが、印刷できる枚数が圧倒的に多いことから、1枚あたりの印刷コストは非常に安くなると言う計算だ。EW-M973A3TやEW-M5610FTは印刷枚数が非常に多い人に向いた構成と言えるだろう。残るMFC-J5630CDWは大容量タイプで、顔料ブラックが3,000ページ、カラーが1,500ページと、同じカートリッジ方式ながら、EP-982A3やTR9530より印刷枚数がかなり多くなっている。価格はブラックが4,500円、カラーが各2,200円で、4色買うと11,100円となり、EP-982A3やTR9530より高いが、印刷枚数の差ほど高くないため、印刷コストは安くなる。エコタンク方式ほどでは無いが印刷枚数が多い人向けだ。これを見ると、インク1セットで印刷できる枚数が多くなるほど印刷コストが下がる傾向にある事が分かる。印刷枚数が少ない人は、印刷コストだけに注視していると、インク1セットを使い切れずに、結局高く付いてしまう事もあり得る。使い方によっては、印刷コストより、インクそのものの価格や本体価格を重視した方が良い場合もあるだろう。 |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
|||
(セット可能枚数(普通紙/ハガキ/写真用紙)) |
A3ノビ以下 (50枚/20枚/20枚) (0.6mm厚紙対応) |
手差し・A3以下 (1枚/1枚/1枚) (0.6mm厚紙対応) |
A3ノビ以下 (20枚・1枚・1枚) |
A3以下 (100枚/40枚/20枚) (A3は50枚まで) |
A3以下 (100枚/50枚/20枚) (0.52mm厚対応) |
||
L判〜A4 (100枚/40枚/20枚) 【カセット上段】 2L/B6以下 (20枚/20枚/20枚) |
L判〜A4 (100枚/40枚/20枚) 【カセット上段】 2L/B6以下 (−/20枚/20枚) |
L判〜A4 (250枚/30枚/20枚) |
A4以下・普通紙のみ (100枚/−/−/) |
A3以下 (250枚/30枚/20枚) |
|||
手差しストレート給紙 (1枚/1枚/1枚) (A3ノビ・1.3mm厚紙対応) |
|||||||
続いて給紙・排紙関連の機能を見てみよう。5機種ともA3プリント対応と言うことで比較しているが、実は最大サイズに違いがある。EP-982A3、TR9530、MFC-J5630CDWはA3までだが、EW-M973A3TとEW-M5610FTはA3ノビに対応する。A3は297×420mmなのに対して、A3ノビは329×483mmであり、一回り大きな用紙に印刷できるのはメリットだ。一方、最小サイズはEP-982A3とMFC-J5630CDWはL判までだが、EW-M973A3T、EW-M5610FT、TR9530はより小さな名刺サイズに対応する。少量の名刺やフチなしデザインの名刺の作成に重宝するだろう。また、長尺用紙という点では、EW-M973A3Tは2,000mm(2m)まで、EP-982A3とEW-M5610FTも1,200mm(1.2m)まで対応しており、大型POPや垂れ幕、横断幕の印刷に重宝する。それに対してTR9530は676mmまでとA3の1.5倍程度、MFC-J5630CDWは431.8mmまででほぼA3サイズまでしか対応しない。 5機種とも前面給紙と背面給紙の両方に対応しているが、細かく見るとその機能には違いがある。前面給紙は5機種ともカセット式だ。用紙をセットしたままでもホコリが積もりにくく、常時セットしておくのに向いている。EW-M973A3TとEP-982A3はカセットが2段となっており、上段が2L/B6以下の用紙、下段はA4以下となる。上段にL判写真用紙やハガキ、下段にA4普通紙と言った風に2種類の用紙を同時にセットして使い分けが出来るため便利だ。上段はハガキ、写真用紙なら20枚まで、下段は普通紙を100枚までセットできるが、下段にハガキや写真用紙をセットする事も可能だ。その場合ハガキは40枚、写真用紙は20枚までセットでき、上下段を連続で使用する事もできるので、ハガキは60枚、写真用紙は40枚まで交換無しで印刷できる。大量印刷の際に便利だろう。それに対して、EW-M5610FT、TR9530、MFC-J5630CDWのカセットは1段だ。異なる用紙を使用する場合は交換するか、背面給紙を利用する事になり、その点では不便だ。ただEW-M5610FTとMFC-J5630CDWは文書印刷向けだけあって、前面給紙カセットに普通紙を250枚までセットできるため大量印刷も行え、これはEW-M973A3TやEP-982A3に対するメリットだ。ハガキは30枚、写真用紙は20枚で特に多いわけではない。それに対して、TR9530は100枚となるだけでなく、普通紙のみの対応となる点は注意が必要だ。普通紙以外のハガキや写真用紙、ファイン紙などはすべて背面給紙となる。普通紙以外を常時セットしておきたい場合は、不便と言える。また、5機種ともA3またはA3ノビに対応しているが、前面給紙カセットにA3/B4用紙をセットできるのはMFC-J5630CDWだけだ。残る4機種はA4までで、A3/B4用紙は背面からとなる。MFC-J5630CDWもA3/B4用紙をセットする場合はカセットを伸ばす必要があり、前に飛び出すが、常時セットしておけるという点で、A3/B4用紙をメインで使用する場合は非常に便利だ。 では、背面給紙というと、EP-982A3以外は手差し給紙、EW-M5610FTは簡易的なトレイ式、残る3機種は通常のトレイ式だ。EP-982A3の手差し給紙は1枚ずつしかセットできず、複数枚セットするとエラーとなる。前面給紙カセットにセットした用紙以外を数枚印刷したい場合や、前面給紙からでは扱いにくい厚紙や封筒などの印刷に利用する形となるだろう。A3/B4用紙も1枚ずつとなるため、大量印刷には向かない。それに対してトレイ式は複数枚の用紙をセットできるため便利だ。EW-M973A3Tなら普通紙を50枚まで、TR9530とMFC-J5630CDWなら100枚までセットできるため(TR9530はA3用紙は50枚まで)、A3/B4用紙への大量印刷にも対応できる(MFC-J5630CDWは前面給紙カセットにもセットできるが)。ハガキもEW-M973A3Tなら20枚まで、TR9530は40枚まで、MFC-J5630CDWは50枚までセットできる。EW-M5610FTは簡易的なので、普通紙は20枚まで連続給紙でき、A3/B4用紙もある程度使いやすいが、ハガキや写真用紙は1枚ずつとなる。ちなみに、厚みに関しては、一般的な背面給紙の場合、0.3mm厚程度までとなるが、EW-M973A3TとEP-982A3は倍の0.6mm厚、MFC-J5630CDWも0.52mm厚まで対応しており、通常より厚い紙でも印刷できる。