プリンター徹底比較
2022年春時点のプリンター
〜エプソン・キャノン・ブラザーのプリンターを比較〜
(2022年9月9日公開)

プリンター比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンター比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。


A4カラー単機能プリンター(タンク方式)
 
 スキャナーやコピー機能を持った複合機では無く、プリントのみの単機能プリンターの中で、タンク方式の機種を比較する。タンク方式又は大容量カートリッジ方式は、現在、エプソンのエコタンク方、キャノンのギガタンク方式、ブラザーのファーストタンク方式があるが、エプソンとブラザーはカラー単機能プリンターはA3対応機種のみでA4までの機種は販売していないため、キャノンの3機種を比較することになる。GX5030(60,500円)、G5030(32,868円)、G1310(21,868円)の3機種となる。G1310は初代ギガタンク搭載機であり、そのご後継製品としてG5030が発売されたが、G1310も下位モデルとして残っている形となるため、G5030G1310は上位・下位の違いと言うより、新旧の違いのような形となる。一方GX5030G5030とは方向性の異なる機種だ。それぞれ価格差があるが、どういった違いがあるのか検証してみよう。

プリント(画質・速度・コスト)
メーカー キャノン キャノン キャノン
型番 GX5030 G5030 G1310
製品画像
実売価格(メーカーWeb/税込) 60,500円 32,868円 21,868円
インク 色数 4色 4色 4色
インク構成 ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック(顔料)
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック(顔料)
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成 ギガタンク方式
(挿して注入・満タン自動ストップ・色ごとに形状変更)
ギガタンク方式
(挿して注入・満タン自動ストップ)
ギガタンク方式
顔料/染料系 顔料 染料(カラー)/顔料(黒)
新顔料ブラック
染料(カラー)/顔料(黒)
インク型番 36番 30番 390番
付属インクボトル インクボトル各色1本 インクボトル(カラー)各色1本
インクボトル(ブラック)2本
インクボトル(カラー)各色1本
インクボトル(ブラック)2本
ノズル数 4352ノズル 1792ノズル 1472ノズル
カラー:各1024ノズル
黒:1280ノズル
カラー:各384ノズル
黒:640ノズル
カラー:各384ノズル
黒:320ノズル
最小インクドロップサイズ N/A N/A(2pl?) N/A(2pl?)
最大解像度 600×1200dpi 4800×1200dpi 4800×1200dpi
高画質化機能
印刷速度 L判縁なし写真(メーカー公称) N/A 37秒 51秒
A4普通紙カラー(ISO基準) 15.5ipm 6.8ipm 5.0ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準) 24.0ipm 13.0ipm 8.8ipm
ファーストプリント速度 A4普通紙カラー 8.0秒 14.0秒 19.0秒
A4普通紙モノクロ 7.0秒 9.0秒 13.0秒
印刷コスト
(税込)
L判縁なし写真 N/A N/A N/A
A4カラー文書 2.2円 1.0円 0.9円
A4モノクロ文書 0.8円 0.5円 0.4円
インク1本の印刷枚数
(A4カラー文書)
ブラック 6,000ページ 6,000ページ 6,000ページ
カラー 各14,000ページ 各7,700ページ 各7,000ページ
インク1本の価格
(税込)
ブラック 4,730円 2,310円 1,892円
カラー 各6,160円 各1,540円 各1,232円

