プリンター徹底比較
2022年春時点のプリンター
〜エプソン・キャノン・ブラザーのプリンターを比較〜
(2022年5月16日公開)

プリンター比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンター比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。


A3カラー単機能プリンター(5万5千円以下)
 
 A3単機能機の中で、プロ向けでない製品である5機種を比較する。価格的には5万5千円以下となるが、エプソンはEP-50V(54,978円)とPX-S6010(38,500円)、PX-S5010(28,578円)、キャノンはPIXUS iP8730(31,680円)、PIXUS iX6830(27,280円)と価格にはかなりばらつきがある。とはいえ、PX-S5010PIXUS iP8730PIXUS iX6830は価格が近いため比較できるが、EP-50VPX-S6010はそれぞれ近い価格の製品が他に無いため、5機種まとめての比較となる。価格の近い3機種はどの機種がおすすめなのか、そしてそれより高価な2機種はその価格差だけの価値があるのか検証しよう。

プリント(画質・速度・コスト)
メーカー エプソン エプソン エプソン キャノン キャノン
型番 EP-50V PX-S6010 PX-S5010 PIXUS iP8730 PIXUS iX6830
製品画像
実売価格(メーカーWeb/税込) 54,978円 38,500円 28,578円 31,680円 27,280円
インク 色数 6色 4色 4色(5本) 6色 5色
インク構成 ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
レッド
グレー
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック×2
シアン
マゼンタ
イエロー
顔料ブラック
染料ブラック
グレー
シアン
マゼンタ
イエロー
顔料ブラック
染料ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成 各色独立 各色独立 各色独立 各色独立 各色独立
顔料/染料系 染料
(つよインク200)
顔料
(文書キャビネット保存400年)
顔料 染料/顔料(黒)
(ChromaLife100+)
染料/顔料(黒)
(ChromaLife100+)
インク型番 ソリ IB07B番(大容量)
IB07A番(標準容量)
IB06(めがね) 350XL/351XL(大容量)
350/351(標準容量)
350XL/351XL(大容量)
350/351(標準容量)
355XXL(特大容量・顔料ブラックのみ)
ノズル数 1080ノズル 1568ノズル 900ノズル 6656ノズル 5120ノズル
全色:各180ノズル カラー:各256ノズル
ブラック:800ノズル
カラー:各180ノズル
ブラック:360ノズル
C/M/GY:各1536ノズル
Y/染料BK:各512ノズル
顔料BK:1024ノズル
C/M:各1536ノズル
Y/染料BK:各512ノズル
顔料BK:1024ノズル
最小インクドロップサイズ 1.5pl(AdvancedMSDT)
N/A(3.8pl(MSDT)?)
N/A 1pl 1pl
最大解像度 5760×1440dpi 4800×2400dpi 5760×1440dpi 9600×2400dpi 9600×2400dpi
高画質化機能 PrecisionCoreプリントヘッド(600dpi)
印刷速度 L判フチなし写真(メーカー公称) 34秒 N/A N/A 30秒 30秒
A4普通紙カラー(ISO基準) N/A(9.0ipm?) 12.0ipm 11.0ipm 10.4ipm 10.4ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準) N/A(9.2ipm?) 25.0ipm 18.0ipm 14.5ipm 14.5ipm
印刷コスト
(税込)
L判フチなし写真 14.0円 N/A N/A 大容量:19.7円
標準:27.8円
大容量:17.9円
標準:23.1円
A4カラー文書 6.6円 大容量:9.4円 大容量:9.5円 大容量:10.6円
標準:14.8円
大容量:9.9円
標準:12.7円
A4モノクロ文書 N/A 大容量:2.9円 大容量:3.0円 N/A 特大容量:3.1円
大容量:3.6円
標準:4.6円
インク1本の印刷枚数
(カラー文書)
顔料ブラック 大容量:2,200ページ
標準:350ページ
1,000ページ 大容量:500ページ
標準:300ページ
大容量:500ページ
標準:300ページ
染料ブラック N/A 大容量:4,405ページ
標準:1,105ページ
大容量:5,000ページ
標準:1,645ページ
カラー N/A 大容量:1,100ページ
標準:300ページ
800ページ 大容量:670ページ
標準:310ページ
大容量:690ページ
標準:331ページ
インク1本の価格
(税込)
顔料ブラック 大容量:6,446円
標準:1,463円
1,331円 大容量:1,610円
標準:1,140円
特大容量:2,200円
大容量:1,610円
標準:1,140円
染料ブラック 891円 大容量:各1,460円
標準:各920円
大容量:各1,460円
標準:各920円
カラー 891円 大容量:各2,332円
標準:各979円
各1,771円 大容量:各1,460円
標準:各920円
大容量:各1,460円
標準:各920円