例えばアート紙(例えばエプソンのVelvet Fine ArtPaperは0.48mm)の印刷に重宝する。ちなみに、写真店に依頼した場合のような写真貼り合わせの年賀状の宛名面印刷はEW-M973A3TとEP-982A3のみ正式対応している。さらに、EW-M973A3Tは手差しストレート給紙にも対応する。レーベル印刷用のトレイの通り道を、背面から挿し込んで利用できるようにしたもので、1.3mm厚の用紙まで対応できる。背面ユニットを取り外し、そこに取り付けられている手差しユニットを外して本体にセットする必要があり、また背面から用紙をまっすぐに挿し込めるスペースがいるなど、手間はかかるが、従来の一般的なプリンターでは不可能な厚さに対応できるのは、いざという時便利だろう。 複雑なのでまとめると、EW-M973A3Tは前面2段+背面トレイ+手差しストレート、EP-982A3は前面2段+背面手差し、EW-M5610FTは前面1段+背面簡易トレイ、TR9530は前面1段(普通紙のみ)+背面トレイ、MFC-J5630CDWは前面1段+背面トレイとなる。一度にセット可能な枚数で見ると、A4普通紙はEW-M973A3Tが150枚(前面下段100枚+背面50枚)、EP-982A3が100枚(前面100枚のみ・背面給紙は手差しなので除く)、EW-M5610FTが270枚(前面250枚+背面20枚)、TR9530が200枚(前面100枚+背面100枚)、MFC-J5630CDWが350枚(前面250枚+背面100枚)と、MFC-J5630CDWが有利だ。またA3普通紙だと、EW-M973A3Tが50枚、EP-982A3が1枚、EW-M5610FTが20枚、TR9530が50枚、MFC-J5630CDWが350枚(前面250枚+背面100枚)と、MFC-J5630CDWが圧倒的だ。ハガキはEW-M973A3Tが80枚(前面上段20枚+下段40枚+背面20枚)、EP-982A3が60枚(前面上段20枚+下段40枚・背面給紙は手差しなので除く)、EW-M5610FTが31枚(前面30枚+背面1枚)、TR9530が40枚(背面40枚のみ)、MFC-J5630CDWが80枚(前面30枚+背面50枚)と、こちらはEW-M973A3TとMFC-J5630CDWが有利だ。写真用紙もそれぞれ60枚、40枚、21枚、20枚、40枚と、EW-M973A3Tが便利だ。普通紙への印刷が多いならMFC-J5630CDWかEW-M5610FTが、ハガキならEW-M973A3TとMFC-J5630CDWが、写真用紙への印刷が多いならEW-M973A3Tが便利だ。 EW-M973A3TとEP-982A3は印刷時に自動的に排紙トレイが伸張される機能を搭載する。後述の自動電源オン機能と組み合わせると非常に便利だ。電源を切るときは自動的に排紙トレイが収納される。また、EP-982A3は排紙トレイが伸張する際に、排紙トレイに当たる操作パネル部分は少し持ち上がるが、電源を消ると操作パネルも閉じられる。。 5機種とも用紙の種類とサイズを登録しておく機能が搭載されている。液晶ディスプレイでメニューから登録も可能だが、前面給紙カセットはカセットを挿し込むと、背面給紙はEW-M5610FTとMFC-J5630CDWは用紙を挿し込むと、TR9530は給紙口カバーを閉じると自動的に登録画面が表示されるため便利だ(されないようにもできる)。この登録内容と、印刷時の用紙設定が異なっている場合、メッセージが表示される仕組みだ。また、EP-982A3とEW-M5610FTは印刷時に実際の用紙幅をセンサーでチェックする機能もあり、用紙外にインクを打ってしまい、プリンター内部が汚れるのを防ぐ事ができるなど工夫がなされている。 |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
|||
印刷速度 |
|||||||
その他のプリント関連機能を見てみよう。5機種とも自動両面印刷を備えている。ただし、最大サイズはA4までで、A3やB4用紙の自動両面印刷はできない。対応用紙は普通紙とハガキとなるが、EW-M973A3TとEP-982A3はファイン紙への両面印刷にも対応している。普通紙では両面印刷時に裏移りが気になるほか、画質もそれほど良くない。ファイン紙なら、各社から両面印刷に対応した物が発売されており、裏移りが軽減されているほか、印刷品質も良くなるため、綺麗な両面印刷を行う場合はこちらが便利だが、EW-M973A3TとEP-982A3以外は手動で片面ずつ印刷するしか無い。ファイン紙への両面印刷を考えている人にはこれら2機種は便利だ。 また、EW-M973A3T、EP-982A3、TR9530の3機種はCD/DVD/BDレーベルの印刷も行える。TR9530はレーベル印刷用挿し込み口を利用したネイル印刷にも対応する。写真の自動補正機能としてはエプソンの3機種は「オートフォトファイン!EX」、TR9530は「自動写真補正」という機能を搭載しており、両機能とも逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われる。もちろんパソコンからの印刷時だけでなく、後述のダイレクト印刷時や写真のコピー時にも利用できる(いずれも対応機種のみ)。 自動電源オン機能はEW-M973A3T、EP-982A3、TR9530の3機種とも搭載している。パソコンやスマートフォンから印刷が実行されると自動的に電源がオンになる機能だ。その際EW-M973A3TとEP-982A3は排紙トレイも自動で伸張する。用紙はあらかじめカセットにセットしておけることから、プリンターの前に行くことなく印刷が実行でき、印刷が完了した頃に取りに行くだけとなる。最近はスマートフォンや離れたところに置いているパソコンから印刷する機会も増えているため、非常に便利だ。ただしTR9530は前述の排紙トレイの自動オープン機能がないため、トレイを引き出してやらないと印刷は実行されない点は注意が必要だ。自動電源オフ機能は、これら3機種に加えてEW-M5610FTも対応しており、指定した時間操作が無いと、自動的に電源がオフになる。その際、EW-M973A3TとEP-982A3は排紙トレイも収納される。 EW-M973A3TとEP-982A3、EW-M5610FTが搭載しているのが、廃インクタンク(メンテナンスボックス)をユーザーが交換できる機能だ。廃インクタンクはクリーニングの際に排出されるインクを貯めておくタンクで、TR9530とMFC-J5630CDWでは満タンになるとメッセージが表示され修理に出して交換するまで一切のプリントが止まってしまう。一方、EW-M973A3T、EP-982A3、EW-M5610FTはインクカートリッジなどと一緒に交換用メンテナンスボックスが売られており(EW-M973A3T用は2,380円、EP-982A3用は980円、EW-M5610FT用は1,800円)、交換すれば印刷が再開できる。安くすむだけでなく、プリンターが手元に無い期間が無くなるため便利だ。さらに、これら3機種はフチなし吸収材が満タンになったときも、便利になっている。フチなし印刷時は、用紙サイズピッタリに印刷すると用紙の微妙なズレによってフチができてしまうため、少し大きめにプリントして、はみ出した部分はフチなし吸収材に吸収させる方法となっている。このフチなし吸収材が満タンになると、TR9530とMFC-J5630CDWではプリントが完全に止まってしまうが、EW-M973A3T、EP-982A3、EW-M5610FTはフチあり印刷に関しては継続ができるようになっているのである。急ぎのプリントを行っておいて、余裕のあるときに修理に出せるため便利な機能だ。 |