 まずはプリントの基本となる画質と速度、印刷コストから見ていこう。3機種ともブラック、シアン、マゼンダ、イエローの4色構成となっているが、異なる点がある。GX5030は全色が顔料インク、G5030G1310はブラックが顔料インク、カラーが染料インクとなる。ここで、染料インクと顔料インクの話が出てきたが、それぞれに得手・不得手がある。染料インクは様々な用紙に対応でき、写真用紙等に印刷した際に発色が良く、用紙本来の光沢感が出るため、写真印刷に向いている。一方で普通紙に印刷すると紙にしみこんで広がってしまうため、メリハリが弱くなる。また水濡れに弱く、濡れた手で触ったりマーカーを引いても滲んでしまう。その点で顔料インクならメリハリのある印刷が行え、小さな文字や中抜き文字も潰れずに印刷が可能なほか、耐水性も高い。しかし、顔料インクは写真用紙などに印刷した際に発色が悪いほか、用紙の光沢感が薄れ半光沢のようになってしまう。また、光沢した年賀状や光沢フィルムなど一部に顔料インク非対応の用紙もある。つまりは染料インクと顔料インクは、用紙によって向き不向きがあるわけである。
 これを元に画質を見てみよう。まずは写真画質である。印刷内容が写真かどうかというよりは、写真用紙への印刷画質となる。またハガキの通信面やファイン紙、光沢紙など、普通紙以外の画質もこちらになる。G5030G1310は染料ブラックを搭載しておらず、染料インクと顔料インクを重ねられない事から、染料インクのカラー3色での印刷となる。黒色はカラーを重ねて作るが、どうしても非常に濃い茶色やグレーにしかならず、全体にコントラストが弱くなってしまう。これは黒髪や影、夜景などの色を見れば一目瞭然な他、影や夜景などの黒の中の微妙な表現力が劣ってしまう。その点では両機種とも写真印刷向きの機種とは言えない。とはいえ、染料インクであるため、写真用紙本来の光沢感は出るし、カラーの発色は良い。画質にこだわらなければ写真印刷が出来ないわけではない。ちなみにG5030G1310のインク自体の発色に関しても、G5030は顔料ブラックに関しての記述しか無いため、染料カラーに関しては両機種に差があるのかは不明だ。ただ、画質に関係する最小インクドロップサイズは、非公開ながら海外の同機能の機種から2pl程度ではないかと予測される。これが大きいとドットが大きくなり、全体を見たときにざらっとした感じ(粒状感)を感じてしまうが、2plは比較的優秀だ。その点では問題は無いと言える。一方、耐保存性に関しては、キャノンのカートリッジ方式の一部機種が対応する「ChromaLife 100」(アルバム保存100年)には準拠していないと言うことなので、印刷した写真の色あせは早いと考えられる。ではGX5030はというと、全色が顔料インクなので、顔料インクでプリントするしかないが、一方でブラックインクを使用することは出来る。その点ではG5030G1310より有利に思えるが、そもそもの顔料インクの発色の悪さから、かなり色があせて見える。その上写真用紙の光沢感も薄れてしまうので、写真らしい仕上がりにもならない。G5030G1310よりも悪く見えるだろう。また、最小インクドロップサイズについてはこちらも非公開ながら、印刷解像度が低いことから、かなり大きいと予想される。元となった機種から変わっていないとすると、カラーが5pl、ブラックが11plという可能性もある。これが当たっているとすると、G5030G1310よりかなり大きく、粒状感の面でも劣ってしまう。
 逆に文書の印刷画質を見てみよう。文書と言っても、印刷内容が文書かどうかと言うよりは、普通紙への印刷の画質である。文書中の写真やイラストなどもこちらになる。文書の印刷画質は前述のように、顔料インクが有利だ。GX5030は全色顔料インクであるため、カラー・モノクロ問わず、メリハリがあり耐水性のあるプリントが行える。一方のG5030G1310では顔料インクはブラックだけなので、黒色部分しかこの恩恵は得られない。また、黒と言っても、完全な黒ではないグレーの部分には染料のカラーインクを重ねて作り出す場合があり、背景色があるなど、カラーの中に黒が混ざっている場合も染料インクを使う場合があり、必ずしも全ての黒色部分で顔料インクの恩恵を受けられるわけではないが、文書印刷でそういった部分は結構多く、一部だけでも全体的に引き締まった印象となるのは確かだ。特にG5030は「新顔料ブラック」という名称が付けられているので、ブラックに関しては、よりクッキリとした黒が表現できる。普通紙印刷に特化するならGX5030がベストだが、G5030G1310でもそれなりに綺麗なプリントが可能といえる。また最小インクドロップサイズは写真印刷ほど重要ではないとは言え、GX5030はかなり大きいと予想されるため、文書中の写真やイラスト、グラフなどに粒状感を感じてしまう可能性はあり、その点ではG5030G1310の方が綺麗に見えるだろう。
