プリンター徹底比較
2021年末時点のプリンター
〜エプソン・キャノン・ブラザーのプリンターを比較〜
(2022年2月25日公開)

プリンター比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンター比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。


ファクス付きA4複合機(カートリッジ方式・2万円以下)
 
 ファクス機能付きA4複合機の中で低価格な2万円以下の機種である。エプソンのPX-M730F(19,800円)とEW-M530F(17,050円)、キャノンのMAXIFY MB2730(21,868円)、MAXIFY MB2130(18,568円)が該当する。価格的に数千円しか差が無い4機種だがどういった違いがあるのか詳しく見ていこう。

プリント(画質・速度・コスト)
型番 エプソン エプソン キャノン キャノン
型番 PX-M730F EW-M530F MAXIFY MB2730 MAXIFY MB2130
製品画像
実売価格(メーカーWeb/税込) 19,800円 17,050円 21,868円 18,568円
インク 色数 4色 4色 4色 4色
インク構成 ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック(顔料)
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成 各色独立 各色独立 各色独立 各色独立
顔料/染料系 顔料
(文書キャビネット保存400年)
染料(カラー)/顔料(黒) 顔料
(MAXIFY用新顔料インク)
顔料
(MAXIFY用新顔料インク)
インク型番 IB09B番(大容量)
IB09A番(標準容量)
IB10番 1300XL番(大容量)
1300番(標準容量)
1300XL番(大容量)
1300番(標準容量)
ノズル数 1568ノズル 784ノズル 4352ノズル 4352ノズル
カラー:各256ノズル
黒:800ノズル
カラー:各128ノズル
黒:400ノズル
カラー:各1024ノズル
黒:1280ノズル
カラー:各1024ノズル
黒:1280ノズル
最小インクドロップサイズ N/A(3.8pl(MSDT)?) N/A(3.3pl(MSDT)?) N/A(カラー5pl/ブラック11pl?) N/A(カラー5pl/ブラック11pl?)
最大解像度 4800×2400dpi 4800×1200dpi 600×1200dpi 600×1200dpi
高画質化機能 PrecisionCoreプリントヘッド(600dpi) PrecisionCoreプリントヘッド(600dpi)
印刷速度 L判縁なし写真(メーカー公称) N/A 75秒 N/A N/A
A4普通紙カラー(ISO基準) 11.0ipm 8.0ipm 15.5ipm 13.0ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準) 21.0ipm 14.5ipm 24.0ipm 19.0ipm
印刷コスト
(税込)
L判縁なし写真 N/A 30.8円 N/A N/A
A4カラー文書 大容量:10.5円 14.7円 大容量:9.8円
標準容量:13.3円
大容量:9.8円
標準容量:13.3円
A4モノクロ文書 大容量:3.6円 5.1円 大容量:3.4円
標準容量:4.6円
大容量:3.4円
標準容量:4.6円
インク1本の印刷枚数
(カラー文書)
ブラック 大容量:1,100ページ
標準:350ページ
600ページ 大容量:1,200ページ
標準:912ページ
大容量:1,200ページ
標準:912ページ
カラー 大容量:600ページ
標準:300ページ
350ページ 大容量:1,523ページ
標準:304ページ
大容量:1,523ページ
標準:304ページ
インク1本の価格
(税込)
ブラック 大容量:4,103円
標準:1,848円
3,168円 大容量:3,850円
標準:1,705円
大容量:3,850円
標準:1,705円
カラー 大容量:各1,331円
標準:各968円
各1,078円 大容量:各1,969円
標準:各902円
大容量:各1,969円
標準:各902円