|
|||||||
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
|||
(216×356mm) |
(216×297mm) |
(216×356mm) |
(216×297mm) |
||||
(1200×4800dpi) |
(1200×4800dpi) |
(1200×2400dpi) |
(1200×2400dpi) |
(1200×2400dpi) (ADFは600×600dpi) |
|||
長尺900mmm対応 |
|||||||
続いて、スキャナー部を見てみよう。最大スキャンサイズは基本的には5機種ともA4(216×297mm)となっているが、EW-M973A3TとEW-M5610FTは、リーガルサイズ(216×356mm)までスキャンが可能となっている。A3ノビ/A3プリント対応とすると、どうしても本体の横幅は大きくなるが、かといってA3スキャナーを搭載できるほど奥行きはない。そこで日本ではなじみは薄いものの、リーガルサイズまでの対応とすることで、本体の大きさを無駄なく使ったスキャナーとなっているのである。また、読み取りセンサーは短辺の216mm幅のもので従来と変わらず、センサーの移動方向だけ伸ばす事で、最低限のコストアップで実現できているといえる。A4より少しだけ長い原稿や、3つ折りの冊子を開いてスキャンするなど、重宝する場面もあるだろう。 読み取り解像度は全機種が1200dpiだが、EW-M973A3TとEP-982A3は1200×4800dpi、残る3機種は1200×2400dpiと微妙に異なる。センサーの読み取り解像度(主走査)は1200dpiで同じだが、センサーの移動方向の精度(副走査)を2400dpiとする機種と4800dpiとする機種があるだけで、実際には大きく変わらない。また、カートリッジ方式の機種では2400dpiの機種もあるため、それと比べるとやや劣るように見える。しかし、実際は紙などの反射原稿しかスキャンできないため、一般的に文書なら200〜300dpi、写真でも300〜600dpiで、よほどキレイに取り込みたい場合でも1200dpiがせいぜいだ。実際、L判写真を1200dpiでスキャンすると4,200×6,000ドットとなり、2500万画素相当となるため、十分高画質だ。実用上は問題ないだろう。いずれもCIS方式で、厚い本の綴じ目近くなど、ガラス面から浮いてしまう原稿ではピントが合わなくなってしまう点は注意が必要だ。 また、EW-M5610FT、TR9530、MFC-J5630CDWの3機種はADFを搭載している。原稿を連続で読み取ることが出来る機能で、EW-M5610FTは35枚、TR9530は20枚、MFC-J5630CDWは30枚まで一度にセットできる。片面読み取りではあるが、スキャンやコピー時に重宝するだろう。なおMFC-J5630CDWは、ADF使用時は最大600×600dpiとなる一方、長尺読み取りとする事で長さ900mmまでのスキャンが可能だ。 EW-M973A3T、EP-982A3、MFC-J5630CDWの3機種はスキャンした原稿をパソコンを使わずにメモリーカードに保存する機能を搭載しているためパソコン無しで簡単にスキャンができる。一方、EP-982A3、TR9530、MFC-J5630CDWは原稿を取り忘れた際のアラーム機能も搭載しているなど、細かい点で工夫がなされている。 |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
|||
メモリーカードリーダー対応 |
メモリーカードリーダー対応 |
||||||
(外付けHDD/外付けDVDドライブ対応) |
(外付けHDD/外付けDVDドライブ対応) |
||||||
フチなし/フチあり(フチ4種類・フチ太さ3〜39mm) 赤目補正 明るさ調整(+4〜-4) コントラスト調整(+4〜-4) シャープネス調整(3段階) 鮮やかさ調整(+4〜-4) 色調補正(RGB独立・+4〜-4) フィルター(モノクロ/セピア/レトロ調/ハイキー/デイドリーム/トイフォト/ポップ/クロスプロセス) 色補正一覧印刷 編集した写真の別名保存 |
フチなし/フチあり(フチ4書類・フチ太さ4段階) 赤目補正 色調補正(RGB独立 +4〜-4) 明るさ調整(+4〜-4) コントラスト調整(+4〜-4) シャープネス調整(+4〜-4) 鮮やかさ(+4〜-4) フィルター(モノクロ/セピア/レトロ調/ハイキー/デイドリーム/トイフォト/ポップ/クロスプロセス) 編集した写真の別名保存 |
フチなし/フチあり 赤目補正 |
明るさ補正(5段階) コントラスト補正(5段階) |
||||
フォーム印刷(カレンダー・罫線・マス目・便箋・スケジュール帳・五線譜・メッセージカード) デザインペーパー 証明写真印刷 シール印刷 フォトブック印刷 写真コラージュ ディスクレーベル印刷 CDジャケット印刷 |
フォーム印刷(カレンダー・罫線・マス目・便箋・スケジュール帳・五線譜・メッセージカード) デザインペーパー 証明写真印刷 シール印刷 フォトブック印刷 写真コラージュ ディスクレーベル印刷 CDジャケット印刷 |
定型フォーム印刷(レポート用紙、原稿用紙/スケジュール用紙、方眼紙、チェックリスト、五線譜、漢字練習帳) 組み込みパターンペーパー ディスクレーベル印刷 |