 印刷速度にも大きな違いがある。まずは写真の印刷速度だがGX5030は写真向きの機種ではない事とフチなし印刷が出来ない(後述)ため、速度は公表されていない。G5030は37秒、G1310は51秒となる。同じキャノンのカートリッジ方式の機種では18秒や10秒という機種があること考えると高速ではないが、G5030ならば使えるレベルだ。G1310となるとかなり遅く感じる。これはノズル数が違うため当然と思えるが、カラーは両機種とも384ノズルで同等で、写真印刷には使わないブラックがG5030は640ノズルと、G1310の320ノズルから倍増されているだけだ。つまり同じノズル数でも、高速にプリントできるように改良されているといえる。
 文書の印刷速度も同じく差が出ており、G5030がA4カラー文書が6.8ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、A4モノクロ文書が13.0ipmである。一方G1310はそれぞれ5.0ipm、8.8ipmとなる。G5030の方が、カラーは36%、モノクロは48%ほど速くなる。キャノンの家庭用カートリッジ方式の機種では、それぞれ10.0ipmと15.0ipmという機種があるため、それと比べればG5030も遅いが、両機種の差も大きい。そしてGX5030はカラーが15.0ipm、モノクロが24.0ipmと圧倒的に高速だ。G5030のモノクロプリントより高速に、GX5030はカラープリントが可能という事になる。カラーはG5030の2.28倍、G1310の3.1倍、モノクロはG5030の1.85倍、G1310の2.73倍となる。例えば100枚の文書をプリントした場合、カラープリントのなら、GX5030は6分27秒、G5030では14分42秒、G1310は20分となる。モノクロプリントならそれぞれ4分10秒、7分42秒、11分22秒である。この差を大きいと感じるかどうかは、一度に印刷する枚数やなどによっても違うだろう。一方、1枚又は数枚のプリントを頻繁に行うという使い方の場合、1枚目のプリントにかかる時間である「ファーストプリント速度」も重要だ。G5030を例にするとカラーは6.8ipnだから1枚8.82秒だし、モノクロは13.0ipmだから4.62秒でプリントできるはずだ。しかしこれは2枚目以降の速度であり、1枚目はカラーが1枚14.0秒、モノクロは9.0秒となりに遅くなる。G1310ではそれぞれ19.0秒と13.0秒とさらに遅い。一方GX5030ではそれぞれ8.0秒と7.0秒とかなり高速だ。プリントボタンを押して、すぐそばにあるプリンターから出てくるのを待ってすぐにその印刷物を利用するという使い方の場合、6秒又は11秒長く待つというのは、意外と長く感じるはずだ。使い方によってはこのファーストプリント速度も重要だ。
 ちなみにいずれもギガタンク方式なので、本体内蔵のインクタンクにインクボトルからインクを補充する方式となるのは同等だ。しかし、製品の発売日によって、その利便性が大きく異なっている。トップカバーを開き、さらに左にブラック、右にカラーのインクタンクカバーがあるのでこれを開くところまでは3機種とも同じだ。発売が最も早いG1310では各色の注入口がキャップでふさがれているため、これを外す。すると大きめの穴が出現するので、インクボトルの先端を注入口に挿し込み、ボトルの側面を握ってインクを注入していく。前面のインク残量窓を見て、満タンのラインまで目視で確認して注入を止める形になる。ボトルは握ったり倒すとこぼしてしまう危険性があるし、注入時にあふれさせてしまう危険性もある。一方、G5030は第2世代のギガタンク方式となっている。各色の注入口のキャップを開けるのは同じだが、スイング式になっていて開けやすい。そして注入口は穴では無く、注入用の管が出ており、ここにボトルを挿し込むと、注入が始まる形となる。