2020年末時点のプリンター 〜エプソン・キャノン・ブラザーのプリンターを比較〜 (2021年3月5日公開)
1万円後半のこのクラスは、エプソンのカラリオ、キャノンはPIXUS TSシリーズの中では、最上位モデルと比べると半額程度の価格となっており非常に購入しやすい価格帯だ。エプソンはEP-713A、キヤノンはPIXUS TS6330がこの価格帯となるが、価格は18,500円と16,500円と2,000円差となっているが、EP-713Aが新機種なのに対して、PIXUS TS6330は1年前のモデルの継続販売という事もあって、店頭ではほぼ価格差はないと言える。上位モデルと比べればかなり機能面では省かれている一方、これより下位モデルでは基本機能が大きく落ちるのに対して、この価格帯の製品までは上位モデルの流れをくんでいるといえる。2機種にはどういった違いがあるのだろうか。 |
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シアン ライトシアン マゼンタ ライトマゼンダ イエロー |
染料ブラック シアン マゼンタ イエロー |
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(つよインク200) |
(ChromaLife100) |
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380/381(標準容量) 380s/381s(小容量) |
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Y/染料BK:各512ノズル |
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(税別) |
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まずはプリントの基本となる画質と速度、印刷コストから見ていこう。EP-713Aはブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色に、ライトシアンとライトマゼンダを搭載した6色インク構成である。いずれも染料インクとなる。カラー原稿の色の薄い部分ではライトインクを使う事で粒状感が抑えられる。また、最小インクドロップサイズは1.5pl、印刷解像度は5760×1440dpiであり、その点からも粒状感も皆無である事から、非常に滑らかで綺麗な写真印刷が可能だ。これは上位モデルEP-883Aと同等であり、EP-883Aの方がインクが改良された分の僅かな差があるだけで、ほぼ同等画質と言える。一方、PIXUS TS6330は5色インクとなる。染料インクのブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色と顔料ブラックインクを搭載する。写真印刷時は基本の4色だけでの印刷となるため、6色印刷のEP-713Aと比べると一歩劣る事になる。また、印刷解像度は4800×1200dpiとやや低く、最小インクドロップサイズも非公開ながら2pl程度と言われているため、粒状感の面でもやや劣ることとなる。印刷結果は十分綺麗とも言えるが、細かく見れば写真の印刷画質はEP-713Aが一歩リードだ。 一方、PIXUS TS6330は顔料ブラックを搭載しているため、ブラックインクを使用する部分に限ってだが、普通紙などへの印刷ではメリハリのある印刷結果が得られるというメリットがある。小さな文字や中抜き文字も潰れずに印刷が可能なほか、耐水性も高いため濡れた手で触ったりマーカーを引いても滲まない。EP-713Aは染料ブラックしか搭載していないため、この点ではPIXUS TS6330の画質が上だ。ただし、完全な黒ではないグレーの部分には染料のカラーインクを混ぜて表現する場合があり、またカラーの中に混ざっている場合も染料インクが使われるなど、必ずしも全ての黒色部分で顔料インクの恩恵を受けられるわけではないが、コピーや文書印刷では引き締まった印象となるのは確かだ。一方、EP-713Aも、細線強調機能や文字くっきり機能を搭載し、普通紙では苦手な写真も色鮮やかになるようドライバーレベルで文書印刷画質を高めている。あくまで、染料インクのままでの改良となるが、画質は改善され、PIXUS TS6330との差はある程度縮まっている。 最小インクドロップサイズは非常に小さいが、EP-713AはAdvanced-MSDTという5つのインクサイズのインクを打ち分ける機能を搭載しており、必要に応じて大きなインクサイズを打ち分ける事で高速化と高画質化を両立しており、一方PIXUS TS6330もノズル数を多くすることで高速化を図っているため、L判写真フチなし印刷速度はEP-713Aが17秒、PIXUS TS6330が18秒と、ほぼ差が無く、また非常に高速となっている。一方、普通紙への印刷速度はEP-713Aでは公表されていないため比較することはできないが、PIXUS TS6330はカラーが10ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、モノクロが15ipmとなっており、こちらも上位モデルと同等だ。家庭用プリンターとしては非常に高速な部類に入る。 