ダイレクト印刷は、EW-M5610FTを除く4機種が搭載している。EW-M973A3TとEP-982A3はSDカードリーダーとUSBポートを搭載しているため、SDカードやUSBメモリーからの写真印刷に対応している。またこのUSBポートは、外付けハードディスクや外付けDVDドライブにも対応しているため、これらからの印刷が行える。さらにメモリーカードリーダーにも対応しているので、SDカード以外のメモリーカードを利用したい場合でも、パソコン用のカードリーダーを用意すれば可能だ。EP-982A3は赤外線通信にも対応し、ガラケーからの写真印刷にも対応する。一方、TR9530はSDカードリーダーのみを搭載している。逆にMFC-J5630CDWはUSBポートのみ搭載している。メモリカードリーダーなどには非対応なので、USBメモリーのみの対応となる。なお、いずれもJPEG形式(TR9530はTIFF形式も)の対応で、PDFなどの印刷はできない。あくまで写真の印刷用となる。 ダイレクト印刷時にフチあり、フチなしなどを選べる点は4機種とも同じだが、それ以外の補正機能には大きな違いがある。機能が少ないのはTR9530とMFC-J5630CDWだ。TR9530は写真の一部を拡大して印刷するトリミングと赤目補正のみ対応で、色の補正などは「自動写真補正」機能任せとなる。一方MFC-J5630CDWは、明るさ調整(5段階)とコントラスト調整(5段階)は可能だが、トリミング機能には対応しない。 それに対して、EW-M973A3TとEP-982A3は機能が豊富だ。フチあり、フチなしについては一般的なフチなし、フチあり(白フチ)だけでなく黒フチも選べる他、写真の周囲にフチの色とは逆の細い枠線の入った黒枠付きの白フチ、白枠付きの黒フチも選べる。フチの太さもEP-982A3は 4段階から選べ、EW-M973A3Tに至っては3〜39mmの間で1mm単位で調整が可能である。写真の一部を拡大するトリミングや赤目補正の他、「作品印刷機能」と呼ぶ機能を搭載しており、「明るさ」「コントラスト」「シャープネス」「鮮やかさ」を+4から-4の9段階で調整が可能だ(シャープネスは3段階)。「オートフォトファイン!EX」も搭載するため自動でもかなり高精度に補正されるが、手動でかなり好みの色に調整が可能だ。さらにフィルターも「レトロ」「セピア」「トイフォト」「ハイキー」「ポップ」「デイドリーム」「モノクロ」「クロスプロセス」といった8種類を用意している。さらにEW-M973A3Tでは、レッド、グリーン、ブルーのそれぞれの色調も9段階で調整できるため、かなり高度に調整できる。また、液晶画面上での調整では印刷時に異なる場合があるため、選んだ写真の色補正一覧を印刷し、その中から好みの物を選ぶことができる機能も備えるなど、「写真作品」を印刷できるほどまで機能豊富だ。また、EW-M973A3TとEP-982A3は作り込んだ写真を、別名でメモリーカードに保存できるのもアドバンテージだ。この2機種はSDカードからUSBメモリーや外付けハードディスクへ写真をバックアップすることも可能だ。SDカードから写真印刷、そして写真のバックアップ、バックアップ先からの写真印刷、写真の色補正までがパソコン無しで行える事になる。 手書きの文字やイラストと写真を合成して印刷できる「手書き合成シート」はEW-M973A3T、EP-982A3、TR9530が対応している。TR9530は写真やハガキだけでなくCD/DVD/Blu-rayレーベルの手書き合成にも対応している。その他EW-M973A3TとEP-982A3は塗り絵風の輪郭だけの印刷や、罫線、マス目、便箋、スケジュール帳、五線譜、メッセージカードなどが印刷できるフォーム印刷機能、ラッピングやブックカバーなどに使える全面模様の用紙を印刷できる「デザインペーパー印刷」、3種類の証明写真サイズの写真印刷ができる「証明写真印刷」機能、ラベル用紙に印刷して複数面のシールにできる「シール印刷」、写真を1〜数枚並べたフォトブックを印刷する機能、背景柄や複数の写真を組み合わせられる「写真コラージュ」機能の他、写真を1枚又は複数枚並べてディスクのレーベル面に印刷できる機能やCDジャケットを作成できる機能を搭載する。単体で様々な印刷が可能だ。一方TR9530も写真をはめ込んだ「カレンダー印刷」機能や、レポート用紙、原稿用紙、スケジュール帳、方眼紙、チェックリスト、五線譜、漢字練習帳が印刷できる「定型フォーム印刷」、ディスクレーベルに印刷する機能を搭載している。EW-M5610FTとMFC-J5630CDWはこういった機能は一切搭載してない。 以上からダイレクト印刷機能はEW-M973A3Tが圧倒的に豊富で、EP-982A3も近い機能を搭載している一方、TR9530とMFC-J5630CDWは基本的な機能のみ搭載と言った感じだ。 |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
|||
Epson Smart Panel Epson Print Layout |
EPSON Smart Panel |
EPSON Smart Panel |
|||||
Android 5.0以降 (Epson Smart Panel使用時のiOSは11.0以降/Epson Print Layout使用時はiOS 13.0以降・Android非対応) |
Android 5.0以降 (EPSON Smart Panel使用時のiOSは11.0以降) |
Android 5.0以降 |
Android 4.4以降 (Bluetooth対応) |
Android 4.0.3以降 |
|||
(OneDriveはアプリからのみ) |
(OneDriveはアプリからのみ) |
(OneDriveはアプリからのみ) |
(OneDriveはアプリからのみ) |
||||
本体でプリント操作が必要 |
|||||||
スマートフォン・クラウド対応機能を見てみよう。iOSとAndroid端末に対応している。いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることでプリント又はスキャンが行える。メインで使用すると思われる写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。さらにドキュメント印刷にも対応している。PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もでき便利だ。また、スマートフォン上からスキャンを実行し、データーをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。新聞や雑誌、手書きの情報などをスマートフォンに電子化するといった使い方ができるため便利だろう。なお、iPhoneやiPadの場合、AirPrintを利用したプリントも可能だ。また、EW-M973A3Tは通常のEpson Smart Panelの他、プロ向けのプリンター用に提供される、より高度な写真印刷が行えるアプリ「Epson Print Layout」も利用可能だ。 