そして満タンになると自動ストップするので、ボトルを挿し込んだらストップするまで待つだけだ。挿し込まなければボトルの先端からインクが出にくい形状となっているため、ボトルからインクをこぼす心配も無い。また満タンで自動ストップするので、あふれさせてしまう心配も無い。そしてGX5030ではもう一段進化し、ボトルの先端と注入口の周囲の形状が色ごとに変えてあるため、間違った色のタンクに挿し込んでしまう心配が無くなっている。手間やミスの危険性には大きな違いがある。また、補充する場合は上限まで入れる必要があるが、GX5030G5030は無くなった色だけ補充すれば良いのに対して、G1310は1色だけ補充する必要がある場合でも、全色を上限まで補充する必要がある。従来のカートリッジ方式に比べて、手間がかかると感じるのがこのインク補充作業だが、GX5030G5030ならカートリッジ方式と変わらない手間で補充ができる。
 それでは印刷コストを見てみよう。同じギガタンク方式ながら印刷コストには差がある。カラー文書の場合、GX5030は1枚2.2円、G5030は1.0円、G1310は0.9円となる。モノクロ文書はそれぞれ0.8円と0.5円、0,4円となる。これを見るとGX5030がかなり高く、G5030G1310の間にも若干の違いがある。G5030G1310の差は、インクの違いも多少あるが、インクボトルが複雑になっている事へのコストの差もあると考えられる。印刷コストが極端に安いので、ボトルの製造コストの差も影響が大きく見えてしまう。とはいえ0.1円の差なので、1万枚プリントして1,000円の差と考えれば、気にするほどの差ではない。一方GX5030は、インクが全色顔料であるため、インクそのものが高くなっていると考えられる。カラー文書はG5030の2.2倍、モノクロ文書は1.6倍だ。とはいえ、一般的なカートリッジ方式のインクジェットプリンターの場合、カラー文書が10円〜19円、印刷コストが安いビジネス向けプリンターでもカラー文書が6.5円〜15円、モノクロ文書が2円〜5円程度である事を考えると、GX5030でも圧倒的に低印刷コストと言える。また卓上レーザープリンターの場合、カラー文書は10円〜20円、モノクロ文書は1.8円〜4.5円なので、レーザープリンターからの置き換えでも十分にお得になる。
 ちなみに、インクボトル1本がインクタンクにそのまま入る量となっているが、その量が異なっている。G5030G1310の場合、満タン状態(各インクボトル1本)でカラー文書を印刷した場合、ブラックインクは6,000ページ、カラーインクは7,700ページまでプリントが可能だ。それに対してGX5030ではブラックインクは同じ6,000ページだが、カラーインクは倍近い14,000ページまでプリントが可能だ。カラープリントが多くても、インクの補充回数を少なくできるため、印刷枚数の多い環境でも安心だ。ちなみにインクボトルの価格は、GX5030がブラックが4,730円、カラーが各6,160円なので、1セット購入で23,210円、G5030はブラックが2,310円、カラーが各1,540円なので1セット6,930円、G1310がブラックが1,892円、カラーが各1,232円なので1セット5,588円となる。GX5030はブラックインクはG5030G1310より倍以上高く、カラーインクは印刷可能枚数が倍近く多いとは言えそれ以上に価格差があるため、1枚あたりの印刷コストに換算すると高くなってしまうわけである。また、インクを購入するときの1度の出費が大きいのもGX5030の気になる点だ。また、購入時にインクボトルが同梱されるが、インクカートリッジ方式では初期設定用として量の少ないカートリッジが同梱される事がほとんどなのに対して、これら3機種では補充時は満タンまでという仕様もあって、同梱のインクボトルは、別売りの物と同じくフルサイズの物となっている。購入時にインクタンクを満タンにできるわけだが、そこから初期充填でインクを消費する。タンクがプリントヘッドとは別の所に固定されており、そこからチューブでつながっているため、チューブ内をインクで満たす必要があり、かなりの量を消費してしまうが、それでもかなりの枚数がプリントできる量が残るはずだ。またG5030G1310は、ブラックインクがもう1本同梱されているため、残った分+6,000ページ分はプリントが可能だ。本体価格は高いが、これだけでもずいぶんお得と言えるだろう。