使用するインクはEP-713Aは「つよインク200」である。アルバム保存300年、耐光性50年、耐オゾン性10年となる。一方、PIXUS TS6330は「ChromaLife100」でありアルバム保存100年を実現している。どちらも十分なレベルの耐保存性を持ったインクであるが、EP-713Aの方がさらに耐保存性は高く、耐光性なども書かれているなど一歩上回る印象だ。ちなみに、両機種とも各色独立インクとなっており、なくなった色だけ交換できる。 印刷する上で、印刷コストも気になるはずだ。EP-713AはL判写真1枚29.5円、PIXUS TS6330が17.3円と大きな差がある。EP-713Aは上位モデルと異なり割安な大容量インクがないだけで無く、標準容量と比べても割高となっており、EP-883Aと比べて印刷コストは9円近く上がっている。一方、PIXUS TS6330は上位モデルと同じ大容量・標準容量・小容量の3種類の容量が用意される事に加え、上位モデルと比べてインクが1色減っていることもあって印刷コストはやや下がっている。結果的に、両機種の間で12円以上の差となっている。A4カラー文書の印刷速度もEP-713Aの17.1円に対して9.6円と開きがある。印刷枚数が多い場合はPIXUS TS6330の方がコストを気にせず使えるだろう。ちなみに、PIXUS TS6330の大容量に関しては6色セットはなく、印刷コストも標準容量と変わらない事から、一般的には標準と小容量を使うこととなる。L判写真は標準は17.3円だが、小容量で23.7円であり、これでもEP-713Aよりはかなり安い。 |
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(セット可能枚数(普通紙/ハガキ/写真用紙)) |
(100枚/40枚/20枚) |
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(100枚/40枚/20枚) |
普通紙のみ (100枚/−/−) |
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続いて、給紙・排紙関連の機能を見てみよう。EP-713Aは前面給紙のみで、カセットは1段となる。上位モデルのように2種類の用紙をセットしておくことはできないため、例えばA4用紙をセットしていて、L判写真を印刷したいときなどは用紙を入れ替える必要がある。カセットは完全に本体に収納可能なので、用紙をセットしたままにしてもホコリが積もるなどの心配がないのはメリットだ。A4普通紙なら100枚、ハガキは40枚、写真用紙は20枚までセット可能だ。一方のPIXUS TS6330は前面給紙カセット1段+背面給紙の2方向給紙となる。前面にA4普通紙、背面にL判写真用紙という風に入れておけば入れ替える手間無く2種類の用紙を使い分けることができ、EP-713Aより便利だ。A4普通紙は前面給紙カセットに100枚、背面給紙も100枚セット可能なので、合計200枚までセットできるのはメリットだ。もちろん連続で使用する事ができる。写真用紙やハガキは背面給紙のみでハガキが40枚、写真用紙が20枚となる。ただし、注意点としては、前面給紙カセットは普通紙のみという事だ。そのため、ハガキや写真用紙、ファイン紙などは全て背面給紙を利用することとなる。写真用紙などを常時セットしておくという使い方の場合EP-713Aでは前面給紙カセットにセットしたままにしておけるが、PIXUS TS6330では写真用紙は背面のみになるため、スペースも取る他、セットしたままではホコリが積もるため毎回取り除く必要があり不便でもある。また、前面給紙カセットは一見すると本体に完全収納されているようだが、この状態ではA5用紙しかセットできない。A4/B5用紙をセットする場合は、カセットを伸ばす必要があり、そうすると本体に収納した際にカセット部が45mm前に飛び出る事となる。排紙トレイよりは前に飛び出ないため、利用時は気にならないが、一番利用されると思われるA4サイズで綺麗に収納できないのは残念と言える。これを見ると、A4普通紙と、もう一種類の用紙を使うという人はPIXUS TS6330が、1種類の用紙を常時セットしておきたい人はEP-713Aが便利だと言える。 両機種とも用紙の種類とサイズを登録しておく機能が搭載されている。液晶ディスプレイでメニューから登録も可能だが、前面給紙カセットを挿し込む、またはPIXUS TS6330の背面給紙は給紙口カバーを閉じた際に、自動的に登録画面が表示されるため便利だ(されないようにもできる)。この登録内容と、印刷時の用紙設定が異なっている場合、メッセージが表示される仕組みだ。なお、EP-713Aはこれに加えて、印刷時に実際の用紙幅をセンサーでチェックする機能もあり、用紙幅が小さい場合に用紙外にインクを打ってしまい、プリンター内部が汚れるのを防ぐ事が出来る。 |
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印刷速度 |