 まずはプリントの基本となる画質と速度、印刷コストから見ていこう。まずは写真画質である。最も画質が高いのはEP-50Vである。6色インク構成で最小インクドロップサイズは1.5plと小さい。さらに通常の6色とは異なり、ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色に、レッドとグレーインクを搭載する。これを、「Epson ClearChrome K2インク」と呼んで、従来の6色と区別している。ライトインクがない分、色の薄い部分での粒状感などが悪くなりそうだが、そこは理論的色変換システム「LCCS」が力を発揮する。プロセレクション(写真のプロ向けのプリント単機能機)の製品に採用されてきたこの「LCCS」は写真をプリントする際のインク配分を論理的に算出する色生成技術で、階調性・色再現域・粒状性などの点からベストになるように複雑に計算されて打つインクが決定されるというものだ。さらに、光源によって色合いが異なる光源依存性も最適になる様に計算されるなど、かなり高度なものだ。さらに紙送りの精度も高めることで、基本4色だけでも高画質に印刷ができるという。そこにレッドインクにより、くすみがちな赤系統の表現力を高め、赤い物だけで無く夕日や肌の色などでも違いが出る。さらに従来の6色ではモノクロ写真の場合のグレーの部分はカラーインクを使って表現するため青白くなってしまうが、EP-50Vではグレーインクを搭載しているため綺麗なグレーの階調表現ができる。カラー、モノクロ両方の表現力をさらに高めた製品と言える。全色染料インクを採用しているため、写真用紙へ印刷した際に用紙の光沢感がそのまま出るため写真印刷に向いているといえる。次に画質が高いのはPIXUS iP8730だ。EP-50Vと同じ6色構成だが、顔料ブラックと染料の5色による6色構成だ。そのため写真印刷は5色で行うことになり、通常の6色構成よりやや画質が劣る。ブラック、シアン、マゼンダ、イエローにグレーインクを搭載しており、グレーインクをベースにすることで粒状感を抑えているが、特に色の鮮やかさという点では劣ってしまう。一方のEP-50VはLCCSの効果もあって通常の6色よりも画質が高いため、PIXUS iP8730EP-50Vではそれなりに画質の差がある。とはいえ最小インクドロップサイズは1plと小さく、染料インクなので写真用紙に印刷した際の発色と光沢感も良い。よほど画質にこだわらなければPIXUS iP8730でも十分綺麗だろう。次に写真画質が高いのはPIXUS iX6830である。PIXUS iP8730からグレーインクを抜いた5色構成で、写真印刷は基本の4色となる。PIXUS iP8730よりもやや画質が劣るが、最小インクドロップサイズは同じ1plであるため粒状感を感じるほどでは無い。十分に写真画質で印刷ができるだろう。残るPX-S6010PX-S5010は4色インク構成だが、全色顔料インクとなるため、写真印刷に向いているとは言いがたい。顔料インクは写真用紙に印刷した際に発色はあまり良くなく、また表面の光沢も薄れポストカードのような鈍い光り方になってしまう。インクも基本4色であることに加えて、最小インクドロップサイズも非公開ながら、海外の同機能のモデルを参考にすると、PX-S6010は3.8pl、PX-S5010は3plと予想されるため、他機種の倍から4倍となり粒状感もそれなりに出てしまう。写真印刷ができないわけではないが、画質的にもインク的にも向いているとは言いがたい。写真印刷を考えているなら、画質にこだわるならEP-50V、それなりでも良いならPIXUS iP8730PIXUS iX6830が良いだろう。
 一方、文書印刷(普通紙への印刷)の画質となると、大きく異なる。普通紙印刷の場合、染料インクでは用紙上で広がってしまうため、シャープさが弱くなり、文字や線が太くなるほか、中抜き文字や小さな文字が潰れたり、写真のメリハリが弱くなる。また耐水性が弱いため濡らしてしまったり濡れた手で触るとにじんでしまう。顔料インクではこういったことは無く、普通紙にもシャープな印刷ができる他、耐水性も高い。このことから、EP-50Vは全色染料インクであるため、普通紙の印刷画質は並だ。細線強調機能や文字くっきり機能を搭載し、ドライバーレベルで画質を改善しているため、昔と比べるとかなりマシにはなっているが、やはり顔料インクと比べると劣ってしまう。PIXUS iP8730とPIXUS iP6830はブラックだけだが顔料インクを搭載しているため、ブラックインクを使用する部分に限ってだが、顔料インクの恩恵が得られる。カラー部分は染料インクを使用するのはもちろん、完全な黒ではなくグレーの部分はグレーインク(PIXUS iP8730のみ)又はカラーインクを混ぜて作る場合があり、また背景色がある場合も染料ブラックを使用場合があるため、全ての黒色部分で必ずしも顔料ブラックの恩恵が得られるわけでは無いが、黒文字などが顔料インクなだけでも全体の仕上がりはぐっと引き締まる。PX-S6010PX-S5010は4色とも顔料インクを採用するため、カラー・モノクロ問わず普通紙の印刷画質は非常に高い。ある意味普通紙に特化していると言える。またPX-S6010はPrecissionCoreプリントヘッドを採用しており、普通紙印刷時の解像度も360dpiから600dpiにアップしているため、より高画質で、図面のような細い線でも潰れず印刷ができる。写真に特化したEP-50V、普通紙に特化したPX-S6010PX-S5010、その中間のPIXUS iP8730PIXUS iX6830となる。
 なお、インクだがそれぞれ特徴的だ、EP-50Vは「つよインク200」となっており、アルバム保存300年、耐光性50年、耐オゾン性10年と耐保存性が非常に高くなっており、アルバム保存だけで無く飾っておいても色あせを防ぐことができる。PIXUS iP8730PIXUS iX6830も「ChromaLife100+」でありアルバム保存300年、耐光性40年、耐ガス性10年と、こちらも耐保存性はかなり高い。これら3機種の耐保存性は問題ないレベルだ。一方PX-S6010PX-S5010は写真の耐保存性は公表されていないが、写真印刷向けの機種では無いため当然ともいえるだろう。逆に、PX-S6010は文書の耐保存性がうたわれており、キャビネット保存で400年となっている。重要な書類などを長期間保存できる点で、この機種の用途に合った性能と言えるだろう。