 それでは、プリントの画質・速度・コスト面を見てみよう。4機種とも4色インクとなっているが、インク構成は異なっている。PX-M730FMAXIFY MB2730MAXIFY MB2130は全色顔料インクを採用する。顔料インクは普通紙への印刷時にクッキリとしたメリハリのある印刷が行えるというメリットがある。そのため、細かな線や小さな文字、中抜き文字もつぶれず綺麗に印刷できる。また、耐水性も高いというメリットもあり、濡れた手で触ったりマーカーで線を引いても滲まない点も便利である。そのため、パソコンから普通紙への印刷や、普通紙コピー、年賀状印刷に向いている他、ファクス機能を使う時も、受信したファクスを普通紙に印刷する際に高画質、高耐水で印刷が出来る。ただし、顔料インクにはデメリットもあり、写真用紙に印刷すると、発色はあまり良くなく、また写真用紙本来の光沢感も薄れ半光沢のような鈍い光り方になってしまう。また、光沢年賀状をはじめとする一部光沢紙や、フィルム紙など、顔料インクに対応しない用紙もある。これら3機種は普通紙印刷に特化したインク構成であると言え、完全にビジネス向けの機種となっている。
 一方、EW-M530Fは、顔料インクはブラックだけ搭載し、カラーは染料インクとしている。染料インクは普通紙印刷をした場合は、用紙へしみこむ際に若干広がりメリハリが弱く、線が太くなったり小さな文字が潰れやすくなる他、水にも弱いが、写真用紙にもキレイに印刷が出来、用紙の制限も少ないのはメリットだ。ただし、今度は染料インクはカラー3色のみで、染料ブラックを搭載しない事が問題となる。写真印刷の場合、黒色はカラーインクを重ねて表現するが、完全な黒にはならず、濃いグレーや濃い茶色になってしまう。また濃い色の中の表現に黒インクが使えないため、夜景や、影の中の表現などが苦手になる。写真印刷を考えた場合、染料ブラックを搭載した機種と比べると画質は大きく劣ってしまうが、それでも光沢感の面やカラーの発色の面では、顔料4色の機種と比べると有利だ。写真印刷が特別綺麗ではないが、かろうじて印刷できるレベルであるというのが、EW-M530Fの画質だ。ちなみに普通紙印刷画質を見てみると、EW-M530Fは前述のようにブラックのみ顔料インクを搭載している。カラーインクは染料インクであるため、黒色しか顔料インクの恩恵は得られず、また黒と言っても、完全な黒ではないグレーの部分には染料のグレーインクやカラーインクを使用する場合もあるし、カラーの中に混ざっている場合も染料ブラックがが使われる場合もあるなど、全ての黒色部分で顔料インクの恩恵を受けられるわけではないが、文字や線の部分だけでも顔料インクが使えると、全体的に引き締まって見えるのは確かだ。全色顔料のPX-M730FMAXIFY MB2730MAXIFY MB2130ほどではないが、文書もある程度キレイに印刷できるように工夫されている。オールマイティーに印刷できる点から、家庭やホームオフィスなどの小規模オフィス向けといえるだろう。
 写真印刷の画質面では最小インクドロップサイズも大きな影響がある。PX-M730Fは非公開ながら、海外の同機能のモデルから、3.8plと予想される。EW-M530Fも非公開ながら、同じく3.3plと予測される。MAXIFY MB2730MAXIFY MB2130はも非公開だが、同じくカラーが5pl、ブラックが11plと考えられる。一番小さいのはEW-M530Fだが、家庭向けの写真印刷向けプリンターでは1.5plという機種もあることを考えると、いずれにしてもドットが大きく、ザラザラした感じが強くなると言える。
 一方、普通紙印刷に関しては、PX-M730Fが優秀だ。前述の全色顔料インクである事に加えて、PrecisionCoreプリントヘッドを採用している。普通紙への印刷解像度を360dpiから600dpiへアップした他、普通紙印刷時の発色やエッジ処理にも工夫がなされ、普通紙印刷の画質は非常に高くなっている。PrecisionCoreプリントヘッドという点ではEW-M530Fも搭載しており、同じく普通紙印刷が高解像度で行える。顔料インクがブラックだけだが、黒文字や黒線などではPX-M730Fと同等の画質が得られることになる。MAXIFY MB2730MAXIFY MB2130も「MAXIFY用新顔料インク」という名称を付け、特に黒の濃度が高くなっているという事で、画質は高いといえる。ただし、MAXIFY MB2730MAXIFY MB2130は最小インクドロップサイズが普通紙専用と考えてもかなり大きく印刷解像度も低いため、文書印刷でも文字以外の写真やイラスト、グラフなどでは粒状感が他機種より目立ってしまう。普通紙の印刷画質はPX-M730Fが最も上だろう。また、PX-M730Fは耐保存性の面でもこだわりがあり、文書の耐保存性を高めている。キャビネットに保存で400年をうたっているため、重要書類が消えてしまう心配がないのは重要だ。
 印刷速度を見てみよう。EW-M530Fを除く3機種は文書印刷メインの機種と言うことで、写真印刷の速度はEW-M530Fのみ公開している。L判写真が75秒となっており、同じエプソンの家庭用の写真向けプリンターでは13〜17秒程度である事を考えるとかなり遅い。価格が安い事もあるが、印刷速度に影響するノズル数は、カラーが各128ノズル、ブラックが400ノズルで、写真向けプリンターのカラー、モノクロとも180ノズルと比べても、カラーは3分の2程度でブラックは倍以上である。カラーのノズル数の少なさが影響したとしても、そこまでの差ではない事から、EW-M530Fは普通紙印刷に合わせたチューニングがなされているのではないかと思われる。写真や年賀状(インクジェットハガキ)などへの印刷は、かなり忍耐が必要そうだ。
 一方、文書の印刷(普通紙への印刷)速度は4機種とも公開されており比較しやすい。PX-M730Fはノズル数をカラー各256ノズル、モノクロ800ノズルと、EW-M530Fの倍とする事で印刷速度を向上させており、A4カラー文書が11.0ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、A4モノクロ文書は21.0ipmと特にモノクロプリントは非常に高速だ。ファーストプリントもカラーが9.3秒、モノクロが6.3秒となっており、1枚だけの原稿でもサッと印刷できる。EW-M530Fは前述のようにノズル数はPX-M730Fの半分だが、カラー文書が8.0ipm、モノクロ文書が14.5ipmと健闘している。ファーストプリントも、カラーが15.0秒、モノクロが9.0秒とそれほど悪くはない。よほど印刷枚数が多くなければ十分な速度だろう。MAXIFY MB2730はカラーが各1024ノズル、ブラックが1280ノズルと多くなっていることに加えて、1枚目の印字中に2枚目を重ねて搬送させる「重ね連送」機能を搭載しているため、カラー文書が15.5ipm、モノクロ文書が24.0ipmとなっている。PX-M730Fと比べると、モノクロは大きな差ではないが、カラーが特に高速だ。ファーストプリントもカラー7秒、モノクロ6秒と最も高速だ。印刷速度重視なら非常に魅力的と言える。MAXIFY MB2130はノズル数はMAXIFY MB2730と同等だが、重ね連送機能を搭載していないため、カラー文書が13.0ipm、モノクロ文書が19.0ipmとやや遅くなる。PX-M730Fとの比較で、モノクロは2.0ipm遅く、カラーは2.0ipm速いので、カラープリント重視なら有利と言える。ファーストプリントは重ね連送に関係が無いため、MAXIFY MB2730と同じく、カラー7秒、モノクロ6秒となっている。いずれにしても、文書の印刷速度は上位機種ほどではないが、比較的高速だ。
 最後に印刷コストだが、こちらもビジネス向けのPX-M730FMAXIFY MB2730MAXIFY MB2130と、小規模オフィス・家庭向けのEW-M530Fで大きく異なっている。ビジネス向けのPX-M730FMAXIFY MB2730MAXIFY MB2130は上位モデルほどではないが大容量インクを用意しており、印刷コストもかなり安くなっている。PX-M730FはIB09系のインクだが、IB09の後ろに色(K/C/M/Y)が付き、その後ろに大容量ならB、標準ならAが付く。例えば大容量のシアンならIB09CBとなる。大容量カートリッジの場合ならブラックインクは1,100ページ、カラーインクは各色平均600ページの印刷が可能となっている。ブラックは4,103円、カラーは各1,331円である。MAXIFY MB2730MAXIFY MB2130は1300番のインクで、大容量の1300XLと標準容量の1300がある。大容量の場合、ブラックは1,200枚、カラーは各色平均910枚の印刷が可能だ。ブラックが3,850円、カラーが1,969円となる。ちなみに標準容量はこの3分の1になる。これら3機種のインクは4色構成の割には高価で、1セット買うとPX-M730Fが8,096円、MAXIFY MB2730MAXIFY MB2130が9,757円だが、家庭向けの機種と比べるとかなり大容量になっている。そのためPX-M730FがA4カラー文書で10.5円、A4モノクロ文書で3.6円、MAXIFY MB2730MAXIFY MB2130もそれぞれ9.8円と3.4円となっている。ややMAXIFY MB2730MAXIFY MB2130の方が印刷コストは安いが、カラーは0.7円、モノクロに至っては0.2円なので、機種を決める上での決め手になるほどの差ではない。また卓上タイプのレザープリンターなどと比べてもモノクロは同等、カラーは安いといえる。一方、EW-M530FはIB10番のインクとなっており、サイズは1種類だ。ブラックが600ページ、カラーが各350ページ印刷でき、ブラックインクが3,168円とカラーインクが各1,078円だ。1セットで6,402円と、他の3機種より安いが、それ以上に印刷可能枚数が少ないため、印刷コストはカラー文書で14.7円、モノクロ文書で5.1円となる。PX-M730Fとの比較で約1.4倍となる。印刷枚数がある程度多い場合は、EW-M530Fでは後々インク代が高くつく危険性がある。逆に印刷枚数が少ない場合は、インクカートリッジの量が少ないため使い切りやすいというメリットがある。このように、印刷速度、印刷コストのどちらも、ビジネス用途で大量印刷をするのかによって、向いている機種が変わってくることがわかる。