スマートフォンとの接続は、無線LAN(Wi-Fi)で行うが、無線LANルーターを経由する方法と、ダイレクトに接続する「Wi-Fiダイレクト」(TR9530の名称はダイレクト接続)が選べる。無線LANルーターを経由する方が、機能面でも制限が無く、印刷する度にプリンターと接続と切断を繰り返すのWi-Fiダイレクトと比べると便利なので、こちらを利用するのがお勧めだが、無線LANルーターが無い環境で使用する場合や、一時的に同じネットワークに入っていない他人にプリンターを使わせる場合にWi-Fiダイレクトは便利だ。Wi-Fiダイレクトの接続設定は手動でもそれほど難しくは無いが、MFC-J5630CDWを除く4機種は、接続支援機能が提供される。iOSの場合はエプソンの3機種は、本体の液晶に表示されるQRコードを標準カメラアプリで読み込めば接続が完了する。セキュリティーキーの入力などは不要で、非常に簡単になっている。TR9530はiOSの場合は従来通りWi-Fi設定からSSIDを選択し、セキュリティーキーの入力が必要だ。一方、Androidの場合は、エプソンの3機種はスマホアプリ上の一覧からプリンター選ぶと、本体の液晶にメッセージが表示されるので接続の許可を選べば接続が完了する。こちらも、セキュリティーキーの入力などが不要だ。一方、TR9530はBluetoothを用いた接続支援機能が搭載される。とはいえ、Bluetoothで直接印刷データーを送信するのではなく、接続自体はWi-Fiだが、あらかじめBluetoothでペアリングしておけば、Wi-Fiダイレクトの設定が簡単に行えるというものだ。しかし、エプソンの3機種と比べるとと事前にペアリング設定が必要なため使い勝手は劣るためか、本体とスマホ用アプリ上の両方で設定メニューはかなり奥にあり、メーカー側でも積極的に機能を薦めているわけではない。Wi-Fiダイレクトの接続はエプソンの3機種が便利だと言えるだろう。 さらに、EW-M973A3Tにはスマホからプリンターの初期設定を簡単に行える機能も搭載する。アプリ上で「新規セットアップ」を選択し、初期設定を行っていないEW-M973A3Tの電源をオンにすると、EW-M973A3Tが一覧に表示される。これを選ぶとBluetooth LEを使用してEW-M973A3Tに自動接続される。そして、設置からインクの補充方法などを対話形式でスマートフォン上で案内し、最後にEW-M973A3Tをスマートフォンと同じネットワークのWi-Fiに接続して終了となる。インクの補充などの手順が非常に分かりやすいほか、自動的にネットワークの設定まで行われるので、初期設定のハードルは5機種中最も低いと言える。 また、MFC-J5630CDWを除く4機種はスマートスピーカーに対応している。AlexaとGoogleアシスタント対応端末に対応しており、声だけでテンプレートを印刷させることができる。TR9530はLINE Clova対応端末にも対応している。エプソンの3機種は、デザインペーパー、フォトプロップス、カレンダー、ノート、方眼紙、五線譜などのエプソン独自のものと、Alexaに登録された買い物リスト、やることリストなどとなる。TR9530はナンプレ、ぬりえ、レポート用紙、チェックリスト、五線譜などキャノン独自のものと、プリンターの状態の確認が行える。 さらに、クラウドとの連携機能も5機種とも搭載している。プリントの場合、オンラインストレージにアクセスし、ファイルを印刷が可能である。また、MFC-J5630CDW以外の4機種は、SNSの写真をコメント付きで印刷する事ができる。またTR9530は写真共有サイトからの印刷も可能だ。ここで大きな違いは、エプソンの3機種はスマートフォンのアプリとして搭載しているのに対して、TR9530とMFC-J5630CDWはスマートフォン上だけでなくプリンター本体の操作でもクラウドにアクセスし印刷ができる点が上げられる。実際の操作性はスマートフォンからの方が上だが、本体だけで手軽にアクセスできる方法と、操作性が良いアプリ上で行う方法が選べるという点ではTR9530とMFC-J5630CDWが便利だ。一方、スキャンの場合、スキャンしてオンラインストレージへアップロードできる。こちらはプリントとは異なり、5機種とも本体の操作でアップロードまで行うことも、スマートフォンからスキャンしてアップロードすることもできる。アプリをわざわざ立ち上げなくても、サッとスキャンしてアップロードできるため便利だ。 さらにネットワークを利用したプリント機能として、エプソンの3機種は、印刷したい写真や文書を添付してこれらの機種にメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、LINE上でプリンターを友達登録し、トーク画面から写真を送信すると印刷される「LINEからプリント」、スキャンして離れた場所の対応複合機で印刷できる「メールdeリモート印刷」、パソコンやスマートフォンから通常のプリントと同じ操作で、外出先など離れた場所から自宅のこれらの機種で印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。一方のTR9530はLINEのトーク画面から印刷する「PIXUSトークプリント」のみ対応している。MFC-J5630CDWはエプソンのメールプリントに似た「メール添付印刷」機能を搭載するが、メール本文のプリントには対応していない他、エプソンの3機種はメールが届くと自動的にプリントされるのに対して、MFC-J5630CDWは本体操作で送信元を選択しないとプリントされない点では手間がかかる。リモートプリント機能はエプソンの3機種の方が豊富だと言える。 |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
|||
濃度調整 背景除去機能 鮮やかさ調整 色調調整(レッド・グリーン・ブルー個別) 色相調整 |
濃度調整 背景除去機能 コントラスト調整 鮮やかさ調整 色調補正(レッド・グリーン・ブルー個別) シャープネス調整 色相調整 |
濃度調整 |
地色除去コピー 裏写り除去コピー インク節約モードコピー |
||||
IDコピー ミラーコピー 塗り絵コピー リピートコピー A3原稿二つ折りコピー |
IDコピー ミラーコピー 塗り絵コピー リピートコピー A3原稿二つ折りコピー |
影消しコピー パンチ穴消しコピー |
ページ順コピー 大判原稿コピー 冊子レイアウトコピー 枠消しコピー IDコピー コピー予約 |
ブックコピー 透かしコピー ソートコピー ポスターコピー(3×3/2×2/1×2) |