 印刷スピードを見てみよう。まずはL判写真フチなしである。EP-50Vは34秒、PIXUS iP8730PIXUS iX6830は30秒と、3機種に大きな差は無い。PX-S6010PX-S5010は写真の印刷速度が公表されていない。EP-50Vは1.5plと最小インクドロップサイズが非常に小さいが、5つのサイズのインク滴を打ち分ける「Advanced-MSDT」に対応しており、必要に応じて大きいサイズのインクを打つことで、画質と速度を両立している。ノズル数も全色180ノズルと、エプソンのプリンターとしては多い方だが、エプソンの6色の複合機は同じノズル数で13秒である事を考えるとやや遅めだ。LCCSの複雑な処理に時間が掛かるのか、紙送りなどを高精度に行っているのかといろいろ想像はできるが、原因は不明だ。一方のPIXUS iP8730PIXUS iX6830も1plと最小インクドロップサイズは非常に小さいが、ノズル数を多くすることで高速化しているが、こちらもキャノンの複合機では10秒や18秒であることを考えるとやや遅い。とはいえ、複合機の上位機種ほどではないが、ストレス無く使用できるレベルだ。
 一方、文書の印刷速度(普通紙への印刷速度)はEP-50Vを除く4機種が公表している。PIXUS iP8730PIXUS iX6830はA4カラー文書で10.4ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、モノクロ文書で14.5ipmとなっている。これはインクジェットプリンターとしてはかなり高速な部類だ。しかし、PX-S5010はカラー11.0ipm、モノクロ18.0ipmと、大きな差ではないが上回る速度となっている。さらに、上位モデルのPX-S6010では、カラー12.0ipm、モノクロ25.0ipmとなっており、特にモノクロプリントは圧倒的だ。EP-50Vは非公表だが、海外の同機能のモデルを参考にすると、カラー9.0ipm、モノクロ9.2ipmとなっている。画質重視の機種だけに他機種よりやや遅く、特にブラックのノズル数がカラーと同等である事から、他機種の様にモノクロの方が高速と言うことも無いが、十分高速だと言えるだろう。印刷速度重視ならPX-S6010だが、PX-S5010PIXUS iP8730PIXUS iX6830も決して遅くは無く、EP-50Vでも問題ない人も多いだろう。モノクロプリント100枚の印刷する時間で見てみると、PX-S6010が4分、PX-S5010が5分33秒、PIXUS iP8730PIXUS iX6830が6分54秒、EP-50Vが10分52秒(予測値)となる。この差を大きいとみるかがポイントとなる。
 印刷コストを見てみよう。まず、L版写真フチなしの印刷コストである。EP-50Vは14.0円、PIXUS iP8730が19.7円、PIXUS iX6830が17.9円となる。いずれも写真用紙代込みで、EP-50VPX-S6010は500枚で2,357円なので1枚4.714円、PIXUS iP8730が400枚で1,875円なので1枚4.6875円である。1枚4.7円とすると、インクコストだけを計算するとEP-50Vが9.3円、PIXUS iP8730が15.0円、PIXUS iX6830が13.2円となる。EP-50Vの印刷コストが抜きに出て安いが、これは、EP-50VがV-editionというシリーズに属しており、インクカートリッジの価格を安くして、低印刷コストをうたっているためである。一般的な6色機よりも量が多く価格は安いため、インク代では約半分になっているという。A4やA3などの大判で写真印刷をしても安心と言える。PIXUS iP8730PIXUS iX6830も印刷コストは低めだ。キャノンでは2017年末以降に発売された新機種から印刷コストが大幅に上がったが、これら2機種はそれ以前に発売された製品なので、印刷コストは安い。同じインクを使用するが、PIXUS iX6830の方が1色少ない事もあって印刷コストは安い。例によってPX-S6010PX-S5010は写真向けの機種ではない事から印刷コストは公表していない。
 文書の印刷コストを見てみよう。EP-50Vは前述の理由により低印刷コストにこだわってるため、A4カラー文書が6.6円と安い。PIXUS iP8730の10.6円、PIXUS iX6830の9.9円と比べてもかなりの安さだ。ビジネス向けのPX-S6010は9.4円、PX-S5010は9.5円とこちらもPIXUS iX6830とほぼ同じである。とはいえ、一般的には11〜13円位でも中程度の安さと言えるので、PX-S6010PX-S5010PIXUS iX6830はいずれも印刷コストは安い部類に入ると言える。モノクロプリントも、PX-S6010は2.9円、PX-S5010は3.0円、PIXUS iX6830は3.1円とほぼ同等である、印刷コスト面ではEP-50Vは安いが、PIXUS iP8730以外の3機種は十分低印刷コストで、PIXUS iP8730も標準レベルといえるだろう。
 ただ、印刷コストは近くてもインク1セットでの印刷可能枚数と価格は大きく異なっている。EP-50Vは1本891円で6色で5,346円と比較的安いのが特徴だ。印刷可能枚数は非公表だが、インクの価格を印刷コストで割ると810枚となるため、各色平均するとそのくらいになる。それに対してPX-S6010は大容量の場合、ブラックが6,446円、カラーが各2,332円で、4色で13,442円となる。A4カラー文書を印刷すると、ブラックインクは2,200ページ、カラーインクは1,100ページまで印刷が可能だ。インクカートリッジも高いが、印刷可能枚数はかなり多い。ビジネス向けで印刷枚数が多いと予想されるためにインクカートリッジの交換の手間を減らす形だが、代わりにインク購入時の金銭的負担は大きい。PX-S5010はブラックが1,331円、カラーが各1.771円で、ブラックは同じものを2本装着するので、4色5本で7,975円となる。印刷可能枚数はブラックインクが1,000ページ、カラーインクが800ページだ。PX-S6010より印刷枚数はかなり少ないが、その分価格も安いため、1枚あたりの印刷コストはほぼ同等となる。印刷枚数が少ないなら、こちらの方が合っているだろう。PIXUS iP8730は顔料ブラックが1,610円、染料ブラックとカラーが各1,460円で6色で8,910円で、顔料ブラックは500ページ、カラーは670ページ印刷できる。PX-S5010よりやや高く、印刷枚数は少ないため、印刷コストに影響している。PIXUS iX6830PIXUS iP8730と同じインクを利用し、印刷可能枚数もほぼ同じだが、インクが1色少なく5色で7,450円であること、さらに顔料ブラックは大容量の更に上の特大容量インクが2,200円で販売されており(印刷可能枚数は不明)、印刷コストはやや安めに設定されている。ほぼ同じ印刷コストのPX-S6010PX-S5010PIXUS iX6830だが、印刷枚数が多いならインク交換回数の少ないPX-S6010が、それほど多くないなら、インクカートリッジ交換時の負担が少ないPX-S5010PIXUS iX6830が良いと言える。