プリント(給紙・排紙関連)
型番 GX5030 G5030 G1310
製品画像
対応用紙サイズ 定型用紙 L判〜A4
(フチ無し印刷非対応)
名刺〜A4 名刺〜A4
長尺用紙 長さ1,200mmまで 長さ676mmまで 長さ676mmまで
給紙方向
(セット可能枚数(普通紙/ハガキ/写真用紙))
背面

(100枚/40枚/20枚)

(100枚/40枚/20枚)

(100枚/40枚/20枚)
前面 【カセット】
普通紙のみ
(250枚/−/−)
【カセット】
普通紙のみ
(250枚/−/−)
その他
排紙トレイ自動伸縮
用紙種類・サイズ登録 ○(カセット収納(前面)・用紙セット(背面)連動) ○(カセット収納(前面)・カバー(背面)連動)
用紙幅チェック機能

 続いて、給紙・排紙関連の機能を見てみよう。対応用紙は、3機種と最大サイズはA4なのは当然だが、最小サイズは差がある。GX5030はL版サイズまでなのに対して、G5030G1310はより小さい名刺サイズにも対応する。GX5030でも後で切り取るタイプの名刺プリントは可能だが、G5030G1310では、数枚の名刺プリントや、フチなしデザインのプリントも行いやすいのはメリットだ。またA4を超える長尺プリントも対応しているが、G5030G1310が676mmまでなのに対して、GX5030は1,200mm(1.2m)までプリントが可能だ。一方、GX5030はフチなしプリントには非対応だ。写真印刷向きのプリンターではないが、背景前面に柄や色のある文書やハガキを作成する場合は注意が必要だ。
 給紙に関してはGX5030G5030が前面給紙カセットと背面給紙の2種類に対応するのに対して、G1310は背面給紙だけとなる。背面給紙はガイドを用紙幅に合わせて、用紙を立てるだけなので一見便利そうだが、用紙をセットしたまだとホコリが積もってしまい、それがプリンター内部に入ると故障の原因になるため、使い終わったら取り除くのが理想だ。また、背面給紙トレイが後ろに傾く為、プリンター後方にスペースが必要となる。その点、GX5030G5030は前面給紙カセットがあり、ここに用紙をセットすれば、完全に本体に収納が可能でホコリが積もることも無い。常に電源を入れており、1日に何回も印刷するという使い方の場合、GX5030G5030の方が便利だ。また、例えばよく使うA4普通紙を前面給紙カセットにセットしておき、背面給紙はその他の用紙のために空けておけるのもメリットだ。給紙枚数にもメリットがあり、G1310の場合は背面給紙にA4普通紙を100枚までセット可能だが、GX5030G5030の前面給紙カセットは250枚までセット可能だ。さらに背面給紙にもG1310同様100枚までセット可能で、前面給紙カセットが無くなったら背面給紙という風にリレー給紙も可能なので、350枚までの連続給紙にも対応できる。大量印刷する場合にも、用紙を補充する手間が省けるのもメリットだ。ただしGX5030G5030の前面給紙カセットは普通紙専用で、ハガキや写真用紙、ファイン紙などは全て背面からとなる。3機種ともハガキは40枚まで、写真用紙は20枚までセット可能だ。
 GX5030G5030には用紙の種類とサイズを登録しておく機能が搭載されている。液晶ディスプレイでメニューから登録も可能だが、前面給紙の場合はカセットを挿し込むと、背面の場合は、GX5030は用紙をセットすると、G5030は給紙口カバーを閉じると、自動的に登録画面が表示されるため便利だ(されないようにもできる)。この登録内容と、印刷時の用紙設定が異なっている場合、メッセージが表示される仕組みだ。できる限り印刷ミスによる用紙とインクの無駄遣いをなくす工夫がなされている。

プリント(付加機能)
型番 GX5030 G5030 G1310
製品画像
自動両面印刷 ○(普通紙のみ・A4/レターのみ) ○(普通紙のみ)
自動両面
印刷速度
A4カラー文書 10.0ipm 2.8ipm
A4モノクロ文書 13.0ipm 2.9ipm
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能 ○(自動写真補正) N/A
特定インク切れ時印刷
自動電源オン/オフ ○(印刷実行)/○(指定時間操作無し) ○(印刷実行)/○(指定時間操作無し) ○(印刷実行)/○(指定時間操作無し)
廃インクタンク交換 ○(メンテナンスカートリッジ交換可能)
フチなし吸収材エラー時の対応機能