コピー機能を見てみよう。単純なコピー機能としては、5機種とも等倍コピーだけでなく、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「オートフィット」機能や、原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行う「定型変倍」機能、さらに25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える機能を搭載した高性能な物となっている。またCD/DVD/Blu-rayレーベル印刷に対応したEW-M973A3T、EP-982A3、TR9530は、レーベルコピーにも対応する。またこれら3機種は原稿面に写真を複数枚置き、焼き増し風のコピーを行うことも出来る。この際「退色復元」や「色あせ補正」機能を使えば、昔の色あせした写真も自動で補正してくれる機能も備えている。さすが写真印刷が行える画質を持つ機種と言えるだろう。5機種とも2枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2面割り付けにも対応する。さらにTR9530とMFC-J5630CDWは4枚の原稿を1枚に縮小する4面割り付けも対応する。 その他、濃度調整機能は5機種とも搭載する。EW-M973A3T、EP-982A3、MFC-J5630CDWは背景色を消すことで見やすくし、インクも節約できる「背景除去機能」又は「地色除去コピー」も行える。また、EW-M973A3TとEP-982A3、TR9530はコピー前にプレビューを行うことで、原稿のセットミスの確認が行える他、プレビューを元に拡大縮小を調整できる。それ以外の機能として、EW-M973A3TとEP-982A3は鮮やかさ、色調、色相の調整も可能である。色相はレッド、グリーン、ブルーを個別に調整できるため、元の原稿に近い色や読みやすい色など、好みの色に調整が出来る。EP-982A3はこれに加えて、コントラストとシャープネス調整も可能だ。一方、MFC-J5630CDWは、裏面が透けて写るのを除去する「裏写り除去コピー」、インクを節約できる「インク節約モードコピー」に対応する。「インク節約モード」は全体に色を薄くするのでは無く、文書の文字はそのまま残しつつ、見出しなどの大きな文字や、グラフ、色囲みなどは、輪郭だけを残して内側の色を薄くすることで、見やすさを落とさずにインク使用量を減らすことができる。 それぞれ、様々な特殊コピーを行える機能を搭載する。EW-M973A3TとEP-982A3は、A4又はB5の見開きの本を左右ページで別々にスキャンして、1枚に2面割付又は両面コピーする「見開きコピー」、免許証などの裏表をそれぞれスキャンして1枚の用紙に並べて印刷する「IDコピー」、アイロンプリント紙への印刷時に使える「ミラーコピー」、メモリーカードからのダイレクト印刷時と同じく輪郭だけの塗り絵風に変換してコピーする「塗り絵印刷」が行える他、同じ内容を2面、4面、または用紙サイズに合わせて自動的に割り付ける「リピートコピー」機能や、A3原稿を2回に分けてスキャンすることでA3コピーを可能にする「A3原稿二つ折りコピー」機能を搭載する。「見開きコピー」は通常の2面割付又は両面印刷と同じ機能のようだが、本の場合は原稿カバーが邪魔になり右ページと左ページをスキャンする際で向きが逆になってしまうが、片方を180度回転させて同じ向きにして並べられる。「リピートコピー」は手書きメモやネームシールなどをコピーするのに便利だ。A3原稿二つ折りコピーも、A3原稿を左右それぞれスキャンして2面割り付けしても同じようだが、2面割付では周囲だけでなく真ん中にも余白が出来るのに対して、この機能では真ん中は余白がないように結合されるので、多少のズレはあるがA3コピーに近い仕上がりとなる。EW-M5610FTも「IDコピー」機能を搭載する他、本のとじ目部分や周囲に出来る影を消す「影消しコピー」、パンチ穴を消す「パンチ穴消しコピー」機能を搭載する。TR9530は綴じ目や周囲の黒くなる部分を消す「枠消しコピー」機能と「IDコピー」機能の他、「A3原稿二つ折りコピー」と同じ「大判原稿コピー」機能、A4の原稿をA3見開き冊子の形に割り付けコピーする「冊子レイアウトコピー」機能の他、コピー実行中でも次の原稿の読み取り操作ができる「コピー予約」も可能だ。さらに、ADFを利用した機能として、複数ページの複数部をコピーするときに1部ずつまとめてコピーする「ページ順コピー」、ADFは片面スキャンだが、片面を連続スキャンし、次に裏面を連続スキャンすることで、両面に印刷してくれる「ADF手動両面コピー」機能を搭載している。MFC-J5630CDWも「2in1IDカードコピー」が行える他、見開きの本をコピーする際に本の傾きを自動補正し、綴じ目や周囲の影を除去する「ブックコピー」、コピー文書に透かし文字を入れられる「透かしコピー」、ADFを使用して、複数部のコピーを行う場合に1部ずつプリントする「ソートコピー」、さらに1枚の原稿を、2枚、4枚、9枚に分割してプリントし、貼り付ける事で大判コピーが行える「ポスターコピー」機能を搭載する。「透かしコピー」は「重要」「COPY」「社外秘」といった5種類から選べ、位置やサイズ、回転角度や透過度、文字の色も指定できる。5機種とも機能は異なるが、それぞれ便利なコピー機能をふんだんに搭載している。 |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
|||
8dot/mm×7.7line/mm(精細) 8dot/mm×7.7line/mm(写真) |
8dot/mm×7.7line/mm(ファイン) 8dot/mm×15.4line/mm(スーパーファイン) 8dot/mm×7.7line/mm(写真) |
||||||
(電話帳200宛先+手入力50宛先) |
|||||||