プリント(給紙・排紙関連)
型番 EP-50V PX-S6010 PX-S5010 PIXUS iP8730 PIXUS iX6830
製品画像
対応用紙サイズ 定型用紙 カード・名刺〜A3ノビ L判〜A3ノビ
(用紙幅64mmまで対応)
カード・名刺〜A3ノビ L判〜A3ノビ 名刺〜A3ノビ
長尺用紙 長さ1,200mmまで 長さ1,200mmまで 長さ1,200mmまで 長さ676mmまで 長さ676mmまで
給紙方向
(セット可能枚数(普通紙/ハガキ/写真用紙))
背面

(50枚/20枚/20枚)
(0.6mm厚紙対応)
○手差し
(1枚/1枚/1枚)

(50枚/20枚/20枚)

(150枚/40枚/20枚)

(150枚/40枚/20枚)
前面 【カセット】
A4まで
(200枚/65枚/50枚)
【カセット上段】
A3まで
(250枚/65枚/50枚)
【カセット下段】
普通紙A3〜B5
(250枚/−/−)
【カセット】
A4まで
(200枚/65枚/50枚)
その他
排紙トレイ自動伸縮 ○(A4/A3伸張量自動調整)
用紙種類・サイズ登録 ○(カセット収納(前面)・用紙セット(背面)連動) ○(カセット収納連動) ○(カセット収納(前面)・用紙セット(背面)連動)
用紙幅チェック機能 ○(印刷時) ○(印刷時) ○(印刷時)

 続いて、給紙・排紙関連の機能を見てみよう。対応する用紙は、最大サイズは5機種ともA3ノビとなっているが、最小サイズはEP-50VPX-S5010PIXUS iX6830が名刺サイズ、PX-S6010PIXUS iP8730はL判となっている。名刺サイズにカットされた用紙に印刷できる3機種は、少量や、フチ無しのデザインの名刺の印刷が行いやすい。ただしPX-S6010はL判の幅89mmより小さい64mm幅までは対応している。このサイズは、B6ハーフサイズのプライスカードに用いられ、小売店などで重宝されそうだ。長尺印刷に関しては、エプソンの3機種が1,200mm(1.2m)まで対応しており、こちらは長尺のPOPや垂れ幕や横断幕などの印刷にも使用できる。一方キャノンの2機種は676mmまでと長尺印刷と言うには少し心許ない。長尺印刷を行うかどうかも機種の決め手の一つとなるだろう。
 給紙に関しては、それぞれの機種で特徴がある。一番シンプルなのはPIXUS iP8730PIXUS iX6830で背面給紙のみとなっている。一度にセット可能な枚数はA4普通紙が150枚と家庭向けよりやや多い程度だ。背面給紙・前面排紙であるため用紙が内部で大きく曲げられることがなく、厚紙への印刷も安心で、写真用紙などにもローラー跡が強く付く心配もない。またセットも簡単だ。一方で用紙をセットしたままだとホコリが積もってしまい、その用紙がプリンター内部に入ると故障の原因となるため毎回取り除くのが望ましい他、トレイが後方に倒れるため、上方と後方にスペースが必要となる点は不便だ。EP-50VPX-S5010は兄弟機の様な製品なので、方式は同じだ。前面給紙カセット背面給紙を併用する。前面給紙カセットはA4サイズまでとなっているが、大型なので普通紙を200枚までセットできる。一方A3やB4など、A4サイズを超える用紙は背面からとなる。こちらは50枚までセット可能で、一般的な背面給紙よりは少ないが、A4用紙や写真用紙などよく使う用紙を前面給紙カセットに入れておけばホコリが積もる心配が無く、それ以外の用紙はセットしやすい背面からという使い方を想定しているのだろう。もちろん前面給紙カセットはハガキや写真用紙もセットできる。一方で背面給紙に関してはPIXUS iP8730PIXUS iX6830と同じくスペースが必要なほか、セットしたままにしておくとホコリが積もる問題があるのは同じだ。EP-50Vの背面給紙のもう一つの特徴として、0.6mm厚までの厚紙に対応している事がある。一般的なプリンターが0.3mmまでなので、倍の厚みまで使用できる。いざというときに便利だろう。PX-S5010も同じ構造だが厚紙対応はうたわれていない(対応していないとも書かれていない)ため不明だ。最後にPX-S6010だが、前面給紙を基本としている。給紙カセットを2段搭載し、それぞれに普通紙で250枚ずつセット可能と、圧倒的な給紙枚数である。上段はA3までの各種用紙、下段にはB5〜A3の普通紙という制限があるが、2段ともA3やA4普通紙をセットして500枚の大量使用に備えても良いし、上段にA4、下段にA3というように使い分けることもできる。注意点としてはA4までの用紙の場合、カセットは内部に完全に収納できるが、それ以上のサイズの場合、トレイを伸ばす必要があり、前に飛び出してしまう。使用時は排紙トレイを伸ばすため問題ないとも言えるが注意が必要だ。とはいえ、A4を超えるサイズをカセットにセットできるのは5機種中この機種だけで、それらのサイズを常に使う人には見逃せない機能だ。前面給紙・前面排紙と言うことで、プリンター後方で用紙が180度方向転換する必要があり、厚紙や封筒などの二重になった紙は少し苦手だ。そこで、PX-S6010では1枚ずつではあるが背面からの手差し給紙を可能としているのが大きな特徴だ。従来の背面給紙に近い位置だが、用紙をセットしておけるような大型のものではなく、折りたたみ式の簡易的なものだ。複数枚セットしても一度に給紙されてしまうため、本当に1枚ずつとなる。その分、背面に大げさなトレイを設けること無く背面給紙を可能としているわけである。厚紙や、封筒の様な特殊なサイズに印刷する場合だけでなく、前面給紙カセットにセットしたのとは異なる用紙を1枚印刷したい場合に、わざわざ入れ替えることなく印刷できるというメリットもある。また前面給紙カセットにセットできないA3ノビサイズもこちらからとなる。このように、各製品に特徴があるが、A3やB4を日常的に使うなら、これらの用紙を前面給紙カセットに入れられるPX-S6010が、日常的にはA4用紙までという人はEP-50VPX-S5010が便利だろう。
 ちなみに、ハガキや写真用紙のセット可能枚数も見てみよう。EP-50VPX-S6010PX-S5010は前面給紙カセットにハガキが65枚、写真用紙が50枚までセットできる。ハガキは30〜50枚、写真用紙は20枚程度が一般的なので、給紙枚数はかなり多い。その上、EP-50VPX-S5010は背面給紙にもハガキや写真用紙が20枚までセットできるので、合計でハガキは85枚、写真は70枚セットできる。PIXUS iP8730PIXUS iX6830はハガキ40枚、写真用紙20枚である。ハガキや写真用紙に大量印刷したい場合は、EP-50VPX-S5010が手間が少なくて便利だ。
 一方 排紙トレイで便利なのが、EP-50VPX-S6010PX-S5010が搭載する自動開閉機能だ。印刷が実行されると自動的に排紙トレイが伸張する。印刷した用紙を落としてバラバラにしてしまう心配が無い。その上PX-S6010はA4とA3で伸張量を自動調整するため、必要以上にトレイが出て邪魔になる事も無い。逆に電源を切るときは自動的に排紙トレイが収納される。
 EP-50VPX-S6010PX-S5010は用紙の種類とサイズを登録しておく機能が搭載されている。液晶ディスプレイでメニューから登録も可能だが、前面給紙カセットを挿し込む、またはEP-50VPX-S5010の背面給紙は用紙をセットした時点で、自動的に登録画面が表示されるため便利だ(されないようにもできる)。この登録内容と、印刷時の用紙設定が異なっている場合、メッセージが表示される仕組みだ。できる限り印刷ミスによる用紙とインクの無駄遣いをなくす工夫がなされている。これに加えて、印刷速度に影響は出るが、印刷時に実際の用紙幅をセンサーでチェックする機能もあり、誤って小さい用紙をセットした場合でもインクでプリンター内部を汚さないようになっている。

