プリンター徹底比較
2022年末時点のプリンター
〜エプソン・キャノン・ブラザーのプリンターを比較〜
(2023年7月18日公開)

プリンター比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンター比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。


A3プリントA4スキャン複合機(ファクス無し/あり)
 
 A3プリントA4スキャンに対応した複合機の5機種を比較する。エプソンからEW-M973A3T(95,700円)、EP-982A3(39,578円)、EW-M5610T(76,978円)、キャノンからTR9530(38,368円)、ブラザーからMFC-J5800CDW(63,250円)の5機種となる。5機種とも性格がかなり異なり、本来ならタンク方式とカートリッジ方式、ファクス機能付きと機能無しで分けて比較したいところだが、分けるほど機種数も多くないためまとめて比較する。タンク方式はEW-M973A3TEW-M5610FT、大容量カートリッジ方式はMFC-J5800CDW、従来型のカートリッジ方式がEP-982A3TR9530となる。一方、ファクス機能付きはEW-M5610FTMFC-J5800CDWである。EW-M973A3TEP-982A3は家庭向け、EW-M5610FTTR9530はビジネス・家庭両用、MFC-J5800CDWはビジネス向けとなっており、異なる点も多い5機種だが、どの機種が用途に合うのかを細かく見ていこう。

プリント(画質)
メーカー エプソン エプソン エプソン キャノン ブラザー
型番 EW-M973A3T EP-982A3 EW-M5610FT TR9530 MFC-J5800CDW
製品画像
実売価格(メーカーWeb/税別) 95,700円 39,578円 76,978円 38,368円 63,250円
インク 色数 6色 6色 4色 5色 4色
インク構成 マットブラック(顔料)
フォトブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
グレー
ブラック
シアン
ライトシアン
マゼンタ
ライトマゼンダ
イエロー
ブラック(顔料)
シアン
マゼンタ
イエロー
顔料ブラック
染料ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成 エコタンク方式
(挿すだけ満タンインク方式・オフキャリッジ式)
各色独立カートリッジ方式 エコタンク方式
(挿すだけ満タンインク方式・オフキャリッジ式)
各色独立カートリッジ方式 ファーストタンク方式
(各色独立インクカートリッジ+サブタンク方式(200枚分))
顔料/染料系 染料(黒+カラー)/顔料(黒)
(つよインク)
ClearChrome K2 Plus
染料
(つよインク200)
染料(カラー)/顔料(黒)
(アルバム保存300年/耐光性7年/耐オゾン性2年)
染料/顔料(黒)
(ChromaLife100)
顔料
インク型番 トビバコ 80L(増量)
80(標準)
ヤドカリ(顔料)
ハリネズミ(染料)
381XL/380XL(大容量)
380/381(標準容量)
380s/381s(小容量)
LC417XL
最小インクドロップサイズ 1.5pl
(AdvancedMSDT)
1.5pl
(AdvancedMSDT)
3.3pl
(MSDT)
N/A カラー:2.5pl
ブラック:4pl
最大解像度 5760×1440dpi 5760×1440dpi 4800×1200dpi 4800×1200dpi 1200×4800dpi
高画質化機能 PrecisionCoreプリントヘッド(600dpi) 自動ノズルチェック