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その他、プリントの付加機能を見てみよう。まず自動両面印刷機能はPIXUS TS6330のみ対応となる。普通紙のみでハガキの自動両面印刷には非対応だが、文書プリントやコピー時に重宝すだろう。逆にCD/DVD/Blu-rayレーベル印刷機能はEP-713Aのみ搭載する。レーベル印刷のトレイを使わない時は、前面給紙カセットの下に収納できるようになっている。写真の自動補正機能としては、EP-713Aは「オートフォトファイン!EX」、PIXUS TS6330は「自動写真補正」と名称は違うものの、逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われる。EP-713Aはパソコンからの印刷時だけでなく、後述のダイレクト印刷時にも利用できる。 最近では搭載機種が増えてきた「自動電源オン」機能はPIXUS TS6330のみ搭載している。印刷が実行されると自動的に電源がオンになる機能で、無線LAN接続ができるようになり、プリンターから離れた場所のパソコンやスマートフォンから印刷を実行することが増えたが、そういった際にわざわざプリンターの電源を入れに行く手間が省ける。ただし、排紙トレイが引き出された状態でないと印刷は実行されないため、排紙トレイを収納していると電源が入った状態で印刷が止まっている事になる。この点は上位モデルとは異なる点だ。とはいえ排紙トレイを引き出せば印刷が実行されるところまでは進んでいるし、排紙トレイを出したままにしておけば自動的に印刷が行われる。一方、指定した時間が経つと自動的に電源が切れる「自動電源オフ」は両機種とも搭載している。 EP-713Aの便利な機能が、フチなし吸収材エラー時の印刷継続機能だ。インクジェットプリンターのインクの吸収材は2種類あり、1つはクリーニングの際などに排出されるインクを貯める廃インクタンク(メンテナンスボックス)だが、こちらは上位モデルと異なり、満タンになると印刷が完全に止まってしまい修理対応となる。この点はEP-713AもPIXUS TS6330も同じだ。もう一つは、フチなし吸収材だ。フチなし印刷は、用紙サイズピッタリに印刷すると用紙の微妙なズレによってフチができてしまう事から、少し大きめにプリントして、はみ出した部分はフチなし吸収材に吸収させる方法となっている。このフチなし吸収材が満タンになると、PIXUS TS6330はプリントが完全に止まってしまうが、EP-713Aはフチあり印刷に関しては継続ができるようになっている。急ぎのプリントを行っておいて、余裕のあるときに修理に出せるため便利な機能だ。 |
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(216×297mm) |
(216×297mm) |
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続いて、スキャナー部を見てみよう。解像度は両機種とも1200dpiで同等だ。上位モデルより解像度が下がっているが、反射原稿(紙などの原稿)にしか対応しないため、1200dpiでも十分すぎる解像度と言える。一般的に文書なら200〜300dpi、写真なら300〜600dpiで、よほど詳細にスキャンする場合でも1200dpiがせいぜいだ。実際写真サイズを1200dpiで取り込むと約4,200×6,000ドットとなり2500万画素相当となる点から見ても、十分だと言えるだろう。いずれもCIS方式で、厚い本の綴じ目近くなど、ガラス面から浮いてしまう原稿ではピントが合わなくなってしまう点は注意が必要だ。EP-713Aはスキャンした原稿をパソコンを使わずにメモリーカードに保存する機能を搭載しているためパソコン無しで簡単にスキャンができる。一方、PIXUS TS6330は原稿を取り忘れた際の警告機能が付いているのは便利だ。 |
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フチあり/フチなし 赤目補正 明るさ調整(5段階) コントラスト(5段階) シャープネス(5段階) 鮮やかさ(5段階) フィルター(モノクロ/セピア) |
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フォーム印刷(罫線・マス目・便箋・スケジュール帳・五線譜) |
組み込みパターンペーパー |
ダイレクト印刷を見てみよう。これはEP-713Aのみが対応している。対応メモリーカードはSDカードのみとシンプルだが、最近のデジタルカメラやスマートフォンは一部の一眼レフなどを除きSDカードかその小型版のmicroSDになっており、問題はないだろう。また、ただ写真のダイレクト印刷が可能なだけで無く、機能も豊富だ。一部を拡大して印刷するトリミング機能と、フチあり・フチなしの選択と赤目補正機能は当然として明るさやコントラスト、シャープネス、鮮やかさも5段階から調整可能で、セピア調やモノクロに変換も出来るため、好みの色合いで印刷ができる。さらに、EP-713Aは手書き文字や絵と写真を合成して印刷できる「手書き合成シート」にも対応している。その他、罫線、マス目、便箋、スケジュール帳、五線譜が印刷できるフォーム印刷機能、さらに、写真を1枚又は複数枚並べて「ディスクのレーベル面」の印刷も可能となっている。PIXUS TS6330はメモリーカードからのダイレクト印刷機能は搭載していないが、プリンター単体で、レポート用紙、原稿用紙、スケジュール帳、方眼紙、チェックリスト、五線譜、漢字練習帳が印刷できる「定型フォーム印刷」機能と、カラフルなパターンを印刷してスクラップブックの台紙やブックカバーなどに使える「組み込みパターンペーパー」も印刷機能は搭載している。このようにプリンター単体でも様々なプリントが可能になっているが、EP-713AはSDカードからの写真印刷機能を搭載している点で、非常に便利と言える。 |