プリント(付加機能)
型番 EP-50V PX-S6010 PX-S5010 PIXUS iP8730 PIXUS iX6830
製品画像
自動両面印刷 ○(A4まで・ファイン紙対応) ○(A4まで・ファイン紙対応)
自動両面
印刷速度
A4カラー文書 N/A 9.0ipm 4.7ipm
A4モノクロ文書 N/A 16.0ipm 5.5ipm
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能 ○(オートフォトファイン!EX・高彩モード対応) ○(オートフォトファイン!EX) ○(オートフォトファイン!EX) ○(自動写真補正) ○(自動写真補正)
特定インク切れ時印刷 ○(黒だけでモード・5日間のみ) ○(黒だけでモード・5日間のみ) ○(黒だけでモード・5日間のみ)
自動電源オン/オフ ○/○ −/○ ○/○ ○/○
(USB接続時のみ)
○/○
(USB接続時のみ)
PictBridge対応 ○(Wi-Fi)
廃インクタンク交換 ○(メンテナンスボックス交換可) ○(メンテナンスボックス交換可) ○(メンテナンスボックス交換可)
フチなし吸収材エラー時の対応機能 ○(フチあり印刷継続可)

 その他、プリントの付加機能を見てみよう。自動両面印刷機能はEP-50VPX-S6010PX-S5010が対応している。ただし、PX-S6010はA3サイズまでの自動両面印刷に対応しているのに対して、EP-50VPX-S5010はA4サイズまでとなる。一方EP-50VPX-S6010は普通紙とハガキに加えて、ファイン紙の自動両面印刷にも対応している。両面印刷ファイン紙は多数の製品が発売されており、両面印刷時の裏移りを抑えられるなど、両面印刷に適しており、高画質に両面印刷を行いたい時に便利だ。自動両面印刷の速度にも差がある。PX-S6010はカラーが9.0ipm、モノクロが16.0ipmなのに対して、PX-S5010はそれぞれ4.7ipmと5.5ipmとなる。片面印刷の速度にも違いがあるが、片面印刷からの低下率で見てみるとPX-S6010のカラーは75%、モノクロは64%なのに対して、PX-S5010は 42.7%と30.6%となる。PX-S6010の方が自動両面印刷時の速度低下が抑えられており、元の速度差と合わせて、カラーは倍近く、モノクロは3倍近くの速度差になっている。両面印刷を多用するならPX-S6010は便利だ。
 CD/DVDレーベル印刷機能に関しては、EP-50VPX-S5010PIXUS iP8730が対応している。基本的には家庭向けの機種用の機能だが、PX-S5010EP-50Vと同じ本体であるため機能が搭載されているのだろう。写真の自動補正機能としてエプソンの3機種は「オートフォトファイン!EX」を、キャノンの2機種は「自動写真補正」を備えている。「オートフォトファイン!EX」は顔を自動判別し、シーンに合った補正をするもので、逆光写真や色かぶりも自然に補正してくれる機能である。一方「自動写真補正」も顔を自動検出し、顔とそれ以外の部分の露光状態を別々に解析して、それぞれに合った明るさに補正してくれる機能である。つまり、5機種とも高精度で自動補正をする機能を搭載している。PictBridgeに関してはPIXUS iP8730がWi-Fi方式にのみ対応しているが、対応するデジタルカメラは獄限られており、大きな差ではないだろう。最近、搭載機種が増えつつある自動電源オン機能だが、PX-S6010を除く4機種が対応する。電源が切れた状態でも印刷が実行されると自動的に電源がオンになる機能だ。最近のプリンターは無線LANや有線LANでネットワーク接続ができるため、必ずしもパソコンのそばにあるとは限らず、またスマートフォンなどからのプリントも考えられるため、わざわざプリンターの前まできて電源を入れる必要がないのは便利だ。EP-50VPX-S5010は排紙トレイも自動で伸張するため完全に自動だが、PIXUS iP8730PIXUS iX6830は前面カバーを開け排紙トレイを開けた状態にしておく必要がある。また、PIXUS iP8730PIXUS iX6830はUSB接続時のみ有効なので、パソコンやスマートフォンから離れた場所に置いた場合のネットワーク接続時には使用できず、USB接続で近くに置いた場合のみというあまり意味が無い仕様だ。排紙トレイの自動伸張の点からも、実質的に便利なのはEP-50VPX-S5010だけだろう。一方、指定した時間が経つと自動的に電源がオフになる機能は5機種とも搭載している。ただし、こちらもPIXUS iP8730PIXUS iX6830はUSB接続時のみ利用できる。
 その他の便利機能として、EP-50VPX-S6010PX-S5010はカラーインクが無くなった際に、モノクロ印刷が継続できる「黒だけでモード」を搭載している。ただし本来の画質では印刷が出来ない他、5日間に限定されるため、モノクロ印刷しかしないのでカラーカートリッジを交換しないで、又は取り付けないで使うという事はできない。プリンター自体に負担もかかるので、あくまで急なインク切れで、買いに行くまでの間にプリントが継続できるという機能だ。
 また、これら3機種は交換式メンテナンスボックス(廃インクタンクの交換)にも対応している。メンテナンスボックスとはクリーニング時に排出される廃インクを貯めるもので、満タンになると通常は修理に出して交換する必要がある。交換費用もそれなりに掛かる他、プリンターが手元に無い期間が発生してしまう。しかし、これら3機種はユーザー自身で簡単に交換できるようになっている。インクカートリッジなどと共に家電量販店やパソコンショップなどでも販売されており、EP-50VPX-S5010用は1,078円、PX-S6010用は2,618円となっている。PIXUS iP8730で修理に出すと14,300円、PIXUS iX6830は12,100円かかるのとは大きな差である。メンテナンスボックスの空き容量はインク残量と共に表示されるので、空きが少なくなったら予備を用意しておけば、満タンになってもすぐに印刷を再開できる。EP-50Vは印刷コストが安く、PX-S6010PX-S5010はビジネス用である事から、印刷枚数が多いと思われるため、この機能はうれしいところだ。一方、フチなし吸収材(フチなし印刷時は用紙サイズより少し大きめにプリントする事で実現しており、そのはみ出したインクを吸収させるもの)が満タンになった場合も多くの機種は修理対応となるが、PX-S6010は「フチあり」印刷に限っては印刷が継続できる機能を搭載する。とりあえず、急ぐ印刷だけを行っておき、時間に余裕のある時に修理に出すことが可能だ。

スマートフォン/クラウド対応
型番 EP-50V PX-S6010 PX-S5010 PIXUS iP8730 PIXUS iX6830
製品画像
スマートフォン連携 アプリ メーカー専用 EPSON iPrint Epson Smart Panel
(EPSON iPrintにも対応)
EPSON iPrint Canon PRINT Inkjet/SELPHY Canon PRINT Inkjet/SELPHY
AirPrint
対応端末 iOS 11.0以降
Android 5.0以降
iOS 11.0以降
Android 5.0以降
iOS 11.0以降
Android 5.0以降
iOS 13.0以降
Android 5.0以降
iOS 13.0以降
Android 5.0以降
スマートスピーカー対応 ○(Alexa/Googleアシスタント) ○(Alexa/Googleアシスタント) ○(Alexa/Googleアシスタント)
Wi-Fiダイレクト接続支援機能 ○(QRコード読み取り(iOS)/アプリ上で選択して本体で許可(Android))
写真プリント
ドキュメントプリント ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
クラウド連携 プリント アプリ経由/本体 ○/− ○/− ○/− −/− −/−
オンラインストレージ ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/google classroom) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive)
SNS ○(Instagram/Facebook・コメント付き可) ○(Instagram/Facebook・コメント付き可) ○(Instagram/Facebook・コメント付き可)
写真共有サイト
メールしてプリント ○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/PDF/Word/Excel/PowerPoint/メール本文) ○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/PDF/Word/Excel/PowerPoint/メール本文) ○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/PDF/Word/Excel/PowerPoint/メール本文)
LINEからプリント ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint)
リモートプリント ○(リモートプリントドライバー) ○(リモートプリントドライバー) ○(リモートプリントドライバー)
スキャンしてリモートプリント ○(受信のみ)

 スマートフォンとの連携機能は5機種とも搭載しており、iOSとAndroid端末に対応している。いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることで行える。写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。さらにドキュメント印刷にも対応している。PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もでき便利だ。接続は無線LAN(Wi-Fi)を利用するが、無線LANルーターを経由する方法と、プリンターと直接接続するWi-Fiダイレクトが一般的だ。エプソンの3機種は両方に対応しているが、キャノンの2機種はWi-Fiダイレクトには非対応で、無線LANルーターが必須となる。無線LANルーターを経由する方が、機能面でも制限が無く、印刷する度にプリンターと接続と切断を繰り返すのWi-Fiダイレクトと比べると便利なので、こちらを利用するのがお勧めだが、無線LANルーターが無い環境で使用する場合や、一時的に同じネットワークに入っていない人がプリンターを使いたい場合などにWi-Fiダイレクトは便利だ。Wi-Fiダイレクトの接続設定は手動でもそれほど難しくは無いが、PX-S6010は接続支援機能が提供される。iOSの場合は本体の液晶に表示されるQRコードを標準カメラアプリで読み込めば接続が完了し、Androidの場合は一覧から接続するプリンターを選ぶと、本体の液晶にメッセージが表示されるので接続の許可を選べば接続が完了する。セキュリティーキーの入力などが不要で、設定はより簡単になっている。なお、iPhoneやiPadの場合、AirPrintを利用したプリントも可能だ。
 エプソンの3機種はスマートスピーカーにも対応する。AlexaとGoogleアシスタント対応端末に対応しており、声だけでテンプレートを印刷させることができる。デザインペーパー、フォトプロップス、カレンダー、ノート、方眼紙、五線譜などのエプソン独自のものと、Alexaに登録された買い物リスト、やることリストなどの印刷に対応する。
 また、EP-50VPX-S6010PX-S5010はクラウドとの連携機能も搭載されており、スマートフォン/タブレット上からオンラインストレージ上のデーターにアクセスし、そのファイルを印刷することも可能だ。さらにSNSの写真をコメント付きで印刷できる機能も搭載している。いずれもスマートフォン用アプリ経由で、プリンター本体でクラウドにアクセスする機能はない。
 それ以外にも、リモートプリント機能として、印刷したい写真や文書をメールに添付してEP-50VPX-S6010PX-S5010に送ると自動で印刷できる「メールプリント」、LINE上でプリンターを友達登録し、トーク画面から写真を送信すると印刷される「LINEからプリント」、パソコンやスマートフォンから通常のプリントと同じ操作で、外出先など離れた場所から自宅のこれらの機種で印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。さらにPX-S6010は、スキャンしてリモートプリントの受信にも対応している。PX-S6010はスキャナーを搭載しないため、送信はできないが、同機能に対応した複合機でスキャンして離れた場所のPX-S6010で印刷する事ができる。簡易ファクスのような使い方ができるわけだ。EP-50VPX-S6010PX-S5010の3機種はネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。

操作パネル/インターフェース/本体サイズ
型番 EP-50V PX-S6010 PX-S5010 PIXUS iP8730 PIXUS iX6830
製品画像
液晶ディスプレイ 2.4型
(90度角度調整可)
2.4型
(角度調整可)
2.4型
(90度角度調整可)
操作パネル 物理ボタン式
(90度角度調整可)
物理ボタン式 物理ボタン式
(90度角度調整可)
インターフェイス USB他 USB2.0×1 USB2.0×1 USB2.0×1 USB2.0×1 USB2.0×1
無線LAN IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11ac/n/a/g/b
5GHz対応
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11ac/n/a/g/b
5GHz対応
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b IEEE802.11n/g/b
有線LAN 100BASE-TX 100BASE-TX 100BASE-TX 100BASE-TX
対応OS Windows 11/10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 11/10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 11/10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 11/10/8.1/8/7/Vista SP1/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 11/10/8.1/8/7/Vista SP1/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
耐久枚数 N/A 15万枚 5万枚 N/A N/A
外形寸法(横×奥×高) 476×369×159mm 515×400×298mm 476×369×159mm 590×331×159mm 584×330×159mm
重量 8.5kg 13.7kg 8.6kg 8.5kg 8.1kg
本体カラー ブラック ホワイト ホワイト ブラック ブラック