プリント(給紙・排紙関連)
型番 PX-M730F EW-M530F MAXIFY MB2730 MAXIFY MB2130
製品画像
対応用紙サイズ 定型用紙 L判〜A4 L判〜A4 L判〜A4
(フチ無し印刷非対応)
L判〜A4
(フチ無し印刷非対応)
長尺用紙 長さ1,200mmまで 長さ1,200mmまで 長さ355.6mmまで 長さ355.6mmまで
給紙方向
(セット可能枚数(普通紙/ハガキ/写真用紙))
背面
前面 【カセット】
(250枚/65枚/50枚)
【カセット】
(150枚/30枚/20枚)
【カセット上段】
(250枚/40枚/20枚)
【カセット下段】
普通紙のみ・A4/レター/リーガル
(250/−/−)
【カセット】
(250枚/40枚/20枚)
その他
排紙トレイ自動伸縮
用紙種類・サイズ登録 ○(カセット収納連動) ○(カセット収納連動) ○(カセット収納連動) ○(カセット収納連動)
用紙幅チェック機能 ○(印刷時) ○(印刷時)

 続いて、給紙・排紙関連の機能を見てみよう。使用できる用紙は、4機種ともL判〜A4となり同等だ。ただし長尺印刷に関しては違いがあり、PX-M730FEW-M530Fは1,200mm(1.2m)まで対応しており、長尺のPOPや垂れ幕などの印刷も可能だ。一方MAXIFY MB2730MAXIFY MB2130は355.6mmまでとなる。また、MAXIFY MB2730MAXIFY MB2130はフチなし印刷には非対応である。写真印刷には元々向いていないが、フチなしデザインのハガキや、チラシなどの他、背景色をフチなしで印刷したい場合などには注意が必要だ。
 給紙に関しても、4機種とも前面給紙カセットのみとなっており似ている。しかし細かな点で違いがある。前面給紙カセットは、ビジネス向けのPX-M730FMAXIFY MB2730MAXIFY MB2130は、1段で250枚までセット可能となっており、大量印刷に向いている。MAXIFY MB2730はこのカセットが2段あるため、A4用紙を2段ともセットして500枚使用する事もできるし、上段にB5、下段にA4という風に250枚ずつ違う用紙もセットできる。PX-M730FMAXIFY MB2130は1段となるため、250枚を1種類と言うことになる。ただし、MAXIFY MB2730も下段は普通紙のみで、A4・レター・リーガルサイズのみ対応となるため、2段ともB5をセットしたり、ハガキとB5のような組み合わせは不可能だ。一方EW-M530Fの前面給紙カセットは150枚までセット可能と、やや少なくなっている。とはいえ家庭向けでは100枚程度が一般的なのでそれよりは多い事や、印刷コスト面から、大量印刷は行わないと思われるため、十分と言えるだろう。ハガキのセット可能枚数は、PX-M730Fが65枚、EW-M530Fが30枚、MAXIFY MB2730MAXIFY MB2130は40枚となっており、PX-M730Fが最も多い。ちなみにPX-M730FEW-M530Fの前面給紙カセットは少し前に飛び出した状態で固定で、デザイン上もそれを基準に作られており本体サイズにもその分が含まれている。一方、MAXIFY MB2730MAXIFY MB2130はカセットを縮めて本体に完全収納状態にでき、本体サイズもその状態での表記となる。ところがその状態ではいずれのサイズの用紙もセットできないため、基本的にはカセットを伸ばした状態で使う事になるだろう。その場合、本体から70mm飛び出ることとなる点は注意が必要だ。
 4機種とも用紙種類とサイズの登録機能を搭載している。いずれも前面給紙カセットを挿し込むと自動的に登録画面が表示されるため便利だ(されないようにもできる)。また、液晶ディスプレイでメニューから手動で登録も可能である。そして、この登録内容と、印刷時の用紙設定が異なっている場合、メッセージが表示される仕組みだ。また、PX-M730FEW-M530Fは、印刷時に実際の用紙幅をセンサーでチェックする機能もあり、用紙外にインクを打ってしまい、プリンター内部が汚れるのを防ぐ事が出来る

プリント(付加機能)
型番 PX-M730F EW-M530F MAXIFY MB2730 MAXIFY MB2130
製品画像
自動両面印刷 ○(普通紙のみ) ○(普通紙のみ) ○(普通紙のみ)
自動両面
印刷速度
A4カラー文書 7.0ipm 4.5ipm 9.5ipm 8.5ipm
A4モノクロ文書 12.0ipm 6.5ipm 13.0ipm 12.0ipm
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能 ○(オートフォトファイン!EX) ○(オートフォトファイン!EX)
特定インク切れ時印刷 ○(黒だけでモード・5日間のみ) ○(黒だけでモード・5日間のみ)
自動電源オン/オフ −/○ −/○ ○(時刻指定)/○(時刻指定) ○(時刻指定)/○(時刻指定)
廃インクタンク交換 ○(メンテナンスボックス交換可) ○(メンテナンスボックス交換可)
フチなし吸収材エラー時の対応機能 ○(フチあり印刷継続可)