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EPSON Smart Panel |
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Android 5.0以降 (EPSON Smart Panel使用時のiOSは11.0以降) |
Android 4.4以降 |
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(OneDriveはアプリからのみ) |
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スマートフォン・クラウド対応機能を見てみよう。両機種ともiOSとAndroid端末に対応している。いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることでプリント又はスキャンが行える。メインで使用すると思われる写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。さらにドキュメント印刷にも対応している。PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もでき便利だ。また、スマートフォン上からスキャンを実行し、データーをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。新聞や雑誌、手書きの情報などをスマートフォンに電子化するといった使い方ができるため便利だろう。なお、iPhoneやiPadの場合、AirPrintを利用したプリントも可能だ。 スマートフォンとの接続は、無線LAN(Wi-Fi)で行うが、無線LANルーターを経由する方法と、ダイレクトに接続する「Wi-Fiダイレクト」(キヤノンはダイレクト接続)が選べる。無線LANルーターを経由する方が、機能面でも制限が無く、印刷する度にプリンターと接続と切断を繰り返すのWi-Fiダイレクトと比べると便利なので、こちらを利用するのがお勧めだが、無線LANルーターが無い環境で使用する場合や、一時的に同じネットワークに入っていない他人にプリンターを使わせる場合にWi-Fiダイレクトは便利だ。Wi-Fiダイレクトの接続設定は手動でもそれほど難しくは無いが、両機種とも手軽に接続出来る工夫がなされている。EP-713Aは、iOSの場合は本体の液晶に表示されるQRコードを読み込めば接続が完了し、Androidの場合は一覧から選んで、本体の液晶にメッセージが表示されるので接続の許可を選べば接続が完了する。セキュリティーキーの入力などが不要で、設定は非常に簡単になっている。一方のPIXUS TS6330はBluetoothを利用した接続支援機能が提供される。Bluetoothで直接印刷データーを送信するのではなく、接続自体はWi-Fiだが、あらかじめBluetoothでペアリングしておけば、Wi-Fiダイレクトの設定が簡単に行えるというものだ。こちらはAndroid限定だ。また、EP-713Aと比べると事前にペアリング設定が必要で、Bluetoothの接続設定とWi-Fiの接続設定の2段階となり使い勝手は劣るためか、本体とスマホ用アプリ上の両方で設定メニューはかなり奥にあり、メーカー側でも積極的に機能を薦めているわけではないようだ。スマートフォンとの接続設定はEP-713Aの方が圧倒的に便利だ。 さらに、EP-713Aにはスマホからプリンターの初期設定を簡単に行える機能も搭載する。アプリ上で「新規セットアップ」を選択し、初期設定を行っていないEP-713Aの電源をオンにすると、EP-713Aが一覧に表示される。これを選ぶとBluetooth LEを使用してEP-713Aに自動接続される。そして、設置からインクの取り付け方法などを対話形式でスマートフォン上で案内し、最後にEP-713Aをスマートフォンと同じネットワークのWi-Fiに接続して終了となる。ユーザーが行わなければならないインクの取り付けなどの手順が非常に分かりやすいほか、自動的にネットワークの設定まで行われるので、初期設定のハードルは非常に低いと言える。 また、両機種ともスマートスピーカーに対応している。AlexaとGoogleアシスタント対応端末に対応しており、声だけでテンプレートを印刷させることができる。2020年12月現在でEP-713Aは、デザインペーパー、フォトプロップス、カレンダー、ノート、方眼紙、五線譜などのエプソン独自のものと、Alexaに登録された買い物リスト、やることリストなどとの印刷に対応する。PIXUS TS6330はナンプレ、ぬりえ、レポート用紙、チェックリスト、五線譜などキャノン独自のものの印刷と、プリンターの状態の確認が行える。今後増えていくことが予想される。 