プリンター徹底比較
2022年春時点のプリンター
〜エプソン・キャノン・ブラザーのプリンターを比較〜
(2022年9月9日公開)

プリンター比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンター比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。


キャノンのA4複合機(ファクス無し・カートリッジ方式)
 
 キャノンのファクス機能を搭載しないA4複合機には、カートリッジ方式とギガタンク方式があるが、今回はカートリッジ方式のラインナップを説明する。PIXUSシリーズに属する製品となる。メーカーはキャノンで決めているが、どのくらいの価格の製品が良いのか悩んでいる人には参考になるだろう。もちろん最上位モデルが最も高性能で、様々な使い方に対応できるとも言えるが、不要な機能のために高い機種を買うのも勿体ないだろう。またPIXUS XKシリーズとPIXUS TSシリーズという違いもある。それぞれ、どのような違いがあるのか細かく見ていこう。

プリント(画質・速度・コスト)
型番 PIXUS XK500 PIXUS XK100 PIXUS TS8530 PIXUS TS7530 PIXUS TS5430 PIXUS TS3530
製品画像






実売価格(メーカーWeb/税込) 51,150円 40,150円 37,950円 21,450円 13,750円 8,800円
インク 色数 6色 5色 6色 5色 4色 4色
インク構成 顔料ブラック
染料ブラック
フォトブルー
シアン
マゼンタ
イエロー
顔料ブラック
染料ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
顔料ブラック
染料ブラック
グレー
シアン
マゼンタ
イエロー
顔料ブラック
染料ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
顔料ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
顔料ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成 各色独立 各色独立 各色独立 各色独立 黒独立、カラー3色一体 黒独立、カラー3色一体
顔料/染料系 染料(黒+カラー)/顔料(黒)
(ChromaLife100)
染料(黒+カラー)/顔料(黒)
(ChromaLife100)
染料(黒+カラー)/顔料(黒)
(ChromaLife100)
染料(黒+カラー)/顔料(黒)
(ChromaLife100)
染料(カラー)/顔料(黒)
(ChromaLife100)
染料(カラー)/顔料(黒)
インク型番 N20/N21 N20/N21 330XL/331XL(大容量)
330/331(標準容量)
300(顔料)/301(染料) 360XL/361XL(大容量)
360/361(標準容量)
365XL/366XL(大容量)
365/366(標準容量)
ノズル数 6656ノズル 4096ノズル 6656ノズル 4096ノズル 1792ノズル 1280ノズル
C/M:各1536ノズル
PB/Y/染料BK/顔料BK:各1024ノズル
C/M/顔料BK:各1024ノズル
Y/染料BK:各512ノズル
C/M:各1536ノズル
GY/Y/染料BK/顔料BK:各1024ノズル
C/M/顔料BK:各1024ノズル
Y/染料BK:各512ノズル
カラー:各384ノズル
黒:640ノズル
各色320ノズル
最小インクドロップサイズ N/A N/A N/A N/A N/A N/A
最大解像度 4800×1200dpi 4800×1200dpi 4800×1200dpi 4800×1200dpi 4800×1200dpi 4800×1200dpi
高画質化機能
印刷速度 L判縁なし写真(メーカー公称) 10秒 16秒 16秒 16秒 36秒 52秒
A4普通紙カラー(ISO基準) 10.0ipm 10.0ipm 10.0ipm 10.0ipm 6.8ipm 4.0ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準) 15.0ipm 15.0ipm 15.0ipm 15.0ipm 13.0ipm 7.7ipm
印刷コスト
(税込)
L判縁なし写真 10.8円 9.8円 大容量:22.1円
標準容量:24.8円
31.8円 大容量:27.8円
標準:32.5円
大容量:27.0円
標準:33.4円
A4カラー文書 4.0円 3.9円 大容量:12.2円
標準容量:12.4円
18.8円 大容量:18.5円
標準:24.9円
大容量:17.6円
標準24.5円
A4モノクロ文書 1.6円 1.5円 大容量:4.3円
標準容量:4.2円
5.5円 N/A N/A
インク1本の印刷枚数
(カラー文書)
ブラック(顔料) 600ページ 600ページ 大容量:600ページ
標準:400ページ
300ページ 大容量:400ページ
標準:180ページ
大容量:400ページ
標準:180ページ
ブラック(染料) 4,590ページ 6,546ページ 大容量:4,530ページ
標準:2,270ページ
1,990ページ
カラー 802ページ 802ページ 大容量:802ページ
標準:502ページ
350ページ 大容量:300ページ
標準:180ページ
大容量:300ページ
標準:180ページ
インク1本の価格
(税込)
ブラック(顔料) 825円 825円 大容量:2,200円
標準容量:1,430円
1,430円 大容量:3,212円
標準容量:2,112円
大容量:3,080円
標準容量:2,090円
ブラック(染料) 627円 627円 大容量:2,090円
標準容量:1,320円
1,540円
カラー 627円 627円 大容量:2,090円
標準容量:1,320円
1,540円 大容量:3,135円
標準容量:2,365円
大容量:2,970円
標準容量:2,310円
同梱インク セットアップ用インクカートリッジ各色1本 セットアップ用インクカートリッジ各色1本 セットアップ用インクカートリッジ各色1本 セットアップ用インクカートリッジ各色1本 セットアップ用インクカートリッジ各色1本 セットアップ用インクカートリッジ各色1本

 まずはラインナップを見てみよう。全部で6機種となるが、価格は51,150円から8.800円までと幅広い。かといって、6機種全てが完全な上位・下位という関係ではないため、価格の安い機種に搭載された機能が高い機種には搭載されていない事がある。ラインナップを見ると、PIXUS XKシリーズが2機種、PIXUS TSシリーズが4機種と分かれている。価格だけを見ると、上位機種がPIXUS XKシリーズ、下位機種がPIXUS TSシリーズに見えるが、そう簡単ではない。PIXUS XKシリーズは、インクカートリッジの価格を下げる事で、印刷コストを下げたシリーズで、その中で上位機種のPIXUS XK500と、下位機種のPIXUS XK100がある。そして、従来のシリーズとしてPIXUS TSシリーズがあり、上位からPIXUS TS8530PIXUS TS7530PIXUS TS5430PIXUS TS3530となる。PIXUS XKシリーズの下位機種であるPIXUS XK500は5色インク構成で、PIXUS TS8530の最上位機種であるPIXUS TS8530は6色インク構成であるなど、本体価格だけで並べると上記の表の順番だが、機能順に並べるとPIXUS XK500PIXUS TS8530は逆になる。ただ、印刷コストと本体価格は反比例の傾向があるため、PIXUS XKシリーズは本体価格が高めになる傾向がある。そのため、機能面で劣るPIXUS XK100の方が価格が高くなる事になる。
 それでは、インク構成から見ていこう。PIXUS XKシリーズとPIXUS TSシリーズそれぞれの最上位機種であるPIXUS XK500PIXUS TS8530が6色インク構成、その1つ下のPIXUS XK100PIXUS TS7530が5色インク構成、PIXUS TS5430PIXUS TS3530は4色インク構成だ。ちなみに、インクには顔料インクと染料インクがあるが、キャノンの家庭向けの機種の場合、顔料インクのブラックを必ず搭載し、残りを染料インクとするのが昔からのパターンとなっている。つまりPIXUS XK500PIXUS TS8530は顔料ブラック+染料5色、PIXUS XK100PIXUS TS7530は顔料ブラック+染料4色、PIXUS TS5430PIXUS TS3530は顔料ブラック+染料3色となる。
 ここで、染料インクと顔料インクの話が出てきたので簡単に説明しておこう。染料インクは様々な用紙に対応でき、写真用紙等に印刷した際に発色が良く、用紙本来の光沢感が出るため、写真印刷に向いている。一方で普通紙に印刷すると紙にしみこんで広がってしまうため、メリハリが弱くなる。その点で顔料インクならメリハリのある印刷が行え、小さな文字や中抜き文字も潰れずに印刷が可能なほか、耐水性も高いため濡れた手で触ったりマーカーを引いても滲まない。とは言え全色を顔料インクとすると写真用紙などに印刷した際に発色が悪いほか、用紙の光沢感が薄れ半光沢のようになってしまう上に、光沢した年賀状や光沢フィルムなど一部に顔料インク非対応の用紙もある。つまりは染料インクと顔料インクは、用紙によって向き不向きがあるわけである。
 これを元に、基本となるプリントの基本となる画質と速度、印刷コストから見ていこう。まずは写真の印刷画質である。写真と言っても、印刷内容が写真かどうかではなく、写真用紙に印刷するという事だ。それ以外にも光沢紙やファイン紙、インクジェットハガキの通信面に印刷する場合もこちらとなる。これらには染料インクを使用するため、染料インクの数が多い方が当然綺麗だ。画質が最も高いのは染料インクを5色搭載するPIXUS XK500PIXUS TS8530だ。基本の4色は、ブラック、シアン、マゼンダ、イエローとなるが、PIXUS XK500PIXUS TS8530はもう1色搭載できることになる。しかし、これら2機種で搭載する色が異なる。PIXUS XK500はフォトブルーインクを搭載する。フォトブルーインクは薄い青色のインクで、本来、シアンとマゼンダを組み合わせて表現する青色の表現力が高くなる他、薄い青から白色部分にかけての粒状感が低減される。青空や花の色などがより綺麗に見える。一方、PIXUS TS8530はグレーインクを搭載する。暗い色の表現にブラックを使うのでは無く、グレーをベースにする事で、ドットが目立ちにくくなりザラザラした感じ(粒状感)を抑えられる。どちらも、より高画質になる事を目指したわけだが、グレーとフォトブルーではどちらが良いかというと一概には言えない。上位機種のPIXUS XK500がフォトブルーインクなので、キャノンとしてはフォトブルーの方が高画質という考えなのかもしれないが、どちらにも得手不得手がある。グレーをベースにすることでも粒状感は低減できるが、無彩色をベースにするよりも彩色のフォトブルーを使用した方が、色鮮やかに表現できる。従来よりもブルー系の幅広い色表現が可能になる。しかしグレーインクにもメリットがあり、ブルー以外の色でも粒状感を低減できるほか、モノクロプリントはもちろん、カラープリントでもグレー色の部分での色転びが無くなる。通常グレーの部分はカラーインクを重ねて作り出すが、どうしても青白くなるなど綺麗なグレーにならない。グレーインクを搭載することで綺麗なグレーになり、写真全体のバランスが良くなる。ただ、印刷した物を比べると、若干の鮮やかさや、粒状感を感じる箇所に違いがあるとはいえ、どちらも非常に高画質に印刷できるという点で変わりは無く、画質差を気にして機種を選ぶほどではなさそうだ。
 次に画質が良いのは染料インクを4色搭載するPIXUS XK100PIXUS TS7530となる。基本のブラック、シアン、マゼンダ、イエローのみとなるため、PIXUS XK500PIXUS TS8530と比べるとワンランク落ちるイメージだが、実際の印刷画質は悪くはない。確かにブルーやその他の部分の粒状感が多少感じられると言えるが、比較しなければ差は分からない程度で、一般的なスナップ写真程度であれば十分高画質にプリントできる。
 残るPIXUS TS5430PIXUS TS3530は、4色インク構成から顔料ブラックを除くと、染料インクは3色しか無い。シアン、マゼンダ、イエローのみで、染料ブラックを搭載していない事になる。黒色はカラー3色を重ねて表現するが、完全な黒にはならず濃い茶色や濃いグレーにしかならない。全体にコントラストが低く、色が浅く感じられる他、夜景や影部分の表現など、暗い色の中の表現力で劣る。全く見られないほどの画質では無いが、染料インク5色と4色の差と比べると、4色と3色の差は大きい。写真や年賀状印刷を考えている人は、避けた方が無難だ。
 ちなみに、印刷解像度は全機種が4800×1200dpiで同じだ。ただ、これは画質には大きくは影響しない。それよりも影響の大きい最小インクドロップサイズ(ドットの大きさ)に関しては、いずれも非公開となっている。2pl前後ではないかと予測されるが、予測の域を出ないため、この部分での画質差はハッキリしない。ただし、写真の耐保存性については差がある。PIXUS TS3530以外の5機種は「ChromaLife100」という名称が付けられており、アルバム保存で100年間色あせないとされている。一方のPIXUS TS3530はCHromaLife 100には準拠しないため、耐保存性では劣る可能性が高い。ちなみにプロ向けの機種や、他メーカーでは公表されている耐光性と耐オゾン性に関しては、ChromaLife100対応機種でも非公開であるため、飾る場合などの色あせについては6機種で差があるかは不明だ。
 一方、文書の印刷画質を見てみよう。これも印刷内容が文書かという事では無く、普通紙に印刷する場合となる。普通紙への印刷の他、コピーなどもこちらになる。文書印刷は顔料インクの方が得意だ。6機種とも顔料ブラックを搭載し、残りが染料インクである点は同等だ。顔料ブラックを搭載しているため、ブラックインクを使用する部分に限ってだが、普通紙に高画質印刷が行える。黒と言っても、完全な黒ではないグレーの部分には染料のカラーインクを混ぜて作る場合があるし、背景色があるなどカラーの中に混ざっている場合も染料ブラックや染料カラーが使われる場合もあるなど、必ずしも顔料インクの恩恵を受けられるわけではないが、コピーや文書印刷では全体的に引き締まった印象となるのは確かだ。PIXUS TS5430とPIXUS T3530でも、普通紙では顔料ブラックが使えるため4色印刷が可能となり、画質は悪くない。逆にPIXUS XK100PIXUS TS7530でも、基本は顔料ブラックと染料のカラーだけとなり、前述のようにどうしても染料ブラックを使わなければいけない箇所で差が出る位だ。ほとんど差は無いと言える。PIXUS XK500PIXUS TS8530でも、普通紙印刷では写真用紙などと比べると発色は劣り、粒状感も感じにくいことから、やフォトブルーインクやグレーインクの恩恵は大きくない。比べれば若干違いはあるかもしれないが、写真印刷ほどのハッキリした差ではないだろう。文書印刷なら、4色インクのPIXUS TS5430PIXUS TS3530でも十分だ。結局、画質面では、普通紙印刷では大差が無いため、写真や年賀状を印刷するか、そしてどの程度画質にこだわるかが鍵となる。
 次に印刷速度を見てみよう。まずは写真の印刷速度だ。PIXUS XK500が最も高速で10秒、続いてPIXUS XK100PIXUS TS8530PIXUS TS7530が16秒となる。ここまでは十分高速で、ストレスなく写真印刷が行える。さすがに写真印刷に適した画質の機種と言える。それに対してPIXUS TS5430は36秒で倍以上、PIXUS TS3530は52秒で3倍以上の時間がかかる。画質だけで無く、印刷速度面でも我慢が必要だ。一方文書の印刷速度はPIXUS XK500PIXUS XK100PIXUS TS8530PIXUS TS7530の上位4機種が同等で、A4カラー文書が10ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、モノクロが15ipmである。家庭向けの機種としてはかなり高速な部類に入る。一方、PIXUS TS5430はカラーが6.8ipm、モノクロが13.0ipmとやはり劣ってしまう。とはいえ、カラーこそ68%の速度だが、モノクロは87%と大きな差は無い。カラーも、写真印刷では半分以下の速度だった事を考えると高速だ。よほど印刷速度を重視するので無ければ十分な速度と言える。PIXUS TS3530はカラーが4.0ipm、モノクロが7.7ipmとさすがに遅いが、それでも上位機種のカラーが40%、モノクロが51%となり、写真印刷の31%と比べるとマシな速度だ。安価な機種ほどノズル数が少ないため、印刷速度が遅くなるのは仕方が無い事だが、上位機種では写真も文書も高速に、下位機種では画質的にも向いている文書印刷の速度なら比較的実用的な範囲となっており、それぞれの機種に合った印刷速度と言えるだろう。
 次に印刷コストを見てみよう。その前にインクカートリッジについて説明しておきたい。上位4機種のインクカートリッジは各色独立となっており、無くなった色だけ交換できる。一方下位2機種のインクカートリッジは、ブラックインクは独立しているが、カラー3色は一体型のカートリッジとなっている。つまり1色でも無くなると交換しなくてはならず、印刷コスト面では不利とされている。そのあたりがどう影響するかが注目ポイントだ。では各色独立の上位4機種は同じインクカートリッジが使えるかというと、そうでも無い。PIXUS XK500PIXUS XK100はN20番(顔料ブラック)/N21番(染料ブラック+カラー)のインクカートリッジとなる。一方、PIXUS TS8530は330番/331番のインクカートリッジ、PIXUS TS7530は300番/301番のインクカートリッジとなる。またカラーが一体型カートリッジという点で同じ下位2機種も、PIXUS TS5430は360番/361番、PIXUS TS3530は365番/366番インクを使用する。ちなみに番号が大きい方が優れてたり、新しかったりという事は無い。このように使用するインクカートリッジが異なるのは、下位モデルほど印刷コストが高く設定されているためだ。つまり下位モデルは別のインクカートリッジとする事で、印刷コストに差を付けているわけである。ただ、PIXUS TS5430PIXUS TS3530は、前述のようにChromaLife100の準拠の違いのためと思われる。また、PIXUS TS8530PIXUS TS5430PIXUS TS3530には、型番の後ろに「XL」の付く大容量と、付かない標準容量の2サイズが用意されている。
 まずL判写真の印刷コストである。同じインクカートリッジを使用するPIXUS XK500は10.8円、PIXUS XK100は9.8円となる。インクの色数の違いにより差があるが、印刷コストはかなり安めだ。最近ではボトルからインクを補充するギガタンク(キャノン)やエコタンク(エプソン)方式が、低印刷コストを売りにしており、これには及ばないが、インクカートリッジ方式としてはかなり安い。続いてPIXUS TS8530は、22.1円と一気に高くなる。しかも写真の印刷コストには、写真用紙代(約4.7円)が含まれているので、インク代だけで見ると、PXIUS XK500が6.1円、PIXUS XK100が5.1円、PIXUS TS8530は17.4円となり、同じ6色のPIXUS XK500と比べても2.85倍となる。これは、インクカートリッジの価格と、インク1セットでの印刷可能枚数を見ると分かりやすい。インク1セットで、A4カラー文書を印刷した場合、PIXUS XK500PIXUS XK100は、顔料ブラックは600ページまで、染料カラーは各802ページまで印刷が可能だ。これで、顔料ブラックは825円、染料ブラックとカラーは各627円となる。一方、PIXUS TS8530は、同じ印刷可能枚数だが、顔料ブラックは2,200円、染料ブラックとカラーが各2,090円となり、顔料ブラックは2.67倍、染料ブラックとカラーは3.33倍の価格設定で、これが印刷コストに影響する。ただ、これでもインクジェットプリンター全体で見ると平均的な印刷コストだ。またこれは大容量カートリッジを使用した場合だが、大容量は6色買うと12,650円と高すぎる上に、6色セットも無いなど一般的では無い。一般的には6色セットが販売されている、標準容量カートリッジを使用する事が多いようだ。この場合は顔料ブラックが400ページ、染料カラーが各502ページと少なくなるが、価格は顔料ブラックが1,430円、染料ブラックとカラーが1,320円と購入しやすい価格となる。この場合の印刷コストは24.8円(インク代を除くと20.1円)でやや高くなる。
 PIXUS TS7530の印刷コストは31.8円と、PIXUS TS8530の標準容量使用時と比べてもさらに7円高くなる。顔料ブラックが1,430円とPIXUS TS8530と同価格、染料ブラックとカラーは1,540円とやや高いにもかかわらず、印刷可能枚数は顔料ブラックが300ページ、染料カラーが350ページと少ないためだ。また、印刷可能枚数がさらに少なくてもインクカートリッジの価格が安いのであれば、印刷枚数が少なく使い切れない人向けに意味があるが、インクカートリッジの価格はむしろ少し高く設定されていることから、単純に上位機種との差別化と言える。
 カラー一体型カートリッジの機種はどうだろうか。PIXUS TS5430は27.8円、PIXUS TS3530は27.0円となり、PIUXS TS7530よりも印刷コストは安い。確かにPIXUS XKシリーズやPIXUS TS8530よりは高いが、一体型カートリッジは印刷コストが高めになるというほどではない。これには2つ理由があり、1つはいずれも大容量カートリッジを使用しているためで、標準容量カートリッジの場合PIXUS TS5430は32.5円、PIXUS TS3530は33.4円と、PIXUS TS7530より高くなる。また、写真印刷では各色が比較的均等に使われるため、一体型カートリッジのデメリットが出にくいというのも理由だ。ちなみに印刷可能枚数は、両機種とも、大容量使用時は顔料ブラックが400ページ、染料カラーが300ページ、標準容量使用時はどちらも180ページとなる。価格は、PIXUS TS5430は大容量で顔料ブラックが3,212円、染料カラーが3,135円で、2つで6,347円となる。これが標準容量だと、2,112円と2,365円になり、2つで4,477円とかなり安くなる。PIXUS TS3530も同様で、大容量は3,080円と2,970円で計6,050円、標準容量は2,090円と2,310円で、計4,400円となる。両機種とも、標準容量は他機種と比べると印刷可能枚数がかなり少なめだが、逆に言うと、印刷が年賀状と月に数枚という人には使い切れる量を安く手に入れられると言える。
 つづいて、文書の印刷コストを見てみよう。PIXUS XK500は、A4カラー文書が4.0円、A4モノクロ文書が1.6円とかなり安い。PIXUS XK100はそれぞれ3.9円と1.5円とさらに0.1円ずつ安いが、写真印刷ほど差が出ていない。PIXUS TS8530は標準容量使用時でそれぞれ12.4円と4.2円となる。いずれも3倍程度の印刷コストだ。ちなみに、大容量を使用しても12.2円と4.3円でほとんど変わらないどころか、モノクロ文書はわずかながら高くなる。インクの交換回数を減らせるメリットはあるが、印刷コスト面でのメリットはあまり無さそうだ。PIXUS TS7530はそれぞれ18.8円と5.5円で、PIXUS TS8530と比べてもカラーは1.52倍、モノクロは1.28倍とやはり高くなる。そして、カラーが一体型カートリッジのPIXUS TS5430はカラー文書が18.5円、PIXUS TS3530は17.6円と、大容量を使用してもPIXUS TS7530に近くなる。標準容量だと、24.9円と24.5円で、さらに高くなる。文書印刷では使用する色が偏りやすく、一体型カートリッジは不利といえる。文書印刷メインの機種なので、実際には写真印刷より文書の印刷コストが重要と言え、やはりPIXUS TS5430PIXUS TS3530の印刷コストはかなり高いと考えた方が良さそうだ。


プリント(給紙・排紙関連)
型番 PIXUS XK500 PIXUS XK100 PIXUS TS8530 PIXUS TS7530 PIXUS TS5430 PIXUS TS3530
製品画像
対応用紙サイズ 定型サイズ 名刺〜A4 名刺〜A4 名刺〜A4 名刺〜A4 名刺〜A4 L判〜A4
(A4のフチなし印刷非対応)
長尺用紙 長さ676mmまで 長さ676mmまで 長さ676mmまで 長さ676mmまで 長さ676mmまで 長さ676mmまで
給紙方向
(セット可能枚数(普通紙/ハガキ/写真用紙))
背面

(100枚/40枚/20枚)

(100枚/40枚/20枚)

(100枚/40枚/20枚)

(100枚/40枚/20枚)

(100枚/40枚/20枚)

(60枚/20枚/20枚)
前面 【カセット】
普通紙のみ
(100枚/−/−)
【カセット】
普通紙のみ
(100枚/−/−)
【カセット】
普通紙のみ
(100枚/−/−)
【カセット】
普通紙のみ
(100枚/−/−)
【カセット】
普通紙のみ
(100枚/−/−)
その他
排紙トレイ自動伸縮
用紙種類・サイズ登録 ○(給紙口カバー閉じ(背面)連動) ○(給紙口カバー閉じ(背面)連動) ○(給紙口カバー閉じ(背面)連動) ○(給紙口カバー閉じ(背面)連動) ○(給紙口カバー閉じ(背面)連動) ○(用紙セット連動・サイズのみ)
用紙幅チェック機能 ○(用紙セット時・用紙サイズ表示) ○(用紙セット時・用紙サイズ表示) ○(用紙セット時・用紙サイズ表示) ○(用紙セット時・用紙サイズ表示) ○(用紙セット時・用紙サイズ表示)

 続いて、給紙・排紙関連の機能を見てみよう。対応用紙サイズは、最大はA4で共通だが、最小はPIXUS TS3530はL判(89×127mm)、それ以外はより小さな名刺サイズ(55×91mm)、実際には55×89mmまで対応している。名刺サイズに直接印刷が出来ると、数枚の印刷やフチなしデザインも行いやすい。一方長尺用紙に関しては、6機種とも676mmまでで、それほど長尺に印刷できるわけでは無い。フチなし印刷も6機種とも対応だが、その用紙も異なっている。

フチなし印刷対応表
型番 PIXUS
XK500
PIXUS
XK100
PIXUS
TS8530
PIXUS
TS7530
PIXUS
TS5430
PIXUS
TS3530
A4
B5
レター
はがき
L判
2L判
KGサイズ
7"×10"
六切
名刺
127mmスクエア
89mmスクエア

 これを見ると、PIXUS TS7530以上は同等で、A4やB5、はがきサイズ、各種写真サイズに対応する。PIXUS TS5430はB5と7"×10"には非対応となる。PIXUS TS3530となると大きな用紙には一切対応できず、L判、2L判、KGサイズ、127mmスクエアなどの写真サイズとはがきのみとなる。どのようなサイズにフチなし印刷をしたいかは重要だ。
 給紙に関しては、PIXUS TS3530以外の5機種は共通で、前面給紙カセット+背面給紙トレイとなる。前面給紙は普通紙のみ対応で、最大100枚まで給紙が可能となる。一方の背面給紙は普通紙以外も対応可能で、普通紙なら100枚、ハガキなら40枚、写真用紙なら20枚までセットできる。背面給紙は横幅だけ合わせて用紙を立てるだけなので簡単にセットできる反面、ホコリが積もってしまい、そのまま使用すると故障の原因となるため、使わないときは毎回取り除くのが理想だ。また、トレイが後方に傾くため、後方と上方にスペースが必要となる。前面給紙は後方にスペースが不要になるだけでなく、カセット式なので、用紙をセットしたままでも問題が無い。つまり、よく使う普通紙を前面給紙カセットにセットしておき、それ以外の用紙を使う時だけ背面からというパターンとなるだろう。普通紙だけならば、本体の背面を壁にくっつけても問題ない。また印刷枚数が多い場合は、両方に普通紙をセットし、連続で使用することも可能だ。100枚+100枚で200枚まで印刷できる事になる。一方PIXUS TS3530は、下位機種だけにシンプルだ。背面トレイのみで、前面給紙はできない。その背面給紙も、普通紙なら60枚、ハガキなら20枚、写真用紙なら20枚と枚数が少なくなる。特にハガキは半分となるため、年賀状など枚数が多い場合に入れ替えの手間がかかることになる。
 PIXUS TS7530以上の4機種に搭載された便利な機能が、排紙トレイの自動伸縮機能だ。印刷が実行されると自動的に排紙トレイが伸張する機能で、後述の自動電源オン機能と組み合わせると非常に便利だ。逆に電源を切るときは自動的に排紙トレイが収納される。
 6機種ともセットした用紙を登録する機能が搭載されている。まず、少し特殊なPIXUS TS3530以外を説明しよう。液晶ディスプレイでメニューから登録も可能だが、背面給紙の場合は給紙口カバーを閉じると自動的に登録画面が表示される(されないようにもできる)。ここで、用紙サイズと用紙種類を登録することになる。前面給紙の場合は、普通紙のみである事から、センサーで用紙サイズを自動認識し自動的に登録される。そして、この登録内容と、印刷時の用紙設定が異なっている場合、メッセージが表示される仕組みだ。間違った用紙にプリントしてしまって用紙とインクを無駄にしないための工夫だ。ではPIXUS TS3530はというと、用紙をセットしたあと、用紙選択ボタンを押して、液晶画面で設定する。この液晶は、表示内容が固定内容の表示・非表示の切り替えのみなので(後述)簡単な設定しか行えない。用紙選択ボタンを押すと、A4、L判、ハガキなど、用紙サイズが順番に表示されていく。用紙サイズしか選択肢がないので、A4、B5、A5などを選択した場合は普通紙、L判、2L判、KGサイズを選んだ場合は写真用紙、ハガキサイズを選んだ場合はインクジェットハガキに用紙種類は固定される。このように簡易的なので、適切な用紙が選択できない場合もあるだろう。

プリント(付加機能)
型番 PIXUS XK500 PIXUS XK100 PIXUS TS8530 PIXUS TS7530 PIXUS TS5430 PIXUS TS3530
製品画像
自動両面印刷
(インクジェット光沢郵便ハガキ非対応)
○(普通紙のみ) ○(普通紙のみ)
自動両面
印刷速度
A4カラー文書 N/A N/A N/A N/A N/A
A4モノクロ文書 N/A N/A N/A N/A N/A
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷 ○(ネイル印刷対応) ○(ネイル印刷対応) ○(ネイル印刷対応)
写真補正機能 ○(自動写真補正) ○(自動写真補正) ○(自動写真補正) ○(自動写真補正) ○(自動写真補正) ○(自動写真補正)
特定インク切れ時印刷 −(常時片方のカートリッジで印刷可能/Windowsのみ) −(常時片方のカートリッジで印刷可能/Windowsのみ)
自動電源オン/オフ ○/○ ○/○ ○/○ ○/○ ○/○ ○/○
廃インクタンク交換
フチなし吸収材エラー時の対応機能

 その他、プリントの付加機能を見てみよう。自動両面印刷機能はPIXUS TS3530を除く5機種が搭載している。しかし、対応用紙には差がある。普通紙は5機種とも対応だが、ハガキの自動両面印刷に対応しているのはPIXUS XK500PIXUS XK100PIXUS TS8530のみだ。ハガキに自動両面印刷を行いたい場合は注意が必要だ。また、PIXUS XK100はハガキの自動両面印刷は可能だが、インクジェット光沢郵便ハガキのみ非対応となっている点にも注意が必要だ。
 CD/DVD/Blu-rayのレーベル面に印刷する機能も、PIXUS XK500PIXUS XK100PIXUS TS8530の対応となる。トレイを使用しないときは、前面給紙カセットの裏側に収納できるので無くす心配が無い。またオリジナルのネイルシールを作成できる「ネイルシールプリント」にも対応する。
 写真の色補正機能は6機種とも「自動写真補正」を搭載しており、逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われるため、写真印刷が気楽に行える。
 カラーが一体型カートリッジを採用するPIXUS TS5430PIXUS TS3530の特徴的な機能として、どちらか一方のカートリッジのみを使用する様に設定できる事だ。ただし、Windows上で設定するだけでなく、Windowsからのプリントでしか適用されないため、Macやスマートフォン、本体でのコピー時などは、どちらのカートリッジも使用する。「ブラックのみ」を選ぶと、当然モノクロプリントしかできないが、前述のようにカラーインクを使って中間色を表現できないため、モノクロプリントとはいえブラックのみでは画質が大きく低下する。用紙設定も普通紙か、(インクジェットで無い)ハガキか、ハガキの宛名面以外を設定したり、フチなし印刷を設定すると、自動的にカラーインクを使用する。逆に「カラーのみ」とすればカラープリントも可能だが、カラーを重ねて黒を表現するため、黒のコントラストは弱くなるため、やはり画質は低下する。また、使わない方のカートリッジを外す事はできないのは注意が必要だ。
 自動電源オンと自動電源オフ機能は6機種とも搭載している。自動電源オンは、印刷を実行すると、自動的に電源が入る機能である。無線LAN接続ができるようになり、プリンターから離れた場所のパソコンやスマートフォンから印刷を実行することが増えたが、そういった際にわざわざプリンターの電源を入れに行く手間が省ける。ただし、前述のようにPIXUS TS7530以上の機種は、自動で電源が入ると共に排紙トレイも伸張されるが、PIXUS TS5430PIXUS TS3530は手動で引き出さなくてはならないため、置き場所によっては床に印刷物が散らばってしまう危険性がある。自動電源オンを本格的に使用するなら、PIXUS TS7530以上の方が便利だし、PIXUS TS5430PIXUS TS3530で使用する場合は、排紙トレイを出したままにしておく方が良さそうだ。

スキャン
型番 PIXUS XK500 PIXUS XK100 PIXUS TS8530 PIXUS TS7530 PIXUS TS5430 PIXUS TS3530
製品画像
最大スキャンサイズ A4
(216×297mm)
A4
(216×297mm)
A4
(216×297mm)
A4
(216×297mm)
A4
(216×297mm)
A4
(216×297mm)
読み取り解像度 2400dpi(2400×4800dpi) 2400dpi(2400×4800dpi) 2400dpi(2400×4800dpi) 1200dpi(1200×2400dpi) 1200dpi(1200×2400dpi) 600dpi(600×1200dpi)
センサータイプ CIS CIS CIS CIS CIS CIS
原稿取り忘れアラーム
スキャンデーターのメモリーカード保存

 続いて、スキャナー部を見てみよう。スキャンサイズに関しては最大A4サイズ(216×297mm)で同等だ。読み取り解像度は2400dpi(2400×4800dpi)と1200dpi(1200×2400dpi)の機種がある。もちろん最大の読み取り解像度なので、150dpiや300dpi、600dpiといった解像度でも読み取り可能だ。これを見ると、最大解像度が高いPIXUS TS8530より上の機種が良さそうに思える。しかし、反射原稿(紙などの原稿)にしか対応しないため、1200dpiでも十分すぎる解像度と言える。一般的に文書なら200〜300dpi、写真なら300〜600dpiで、よほど詳細にスキャンする場合でも1200dpiがせいぜいだ。実際写真サイズを2400dpiで取り込むと約8,400×12,000ドットとなり1億画素相当となる事から、ファイルサイズが大きくなりすぎてパソコンでは扱いにくい。読み取り解像度が高く設定できる事にデメリットはないが、ややオーバースペックであり、実用上は6機種に大きな差は無いと言える。ちなみに、いずれもCIS方式で、厚い本の綴じ目近くなど、ガラス面から浮いてしまう原稿ではピントが合わなくなってしまう点は注意が必要だ。PIXUS XK500PIXUS XK100PIXUS TS8530PIXUS TS7530の4機種は原稿を取り忘れた際に警告してくれる機能を搭載しているのは便利だ。

ダイレクト印刷
型番 PIXUS XK500 PIXUS XK100 PIXUS TS8530 PIXUS TS7530 PIXUS TS5430 PIXUS TS3530
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ダイレクトプリント メモリーカード SD SD SD
USBメモリー
赤外線通信
対応ファイル形式 JPEG/TIFF JPEG/TIFF JPEG/TIFF
色補正機能 トリミング
フチなし/フチあり
赤目補正
クリエイティブフィルター(明るく/暗く/モノクロ/セピア/アンティーク調/ビンテージ調/鮮やか/温かく/シネマ調)
トリミング印刷
ふちなし/フチあり
赤目補正
トリミング印刷
フチなし/フチあり
赤目補正
手書き合成 ○(ディスクレーベル対応) ○(ディスクレーベル対応) ○(ディスクレーベル対応)
メモリーカードからUSBメモリー/外付けHDDへバックアップ −/− −/− −/− −/− −/− −/−
PictBridge対応 ○(Wi-Fi) ○(Wi-Fi) ○(Wi-Fi) ○(Wi-Fi) ○(Wi-Fi) ○(Wi-Fi)
各種デザイン用紙印刷 カレンダー印刷
定型フォーム印刷(レポート用紙、原稿用紙/スケジュール用紙、方眼紙、チェックリスト、五線譜、漢字練習帳)
ディスクレーベル印刷
組み込みパターンペーパー
カレンダー印刷
定型フォーム印刷(レポート用紙、原稿用紙/スケジュール用紙、方眼紙、チェックリスト、五線譜、漢字練習帳)
ディスクレーベル印刷
組み込みパターンペーパー
カレンダー印刷
定型フォーム印刷(レポート用紙、原稿用紙/スケジュール用紙、方眼紙、チェックリスト、五線譜、漢字練習帳)
ディスクレーベル印刷
組み込みパターンペーパー

 ダイレクト印刷を見てみよう。SDカードからの写真印刷機能を搭載しているのは、PIXUS XK500PIXUS XK100PIXUS TS8530の3機種だ。いずれもSDカードのみで、USBメモリーなどには対応していない。また、対応形式はJPEG又はTIFFで、PDFファイルなどのプリントは行えない。あくまで写真のダイレクト印刷となる。3機種共通の機能として、フチあり/フチなしの切り替えや、赤目補正の他、写真の一部を拡大して印刷する「トリミング」にも対応している。もちろん撮影日の印刷も可能だ。PIXUS XK500だけの機能として、「クリエイティブフィルター」を搭載している。3機種とも「写真自動補正」機能はダイレクト印刷時にも使用可能なので、手軽に写真印刷が行える。しかしPIXUS XK500はこれに加えて、「明るく」「暗く」「モノクロ」「セピア」「アンティーク調」「ビンテージ調」「鮮やか」「温かく」「シネマ調」の9種類のフィルターがかけられるようになっている。簡易的な機能だが、好みの雰囲気の写真印刷が可能となる。
 その他、写真と手書きのイラストや文字を合成してプリントできる、手書き合成シート(手書きナビシート)は3機種とも対応している。ハガキサイズやL判サイズの用紙だけでなくCD/DVD/Blu-rayレーベルの手書き合成にも対応している。また、写真をはめ込んだ「カレンダー印刷」機能や、レポート用紙、原稿用紙、スケジュール帳、方眼紙、チェックリスト、五線譜、漢字練習帳が印刷できる「定型フォーム印刷」、写真をディスクレーベルに印刷する機能、カラフルなパターンを印刷してスクラップブックの台紙やブックカバーなどに使える「組み込みパターンペーパー」印刷機能を搭載している。クリエイティブフィルター以外の機能は3機種とも同等と言える。
 ちなみに、PictBridgeにも対応しており、デジタルカメラの操作で直接プリントが可能だ。これはPIXUS TS7530PIXUS TS5430PIXUS TS3530も含めて6機種とも対応している。ただ、PictBridgeにはUSB接続方式とWi-Fi接続方式があるが、6機種ともWi-Fi方式にしか対応しない。Wi-Fi方式のPictBridgeに対応したデジタルカメラは非常に限られているため、あまり実用的とは言えないだろう。

スマートフォン/クラウド対応
型番 PIXUS XK500 PIXUS XK100 PIXUS TS8530 PIXUS TS7530 PIXUS TS5430 PIXUS TS3530
製品画像
スマートフォン連携 アプリ メーカー専用 Canon PRINT Inkjet/SELPHY Canon PRINT Inkjet/SELPHY Canon PRINT Inkjet/SELPHY Canon PRINT Inkjet/SELPHY Canon PRINT Inkjet/SELPHY Canon PRINT Inkjet/SELPHY
AirPrint
対応端末 iOS 13.0以降
Android 5.0以降
iOS 13.0以降
Android 5.0以降
iOS 13.0以降
Android 5.0以降
iOS 13.0以降
Android 5.0以降
iOS 13.0以降
Android 5.0以降
iOS 13.0以降
Android 5.0以降
スマートスピーカー対応 ○(Alexa/Googleアシスタント/LINE Clova) ○(Alexa/Googleアシスタント/LINE Clova) ○(Alexa/Googleアシスタント/LINE Clova) ○(Alexa/Googleアシスタント/LINE Clova) ○(Alexa/Googleアシスタント/LINE Clova) ○(Alexa/Googleアシスタント)
Wi-Fiダイレクト接続支援機能 ○(QRコード読み取り(iOS/Android)) ○(QRコード読み取り(iOS/Android)) ○(QRコード読み取り(iOS/Android)) ○(QRコード読み取り(iOS/Android)) ○(QRコード読み取り(iOS/Android))
写真プリント
ドキュメントプリント ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
スキャン ○(PDF/JPEG) ○(PDF/JPEG) ○(PDF/JPEG) ○(PDF/JPEG) ○(PDF/JPEG) ○(PDF/JPEG)
クラウド連携 プリント アプリ経由/本体 ○/○ ○/○ ○/○ ○/− ○/− ○/−
オンラインストレージ ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom)
SNS ○(Facebook・コメント付き可) ○(Facebook・コメント付き可) ○(Facebook・コメント付き可) ○(Facebook・コメント付き可) ○(Facebook・コメント付き可) ○(Facebook・コメント付き可)
写真共有サイト ○(googleフォト/image.canon) ○(googleフォト/image.canon) ○(googleフォト/image.canon) ○(googleフォト/image.canon) ○(googleフォト/image.canon) ○(googleフォト/image.canon)
スキャン アプリ経由/本体 ○/○ ○/○ ○/○ ○/− ○/− ○/−
スキャンしてオンラインストレージにアップロード ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom)
(OneDrive/google classroomはアプリからのみ)
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom)
(OneDrive/google classroomはアプリからのみ)
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom)
(OneDrive/google classroomはアプリからのみ)
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom)
メールしてプリント
LINEからプリント ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint)
リモートプリント ○(ファイルアップロード・Windows 11/10のみ) ○(ファイルアップロード・Windows 11/10のみ) ○(ファイルアップロード・Windows 11/10のみ) ○(ファイルアップロード・Windows 11/10のみ) ○(ファイルアップロード・Windows 11/10のみ)
スキャンしてリモートプリント

 スマートフォンとの連携機能は6機種とも搭載しており、iOSとAndroid端末に対応している。いずれも、専用のアプリ「Canon PRINT Inkjet/SELPHY」を無料でダウンロードすることでプリント又はスキャンが行える。メインで使用すると思われる写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。さらにドキュメント印刷にも対応している。PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もでき便利だ。また、6機種ともスマートフォン上からスキャンを実行し、データーをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。新聞や雑誌、手書きの情報などをスマートフォンに電子化するといった使い方ができるため便利だろう。また、iPhoneやiPadの場合、AirPrintを利用したプリントにも対応している。
 スマートフォンとの接続は、無線LAN(Wi-Fi)で行うが、無線LANルーターを経由する方法と、ダイレクトに接続する「ダイレクト接続」が選べる。無線LANルーターを経由する方が、機能面でも制限が無く、印刷する度にプリンターと接続と切断を繰り返すダイレクト接続と比べると便利なので、こちらを利用するのがお勧めだが、無線LANルーターが無い環境で使用する場合や、一時的に同じネットワークに入っていない人がプリンターを使いたい場合などにダイレクト接続は便利だ。ダイレクト印刷の接続設定は手動でもそれほど難しくは無いが、PIXUS TS3530を除く5機種はQRコードを利用して簡単に接続出来る機能が提供される。iOSの場合は標準カメラアプリで、Androidの場合はWi-Fi設定メニューから、本体の液晶に表示されるQRコードを読み込むだけで接続が完了する。セキュリティーキーなどの入力は一切必要が無いため非常に簡単だ。ただし、iOSは11.0以降と比較的古いバージョンから対応しているが、Androidは10.0以降と比較的新しいバージョンにしか対応しない。使用しているスマートフォンのOSのバージョンには注意が必要だ。
 クラウドとの連携機能も全機種が搭載している。プリントの場合、各種オンラインストレージにアクセスしてファイルを印刷する事ができる。Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/google classroomに対応する他、Facebookの写真を印刷する事ができ、その際コメント付きでも印刷が可能だ。ただ、機種によってアクセス方法が異なる。PIXUS XK500PIXUS XK100PIXUS TS8530は、アプリ「Canon PRINT Inkjet/SELPHY」上からのクラウドにアクセスする他、プリンター本体だけでもアクセスが可能だ。実際の操作性はスマートフォンからの方が上だが、本体だけで手軽にアクセスできる方法と、操作性が良いアプリ上で行う方法が選べるという点では非常に便利だ。一方PIXUS TS7530PIXUS TS5430PIXUS TS3530は、アプリ上からしかアクセスできない。一方、スキャンの場合、スキャンしてオンラインストレージへアップロードできる。こちらも同じく上位3機種はアプリ経由と、本体だけの両方でアップロードが可能だ(ただしgoogle classroomはアプリ上からのみ)。下位3機種はアプリ経由のみとなる。このように、本体からクラウドにアクセスしたいという場合は上位機種を選ぶ必要がある。
 その他、PIXUS TS3530を除く5機種はリモートプリントの機能も搭載している。LINE上でプリンターを友達登録し、トーク画面から写真や文書を送信すると印刷される「PIXUSトークプリント」と、パソコン上のファイルをリモートプリントできる「PIXUSでリモートプリント」機能を搭載する。ただし、「PIXUSでリモートプリント」は通常のプリント操作のままリモートプリントが出来るのでは無く、ファイルをアップロードする方式で、Windows 11/10でEdge又はChromeからしか利用できず、ファイル形式もPDF/Word/Excel/PowerPointに限定される。

コピー機能
型番 PIXUS XK500 PIXUS XK100 PIXUS TS8530 PIXUS TS7530 PIXUS TS5430 PIXUS TS3530
製品画像
等倍コピー ○(A4/B5/A5普通紙のみ・フチありのみ)
拡大縮小 倍率指定 ○(25〜400%) ○(25〜400%) ○(25〜400%) ○(25〜400%) ○(25〜400%)
オートフィット ○(L判/2L判/スクエア写真用紙・ハガキのみ・フチなしのみ)
定型変倍
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー ○(色あせ補正対応) ○(色あせ補正対応) ○(色あせ補正対応)
割り付け(2面/4面) ○/○ ○/○ ○/○ ○/− ○/− −/−
その他のコピー機能 プレビュー
濃度調整
プレビュー
濃度調整
プレビュー
濃度調整
濃度調整 濃度調整
バラエティコピー フチなしコピー
枠消しコピー
IDコピー
コピー予約
フチなしコピー
枠消しコピー
IDコピー
コピー予約
大判原稿コピー
フチなしコピー
枠消しコピー
IDコピー
コピー予約

 コピー機能を見てみよう。PIXUS TS3530を除く5機種は、様々な用紙サイズと用紙種類へのコピーが可能で、等倍コピーだけで無く、拡大縮小コピーも可能だ。その拡大縮小コピーも原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「オートフィット」機能や、原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行う「定型変倍」機能、さらに25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行えるなど、様々な方法が提供されている。
 それ以外の機能は、PIXUS XK500PIXUS XK100PIXUS TS8530はかなり高性能になっている。まず、これら3機種はCD/DVD/Blu-rayレーベルプリントに対応しているため、レーベルコピーに対応している。また原稿面に写真を複数枚置き、焼き増し風のコピーを行うことも出来る。この際「色あせ補正」機能をオンにすれば、昔の色あせした写真も自動で補正してくれる機能も備えている。また、2枚又は4枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2面割り付け/4面割り付けにも対応する。コピー前にプレビューを行う事もでき、原稿が問題なくセットされているか確認できるため失敗が少なくなるほか、プレビュー画像を見て拡大・縮小率を調整できる。コピー時は濃度調整が可能な他、背景色がある場合などに便利な「フチなしコピー」、厚手の原稿など原稿台のカバーが浮いてしまう場合に黒くなる部分を消去する「枠消しコピー」機能、免許証などの裏表をそれぞれスキャンして1枚の紙に並べて印刷する「IDコピー」機能を搭載する他、コピー実行中でも次の原稿の読み取り操作ができる「コピー予約」も可能だ。このように、複合機単独で様々なコピーが行えるよう工夫されている。一方PIXUS TS7530PIXUS TS5430は、前述の拡大縮小コピー以外は、2面割り付けと濃度調整のみ対応で、機能面では上位機種と大きな差がある。そして、PIXUS TS3530は簡易的な液晶しか搭載しないことから、コピー機能はかなり制限される。使用できる用紙は、A4、B5、A5の普通紙、L判、2L判、スクエアの写真用紙、ハガキとなっている。普通紙の場合は等倍でフチあり、写真用紙とハガキは自動で拡大縮小され、フチなし印刷となる。使える用紙が限られる上に、等倍コピーに固定されているならまだしも、用紙によっては勝手に拡大縮小のフチなし印刷されてしまうなど、使い勝手はイマイチだ。

操作パネル/インターフェース/本体サイズ
型番 PIXUS XK500 PIXUS XK100 PIXUS TS8530 PIXUS TS7530 PIXUS TS5430 PIXUS TS3530
製品画像
液晶ディスプレイ 4.3型
(90度角度調整可)
かんたんモード搭載
2.7型
(90度角度調整可)
仕事/学習モード搭載
4.3型
(90度角度調整可)
かんたんモード搭載
1.44型
モノクロ有機EL
1.44型
モノクロ有機EL
(角度調整可)
1.5型モノクロセグメント
操作パネル タッチパネル液晶
(90度角度調整可)
タッチパネル液晶+物理ボタン
(90度角度調整可)
タッチパネル液晶
(90度角度調整可)
物理ボタン 物理ボタン
(角度調整可)
物理ボタン式
インターフェイス USB他 USB2.0×1 USB2.0×1 USB2.0×1 USB2.0×1 USB2.0×1 USB2.0×1
無線LAN IEEE802.11n/a/g/b
5GHz帯対応
(ダイレクト接続対応)
IEEE802.11n/a/g/b
5GHz帯対応
(ダイレクト接続対応)
IEEE802.11n/a/g/b
5GHz帯対応
(ダイレクト接続対応)
IEEE802.11n/a/g/b
5GHz帯対応
(ダイレクト接続対応)
IEEE802.11n/g/b
(ダイレクト接続対応)
IEEE802.11n/g/b
(ダイレクト接続対応)
有線LAN
対応OS Windows 11/10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.13.6〜
(AirPrint使用)
Windows 11/10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.13.6〜
(AirPrint使用)
Windows 11/10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.13.6〜
(AirPrint使用)
Windows 11/10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.13.6〜
(AirPrint利用)
Windows 11/10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.13.6〜
(AirPrint使用)
Windows 11/10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.12.6〜
(AirPrint使用)
耐久枚数 N/A N/A N/A N/A N/A N/A
外形寸法(横×奥×高) 372×345×142mm 372×345×142mm 372×345×142mm 376×350×142mm 425×315×147mm
(前面給紙カセット伸張時425×359×147mm)
435×316×145mm
重量 6.6kg 6.6kg 6.6kg 6.3kg 6.3kg 4.0kg
本体カラー ダークシルバーメタリック シルバーメタリック ブラック
ホワイト
レッド
ブラック
ホワイト
ブルー
ブラック
ホワイト
ピンク
ブラック
ホワイト

 操作パネルと液晶ディスプレイは機種による差の大きいポイントだ。最も操作性が良いのはPIXUS XK500PIXUS TS8530だ。液晶ディスプレイは4.3型と大きく、タッチパネル式となっているため、液晶内を直接タッチして操作でき分かりやすい。また、使用するボタンや項目だけが表示され、表示される項目をダイレクトにタッチして操作できるので分かりやすい。さらに、液晶はバックライトが入っているため、暗いところでもボタンが見えるのもメリットだ。物理的なボタンは電源ボタンしか無く、スッキリしているのも外見上のメリットとも言える。次に使いやすいのはPIXUS XK100だ。タッチパネル液晶となっているが、液晶サイズが2.7型と小さくなる。それを補うために「ホーム」「戻る」「カラースタート」「モノクロスタート」「ストップ」といった使用頻度の高いボタンは液晶外に物理ボタンで用意する。液晶内にこれらのボタンを表示しなくても良いため、液晶のサイズ差から想像するほど表示サイズに差は無いが、逆に操作の最後は液晶外のボタンとなる事や、物理ボタンは暗いところでは見にくいなど、操作性が劣るのは確かだ。ちなみにこれら3機種は液晶内のUI(ユーザーインターフェース)を切り替える事が出来る。PIXUS XK500PIXUS TS8530は「かんたんモード」を搭載する。切り替えると、ホーム画面が「コピー」「はがきコピー」「SDカード印刷」の大きなボタンと、「お手入れ」「インク」ボタンだけとなる。また、それぞれのボタンを押した場合も、通常のコピーやSDカードからの印刷メニューに入るのでは無く、基本的な機能に限定することでステップ数を減らしたメニューとなっている。通常メニューとの切り替えも簡単なので、高齢者や機械が苦手なユーザーと、様々な機能を使いたいユーザーが共同で利用する家族でも便利になっている。一方PIXUS XK100は「仕事/学習モード」を搭載する。切り替えると、ホーム画面には「コピー」「書類を送る」「クラウドプリント」「定型フォーム」の4つがタイル上に並ぶだけとなるため、仕事や学習に関係ある機能に素早くアクセスできるというものだ。
 PIXUS TS7530PIXUS TS5430は上位3機種と比べると大きく劣る。液晶は1.44型と小さくなるだけで無く、モノクロ表示となってしまう。有機EL液晶となっており黒地に白文字でコントラストは高いが、1色だけでグラフィカルな表示もほとんど無いため、視認性は大きく劣る。タッチパネルでは無くボタン操作となるが、ボタン数を極力減らしており、画面左に「QR」と「ワイヤレスコネクト」ボタン、画面右に、上下カーソルと「戻る」「OK」「スタート」「ストップ」ボタンが並ぶ。カーソルボタンが4方向では無く上下カーソルのみで、「+」「−」ボタンも無いため、各種メニューの階層が深くなっており、操作が煩雑となる。スマートフォンからの操作を基本としているという事で、本体から離れた場所で操作しても状態が分かるように操作パネル下部の部分にライン状の「LEDのステータスバー」を搭載し、給紙中やエラー、プリント完了などが分かるようになっているが、本体での操作性には期待しない方が良さそうだ。
 残るPIXUS TS3530は液晶は1.5型となっているが、数字以外は固定内容の点灯・非点灯のみでバックライトもない簡易的なものだ(数字は電卓のような7セグメント表示が2桁)。ボタンは、上から「電源ボタン」「LANボタン」「ダイレクトボタン」「インフォメーションボタン」セットアップボタン」「用紙選択ボタン」「OKボタン」「ストップボタン」「カラーボタン」「モノクロボタン」となっており、前述の液晶に加えて「電源」「エラー」「インク」の各LEDランプにより状態を表示する。自由な内容の表示が行えないため、数字2桁で表示される設定項目やエラー内容は、マニュアルを見ないと意味が分からないなど、直感的な操作は難しい。また、設定内容も限りがあり、操作性はかなり劣るといえる。
 もう一つ操作性で重要なのが、液晶と操作パネルの位置だ。PIXUS XK500PIXUS XK100PIXUS TS8530は前面に搭載され、持ち上げることで90度(水平)まで角度調整が可能だ。操作しやすい角度にできるため、高い位置に置いても低い位置に置いても操作しやすい。PIXUS TS7530は本体前面がやや斜めになっており、そこに搭載される。角度調整は出来ない。斜めになっているため、ある程度どの方向からでも操作可能だが、角度調整できるよりは操作しにくい。また、垂直よりやや傾いている程度なので、低い位置に置いた場合は特に操作性が劣る。PIXUS TS5430は、本体前面に搭載され角度調整が可能という点ではPIXUS TS7530より便利だ、ただ、調整角は40度ほどで、上位機種より劣る他、途中の角度で止めることは出来ない。それでも比較的どの高さに置いても操作しやすいだろう。PIXUS TS3530は本体上面の左側に縦に並んでいる。当然角度調整などは出来ないため、上から見下ろせない高さに設置すると操作ができなくなる。
 このように操作性は機種による差が大きい。ある程度本体での操作を行うのであれば、PIXUS XK500PIXUS TS8530、最低でもPIXUS XK100にとどめておくのが無難だ。
 インターフェースは6機種ともUSB接続と無線LAN(Wi-Fi)接続に対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、無線LAN(Wi-Fi)ルーターで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。その場合、プリンターを無線LANルーターに接続しておけば、家庭内のどのパソコンでもプリント可能となり非常に便利だろう。またスマートフォンやタブレットからの印刷も可能となる。またWi-Fiダイレクトに対応しているため、無線LANルーターの無い環境でも、スマートフォンやタブレットと直接Wi-Fi接続が可能となっている点も共通の便利な点だ。ただ、無線LANの機能には差が付けられている。PIXUS TS5430PIXUS TS3530はIEEE802.11n/b/gの規格に対応している。これは2.4GHz帯の電波を使用するが、Bluetoothや無線マウス、電話の子機などと同じ電波帯域である他、電子レンジの影響を受けやすいなど、安定性では劣る。それに対してPIXUS TS7530より上位の4機種は、IEEE802.11n/a/g/bに対応しており、2.4GHz帯に加えて、IEEE802.11n/a使用時は5GHz帯の電波も利用できる。5GHz帯は無線LAN専用と言える帯域なので、他の影響を受けず安定する。無線LANでの接続を考えているユーザーには便利な機能と言える。
 対応OSはほぼ同じだ。Windowsは11、10、8.1、7(SP1必須)となっており、Windows VistaやXPだけでなくWindows 8にも非対応だ。MacOSも、PIXUS TS3530以外は10.13.6以降、PIXUS TS3530も10.12.6以降と、比較的新しいバージョンのみ対応する。またMac用ドライバーはキヤノンからは提供されず、AirPrintを使用する方法となっているため、一部の印刷設定や本体の動作設定ができない点でWindowsで利用する場合に比べて不便になっている。
 本体サイズは、PIXUS XK500PIXUS XK100PIXUS TS8530は同サイズで372×345×142mmとなる。複合機の中でも特にコンパクトな部類に入る。また、奥行きを小型化しすぎたため前面給紙カセット部が前面よりも前に飛び出してしまうが、奥行きの345mmはその部分の奥行きなので、全体はもう少し小さい。また、前面給紙カセットの左右の部分も両端まで同じように飛び出させているため、ツライチとなり、飛び出しているのが目立たないデザインとなっている。PIXUS TS7530は、前面給紙カセット部の飛び出しが目立たないように、前面を斜めにした独特のデザインだが、本体サイズは376×350×142mmと、上位機種より数mm大きいだけだ。上位機種は前面給紙カセット部だけが飛び出ていて、後の部分がへこんでいるが、PIXUS TS7530はそれを斜めにつないだというイメージだ。ここまではサイズがほとんど変わらないのに対して、PIXUS TS5430は425×315×147mmと、横幅が50mm前後大きくなる。奥行きは小さく見えるが、これは前面給紙カセットだけが飛び出しているデザインなので、縮めることで本体に完全収納することも可能で、その場合の奥行きとなる。とはいえ、A4やB5サイズをセットする場合は伸ばす必要があるため、実際は飛び出した状態で使うのが基本となるだろう。その場合の奥行きは359mmで、やはり上位機種より14mm大きくなる。PIXUS TS3530は435×316×145mmで、PIXUS TS5430より横幅がさらに10mm大きい。ただ奥行きに関しては、前面給紙カセットが無いため実質的にこのサイズとなる。とはいえ、他の5機種は普通紙を利用するだけなら前面給紙カセットだけでよく、背面は壁にくっつけても問題ないが、PIXUS TS3530は背面給紙のみであるため、かならず後方にスペースが必要だ。そうなると奥行きはさらに大きくなる。ただ、他機種でも普通紙以外を利用する場合は背面給紙を使用することになるため後方にスペースが必要だ。
 ちなみに本体カラーは様々だ。PIXUS XK500はダークシルバーメタリック、PIXUS XK100はシルバーメタリックで、カラーバリエーションは無いが、高級感のある色合いだ。ただPIXUS XK500の方が落ち着いた色で、PIXUS XK100はやや派手だ。PIXUS TSシリーズの4機種は、全機種がブラックとホワイトの2色のカラーバリエーションを用意している。さらにPIXUS TS8530はレッド、PIXUS TS7530はブルー、PIXUS TS5430はピンクも選べる3色展開となっている。レッドはかなり派手な赤色だが、ブルーとピンクはかなり薄めの色となっている。



 6機種から選ぶとなると、まずは写真印刷を行うか、また年賀状など普通紙以外の画質もこだわるかどうかがポイントとなる。写真印刷や年賀状印刷を行うなら、できれば6色インク、最低でも5色インクの機種を選ぶ必要がある。つまりはPIXUS TS7530以上の機種となる。一方文書印刷やコピーがメインなら、4色インクの下位2機種でも良い。
 写真印刷を行うとして、ある程度印刷枚数が多いなら、PIXUS XKシリーズがオススメだ。印刷コストが安いだけで無く、インク購入時の一度の出費が小さくて済む。実際の所、機能が似たPIXUS XK500PIXUS TS8530(一般的な標準容量カートリッジを使用した場合)はL判写真で14円、カラー文書で8.4円の差がある。本体価格の差は13,200円なので、写真なら943枚、カラー文書なら1,572枚以上でお得になる計算だ。A4サイズに写真印刷すると、L判と面積比で約5.5倍なので(フチなし印刷時のはみ出し分などでそのままとはならないとしても)、印刷コストの差は大きい。本体価格が高い分の元を取るのはそう難しく無いはずだ。また画質や操作性など一部劣るとはいえ、PIXUS XK100なら、価格は2,200円差などで、すぐ逆転してしまう。ある程度コンスタントに使用するなら、PIXUS XKシリーズがオススメだ。ではPIXUS XK500PIXUS XK100ならどちらを選ぶかは難しい。11,000円差で、大きな差はフォトブルーインクの有無と写真印刷速度、クリエイティブフィルター、液晶サイズくらいのものだ。画質はよほどこだわりが無ければPIXUS XK100でも十分だ。結局は、SDカードからの写真印刷を行うかどうかだろう。よく行うなら、液晶サイズの大きいPIXUS XK500の方が写真を選びやすく、クリエイティブフィルターも使い道がある。一方写真はスマホやパソコンからというのであればPIXUS XK100でも問題ない。もちろん少しでも画質が良い方を望むのならPIXUS XK500もありだ。
 PIXUS TS8530PIXUS TS7530の場合は、価格も16,500円も差があるが機能の差も大きい。画質の差はよほどこだわらなければ大丈夫だろう。PIXUS TS8530のメリットとしては、ハガキの自動両面印刷、ディスクのレーベル印刷、SDカードからのダイレクト印刷、プリンター本体でのクラウドアクセスの各機能を搭載している事に加えて、コピー機能にも差がある。そして、操作性に雲泥の差がある。PIXUS TS8530にしか搭載されていない機能が必要なら、また本体でのコピー操作などが多いならPIXUS TS8530がオススメだ。そして、機能や操作性の面でPIXUS TS7530でも問題ないとしても、今度は印刷コストの問題がある。L判写真で7円、カラー文書で6.4円の差がある。本体の価格差を埋めようと思うと2,500枚前後の印刷が必要となるが、それでもプリンターの寿命は5年前後と言われており、それなりに差は縮まる。月に写真を10枚、文書又はコピーを10枚、年末に年賀状を150枚印刷すると、5年でPIXUS TS8530は写真が14,880円、文書・コピーが7,440円、年賀状が(通信面+宛名面でカラー文書とほぼ同等と言われているため)9,300円で計31,620円、PIXUS TS7530はそれぞれ19,080円、11,280円、14,100円で、計44,460円となり12,840円差となる。この程度で本体の価格差は実質数千円となってしまう。それでいてこの機能差なら、PIXUS TS8530の方が何かと便利だろう。よほど印刷枚数が少ないので無ければ、PIXUS TS8530がオススメだ。
 では文書だけという事であれば、4色インクでも十分だ。PIXUS TS5430PIXUS TS3530だが、価格差は5,000円弱でここまでの機能差があるとPIXUS TS5430一択という印象だ。印刷速度、自動両面印刷、カセット給紙、コピー機能の豊富さ、本体の操作性など様々な点で差があるが、特にPIXUS TS3530の操作性はかなり悪く、それに伴ってコピー機能にかなり制約がある点もいざという時に困りそうだ。ほぼパソコンからのプリントだけで、コピーは等倍コピー程度というので無ければ、PIXUS TS5430が良いだろう。ちなみに文書印刷がメインだからといって5色インク以上の機種を選んではいけないわけでは無い。例えばコピーが多かったり、クラウドにアクセスしてプリント、又は本体でスキャンしてクラウドに保存といった事を行うなら、液晶が大きくタッチパネルで使いやすいPIXUS TS8530という選択肢もありだ。各色独立インクカートリッジで印刷コストも安くなる。印刷コストを考えるならPIXUS XK100でも良いが、そこまで考えるなら、インクカートリッジ式では無く、ギガタンク方式のG6030などもオススメといえる。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/


PIXUS XK500
PIXUS XK100
PIUXS TS8530BK
(ブラック)
PIUXS TS8530WH
(ホワイト)
PIUXS TS8530RD
(レッド)
PIUXS TS7530BK
(ブラック)
PIUXS TS7530WH
(ホワイト)
PIUXS TS7530RD
(ブルー)
PIUXS TS5430BK
(ブラック)
PIUXS TS5430WH
(ホワイト)
PIUXS TS5430RD
(ピンク)
PIUXS TS3530BK
(ブラック)
PIUXS TS3530WH
(ホワイト)