 自動両面印刷機能は4機種とも搭載している。ただし、EW-M530F以外の3機種は普通紙のみの対応となる。ハガキの両面印刷を行いたいならEW-M530Fしか行えない。自動両面印刷時の速度を見てみると、PX-M730Fはカラーが7.0ipm、モノクロが12.0ipmとなる。自動両面印刷は、紙が後方から前方に進みながら片面を印刷し、その後、そのまま前方から後方に吸い込まれ、前面給紙の時と同じく、後方で180度曲げられて方向転換する事で裏向け、裏面を印刷する。この裏返し動作に時間がかかるため、片面印刷と比べてカラーは64%、モノクロは57%と遅くなってしまう。EW-M530Fもカラー4.5ipm、モノクロ6.5ipmで、MAXIFY MB2730は9.5ipmと13.0ipm、MAXIFY MB2130は8.5ipmと12.0ipmと、やはり片面印刷より遅くなる。とはいえ、低下率に大きな差は無いため、片面印刷の速度差は、そのまま両面印刷にも当てはまっている。
 PX-M730FEW-M530Fは「オートフォトファイン!EX」という写真の画質補正機能も搭載している。逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われるため、気楽に写真印刷が行えるようになっている。
 最近の機種では搭載機種が増えた「印刷が実行されると自動的に電源がオンになる」機能と、ほぼ必須になりつつある「指定した時間操作がないと自動で電源がオフになる」機能だが、ファクス付きモデルでは状況が異なる。常時電源を入れておかなければファクス受信が行えないためである。そのため、PX-M730FEW-M530Fは自動電源オフのみ搭載している。一方のMAXIFY MB2730MAXIFY MB2130は自動電源オン・オフというよりは、時間指定による電源オン・オフが設定できる。オフィスの就業時間や、商店の営業時間などに合わせて決まった時間に電源を入れ、決まった時間に電源が切れるというものである。ある意味オフィス向けという機種では、この機能は便利な場合もあるだろう。
 一方、PX-M730FEW-M530Fの便利な点として、交換式メンテナンスボックス(廃インクタンクの交換)に対応している事がある。メンテナンスボックスとはクリーニング時に排出される廃インクを貯めるもので、満タンになると通常は修理に出して交換する必要があり、プリンターが使えない期間が発生し、交換費用もそれなりに掛かってしまう。しかしPX-M730FEW-M530Fはインクカートリッジと共に、交換用タンクが販売されており(PX-M730F用は2,497円、EW-M530F用は1,980円)ユーザー自身で簡単に交換できるようになっている。いざという時に使用できない期間の発生を防ぐことができるこの機能はうれしいところだ。さらにPX-M730Fはフチなし吸収材(フチなし印刷時は用紙サイズより少し大きめにプリントする事で実現しており、そのはみ出したインクを吸収させるもの)が満タンになった場合にも便利になっている。こちらは修理対応となるが、フチなし吸収材エラーが出ても「フチあり」印刷に限っては印刷が継続できる機能を搭載する。とりあえず、急ぐ印刷だけを行っておき、時間に余裕のある時に修理に出すことが可能だ。

スキャン
型番 PX-M730F EW-M530F MAXIFY MB2730 MAXIFY MB2130
製品画像
最大スキャンサイズ A4
(216×297mm)
A4
(216×297mm)
A4
(216×297mm)
A4
(216×297mm)
読み取り解像度 1200dpi 1200dpi 1200dpi 1200dpi
センサータイプ CIS CIS CIS CIS
原稿取り忘れアラーム
ADF 原稿セット可能枚数 35枚 30枚 50枚 50枚
原稿サイズ A4/レター/リーガル A4/レター/リーガル 148×148mm〜216×356mm 148×148mm〜216×356mm
両面読み取り
読み取り速度 カラー 8.0ipm 5.0ipm 15.5ipm N/A
モノクロ 12.0ipm 5.0ipm N/A N/A
スキャンデーターのメモリーカード保存 ○(JPEG/PDF/PDA/A/TIFF) ○(JPEG/PDF・USBメモリーのみ) ○(JPEG/PDF・USBメモリーのみ)

 続いて、スキャナー部を見てみよう。スキャンサイズはいずれもA4(216×297mm)で同等だ。また解像度も4機種とも1200dpiのCISスキャナーを搭載しており同等だ。家庭向けにはもっと高解像度の機種があるが、紙などの反射原稿しかスキャンできないことを考えると1200dpiでも十分だ。一般的には文書なら200〜300dpi、写真なら300〜600dpi程度で、よほど綺麗に保存したい場合に1200dpiでスキャンすると言った程度だ。実際写真サイズを1200dpiで取り込むと約4,200×6,000ドットとなり2500万画素相当なので十分といえる。逆にスキャナー解像度が高いセンサーでは1ドットあたりの光の取り込み量が減り、スキャン速度が低下したりノイズが発生したりするため、バランスを取って1200dpiとしていると思われる。なお、4機種ともCIS方式であるため、分厚い本など浮いてしまう原稿は苦手で、ピントが合わずぼけたような画像となってしまう点は共通だ。
 そして4機種ともファクス付きモデルと言うことでADFを搭載している。セット可能枚数はPX-M730Fは35枚まで、EW-M530Fは30枚まで、MAXIFY MB2730MAXIFY MB2130は50枚までと差はあるが、いずれも片面スキャンとなる。上位機種のように両面スキャンには対応しない。またスキャンスピードにも違いがある。PX-M730Fはカラーが8.0ipm(image per minute:1分間にスキャン可能な面数)、モノクロが12.0ipmである。それに対してEW-M530Fはカラー、モノクロ共に5.0ipmと遅くなる。一方MAXIFY MB2730はカラーが15.5ipmと最も高速だ(モノクロは非公表)。複数枚の原稿のスキャンだけでなく、コピー時にも差が出る。基本的にプリント速度はスキャン速度を上回っているため、ADFを利用したコピーの場合、スキャン速度が足を引っ張ることになる。その点でMAXIFY MB2730は、カラーのスキャン速度はプリント速度は同等となっており、足を引っ張らない事になる。ちなみにMAXIFY MB2130はスキャン速度が公表されていない。
 EW-M530Fを除く3機種ともスキャンした原稿をパソコンを使わずにUSBメモリーに保存する機能を搭載している。パソコン無しで簡単にスキャンが行えるできるため便利だ。JPEG又はPDF形式での保存に対応しており、PX-M730FはさらにPDA/AとTIFF形式にも対応する。

ダイレクト印刷
型番 PX-M730F EW-M530F MAXIFY MB2730 MAXIFY MB2130
製品画像
ダイレクトプリント メモリーカード メモリーカードリーダー対応
USBメモリー
(外付けHDD対応)
赤外線通信
対応ファイル形式 JPEG/TIFF/PDF(スキャン to 外部メモリー機能で作成したPDFのみ) JPEG/TIFF/PDF(本機でスキャンしてUSBメモリーに保存したPDFのみ) JPEG/TIFF/PDF(本機でスキャンしてUSBメモリーに保存したPDFのみ)
色補正機能 フチなし/フチあり
赤目補正
手書き合成
メモリーカードからUSBメモリー/外付けHDDへバックアップ −/− −/− −/− −/−
PictBridge対応
各種デザイン用紙印刷

 ダイレクト印刷機能を見てみよう。対応するのはEW-M530F以外の3機種となる。とは言っても、メモリーカードリーダーは搭載せず、USBポートのみ搭載しているため、基本的にはUSBメモリーからの印刷がメインとなる。また、画質面でも、デジタルカメラの写真を印刷するというよりは、前述のスキャンしてUSBメモリーに保存したデーターを印刷する場合などが想定されているだろう。対応ファイル形式も一般的なJPEGとTIFFに加えて、3機種ともスキャンしてUSBメモリーに保存する際にPDF形式で作成したファイルからの印刷にも対応しているのも、こういった使い方が想定されているからだろう。なおこれら3機種も、写真も印刷できないわけではない。特にPX-M730Fは、USBポートにパソコン用のメモリカードリーダーを接続すれば、SDカードなどからの印刷も可能だ。また外付けHDDにも対応する。MAXIFY MB2730MAXIFY MB2130もUSBメモリーに写真を入れておけば印刷は可能だ。本体の液晶で一覧から写真を選んでダイレクト印刷ができる。特にPX-M730Fの場合、フチなし・フチありの切り替えや赤目補正だけでなく、写真補正機能「オートフォトファイン!EX」も利用可能で、ある程度の機能を備えている。PX-M730Fは画質さえ多少劣るのを許容できれば、ダイレクト印刷機能は十分に使えるレベルである。