さらに、クラウドとの連携機能も両機種とも搭載している。プリントの場合、オンラインストレージのファイルを印刷したり、SNSの写真を印刷する事ができる。SNSの写真はコメント付きでも印刷が可能だ。またPIXUS TS6330は写真共有サイトからの印刷も可能だ。ここで大きな違いは、EP-713Aはスマートフォンのアプリとして搭載しているのに対して、PIXUS TS6330はスマートフォン上だけでなくPIXUS TS6330本体の操作でも印刷ができる点が上げられる。実際の操作性はスマートフォンからの方が上だが、選択肢が広いという点ではPIXUS TS6330が便利だ。スキャンの場合、スキャンしてオンラインストレージへアップロードできる。こちらもEP-713Aはスマートフォン上でスキャンしてアップロードするのに対して、PIXUS TS6330はスマートフォン上だけでなくPIXUS TS6330本体の操作でもスキャンからアップロードまで完了する事ができる(OneDriveはスマートフォン用アプリ経由のみ)。アプリをわざわざ立ち上げなくても、サッとスキャンしてアップロードできるPIXUS TS6330の方が便利だ。 さらにネットワークを利用したプリント機能として、EP-713Aは、印刷したい写真や文書を本機にメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、LINE上でプリンターを友達登録し、トーク画面から写真を送信すると印刷される「LINEからプリント」、パソコンやスマートフォンから通常のプリントと同じ操作で、外出先など離れた場所から自宅のEP-713Aで印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。一方のPIXUS TS6330はLINEのトーク画面から印刷する「PIXUSトークプリント」のみ対応している。リモートプリント機能はEP-713Aの方が豊富だ。 |
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背景除去機能 |
濃度調整 |
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ミラーコピー |
IDコピー コピー予約 |
コピー機能を見てみよう。単純なコピー機能としては、両機種とも等倍コピーだけでなく、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「オートフィット」機能や、原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行う「定型変倍」機能、さらに25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える機能を搭載した高性能な物だ。またCD/DVD/Blu-rayレーベル印刷に対応したEP-713Aは、レーベルコピーにも対応する。さらに、両機種とも原稿面に写真を複数枚置き、焼き増し風のコピーを行うことも出来る。この際、EP-713Aは「退色復元」、PIXUS TS6330は「色あせ補正」と名称は異なるが、両機種とも昔の色あせした写真も自動で補正してくれる機能も備えている。両機種とも2枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2面割り付けにも対応する。さらにPIXUS TS6330は4枚の原稿を1枚に縮小する4面割り付けにも対応している。 その他、濃度調整機能は両機種とも搭載する。また、プレビューはPIXUS TS6330のみが行え、コピー前に原稿を確認できるため失敗が少なくなるほか、プレビュー画像を見て拡大・縮小率を調整できる。一方、EP-713Aは、背景色を白にして見やすくする「背景除去機能」を搭載している。 バラエティコピー機能を見てみよう。EP-713AはA4又はB5の見開きの本を左右ページで別々にスキャンして、1枚に2面割付コピーする「見開きコピー」と、アイロンプリント紙への印刷時に使える「ミラーコピー」機能を搭載する。「見開きコピー」は通常の2面割付と同じ機能のようだが、本の場合は右ページと左ページをスキャンする際で向きが逆になってしまうが、片方を180度回転させて同じ向きにして並べられる。一方、PIXUS TS6330は厚手の原稿など原稿台のカバーが浮いてしまう場合に黒くなる部分を消去する「枠消しコピー」機能と「IDコピー」機能の他、コピー実行中でも次の原稿の読み取り操作ができる「コピー予約」も可能だ。それぞれ機能は異なるが、複合機単独で様々なコピーが行えるよう工夫されている。 |
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(90度角度調整可) |
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(90度角度調整可) |
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(Wi-Fiダイレクト対応) |
(ダイレクト接続対応) |
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MacOS 10.6.8〜 |