 その他、プリントの付加機能を見てみよう。自動両面印刷機能はGX5030G5030が搭載している。両機種とも普通紙のみでハガキには非対応だが、文書を両面印刷したい場合に重宝するだろう。ただ、G5030はA4、B5、A5、レターサイズの自動両面印刷に対応しているが、GX5030はA4とレターサイズのみ対応だ。B5やA5用紙に自動両面印刷したい場合はG5030のみとなる。一方、その自動両面印刷の速度には大きな差がある。自動両面印刷は、表を印刷した後、そのままもう一度プリンター内に吸い込み、プリンター後方で180度方向転換して用紙を裏返し、今度は裏面を印刷するという行程を取る。また印刷する内容によっては表面の印刷後に乾燥時間も必要になる。この方向転換に時間がかかってしまい、両面印刷時は印刷速度が極端に低下してしまう。GX5030ではカラー文書は10.0ipm、モノクロプリントは13.0ipmとなり、片面印刷のそれぞれ65%と54%まで低下する。一方G5030は2.8ipmと2.9ipmとなり、片面印刷の41%と22%まで低下する。元々の印刷速度にも差があるGX5030G5030だが、自動両面印刷を行う場合はその差が大きくなる。ipmは1分あたりの枚数では無く面数なので、自動両面印刷は1枚で2面となることから、G5030では1分で1枚半もプリントできない事になり、印刷枚数が多いとかなりストレスとなる。自動両面印刷を多用するなら(A4サイズに限定されるが)GX5030の方が実用的だ。
 自動電源オン・オフ機能は3機種とも搭載している。自動電源オンは、印刷が実行されると自動的に電源がオンになる機能だ。最近では無線LANや有線LANでのネットワーク接続ができるようになり、プリンターから離れた場所のパソコンやスマートフォンから印刷を実行することが増えたが、そういった際にわざわざプリンターの電源を入れに行く手間が省ける。GX5030G5030もネットワーク接続が可能なので重宝するだろう。一方G1310はUSB接続のみで(後述)、パソコンの横に設置することになるためそれほど意味の無い機能だとは言える。一方、自動電源オフ機能は、指定した時間が経つと自動的に電源がオフになる機能である。
 GX5030の搭載する便利な機能が、廃インクタンク(メンテナンスカートリッジ)をユーザーが交換できる機能だ。廃インクタンクはクリーニングの際に排出されるインクを貯めておくタンクで、多くの機種は満タンになるとメッセージが表示され修理に出して交換するまで一切のプリントが止まってしまう。一方、GX5030はインクカートリッジなどと一緒に交換用メンテナンスカートリッジが売られており(2,640円)、交換すれば印刷が再開できる。安くすむだけでなく、プリンターが手元に無い期間が無くなるため便利だ。

スマートフォン/クラウド対応
型番 GX5030 G5030 G1310
製品画像
スマートフォン連携 アプリ メーカー専用 Canon PRINT Inkjet/SELPHY Canon PRINT Inkjet/SELPHY
AirPrint
対応端末 iOS 13.0以降
Android 5.0以降
iOS 13.0以降
Android 5.0以降
スマートスピーカー対応 N/A ○(Alexa/Googleアシスタント)
Wi-Fiダイレクト接続支援機能 ○(Bluetooth)
写真プリント
ドキュメントプリント ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
クラウド連携 プリント スマートフォン経由/本体 ○/− ○/− −/−
オンラインストレージ ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom)
SNS刷 ○(Facebook・コメント付き可) ○(Facebook・コメント付き可)
写真共有サイト ○(googleフォト/image.canon) ○(googleフォト/image.canon)
メールしてプリント
LINEからプリント ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint)
リモートプリント ○(ファイルアップロード・Windows 11/10のみ)
スキャンしてリモートプリント

 スマートフォンやタブレットとの連携機能はGX5030G5030が搭載している。iOSとAndroid端末に対応しており、いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることでプリントが行える。写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定(G5030のみ)まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。一方、ドキュメント印刷の場合はPDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もでき便利だ。なお、iPhoneやiPadの場合、AirPrintを利用したプリントも可能だ。
 スマートフォンとの接続は、無線LAN(Wi-Fi)で行うが、無線LANルーターを経由する方法と、ダイレクトに接続する「Wi-Fiダイレクト」(設定上の名称はダイレクト接続)が選べる。無線LANルーターを経由する方が機能的な制限が無く、接続設定も簡単なので、こちらを利用する人が多いと思われるが、Wi-Fi環境がない場合や、他の人に一時的にプリンターを使えるようにする場合などに、Wi-Fiダイレクトは重宝するだろう。Wi-Fiダイレクトの接続設定は手動でもそれほど難しくは無いが、G5030はBluetoothを利用した接続支援機能が提供される。Android限定の機能で、Bluetoothといっても、Bluetoothで直接印刷データーを送信するのではなく、接続自体はWi-Fiだが、あらかじめBluetoothでペアリングしておけば、Wi-Fiダイレクトの設定が簡単に行えるというものだ。使う機会は限定されるとはいえ、少しでも簡単に接続できるよう工夫さえれている点は評価できる。
 また、G5030はスマートスピーカーに対応している。AlexaとGoogleアシスタント対応端末に対応しており、声だけでナンプレ、ぬりえ、レポート用紙、チェックリスト、五線譜などキャノン独自のものと、プリンターの状態の確認が行える(GX5030は対応・非対応が不明)。
 さらに、2機種ともクラウドとの連携機能も搭載している。オンラインストレージのファイルを印刷したり、SNSの写真を印刷する事ができる。SNSの写真はコメント付きでも印刷が可能だ。また、写真共有サイトからの印刷も可能だ。スマートフォンのアプリ上からアクセスする形となり、GX5030G5030本体だけでクラウドにアクセスする機能は搭載されていない。
 GX5030はリモートプリント機能も備えている。PIXUSトークプリントは、LINE上でGX5030を友達登録し、トーク画面から写真や文書ファイルを送信すると自動的に印刷される機能だ。一方PIXUSリモートプリントは、専用サイト上にファイルをアップロードすると、自動的にプリントされる機能だ。こちらはWindows 11/10で、EdgeまたはChrome上のみ対応となる。スマートフォンやタブレットからはLINEで、Windowsからはブラウザでアップロードすると、別の場所からでもプリントが行えるため便利だ。

操作パネル/インターフェース/本体サイズ
型番 GX5030 G5030 G1310
製品画像
液晶ディスプレイ 2行モノクロ 2行モノクロ
操作パネル 物理ボタン
(角度調整可)
物理ボタン
インターフェイス USB他 USB2.0×1 USB2.0×1 USB2.0×1
無線LAN IEEE802.11n/a/g/b
5GHz帯対応
(ダイレクト接続対応)
IEEE802.11n/g/b
(ダイレクト接続対応)
有線LAN 100BASE-TX 100BASE-TX
対応OS Windows 11/10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.13.6〜(AirPrint利用)
Windows 11/10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.10.5〜(AirPrint利用)
Windows 11/10/8.1/7 SP1
耐久枚数 15万枚 6万枚 N/A
外形寸法(横×奥×高) 399×416×238mm 403×369×166mm 445×330×135mm
重量 9.0kg 6.5kg 4.8kg
本体カラー ホワイト&ブラック ブラック ブラック

操作パネルと液晶ディスプレイを見ていこう。とはいえ、単機能プリンターと言うことで、液晶ディスプレイを搭載しない機種も多い中、GX5030G5030は小さいながら液晶ディスプレイを搭載する。2行の文字表示でモノクロ、バックライト無しという最低限のものだが、無線LANの設定や、各種本体の設定、エラー内容の確認などができて便利だ。いずれも本体前面に取り付けられているが、GX5030持ち上げて角度調整が可能なので、低い位置に置いても高い位置に置いても操作できるようになっている。
 インターフェースは3機種で機能が異なっている。USB2.0接続は3機種とも対応だ。G1310はUSB接続のみとなる。対してGX5030G5030はネットワーク接続に対応している。最近では家に2台以上のパソコンがあり、無線LAN(Wi-Fi)ルーターで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。その場合、プリンターを無線LANルーターに接続しておけば、家庭内のどのパソコンでもプリント可能となり非常に便利だろう。またスマートフォンやタブレットからの印刷も可能となる。またWi-Fiダイレクト(ダイレクト接続)にも対応しているため、無線LANルーターの無い環境でも、スマートフォンやタブレットと直接Wi-Fi接続が可能となっている点も便利だ。ネットワーク接続に関しては、両機種とも無線LANに加えて有線LAN接続にも対応する。無線LANの電波が届きにくい、壁の中などにLAN配線がある、手軽に接続したいなどの理由で有線LAN接続を使用する事も可能だ。一方の無線LANだが、G5030はIEEE802.11n/g/bの規格に対応しているが、これは2.4GHz帯の電波を利用する。2.4GHz帯はBluetoothや電話の子機と同じ帯域で、電子レンジなどの影響も受けやすい。GX5030はIEEE802.11n/a/g/bに対応しており、IEEE802.11n/a使用時は、5GHz帯の電波を使用できる。5GHz帯は無線LAN専用といえるので、通信が安定するというメリットがある。
 対応OSにも違いがある。3機種ともWindowsは11/10/8.1/7 SP1のみ対応だ。Windows VistaやXPには対応しない他、Windows 8にも対応しない(8.1には対応する)点は注意が必要だ。MacOSに関しては、GX5030が10.13.6以降、G5030は10.10.15以降に対応するが、G1310は非対応となる。Macユーザーは気をつけたい。GX5030G5030に関しても、ドライバーはキヤノンからは提供されず、AirPrintを使用する方法となっているため、一部の印刷設定、本体の動作設定ができない点でWindowsで利用する場合に比べて不便になっている。
 本体サイズはGX5030が399×416×238mm、G5030が403×369×166mm、G1310が445×330×135mmとなる。GX5030は横幅はかろうじて最も小さいが、奥行きと高さはかなり大きい。高さは背面給紙部だけが飛び出てる分も含むため、実際にはもう少し低いが、それでもG5030G1310より大きい。G5030G1310では、横幅はG5030が、奥行きと高さはG1310が小さい。ただ、G1310は必ず後方にスペースが必要だが、G5030は前面給紙カセットのみ使用するなら、後方にスペースは不要だ。設置面積ではG5030の方がやや有利とも言える。
 ちなみに、本体の耐久枚数に関してはGX5030が15万枚、G5030が6万枚と公表されているが、G1310は非公開だ。家庭用のプリンターが1万〜1万5000枚と言われているため、GX5030G5030はかなり高耐久に作られている。印刷枚数が多いプリンターだけに安心感がある。一方G1310は非公開ではあるが、他の2機種より耐久枚数は劣る可能性が高い。



 こうしてみると、3機種それぞれの機能差は大きい事が分かる。またGX5030だけ方向性が異なる製品だ。まず、文書印刷専用で印刷枚数が多い、もしくは複数人で使う場合はGX5030がオススメだ。印刷速度が速いだけでなく、ファーストプリント速度も速いため、様々な用途でストレスなく使えるだろう。自動両面印刷も高速で、リモートプリント機能や無線LAN機能、耐久性なども他の2機種より優れているため、印刷枚数が多くても安心だ。文書の印刷画質も他の2機種より優れている。一方で写真や年賀状印刷は苦手なので、あくまで文書印刷専用となる。では、もう少し多用途に使いたい、またはここまで高性能で無くて良いので、安く購入したいならG5030G1310となる。染料インクを搭載しているため、本格的に使うほど高画質ではないが、写真も年賀状もそれなりにプリントが可能で、用紙の制限も少ない。本体価格が安いだけで無く、印刷コストが安いのもメリットだし、本体サイズもGX5030より小さい。ではG5030G1310のどちらがオススメかというと、結論から言うと一般的にはG5030がオススメだ。1万1000円の差があるとは言え、機能的にはそれ以上の差があるように思える。G1310は非常にシンプルで、USB接続のみでスマートフォンにも対応せず、自動両面印刷機能も無く、背面給紙のみで、液晶も搭載しない。対してG5030は無線LANや有線LAN接続に対応するため、スマートフォンやタブレットからのプリントが行える。印刷速度もG1310より高速で、自動両面印刷も行える。MacOSにも対応する。なによりインクの補充の利便性に大きな差があるため、G5030を選んだ方が安心と言える。一方で、画質面での大きな差は無いため、USB接続でパソコンから片面プリントができれば良く、印刷速度もこだわらず、それよりも少しでも安い方が良いという場合のみG1310でも良いだろう。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
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GX5030
G5030
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