スマートフォン/クラウド対応
型番 PX-M730F EW-M530F MAXIFY MB2730 MAXIFY MB2130
製品画像
スマートフォン連携 アプリ メーカー専用 Epson Smart Panel
(EPSON iPrintにも対応)
Epson Smart Panel
(EPSON iPrintにも対応)
Canon PRINT Inkjet/SELPHY Canon PRINT Inkjet/SELPHY
AirPrint
対応端末 iOS 11.0以降
Android 5.0以降
iOS 11.0以降
Android 5.0以降
iOS 13.0以降
Android 5.0以降
iOS 13.0以降
Android 5.0以降
スマートスピーカー対応 ○(Alexa/Googleアシスタント) ○(Alexa/Googleアシスタント) ○(Alexa/Googleアシスタント) ○(Alexa/Googleアシスタント)
Wi-Fiダイレクト接続支援機能 ○(QRコード読み取り(iOS)/アプリ上で選択して本体で許可(Android))
写真プリント
ドキュメントプリント ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
スキャン ○(PDF/JPEG) ○(PDF/JPEG) ○(PDF/JPEG) ○(PDF/JPEG)
クラウド連携 プリント アプリ経由/本体 ○/− ○/− ○/○ ○/○
オンラインストレージ ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/google classroom) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/google classroom) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom)
SNS ○(Instagram/Facebook・コメント付き可) ○(Instagram/Facebook・コメント付き可) N/A N/A
写真共有サイト N/A N/A
スキャン アプリ経由/本体 ○/○ ○/○ ○/○ ○/○
スキャンしてオンラインストレージにアップロード ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/google classroom)
(OneDrive/google classroomはアプリからのみ)
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/google classroom)
(OneDrive/google classroomはアプリからのみ)
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom)
(OneDrive/google classroomはアプリからのみ)
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom)
(OneDrive/google classroomはアプリからのみ)
メールしてプリント ○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/PDF/Word/Excel/PowerPoint/メール本文) ○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/PDF/Word/Excel/PowerPoint/メール本文)
LINEからプリント ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint)
リモートプリント ○(リモートプリントドライバー) ○(リモートプリントドライバー)
スキャンしてリモートプリント

 スマートフォンとの連携機能も4機種とも搭載しており、iOSとAndroid端末に対応している。いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることでプリント又はスキャンが行える。写真とドキュメント印刷、スキャンに対応しており、様々な内容をプリント可能だ。写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定(PX-M730FEW-M530Fのみ)まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。ドキュメント印刷は、PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もでき便利だ。また、5機種ともスマートフォン上からスキャンを実行し、データーをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。新聞や雑誌、手書きの情報などをスマートフォンに電子化するといった使い方ができるため便利だろう。なお、iPhoneやiPadの場合、AirPrintを利用したプリントも可能だ。
 スマートフォンとの接続は、無線LAN(Wi-Fi)で行うが、無線LANルーターを経由する方法と、ダイレクトに接続する「Wi-Fiダイレクト」(キヤノンはダイレクト接続)が選べる。無線LANルーターを経由する方が、機能面でも制限が無く、印刷する度にプリンターと接続と切断を繰り返すWi-Fiダイレクトと比べると便利なので、こちらを利用するのがお勧めだが、無線LANルーターが無い環境で使用する場合や、一時的に同じネットワークに入っていない人がプリンターを使いたい場合などにWi-Fiダイレクトは便利だ。Wi-Fiダイレクトの接続設定は手動でもそれほど難しくは無いが、PX-M730Fは接続支援機能が提供される。iOSの場合は本体の液晶に表示されるQRコードを、標準カメラアプリで読み込めば接続が完了し、Androidの場合は一覧から接続するプリンターを選ぶと、本体の液晶にメッセージが表示されるので接続の許可を選べば接続が完了する。セキュリティーキーの入力などが不要で、設定はより簡単になっている。Wi-Fiダイレクトをよく使う場合は、見逃せない機能だろう。
 また、4機種ともスマートスピーカーに対応している。AlexaとGoogleアシスタント対応端末に対応しており、声だけでテンプレートを印刷させることができる。PX-M730FEW-M530Fは、デザインペーパー、フォトプロップス、カレンダー、ノート、方眼紙、五線譜などのエプソン独自のものと、Alexaに登録された買い物リスト、やることリストなどの印刷に対応する。MAXIFY MB2730MAXIFY MB2130はナンプレ、ぬりえ、レポート用紙、チェックリスト、五線譜などキャノン独自のもの印刷と、プリンターの状態の確認が行える。
 さらに、クラウドとの連携機能も4機種とも搭載している。プリントの場合、オンラインストレージのファイルにアクセスし印刷できる。PX-M730FEW-M530FはSNSの写真をコメント付きで印刷する事も可能だ。ここで大きな違いは、PX-M730FEW-M530Fはスマートフォンのアプリとして搭載しているのに対して、MAXIFY MB2730MAXIFY MB2130はスマートフォン上だけでなくプリンター本体の操作でもクラウドにアクセスし印刷ができる点が上げられる。実際の操作性はスマートフォンからの方が上だが、プリンターだけでサッと印刷が出来るという選択肢が選べる点で、これらMAXIFY MB2730MAXIFY MB2130は便利だ。スキャンの場合、スキャンしてオンラインストレージへアップロードできる。こちらはプリントとは異なり、4機種とも本体の操作でアップロードまで行うことも、スマートフォンからスキャンしてアップロードすることもできる(OneDriveはアプリ経由のみ)。アプリをわざわざ立ち上げなくても、スキャンしてアップロードできるため便利だ。
 さらにPX-M730FEW-M530Fはリモートプリント機能も提供される。印刷したい写真や文書を添付してこれらの機種にメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、LINE上でプリンターを友達登録し、トーク画面から写真を送信すると印刷される「LINEからプリント」、スキャンして離れた場所の対応複合機で印刷できる「メールdeリモート印刷」、パソコンやスマートフォンから通常のプリントと同じ操作で、外出先など離れた場所から自宅のこれらの機種で印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。

コピー機能
型番 PX-M730F EW-M530F MAXIFY MB2730 MAXIFY MB2130
製品画像
等倍コピー
拡大縮小 倍率指定 ○(25〜400%) ○(25〜400%) ○(25〜400%) ○(25〜400%)
オートフィット
定型変倍
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー
割り付け(2面/4面) ○/○ ○/− ○/○ ○/○
その他のコピー機能 プレビュー
濃度調整
背景除去機能
コントラスト調整
鮮やかさ調整
色調補正(レッド・グリーン・ブルー個別)
シャープネス調整
色相調整
濃度調整 プレビュー
濃度調整
プレビュー
濃度調整
バラエティコピー IDコピー
影消しコピー
パンチ穴消しコピー
ソート(1部ごと)コピー
IDコピー
影消しコピー
パンチ穴消しコピー
ページ順コピー
枠消しコピー
IDコピー
コピー予約
ページ順コピー
枠消しコピー
IDコピー
コピー予約

 コピー機能を見てみよう。単純なコピー機能としては、4機種とも等倍コピーだけでなく、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「オートフィット」機能や、原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行う「定型変倍」機能、さらに25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える機能を搭載した高性能な物となっている。また、4機種とも2枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2面割付にも対応し、EW-M530F以外の3機種は、4枚の原稿を1枚に割り付ける4面割付にも対応する。。
 その他、濃度調整機能は4機種とも搭載する。また、プレビューもEW-M530F以外の3機種とも行え、コピー前に原稿を確認できるため失敗が少なくなるほか、プレビュー画像を見て拡大・縮小率を調整できる。その他、PX-M730Fは、背景色を白にして見やすくする「背景除去機能」、さらにコントラスト、鮮やかさ、色調、シャープネス、色相の調整も可能だ。色調調整は、レッド・グリーン・ブルーを個別に調整できる。かなり高度な色の調整が可能で、好みの色や、原稿の色に近づけたコピーが可能だ。
 それぞれ、様々な特殊コピーを行える機能を搭載する。免許証などの両面の小さな原稿の裏面と表面を、1枚の用紙に並べてコピーできる「IDコピー」機能は、4機種とも搭載している。周囲や綴じ目部分にできる影を消す「影消しコピー」又は「枠消しコピー」も共通の機能だ。ADFを使用したコピーで、複数ページの複数部をコピーするときに、1部ずつまとめてコピーする「ソート(1部ごと)コピー」又は「ページ順コピー」といった機能もEW-M530F以外の3機種が搭載している。それ以外に、PX-M730FEW-M530Fはパンチ穴を消す「パンチ穴消しコピー」機能を搭載している。MAXIFY MB2730MAXIFY MB2130はコピー実行中でも次の原稿の読み取り操作ができる「コピー予約」が可能だ。
 なお、ADFを利用して、複数枚の原稿をコピーする場合、前述のADFの速度が重要となる。PX-M730FEW-M530Fは、ADFの速度より印刷速度の方が早いため、ADFの速度がボトルネックとなる。それに対して、MAXIFY MB2730のカラーの場合は、スキャンとプリント速度が同等となっており、理論上ADFが足を引っ張らない。そのため、ADFを使用したコピーではMAXIFY MB2730が圧倒的に高速になる。こういった使い方が多いならMAXIFY MB2730はストレス無く使用できる。

ファクス機能
型番 PX-M730F EW-M530F MAXIFY MB2730 MAXIFY MB2130
製品画像
通信速度 33.6kbps 33.6kbps 33.6kbps 33.6kbps
画質設定 モノクロ 8dot/mm×3.85line/mm(標準)
8dot/mm×7.7line/mm(精細)
8dot/mm×15.4line/mm(高精細)
16dot/mm×15.4line/mm(超高精細)
8dot/mm×7.7line/mm(写真)
8dot/mm×3.85line/mm(標準)
8dot/mm×7.7line/mm(精細)
8dot/mm×7.7line/mm(写真)
8dot/mm×3.85本/mm(標準)
8dot/mm×7.7本/mm(ファイン)
300×300dpi(ファインEX)
8dot/mm×3.85本/mm(標準)
8dot/mm×7.7本/mm(ファイン)
300×300dpi(ファインEX)
カラー 200×200dpi 200×200dpi 200×200dpi 200×200dpi
送信原稿サイズ A4/B5/A5 A4 N/A N/A
記録紙サイズ A4/A5/リーガル/レター A4/リーガル/レター A4/リーガル/レター A4/リーガル/レター
受信ファクス最大保存ページ数 180枚/100件 100枚/100件 250枚/30件 250枚/30件
データー保持(電源オフ/停電) ○/○ ○/○ ○/− ○/−
ワンタッチ
アドレス帳 100件 100件 100件 100件
グループダイヤル 99宛先 99宛先 99宛先 99宛先
順次同報送信 100宛先 100宛先 101宛先 101宛先
自動リダイヤル
発信元記録
ポーリング受信/送信 ○/− ○/− −/− −/−
ファクス/電話自動切替
見てから送信
見てから印刷
受信ファクスを メール送信
共有フォルダ保存
外部メモリー保存 ○(USBメモリー・各種メモリーカード(カードリーダー接続時)) ○(USBメモリー) ○(USBメモリー)
PCファクス 送受信 送受信 送信のみ 送信のみ

 ファクス機能も基本はほぼ同等だが、細かなところで違いが出ている。4機種ともスーパーG3に対応しており、モノクロ、カラーファクスを行う事が出来る。ADFを搭載しているため、複数枚の原稿の送信も便利である。33.6Kbpsで通信可能であり、その場合の伝送速度はモノクロで約3秒となる。また読取走査線密度はモノクロで8dot/mm×3.85本/mmの標準モード、8dot/mm×7.7本/mmの精細又はファインモードは全機種が備えている。加えてPX-M730Fはさらに高画質な8dot/mm×15.4本/mmの高精細モードと、読取操作線密度は精細モードと同じ8dot/mm×7.7本/mmだが、写真を含む原稿に向いている写真モードも選択できる。EW-M530Fも写真モードには対応する。一方、MAXIFY MB2730MAXIFY MB2130も、より高画質な300×300dpiのファインEXモードを選択できる。多少の違いはあるが大きな差ではないだろう。カラーは200×200dpiだ。受信したファクスの印刷はPX-M730FがA4かA5、他の3機種はA4のみなので、A5用紙に印刷できるという点ではPX-M730Fが優れているが、一般的にはA4用紙で問題ないだろう。受信したファクスはPX-M730Fが180枚又は100件分、EW-M530Fが100枚又は100件分、MAXIFY MB2730MAXIFY MB2130が250枚又は30件分となる。保存できる件数はPX-M730FEW-M530Fが、保存できる枚数はMAXIFY MB2730MAXIFY MB2130が多いという事で、優劣付けがたい。ここで大きな違いは、AXIFY MB2730/MAXIFY MB2130は電源オフ時は受信したファクスが保持されるが、停電時やコンセントが抜けた場合には保持されないのに対して、PX-M730FEW-M530Fはそういった場合でも受信した内容が保持される点だ。使い方によっては、電気が供給されなくても受信内容が保持される方が便利だろう。ダイヤル機能としては、4機種ともアドレス帳に100件登録できる他、グループダイヤル、順次同報送信、自動リダイヤルなどの基本的な機能を搭載している。PX-M730FEW-M530Fはボーリング受信に対応しているほか、送信するファクスを液晶で確認してから送信する「見てから送信」と、受信したファクスの内容を液晶で確認した上で印刷するか決めることで用紙を節約できる「見てから印刷」機能も備える。USBポートを搭載するPX-M730FMAXIFY MB2730MAXIFY MB2130は、受信したファクスをUSBメモリーに保存する機能を搭載している。PX-M730Fはダイレクト印刷と同じく、メモリカードリーダーを接続すれば、SDカードなど各種メモリーカードにも保存できる。加えてMAXIFY MB2730MAXIFY MB2130は受信したファクスを共有フォルダに保存する機能を搭載しており、情報共有が行いやすい。さらに、パソコン内のデーターを直接ファクスできる「PCファクス」機能自体は4機種とも搭載している。ただしMAXIFY MB2730MAXIFY MB2130は送信(パソコン上のデーターを画像として送信)のみ対応だが、PX-M730FEW-M530Fは送信だけでなく受信(パソコン上にファクスのデーターを受信)することもできる。なお、4機種ともファクス機能だけで受話器がないため通話機能は無いが、モジュラージャックのインとアウトを備えており、アウトに電話機を接続すると通話が可能となる。その際、PX-M730FEW-M530Fはファクス/電話自動切り替え機能にも対応しているのも便利だ。このように4機種は基本的な機能は似ているが、細かな点ではややPX-M730Fが便利に作られていると言えるだろう。

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操作パネル/インターフェース/本体サイズ
型番 PX-M730F EW-M530F MAXIFY MB2730 MAXIFY MB2130
製品画像
液晶ディスプレイ 2.7型
(角度調整可)
2.4型
(角度調整可)
3.0型 2.5型
操作パネル タッチパネル液晶
(角度調整可)
タッチパネル液晶
(角度調整可)
タッチパネル液晶+物理ボタン 物理ボタン
インターフェイス USB他 USB2.0×1 USB2.0×1 USB2.0×1 USB2.0×1
無線LAN IEEE802.11ac/n/a/g/b
5GHz対応
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(ダイレクト接続対応)
IEEE802.11n/g/b
(ダイレクト接続対応)
有線LAN 100BASE-TX 100BASE-TX 100BASE-TX
対応OS Windows 11/10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 11/10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 11/10/8.1/8/7/Vista SP2
MacOS 10.8.5〜
Windows 11/10/8.1/8/7/Vista SP2
MacOS 10.8.5〜
耐久枚数 8万枚 5万枚 N/A N/A
外形寸法(横×奥×高) 425×378×249mm 375×347×230mm 463×389×320mm
(前面給紙カセット伸張時463×459×320mm)
463×389×260mm
(前面給紙カセット伸張時463×459×260mm)
重量 8.9kg 6.5kg 12.1kg 10.6kg
本体カラー ホワイト ホワイト ブラック ブラック

 操作パネルを見てみよう。PX-M730Fは2.7型、EW-M530Fが2.4型、MAXIFY MB2730が3.0型、MAXIFY MB2130は2.5型と、若干の違いはあるが大きな差ではない。ただし、PX-M730FEW-M530Fは本体前面に配置され、持ち上げてほぼ水平まで角度調整が可能だ。見やすい、操作しやすい角度の調整できる点で、操作性は良好だ。それに対して、MAXIFY MB2730MAXIFY MB2130は本体前面から上面にかけて大きく面取りされた部分に搭載される。斜めになっているため、どの方向からでも見えるようには工夫されているが、調整できるPX-M730FEW-M530Fと比べると劣る事に加え、本体自体に高さがあるため、低い位置からの操作はしにくい。
 PX-M730FEW-M530FMAXIFY MB2730は3機種はタッチパネル液晶を採用している。タッチパネル液晶を採用するためボタン数が減り、また、モードボタンや設定項目などでは、表示された選択肢そのものをタッチして操作できる事に加えて、使わないボタンが表示されることも無いため、非常に分かりやすい。液晶内に表示されると、バックライトが入っているため、薄暗い場所でも操作がしやすいというメリットもある。ただし、どこまでをタッチパネル液晶に集約するかは異なっている。PX-M730Fでは、物理ボタンは電源ボタンだけで、ほとんどの操作をタッチパネル液晶に集約しており、テンキーやスタートボタンも全て液晶内に表示される。一部よく利用すると思われる機能はタッチセンサー式ボタンで液晶周囲に配置され、使用できる時だけ点灯する。液晶の左にホームボタン、右にヘルプボタン、上に消耗品情報表示、ネットワーク接続状況表示、機器出力音設定画面表示、お気に入りの設定一覧表示のボタンとなる。タッチパネル液晶と周囲のタッチセンサー式ボタンで、スッキリしている。EW-M530Fも、物理ボタンは少なく、電源ボタン以外は、液晶左のホームボタンと、右のヘルプボタンだけとなる。一方、MAXIFY MB2730は基本は電源ボタンの他に、「ホーム」「戻る」「カラースタート」「モノクロスタート」「ストップ」の各ボタンは物理ボタンで用意している。PX-M730FEW-M530Fと比べると、スタートボタンやストップボタン、戻るボタンも物理ボタンで用意している。ただ、これに関してはどちらが良いとは言いがたい。物理ボタンの方がボタン自体は大きく、押した感触もあるため使いやすいという人と、タッチパネルだけで操作が完結しない点や、暗いところで見えにくい点を不便だと感じる人がいるためだ。
 残るMAXIFY MB2130はタッチパネル液晶になっていないため、ボタン数が多くなる。「ホーム」や「戻る」「OK」「モノクロスタート」「カラースタート」「ストップ」などの基本的なボタンの他、4方向のカーソルボタンとテンキーも搭載する。さらに液晶のすぐ下に3つの「ファンクションボタン」があり、液晶内の下部に表示されるメニューを選ぶことが出来る。ボタン操作ではあるが、ファンクションボタンをはじめ、基本的なキーが過不足無く配置され、比較的使いやすい。またタッチパネル液晶で無いため必然的にテンキーが物理キーとなるため、ファクスを多用する場合は使いやすいという利点がある。
 インターフェースは4機種ともUSB2.0に加えて、ネットワーク接続にも対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルーターで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人には有線・無線LANによりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。ただし、PX-M730FEW-M530FMAXIFY MB2730は無線LANだけでなく有線LANにも対応しているが、MAXIFY MB2130は無線LANのみとなる。ルーターが近い場合や、壁にLANコネクタが用意されている場合、無線LANでは不安定な場合、安定性を重視する場合などに有線LANは重宝するため、必要な人はこの点は注意が必要だ。一方、無線LANはWi-Fiダイレクト(キャノンはダイレクト接続という名称)に対応しているため、無線LANルーターの無い環境でも、スマートフォンやタブレットと直接Wi-Fi接続が可能となっているのも便利な点だ。ただし、PX-M730Fは他の3機種より高機能になっている。他の3機種がIEEE802.11n/g/bに対応するのに対して、PX-M730FはIEEE802.11acとaにも対応する。IEEE802.11acは、他機種のIEEE802.11nと比べると通信速度が圧倒的に速いため、無線LAN接続時でも待たされる心配が無い。さらに、IEEE802.11ac/n/a通信時は、5GHz帯の電波を使用できる。他機種の2.4GHz帯は、Bluetoothや電話の子機と同じ帯域で、電子レンジなどの影響も受けやすいが、5GHz帯は無線LAN専用といえるので、通信が安定する。プリントもADFも高速な機種だけに、有線LAN、無線LAN共にワンランク上の機能となっている。

 対応OSはPX-M730FEW-M530FがWindows 11/10/8.1/8/7/Vista/XPに対応しているのに対して、MAXIFY MB2730MAXIFY MB2130はWindows XPには非対応となる。MacOSの対応も、PX-M730FEW-M530Fは10.6.8以降、MAXIFY MB2730MAXIFY MB2130は10.8.5以降と違いがあるため、使用するパソコンのOSには注意したいところだ。耐久枚数はPX-M730Fが8万枚、EW-M530Fは5万枚をうたっており、一般的な家庭用プリンターが1万〜1万5000枚である事を考えるとかなり高耐久に作られている安心感がある。MAXIFY MB2730MAXIFY MB2130もビジネス向けをうたっているため、ある程度高耐久である事は予想されるが具体的な数値は出ていない。
 本体サイズを見てみよう。コンパクトさが追求される家庭向けプリンターと比べて、ビジネスプリンターは速度や給紙枚数の多さ、高耐久性が求められるため、大型になりがちだ。家庭用複合機の上位機種EP-883Aの場合349×340×142mmとなっており、これと比較してみよう。PX-M730Fは425×378×249mmと全体的にEP-883Aよりは大きい。前面給紙トレイのセット可能枚数が250枚と多い事とADFを搭載していることもあって高さが大きくなっており、存在感がある。しかし、設置面積は意外と大きくはなく、横幅は一昔前の家庭用複合機より小さく、奥行きもEP-883Aと4cmも変わらない。ADFと250枚給紙を考えると十分コンパクトだと言えるだろう。EW-M530Fは更にコンパクトで、375×347×230mmとなる。高さはADFの分を考えると仕方が無いとして、幅はEP-883Aと比べて幅が26mm、奥行きが7mm大きいだけで、設置面積はほぼ同等だ。スペースに制限がある人にはありがたいサイズと言える。ちなみに、ADFはPX-M730Fと異なり、原稿トレイが収納式なので、使用時の高さは255mmとなる。前面給紙カセットが2段のMAXIFY MB2730はとりあえず置いておいて、同じ1段のMAXIFY MB2130は463×389×260mmとなる。しかも、このサイズは前面給紙カセット縮めた状態で用紙をセットする事ができない。A4用紙をセットした状態で置いておくとすると、奥行きは459mmになってしまう。ADFの原稿トレイも展開すると高さは298mmになる。つまりA4用紙をセットしADFを展開すると、463×459×298mmとなる。EW-M530Fはもちろん、PX-M730Fと比べても、幅が38mm、奥行きが81mm、高さが49mm大きく、かなり大柄な印象だ。前面給紙カセットが2段のMAXIFY MB2730は更に高さが60mm大きくなるため、高さに余裕が必要だ。コンパクトなPX-M730FEW-M530Fと比べると、MAXIFY MB2730MAXIFY MB2130はサイズ面では不利となる。



 この4機種は、文書印刷専用のPX-M730FMAXIFY MB2730MAXIFY MB2130に対して、家庭・ホームオフィス向けのEW-M530Fだけが傾向が少し異なる。家庭で使う場合は、全色顔料より、用紙に制限がなく、写真や年賀状もある程度の画質で印刷が出来る、顔料ブラック+染料カラーのEW-M530Fの方が使いやすいだろう。印刷速度や印刷コスト、給紙枚数、ADF速度の差や、ダイレクト印刷機能が非搭載である点、液晶が小さい点などでは劣るが、基本的な機能は搭載されており、交換式メンテナンスボックスや有線LAN、耐久性の高さなど、ビジネス向けの機能も搭載されている。自宅用のプリンターとして、それほど画質を求めないが、ファクス機能が欲しい場合にはオススメと言える。
 では、ビジネス用途ならどうだろうか。文書印刷の速度や印刷コスト、本体でのクラウドからのプリント機能、ADFを使用したスキャンやコピーの速度などを重視するなら、MAXIFY MB2730MAXIFY MB2130がオススメだ。ただ、この2機種はクセが強く、フチなし印刷に非対応で、最小インクドロップサイズもかなり大きく、本体サイズもかなり大きい。操作性でもPX-M730FEW-M530Fより劣る。前面給紙カセットが1段のMAXIFY MB2130ならサイズは多少小さくなるが、それでもまだ大きいし、印刷速度の優位性がほぼ無くなり、操作性も更に劣ってしまうため、悩ましい。その点で、前述の機能に特に重視するのでなければ、一般的にはPX-M730Fがオススメだ。文書印刷画質は非常に高く、文書の耐保存性も高い。印刷速度や印刷コストははMAXIFY MB2730に劣るとは言え大きな差は無く、本体サイズや操作性の面では優れている。長尺印刷や交換式メンテナンスボックス、ネットワーク印刷、コピー時の画質調整など、細かな点でも使いやすい。また、そこまで機能にこだわらないのなら、ビジネス向けにもEW-M530Fでも悪くはない。ただ印刷コストが高く、PX-M730Fとの価格差が2,500円しかないので、カラー文書で約650枚、モノクロ文書で約1,800枚以上印刷するならPX-M730Fの方がお得になる。ビジネス向け、又は家庭でも文書専用である程度印刷枚数が多いなら、PX-M730Fがオススメと言える。
 

(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/


PX-M730F
EW-M530F
MAXIFY MB2730
MAXIFY MB2130