Mac OS 10.11.6〜(AirPrint利用) |
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(前面給紙カセット伸張時372×360×139mm) |
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操作パネルを見てみよう。EP-713Aは本体前面から上面にかけて大きく斜めに面取りされた部分に液晶と操作ボタンを配置している。液晶は1.44型と非常に小さいため、視認性はイマイチと言える。また斜めに設置されているため、真正面や真上からでも操作は可能だが、上位モデルのように角度調整が出来るわけではないので、この点でも操作性は良いとは言えない。一方PIXUS TS6330の液晶ディスプレイは本体前面に取り付けられ、液晶ディスプレイだけでなく操作パネル全体を持ち上げて水平まで90度の角度調整が可能となっている。液晶も3.0型と、上位モデルよりは小さいものの十分なサイズである。角度調整が出来てサイズも大きいため、操作性ではEP-713Aよりかなり優れている。さらに、液晶はタッチパネルとなっており、タッチ操作が可能な点も便利だ。上位モデルより液晶が小さいためか、「スタート」や「ストップ」、「ホーム」、「戻る」といったボタンは、物理ボタンで用意されるが、メニューや設定項目は直接タッチして選択できる点で非常に使いやすい。操作性は圧倒的にPIXUS TS6330が便利だ。 インターフェースは両機種ともUSB2.0に加えて、無線LAN(Wi-Fi)接続にも対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、無線LAN(Wi-Fi)ルーターで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。その場合、EP-713A/PIXUS TS6330を無線LANルーターに接続しておけば、家庭内のどのパソコンでもプリント可能となり非常に便利だろう。またスマートフォンやタブレットからの印刷も可能となる。またWi-Fiダイレクト(キヤノンはダイレクト接続という名称)に対応しているため、無線LANルーターの無い環境でも、スマートフォンやタブレットと直接Wi-Fi接続が可能となっている点も共通の便利な点だ。 対応OSはメーカーによる差が大きい。EP-713AはWindows XP SP3以降は全て対応する。MacOSもダウンロード対応とはなるが10.6.8以降に対応する。マイクロソフトのサポートの終了したWindows XPやVistaにも対応するのは安心だ。一方、PIXUS TS6330はWindows 7 SP1/8.1/10のみの対応だ。Windows XPやVistaだけでなく、Windows 8も非対応である点は注意が必要だ。MacOSも10.11.6以降とEP-713Aより新しいバージョンにしか対応しないだけで無く、ドライバーはキヤノンからは提供されず、AirPrintを使用する方法となっているため、インク残量確認や一部の印刷設定、本体の動作設定ができない点でWindowsで利用する場合に比べて不便になっている。 本体サイズを見てみよう。EP-713Aが390×338×163mm、PIXUS TS6330が372×315×139mmとなる。全体的にPIXUS TS6330がコンパクトに見える。しかし、前述のようにPIXUS TS6330はA4用紙を前面給紙カセットに入れる場合はカセットが前に45mm飛び出るため、奥行きは360mmとなる。また普通紙以外を使用する場合は、背面給紙を使用する事になるため、後方にスペースが必要だ。その点で見ればEP-713Aの方が実際の設置スペースは小さくて済むだろう。ちなみに本体のカラーバリエーションはEP-713Aはホワイトのみ、PIXUS TS6330はホワイトとブラックを用意している。 上位モデルから省かれた機能が両機種で異なるため、結果的に方向性の違いが出ている。写真印刷や年賀状印刷がメインならEP-713Aが便利だ。6色インクで画質が良く、印刷速度も速い。写真用紙やハガキを前面給紙カセットにセットできる点でも有利だ。さらにSDカードからの写真のダイレクト印刷が可能で、しかも色補正も可能な高性能なものとなっており、写真印刷という点においては非常に高性能だ。一方で自動両面印刷には非対応で、液晶も小さいためコピー操作などは不便だ。逆に文書印刷やコピーがメインならPIXUS TS6330がオススメだ。文書印刷も高速で、顔料ブラックのおかげで普通紙印刷も高画質だ。自動両面印刷機能も搭載し、液晶も大きいためコピー操作もしやすい。このように、何をメインに考えるかという事で機種は簡単に決められる。そのほかの選び方としては、印刷枚数が多いなら印刷コストが安いPIXUS TS6330、ディスクレーベル印刷をするなら、又はスマートフォンとの接続設定や初期設定に不安があるなら、簡単に設定できるEP-713Aという方法もあるだろう。 (H.Intel) 【今回の関連メーカーホームページ】 エプソンhttp://www.epson.co.jp/ キャノンhttp://canon.jp/
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