2021年末時点のプリンター 〜エプソン・キャノン・ブラザーのプリンターを比較〜 (2022年3月26日公開)
昔は、プリンターと言えば、プリントが出来るだけの機種ばかりだったが、いつしかコピーやスキャンが行える「複合機」が増え、プリントだけの単機能プリンターは数が少なくなってきた。特にA4プリントの機種に関しては、新製品があまり登場せず、登場したとしても元々は複合機として開発され、そこからスキャナーを外しただけの単機能プリンターも多くなってきており、サイズ面でのメリットも無くなりつつある。価格帯別に分けるほど機種が多くないため、6機種を一気に比較したいと思う。エプソンのPX-S885(32,978円)、EP-306(17,789円)、PX-S740(18,678円)、PX-105(10,455円)とキャノンのMAXIFY iB4130(16,363円)、PIXUS TS203(4,950円)の6機種となる。価格にもバラツキが有り、価格が似ているEP-306、PX-S740、MAXFY iB4130も、方向性が全く異なる製品だ。また、PX-S885、PX-S740、PX-105、MAXIFY iB4130がビジネス向け、EP-306、PIXUS TS203が家庭向けと、対象となるユーザーも大きく異なっている。どの製品が自分の用途に合っているのかを見るために、細かく違いを見ていこう。 |
メーカー | エプソン | エプソン | エプソン | エプソン | キャノン | キャノン | ||
型番 | PX-S885 | EP-306 | PX-S740 | PX-105 | MAXIFY iB4130 | PIXUS TS203 | ||
製品画像 | ||||||||
実売価格(メーカーWeb/税込) | 32,978円 | 17,789円 | 18,678円 | 10,455円 | 16,363円 | 4,950円 | ||
インク | 色数 | 4色 | 6色 | 4色 | 4色 | 4色 | 4色 | |
インク構成 | ブラック シアン マゼンダ イエロー |
ブラック シアン ライトシアン マゼンダ ライトマゼンダ イエロー |
ブラック シアン マゼンダ イエロー |
ブラック シアン マゼンタ イエロー |
ブラック シアン マゼンダ イエロー |
顔料ブラック シアン マゼンタ イエロー |
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カートリッジ構成 | 各色独立 (インクパック方式) |
各色独立 | 各色独立 | 各色独立 | 各色独立 | 黒独立、カラー3色一体 | ||
顔料/染料系 | 顔料 | 染料 (つよインク200) |
顔料 (つよインク200X) |
顔料 (つよインク200X) |
顔料 (MAXIFY用新顔料インク) |
染料(カラー)/顔料(黒) | ||
インク型番 | IP01B(大容量) IP01A(標準容量) |
70L(増量) 70(標準) |
75L(大容量) 74(標準) |
69 69L(増量・黒のみ) |
2300XL(大容量) 2300(標準容量) |
345XL/346XL(大容量) 345/346(標準容量) |
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ノズル数 | 3200ノズル | 1080ノズル | 1568ノズル | 357ノズル | 4352ノズル | 1280ノズル | ||
全色:各800ノズル | 全色:各180ノズル | カラー:各256ノズル ブラック:800ノズル |
カラー:各59ノズル ブラック:180ノズル |
カラー:各1024ノズル ブラック:1280ノズル |
カラー:全色;320ノズル | |||
最小インクドロップサイズ | N/A(3.8pl?) | 1.5pl(Advanced-MSDT) | 2.8pl(MSDT) | 3pl(MSDT) | N/A(カラー5pl/ブラック11pl?) | N/A | ||
最大解像度 | 4800×1200dpi | 5760×1440dpi | 4800×2400dpi | 5760×1440dpi | 600×1200dpi | 4800×1200dpi | ||
高画質化機能 | PrecisionCoreプリントヘッド ノズル自己判断システム |
− | PrecisionCoreプリントヘッド | − | − | − | ||
印刷速度 | L判縁なし写真(メーカー公称) | N/A | 14秒 | 41秒 | 74秒 | N/A | 52秒 | |
A4普通紙カラー(ISO基準) | 24.0ipm | N/A (9.0ipm?) |
10.0ipm | 4.7ipm | 15.5ipm | 4.0ipm | ||
A4普通紙モノクロ(ISO基準) | 24.0ipm | N/A (9.5ipm?) |
19.0ipm | 9.0ipm | 24.0ipm | 7.7ipm | ||
(税込) |
L判縁なし写真 | N/A | 増量:22.7円 標準:29.2円 |
N/A (大容量:25.2円?) |
増量:30.7円 | N/A | 大容量:23.9円 標準:31.0円 |
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A4カラー文書 | 大容量:6.7円 | 増量:12.9円 | 大容量:10.3円 | 増量:14.4円 | 大容量:6.8円 標準:8.4円 |
大容量:15.5円 標準:22.2円 |
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A4モノクロ文書 | 大容量:2.0円 | N/A | 大容量:3.5円 | 増量:4.5円 | 大容量:2.0円 標準:2.5円 |
N/A | ||
(カラー文書) |
顔料ブラック | 大容量:10,000ページ 標準:3,000ページ |
− | 大容量:1,500ページ 標準:350ページ |
N/A | 大容量:2,500ページ 標準:1,000ページ |
大容量:400ページ 標準:180ページ |
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染料ブラック | − | N/A | − | − | − | − | ||
カラー | 大容量:5,000ページ 標準:3,000ページ |
N/A | 大容量:730ページ 標準:300ページ |
N/A | 大容量:1,523ページ 標準:712ページ |
大容量:300ページ 標準:180ページ |
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(税込) |
顔料ブラック | 大容量:19,228円 標準:8,217円 |
− | 大容量:4,598円 標準:1,463円 |
増量:1,848円 標準:1,089円 |
大容量:4,730円 標準:2,310円 |
大容量:2,772円 標準:1,881円 |
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染料ブラック | − | 増量:1,089円 標準:682円 |
− | − | − | − | ||
カラー | 大容量:各7,865円 標準:各6,381円 |
増量:1,089円 標準:682円 |
大容量:各1,738円 標準:各979円 |
各1,089円 | 大容量:各2,409円 標準:各1,408円 |
大容量:2,552円 標準:2,112円 |
