プリンター徹底比較
2021年末時点のプリンター
〜エプソン・キャノン・ブラザーのプリンターを比較〜
(2022年3月26日公開)

プリンター比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンター比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。


モノクロ複合機
 
 モノクロ専用というのは、インクジェットプリンターでは珍しい分類に入るだろう。インクジェットプリンターと言えばカラープリントができるというのが一般的だが、カラープリントは一切しないというユーザーもおり、特にビジネス利用の人にはこの傾向がある。最近ではインクジェットプリンターの印刷速度や耐久性が向上し、印刷コストや電気代の面でレーザープリンターに対してメリットがある一方で、顔料インクを採用し普通紙印刷の画質と耐水性なども問題が無くなってきている。そのため、企業でもレーザープリンターからインクジェットプリンターへの置き換えが進んでいる。そんな中、レーザープリンターでは当たり前に存在しているモノクロ専用機に関してもインクジェットプリンターの存在感が増してきている。今回は、そんな中から複合機を比較する。機種数がまだまだ少ないので、5機種まとめての比較で、PX-M380FPX-M270FTがファクス機能付き、残り3機種はファクス機能なしとなる。特に、エプソンのエコタンクやキャノンのギガタンクと言ったタンク方式は、レーザープリンターに対してメリットが特に大きいためか、モノクロ専用機が発売されやすく、今回比較する5機種中4機種がエコタンク・ギガタンク搭載である。残る1機種のPX-M380Fも、インクカートリッジ方式とは異なるインクパック方式を採用している。エコタンク方式ほど印刷コストは安くは無いが、エコタンクのボトル1本よりも印刷枚数が多いという機種だ。ではどのような違いがあるのか徹底的に比較してみよう。

プリント(画質・速度・コスト)
メーカー エプソン エプソン エプソン エプソン キャノン
型番 PX-M380F PX-M270FT PX-M270T PX-M160T GM4030
製品画像
実売価格(メーカーWeb/税込) 38,478円 43,978円 38,478円 32,978円 32,978円
インク 色数 1色 1色 1色 1色 1色(カラーインクカートリッジ取り付け時4色)
インク構成 ブラック ブラック ブラック ブラック ブラック(顔料)
【カラーのインクカートリッジを装着時】
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成 インクパック方式
(各色独立)
エコタンク
(「挿すだけ満タン」方式・
オフキャリッジ)
エコタンク
(「挿すだけ満タン」方式・
オフキャリッジ)
エコタンク
(オフキャリッジ)
ギガタンク(黒)
(挿して注入・満タン自動ストップ・
オフキャリッジ)
一体型カートリッジ(カラー)
顔料/染料系 顔料 顔料 顔料 顔料 顔料(黒)
新顔料ブラック/染料(カラー)
インク型番 IP03KB(大容量)
IP03KA(標準容量)
ヤドカリ ヤドカリ クツ 30番(黒)
341XL(カラー・大容量)/341(カラー・標準容量)
付属インクボトル セットアップ用インクパック インクボトル1本 インクボトル1本 インクボトル2本 インクボトル2本
ノズル数 1600ノズル 800ノズル 800ノズル 360ノズル 1792ノズル
カラーインク未装着時は640ノズル
1600ノズル 800ノズル 800ノズル 360ノズル 黒:640ノズル
カラー:各384ノズル
最小インクドロップサイズ N/A(3.8pl?) N/A(2.8pl?) N/A(2.8pl?) N/A(3pl?) N/A(2pl?)
最大解像度 1200×2400dpi 1200×2400dpi 1200×2400dpi 1440×720dpi 600×1200dpi
高画質化機能 PrecisionCoreプリントヘッド PrecisionCoreプリントヘッド PrecisionCoreプリントヘッド
印刷速度(A4普通紙モノクロ・ISO基準) A4普通紙カラー(ISO基準) 6.8ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準) 24ipm
(最速34枚/分)
20ipm
(最速39枚/分)
20ipm
(最速39枚/分)
15ipm
(最速34枚/分)
13ipm
ファーストプリント(A4普通紙モノクロ) 4.8秒 6.0秒 6.0秒 9.0秒 N/A
ウォームアップタイム 19.0秒以下 14.0秒以下 14.0秒以下 21.5秒以下 N/A
印刷コスト
(税込)
A4モノクロ文書 大容量:2.0円 0.5円 0.5円 0.4円 0.4円
A4カラー文書 7.9円(大容量)
12.2円(標準容量)
印刷可能枚数
(A4モノクロ文書)
インク1本 大容量:10,000ページ
標準:5,000ページ
6,000ページ 6,000ページ 6,000ページ 6,000ページ
インク交換1回 大容量:10,000ページ
標準:5,000ページ
6,000ページ 6,000ページ 6,000ページ 6,000ページ
インク1本の価格
(税込)
ブラック 大容量:19,140円
標準:13,420円
2,365円 2,365円 1,980円 2,310円
カラー 大容量:2,992円
標準:2,112円

 まずはインク構成であるが、モノクロプリンターなのでブラックインクのみ搭載というのが基本だ。いずれも顔料インクを採用している。家庭用カラープリンターが採用する染料インクと比べて、顔料インクは普通紙に印刷した際に、紙に染みこみにくいため、インクが広がりにくく、クッキリとした印刷が行えるというメリットがある。小さな文字や中抜き文字、細かい図面などでも潰れずに印刷が可能なほか、耐水性も高いため濡れた手で触ったりマーカーを引いても滲まない。顔料インクは写真用紙に印刷した際に発色が悪かったり、紙の光沢感が薄れてしまうデメリットもあるが、モノクロ専用機で写真印刷をするという人もいないだろう(そもそも写真用紙には対応していない)。また、一部インクジェット用の用紙で染料インク専用のものもあるが、アイロンプリント紙やフィルム用紙と言った特殊な用紙が多いため、特に問題は無いだろう。それよりも、普通紙印刷がメインと思われるため、普通紙の印刷画質の高さと高耐水性の方がメリットが大きいハズだ。さて、5機種の中で特殊な機種があり、それがGM4030である。基本はモノクロ専用機でブラックインクのみで動作するのだが、カラーインクのカートリッジを取り付けられるようになっている。カートリッジ装着後は速やかに使い切る事が推奨されており、「ほぼモノクロプリントだが、たまにカラープリントを数枚印刷する」という使い方には向かず、「年賀状だけはカラーで」とか「年に数回カラープリントを百枚単位で」という一気に大量印刷する用途に向いている。どうしてもカラーでプリントする必要がある事態になった際に重宝するだろう。ちょっとしたおまけ機能と考えると良さそうだ。
 印刷画質を見てみよう。最大解像度はPX-M380FPX-M270FTPX-M270Tが1200×2400dpi、PX-M160Tが1440×720dpi、GM4030が600×1200dpiである。しかし、これは普通紙印刷時の印刷解像度では無いため、比較しにくい。例えばPX-M160Tの普通紙印刷時の解像度は360dpiと言われている。ただし、PX-M380FPX-M270FTPX-M270TはPrecisionCoreプリントヘッドを採用しており、従来の360dpiより高解像度になっている。PX-M380Fは1200dpiで印刷可能で、小さな文字や画数の多い文字でもつぶれず綺麗に印刷できる。PrecisionCoreプリントヘッドは1200dpiと600dpiがあり、PX-M270FTPX-M270Tは明言されていないためどちらかは不明だが、少なくとも従来よりも更に綺麗に普通紙に印刷が可能だ。小さな文字や細かい図面を印刷するならオススメと言える。一方最小インクドロップサイズは、ドットの大きさに影響する。写真印刷をするわけでは無いため、一見するとあまり重要では無い様に感じるが、モノクロ専用機では、グレーなどの中間色をカラーインクを使って表現できず、黒のドットを間隔を空けて打つ事で表現するしか無い。モノクロの書類でも、イラストや写真を使う場合もあるし、グラフなどが色つきの場合もあるだろう。その場合に最小インクドロップサイズが大きいと、ドットが大きくなりザラザラしたような感じになってしまう。5機種とも最小インクドロップサイズは非公開だが、海外の同機能のモデルの情報より、PX-M380Fは3.8pl、PX-M270FTPX-M270Tは2.8pl、PX-M160Tは3pl、GM4030は2plでは無いかと予想される。GM4030が一番粒状感が少ないのは確かだが、ビジネス向けのカラープリンターで5plや10plを超える機種もあることを考えると、PX-M380Fの3.8plでも十分高画質に印刷できる。機種間の差はあるが、どれも合格点と言えるだろう。
 印刷速度を見てみよう。エプソンは最速値も同時に公表しているが、一般的にはipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)が比較しやすい。PX-M380Fは24ipmと5機種中最も高速で、卓上タイプのインクジェットプリンターとしては最も高速な部類だ。PX-M270FTPX-M270Tも20ipmとほぼ変わらず、このあたりならレーザープリンターにも引けを取らない速度だ。PX-M160Tは15ipmでやや遅く、GM4030は13ipmでPX-M380Fの半分程度の速度だ。しかし、これでもインクジェットプリンターの中では十分高速な方だ。例えば200枚印刷する場合、PX-M380Fは印刷枚数が8分20秒、PX-M270FTPX-M270Tは10分、PX-M160Tが13分20秒、G4030が15分23秒である。この差をどう感じるかだが、印刷枚数が多くなければ、さほど気にならないだろう。ちなみに、GM4030はカラープリントも可能だが、その場合6.8ipmとなり、モノクロプリントの更に半分程度になる。
 また、ipm値は印刷が連続で行われた場合の速度だが、少量の印刷をする場合に、1枚目の印刷時間も気になるところだ。エプソンはファーストプリントの速度として公表している。PX-M380Fが4.8秒、PX-M270FTPX-M270Tが6.0秒、PX-M160Tが9.0秒となる。印刷速度の差以上に差が広がっているが、いずれも10秒以下で1枚目の印刷が終了していると考えれば実用上の問題は無いだろう。また、電源オフの状態から印刷が開始できるまでの「ウォームアップタイム」だが、PX-M380Fが19.0秒以下、PX-M270FTPX-M270Tが14.0秒以下、PX-M160Tが21.5秒以下である。印刷速度やファーストプリント速度では最も高速なPX-M380Fが、PX-M270FTPX-M270Tより遅くなっている。ただし、電源オフでは無くスリープ状態からの場合、PX-M380Fは1.0秒以下、PX-M270FTPX-M270Tが2.0秒以下でほぼ待ち時間が無いので、通常はスリープ状態で使うのが良さそうだ。ちなみにPX-M160Tはスリープ状態からでも11.5秒以下と、多少待ち時間がある。少量の印刷の場合、PX-M380FPX-M270FTPX-M270Tの3機種が便利そうだ。
 印刷コストに関係する、インクの方式を見てみよう。PX-M380Fを除く4機種は、エコタンク又はギガタンク方式だ。本体内蔵のインクタンクに、インクボトルからインクを補充して使用する。インクタンクは、インクカートリッジのようにプリントヘッド(プリント時に左右に動く部分)の上に乗っているのでは無く、別の場所に固定されており、そこからチューブでプリントヘッドにつながれている。PX-M270FTPX-M270Tは本体右手前に、G4030は本体左手前に完全に内蔵されており、インク残量窓がある以外は、タンクがある事を感じさせない。一方PX-M160Tは、本体右側にタンク部分だけが飛び出ており、後付け感がある。実は、PX-M160Tを除く3機種は、2世代目のエコタンク・ギガタンクであるのに対して、PX-M160Tは1世代目のエコタンクとなる。PX-M160Tでは、注入口は大きめの穴となっており、そこにインクボトルの先端を挿し込み注入していく。目視で満タンを確認したら、ボトルを抜いて注入を止める必要がある。インクをあふれさせてしまう危険性があるほか、インクボトル自体もインクをこぼしやすくなっている。一方、PX-M270FTPX-M270Tは「挿すだけ満タン」インク方式と言う名称で、GM4030も似たタイプとなっている。注入口は穴では無く、注入用の管が出ており、ここにボトルを挿し込むと、注入が始まる形となる。そして満タンになると自動ストップするので、ボトルを挿し込んだらストップするまで待つだけだ。挿し込まなければボトルの先端からインクが出にくい形状となっているため、ボトルからインクをこぼす心配も無い。PX-M270FTPX-M270T/G4030は2世代目となり、改良されているため、インク注入時のトラブルが大きく軽減されているのはメリットだ。いずれの機種も、タンクが固定されているため大型化が可能で、インクボトル1本が全て補充できる。インク1本で6,000枚の印刷が可能となる。家庭用の機種ではせいぜい300〜600枚なので、インク補充の手間が軽減される他、インク切れで印刷が止まっていたというトラブルも起きにくい。また途中で追加する事もできるため、大量印刷の前や、減ってきた時には補充しておけば安心だ。インクボトルは大容量ながら非常に低価格で、PX-M270FTPX-M270Tが2,365円、PX-M160Tが1,980円、GM4030が2,310円となる。そのため、印刷コストはA4モノクロ文書で、PX-M270FTPX-M270Tが0.5円、PX-M160Tが0.4円、GM4030が0.4円と非常に低価格だ。卓上のレーザープリンターが3〜4.5円である事を考えると圧倒的だ。ちなみに、GM4030でカラープリントをする場合、カラーインクはギガタンク方式では無く、カラー3色一体型カートリッジを取り付ける形となる。341番インクで、大容量の341XLが2,992円、標準容量の341が2,112円だが、大容量で400枚、標準容量で180枚(同インクを使用する他機種の場合)程度しか印刷できない。そのため、A4カラー文書の印刷コストは、大容量インク使用時で7.9円、標準容量インク使用時で12.2円と急に高くなる。カラー印刷もそれなりの頻度で行うなら、カラーインクもタンク方式の機種の方が良いだろう。
 残るPX-M380Fはインクパック方式である。インクカートリッジでもインクタンクでも無い方式だ。インクパックは、持ち手と本体との取り付け部だけがプラスチックのパーツで、あとは柔らかな銀色のパックにインクが入っている。本体前面の最下段がトレイになっており、トレイを抜いて、パックをセットして、トレイを挿し込む形となる。インクカートリッジと比べて大型のインクパックをセットできる一方で、エコタンク方式と比べるとインクを補充するのでは無く、新品と交換するだけという、大容量と手軽さを両立させている方式だ。インクパックは2サイズあり、大容量で10,000枚、標準容量で5,000枚の印刷が可能で、エコタンク・ギガタンク方式より更に大容量になっている。一方でインクボトルと比べると、インクパックは複雑な構造である事もあって、価格は大容量が19,140円、標準容量が13,420円となり、印刷枚数は1.67倍だが、価格は8.1倍となる。結果、印刷コストは大容量で2.0円と、他の4機種と比べると高く見える。とはいえ家庭用インクジェットプリンターや、卓上タイプのレーザープリンターと比べれば十分低価格である。
 ちなみにPX-M270FTPX-M270Tは別売りのものと同じインクボトルが1本、PX-M160TGM4030は2本同梱する。セットアップ時の初期充填でかなりの量を消費するが、それでもある程度印刷できる枚数が残る。PX-M160Tでは11,000枚印刷が可能となっており、1本で6,000枚印刷が可能なので、初期充填で1,000枚分消費する事になる。PX-M270FTPX-M270Tでは印刷可能な枚数を公表してはいないが、カラープリントモデルで同じく1本ずつ同梱する機種では6割が残るとされているので、近い枚数が残ると思われる。GM4030も公表はしていないが、少なくと残った量+1本分は印刷が可能だ。それに対してPX-M380Fはセットアップ用インクパックしか付属せず、セットアップ後はそれほど印刷できないと思われる。PX-M380F以外の4機種は、インクが同梱する分お得と考えられる。

プリント(給紙・排紙関連)
型番 PX-M380F PX-M270FT PX-M270T PX-M160T GM4030
製品画像
対応用紙サイズ 定型サイズ ハガキ・A6〜A4
(用紙幅64mmまで対応)
名刺・ハガキ・A6〜A4
(最小サイズ54×86mm)
名刺・ハガキ・A6〜A4
(最小サイズ54×86mm)
ハガキ・A6〜A4
(最小サイズ89×127mm)
名刺〜A4
(対応用紙は普通紙・ハガキ(光沢タイプでないもの)、封筒のみ)
長尺サイズ 長さ6,000mmまで 長さ1,200mmまで 長さ1,200mmまで 長さ1,117.6mmまで 長さ676mmまで
フチなし印刷
給紙方向
(セット可能枚数(普通紙/ハガキ))
背面

(80枚/30枚)
○手差し
(1枚/1枚)
○手差し
(1枚/1枚)

(100枚/30枚)

(100枚/40枚)
前面 【標準カセット】
(250枚/50枚)
【増設カセット(オプション)】
普通紙のみ
(550枚/−)
【カセット】
89×127mm以上
(250枚/30枚)
【カセット】
89×127mm以上
(250枚/30枚)
【カセット】
普通紙のみ
(250枚/−)
その他
排紙方向 前面 天面(プリンター部とスキャナー部の間)/前面 天面(プリンター部とスキャナー部の間)/前面 前面 前面
排紙トレイ自動伸縮 −(取り外し式)
用紙種類・サイズ登録 ○(カセット収納(前面)/用紙セット(背面)連動) ○(カセット収納連動) ○(カセット収納連動)
用紙幅チェック機能 ○(印刷時) ○(印刷時) ○(印刷時)

 続いて、給紙・排紙関連の機能を見てみよう。対応用紙は最大サイズは5機種ともA4だが、最小サイズには違いがある。PX-M380FPX-M160Tがハガキサイズ又はA6以上だが、写真印刷をする事が無いという事でL判サイズが掲載されていないだけで、ユーザー定義サイズで指定できる最小サイズは、L判と同じ89×127mmとなる。ただし、PX-M380Fは、幅に関しては小売業などで使うB6ハーフサイズである、幅64mmに対応している。PX-M270FTPX-M270TGM4030はハガキやL判サイズより小さな名刺サイズ(54×86mm)に対応している。名刺サイズにカットされた用紙を使って名刺印刷が出来るので、少量印刷に便利だ。逆に長尺印刷にも違いがある。幅はA4短辺までだが、長さに関してはPX-M380Fは、6,000mm、つまり6mまでの用紙に対応する。垂れ幕や横断幕、長尺POPに便利だろう。PX-M270FTPX-M270Tは1,200mmまで、PX-M160Tも1117.6mmとほぼ同じだ。A4長辺の4倍の長さまで対応する。GM4030は676mmと最も短いため、長尺印刷を考えている人には注意が必要だ。
 対応用紙にも差がある。普通紙や郵便はがき、インクジェット郵便はがき、封筒に対応するのは5機種共通だ。ただ、GM4030はこれ以外はキヤノン写真はがき・マットのみで、ファイン紙やラベル用紙にも対応しない。カラーインクカートリッジを取り付ければカラー印刷が出来るが、写真印刷が出来るわけでは無い。それに対して、エプソンの4機種はフォトマット紙、スーパーファイン紙、スーパーファイン専用ラベルシート、スーパーファイン専用ハガキ、両面マット名刺用紙にも対応する。光沢紙や写真用紙等には対応しない点では同じだが、ファイン紙やラベル用紙にも印刷可能だ。顔料インクであるため普通紙にも高画質に印刷できるが、より綺麗に印刷したい場合にファイン紙を使用できるエプソンの4機種は、いざという時に便利だろう。
 給紙に関しても、それぞれに特徴がある。一番シンプルなのはPX-M160Tで背面給紙トレイのみだ。A4普通紙を100枚までセットできる。背面給紙はガイドを用紙幅に合わせて用紙を挿し込むだけと簡単で、非定型の用紙もセットしやすいメリットはあるが、背面給紙トレイが後方に傾く為、本体の後方にスペースが必要になるほか、上方にもスペースが必要だ。また、用紙をセットしたままだとホコリをかぶってしまい、その用紙が給紙されると故障の原因になる場合があるため、使わないときは取り除くのが理想だ。その点では常時用紙をセットしておき、頻繁に使うという用途には向いていないとも言える。PX-M380FGM4030は前面給紙カセット+背面給紙トレイの組み合わせだ。前面給紙はカセット式であるため、用紙をセットしたままでもホコリが積もらず、また本体に完全収納できるためスペースを取らない。常時用紙をセットしておくのに便利だ。ただし、GM4030は前面給紙カセットにセットできるのは普通紙のみとなる。両機種ともA4普通紙を250枚までセットできるため、大量印刷でも安心だ。それに加えて、背面給紙トレイも搭載する。PX-M380Fは80枚、GM4030は100枚と前面給紙カセットより少ないが十分な枚数だ。PX-M160T同様、スペースが必要なほか、ホコリが積もってしまうデメリットはあるため、例えば前面給紙カセットにA4普通紙を常時セットしておき、B5やハガキ、封筒など、前面給紙カセットにセットした用紙以外の用紙を使いたい場合に入れ替えずに使用できるという使い方が想定される。また、前面から給紙して前面から排紙するとなると、プリンター後方で180度曲げて方向転換する必要があるため、厚紙や封筒など二重になっている用紙の給紙に失敗することがある。そういった場合にも背面給紙なら背面から前面へ比較的ストレートに紙送りされるため、こういったトラブルが起きにくく便利だろう。もちろん長尺用紙に印刷する場合も背面給紙が便利だ。PX-M270FTPX-M270Tは前面給紙+背面給紙という点ではPX-M380FGM4030に似ているが、背面給紙がトレイ式では無く手差し給紙となっている点が異なる。手差し給紙は1枚ずつしか給紙出来ず、紙の大きさによっては給紙されるまで手で支える必要がある場合もあるが、その分コンパクトになっている。プリンター後方に薄い差し込み口が開いているだけなので、後方に開くためのスペースは必要ない。壁際でも使用できるだろう。その一方で1枚ずつではあるが、前面給紙カセットにセットした用紙以外の用紙の印刷や、厚紙や封筒、長尺用紙の印刷に重宝するだろう。前面給紙カセットは250枚までセットできる。ハガキのセット枚数で見てみると、PX-M380Fは前面給紙カセットに50枚、背面給紙に30枚の計80枚、PX-M270FTPX-M270T/PX-M160Tは30枚、GM4030は背面給紙のみなので40枚となる。PX-M380Fが突出して枚数が多い。ハガキ印刷を考えている人には、手間に大きな差があるといえる。
 もう一つ、排紙方向についても違いがある。インクジェットプリンターの場合、ほとんどの機種は前面排紙だ。PX-M380F、PX-S160T、GM4030はこの例に漏れず、前面排紙となる。ただ、前面排紙となると、使用時には排紙トレイを伸ばさないと用紙が落ちてしまう。棚の中や机のフチギリギリに設置した場合、印刷時は排紙トレイが邪魔となる。それに対してPX-M270FTPX-M270Tは天面排紙となる。つまり、後方から前方に進みながら印刷された用紙は、そのまま排紙されるのでは無く、もう一度方向転換してプリンターの上に前方から後方に向けて排紙される(実際にはプリンター部の上に左右の脚で支えられたスキャナー部があり、その間に排紙される)。これはレーザープリンターでは一般的な方式で、排紙トレイが必要ない分、使用時には他機種よりコンパクトになるというメリットがある。ただし、厚紙や封筒など、曲げにくい用紙を使う場合に、他機種では背面給紙を使うと、あまり曲げられること無く給紙から排紙までいけるが、PX-M270FTPX-M270Tでは排紙時に方向転換する際に曲げられてしまう。そこで、前面のレバーを下ろすことで前面からの排紙も可能としている。とはいえ、他機種のような排紙トレイがあるわけでは無いので、用紙は手で受ける必要があり、基本的には天面排紙、厚紙や封筒だけ前面排紙という形となるだろう。
 ちなみに、排紙トレイは、PX-M160TGM4030は縮めることで本体に完全に収納でき、PX-M270FTPX-M270Tは天面排紙なので排紙トレイ自体が前面に無い。それに対してPX-M380Fは縮めることも折りたたむこともできず、排紙トレイが出たままになる。A4より大きなリーガルサイズなどを使用する際に1段伸ばす事はできるが、A4サイズが乗る状態より収納はできない。取り外すことは可能だが、置き場所が必要なほか、手間がかかる。そのため、排紙トレイがある程度飛び出た状態が基本となっており、収納寸法も排紙トレイを含む奥行きになっている。
 PX-M380FPX-M270FTPX-M270Tの3機種は用紙の種類とサイズを登録しておく機能が搭載されている。液晶ディスプレイでメニューから登録も可能だが、前面給紙カセットを挿し込む、またはPX-M380Fの背面給紙は用紙をセットした際に、自動的に登録画面が表示されるため便利だ(されないようにもできる)。この登録内容と、印刷時の用紙設定が異なっている場合、メッセージが表示される仕組みだ。さらに、これら3機種は、印刷時に実際の用紙幅をセンサーでチェックする機能もあり、印刷設定に対して用紙サイズが小さかった場合に、用紙外にインクを打ってしまい、プリンター内部を汚すことが無い様に工夫がなされている。

プリント(付加機能)
型番 PX-M380F PX-M270FT PX-M270T PX-M160T GM4030
製品画像
自動両面印刷 ○(普通紙のみ・湿温度センサー搭載) ○(普通紙のみ) ○(普通紙のみ) ○(普通紙のみ)
自動両面
印刷速度
A4モノクロ文書 15.0ipm 9.0ipm 9.0ipm 4.8ipm
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能 N/A
特定インク切れ時印刷
自動電源オン/オフ −/○ −/○ −/○ −/○ ○/○
廃インクタンク交換 ○(メンテナンスボックス交換可) ○(メンテナンスボックス交換可) ○(メンテナンスボックス交換可)
フチなし吸収材エラー時の対応機能

 その他、プリントの付加機能を見てみよう。まず自動両面印刷機能に関してはPX-M160Tを除く4機種が搭載している。ただし、普通紙のみの対応で、ハガキの自動両面印刷には対応していない。自動両面印刷の場合、表を印刷した後、そのままもう一度プリンター内に吸い込まれ、プリンター後方で180度方向転換することで、裏返しているわけだが、これに時間がかかってしまい、両面印刷時は印刷速度が極端に低下してしまう。また印刷する内容によっては表面の印刷後に乾燥時間も必要になる。PX-M380Fは環境に応じて最適な両面印刷が行える「温湿度センサー」を搭載している事も合って、自動両面印刷時も15.0ipmと片面印刷時の62.5%の速度となっている。それに対して、PX-M270FTPX-M270Tは9.0ipmで、片面印刷時の45%の速度まで低下する。またGM4030は4.8ipmで、32%の速度となる。自動両面印刷を多用する場合は、この速度も重要だ。
 自動電源オン機能はGM4030のみ搭載している。自動電源オンは、印刷が実行されると自動的に電源がオンになる機能だ。無線/有線LAN接続ができるようになり、プリンターから離れた場所のパソコンやスマートフォンから印刷を実行することが増えたが、そういった際にわざわざプリンターの電源を入れに行く手間が省ける。ただし、操作パネルが完全に閉じた状態では印刷が実行されないため、操作パネルを少し開いた状態にしておく必要がある。一方、指定した時間が経つと自動的に電源がオフになる自動電源オフ機能は5機種とも搭載している。
 PX-M380FPX-M270FTPX-M270Tの3機種が搭載している便利な機能が、ユーザーによる廃インクタンク交換機能(交換式メンテナンスボックス)だ。ヘッドクリーニングの際に排出されるインクを貯めておくタンクが「廃インクタンク」だが、一杯になると印刷が完全に止まってしまう。PX-M160TGM4030を初めとする多くの機種は、修理交換となってしまうが、PX-M380FPX-M270FTPX-M270Tはユーザー自身で交換が可能となっている。交換用のメンテナンスボックスはインクカートリッジなどと共に店頭で売られているため、空き容量が減ってきたら用意しておけば良いだろう。交換すればすぐに印刷を再開できるため、プリンターが手元に無い期間が無くなるほか、費用も安く付く。例えば、メンテナンスボックスはPX-M380F用が3,122円、PX-M270FTPX-M270T用が1,980円だが、PX-S160Tで修理交換の場合4,400円、GM4030の場合23,100円がかかってしまう。印刷枚数が多いと思われる機種だけに、この機能は便利だ。

スキャン
型番 PX-M380F PX-M270FT PX-M270T PX-M160T GM4030
製品画像
最大スキャンサイズ A4
(216×297mm)
A4
(216×297mm)
A4
(216×297mm)
A4
(216×297mm)
A4
(216×297mm)
読み取り解像度 1200dpi(1200×2400dpi) 1200dpi(1200×2400dpi) 1200dpi(1200×2400dpi) 1200dpi(1200×2400dpi) 1200dpi(1200×2400dpi)
センサータイプ CIS CIS CIS CIS CIS
原稿取り忘れアラーム
ADF 原稿セット可能枚数 50枚 35枚 30枚 35枚
原稿サイズ A4/B5/A5/A6/レター/リーガル A4/レター/リーガル A4/レター/リーガル A4/レター/リーガル
両面読み取り
読み取り速度 カラー 24.0ipm 7.0ipm 2.0ipm N/A
モノクロ 24.0ipm 7.0ipm 2.0ipm N/A
スキャンデーターのメモリーカード保存

 続いて、スキャナー部を見てみよう。スキャンサイズはいずれもA4(216×297mm)で同等だ。読み取り解像度も5機種とも1200dpiのCISスキャナーを搭載しており変わりは無い。家庭向けのカラープリント対応機種にはもっと高解像度の機種があるが、紙などの反射原稿しかスキャンできないことを考えると1200dpiでも十分だ。一般的には文書なら200〜300dpi、写真なら300〜600dpi程度で、よほど綺麗に保存したい場合に1200dpiでスキャンすると言った程度だ。実際写真サイズを1200dpiで取り込むと約4,200×6,000ドットとなり2500万画素相当なので十分といえる。逆にスキャナー解像度が高いセンサーでは1ドットあたりの光の取り込み量が減り、スキャン速度が低下したりノイズが発生したりするため、バランスを取って1200dpiとしていると思われる。なお、5機種ともCIS方式であるため、分厚い本など浮いてしまう原稿は苦手で、ピントが合わずぼけたような画像となってしまう点は共通だ。PX-M380Fは本体操作だけでスキャンしてUSBメモリーに保存する機能を搭載している。パソコン無しで簡単にスキャンが行えるできるため便利だ。JPEG又はPDF形式での保存に対応している。
 また、PX-M270Tを除く4機種はADFを搭載している。複数枚の原稿を連続で読み込めるため、スキャンやコピー、ファクス(機能を搭載している機種のみ)使用時に便利だ。PX-M380Fは50枚、PX-M270FTGM4030は35枚、PX-M160Tは30枚までの原稿がセットできる。ただし枚数以外にも機能の差は大きい。まず、PX-M380Fは両面読み取りに対応している。片面を読み取った後、自動で用紙を反転させて裏面を読み取るため、倍以上の時間がかかるが、両面原稿の場合に非常に便利だ。PX-M270FTPX-M160TGM4030は片面のみとなる。また、これら3機種は、A4、レター、リーガルサイズのみの対応なのに対して、PX-M380FはB5、A5、A6サイズのスキャンにも対応している。さらにADFの速度にも大きな違いがある。PX-M380Fは24.0ipm(image per minute:1分間にスキャン可能な面数)、PX-M270FTは7.0ipm、PX-M160Tは2.0ipmとなる。つまり、30枚の原稿をスキャンする場合、PX-M380Fは1分15秒、PX-M270FTは4分17秒、PX-M160Tは15分かかることになる。利便性に大きな差が出る事になる。GM4030はADFの速度は公表していない。

ダイレクト印刷
型番 PX-M380F PX-M270FT PX-M270T PX-M160T GM4030
製品画像
ダイレクトプリント メモリーカード
USBメモリー
赤外線通信
対応ファイル形式 JPEG/TIFF/PDF
色補正機能 赤目補正
手書き合成
メモリーカードからUSBメモリー/外付けHDDへバックアップ
PictBridge対応
各種デザイン用紙印刷

 ダイレクト印刷機能を見てみよう。とはいえ5機種ともメモリーカードスロットは搭載せず、PX-M380FのみUSBメモリーに対応する。モノクロプリンターという事もあって、デジタルカメラの写真を印刷するというよりは、前述のスキャンしてUSBメモリーに保存したデーターを印刷する場合などが想定されているだろう。対応ファイル形式も一般的なJPEGとTIFFに加えてPDFに対応しているのも、こういった使い方が想定されているからだろう。なお、写真も印刷できないわけではない。USBメモリーに写真を入れておけば一覧から写真を選んで写真のダイレクト印刷ができるし、その場合に用紙サイズや日付表示の有無の設定もできる。自動写真補正機能の「オートフォトファイン!EX」も利用可能だ。

スマートフォン/クラウド対応
型番 PX-M380F PX-M270FT PX-M270T PX-M160T GM4030
製品画像
スマートフォン連携 アプリ メーカー専用 EPSON iPrint EPSON iPrint EPSON iPrint EPSON iPrint Canon PRINT Inkjet/SELPHY
AirPrint
対応端末 iOS 11.0以降
Android 5.0以降
iOS 11.0以降
Android 5.0以降
iOS 11.0以降
Android 5.0以降
iOS 11.0以降
Android 5.0以降
iOS 13.0以降
Android 5.0以降
スマートスピーカー対応 ○(Alexa/Googleアシスタント) ○(Alexa/Googleアシスタント) ○(Alexa/Googleアシスタント) ○(Alexa/Googleアシスタント)
Wi-Fiダイレクト接続支援機能 ○(NFC) ○(Bluetooth)
写真プリント
ドキュメントプリント ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
スキャン ○(PDF/JPEG) ○(PDF/JPEG) ○(PDF/JPEG) ○(PDF/JPEG) ○(PDF/JPEG)
クラウド連携 プリント アプリ経由/本体 ○/− ○/− ○/− ○/− ○/−
オンラインストレージ ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom)
SNS ○(Facebook・コメント付き可)
写真共有サイト ○(googleフォト)
スキャン アプリ経由/本体 ○/○ ○/○ ○/− ○/− −/−
スキャンしてオンラインストレージにアップロード ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive)
(OneDriveはアプリからのみ)
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive)
(OneDriveはアプリからのみ)
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive)
メールしてプリント ○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/PDF/Word/Excel/PowerPoint/メール本文) ○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/PDF/Word/Excel/PowerPoint/メール本文) ○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/PDF/Word/Excel/PowerPoint/メール本文) ○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/PDF/Word/Excel/PowerPoint/メール本文)
LINEからプリント ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint)
リモートプリント ○(リモートプリントドライバー) ○(リモートプリントドライバー) ○(リモートプリントドライバー) ○(リモートプリントドライバー)
スキャンしてリモートプリント

 スマートフォンとの連携機能も5機種とも搭載しており、iOSと、Android端末に対応している。いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることでプリント又はスキャンが行える。写真とドキュメント印刷、スキャンに対応しており、様々な内容をプリント可能だ。ドキュメント印刷は、PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もでき便利だ。また、5機種ともスマートフォン上からスキャンを実行し、データーをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。新聞や雑誌、手書きの情報などをスマートフォンに電子化するといった使い方ができるため便利だろう。なお、iPhoneやiPadの場合、AirPrintを利用したプリントも可能だ。
 スマートフォンとの接続は、無線LAN(Wi-Fi)で行うが、PX-M160Tを除く4機種は無線LANルーターを経由する方法と、ダイレクトに接続する「Wi-Fiダイレクト」(GM4030の名称はダイレクト接続)が選べる。無線LANルーターを経由する方が、機能面でも制限が無く、印刷する度にプリンターと接続と切断を繰り返すのWi-Fiダイレクトと比べると便利なので、こちらを利用するのがお勧めだが、無線LANルーターが無い環境で使用する場合や、一時的に同じネットワークに入っていない人がプリンターを使いたい場合などにWi-Fiダイレクトは便利だ。Wi-Fiダイレクトの接続設定は手動でもそれほど難しくは無いが、PX-M30FはNFC、GM4030はBluetoothを利用した接続支援機能が提供される。NFCの場合は、対応機種はNFC対応のAndroidに限られるが、タッチするだけでパスワード入力などが不要で接続出来る。一方、Bluetooth接続の場合は、Bluetoothで直接印刷データーを送信するのではなく、接続自体はWi-Fiだが、あらかじめBluetoothでペアリングしておけば、Wi-Fiダイレクトの設定が簡単に行えるというものだ。こちらもAndroid限定だ。使う機会は限定されるとはいえ、少しでも簡単に接続できるよう工夫さえれている点は評価できる。
 また、GM4030を除く4機種はスマートスピーカーに対応している。AlexaとGoogleアシスタント対応端末に対応しており、声だけでテンプレートを印刷させることができる。デザインペーパー、フォトプロップス、カレンダー、ノート、方眼紙、五線譜などのエプソン独自のものと、Alexaに登録された買い物リスト、やることリストなどの印刷に対応する。
 クラウドとの連携機能も全機種とも搭載されている。プリントの場合、オンラインストレージのファイルにアクセスし印刷する事ができる。またGM4030はSNSの写真をコメント付きで印刷したり、写真共有サイトからの印刷も可能だ。全機種ともスマートフォン上のアプリからアクセスする形となり、プリンター本体ではアクセスできない。一方、スキャンはGM4030を除く4機種が対応する。スキャンしてオンラインストレージへアップロードできる。ここで大きな違いは、PX-M270TPX-M160Tはプリントと同じくスマートフォン上でスキャンしてアップロードするのに対して、PX-M380FPX-M270FTはスマートフォン上だけでなく本体の操作でもスキャンからアップロードまで完了する事ができる(OneDriveはスマートフォン用アプリ経由のみ)。アプリをわざわざ立ち上げなくても、サッとスキャンしてアップロードできるPX-M380FPX-M270FTの方が便利だ。
 さらにリモートプリント機能として、エプソンの4機種は、印刷したい写真や文書を本機にメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、LINE上でプリンターを友達登録し、トーク画面から写真を送信すると印刷される「LINEからプリント」、パソコンやスマートフォンから通常のプリントと同じ操作で、外出先など離れた場所から自宅のこれら機種で印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。さらに、PX-M380FPX-M270FTはスキャンした画像を離れた場所の対応複合機で印刷できる「メールdeリモート印刷」機能も搭載している。4機種とも、ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。一方のGM4030はこういった機能は一体搭載していない。リモートプリント機能はエプソンの4機種が圧倒的だ。

コピー機能
型番 PX-M380F PX-M270FT PX-M270T PX-M160T GM4030
製品画像
等倍コピー ○(A4/B5のみ)
拡大縮小 倍率指定 ○(25〜400%) ○(25〜400%) ○(25〜400%) ○(25〜400%) ○(25〜400%)
オートフィット
定型変倍
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー
割り付け(2面/4面) ○/− ○/− ○/− −/− ○/○
その他のコピー機能 プレビュー
濃度調整
背景除去機能
コントラスト調整
シャープネス調整
濃度調整 濃度調整 濃度調整 濃度調整
バラエティコピー IDコピー
影消しコピー
パンチ穴消しコピー
ソート(1部ごと)コピー
IDコピー
影消しコピー
パンチ穴消しコピー
ソート(1部ごと)コピー
IDコピー IDコピー ページ順コピー
枠消しコピー
IDコピー
コピー予約

 コピー機能を見てみよう。単純なコピー機能としては、5機種とも単純な等倍コピーだけでなく、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「オートフィット」機能や、さらに25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える機能を搭載した高性能な物だ。PX-M380FPX-M270FTGM4030は原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行う「定型変倍」機能にも対応する。一方、PX-M160Tは印刷用紙はA4とB5しか選択できない点は注意が必要だ。
 また、PX-M160Tを除く4機種とも2枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2面割付機能を搭載する。GM4030は4枚の原稿を1枚に縮小する4面割付にも対応する。濃度調整機能は5機種とも搭載する。これに加えてPX-M380Fは機能が豊富で、プレビュー機能を搭載し、コピー前に原稿を確認できるため失敗が少なくなるほか、プレビュー画像を見て拡大・縮小率を調整できる。また、背景色を白にして見やすくする「背景除去機能」の他、コントラストとシャープネスの調整が可能だ。
 バラエティコピー機能を見てみよう。PX-M380FPX-M270FTは免許証などの裏表をそれぞれスキャンして1枚の用紙に並べて印刷する「IDコピー」、原稿の周囲や、冊子のとじ目部分などの影を消してくれる「影消しコピー」、パンチ穴を写らないようにコピーする「パンチ穴消しコピー」に対応する。これら2機種はADFを搭載していることから、ADFを利用して複数ページの複数部をコピーするときに1部ずつまとめてコピーする「ソート(1部ごと)コピー」機能も搭載している。PX-M270TPX-M160TもIDコピー機能を搭載する。一方、GM4030も複数ページの原稿を、1部ずつコピーする「ページ順コピー」、原稿の周囲や、冊子のとじ目部分などの影を消してくれる「枠消しコピー」、「IDコピー」を搭載する。それぞれ機能は異なるが、複合機単独で様々なコピーが行えるよう工夫されている。
 もちろん、ADFを搭載するPX-M270Tを除く4機種は、ADFから連続コピーも可能だ。PX-M380Fは両面スキャンに対応しているため、両面原稿の両面プリントも可能である。しかし、スキャンの項目で説明したとおり、ADFの速度は大きな差があり、PX-M380Fは24.0ipm、PX-M270FTは7.0ipm、PX-M160Tは2.0ipmである。一方、プリント速度はPX-M380Fが24.0ipm、PX-M270FTが20.0ipm、PX-M160Tが15.0ipmである事を考えると、PX-M380Fは理論上、ADFの速度が足を引っ張ること無く、プリントの速度を十分に発揮した高速なコピーが行える。一方PX-M270FTPX-M160Tはスキャン速度がボトルネックになってしまう。特にPX-M160Tではせっかく1分間に15枚のプリントが行える速度で有りながら、スキャンが遅いため、1分間に2枚しかコピー出来ない。同じ内容を複数枚コピーする場合は、プリント速度が発揮できるが、ADFを利用した1対1のコピーの場合は、ADFの速度が重要となってくる。

ファクス機能
型番 PX-M380F PX-M270FT PX-M270T PX-M160T GM4030
製品画像
通信速度 33.6kbps 33.6kbps
画質設定 モノクロ 8dot/mm×3.85本/mm(標準)
8dot/mm×7.7本/mm(精細)
8dot/mm×15.4本/mm(高精細)
16dot/mm×15.4本/mm(超高精細)
全モードで原稿種類を「文字」「文字・写真」「写真」から選択可
8dot/mm×3.85本/mm(標準)
8dot/mm×7.7本/mm(精細)
8dot/mm×15.4本/mm(高精細)
16dot/mm×15.4本/mm(超高精細)
カラー 200×200dpi 200×200dpi
送信原稿サイズ A4〜A5 A4〜A5
記録紙サイズ A4/A5/リーガル/レター A4/リーガル/レター
受信ファクス最大保存ページ数 550枚/200件 180枚/100件
データー保持(電源オフ/停電) ○/○ ○/○ −/− −/− −/−
ワンタッチ
アドレス帳 200件 100件
グループダイヤル 199宛先 99宛先
順次同報送信 200宛先 100宛先
自動リダイヤル
発信元記録
ポーリング受信/送信/予約 ○/○/− ○/−/− −/−/− −/−/− −/−/−
ファクス/電話自動切替
見てから送信
見てから印刷
受信ファクスを メール送信
共有フォルダ保存
外部メモリー保存 ○(USBメモリー)
PCファクス 送受信 送受信

 ファクス機能はPX-M380FPX-M270FTのみが対応している。両機種は基本はほぼ同等だが、細かなところで違いが出ている。両機種ともスーパーG3に対応しており、モノクロ、カラーファクスを行う事が出来る。ADFを搭載しているため、複数枚の原稿の送信も便利である。もちろんPX-M380Fは両面スキャンしファクスできるため便利だ。33.6Kbpsで通信可能であり、その場合の伝送速度はモノクロで約3秒となる。また読取走査線密度はモノクロで8dot/mm×3.85本/mmの標準モード、8dot/mm×7.7本/mmの精細モード、8dot/mm×15.4本/mmの高精細モード、16dot/mm×15.4本/mmの超高精細モードを選べる。ただし、PX-M380Fは、原稿種類を「文字」「文字・写真」「写真」から選択が可能なので、原稿に合わせて見やすい画質で送信が可能だ。カラーは200×200dpiだ。送信可能な原稿はA4〜A5サイズとなる。一方。受信したファクスの印刷はPX-M380FはA4かA5、PX-M270FTがA4のみなので、A5用紙に印刷できるという点ではPX-M380Fが優れているが、一般的にはA4用紙で問題ないだろう。受信したファクスはPX-M380Fが550枚または200件、PX-M270FTが180枚又は100件分となり、PX-M380Fの方は多いため受信件数が多い場合は便利だ。
 ダイヤル機能としては、両機種ともアドレス帳機能を搭載、PX-M380Fは200件、PX-M270FTは100件登録できる他、グループダイヤル、順次同報送信、自動リダイヤルなどの基本的な機能を搭載している。送信するファクスを液晶で確認してから送信する「見てから送信」と、受信したファクスの内容を液晶で確認した上で印刷するか決めることで用紙を節約できる「見てから印刷」機能も備える。さらに、パソコン内のデーターを直接ファクスできる「PCファクス」機能も搭載し、パソコンで作成したデーターを印刷する事無くファクスとして送信したり、パソコン上にファクスのデーターを受信することもできる。なお、両機種ともファクス機能だけで受話器がないため通話機能は無いが、モジュラージャックのインとアウトを備えており、アウトに電話機を接続すると通話が可能となる。その際、ファクス/電話自動切り替え機能にも対応しているのも便利だ。両機種の違いとして、PX-M380Fはボーリング送受信、PX-M270FTはボーリング受信に対応している点が上げられる。また、PX-M380Fだけの機能として、送信予約や、同じ宛先の文書をまとめて送信する「バッチ送信」、送信失敗文書の保存機能を搭載している。また、受信したファクスを指定したアドレスにメールしたり、共有フォルダに保存したり、USBメモリーに保存する機能も搭載しており、受信したファクスを外出先でも確認したり、情報共有を行いやすい。
 このように両機種は基本的な機能は似ているが、PX-M380Fは細かな点で機能が豊富だと言えるだろう。

操作パネル/インターフェース/本体サイズ
型番 PX-M380F PX-M270FT PX-M270T PX-M160T GM4030
製品画像
液晶ディスプレイ 4.3型
(75度角度調整可)
2.4型 1.44型 モノクロ2ライン 2行モノクロ
(90度角度調整可)
操作パネル タッチパネル+物理ボタン
(75度角度調整可)
タッチパネル ボタン式 ボタン式 ボタン式
インターフェイス USB他 USB2.0×1 USB2.0×1 USB2.0×1 USB2.0×1 USB2.0×1
無線LAN IEEE802.11ac/a/n/g/b
5GHz対応
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b IEEE802.11n/g/b
(ダイレクト接続対応)
有線LAN 1000BASE-T 100BASE-TX 100BASE-TX 100BASE-TX 100BASE-TX
対応OS Windows 11/10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 11/10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 11/10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 11/10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 11/10/8.1/7 SP1
耐久枚数 15万ページ 10万ページ 10万ページ 5万ページ 6万ページ
外形寸法(横×奥×高) 425×535×357mm 375×347×346mm 375×347×302mm 435×377×226mm 403×369×234mm
重量 18.0kg 7.3kg 6.2kg 6.0kg 9.2kg
本体カラー ホワイト ホワイト ホワイト ブラック ブラック

 操作パネルは機種によって位置や液晶の大きさ、操作性に大きな違いがある。それでは、それぞれグループ分けして見ていこう。PX-M380Fは4.3型カラー液晶、PX-M270FTが2.4型カラー液晶、PX-M270Tが1.44型カラー液晶、PX-M160TGM4030が2行文字表示のモノクロ液晶である。PX-M380FPX-M270FTPX-M270Tはカラー液晶であるため、グラフィカルな表示が可能で分かりやすい。一方、PX-M160TGM4030は液晶が小さいだけで無く、バックライトが無いため暗いところでは液晶が見にくい。また文字だけの情報なので、一目で理解するのは難しい。特に液晶の大きなPX-M380Fの操作性は非常に良いと言える。
 続いて取り付け位置だが、PX-M380FGM4030の操作パネルと液晶は、本体前面に取り付けられており、持ち上げて角度調整が可能だ。PX-M380Fは75度、GM4030は90度まで角度調整可能なので、垂直から(ほぼ)水平まで自由に調整できる。高い位置に置いても低い位置に置いても使いやすいだろう。一方、PX-M270FTPX-M270TPX-M160Tは液晶と操作パネルが本体から前方に、斜めに飛び出している。PX-M380FGM4030を45度で固定したような感じだ。斜めに取り付けられているため正面からでも上からでも比較的操作しやすいが、角度調整できるPX-M380FGM4030と比べると使いずらい場合があるだろう。
 操作方式にも違いがある。PX-M380FPX-M270FTはタッチパネル操作となっている。メニューや設定項目など、表示項目をタッチして操作できるので、非常に分かりやすい。また、バックライトの入った液晶にボタンが表示されるため、暗い場所でも操作しやすい他、ボタン数を少なくできるため、分かりやすいというメリットもある。しかし、この2機種にも違いがある。PX-M380Fは液晶の左右、液晶と一体化するような黒色デザイン部分にはタッチセンサー式ボタンがあり、液晶左にホームボタン、右にヘルプボタンが搭載されている。どの状態でも使用するこの2つのボタンだけは、独立させることで利便性を高めている。さらに、液晶の右に、ファクスで使うテンキーと「クイックダイヤル」ボタン、「クリア」ボタンの他、「割り込み」「リセット」「用紙設定」「ジョブ/状態」といった、各種機能の呼び出しボタンが並んでいる。一方PX-M270FTは液晶の左にホームボタン、右にヘルプボタンがあるのはPX-M380Fと同じだが、それ以外のボタンは一切無い。ファクス用テンキーも液晶内に表示される。テンキーは物理ボタンの方が押した感触があるため素早く押せて、間違えにくいという特徴があるが、その分キー数が増えてしまい、煩雑な印象を受ける。ファクスなどをよく使う場合はPX-M380Fが、たまにしか使わない場合や受信が多い場合はPX-M270FTでも問題ないだろう。PX-M270Tはタッチパネル液晶では無いため、ボタン操作となる。液晶の左にホームボタン、右側に4方向のカーソルボタンと中心にOKボタン、その左上がヘルプ、左下が戻る、右下が状況に応じて様々な用途に使うボタン、さらに右側にストップとスタートが並んでいる。基本的なボタン配置で、カーソルボタンも上下左右が並んでおり操作性は悪くない。PX-M160TGM4030はモノクロの小型の液晶と言うこともあって、機能を選択するホーム画面が存在しない。PX-M160Tは「コピー」「スキャン」「無線LAN設定」のボタンを液晶下に、GM4030は「コピー」「スキャン」「セットアップ」「ワイヤレスコネクト」ボタンを液晶左に用意し、直接機能を切り替える。それ以外に「スタート」「ストップ」ボタンがあるのは共通だ。しかし、それ以外の操作性には差がある。PX-M160Tは、4方向のカーソルボタンと、その中心に「OK」ボタン、さらに、「メニュー」と「戻る」ボタンを液晶右に並べている。上下左右のカーソルボタンがあり、各機能の操作に使うボタンを一カ所にまとめているため、比較的分かりやすい。各ボタンにはアイコンが書かれているが、その下に「メニュー」や「スタート」と言った文字での説明が書かれているのも分かりやすい。一方、GM4030は「戻る」「左右カーソル」「OK」を液晶下に、「メニュー」ボタンを液晶左に配置する。最低限のボタンしか無いため、操作性は劣る。特にカーソルボタンが左右しか無いため、設定メニューの階層が深くなり、どうしても操作が煩雑になってしまう点は残念だ。
 このように、操作パネルには大きな差があるが、やはり大型液晶でタッチパネル、角度調整が可能なPX-M380Fの操作性は抜きに出ている。PX-M270FTも比較的大きな液晶で、タッチパネル操作なので悪くは無く、PX-M270Tも液晶は小さいながらカラーで、ボタンの配置も分かりやすく、最低限の操作性は確保している。PX-M160TGM4030は液晶の問題もあって操作性では大きく劣る。2機種の内ではPX-M160Tの方が分かりやすいが、大きな差では無いだろう。コピーなどの操作が多いなら、操作性にもこだわりたいところだ。
 インターフェースは5機種ともUSB2.0に加えて、有線LANと無線LANに対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルーターで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人には有線・無線LANによりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。無線LANだけでなく有線LANにも対応しているため、ルーターが近い場合や、壁にLANコネクタが用意されている場合、無線LANでは不安定な場合などに重宝する。一方無線LANはPX-M160Tを除く4機種はWi-Fiダイレクト(GM4030は名称はダイレクト接続)に対応しているため、無線LANルーターの無い環境でも、スマートフォンやタブレットと直接Wi-Fi接続が可能となっているのも便利な点だ。ただし、PX-M380Fのみ、他の4機種より高機能になっている。有線LANは1000BASE-Tに対応しており、100BASE-TX対応の他の4機種よりも印刷データーやスキャンデーターなどの高速転送が可能だ。さらに無線LANは、IEEE802.11acとnに対応している。IEEE802.11acは、他機種のIEEE802.11nと比べると通信速度が圧倒的に速いため、無線LAN接続時でも待たされる心配が無い。さらに、IEEE802.11ac/n/a通信時は、5GHz帯の電波を使用できる。他機種の2.4GHz帯は、Bluetoothや電話の子機と同じ帯域で、電子レンジなどの影響も受けやすいが、5GHz帯は無線LAN専用といえるので、通信が安定する。PX-M380Fはワンランク上の性能となっている。
 対応OSはエプソンの4機種はWindows XP SP3以降は全て対応する。MacOSもダウンロード対応とはなるが10.6.8以降に対応する。Windows 11/10などの最新OSだけでなく、マイクロソフトのサポートの終了したWindows XPやVistaにも対応するのは安心だ。一方、GM4030はWindows 7 SP1/8.1/10/11のみの対応だ。Windows XPやVistaだけでなく、Windows 8も非対応である点は注意が必要だ。さらに、MacOSには対応していない点は残念と言える。
 本体サイズを見てみよう。PX-M380Fは最も大きく425×535×357mmとなる。横幅はそれほどの差では無いが、高さと奥行きが大きい。また、背面給紙を使用する場合は、さらに後方にスペースが必要になる。インクパック方式を採用しており、前面給紙カセットの更に下にインクの収納スペースを必要としている事や、コンパクトさより機能を重視した結果と言える。奥行きに関しては、排紙トレイが本体から出た状態で固定されている部分も含んでいるため、もう少し小さく見える。PX-M270FTは375×347×346mmで、PX-M270Tは375×347×302mmとなる。プリンター本体は同じで、スキャナーのADFの分の高さだけが異なる。操作パネルが前に飛び出ているように見えるが、実際には操作パネルの前面とプリンター部の前面が揃う形となっている。幅と奥行きは5機種中最も小さく、設置スペースは一番取らない。天面排紙としたことで、プリンター部とスキャナー部の間にスペースが必要となり高さがあるが、スキャナー部は左右の脚で支えられているだけなので、圧迫感は少ない。PX-M160Tは、435×377×226mmと高さは抑えられているが、幅と奥行きは大きめに見える。さらに背面給紙であるため、後方に必ずスペースが必要になる。ただし、奥行きに関しては操作パネルが前に出ている分を含めているし、横幅も本体右にエコタンクが飛び出ている分を含めているため、実際にはもう少しコンパクトに見える。GM4030は403×369×234mmで、5機種中、中間的なサイズだ。背面給紙を使用する場合は後方にスペースが必要なのは同じだ。ちなみに、使用時のサイズとなるとさらにPX-M270FTPX-M270Tのコンパクトさが際立つ。これら2機種の奥行きは使用時でも変わらない347mmだ。PX-M380Fも排紙トレイが出た状態での数値なので変わらないが、元々535mmと大きい。背面給紙を使う場合は578mmになる。PX-M160Tの場合、背面給紙トレイを開け、排紙トレイを伸ばすと奥行きは540mmになる。GM4030では背面給紙も使用した場合671mmになる。棚の中や、机の上の小さなスペースに置く場合、使用時のことを考えるとPX-M270FTPX-M270Tはかなり有利と言える。
 最後に、耐久枚数を見てみよう。PX-M380Fが15万ページで最も耐久性が高く、次いでPX-M270FTPX-M270Tの10万ページ、PX-M160Tは5万ページ、GM4030は6万ページで、後の2機種はやや耐久性が低く見える。とはいえ、家庭用プリンターは1万〜1万5000枚なので、それと比べてれば十分に耐久性は高い。プリンターの寿命は5年と言われているため、5年で印刷する枚数を考えると良いだろう。PX-M380Fで月2,500枚まで、PX-M270FTPX-M270Tで月1,667枚まで、PX-M160Tで月833枚まで、GM4030で月1,000枚までとなる。



 5機種はモノクロ複合機という点では同じだが、それ以外の部分では独自性が多く、それが選ぶ上での決め手となるだろう。まず、モノクロがメインだが、いざという時カラープリントをする可能性があるというのであればGM4030しかない。カラーインクカートリッジを付ければカラー印刷が可能なのは他機種に無いメリットだ。ただ、枚数が少なくても、定期的にカラープリントを使うことが分かっているなら、カラーもギガタンク方式のG6030などの方がよいだろう。あくまで、可能性がゼロでは無いという場合にオススメだ。また、ファクス機能が必要なら、PX-M380FPX-M270FTから選ぶことになる。印刷速度やADFの速度、ファクス機能の豊富さなどを重視するならPX-M380F、印刷コストや設置スペースを重視するならPX-M270FTとなる。
 では、カラープリントやファクス機能が不要な場合を考えてみよう。GM4030もカラーカートリッジを使わなければただのモノクロプリンターだし、PX-M380FPX-M270FTもファクス機能を無視する事ができるので、再度5機種から選ぶことになる。印刷やスキャン、コピーの速度を重視するならPX-M380Fだ。印刷速度は5機種中最速ではあるものの、PX-M270FTPX-M270Tと比べて大きな差があるわけでは無い。ただADFの速度に関しては3倍以上の違いがあるため、スキャンやコピーを多用するならストレスが少ない。また両面ADFも便利だし、操作性も最も良いため、コピー操作も行いやすい。耐久性も高いため印刷枚数が多くても安心だ。印刷コストは他の4機種より高いが、レーザープリンターと比べれば十分に低印刷コストだ。より印刷コストにこだわるなら、他の4機種からとなる。印刷速度を重視するならPX-M270FTPX-M270Tだ。設置面積の面でも圧倒的に優れており、小さなスペースでも使いやすい。ADFが必要ならPX-M270FT、不要ならPX-M270Tで良いだろう。印刷速度は重視しないが、2種類の用紙を使いたいという場合はGM4030が便利だ。背面給紙も手差しでは無くトレイ式で、前面給紙カセットにセットした用紙以外を使う場合に、入れ替えの必要が無い。PX-M160TGM4030と同価格だが、印刷速度がやや上回る以外、インクの補充方式の不便さや、自動両面印刷機能が非搭載である点、背面給紙のみと機能面で劣る点が多く、GM4030に対してオススメできるとは言いがたい。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/


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