ファクス機能を搭載しているのは、EW-M5610FTとMFC-J5630CDWの2機種となる。搭載している機能はほぼ同等だが、細かなところで違いが出ている。2機種ともスーパーG3に対応しており、モノクロ、カラーファクスを行う事が出来る。ADFを搭載しているため、複数枚の原稿の送信も便利である。33.6Kbpsで通信可能であり、その場合の伝送速度はモノクロで約3秒となる。また読取走査線密度はモノクロで8dot/mm×3.85本/mmの標準モード、8dot/mm×7.7本/mmの精細モード/ファインモード、解像度は同じだが写真が含まれた原稿に適した写真モードは両機種共通だ。MFC-J5630CDWは加えてさらに高画質な8dot/mm×15.4本/mmのスーパーファインモードが選択できる。カラーは約200×200dpiでほぼ同等だ。受信したファクスの印刷は、MFC-J5630CDWはA4サイズまでだが、EW-M5610FTはA3やB4サイズにも対応する。細かな表や図面など大判印刷したい人には気になる点だろう。 受信したファクスはEW-M5610FTが100枚又は100件、MFC-J5610CDWが200枚(件数未公開)で多少の違いがあるため、受信件数が多い場合は注意が必要だ。一方、、停電時やコンセントが抜けた場合のデーター保持は両機種とも行えるが、MFC-J5630CDWは2〜3日程度に限定されている。 ダイヤル機能としては、両機種ともアドレス帳機能を搭載し、EW-M5610FTは100件、MFC-J5630CDWは2番号使用でき、各100件となる。その他、グループダイヤル、順次同報送信、自動リダイヤル、発信元記録などの基本的な機能を搭載している。さらに、送信するファクスを液晶で確認してから送信する「見てから送信」と、受信したファクスの内容を液晶で確認した上で印刷するか決めることで用紙を節約できる「見てから印刷」機能も備える。加えてEW-M5610FTはボーリング受信にも対応している。一方MFC-J5630CDWは受信したファクスをクラウド上にアップする機能を搭載している。 さらに、パソコン内のデーターを直接ファクスできる「PCファクス」機能も両機種とも搭載している。パソコン上のデーターをファクスとして送信する機能と、パソコン上にファクスのデーターを受信する機能の両対応だ。なお、両機種ともファクス機能だけで受話器がないため通話機能は無いが、モジュラージャックのインとアウトを備えており、アウトに電話機を接続すると通話が可能となる。その際、ファクス/電話自動切り替え機能にも対応しているのも便利だ。 |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
|||
(70度角度調整可) |
(90度角度調整可) |
(80度角度調整可) |
(角度調整可) |
(角度調整可) |
|||
(70度角度調整可) |
(90度角度調整可) |
(80度角度調整可) |
(90度角度調整可) |
(角度調整可) |
|||
5GHz帯対応 (Wi-Fiダイレクト対応) |
5GHz帯対応 (Wi-Fiダイレクト対応) |
(Wi-Fiダイレクト対応) |
(ダイレクト接続対応) |
(Wi-Fiダイレクト対応) |
|||
MacOS 10.6.8〜 |
MacOS 10.6.8〜 |
MacOS 10.6.8〜 |
Mac OS 10.10.5〜(AirPrint利用) |
MacOS 10.12.6〜 |
|||
操作パネルの位置は5機種とも共通だ。液晶も操作パネルも本体前面に取り付けられ、持ち上げて起こすことができるので見やすい角度に調整できる。EW-M973A3Tは70度、EP-982A3は90度、EW-M5610CDWは80度、TR9530もほぼ90度近くまで角度調整が可能で、MFC-J5630CDWはそこまでではないがある程度の角度調整が可能だ。設置する場所によらず使いやすい。ただし、操作パネルや液晶には違いがある。5機種ともタッチパネル液晶を搭載しており、直接画面内の項目をタッチして操作できるので、直感的に操作が可能だ。EW-M979A3T、EP-982A3、TR9530は4.3型の液晶となっており、大型である事から視認性・操作性が良い。全ての操作が液晶内で行われ、電源ボタン以外の物理ボタンはない。EW-M5610FTも電源とヘルプボタン以外は物理ボタンはないが、液晶は2.7型とやや小さめだ。視認性が極端に悪くなるほどではないが、前の3機種と比べると劣る。また、EW-M5610FTはファクス機能を搭載しているが、その際のダイヤル用テンキーも液晶内に表示される。一方MFC-J5630CDWも同じく2.7型液晶を搭載するが、ファクス用のテンキーの他、「ホーム」「戻る」「キャンセル」と、ワンタッチダイヤル用のボタンは物理ボタンとなる。特にテンキーが物理キーで搭載される点がEW-M5610FTとの大きな違いだ。テンキーが液晶内に表示されるEW-M5610FTでは、バックライトがあるため暗いところでも操作できる他、ファクス機能を使わない際はテンキーが見えないためスッキリしている。物理キーで搭載するMFC-J5630CDWは、テンキーを押した感触があるため、番号入力が行いやすいが、操作パネルのボタン数が多くなるため、見た目が煩雑になる。どちらが良いかは人それぞれだが、ファクス機能をよく使うなら、MFC-J5630CDWの方が使いやすいかもしれない。 インターフェースは5機種とも共通で、USB2.0に加えて、有線/無線LANに対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルーターで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人には有線LAN/無線LANによりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。またネットワーク接続をすればスマートフォンやタブレットからの印刷も可能となる。また前述のようにWi-Fiダイレクト(TR9530はダイレクト接続)に対応しているため、無線LANルーターの無い環境でも、スマートフォンやタブレットと直接Wi-Fi接続が可能となっている点も共通だ。また、有線LANにも対応しているため、無線LANの電波が届きにくい、壁にLANコネクターがある、手軽に接続したいなどの理由で有線LAN接続を使用する事も可能だ。一方、無線LAN機能には差があり、EW-M973A3TとEP-982A3では、他の3機種より機能が強化されている。他の3機種はIEEE802.11n/g/bに対応しているが、EW-M973A3TとEP-982A3はIEEE802.11ac/a/n/g/bに対応している。IEEE802.11ac対応となり通信速度が上がっただけで無く、2.4GHz帯の周波数しか利用できない他の3機種に対して、EP-982A3では5GHz帯にも対応した事が大きい。2.4GHz帯はBluetoothや無線マウス、固定電話の子機などと帯域が同じだし、電子レンジの影響を受けやすい。一方5GHz帯は、基本的に無線LANでしか使用しないため、電波干渉が起こりにくく安定する。無線LANでの接続を考えている人には、EW-M973A3TとEP-982A3は通信速度と安定性の2つの面でメリットがあると言える。 対応OSはメーカーによる差が大きい。エプソンの3機種はWindows XP SP3以降は全て対応する。MacOSもダウンロード対応とはなるが10.6.8以降に対応する。マイクロソフトのサポートの終了したWindows XPやVistaにも対応するのは安心だ。