まずはプリントの基本となる画質と速度、印刷コストから見ていこう。インク構成は3パターンある。PX-S885、PX-S740、PX-105、MAXIFY iB4130が4色インク構成で、全色が顔料インクとなる。正反対なのがEP-306で、6色インク構成で全色が染料インクとなる。PIXUS TS203は4色インク構成だが、ブラックが顔料インク、カラー3色が染料インクとなる。ここで、染料インクと顔料インクの話が出てきたが、それぞれに得手・不得手がある。染料インクは様々な用紙に対応でき、写真用紙等に印刷した際に発色が良く、用紙本来の光沢感が出るため、写真印刷に向いている。一方で普通紙に印刷すると紙にしみこんで広がってしまうため、メリハリが弱くなる。また水濡れに弱く、濡れた手で触ったりマーカーを引いても滲んでしまう。その点で顔料インクならメリハリのある印刷が行え、小さな文字や中抜き文字も潰れずに印刷が可能なほか、耐水性も高い。しかし、顔料インクは写真用紙などに印刷した際に発色が悪いほか、用紙の光沢感が薄れ半光沢のようになってしまう。また、光沢した年賀状や光沢フィルムなど一部に顔料インク非対応の用紙もある。つまりは染料インクと顔料インクは、用紙によって向き不向きがあるわけである。 これを元に画質を見てみよう。まずは写真画質である。印刷内容が写真かどうかというよりは、写真用紙への印刷画質となる。またハガキの通信面やファイン紙、光沢紙など、普通紙以外の画質もこちらになる。最も高画質なのは、6色染料インクのEP-306だ。というよりも写真画質をうたえる機種は6機種中EP-306のみとなる。ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色に加えて、ライトシアンとライトマゼンダを搭載するため、色の薄い部分でも粒状感(ザラザラした感じ)が目立たないというメリットがある。また画質に大きな影響のある最小インクドロップサイズも、1.5plと非常に小さいため、ドットが小さく、こちらも粒状感の少なさに寄与している。全体として、粒状感をほとんど感じない高画質な印刷が可能である。染料インクであるため、写真用紙へ印刷した際の発色が良いだけで無く、用紙の光沢感がそのまま出るため写真印刷に向いている。この画質は家庭用A4複合機の上位機種とほぼ同等であるため(インクが少々異なるが)、画質面では家庭向けでは最高レベルであると言える。また、染料インクであるため、用紙の制限がほとんど無く、種類を気にせずインクジェットプリンター用の用紙なら使うことが出来る点で、幅広く使えるのもメリットだ。 次に写真画質が高いのはPIXUS TS203だ。4色構成なので一見すると問題無さそうだが、ブラックインクが顔料インクであるため写真用紙には使用せず、カラー3色のみの印刷となる。黒色はカラーを重ねて作るが、どうしても非常に濃い茶色やグレーにしかならず、全体にコントラストが弱くなってしまう。これは黒髪や影、夜景などの色を見れば一目瞭然な他、影や夜景などの黒の中の微妙な表現力が劣ってしまう。ライトシアンとライトマゼンダが無い事も、色の薄い部分での粒状感の差となるが、それよりもブラックインクが使えるかどうかは画質に大きな影響がある。PIXUS TS203は写真高画質とは言いがたいが、ある程度妥協すれば写真も印刷できる画質といったところだ。ちなみに最小インクドロップサイズは非公開ながら2pl程度では無いかと予想され、この点もEP-306よりやや劣るものの、2plであれば粒状感をそこまで感じるほどではない(ただし推測の域を出ない)。また、染料インクを使用できるため、幅広い用紙に対応できるのはEP-306と同等だ。残る4機種はいずれも顔料4色であり、写真向きとは言いがたい。全色が顔料インクであるためブラックインクも使えるが、前述のように顔料インクでは写真用紙への発色がかなり悪いため、PIXUS TS203以上に見栄えの悪い印刷となる。また用紙本来の光沢感も薄れてしまう。これら4機種では写真印刷は考えないのが無難で、せいぜいハガキへの印刷程度なら、多少画質が悪くても良ければというレベルと言える。それも光沢タイプの年賀ハガキなどは使えない。ただ4色顔料の中でも若干の画質の違いはある。最小インクドロップサイズを見ると、公表されているのはPX-S740が2.8pl、PX-105が3plという事だけだが、PX-S885とMAXIFY iB4130は海外の同機能のモデルから、PX-S885は3.8pl、MAXIFY iB4130はカラーが5pl、ブラックが11plと思われる。最小インクドロップサイズが小さい方が粒状感を感じにくいため、PX-S740やPX-105はEP-306と比べると大きい物の、よく見ないと差が分かりにくい程度だ。PX-S885もまだマシだが、MAXIFY iB4130はかなり大きいため、ぱっと見でもかなりザラザラした感じを受けるだろう。とはいえ、4機種の間で差を付ければ、この点と言うだけで、実際には発色などの面から、いずれも写真向けとは言いがたい。 逆に文書の印刷画質を見てみよう。文書と言っても、印刷内容が文書かどうかと言うよりは、普通紙への印刷の画質である。文書中の写真やイラストなどもこちらになる。文書の印刷画質は前述のように、顔料インクが有利だ。PX-S885、PX-S740、PX-105、MAXIFY iB4130は全色顔料インクであるため、モノクロ、カラーを問わずメリハリのある印刷が行える。PIXUS TS203もブラックインクは顔料インクであるため、ブラックインクを使用する部分に限ってだが、顔料インクの恩恵が得られる。カラー部分は染料インクを使用するのはもちろん、完全な黒ではなくグレーの部分はカラーインクを重ねて表現する場合があり、また背景色がある場合なども染料ブラックを使用する場合があるため、全ての黒色で顔料インクのメリットを受けられるわけでは無いが、黒文字などが顔料インクなだけでも全体の仕上がりはぐっと引き締まる。残るEP-306は全色染料インクであるため、普通紙印刷画質では劣る。また、複合機の最新機種では染料インクでも色鮮やかにクッキリ印刷できるようドライバーレベルでの改善も行われているが、EP-306は発売が古いためその点でも劣ってしまう。家庭での文章やホームページの印刷なら問題ないレベルだが、ビジネスで見栄えが良くしたいなら顔料インクの機種の方が良いだろう。また全色顔料インクの機種でも差がある。PX-S885とPX-S740はPrecisionCoreプリントヘッドを採用しており、普通紙への印刷解像度が360dpiから600dpiにアップしている。そのため、図面のような細い線でも潰れず印刷ができる。さらにPX-S885はノズル自己診断システムを搭載しており、プリントヘッドのドット抜けを印刷ジョブごとに自動的に検知し、画質を調整するため、ふと気づいたら印刷結果に問題があってやり直しという事を防ぐことができる。一方、最小インクドロップサイズは写真印刷ほど影響が大きくはないとはいえ、MAXIFY iB4130はかなり大きいため、文書中の写真やグラフなどべた塗り部分にドットが見えてしまうと言う点では4機種中最も劣ると言える。 ちなみに耐保存性に関しても違いがある。EP-306は「つよインク200」というインクを採用しており、写真のアルバム保存300年、耐光性50年、耐オゾン性10年と、写真の耐保存性は非常に高い。さすがに写真印刷画質に特化したプリンターと言えるだろう。またPX-S740とPX-105も「つよインク200X」というインクを採用しており、アルバム保存200年、耐光性45年、耐オゾン性30年と、EP-306に近いレベルだ。写真印刷向きの画質とは言いがたいが、耐保存性の面では問題ないと言える。一方PX-S885は耐保存性については一切うたっていない。MAXIFY iB4130もMAXIFY用新顔料インクという名称だが、これは耐保存性を示した物ではない。PIXUS TS203も名称がないが、上位モデルや複合機が対応する「ChromaLife 100」(アルバム保存100年)には準拠しないという事なので、これより劣る事が考えられる。 以上から写真印刷に特化した画質と耐保存性を持つEP-306、文書印刷に特化したPX-S885、PX-S740、PX-105、MAXIFY iB4130、文書も写真もそこそこの画質のPIXUS TS203という構図となる。 印刷速度を見てみよう。L判写真の縁なし印刷速度では、EP-306が14秒、PX-S740が41秒、PX-105が74秒、PIXUS TS203が52秒で、EP-306が圧倒的に高速だ。さすがに写真印刷向けの機種と言える。PX-S740、PIXUS TS203でもある程度待てば良いが、1分を超えるPX-105はさすがに遅い、100枚印刷する場合、EP-306が23分20秒、PX-S740が1時間8分20秒、PX-105が2時間3分20秒、PIXUS TS203が1時間26分40秒となる。写真だけで無く年賀状の通信面なども、(用紙サイズや印刷内容が異なるので同じ秒数にはならないが)こちらの印刷速度の差に近くなると思われる。印刷枚数によっては、印刷速度は重要だ。PX-S885とMAXIFY iB4130は写真印刷速度が公表されていない。 一方、文書の印刷速度を見てみよう。こちらは単位をipmで表す。ipmはimage per minute、つまり1分あたりの印刷枚数であるため、数値の大きい方が高速になる。最も高速なのはPX-S885でカラーもモノクロも24.0ipmとなる。これは卓上インクジェットプリンターとしては最高速レベルで、卓上レーザープリンターなどと比べても引けを取らない速度だ。MAXIFY iB4130も1枚目の印刷中に2枚目を搬送する「重ね連送」機能を搭載して高速化を図っており、カラーこそ15.5ipmとなるが、モノクロはPX-S885と同等の24.0ipmとなっている。続いて、PX-S740がカラー10.0ipm、モノクロ19.0ipmとなる。前の2機種と比べると遅く感じるが、かなり高速な部類に入る。PX-105はそれぞれ4.7ipmと9.0ipm、PIXUS TS203はそれぞれ4.0ipmと7.7ipmとなり、それほど高速ではない。また、写真印刷速度とは傾向が異なっているのが見て取れる。例えばPX-105とPIXUS TS203では写真はPIXUS TS203の方が高速だったが、文書印刷はPX-105の方が高速だ。また、PIXUS TS203より写真印刷が20%ほど高速だっただけのPX-S740は、文書の印刷速度では2.5倍高速で、差が開いている。全色顔料インクの機種は写真印刷は遅いが、文書印刷は高速な傾向がある。EP-306は文書の印刷速度を公表していないが、海外の同機能のモデルから、カラー9.0ipm、モノクロ9.5ipmと予測される。写真印刷が圧倒的に高速だったEP-306だが、文書の印刷速度ではPX-S740に大きく劣り、モノクロはPX-105とほぼ同等となっている。ちなみに100枚印刷する時間を計算すると、カラーの場合、PX-S885が4分10秒、EP-306が(海外モデルと同等とすると)11分07秒、PX-S740が10分、PX-105が21分17秒、MAXIFY iB4130が6分27秒、PIXUS TS203が25分となる。モノクロの場合、PX-S885が4分10秒、EP-306が(海外モデルと同等とすると)10分32秒、PX-S740が5分16秒、PX-105が11分07秒、MAXIFY iB4130が4分10秒、PIXUS TS203が12分59秒となる。最速のPX-S885とPIXUS TS203ではかなりの速度差となるため、こちらも印刷枚数が多いと予想される場合は要注意だ。 印刷コストを見てみよう。ちなみにPIXUS TS203を除く5機種にインクカートリッジは各色が独立しており、無くなった色だけ交換できる一方、PIXUS TS203はブラックインクは独立している物の、カラーは3色が一体型のカートリッジとなっており、1色でも無くなると交換となる。その点でPIXUS TS203は印刷コスト面では不利なはずだ。まずはL判写真の印刷コストである。EP-306が22.7円で標準的な値だ。一方PX-S740は非公表だが、税込み価格表記になる前は公表されており、そこから計算すると25.2円とやや高くなる。大容量インクを採用しているものの、顔料インクでの写真印刷は印刷コストが上がる傾向があるため、EP-306より高くなっている。PX-105はさらに高く30.7円となる。カラーが一体型のPIXUS TS203は大容量カートリッジ使用時で23.9円となる。PX-S740やPX-105よりも安く、EP-306に近い印刷コストなっているが、これは写真印刷では比較的各色が均等に使用されることに加えて、染料インクが使用できること、また割安の大容量カートリッジが提供されていることが挙げられる。写真印刷に限れば、EP-306でもPIXUS TS203でも印刷コストは余り気にしなくても良さそうだ。一方、文書の印刷コストを見てみよう。PX-S885はA4カラー文書が6.7円、A4モノクロ文書が2.0円となる。最近では、低印刷コストをウリにしているエコタンク方式をはじめとするタンク方式の機種があるため、それほど安くは感じないかもしれないが、タンク方式を除くと最も低印刷コストな部類に入る。MAXIFY iB4130もほぼ同じでカラー6.8円、モノクロ2.0円だ。卓上レーザープリンターの場合カラー文書は9円〜18円、モノクロ文書は1.6円〜4円程度なので、これと比べても低印刷コストであり、印刷コスト重視ならば、魅力的な製品と言える。次に低価格なのがPX-S740で、カラー10.3円、モノクロ3.5円で、これも平均よりは安く、カラープリントはレーザープリンターより安い。平均的なのがEP-306でカラーが12.9円となる。PX-105はやや高くカラー14.4円、モノクロ4.5円となる。カラー一体形カートリッジのPIXUS TS203はカラーが15.5円と6機種中最も高くなっている。文書印刷ではカラーインクの使用量が偏りやすく、一体型カートリッジでは無駄が多くなる。印刷枚数がある程度多いなら、本体価格は安くても印刷コストが高くなると結果的に高く付くため、PIXUS TS203は避けた方が無難だ。 ちなみに、PX-S885を除く5機種は従来通りのインクカートリッジ方式である。それに対して、PX-S885はインクパック方式を採用している。インクパックはインクの充填された袋状のもので先端にプラスチックの持ち手と取り付け口が付いている。本体前面の最下段に色ごとのトレイがあり、パックをトレイに装着して、トレイを本体に戻すという方式となる。パック式になったことで大容量となっており、大容量のIP01Bならブラックインクは10,000ページ、カラーインクは5,000ページの印刷が可能となっている。ブラックは19,228円、カラーは7,865円であり、1セット購入で43,879円となる。インクを購入する際は、一度に大きな出費となるが、交換頻度が少ないため、インク交換の手間が省けるほか、インク切れで印刷が止まっていたというトラブルも少なくなる。大量印刷や大人数での利用に向いた設計だ。ほぼ同じ印刷コストのMAXIFY iB4130の場合、大容量の2300XLインクで、ブラックは2,500枚、シアン1,755枚、マゼンダ1,295枚、イエロー1,520枚の印刷が可能で、PX-S885と比べると4分の1程度の印刷枚数だ。価格はブラックが4,730円、カラーが2,409円となり1セットで11,957円と、印刷枚数に比例して安価になっているため、1枚あたりの印刷コストは同等となる。PX-S885と比べると少なく感じるが、これでもインクジェットプリンターとしてはかなり大容量だ。PX-S740は大容量の75番インクで、ブラックが1,500ページ、カラーが730ページ印刷でき、それぞれ4,598円と、各1,738円となりセットで9,812円となる。インクカートリッジの価格はMAXIFX iB4130と余り変わらないが、印刷可能枚数が少ないため、印刷コストが高くなる。とはいえ、ここまでは家庭向けの機種と比べて印刷可能枚数は多めだ。PIXUS TS203は大容量の345XL/346XLインクを使用しても、印刷可能枚数はブラックが400ページ、カラーが300ページと極端に少なくなる。インクカートリッジはブラックが2,772円、カラーが2,552円で、合計5,324円となる。印刷可能枚数を考えると高く見えるが、それでもインク購入時の1回あたりの出費は抑えられるため、印刷枚数が少ないならこちらの方が便利だろう。残るEP-306とPX-105は印刷可能枚数を公表していない。インクカートリッジの価格はEP-306が各色1,089円で1セット(6色)で6,534円、PX-105がブラックが増量で1,848円、カラーは増量は無く各1,089円で、1セット(4色)で5,115円となる。印刷可能枚数を、インクカートリッジの価格を印刷コストで割る事で算出すると、EP-306は500枚前後、PX-105はブラックが540枚前後、カラーが300枚前後となる。かなり無理矢理な値なので正確では無いが、これら2機種もPIXUS TS203と同等かやや多い程度と予測される。印刷枚数がそれほど多くない、又は家庭向けと言えるだろう。 |
型番 | PX-S885 | EP-306 | PX-S740 | PX-105 | MAXIFY iB4130 | PIXUS TS203 | ||
製品画像 | ||||||||
対応用紙サイズ | 定型用紙 | L判〜A4 (用紙幅64mmまで対応) (フチ無し印刷非対応) |
L判〜A4 | L判〜A4 | L判〜A4 | L判〜A4 (フチなし印刷不可) |
L版〜A4 (フチなし印刷はL判/KG/はがきのみ) |
|
長尺用紙 | 長さ6,000mmまで | N/A | 長さ1,200mmまで | 長さ1,117.6mmまで | 長さ355.6mmまで | 長さ676mmまで | ||
給紙方向 (セット可能枚数(普通紙/ハガキ/写真用紙)) |
○ (80枚/30枚/20枚) |
○手差し (1枚/1枚/1枚) (0.6mm厚紙対応) |
○手差し (1枚/1枚/1枚) |
○ (100枚/30枚/20枚) |
− | ○ (60枚/20枚/20枚) |
||
前面 | 【標準カセット】 (250枚/50枚/50枚) 【増設カセット】 オプション 普通紙のみ (550枚/−/−) |
【カセット下段】 (100枚/40枚/20枚) 【カセット上段】 2L/A6以下 (−/20枚/20枚) |
【カセット】 (250枚/50枚/20枚) |
− | 【カセット上段】 (250枚/40枚/20枚) 【カセット下段】 普通紙のみ・A4/レター/リーガル (250/−/−) |
− | ||
その他 | − | − | − | − | − | − | ||
排紙トレイ自動伸縮 | −(取り外し式) | − | − | − | − | − | ||
用紙種類・サイズ登録 | ○(カセット収納(前面)/用紙セット(背面)連動) | − | ○(カセット収納連動) | − | ○(カセット収納連動) | ○(レター/KGとA4/はがき/L判の切替のみ) | ||
用紙幅チェック機能 | ○ | ○ | ○ | ○ | − | − |
続いて、給紙・排紙関連の機能を見てみよう。対応用紙は6機種ともL判〜A4サイズとなる。ただし、PX-S885とMAXIFY iB4130はフチなし印刷が行えない。両機種とも写真印刷向きの機種ではないので問題ないと思われるかもしれないが、年賀状や背景に色や柄の付いた文書など、フチなしデザインの印刷を行う可能性があるなら注意が必要だ。またPIXUS TS203はフチなし印刷が可能なのはL判、KG、ハガキサイズのみで、A4やB5、2Lサイズにフチなし印刷は行えない。一方、PX-S885はL判の幅89mmより小さい64mm幅まで対応している。このサイズはB6ハーフサイズのプライスカードなどに使われるサイズで、こういった用途には便利だ。また長尺用紙も6,000mm(6m)まで対応しており、垂れ幕や横断幕の印刷など、ビジネス用途での幅広い利用に対応している。PX-S740も1,200mm(1.2m)、PX-105も1,117.6mm(1.1176m)まで対応しており、比較的便利だ。それに対してPIXUS TS203は676mmまで、MAXIFY MB5430は定型のリーガルサイズの355.6mmまでと、長尺印刷向きではない。EP-306はA4サイズ以上の長さにも対応はするが、最大長は記載されていない。 給紙は前面給紙だけの機種、背面給紙だけの機種、両方に対応した機種など様々だ。前面給紙に対応するのは、安価なPX-105とPIXUS TS203を除く4機種だ。いずれもカセット式となっており、用紙をセットしたままでもホコリが積もりにくいため、常時用紙をセットしておくのに向いている。EP-306は大小2段カセットとなっており、2種類の用紙を同時にセット可能だ。上段にL判やハガキなどの小さな用紙を、下段にはA4やB5といった大きな用紙をセットするようになっている。下段にA4普通紙が100枚、上段にハガキや写真用紙なら20枚までセット可能だ。さらにハガキや写真用紙を下段にもセットでき、こちらにはハガキは40枚、写真用紙は20枚までセットできる。リレー給紙が可能なので、ハガキは60枚、写真用紙は40枚まで連続給紙が可能だ。用紙の入れ替えの手間はかかるが、印刷枚数が多いときには便利と言える。一方、PX-S885とPX-S740は1段タイプのカセットとなっている。そのため1種類の用紙しかセットできないが、A4普通紙を250枚までセットでき、セット可能枚数はビジネス向けだけあって、家庭向けのEP-306より多くなっている。1種類の用紙を大量印刷するならこちらの方が便利だ。ハガキは50枚、写真用紙はPX-S885が50枚、PX-S740が20枚まで給紙可能だ。さらにPX-S885は 前面給紙カセットをもう1段増設できる。最下段に1段追加される形となるオプションのカセットは、普通紙のみという制限はあるが、550枚までセットできるため、2種類の用紙をセットして使い分けても良いし、同じ用紙をセットして800枚の連続給紙とする事も可能だ。価格は16,500円で高さも10cm大きくなるが、必要に応じて給紙枚数を増やせ、しかも本体購入後に増設が可能な点は便利だ。MAXIFY iB2130は2段カセットだが、EP-306の2段カセットとは異なり、PX-S885やPX-S740のカセットを2段にしたようなタイプだ。上下段ともA4用紙まで対応し、各段250枚までセット可能なので、異なる用紙を250枚ずつセットしても良いし、同じ用紙をセットして500枚の連続給紙にも対応できる。ただし、下段は普通紙でA4、レター、リーガルサイズのみなので、A4を2段とか、A4とB5というような組み合わせは可能だが、B5を2段とか、B5とA5、ハガキとB5というような組み合わせはできない。ハガキは40枚、写真用紙は20枚までセット可能だ。 一方背面給紙はと言うと、MAXIFY iB4130以外の5機種が対応する。ただし、PX-S885、PX-105、PIXUS TS203ははトレイ式、EP-306、PX-S740は手差し給紙となっている。トレイ式は複数枚の用紙をセットできるため便利だ。PX-S885は普通紙なら80枚、ハガキなら30枚、写真用紙なら20枚までセットできる。PX-105はそれぞれ100枚、30枚、20枚まで、PIXUS TS203は60枚、20枚、20枚までセットできる。背面給紙はトレイが後方に傾く為、後方と上方にスペースが必要な他、用紙をセットしたままにしておくとホコリが積もり、そのまま給紙されると故障の原因になるため、毎回取り除く必要がある。PX-S885は常時使う用紙は前面給紙にセットし、様々な用紙を使い分ける場合に背面給紙を利用するという形が取れるが、背面給紙しかないPX-105とPIXUS TS203は不便と言える。EP-306とPX-S740は手差し給紙となるため、1枚ずつしかセットできず、複数枚セットするとエラーとなる。前面給紙カセットにセットした用紙以外を数枚印刷したい場合や、前面給紙からでは扱いにくい厚紙や封筒などの印刷に利用する形となるだろう。ちなみに、厚みに関しては、前面給紙でも、通常の写真用紙やハガキに用いられる0.3mm厚程度までは対応でき、PX-105やPIXUS TS203の背面給紙も0.3mm厚程度までとなる。一方、EP-306の背面手差し給紙は倍の0.6mm厚まで対応しており、厚めの用紙や封筒にも印刷できる他、写真店で作った写真貼り合わせの年賀状にも印刷が可能だ。 複雑なので整理しておくと、PX-S885が前面カセット1段+背面トレイ+増設カセット(オオプション)1段、EP-306が前面カセット大小2段+背面手差し、PX-S740が前面カセット1段+背面手差し、PX-105が背面トレイ、MAXIFY iB4130が前面カセット2段、PIXUS TS203が背面トレイとなる。A4普通紙の給紙可能枚数は、連続で使用できない手差し給紙を除くと、PX-S885が330枚(前面250枚+背面80枚)で増設カセット取り付けで880枚、EP-306が100枚(前面下段のみ)、PX-S740が250枚(前面のみ)、PX-105が100枚(背面のみ)、MAXIFY iB4130が500枚(前面上段250枚+下段250枚)、PIXUS TS203が60枚(背面のみ)となる。PX-S885とMAXIFY iB4130は給紙枚数が多く、印刷枚数が多いなら注目ポイントだ。ハガキはPX-S885が80枚、EP-306が60枚、PX-S740が50枚、PX-105が30枚、MAXIFY iB4130が40枚、PIXUS TS203が20枚となる。 ちなみにPX-S740とMAXIFY iB4130の前面給紙カセットは本体から少し飛び出した状態となっている。特にMAXIFY iB4130はカセットを縮めることで本体に収める事ができるが、この状態ではたとえ小さな用紙であってもセットでする事はできない。使用時にはカセットを伸ばして使う事になるため、本体にセットしても飛び出てしまう。PX-S740も前面給紙カセットが飛び出しているが、排紙トレイや周囲のデザイン処理によって、トレイだけが飛び出したようには見えない工夫がなされている。EP-306やPX-S885は本体に完全に収納できるので、その点では見た目がすっきりしている。一方、PX-S885は排紙トレイを縮めたり折りたたんだりして収納することができない。正確にはA4サイズを超える用紙を使用するために伸ばす事ができるが、A4サイズ使用時のサイズより小さくすることはできない。取り外す事はできるが、通常は本体から排紙トレイが飛び出たままとなり、不便と言える。本体サイズも排紙トレイの飛び出た部分を含むサイズとなっている。 PX-S885、PX-S740、MAXIFY iB4130、PIXUS TS203はセットした用紙情報を登録する機能が搭載されている。印刷時にこの登録内容と、印刷設定が異なっている場合、メッセージが表示される印刷が止まる仕組みだ。できる限り印刷ミスによる用紙とインクの無駄遣いをなくす工夫がなされている。PX-S885、PX-S740、MAXIFY iB4130は用紙サイズと用紙の種類を登録でき、また前面給紙はカセットを収納すると、またPX-S885の背面給紙は用紙をセットすると登録画面が自動的に表示されるので便利だ。(されないようにもできる)。一方PIXUS TS203は切り替えボタンにより、「レター/KG」と「A4/はがき/L判」の2択を選ぶだけだ。例えばA4とハガキや、L判とハガキサイズの間で間違いがあってもメッセージは表示されないし、用紙の種類を間違っていても表示されない。あくまで簡易的なものだ。さらに、PX-S885、EP-306、PX-S740、PX-105は印刷時に用紙幅をセンサーでチェックすることで、印刷設定より実際の用紙幅が小さい場合でも、用紙外にインクを打ってしまいプリンター内部を汚さないようになっている。 |
型番 | PX-S885 | EP-306 | PX-S740 | PX-105 | MAXIFY iB4130 | PIXUS TS203 | ||
製品画像 | ||||||||
自動両面印刷 | ○(普通紙のみ・湿温度センサー搭載) | ○ | ○(普通紙のみ) | − | ○(普通紙のみ) | − | ||
自動両面 印刷速度 |
A4カラー文書 | 15.0ipm | N/A | 6.3ipm | − | 9.5ipm | − | |
A4モノクロ文書 | 15.0ipm | N/A | 9.2ipm | − | 13.0ipm | − | ||
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷 | − | ○ | − | − | − | − | ||
写真補正機能 | ○(オートフォトファイン!EX) | ○(オートフォトファイン!EX) | ○(オートフォトファイン!EX) | ○(オートフォトファイン!EX) | − | − | ||
特定インク切れ時印刷 | ○(黒だけでモード・5日間のみ) | ○(黒だけでモード・5日間のみ) | ○(黒だけでモード・5日間のみ) | ○(黒だけでモード・5日間のみ) | − | − | ||
自動電源オン/オフ | −/○(一定時間動作無し) | −/○(一定時間動作無し) | −/○(一定時間動作無し) | −/○(一定時間動作無し) | ○(時刻指定)/○(時刻指定) | ○(印刷実行)/○(一定時間動作無し) | ||
PictBridge対応 | − | ○(USB/Wi-Fi) | − | − | − | − | ||
廃インクタンク交換 | ○(メンテナンスボックス交換可) | − | ○(メンテナンスボックス交換可) | − | − | − | ||
フチなし吸収材エラー時の対応機能 | − | − | − | − | − | − |
その他、プリントの付加機能を見てみよう。自動両面印刷はPX-S885、EP-306、PX-S740、MAXIFY iB4130が対応している。特にEP-306は普通紙だけで無くハガキにも対応しており、ハガキの通信面と宛名面を用紙を入れ替える事無く両面印刷が行え便利だ。他の3機種は普通紙のみとなる。ただし、PX-S885は温湿度センサーを搭載しており、環境に応じて最適な両面印刷が行え、普通紙の両面印刷に関しては非常に優れている。実際の速度を見てみると、PX-S885はカラー、モノクロ共に15.0ipmと片面印刷の62.5%になっている。それに対してMAXIFY iB4030はカラーが9.5ipm、モノクロ13.0ipmで、それぞれ片面の61.3%と54.2%になっている。片面印刷の速度はモノクロでは同等だったMAXIFY iB4030が少し遅くなっているのは、この湿温度センサーの違いなのか、それともMAXIFY iB4030の重ね連送が、両面印刷時には効果を発揮しづらい為なのかは不明だ。PX-S740もカラーが6.3ipm、モノクロが9.2ipmで、それぞれ63%と48.4%で、やはりモノクロ印刷の低下率が大きい。モノクロの両面印刷を多用するなら、この速度差は重要ポイント言える。EP-306の両面印刷速度は不明だ。 CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷はEP-306のみしており、オリジナルデザインのディスクが作成可能だ。そのほか、EP-306はPictBridgeにも対応しており、USB接続又はWi-Fi接続でのPictBridge対応デジタルカメラからダイレクトプリントが可能だ。 エプソンの4機種は写真印刷時に写真を自動補正する「オートフォトファイン!EX」を備えている。顔を自動判別し、シーンに合った補正をするもので、逆光写真や色かぶりも自然に補正してくれる高機能な物だ。特に写真印刷向けのEP-306では必須の機能だ。 最近、搭載機種が増えつつある自動電源オン機能だが、PIXUS TS203とMAXIFY iB4130のみ対応している。ただし両者の機能は異なっている。PIXUS TS203が搭載する「自動電源オン」は電源が切れた状態でも印刷が実行されると自動的に電源がオンになる機能だ。最近のプリンターはネットワーク接続に対応しており、必ずしもパソコンのそばにあるとは限らず、またスマートフォンなどからのプリントも考えられるため、わざわざプリンターの前まできて電源を入れる必要がないのは便利だ。ただし排紙トレイは手動で伸ばす必要があるため、収納状態だと置き場所によっては床に用紙が散らばってしまう事になる。それに対してMAXIFY iB4130は時刻を指定して、電源が自動でオンになる。「自動電源オフ」は6機種とも搭載するが、こちらもMAXIFY iB4130を除く5機種は、一定時間プリントや本体での操作が無い場合に自動的に電源がオフになるのに対して、MAXIFY iB4130は時刻を指定して電源をオフに出来る。家庭内では印刷実行による自動電源オンや、指定時間のプリント・操作無しでの電源オフの方が使いやすいだろうが、オフィスや商店などで使用する場合は就業時間や営業時間などに合わせて決まった時間に電源を入れ、決まった時間に電源が切れる機能の方が便利な場合もあるだろう。 一方、PX-S885とPX-S740の便利な点として、交換式メンテナンスボックス(廃インクタンクの交換)に対応している事がある。メンテナンスボックスとはクリーニング時に排出される廃インクを貯めるもので、満タンになると通常は修理に出して交換するまでプリントが一切ストップしてしまう。プリンターが使えない期間が発生するし、交換費用もそれなりに掛かってしまう。しかしPX-S885/PX-S740のメンテナンスボックスは、交換用インクなどと共に家電量販店などでも販売しており(PX-S885用が3,122円、PX-S740用が2,609円)、ユーザー自身で簡単に交換できるようになっている。交換すればすぐに印刷を再開できるため、使用できない期間の発生を防ぐことができる。印刷枚数が多いと思われる機種だけに、この機能はうれしいところだ。ただし、PX-S740はフチなし印刷に対応しているが、その際に用紙からはみ出たインクを吸収させる「フチなし吸収材」に関しては修理交換となる。 |
型番 | PX-S885 | EP-306 | PX-S740 | PX-105 | MAXIFY iB4130 | PIXUS TS203 | ||
製品画像 | ||||||||
スマートフォン連携 | アプリ | メーカー専用 | EPSON iPrint | EPSON iPrint | EPSON iPrint | − | Canon PRINT Inkjet/SELPHY | − |
AirPrint | ○ | ○ | ○ | − | ○ | − | ||
対応端末 | iOS 11.0以降 Android 5.0以降 |
iOS 11.0以降 Android 5.0以降 |
iOS 11.0以降 Android 5.0以降 |
− | iOS 13.0以降 Android 5.0以降 |
− | ||
スマートスピーカー対応 | ○(Alexa/Googleアシスタント) | ○(Alexa/Googleアシスタント) | ○(Alexa/Googleアシスタント) | − | − | − | ||
Wi-Fiダイレクト接続支援機能 | ○(NFC) | − | − | − | − | − | ||
写真プリント | ○ | ○ | ○ | − | ○ | − | ||
ドキュメントプリント | ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) | ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) | ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) | − | ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) | − | ||
Webページプリント | ○ | ○ | ○ | − | ○ | − | ||
クラウド連携 | プリント | アプリ経由/本体 | ○/− | ○/− | ○/− | −/− | ○/− | −/− |
オンラインストレージ | ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive) | ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive) | ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive) | − | ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/google classroom) | − | ||
SNS | ○(Instagram/Facebook・コメント付き可) | ○(Instagram/Facebook・コメント付き可) | − | − | N/A | − | ||
写真共有サイト | − | − | − | − | N/A | − | ||
メールしてプリント | ○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/PDF/Word/Excel/PowerPoint/メール本文) | ○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/PDF/Word/Excel/PowerPoint/メール本文) | ○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/PDF/Word/Excel/PowerPoint/メール本文) | − | − | − | ||
LINEからプリント | ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint) | ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint) | ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint) | − | − | − | ||
リモートプリント | ○(リモートプリントドライバー) | ○(リモートプリントドライバー) | ○(リモートプリントドライバー) | − | − | − | ||
スキャンしてリモートプリント | ○(受信のみ) | ○(受信のみ) | − | − | − | − |
PX-S885、EP-306、PX-S740、MAXIFY iB4130の4機種はスマートフォンからのプリントに対応している。iOSとAndroid端末などに対応しており、専用のアプリを無料でダウンロードすることで、それらから直接印刷が行える。写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定(PX-S885/MAXIFY iB4130を除く)まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。一方、ドキュメント印刷の場合、PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している。また、Webページの印刷もできるため便利だ。iPhone/iPadの場合は、AirPrintを利用したプリントにも対応している。 接続は無線LAN(Wi-Fi)を利用するが、無線LANルーターを経由する方法と、プリンターと直接接続するWi-Fiダイレクト(キャノンは機能名はダイレクト接続)が一般的だ。EP-306を除く3機種は両方に対応しているが、EP-306はWi-Fiダイレクトには非対応で、無線LANルーターが必須となる。無線LANルーターを経由する方が、機能面でも制限が無く、印刷する度にプリンターと接続と切断を繰り返すのWi-Fiダイレクトと比べると便利なので、こちらを利用するのがお勧めだが、無線LANルーターが無い環境で使用する場合や、一時的に同じネットワークに入っていない人がプリンターを使いたい場合などにWi-Fiダイレクトは便利だ。Wi-Fiダイレクトの接続設定は手動でもそれほど難しくは無いが、PX-S885はNFCを利用した接続支援機能が提供される。対応機種はNFC対応のAndroidに限られるが、タッチするだけでセキュリティーキーの入力などが不要で接続出来る。 また、これら4機種のうち、MAXIFY iB4130を除く3機種はスマートスピーカーに対応している。AlexaとGoogleアシスタント対応端末に対応しており、声だけでテンプレートを印刷させることができる。デザインペーパー、フォトプロップス、カレンダー、ノート、方眼紙、五線譜などのエプソン独自のものと、Alexaに登録された買い物リスト、やることリストなどがプリント可能だ。 さらに、4機種ともクラウドとの連携機能も搭載されているため、スマートフォン/タブレット上からオンラインストレージ上のデーターにアクセスし、そのファイルを印刷することが可能だ。また、PX-S885/EP-306/PX-S740はSNSの写真をコメント付きで印刷が可能である。いずれもスマートフォンのアプリ上からの操作となり、プリンター本体のみでクラウドにアクセスする事はできない。 さらにリモートプリント機能として、EP-306/PX-S885/PX-S740は、印刷したい写真や文書をプリンターにメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、LINE上でEP-306/PX-885/PX-S740と友達設定をし、トーク画面からファイルを送ると自動で印刷される「LINEでプリント」、パソコンやスマートフォンから通常のプリントと同じ操作で、外出先など離れた場所から自宅の対応プリンターで印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。またスキャナーを搭載しないため、送信はできないが、EP-306とPX-S740はスキャンしてリモートプリント機能に対応した複合機でスキャンして離れた場所のEP-306/PX-S740で印刷する事ができる。簡易ファクスのような使い方ができるわけだ。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。リモートプリント機能はエプソンの3機種が圧倒的に便利だ。 |
型番 | PX-S885 | EP-306 | PX-S740 | PX-105 | MAXIFY iB4130 | PIXUS TS203 | ||
製品画像 | ||||||||
液晶ディスプレイ | 2.4型 (75度角度調整可) |
− | 2.2型モノクロ | − | 2行モノクロ | − | ||
操作パネル | 物理ボタン式 (75度角度調整可) |
− | 物理ボタン式 | − | 物理ボタン式 | − | ||
インターフェイス | USB他 | USB2.0×1 | USB2.0×1 | USB2.0×1 | USB2.0×1 | USB2.0×1 | USB2.0×1 | |
無線LAN | IEEE802.11ac/a/n/g/b 5GHz対応 (Wi-Fiダイレクト対応) |
IEEE802.11n/g/b | IEEE802.11n/g/b (Wi-Fiダイレクト対応) |
IEEE802.11n/g/b | IEEE802.11n/g/b (ダイレクト接続対応) |
− | ||
有線LAN | 1000BASE-T | 100BASE-TX | 100BASE-TX | 100BASE-TX | 100BASE-TX | − | ||
対応OS | Windows 11/10/8.1/8/7/Vista/XP SP3 MacOS 10.6.8〜 |
Windows 11/10/8.1/8/7/Vista/XP SP1 MacOS 10.5.8〜 |
Windows 11/10/8.1/8/7/Vista/XP SP1 MacOS 10.5.8〜 |
Windows 11/10/8.1/8/7/Vista/XP SP1 MacOS 10.5.8〜 |
Windows 11/10/8.1/8/7/Vista SP2 MacOS 10.8.5〜 |
Windows 11/10/8.1/7 SP1 MacOS 10.10.15〜(MacOS標準印刷機能を利用) |
||
耐久枚数 | 15万枚 | N/A | 8万枚 | 5万枚 | N/A | N/A | ||
外形寸法(横×奥×高) | 425×535×357mm | 390×338×141mm | 449×380×171mm | 391×264×148mm | 463×394×290mm (用紙セット時は463×459×290mm) |
446×255×131mm | ||
重量 | 16.0kg | 5.0kg | 6.1kg | 3.3kg | 9.6kg | 2.5kg | ||
本体カラー | ホワイト | ホワイト | ホワイト | ブラック | ブラック | ブラック |
操作パネルを見てみよう。プリント単機能機という事で、本体でコピーやメモリーカードからの写真印刷を行うわけでは無いため、基本的にパソコンからの操作となり、本体での操作は少ないが、最近は液晶ディスプレイと操作ボタンを搭載する機種が増えている。今回の6機種でも、半分のPX-S885、PX-S740、MAXIFY iB4130がが搭載している。PX-S740とMAXIFY iB4130はモノクロ液晶で、PX-S740が2.2型、MAXIFY iB4130が2行表示と、比較しにくいが小さめである事は確かだ。ただし、PX-S740はバックライトを搭載しており、視認性は1ランク上だ。液晶と操作パネルはPX-S740は、本体前面から上面にかけて斜めになった部分に、MAXIFY iB4130は上面の右手前に配置される。MAXIFY iB4130の液晶はやや手前に傾けているとは言え、本体に高さがあることもあって、高い所に置くと操作しずらい。その点でもPX-S740は使いやすいと言える。残るPX-S885は他の2機種とは一線を画しており、2.4型のカラー液晶を搭載している。もちろんバックライトも内蔵しており見やすいほか、グラフィカルな表示ができるので、表示内容を理解しやすい。さらに液晶と操作パネルは、前面に取り付けられているが、持ち上げて75度まで角度調整が可能である。正面からでも真上からでも操作しやすく、他の2機種を圧倒する操作性となっている。また、印刷枚数の確認、印刷ジョブの管理や、ユーザーによる利用制限、操作パネルの操作制限や、USB接続の無効化などの設定が可能なほか、印刷時にパスワード印刷を設定しPX-S885本体でパスワードを入力するまで印刷されないようにできるなど、多人数での使用にも便利になっている。 インターフェースはUSB2.0接続に加えて、PIXUS TS203を除く5機種はネットワーク接続にも対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルーターで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人にはネットワーク接続によりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。5機種とも無線LAN(Wi-Fi)だけでなく有線LANにも対応しているため、ルーターが近い場合や、壁にLANコネクターが用意されている場合、無線LANでは不安定な場合などに重宝する。さらに、EP-306とPX-105を除く3機種はWi-Fiダイレクト(キャノンでは機能名はダイレクト接続)に対応しているため、無線LANルーターの無い環境でも、スマートフォンやタブレットと直接Wi-Fi接続が可能となっているのも便利な点だ。EP-306は必ず無線LANルーターを経由する必要がある点では不便だ。PX-105は無線LANには対応するが、スマートフォンやタブレットからのプリントは出来ない。また、対応規格にも違いがある。PX-S885の有線LANは最大1Gbpsの1000BASE-Tに対応しており、最大100Mbpsの100BASE-TX対応の他の4機種よりも印刷データーなどの高速転送が可能だ。さらに無線LANは、PX-S885以外はIEEE802.11n/g/bのみ対応なのに対して、PX-S885はIEEE802.11acとaに対応している。IEEE802.11acは、他機種のIEEE802.11nと比べると通信速度が圧倒的に速いため、無線LAN接続時でも待たされる心配が無い。さらに、IEEE802.11ac/n/a通信時は、5GHz帯の電波を使用できる。他機種の2.4GHz帯は、Bluetoothや電話の子機と同じ帯域で、電子レンジなどの影響も受けやすいが、5GHz帯は無線LAN専用といえるので、通信が安定する。PX-S885は有線LAN、無線LAN共にワンランク上の機能となっている。 対応OSはエプソンの4機種はWindows XP以降は全て対応する(ただしWindows XPの場合PX-S885はSP3が必須、他の3機種はSP1以降という点は異なる)。MacOSもダウンロード対応とはなるがPX-S885は10.6.8以降、他の3機種は10.5.8以降に対応する。Windows 11/10などの最新OSだけでなく、マイクロソフトのサポートの終了したWindows XPやVistaにも対応するのは安心だ。一方、MAXIFY iB4130はWindows Vista SP2以降の対応で、MacOSも10.8.5以降とエプソンの4機種より対応OSはやや狭くなる。そしてPIXUS TS203はWindows 7 SP1/8.1/10/11のみの対応だ。Windows XPやVistaだけでなく、Windows 8も非対応である点は注意が必要だ。MacOSも10.10.15以降で、しかも専用ドライバーが用意されずMacOS標準印刷機能を利用する。一部の印刷設定、本体の動作設定ができない点でWindowsで利用する場合に比べて不便になっている。 本体サイズはEP-306が390×338×141mmと比較的コンパクトだ。さらに高さに関しては、背面手差し給紙部分だけが高くなっており、ここが141mmなので、見た目は数値以上に薄く見える。これを基準に他の機種を見ていこう。PX-S885は425×535×357mmでかなり大きい印象だ。奥行きに関しては、排紙トレイが本体から出た状態で固定されている部分も含んでおり、高さも背面給紙部分が少し高くなっている部分まで含んでいるため、それを除くと奥行きは435mmに、高さは305mm程度になるが、425×435×305mmでも他機種よりは圧倒的に大きい。前面給紙カセットの枚数が多いことや、その下にインクの収納スペースが必要である事も影響しているが、ビジネス向けと言うことでサイズよりも高性能・高耐久という点を重視した結果だ。PX-S740は449×380×171mmでビジネス向けとしてはPX-S885よりかなりコンパクトだ。EP-306と比べて横幅は59mm、奥行きは42mm、高さは30mm大きく、一回り大きい印象だが、一昔前の機種と比べると大きいとも言えない。MAXIFY iB4130は463×394×290mmとなる。横幅はEP-306とは比べるまでも無く、PX-S885よりも大きい。奥行きと高さはPX-S885よりは小さいが、それでもEP-306よりはかなり大きい。また奥行きに関しては、用紙をセットするために前面給紙カセットを伸ばすと459mmとなるため、PX-S885の排紙トレイを除いたサイズより大きくなる。PIXUS TS203は446×255×131mmで、高さが6機種中最も低く、その関係で小さく見えるが、横幅はEP-306より56mm大きい。逆に奥行きは255mmと、EP-306より83mmも小さく、かなりコンパクトだ。ただし、設置スペースを考えると少し変わってくる。EP-306やPX-S740、MAXIFY iB4130は前面給紙が基本で、EP-306とPX-S740の背面給紙も手差しなので手で支えれば壁ぎわでも使用できる。そのため後方にスペースが不要なので、実際の設置スペースは本体サイズと同等だ。それに対して、PX-105とPIXUS TS203は背面給紙であるため後方と上方にスペースが必要となる。実際の設置スペースでは奥行きはもう少し必要だ。また棚の中などに入れた場合、上方にスペースが取りにくい場合も、前面給紙の方が良いだろう。PX-S855は前面給紙だけで使用する場合は後方にスペースは不要だが、便利に使うなら同じく後方にスペースが必要だ。これを考えると、設置スペースではEP-306が最も小さく、続いて奥行きが必要だが前面給紙のPX-S740と、奥行きは小さいが背面給紙のPX-105、PIXUS TS203が続くという形になる。このあたりまでは、よほど設置スペースに制限が無ければ問題になることは少ないだろうが、PX-S885とMAXIFY iB4130は設置スペースには注意が必要だ。 ここで気になるのが複合機とのサイズの差だが、このサイズを見ると、「単機能機だからコンパクト」とは言えない状況になりつつある。エプソン同士で比較すると、EP-306と近い性能複合機EP-883Aは349×340×142mmとなっており、6機種で最もコンパクトなEP-306ですら複合機EP-883Aと比べて奥行きが2mm、高さが1mm小さいが、幅は41mm大きくなっている。PX-S885の複合機版PX-M885Fは425×535×357mmで全く同じサイズだ。実際にはPX-S885の上にスキャナーが載っている形となるが、PX-S885の背面給紙の出ている高さと同等になるだけなので、数値上は変わらない。PX-S740より高速プリントに対応したファクス付き複合機PX-M730Fは425×378×249mmで、高さはADFを搭載している分大きいが、幅に関しては24mm小さく、奥行きも同等だ。PX-105と同じ4色(全色顔料ではないが)で印刷速度などが同等の複合機EW-052Aは390×300×146mmで奥行きは26mm大きいが、幅や高さはほぼ同じだ。MAXIFY iB4030の複合機版であるMAXIFY MB5430も463×394×351mmでスキャナー分の高さが抑えられているだけだ。PIXUS TS203と似たプリント機能の複合機PIXUS TS3330は435×316×145mmで、奥行きと高さはやや大きいが、幅はわずかに小さくなっている。このように、複合機は本体が大きいから単機能プリンターをというのは過去の話となっている。また、PX-S885やMAXIFY iB4130はの様に、複合機がメインで、そこからスキャナーを外して単機能プリンターとしている機種も増えてきているのが現状だ。 ちなみに、PX-S885とPX-S740、PX-105は本体の耐久枚数を公表しており、PX-S885が15万枚、PX-S740は8万枚、PX-105が5万枚をうたっている。一般的な家庭用プリンターが1万〜1万5000枚である事を考えるとかなり高耐久に作られているため、印刷枚数が多くても安心感がある。 この6機種から選ぶとなると、まず写真印刷が主な目的なら、EP-306がオススメである。6色インクで印刷も高速であり、染料インクであるため写真印刷に向いている。次に写真印刷向きの機種は染料ブラックを搭載せず耐保存性も低いPIXUS TS203となってしまうため、実質的に選択肢がないとも言える。レーベル印刷や両面印刷にも対応し、前面2段給紙カセットも便利だ。無線・有線LANに対応するなど、スキがない。ただ発売が古いため、Wi-Fiダイレクトに非対応だったり、文書の印刷画質では特に他機種より劣るため、写真や年賀状印刷をメインに考え、自宅にWi-Fi環境がある人向けといえる。画質はそれほど求めないが、家庭内で使う安いプリンターが希望ならPIXUS TS203もオススメだ。カラーインクだけとはいえ染料インクを採用しているため、用紙の制限が無く、幅広く使える。価格も4,950円と圧倒的に安く、それだけでもメリットだ。ただ、自動両面印刷やレーベル印刷ができないのは価格を考えれば当然と言えるが、必須となりつつある無線LAN(Wi-Fi)機能すら搭載していないためUSB接続に限られ、スマホからのプリントも出来ず、印刷コストが高かったりフチなし印刷できる用紙が限られていたり、用紙のセットも不便だったりと、機能面ではかなり限定される。それに納得が出来るならという条件付きだ。 逆に、写真は印刷せず、普通紙印刷が主な目的なら、顔料インクのPX-S885、PX-S740、PX-105、MAXIFY iB4130の4機種から選ぶのがおすすめである。顔料インクなので普通紙への印刷画質が高く耐水性も高い。また、価格によって製品間の差はあるが、普通紙の印刷速度は全体的に速い。この中で、1万円以上高いPX-S885は当然機能的には優れているが、選ぶ価値があるかどうかである。PX-S740やPX-105に対して見ると印刷速度が速く印刷コストも安い。ただMAXIFY iB4130と比べると印刷コストは同等で、印刷速度はモノクロは同等、カラーだけが高速といえるため、大きな差では無い(もちろんカラー印刷が多いなら価値があるが)。それ以外の点で言うと、1回のインク交換で大量印刷が出来る点や、ノズル自己判断システム搭載や湿温度センサー搭載の自動両面印刷機能、64mm幅や長尺用紙への対応、高性能な無線・有線LAN機能、高耐久である点が上げられる。PX-S740にも当てはまるが、PX-105やMAXIFY iB4130に対してのメリットとしては、交換式メンテナンスボックスも便利だ。つまり、印刷枚数が多く、印刷速度の速さだけで無く、インク切れによるストップや、廃インクタンクが満タンになった事によるストップ、さらにはヘッドの目詰まりによる印刷のやり直しなどが発生しない事が望ましい環境で使うなら、PX-S885に十分な価値があるだろう。また、ユーザーの管理や使用制限、パスワード印刷などを搭載しているため、大人数で使用する場合にもおすすめできる機種と言える。一方、そこまでの機能は必要ない、又は一人で利用するというならPX-S740、PX-105、MAXIFY iB4130でも十分と言える。価格が近いPX-S740とMAXIFY iB4130から選ぶのであれば、印刷速度や印刷コストを重視したいならMAXIFY iB4130がオススメだ。ただ、最小インクドロップサイズがPX-S740よりもかなり大きく画質に影響があること、本体サイズがかなり大きく、フチなし印刷ができないなど、クセも強い製品だ。その点で、よほど印刷速度や印刷コストにこだわりが無ければ、PX-S740の方が一般的で使いやすいだろう。印刷速度も十分高速で、普通紙印刷画質も顔料プリンターの中でも高画質な部類だ。印刷コストも普通紙ならそれほど高くない。PX-S740の方が一般にオススメしやすい。残るPX-105はPX-S740やMAXIFY iB4130よりさらに低価格だが、かわりに背面給紙のみで自動両面印刷非対応、印刷速度や印刷コストでも劣り、有線/無線LANは対応するがスマートフォンやタブレットからのプリントには非対応だ。そのためパソコンからのプリントしか行わず、印刷枚数があまり多くなく、両面印刷なども行わないというシンプルな使い方のユーザーなら、満足できるだろ。 (H.Intel) 【今回の関連メーカーホームページ】 エプソンhttp://www.epson.co.jp/ キャノンhttp://canon.jp/ |