 まずはプリント画質を見てみよう。インクの色数で言うと、EW-M973A3TEP-982A3が6色、TR9530が5色、EW-M5610FTMFC-J5800CDWが4色となる。しかし、プリンターのインクには染料インクと顔料インクがある。染料インクは写真用紙に印刷した際に発色が良く、用紙の光沢感もそのまま出るため綺麗に印刷できるが、普通紙に印刷すると発色が悪く、インクが用紙に染みこむ際に広がるため線が太くなったり、小さい文字や中抜き文字が潰れたりしやすい。顔料インクは普通紙印刷時に表面で定着するためクッキリとした印刷が行え、耐水性も高いが、写真用紙などに印刷すると発色が悪く、紙本来の光沢感も薄れ、半光沢になってしまう。また光沢年賀状をはじめとする一部の光沢紙やフィルム紙、アイロンプリント紙など一部顔料インクが非対応の用紙もある。つまり普通紙なら顔料インクが、普通紙以外の写真用紙やハガキの通信面、ファイン紙などには染料インクが向いていることになる。
 染料インクと顔料インクに分けて細かく見ていくと、EP-982A3が染料6色、EW-M973A3Tが染料5色+顔料ブラック、TR9530が染料4色+顔料ブラック、EW-M5610FTが染料3色+顔料ブラック、MFC-J5800CDWが顔料4色となり、5機種とも構成が異なるという驚きの結果だ。
 まず、写真の印刷画質を見てみよう。写真と言っても、印刷内容が写真かどうかでは無く、写真用紙へ印刷する場合の画質である。光沢紙やファイン紙、インクジェット年賀ハガキなど、普通紙以外はこちらとなる。写真は染料インクを使用するので、EP-982A3が6色で最も高画質だ。ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色に、ライトシアンとライトマゼンダという色の薄い2色を搭載する。これにより、色の薄い部分での粒状感が低減され、さらに最小インクドロップサイズも1.5plと小さい事もあり、滑らかで綺麗な印刷ができる。コレに近いのがEW-M973A3Tだ。染料インクは5色で、基本4色にグレーインクを搭載する。色の濃い部分をグレーをベースにすることで、粒状感が強くなりがちなブラックインクを使わず表現でき、全体として粒状感が低減されている。最小インクドロップサイズも1.5plと、EP-982A3と同等だ。無彩色のインクをベースにするので、EP-982A3よりは色の鮮やかさでやや劣る傾向があるが、比較してみてかろうじて分かる程度の差しかない。一方でEW-M973A3Tが勝る部分があり、モノクロ写真や、カラーでもグレーの部分の表現で、EP-982A3ではカラーインクを使ってグレーを表現するが、そうなると青白くなるなど、色転びしやすくなる。グレーインクを使用できるEW-M973A3Tでは色転びの無いグレーが表現でき、全体として色が安定する。また、アート紙への印刷時に顔料ブラックインクを使用することで、染料インクに比べてコントラストが高い印刷が可能になっている。アート紙は写真作品の印刷に用いられる物で、より高画質に印刷できるのは、メリットとなる人もいるだろう。続いてTR9530が染料4色である。基本の4色だけで、最小インクドロップサイズは非公開ながら2pl程度と言われており、前の2機種より大きくなるため、色の表現力や粒状感の面では一歩劣る。とはいえ、十分高画質で、スナップ写真程度であれば問題ない画質と言える。ここまでの3機種は写真印刷に耐えうる画質だ。
 それでは、EW-M5610FTはというと、染料インクは3色しかない。カラー3色のみで染料ブラックを搭載しないため、黒色はカラー3色を重ねて表現する事になる。完全な黒にはならず濃い茶色や濃いグレーにしかならないため、全体にコントラストが低く感じられる他、影部分の表現など、暗い色の中の表現力で劣る。また最小インクドロップサイズも3.3plと、EW-M973A3TEP-982A3の倍以上となるため、粒状感の面でも大きく劣ることとなる。カラーインクは染料インクなので、カラーの発色や用紙の光沢感は問題ないため、写真印刷もかろうじて行えるが、画質を少しでも気にするなら選択肢からは外したいところだ。残るMFC-J5800CDWは染料インクを搭載しないため、顔料インクでの写真印刷となる。全色が顔料インクであるためブラックインクを使用できるとはいえ、全体に発色が悪く、用紙の光沢感も薄くなってしまう。最小インクドロップサイズもカラーが2.5pl、ブラックが4plと大きく、特に色が濃く目立ちやすいブラックインクが5機種中最大であるため、粒状感はかなり強くなる。顔料インクという点でも最小インクドロップサイズの点でも、写真印刷用途には全く向かないと言えるだろう。
 ちなみに、インクの耐保存性の面でも違いがある。EW-M973A3Tは「つよインク」、とEP-982A3は「つよインク200」と名称は異なるが、アルバム保存300年、耐光性50年、耐オゾン性10年となっており、耐保存性は非常に高い。さすが、写真印刷向けの機種と言える。それに対して、EW-M5610FTはアルバム保存は300年で同等だが、耐光性は7年、耐オゾン性は2年と劣るため、飾った場合の色あせが早い事が考えられる。TR9530は「ChromaLife100」でアルバム保存100年をうたっているが、耐光性等はうたわれておらず、写真印刷に耐えうる画質ながら、耐保存性はEW-M973A3TEP-982A3に劣るのは残念だ。MFC-J5800CDWは耐保存性に関しては特にうたわれていない。
 一方、文書の印刷画質を見てみよう。こちらも、印刷内容が文書かどうかでは無く、普通紙へ印刷する場合であり、文書中の写真やイラストの画質も該当する。ハガキの宛名面もこちらである。文書印刷の場合は顔料インクが重要になる。EP-982A3は全色染料インクであるため、普通紙印刷の画質は並だ。それに対して、EW-M973A3TEW-M5610FTTR9530は顔料ブラックを搭載しているため、ブラックインクを使用する部分に限ってだが、普通紙に高画質印刷が行える。黒と言っても、完全な黒ではないグレーの部分には染料のグレーやカラーインクを混ぜて作る場合があるし、背景色があるなどカラーの中に混ざっている場合も染料ブラックや染料カラーが使われる場合もあるなど、必ずしも顔料インクの恩恵を受けられるわけではないが、コピーや文書印刷では全体的に引き締まった印象となるのは確かだ。EP-982A3も、細線強調機能や文字くっきり機能を搭載し、普通紙では苦手な写真も色鮮やかになるようドライバーレベルで文書印刷画質を高めているため、染料インクとしては高画質で、ある程度差は縮まっているが、やはりこれら3機種の方が高画質だ。そして、MFC-J5800CDWは全色顔料インクを採用しているため、カラー、モノクロ問わず、クッキリとして耐水性の高い印刷が行える。家庭内でのコピーや文書印刷時に文字がクッキリしていて見やすい程度であれば、ブラックインクだけ顔料インクでも十分だが、本格的な文書印刷やビジネス利用では、やはり全色顔料インクが望ましいだろう。EW-M973A3Tはグレーインクを搭載しており、最小インクドロップサイズも小さいため、文書内の写真やグラフでの粒状感がMFC-J5800CDWより抑えられる可能性はあるが、やはり、MFC-J5800CDWが最も高画質だ。どちらかと言えば、EW-M5610FTMFC-J5800CDWには無い普通紙印刷向けの機能が搭載されている。それがPrecisionCoreプリントヘッドで、普通紙印刷時の解像度を600dpiに高めているのが特徴だ。そのため、顔料ブラックを使う黒文字や罫線、図面などで、小さな文字や細かな部分もより潰れずに表現できる。この点においてはMFC-J5800CDWも上回る。このように、機種によって得手不得手がはっきりしており、印刷目的によってある程度機種が絞れるだろう。

プリント(印刷速度)
メーカー エプソン エプソン エプソン キャノン ブラザー
型番 EW-M973A3T EP-982A3 EW-M5610FT TR9530 MFC-J5800CDW
製品画像
ノズル数 1080ノズル 1080ノズル 784ノズル 4096ノズル 1680ノズル
各色180ノズル 各色180ノズル カラー:各128ノズル
黒:400ノズル
シアン/マゼンダ/顔料ブラック:各1024ノズル
イエロー/染料ブラック:各512ノズル
全色:各420ノズル
印刷速度 L判フチなし写真
(メーカー公称)
19秒 13秒 N/A 18秒 N/A
A4普通紙カラー
(ISO基準)
12.0ipm N/A 9.0ipm 10.0ipm 30.0ipm
A4普通紙モノクロ
(ISO基準)
16.0ipm N/A
(8.0ipm?)
17.0ipm 15.0ipm 30.0ipm
ファーストプリント速度 A4普通紙カラー 16.0秒 N/A
(8.5ipm?)
15.0秒 10.0秒 4.6秒
A4普通紙モノクロ 15.0秒 N/A 9.0秒 8.0秒 4.4秒

 続いて、印刷速度を見てみよう。写真の印刷速度はEP-982A3が最も早く13秒、次いでTR9530の18秒、EW-M973A3Tの19秒となる。多少の差はあるが、写真印刷向けの機種だけに非常に高速でストレスは無い。残る2機種は印刷速度が公表されていないが、EW-M5610FTはほぼ同じプリント機能のA4プリント機であるEW-M670FTが75秒であるため、EW-M5610FTもそれに近いと思われる。一方、文書の印刷速度は、最も高速なのがMFC-J5800CDWでA4カラー文書、モノクロ文書共にが30ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)である。他機種に比べて圧倒的に速く、遅くなりがちなカラープリントも高速だ。さすが文書向けの機種といえる。卓上タイプのレーザープリンターと比べても引けを取らないだろう。EW-M973A3Tはカラー12.0ipm、モノクロ16.0ipm、EW-M5610FTは9.0ipmと17.0ipm、TR9530が10ipmと15ipmで大きな差は無い。EW-M973A3Tがどちらも高速だが、モノクロプリントならEW-M5610FTの方が高速だ。また、写真印刷では遅い(と予想される)EW-M5610FTだが、文書印刷に関しては十分高速だ。MFC-J5800CDWが高速ではあるが、他の3機種も十分なレベルで、よほど印刷速度にこだわらなければストレス無く使えるだろう。EP-982A3は文書印刷速度は非公開であるが、海外の同機能のモデルでは、カラー8.0ipm、モノクロ8.5ipmとなっており、これに近いと思われる。他機種よりやや遅く、写真印刷を重視したチューニングとなっているようだ。
 また、1枚目のプリント速度であるファーストプリント速度も、MFC-J5800CDWが圧倒的に速く、カラー文書が4.6秒、モノクロ文書が4.4秒となる。次に高速なTR9530の半分程度の時間でプリントが完了する。1、2枚のプリントを頻繁に行うような使い方でも、やはりMFC-J5800CDWは高速だ。一方、文書印刷速度では大きな差が無かったEW-M973A3TEW-M5610FTTR9530だが、ファーストプリント速度に関しては、カラー文書はTR9530が、モノクロ文書はEW-M5610FTTR9530が比較的高速である一方、EW-M973A3Tはやや遅くなる。ビジネス用途が考えられるEW-M5610FTや、TR9530ではファーストプリント速度も重視されるため、この部分にもこだわった一方、EW-M973A3Tは家庭向けの高画質モデルであるため、給紙の高速化より精度を高める事を重視したのではないかと考えられるが、想像の域を出ない。