一方、MFC-J5630CDWはWindows 7 SP1以降、TR9530はWindows 7 SP1/8.1/10のみの対応だ。Windows XPやVistaには非対応だ。さらに、TR9530はWindows 8も非対応である点は注意が必要だ。MacOSもTR9530は10.10.5以降、MFC-J5630CDWはMacOS 10.12.6以降と比較的新しいバージョンのみ対応だ。また、TR9530は、ドライバーはキヤノンからは提供されず、AirPrintを使用する方法となっているため、インク残量確認や一部の印刷設定、本体の動作設定ができない点でWindowsで利用する場合に比べて不便になっている。 本体サイズを見てみよう。ADFもなく、通常のカートリッジ方式のEP-982A3は479×356×148mmとなる。一昔前のA4複合機に匹敵するコンパクトさとなる。コレを基準に見てみよう。EW-M973A3Tは523×379×169mmとなる。横幅が44mm、奥行きが23mm、高さが21mm大きく、全体に一回り大きい。エコタンク方式である事に加えて、EP-982A3より大きいA3ノビサイズに対応するためと想われる。EW-M5610FTは498×358×245mmで、同じA3ノビ対応ながら、インク数が少ないことや背面給紙が簡易的である事もあって、幅・奥行きはEP-982A3と余り変わらない。ADFを搭載している分高さは大きくなっているが、設置面積は小さいといえる。TR9530は468×366×193mmで、EP-982A3とほぼ同じ幅と高さだ。カートリッジ方式でA3ノビには非対応と共通する部分も多く、このサイズが限界と言えるのかもしれない。高さはADFを搭載する分大きくなっている。MFC-J5630CDWは530×396×394mmで、カートリッジ方式ながら、横幅も奥行きもEW-M973A3Tより大きい。また高さはADFを搭載するとは言え394mmと他機種の2倍前後となっているため、かなり存在感がある。MFC-J5630CDW以外の4機種のサイズは大きな違いはないが、MFC-J5630CDWだけは、かなり大きいと感じるサイズだ。 ちなみに、本体の耐久枚数は、EW-M973A3Tが5万枚、EW-M5610FTが10万枚、MFC-J5630CDWが15万枚となっている。他の2機種は公表していないが、家庭向けプリンターは1万〜1万5000枚程度が一般的なので、これら3機種はかなり強化されている。EW-M973A3TとEW-M5610FTはエコタンク方式であるため、MFC-J5630CDWもビジネス向けの機種だけに印刷枚数が多い事が予想されるだけに、うれしい強化点と言える。 A3プリントA4スキャンという共通点での比較だが、5機種は思いのほか違う点の多い事が分かる。ではどれがオススメだろうか。まず、ファクス機能が必要ならEW-M5610FTかMFC-J5630CDWの2択となる。印刷枚数が多いなど、印刷コストを気にするならEW-M5610FTだ。MFC-J5630CDWも安い方ではあるが、エコタンク方式の安さは圧倒的だ。カラー文書で1枚5.1円、モノクロ文書で0.9円の差である。本体の価格差は35,980円あるが、同梱インクで3,600枚以上印刷できるので、MFC-J5630CDWの同梱インクでもある程度印刷できる事を考えて3,000枚差としても、MFC-J5630CDWの17,700円分に相当する。残る差の18,280円分はカラー文書なら3,585枚以上、モノクロ文書なら20,312枚以上の印刷で逆転する。印刷枚数が多いなら十分に元が取れる。印刷速度も速く、自動両面印刷やADFも搭載し、ファクス機能も問題なく、操作性もまあまあだ。メンテナンスボックスが交換できるなど長く使っても安心だし、コンパクトさの面でも優秀だ。ではMFC-J5630CDWのメリットはと言うと、やはりビジネス向けに特化していることだろう。全色顔料インクで普通紙への印刷画質は高く、印刷速度もEW-M5610FTより高速だ。給紙枚数も多く、特にA3の給紙枚数は圧倒的だ。ファクスを多用するなら物理テンキーは使いやすいだろうし、本体の耐久性も高い。もちろん価格の安さもメリットだ。印刷コストよりも、印刷速度やビジネス的な使い勝手を重視するならMFC-J5630CDWがオススメだ。印刷コストもEW-M5610FTと比べると高いが、十分安い方だ。それよりも、普通紙印刷以外が苦手という点や本体の大きさが気になるかどうかが決め手となるだろう。 それではファクス機能が不要な場合はどうだろう。その場合はファクス機能付きの機種も不要な機能が付いているというだけなので、選択肢からは除外されないため、改めて5機種から選ぶ事になる。まず写真印刷を行うならEW-M973A3T、EP-982A3、TR9530の3機種となる。特に画質にこだわるなら前の2機種だ。EW-M979A3Tの方が給紙機能が豊富で、より写真印刷の機能が豊富と言えるが、操作性やダイレクト印刷機能、コピー機能、操作性には似た部分が多い。やはり、大きな違いとしては印刷コストだろう。EW-M973A3TのL判写真の用紙代を除くと2.6円というのは、EP-982A3の16.3円やTR9530の13.0円と比べて圧倒的に安い。その分本体価格がEP-982A3と比べて約52,000円、TR9530と比べて約50,000円高い。これをL判写真やA4文書で元を取ろうと思うと4,000〜5,000枚の印刷が必要となる。ただ、A3サイズなど大判の写真印刷を行うなら話は変わってくる。A3サイズの印刷コストは出ていないが、サイズ比でL判の11倍なので、それなりの印刷コストになる。A3サイズもそれなりにプリントする、もしくはL判写真や文書も大量印刷するならEW-M973A3Tがオススメだ。一方、印刷枚数はそれほど多くないなら、EP-982A3かTR9530となる。写真印刷メインならEP-982A3だ。6色印刷で、ダイレクト印刷時の機能も豊富、写真用紙を前面カセットにセットしておけるのもメリットだ。一方、写真の画質はそこそこで、文書の画質にもこだわりたいならTR9530だ。またA3の給紙が1枚ずつのEP-982A3に対して50枚セットできるため、A3の印刷枚数が多いなら、またADFを搭載しているため、このあたりにメリットを感じるならTR9530も有りと言える。では写真印刷は余りしないなら、EW-M5610FTかMFC-J5630CDWとなる。前述の通り、印刷枚数が多く印刷コスト重視ならEW-M5610FTが、全色顔料と高速印刷重視ならMFC-J5630CDWがオススメだ。 (H.Intel) 【今回の関連メーカーホームページ】 エプソンhttp://www.epson.co.jp/
|
![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |