プリンター徹底比較
2021年末時点のプリンター
〜エプソン・キャノン・ブラザーのプリンターを比較〜
(2022年2月25日公開)

プリンター比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンター比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。


カラー複合機(タンク・大容量カートリッジ方式・3万円前後)
 
 タンク方式や大容量カートリッジ方式の複合機(ファクス機能非搭載)の中で、3万円前後の3機種を比較する。各メーカーから1機種ずつとなり、エプソンのEP-M553T(33,500円)、キャノンのG3360(29,150円)、ブラザーのDCP-J1200N(30,800円)となる。タンク方式や大容量カートリッジ方式としては、最も低価格な部類に入る製品だが、それでも印刷コストを重視するとそれなりの価格となる。また、価格の似た3機種だが、写真画質と手軽さ重視のEP-M553T、ベーシックな下位モデルのG3360、印刷コストは高めだが印刷速度と使い勝手機能重視のDCP-J1200Nと方向性も異なる3機種だけに、細かく見ることで合う製品が見つかるだろう。

プリント(画質・速度・コスト)
メーカー エプソン キャノン ブラザー
型番 EP-M553T G3360 DCP-J1200N
製品画像
実売価格(メーカーWeb/税別) 33,500円 29,150円 30,800円
インク 色数 4色 4色 4色
インク構成 フォトブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック(顔料)
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成 エコタンク方式
(挿すだけ満タンインク方式・オンキャリッジ式)
ギガタンク方式
(挿して注入・満タン自動ストップ・色ごとに形状変更・オフキャリッジ式)
ファーストタンク方式
(カートリッジ方式・各色独立)
顔料/染料系 染料
(つよインク)
染料(カラー)/顔料(黒) 染料(カラー)/顔料(黒)
(アルバム保存100年/耐光性50年)
インク型番 タケトンボ
(増量/使い切りサイズ)
31番 414
付属インクボトル インクボトル各色1本 インクボトル(カラー)各色1本
インクボトル(ブラック)2本
セットアップ用インクカートリッジ各色1本
ノズル数 720ノズル 1792ノズル 420ノズル
各色180ノズル カラー:各384ノズル
黒:640ノズル
ブラック:210ノズル
カラー:各70ノズル
最小インクドロップサイズ N/A(1.5pl?)
(MSDT)
N/A(2pl?) 1.5pl
最大解像度 5760×1440dpi 4800×1200dpi 1200×6000dpi
(macOSでは1200×3600dpi)
高画質化機能
印刷速度 L判縁なし写真(メーカー公称) 33秒 37秒 28秒
A4普通紙カラー(ISO基準) 6.0ipm 6.0ipm 9.0ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準) 6.0ipm 10.8ipm 16.0ipm
印刷コスト
(税別)
L判縁なし写真 増量:9.3円
使いきり:9.6円
6.2円 16.2円
A4カラー文書 増量:3.0円
使いきり:3.2円
1.0円 5.5円
A4モノクロ文書 増量:1.3円 0.4円 0.9円
インク1本の印刷枚数
(カラー文書)
ブラック 使いきり:600ページ
増量:2,200ページ
6,000ページ 2,500ページ
カラー 使いきり:1000ページ
増量:3,700ページ
7,700ページ 1,500ページ
インク1本の価格
(税別)
ブラック 使いきり:660円
増量:2,200円
1,980円 2,200円
カラー 使いきり:各660円
増量:各2,200円
各1,540円 各2,310円

 まずはプリントの基本となる画質と速度、印刷コストから見ていこう。3機種は4色インク構成という点では似ている。当然ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色となる。しかし、その内容は異なっている。EP-M553Tは全色が染料インクなのに対して、G3360DCP-J1200Nはブラックは顔料インク、カラーは染料インクとなる。この違いにより得手不得手が出ることになる。ここで、染料インクと顔料インクの話が出てきたので簡単に説明しておこう。染料インクは様々な用紙に対応でき、写真用紙等に印刷した際に発色が良く、用紙本来の光沢感が出るため、写真印刷に向いている。一方で普通紙に印刷すると紙にしみこんで広がってしまうため、メリハリが弱くなる。その点で顔料インクならメリハリのある印刷が行え、小さな文字や中抜き文字も潰れずに印刷が可能なほか、耐水性も高いため濡れた手で触ったりマーカーを引いても滲まない。とは言え全色を顔料インクとすると写真用紙などに印刷した際に発色が悪いほか、用紙の光沢感が薄れ半光沢のようになってしまう上に、光沢した年賀状や光沢フィルムなど一部に顔料インク非対応の用紙もある。つまりは染料インクと顔料インクは、用紙によって向き不向きがあるわけである。
 これを前提に、まずは写真画質を見てみよう。写真画質と言っても、印刷内容が写真かどうかではなく、写真用紙に印刷する場合の話である。それ以外にも、ハガキの通信面や、ファイン紙など、普通紙以外に印刷する場合の画質である。これらの用紙には染料インクを使用する事になる。ここで、ブラックインクが染料インクのEP-M553Tと、顔料ブラックのG3360DCP-J1200Nで差が出る。EP-M553Tは写真印刷時も黒インクを使用でき、しっかりとした黒を表現できるため、綺麗な写真が印刷できる。一方でG3360DCP-J1200Nは染料インクはカラー3色しかないため3色印刷となる。黒色はカラーを重ねて作るが、どうしても非常に濃い茶色やグレーにしかならず、全体にコントラストが弱くなってしまう。これは黒髪や影、夜景などの色を見れば一目瞭然な他、影や夜景などの黒の中の微妙な表現力が劣ってしまう。その点でEP-M553TG3360DCP-J1200Nの間には大きな差がある。もちろん上位モデルやインクカートリッジ方式のモデルには6色インクの機種もあるため、EP-M553Tはそれよりは劣るが、細かな画質差にこだわらなければ、EP-M553Tでも十分写真画質での印刷が可能だ。それに対して、EP-M553Tと、G3360DCP-J1200Nとの差は、6色機とEP-M553Tとの差以上に大きいため、かなり妥協することになる。本来は写真印刷向けとは呼べず、画質は全くこだわらないが、とりあえず写真印刷や年賀状印刷が出来ればよいというレベルで無ければ、EP-M553Tを選ぶのが無難だろう。
 写真印刷に関しては最小インクドロップサイズも重要となる。これはドットの大きなに影響するもので、小さいほど粒状感(ザラザラした感じ)を受けなくなる。EP-M553TG3360はカタログやWebページ上には掲載されてはいないが、EP-M553Tは1.5plと言われており、G3360は海外の同機能のモデル等から2plと予想される。DCP-J1200Nは1.5plであるため、粒状感の面ではEP-M553TDCP-J1200Nが優れているがG3360でも大きな差は無いといえる。やはり、染料インクが使えるかどうかが重要だと言え、EP-M553Tが最も写真印刷には向いているだろう。また、写真の耐保存性でも違いがある。EP-M553Tは「つよインク」という名称でアルバム保存300年、耐光性50年、耐オゾン性10年をうたっており、アルバムに入れた場合でも、飾って置いた場合でも色あせはかなり防ぐことができる。DCP-J1200Nはアルバム保存100年、耐光性50年と、EP-M553Tよりは劣るが優秀だ。それに対してG3360は耐保存性を公表していないが、インクカートリッジ方式のモデルのインクの「ChromaLife 100」(アルバム保存100年)には準拠しないという事なので、100年より短い可能性が高い。
 一方、文書印刷の画質を見てみよう。こちらも写真画質と同じで、印刷内容が文書かどうかではなく、普通紙に印刷する場合の画質である。コピーなどもこちらになるだろう。前述のように普通紙印刷には顔料インクが望ましい。G3360DCP-J1200Nは顔料ブラックを搭載してるため普通紙への黒の印刷はメリハリがある印刷が行える。ただ顔料インクはブラックだけなので、黒色部分しかこの恩恵は得られない。また、黒と言っても、完全な黒ではないグレーの部分には染料のカラーインクを重ねて作り出す場合があり、背景色があるなど、カラーの中に黒が混ざっている場合も染料インクを使う場合があり、必ずしも全ての黒色部分で顔料インクの恩恵を受けられるわけではないが、コピーや文書印刷でそういった部分は結構多く、一部だけでも全体的に引き締まった印象となるのは確かだ。EP-M553Tも、染料インクでは色が沈みがちな普通紙への印刷時にも写真が綺麗に印刷できるようになっている他、細線強調機能や文字クッキリ機能などを搭載し、ドライバーレベルで、染料インクながら普通紙印刷の画質を向上しているが、顔料インクが使えるG3360DCP-J1200Nが優れているのは確かだ。写真や年賀状などの印刷画質を重視するならEP-M553T、文書印刷やコピーの画質を重視するならG3360DCP-J1200Nがオススメと言える。
 次に印刷速度を見てみよう。まず写真印刷速度を見てみると、EP-M553Tが33秒、G3360が37秒、DCP-J1200Nが28秒となり、大きな差は無い。インクカートリッジ方式の6色プリンターは13秒や10秒という機種があるので遅く見えるが、一方で1分をこえるプリンターもある事を考えると、十分実用的な速度と言える。文書の印刷速度はEP-M553Tはカラー、モノクロ共に6.0ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、G3360はカラーが6.0ipm、モノクロが10.8ipm、DCP-J1200Nがカラーが9.0ipm、モノクロが16.0ipmとなる。こちらはDCP-J1200Nの速さが際立つ結果だ。モノクロプリントでは最も遅いEP-M553Tと最も速いDCP-J1200Nでは2.67倍の速度となる。G3360と比べても1.48倍となる。60枚プリントする場合、EP-M553Tで10分、G3360で5分33秒、DCP-J1200Nで3分45秒でプリントできる。この差を大きいと感じるかどうかはも、選ぶ上での一つのポイントとなるだろう。
 ちなみに、インクの方式だが、エプソンとキャノンはタンク方式のエコタンク・ギガタンク、ブラザーは大容量カートリッジ方式のファーストタンクとなる。エコタンク・ギガタンク方式はインクボトルを購入し、プリンター本体内蔵のインクタンクにインクを補充する形となる。基本的にインクボトル1本が、まるまるインクタンクに補充できる。EP-M553Tでは「挿すだけ満タンインク方式」という名称で、G3360は名称は無いが、いずれも第2世代のインク補充方式となっており従来より便利になっている。第1世代の製品は、ボトル先端に対して大きな注入口が開けられており、ここに先端を挿し込み、ボトルを握るなどして目視で満タンまで注入する形であった。それに対して第2世代では、ボトルの先端を注入口に挿し込むと、注入が始まり、満タンになると自動ストップするようになっている。ボトルの先端からインクをこぼす心配や、インクをあふれさせる心配が無く、非常に手軽になった。さらにボトルの先端と注入口の形状を色ごとに変えてあるため、間違えた色のタンクに注入してしまう危険性が無く、より安心感が増している。このようにボトルから補充と言うと難しそうに感じるが、そう難しくは無い事が分かる。さらに、メリットもあり、インク切れ前でもインクを補充する事が出来るため、大量印刷前や時間に余裕のある時にインクを補充しておけば、印刷途中でインク切れで印刷が止まっていたという事態が防ぐ事が出来る。
 一方ファーストタンクのDCP-J1200Nはカートリッジ方式だが、名称に「タンク」が付いている。これは内部にサブタンクを搭載しているためで、こちらに約200枚分の常に確保している。カートリッジからインクが無くなった時点で交換できるため、インクを買い忘れても少し余裕がある事や、大量印刷前にインク残量が少なくなっていても、カートリッジが空になってれば事前に交換できるというメリットがある。カートリッジ方式ながら、できるだけタンク方式のメリットも取り入れたのがファーストタンク方式となる。
 ちなみに、EP-M553TG3360は同じタンク方式だが、搭載方法に違いがあり、「オフキャリッジ式」と「オンキャリッジ式」の2種類がある。印刷時に左右に動くヘッドの上にタンクが乗っているのが「オンキャリッジ式」、タンクは別の場所に固定されておりタンクとヘッドはチューブでつながれているのが「オフキャリッジ式」だ。「オンキャリッジ式」の方がスペースを有効活用でき、長いチューブでつなぐ必要も無いが、動くパーツ上であるため重量の問題もあり、あまり大型のタンクに出来ない。一方「オフキャリッジ式」は、別にタンクのスペースが必要な上にチューブも必要だが、タンクを大型化できるメリットがある。エコタンクは両方式があるが、EP-M553Tはオンキャリッジ式、キャノンはオフキャリッジ式しかないため、G3360もオフキャリッジ式だ。ちなみにインクカートリッジ方式でもこの違いはあり、DCP-J1200Nはオフキャリッジ式となる。
 この「オフキャリッジ式」と「オンキャリッジ式」の違いが印刷コストに影響している。写真の印刷コストを見てみると、EP-M553Tは9.3円、G3360は6.2円で、写真用紙代として約4.7円が含まれているので、純粋なインク代だと、それぞれ4.6円と1.5円となる。実に3倍もの差がある。カラー文書もEP-M553Tは3.0円、G3360は1.0円で、モノクロ文書も1.3円と0.4円で、いずれも約3倍の差となる。これは印刷可能枚数と、インクの価格によるものだ。EP-M553Tはオンキャリッジ式なので、ボトル1本(=満タンまで補充した状態)でA4カラー文書を印刷した場合、ブラックインクは600ページ、カラーインクは1,000ページ印刷が可能だ。カートリッジ方式では200〜600ページ程度なので、これでもかなり大容量だ。しかしG3360ではカラーインクは6,000ページ、ブラックインクは7,700ページのプリントが可能だ。EP-M553Tと比べてブラックは10倍、カラーは7.7倍と圧倒的な印刷枚数だ。一方、インクボトルの価格は、EP-M553Tが1本660円で、4色で2,620円、G3360がブラックが1,980円、カラーが各1,540円で、4色で6,600円となる。価格はG3360の方が2.5倍となるが、それ以上に印刷可能枚数が多いので、1枚あたりの印刷コストに換算すると、G3360の方が安くなる訳だ。とはいえ、必ずしもG3360が良いかと言えば、使い方によるだろう。G3360はインクボトル4色の価格は、インクカートリッジ方式の6色並の価格だ。印刷可能枚数は多いが、逆に6,000〜7,700ページというのは多すぎるという人もいるだろう。EP-M553Tは1本660円と安いため、インク購入時の負担が小さいとも言える。印刷枚数がとにかく多いならG3360が、印刷枚数は多少多い程度だが、インク代が気になる人にはEP-M553Tが合っていると言えるだろう。ちなみにEP-M553T用のインクは、「増量」サイズもあり、「使いきり」サイズ3.7本分程度入って、価格は3.33倍だ。とはいえ、本体のインクタンクには「使いきり」サイズ分しか入らないため、何回かに分けて補充する事になる。割安感はそこまでなく、4色で8,800円とG3360より高いわりに印刷枚数は少ないため、そこまでよく使うならG3360の方が良いだろう。
 残るDCP-J1200Nだが、こちらもオフキャリッジ式だけあって、印刷枚数はブラックインクが2,500ページ、カラーインクが各1,500ページと、EP-M553Tよりは多くなっている。一方インクの価格は、ブラックが2,200円、カラーが各2,310円で4色で9,130円と3機種中最も高い。EP-M553Tと比べて3.46倍、G3360と比べても1.38倍となる。そのため、印刷コストはL判写真で16.2円となり、ブラザーは写真用紙代を4.2円換算なので、インク代だけだと12.0円となるため、EP-M553Tの2.61倍、G3360の8倍となってしまう。カラー文書も5.5円と、EP-M553Tの1.83倍、G3360の5.5倍となり、写真印刷よりは差は縮まるものの、依然印刷コストの差は大きい。一方モノクロ文書は0.9円で、EP-M553Tより31%安く、G3360との差も2.25倍まで縮まる。これは、印刷枚数とインクの価格を他機種と細かく比較すると理由が分かる。DCP-J1200Nのブラックインクは2,500ページで2,200円となっており、EP-M553Tの4倍以上プリントが可能で価格は3.33倍、G3360の41.7%の印刷枚数だが、価格は1.11倍と比較的抑えられているためだ。一方カラーインクは、EP-M553Tと比べて1.5倍印刷可能で3.5倍の価格、G3360と比べて5分に1以下の印刷枚数で1.5倍の価格になっている事が分かる。DCP-J1200Nは3機種中唯一インクカートリッジ方式なのでどうしても印刷コスト面では高くなってしまうが、全体的に高くするのではなく、ブラックインクを割安にする事で、モノクロプリントに関しては他機種に対抗できる印刷コストとなっている。ちなみに同じファーストタンク方式でも上位モデルではブラックインクが6,000ページ、カラーインクが各5,000ページの印刷可能なインクカートリッジで、ブラックが4,400円、カラーが各5,500円で4色で20,900円となっており、印刷コストはL判写真で11.0円、カラー文書は4.1円、モノクロ文書は0.8円となっている。これと比べると、印刷コストや印刷枚数は劣るが、まだ購入しやすいインクカートリッジの価格設定になっている。また、上位モデルと比べても、モノクロプリントだけは同程度の印刷コストを実現していることからも、モノクロプリント重視の傾向が見て取れるだろう。 ちなみに3機種の間で比較していると、DCP-J1200Nの印刷コストが非常に高く感じられるが、一般的なカートリッジ方式のインクジェットプリンターの場合、カラー文書が10円〜19円、印刷コストが安いビジネス向けプリンターでもカラー文書が6.5円〜15円、モノクロ文書が2円〜5円程度である事を考えると、DCP-J1200Nでも十分に低印刷コストだ。また卓上レーザープリンターの場合、カラー文書は10円〜20円、モノクロ文書は1.8円〜4.5円なので、これと比べても圧倒的に安価だ。つまり、どこまで印刷コストを重視するかがポイントとなる。

プリント(給紙・排紙関連)
型番 EP-M553T G3360 DCP-J1200N
製品画像
対応用紙サイズ 定型用紙 L判〜A4 名刺〜A4 L判〜A4
長尺用紙 長さ1,200mmまで 長さ1,200mmまで 長さ355.6mmまで
給紙方向
(セット可能枚数(普通紙/ハガキ/写真用紙))
背面

(100枚/30枚/20枚)
(0.6mm厚紙対応)

(100枚/40枚/20枚)
○手差し
(1枚/1枚/1枚)
(0.52mm厚紙対応)
前面 【カセット】(150枚/50枚/20枚)
その他
排紙トレイ自動伸縮
用紙種類・サイズ登録 ○(用紙セット連動) ○(給紙口カバー連動) ○(ボタン選択式)
用紙幅チェック機能

 続いて、給紙・排紙関連の機能を見てみよう。使用できる用紙は、最大はA4までで共通だが、最小サイズはEP-M553TDCP-J1200NがL判、G3360はより小さい名刺サイズに対応している。少量の名刺やフチなしデザインの名刺を印刷するのに便利だ。一方、長尺印刷に関してはEP-M553TG3360は1,200mm(1.2m)まで対応するのに足して、DCP-J1200Nは355.6mmまでとなる。
 給紙に関してはEP-M553TG3360は下位モデルだけ合って背面給紙のみとシンプルだ。用紙はセットしやすいが、後方と上方にスペースが必要だ。また、用紙をセットしたままだとホコリが積もってしまい、その状態で給紙されると故障の原因にもなるため、使い終わったら取り除く必要があるのは面倒だ。給紙枚数はEP-M553Tは普通紙なら100枚、ハガキなら30枚、写真用紙なら20枚までとなる。G3360はそれぞれ100枚、40枚、20枚なので、大きな違いは無い。ただし、一般的にプリンターでは厚さ0.3mm程度の紙までの対応であるが、EP-M553Tは2倍の0.6mm厚まで対応している。写真店に依頼した写真貼り合わせの年賀状や、アート紙(例えばエプソンのVelvet Fine ArtPaperは0.48mm)の印刷に重宝する。一方DCP-J1200Nは前面給紙カセット+背面手差し給紙となる。前面給紙カセットは前面から用紙の交換が可能で交換しやすい他、カセット式なので用紙を入れたままでもホコリが積もりにくいため、常時セットして置いても安心だ。普通紙なら150枚、ハガキなら50枚、写真用紙なら20枚までセットでき、給紙枚数も他の2機種より多い。さらに、前面給紙では上手く給紙出来ないような厚紙や封筒に対応するため、背面に手差し給紙を用意する。通常は閉じておけば背面と一体化するのでスペースが必要なく、使う時だけ開く形だ。ここは小さな用紙サポーターが引き出せるだけの簡単な作りで、1枚ずつの手差し給紙となり、2枚以上セットするとエラーになる。あくまで前面給紙の補助的役割で、前面給紙では印刷できない用紙の他、数枚だけ別の用紙に印刷したい場合に入れ替える手間無く使うことが出来るというものだ。こちらも通常より厚い0.52mm厚まで対応しており、写真貼り合わせの年賀状には非対応だが、厚紙や厚めの封筒でも安心だ。給紙に関してはDCP-J1200Nが最も便利だ。
 3機種とも用紙の種類とサイズを登録しておく機能が搭載されている。EP-M553Tは用紙を挿し込むと、G3360は背面給紙部の給紙口カバーを閉じると、登録画面が自動的に表示されるので(されないようにもできる)、セットした用紙を設定しておく。そして印刷時にこの登録内容と、印刷設定が異なっている場合、メッセージが表示される仕組みだ。できる限り印刷ミスによる用紙とインクの無駄遣いをなくす工夫がなされている。DCP-J1200Nは液晶ディスプレイを搭載せず(後述)、「A4」と「ハガキ」のLEDランプがあるだけだ。ボタンを押すことによってLEDの点灯が切り替わる形で選択でき、用紙のセットとは連動していない。「A4」はA4サイズの普通紙、「ハガキ」はハガキサイズのその他光沢紙となる。そして、両方のLEDが点灯した状態は「カスタム」となっており、あらかじめスマホ向けのアプリ「Brother Mobile Connect」を利用して登録することで、もう一種類の用紙サイズと種類を利用できる形となっている。本体の液晶で自由な組み合わせで設定が出来るEP-M553TG3360と比べると、決められた3種類からしか選べないのは、複数の用紙を使用する人には不便と言えるだろう。

プリント(付加機能)
型番 EP-M553T G3360 DCP-J1200N
製品画像
自動両面印刷
自動両面
印刷速度
A4カラー文書
A4モノクロ文書
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能 ○(オートフォトファイン!EX) ○(自動写真補正)
特定インク切れ時印刷 ○(クロだけ印刷・最大30日)
自動電源オン/オフ ○/○ ○/○ −/○
(USB接続・単体使用時のみ)
廃インクタンク交換 ○(メンテナンスボックス交換可) ○(メンテナンスカートリッジ交換可)
フチなし吸収材エラー時の対応機能 ○(フチあり印刷継続可) ○(メンテナンスカートリッジ交換可)

 その他、プリントの付加機能を見てみよう。自動両面印刷機能やレーベル印刷機能は3機種とも非対応だ。一方、写真の自動補正機能としては、EP-M553Tは「オートフォトファイン!EX」、G3360は「自動写真補正」と名称は違うものの、逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われる高性能なものを搭載している。EP-M553Tではパソコンからの印刷時だけでなく、ダイレクト印刷(後述)にも利用できる。
 自動電源オン機能はEP-M553TG3360が対応している。印刷が実行されると自動的に電源がオンになる機能だ。無線LAN(Wi-Fi)でのネットワーク接続ができるようになり、プリンターから離れた場所のパソコンやスマートフォンから印刷を実行することが増えたが、そういった際にわざわざプリンターの電源を入れに行く手間が省ける。ただし、EP-M553Tは排紙トレイが引き出された状態でないと印刷は実行されないため、排紙トレイを収納していると電源が入った状態で印刷が止まっている事になる。G3360は印刷は実行されるが、プリンターの置き場所によっては印刷した用紙が落ちてしまう。一方、指定した時間が経つと自動的に電源がオフになる機能は3機種とも搭載している。ただし、液晶ディスプレイのあるEP-M553TG3360は本体だけで設定できるが、DCP-J1200Nはパソコン又はスマートフォンからWeb Based Managementにアクセスして設定する必要がある。またUSB接続または単体使用時のみ利用でき、無線LAN接続時だけでなく無線LANがオンになっているだけでも使用できない。
 EP-M553TG3360の搭載する便利な機能が、廃インクタンク(EP-M553Tはメンテナンスボックス、G3360はメンテナンスカートリッジ)をユーザーが交換できる機能だ。廃インクタンクはクリーニングの際に排出されるインクを貯めておくタンクで、多くの機種は満タンになるとメッセージが表示され修理に出して交換するまで一切のプリントが止まってしまう。一方、EP-M553TG3360はインクカートリッジなどと一緒に交換用メンテナンスボックスが売られており(EP-M553T用は1,078円、G3360用は1,320円)、交換すれば印刷が再開できる。安くすむだけでなく、プリンターが手元に無い期間が無くなるため便利だ。さらに、この2機種はフチなし吸収材が満タンになったときも、便利になっている。フチなし印刷時は、用紙サイズピッタリに印刷すると用紙の微妙なズレによってフチができてしまうため、少し大きめにプリントして、はみ出した部分はフチなし吸収材に吸収させる方法となっている。このフチなし吸収材が満タンになると、多くの機種はプリントが完全に止まってしまう。しかし、EP-M553Tはフチあり印刷に関しては継続ができるようになっているため、急ぎのプリントを行っておいて、余裕のあるときに修理に出せるようになっている。G3360は、前述のメンテナンスカートリッジを交換すると、廃インクタンクと共にフチなし吸収材も交換できるので、修理に出す必要すらなく、より便利だ。

スキャン
型番 EP-M553T G3360 DCP-J1200N
製品画像
スキャンサイズ 最大A4
(216×297mm)
最大A4
(216×297mm)
最大A4
(215.9×297mm)
読み取り解像度 1200dpi
(1200×2400dpi)
600dpi(600×1200dpi) 1200dpi(1200×2400dpi)
センサータイプ CIS CIS CIS
ADF 原稿セット可能枚数
原稿サイズ
両面読み取り
読み取り速度 カラー
モノクロ
原稿取り忘れアラーム
スキャンデーターのメモリーカード保存 ○(JPEG/PDF)

 続いて、スキャナー部を見てみよう。スキャンサイズは3機種ともA4(216×297mm又は215.9×297mm)までとなる。一方、解像度はEP-M553TDCP-J1200Nが1200dpi、G3360が600dpiで大きな差があるように思える。また、カートリッジ方式の上位機種にはもっと高解像度の機種があるが、実際には紙などの反射原稿しかスキャンできないことを考えると差は小さい。というのも、一般的には文書なら200〜300dpi、写真なら300〜600dpi程度で、よほど綺麗に保存したい場合や拡大して印刷する場合に1200dpiでスキャンすると言った程度だ。実際、L判写真を1200dpiで取り込むと約4,200×6,000ドットとなり2500万画素相当なので十分で、600dpiでも2,100×3,000ドットなので、L判サイズに印刷したり、スマートフォンの画面で見る分には十分きれいだといえる。逆にスキャナー解像度が高いセンサーでは1ドットあたりの光の取り込み量が減り、スキャン速度が低下したりノイズが発生したりするため、バランスを取って1200dpiや600dpiとしていると思われる(もちろんコストの関係もあると考えられるが)。EP-M553TDCP-J1200Nの方が、いざという時により高解像度でスキャンが出来るため安心だが、普段のスキャンやコピーであれば実用上の差は小さい。なお、CISセンサーであるため、分厚い本など浮いてしまう原稿は苦手で、ピントが合わずぼけたような画像となってしまう点も共通だ。
 メモリーカードに対応しているEP-M553Tはスキャンした原稿をパソコンを使わずメモリーカード又はUSBメモリーに保存する機能を搭載している。パソコンが起動していなくても、本体の操作だけでサッとスキャンしてメモリーカードやUSBメモリーに保存できるので便利だ。

ダイレクト印刷
型番 EP-M553T G3360 DCP-J1200N
製品画像
ダイレクトプリント メモリーカード メモリーカードリーダー接続
USBメモリー
赤外線通信
対応ファイル形式 JPEG
色補正機能 写真ズーム
フチなし/フチあり
赤目補正
明るさ調整(5段階)
コントラスト調整(5段階)
シャープネス調整(5段階)
鮮やかさ調整(5段階)
フィルター(モノクロ/セピア)
手書き合成
メモリーカードからUSBメモリー/外付けHDDへバックアップ −/− −/− −/−
PictBridge対応 ○(USB/Wi-Fi) ○(Wi-Fi)
各種デザイン用紙印刷 フォーム印刷(カレンダー・罫線・便箋・スケジュール帳・五線譜)
デザインペーパー
証明写真印刷
シール印刷
定型フォーム印刷(レポート用紙、原稿用紙、スケジュール用紙、方眼紙、チェックリスト、五線譜、漢字練習帳、アルファベット練習帳)

 メモリーカードからのダイレクト印刷を見てみよう。対応しているのはEP-M553Tのみだ。USBポートしか搭載しておらず、一見するとUSBメモリーのみ対応と思われがちだが、パソコン用のメモリカードリーダーを接続する事で、各種メモリーカードに対応できる。カードリーダーを持っていなくても安いものなら500円前後で購入でき、カードリーダーが対応していればSDカード以外にも対応するメリットもある。対応形式はJPEGのみで、PDFファイルなどの印刷は出来ない。あくまで写真印刷用となる。
 ダイレクト印刷時にはフチあり、フチなしや赤目補正などが出来るのは当然として、EP-M553Tはかなり高性能となっている。まず 写真の一部を拡大して印刷する「写真ズーム」機能も搭載する。「オートフォトファイン!EX」をダイレクト印刷時も使用できるので、自動でも綺麗に補正して印刷が可能だが、明るさ、コントラスト、シャープネス、鮮やかさを5段階から調整できるため、好みの色合いに調整も可能だ。また、モノクロとセピア調にする事もできるなど、様々な使い方が出来るだろう。さらに、EP-M553Tは写真を利用したカレンダーや罫線、便箋、スケジュール帳、五線譜などが印刷できるフォーム印刷機能、ラッピングやブックカバーなどに使える全面模様の用紙を印刷できる「デザインペーパー印刷」、3種類の証明写真サイズの写真印刷ができる「証明写真印刷」機能、ラベル用紙に印刷して複数面のシールにできる「シール印刷」機能搭載する。上位モデルよりはやや機能が削減されているとはいえ、単体で様々な印刷が可能だ。一方、ダイレクト印刷機能を持たないG3360も「定型フォーム印刷」機能は搭載しており、レポート用紙、原稿用紙、スケジュール帳、方眼紙、チェックリスト、五線譜、漢字練習帳が印刷できる。

スマートフォン/クラウド対応
型番 EP-M553T G3360 DCP-J1200N
製品画像
スマートフォン連携 アプリ メーカー専用 Epson Smart Panel
(EPSON iPrintにも対応)
Canon PRINT Inkjet/SELPHY Brother Mobile Connrct
AirPrint
対応端末 iOS 11.0以降
Android 5.0以降
iOS 13.0以降
Android 5.0以降
iOS 13.0以降
Android 5.0以降
スマートスピーカー対応 ○(Alexa/Googleアシスタント) ○(Alexa/Googleアシスタント)
Wi-Fiダイレクト接続支援機能 ○(Bluetooth LEで自動接続(初期設定時)/QRコード読み取り(iOS)/アプリ上で選択して本体で許可(Android))
写真プリント
ドキュメントプリント ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
スキャン ○(PDF/JPEG) ○(PDF/JPEG) ○(PDF/JPEG)
クラウド連携 プリント アプリ経由/本体 ○/− ○/− ○/−
オンラインストレージ ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/google classroom) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/OneNote)
SNS ○(Instagram/Facebook・コメント付き可) ○(Facebook・コメント付き可)
写真共有サイト ○(googleフォト/image.canon)
スキャン アプリ経由/本体 ○/− −/− ○/−
スキャンしてオンラインストレージにアップロード ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/google classroom) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/OneNote)
メールしてプリント ○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/PDF/Word/Excel/PowerPoint/メール本文)
(JPEG/GIF/PNG/TIFF/BMP/PDF/Word/Excel/PowerPoint/TXT/メール本文)
LINEからプリント ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint)
リモートプリント ○(リモートプリントドライバー)
スキャンしてリモートプリント ○(受信のみ)

 スマートフォン・クラウド対応機能を見てみよう。3機種ともiOSとAndroid端末に対応している。いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることでプリント又はスキャンが行える。メインで使用すると思われる写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。さらにドキュメント印刷にも対応している。PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もでき便利だ。また、スマートフォン上からスキャンを実行し、データーをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。新聞や雑誌、手書きの情報などをスマートフォンに電子化するといった使い方ができるため便利だろう。なお、iPhoneやiPadの場合、AirPrintを利用したプリントも可能だ。
 スマートフォンとの接続は、無線LAN(Wi-Fi)で行うが、無線LANルーターを経由する方法と、ダイレクトに接続する「Wi-Fiダイレクト」(キャノンの名称はダイレクト接続)が選べる。無線LANルーターを経由する方が、機能面でも制限が無く、印刷する度にプリンターと接続と切断を繰り返すのWi-Fiダイレクトと比べると便利なので、こちらを利用するのがお勧めだが、無線LANルーターが無い環境で使用する場合や、一時的に同じネットワークに入っていない他人がプリンターを使用する場合にWi-Fiダイレクトは便利だ。Wi-Fiダイレクトの接続設定は手動でもそれほど難しくは無いが、EP-M553Tは接続支援機能が提供される。iOSの場合は、本体の液晶に表示されるQRコードを標準カメラアプリで読み込めば接続が完了し、Androidの場合はアプリ上で接続するプリンターを選ぶと、本体の液晶にメッセージが表示されるので接続の許可を選べば接続が完了する。いずれに、セキュリティーキーなどの入力は一切必要が無いため非常に簡単だ。一方G3360は手動での設定方法のみである。スマートフォンのWi-Fiの設定から接続するプリンターのSSIDを選択し、パソワードを入力する。パスワードは本体の液晶で確認が可能だ。液晶を搭載しないDCP-J1200Nはもう一手間かかり、「Wi-Fi」ボタンと「用紙」ボタンを同時に押すとWi-Fiダイレクトがオンになり、同時に情報シートが印刷される。ここに書かれたSSIDとパスワードを、スマートフォンのWi-Fi設定で入力して接続する。手軽さの面ではEP-M553Tが圧倒的だ。
 さらに、EP-M553Tにはスマホからプリンターの初期設定を簡単に行える機能も搭載する。アプリ上で「新規セットアップ」を選択し、初期設定を行っていないEP-M553Tの電源をオンにすると、EP-M553Tが一覧に表示される。これを選ぶとBluetooth LEを使用してEP-M553Tに自動接続される。そして、設置からインクの補充方法などを対話形式でスマートフォン上で案内し、最後にEP-553Tをスマートフォンと同じネットワークのWi-Fiに接続して終了となる。インクの補充などの手順が非常に分かりやすいほか、自動的にネットワークの設定まで行われるので、パソコンを使わない人にとって初期設定のハードルは3機種中最も低いと言える。
 クラウドとの連携機能も3機種とも搭載している。プリントの場合、各種オンラインストレージにアクセスして、ファイルを印刷する事が可能だ。ここで大きな違いは、上位モデルとは異なり、本体だけでクラウドにアクセスすることはできず、スマートフォンのアプリ上からアクセスする形となる点だ。EP-M553TG3360はSNSの写真を印刷をコメント付きでも印刷が可能な他、G3360は写真共有サイトからの印刷する機能も搭載している。スキャンの場合、スキャンしてオンラインストレージへアップロードできる。こちらもスマートフォンのアプリ経由となるが、対応するのはEP-M553TDCP-J1200Nのみとなる。
 さらにリモートプリント機能として、EP-M553Tは印刷したい写真や文書を添付してEP-M553Tにメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、LINE上でプリンターを友達登録し、トーク画面から写真を送信すると印刷される「LINEからプリント」、パソコンやスマートフォンから通常のプリントと同じ操作で、外出先など離れた場所から自宅のEP-M553Tで印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。スキャンして離れた場所の対応複合機で印刷できる「メールdeリモート印刷」も送信は出来ないが受信(他機種でスキャンしてEP-M553Tでプリント)には対応する。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。DCP-J1200Nはメールに添付したファイルを印刷する「Eメールプリント」機能のみ、G3360はLINEのトーク画面から印刷する「PIXUSトークプリント」のみ対応している。リモートプリント機能はEP-M553Tが圧倒的に豊富だと言える。

コピー機能
型番 EP-M553T G3360 DCP-J1200N
製品画像
等倍コピー ○(A4普通紙/光沢ハガキ/カスタムサイズのみ・フチありのみ)
【アプリ上から】
○(各種サイズ・用紙対応/フチあり・フチなし対応)
拡大縮小 倍率指定 ○(25〜400%) ○(25〜400%)
【アプリ上から】
○(25〜400%)
オートフィット
【アプリ上から】
定型変倍
【アプリ上から】
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー
割り付け(2面/4面) ○/− ○/○ −/−
【アプリ上から】
○/○
その他のコピー機能 濃度調整 濃度調整
【アプリ上から】
濃度調整
地色除去コピー
バラエティコピー 見開きコピー
IDコピー
枠消しコピー
IDコピー
コピー予約

【アプリ上から】
2in1IDカードコピー
ブックコピー
透かしコピー
ポスターコピー(3×3/2×2/1×2)

 コピー機能を見てみよう。液晶を搭載するEP-M553TG3360はコピー機能も豊富だ。等倍コピーだけでなく、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「オートフィット」機能や、原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行う「定型変倍」機能、さらに25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える機能を搭載した高性能な物を搭載している。コピー枚数設定や印刷品質の設定、濃度調整にも対応するだけでなく、2枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2面割り付けにも対応し、G3360は4枚の原稿を1枚に縮小する4面割り付けにも対応している。一方、液晶を搭載しないDCP-J1200Nは、セットした用紙を登録するLEDランプを利用した設定となる。「普通紙」「ハガキ」の表示とそれぞれにLEDランプがあり、ボタンを押すことでLEDの点灯が切り替えられるので、これを利用してコピーサイズを指定する。「普通紙」はA4サイズの普通紙、「ハガキ」はハガキサイズのその他光沢紙で、等倍のフチありコピーに限定される。さらに、両方が点灯した状態は「カスタム」となっており、スマホ用アプリ「Brother Mobile Connect」を利用して、好きな用紙サイズと種類を登録しておける。3種類の用紙サイズは設定できるが、拡大縮小はおろか、濃度調整もできない。コピーする枚数だけコピーボタンを押すことで複数枚コピーが行える他、2秒長押しで最高品質でのコピーとなるが、液晶を見て設定できるEP-M553TG3360と比べると、機能面でも操作性の面でも大きく劣る。
 EP-M553TG3360はそれぞれ、様々な特殊コピーを行える機能を搭載する。免許証などの裏表をそれぞれスキャンして1枚の用紙に並べて印刷する「IDコピー」機能は両機種が搭載する。EP-M553Tは加えてA4又はB5の見開きの本を左右ページで別々にスキャンして、1枚に2面割付又は両面コピーする「見開きコピー」機能を搭載する。通常の2面割付又は両面印刷と同じ機能のようだが、本の場合は右ページと左ページをスキャンする際で向きが逆になってしまうが、片方を180度回転させて同じ向きにして並べられる。G3360は綴じ目や周囲の黒くなる部分を消す「枠消しコピー」機能と、コピー実行中でも次の原稿の読み取り操作ができる「コピー予約」も可能だ。A4普通紙など決まった用紙に等倍コピーしかしないというのであれば、DCP-J1200Nでも問題ないが、それ以上のコピーを行うなら、EP-M553TG3360が良いだろう。
 ただし、DCP-J1200Nでもこれらの機能を使う方法がないわけではない。スマートフォン用のアプリ上からコピー操作を行う事で、様々なコピーが可能だ。各種サイズや種類の用紙が使用できる他、等倍コピーだけでなくオートフィットや定型変倍、25〜400%の倍率を指定した拡大縮小が可能だ。コピー枚数や品質、濃度調整はもちろん、2面・4面割付機能も利用できる。さらに原稿の用紙の色を除去してインクを節約する「地色除去コピー」や「IDコピー」、見開きの本をコピーする際に本の傾きを自動補正し、綴じ目や周囲の影を除去する「ブックコピー」、コピー文書に透かし文字を入れられる「透かしコピー」、1枚の原稿を、2枚、4枚、9枚に分割してプリントし、貼り付ける事で大判コピーが行える「ポスターコピー」機能も利用できる。普段は等倍コピーのみだが、いざという時はスマートフォンを利用すればEP-M553TG3360と同等以上のコピー機能が利用できる。

操作パネル/インターフェース/本体サイズ
型番 EP-M553T G3360 DCP-J1200N
製品画像
液晶ディスプレイ 1.44型
(90度角度調整可)
2行モノクロ
操作パネル ボタン式
(90度角度調整可)
ボタン式 物理ボタン
インターフェイス USB他 USB2.0×1 USB2.0×1 USB2.0×1
無線LAN IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(ダイレクト接続対応)
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
有線LAN
対応OS Windows 11/10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 11/10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.12.6〜
(AirPrint利用)
Windows 11/10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.14.6〜
(AirPrint使用)
耐久枚数 3万枚 4.8万枚 N/A
外形寸法(横×奥×高) 390×331×166mm 445×330×167mm 435×359×161mm
重量 5.6kg 6.4kg 6.1kg
本体カラー ホワイト ブラック&シルバー ホワイト

 液晶ディスプレイと操作パネルを見てみよう。これは3機種で大きな差がある所だ。最も高性能なのはEP-M553Tである。液晶ディスプレイと操作パネルは本体前面に取り付けられ、全体を持ち上げて角度調整が可能となっている。最大90度(水平)まで起こすことができるので、垂直から水平まで見やすい角度で操作ができるよう工夫されている。低い位置に設置しても高い位置に設置しても使いやすいだろう。液晶ディスプレイは1.44型と上位モデルと比べるとかなり小さいが、バックライト付きのカラー液晶となっており明るく視野角も広めだ。操作パネルも、液晶右に、上下左右の方向キーと、その中央に「OK」ボタン、その周囲に「戻る」「ストップ」「スタート」ボタン、液晶左に「ホーム」ボタンと、必要十分なキー数と分かりやすいキー配置なので、比較的使いやすい。液晶内のメニューも、単に大型液晶と同じものを小さく表示するのでは無く、1枚ずつめくるように項目が表示されるため、表示内容が小さくなりにくく、またメニュー構成も、早い段階で選択肢を設けることで、メニューの階層が深くならないよう工夫されている。最低限の操作性は確保されていると言えるだろう。
 一方のG3360は本体上面の左側に縦に並んでいる。液晶は微妙に前に向いているが、ほぼ真上なので、高い位置に設置すると操作しにくそうだ。さらに液晶がモノクロ液晶で、2行文字表示のみだ。漢字表示は出来るが、EP-M553Tの様なグラフィカルな表示はできないため一目で分かりにくい。サイズは横長の2行表示だが、小さいEP-M553Tと比較しても、実測値で幅は約75%大きいが、高さは約45%しかなく、面積比では約80%になる。その上、バックライトを搭載していないため、暗いところでの操作ができないのもデメリットだ。操作パネルを見てみると、液晶が小さいこともあって機能を選択するトップ画面が無いため、「コピー」「スキャン」「セットアップ」「ネットワークコネクト」といった各機能にダイレクトに入れるボタンが並んでいる。代わりに液晶内の操作は、設定画面を表示する「メニュー」ボタンの他、「左右カーソル」と「OK」「戻る」と最低限のボタン数となっており、あとは「カラースタート」「モノクロスタート」と「ストップ」となっている。カーソルが左右しかないため、操作がわかりにくく、階層も深くなってしまい、操作が煩雑になってしまう。操作性の面ではかなり劣ることになる。
 DCP-J1200Nは液晶ディスプレイ自体を搭載しない。操作パネルも本体上面の左手前に搭載されており、こちらも高い位置に設置した場合操作しにくそうだ。ボタン配置もシンプルで、上から「用紙」「Wi-Fi」「ストップ/電源」「モノクロコピー」「カラーコピー」の5つだけだ。加えていくつかのLEDランプがあるため、これによって状態の確認や、コピー時の用紙設定を行う事になる。単純なコピーなら、「用紙」ボタンを押して使用する用紙を選択した後「モノクロコピー」か「カラーコピー」を押すだけなので何とか分かるが、それ以上の各種操作を行う際にはマニュアル無しでの操作はほぼ不可能だ。例えばヘッドクリーニングは、「ストップ」と「用紙」を同時に押し、「インク」LEDが点滅し始めたら、「カラーコピー」ボタンを押すと4色全て、「モノクロコピー」を押すとブラックインクのみクリーニングが行われる。Wi-FiにWPSを利用して接続する場合はワンプッシュ方式なら「Wi-Fi」ボタンを3回、PIN方式なら5回押す。ネットワーク設定リストを印刷するなら「Wi-Fi」と「モノクロコピー」を同時に押す。こうなると、本体での操作は、せいぜいが等倍コピーのみで、各種設定やメンテナンスはパソコンやスマートフォンから行うというのがメインの使い方となるだろう。
 インターフェースは3機種ともUSB2.0に加えて、無線LAN(Wi-Fi)接続に対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、無線LAN(Wi-Fi)ルーターで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。その場合、プリンターを無線LANルーターに接続しておけば、家庭内のどのパソコンでもプリント可能となり非常に便利だろう。またスマートフォンやタブレットからの印刷も可能となる。またWi-Fiダイレクト(キヤノンはダイレクト接続)に対応しているため、無線LANルーターの無い環境でも、スマートフォンやタブレットと直接Wi-Fi接続が可能となっている点も共通の便利な点だ。
 対応OSは差が大きい。EP-M533TはWindows XP SP3以降は全て対応する。MacOSもダウンロード対応とはなるが10.6.8以降に対応する。マイクロソフトのサポートの終了したWindows XPやVistaにも対応するのは安心だ。一方、G3360DCP-J1200NはWindows 7 SP1以降の対応で、Windows XPやVistaには非対応なだけでなく、Windows 8にも非対応である点は注意が必要だ。MacOSもG3360は10.12.6以降、DCP-J1200Nは10.14.6以降と比較的新しいバージョンのみ対応だ。さらにMacOS用のドライバーは提供されず、AirPrintを使用する方法となっているため、一部の印刷設定、本体の動作設定ができない点でWindowsで利用する場合に比べて不便になっている。
 本体サイズを見てみよう。EP-M553Tは390×331×166mmで、インクカートリッジ方式の機種と比べても高さが25mmほど大きいだけで幅と奥行きは変わらない、かなりコンパクトなサイズとなっている。これを基準に見ていこう。G3360は445×330×167mmとなる。奥行きと高さはほぼ同等だが、幅が55mmも大きいため、大きく見えてしまう。DCP-J1200Nも435×359×161mmと大きめで、幅は45mm、奥行きは28mm大きくなる。ただし、奥行きに関しては、EP-M553TG3360は背面給紙であるため、後方と上方にスペースが必要だが、DCP-J1200Nは前面給紙だけあるためスペースが不要だ。使用時を考えると横幅はEP-M553Tが、奥行きはDCP-J1200Nが小さいと言える。
 ちなみに本体の耐久枚数に関しては、EP-M553Tが3万枚、G3360が4万8000枚と公表されている。家庭向けの機種は1万〜1万5000枚と言われているため、2〜3倍の耐久性となる。印刷枚数が多い機種だけに、高耐久なのはうれしいところだ。一方、DCP-J1200Nは非公開となるが、上位モデルでは耐久枚数を公表していることから、DCP-J1200Nは高耐久でない可能性もある。本体のカラーバリエーションはないが、EP-M553TDCP-J1200Nはホワイトなのに対して、G3360は下半分がブラック、上半分がシルバーで印象はかなり異なっている。



 3機種の内、どの機種がオススメかを見てみよう。まず写真印刷を行うならEP-M553Tが一押しだ。EP-M553Tは唯一染料ブラックを搭載するだけで無く、写真の耐保存性も高く、3機種で唯一SDカードなどからダイレクト印刷も可能だ(要メモリカードリーダー接続)。その際の画質補正機能なども豊富で、写真印刷向けの機能は他の2機種より格段に上だ。またスマホとの接続も機種を問わず簡単で、初期設定も行え、リモートプリントも可能なので、スマホからの写真印刷も手軽だ。それでいて、コピー機能やスキャナの性能も十分で、メンテナンスボックスの交換が可能であるなどの安心感もある。カラー液晶を搭載するため本体での操作性も良い。印刷コストはオンキャリッジ式なのでタンク式としてはやや高いが、DCP-J1200Nよりは安く、インクボトル自体が低価格なのでインク購入時に一度に出る出費が小さくて済む。万人にお勧めしやすい機種と言える。
 では、文書印刷やコピー中心の使い方ならどうだろうか。とにかく印刷コストが安い機種が欲しい、もしくはできるだけ安価に低印刷コストの機種が欲しいならG3360だ。3機種中、印刷コストの安さは抜きに出ていて、耐久枚数が最も高いため印刷枚数が多くても安心だ。メンテナンスカートリッジが交換可能であるのも長く使う上で安心だろう。モノクロの文字液晶は操作性はかなり悪いが、パソコンからのプリントやスキャン、もしくはスマホからのプリントがメインで、コピーなどは等倍コピー程度の簡単な操作しかしないというなら問題ないし、いざという時は本体だけで拡大・縮小コピーや2面割付なども可能だ。一方、印刷コストは究極を求めないが、印刷速度や前面給紙という点を重視するならDCP-J1200Nだ。印刷コストは3機種中最も高いが、一般的なインクカートリッジの機種と比べると十分低印刷コストだ。それでいて、印刷速度は格段に速く、前面給紙カセットはスペースを取らないだけでなく、用紙をセットしたままに出来るメリットがある。他機種よりもセット可能枚数も多い。常に電源を入れておき、1、2枚ずつのプリントを頻繁に使用するという使い方に向いているといえる。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/


EP-M553T
(ドキュメントパック非同梱)
G3360
DCP-J1200N