 最近では単機能プリンターでも操作パネルを備える機種が増えてきているが、EP-50VPX-S6010PX-S5010の3機種が該当する。EP-50VPX-S5010は同じ本体を使用しているのでデザインは共通だ。3機種とも2.4型のカラー液晶を搭載しており、液晶横の物理ボタンで様々な操作が行える。液晶と操作パネルは本体前面に搭載されるが、EP-50VPX-S5010は90度(水平)まで、PX-S6010もほぼ水平まで起こして角度調整ができるため、見やすい・操作しやすい角度にする事ができる。液晶は複合機と比べれば大きくはないが十分なサイズだ。操作ボタンも、液晶右に4方向のカーソルキーと、中央に「OK」ボタンがあり、その周囲に「ストップ」や「戻る」などのボタンが配置され、「ホーム」ボタンは液晶左で独立しているなど、わかりやすい配置だ(EP-50VPX-S5010PX-S6010はボタンの種類に若干の違いはあるが)。一方、PIXUS iP8730PIXUS iX6830には液晶は搭載されない。液晶があると、前述のセットした用紙の登録が行えるだけでなく、Wi-Fiダイレクトの設定や、インク残量確認、各種設定が行え、エラー発生時にはその内容も確認できる。また、PX-S6010は印刷枚数の確認、印刷ジョブの管理や、ユーザーによる利用制限、操作パネルの操作制限や、USB接続の無効化などの設定が可能なほか、印刷時にパスワード印刷を設定しPX-S6010本体でパスワードを入力するまで印刷されないようにできるなど、多人数での使用にも便利になっている。
 インターフェースは5機種ともUSB2.0に加えてネットワーク接続が可能だ。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルーターで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人には、家庭内のどのパソコンからでも印刷できるため非常に便利だろう。ただしPIXUS iP8730は無線LANのみである一方、他の4機種は有線LANにも対応する。無線LANはケーブルが不要なので、ケーブルの取り回しに苦労しないで良いというメリットがあるが、無線LANルーターの近くに置く場合や、逆に遠くて接続が安定しない場合の他、接続設定が面倒という場合や、既に家庭内やオフィス内にLAN配線が用意されている場合などに有線LANは重宝するため、そういった使い方を考えている人はPIXUS iP8730は注意が必要だ。一方、PX-S6010PX-S5010は他の3機種より無線LAN機能が強化されている。他の3機種は2.4GHz帯を使用するIEE802.11n/g/bのみの対応だが、PX-S6010PX-S5010はこれらに加えて5GHz帯を使用するIEEE802.11ac/n/aにも対応する。2.4GHz帯はBluetoothや無線マウス、電話の子機、電子レンジなどと電波干渉がおきてしまうが、5GHz帯はその心配がない事に加えて、IEEE802.11nに比べてIEEE802.11acは圧倒的に高速でるため、印刷データーの転送も速くなる。
 また、5機種ともスマートフォンやタブレットからの印刷にも対応しているが、無線LANルーターの無い環境でも、スマートフォンやタブレットと直接Wi-Fi接続が可能なWi-Fiダイレクトに対応しているのはEP-50VPX-S6010PX-S5010となる。Wi-Fiダイレクトの設定には液晶がないと非常に不便なため、これら3機種が液晶を搭載している事がWi-Fiダイレクト対応にもつながっていると言える。
 対応OSは5機種ともWindows 11/10/8.1/8/7/Vista/XPとMacOS 10.6.8以降となる。Windows XPはSP3が必要だ。PIXUS iP8730PIXUS iX6830はWindows Vistaの場合SP1以降が必要であるが、5機種はほぼ同じと言える。耐久枚数はPX-S6010が15万枚、PX-S5010は5万枚をうたっている。一般的な家庭用プリンターが1万〜1万5000枚である事を考えると、これら2機種はかなり高耐久に作られており、ビジネス利用でも十分耐えられるようになっている。
 本体サイズは、EP-50VPX-S5010が476×369×159mm、PX-S6010は515×400×298mm、PIXUS iP8730は590×331×159mm、PIXUS iX6830が584×330×159mmである。EP-50VPX-S5010の横幅の小ささは突出していると言える。PX-S6010は性能重視であるためやや大きいが、EP-50VPX-S5010より幅は39mmm、奥行きは31mm大きいだけで設置面積はかなり小さめだ。高さは前面給紙カセットが2段であるため大きいが、給紙枚数を考えれば小さい方だと言える。PIUXS iP8730はEP-50VPX-S5010より幅が114mm、PIXUS iX6830も108mmも大きいため、かなり大柄だ。近年プリンターの小型化が著しいが、それ以前の発売の製品であるためだ。両機種は奥行きは38〜39mm小さいとはいえ、EP-50VPX-S5010はA4用紙までなら前面給紙カセットにセットでき、PX-S6010もA4用紙までなら前面給紙カセットは本体に完全収納できるのに対して、PIXUS iP8730PIXUS iX6830は背面給紙しか無いため、必ず後方にスペースが必要になる。設置面積ではかなり不利と言えるだろう。



 この5機種を見ると、万人にお勧めできるのはEP-50VPX-S5010である。発売が新しいだけに機能とコンパクトさが優れている。小型化のために、前面給紙カセットと自動両面印刷はA4までという制限があるとは言え、それらの機能を搭載し、A3ノビなどの大きい用紙も背面から連続給紙ができ、ディスクレーベル印刷、自動電源オンと排紙トレイの自動伸張機能など、最新の機種らしい便利な機能も豊富だ。スマートフォン対応だけで無く、ネットワークプリント機能などにも抜かりは無い。液晶を搭載し操作性も良い。それでいて他機種とは比べものにならないコンパクトさである。EP-50Vは写真の画質と印刷コストでは一歩抜きに出ているし、PX-S5010は文書印刷の画質と印刷コストに優れている。写真向け又は文書印刷のどちらかの用途が中心なら、写真ならEP-50V、文書ならPX-S5010をおすすめしたい。
 一方、より多人数での文書印刷用途なら、PX-S6010をオススメしたい。給紙枚数やインク1セットでの印刷可能枚数、本体の耐久枚数など、印刷枚数が多くても安心だ。また各種利用制限やパスワード印刷と言った機能も、多人数での使用に向いている。印刷スピードも圧倒的に速く、自動両面印刷も速いため、待ち時間も少ない。PrecisionCoreプリントヘッドによる普通紙印刷の高画質化と、文書の耐保存性の高さも魅力だ。PX-S5010より1万円高く、本体サイズも大きくなるが、多人数で使用する、又は印刷枚数が多いならその価値は十分になる。
 逆に、EP-50VPX-S5010では、写真と文書それぞれに特化しすぎており、両方ともまんべんなく使いたいという人にはPIXUS iP8730PIXUS iX6830が良いだろう。また、写真の印刷もしたいが、EP-50Vほど画質はこだわらないので本体価格を安く抑えたいという人にもこれら2機種が良いだろう。染料の5色または4色で写真印刷もそれなりに高画質である一方、顔料ブラックで文字印刷も十分綺麗だ。本体は横幅が大きいことや、自動両面印刷に非対応、スマートフォン対応も機能が限定され、液晶が無いなど、旧世代のイメージが残るが、基本性能は悪くない。この2機種では、写真印刷やレーベル印刷といった機能を重視するならPIXUS iP8730、文書印刷や有線LAN接続といった機能を重視するならPIXUS iX6830がおすすめだ。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/


EP-50V
PX-S6010
PX-S5010
PIXUS iP8730
PIXUS iX6830