プリント(印刷コスト)
メーカー エプソン エプソン エプソン キャノン ブラザー
型番 EW-M973A3T EP-982A3 EW-M5610FT TR9530 MFC-J5800CDW
製品画像
印刷コスト
(税込)
L判フチなし写真 用紙代込み
(メーカー公称)
8.1円 増量:23.2円
標準:29.7円
N/A 大容量:19.1円
標準:19.0円
小容量:26.1円
N/A
インク代のみ
(予測値)※
2.9円 増量:18.0円
標準:24.5円
N/A 大容量:14.4円
標準:14.3円
小容量:21.4円
N/A
A4カラー文書 1.8円 増量:13.5円 1.0円 大容量:10.5円
標準:10.5円
小容量:15.6円
4.1円
A4モノクロ文書 0.7円 N/A 0.4円 大容量:3.3円
標準:3.7円
小容量:5.4円
0.8円
インク1セットでの印刷可能枚数
(A4カラー文書を印刷した場合)
顔料
ブラック
6,700ページ 7,500ページ 大容量:600ページ
標準:400ページ
小容量:200ページ
6,000ページ
染料
ブラック
7,300ページ N/A 大容量:6,360ページ
標準:3,180ページ
小容量:940ページ
カラー 6,200ページ N/A 6,000ページ 大容量:800ページ
標準:500ページ
小容量:250ページ
5,000ページ
インク1本の価格
(税込)
顔料
ブラック
2,046円 2,365円 大容量:1,793円
標準:1,331円
小容量:1,012円
4,400円
染料
ブラック
2,046円 増量:1,386円
標準:748円
大容量:1,914円
標準:1,133円
小容量:803円
カラー 各2,046円 増量:各1,386円
標準:各748円
各1,265円 大容量:各1,914円
標準:各1,133円
小容量:各803円
各5,500円
※写真の印刷コストに含まれる写真用紙代は、各メーカーで異なります。各メーカーの測定条件から、以下のようになっています。
エプソン:5.2円(「写真用紙<光沢>」500枚パック(KL500PSKR)2,600円→1枚5.2円)
キャノン:4.7円(「写真用紙・光沢 ゴールド」400枚パック(GL-101L400)1,875円→1枚4.6875円)
ブラザー:4.2円(「写真光沢紙」500枚パック2,090円→1枚4.18円)
なお、小数点2位以下の関係で0.1円の誤差が発生することがあります。

 次に、印刷コストを見てみよう。印刷コストにはインク方式によって、大きな差がある。EP-982A3TR9530はカートリッジ方式となる。これまでのプリンターと同じく、インクが無くなったらインクが入ったカートリッジを購入し、カートリッジごと交換する。一方EW-M973A3TEW-M5610FTはエコタンク方式となる。本体に大容量のインクタンクを搭載しており、インクはボトルで購入し、インクタンクに補充(注入)する形となる。インクを補充と言うと難しそうだが、これら2機種は第2世代の「挿すだけ満タン」インク方式となっており、インク注入口にボトルを挿すと注入が始まり、満タンになると自動ストップする。あふれる心配はない上に、ボトル自体も挿し込まなければインクが出にくい構造で、インクをこぼす心配も少ない。さらに注入口の形状を色ごとに変えてあるため、間違った色のタンクの補充する危険性もない。このように実際にはインクカートリッジ交換と手間や難易度では差は無いと言える。逆にメリットもあり、途中で補充が可能なので、大量印刷前に補充しておけば途中でインク切れで止まってしまう心配は無いし、暇な時や詳しい人が補充するという事も可能だ。残るMFC-J5800CDWはファーストタンク方式だ。「タンク」と名前が付いているが、インクカートリッジ方式だ。ではなぜ「タンク」という名称が付けられているかというと、内部に200枚分のインクを常にキープする、小型のタンクを搭載しているためだ。つまり、インク切れの表示前でも、200枚以下になる(カートリッジ内が空になる)と、インクカートリッジの交換が可能となる。カートリッジの交換に猶予があるため、暇な時に交換したり、買い忘れに気づいて買いに行く余裕もあるだろう。またファーストタンク方式は、従来のインクカートリッジと比べると、圧倒的に大容量になっているのも特徴だ。3種類の方式の内、エコタンク方式が最も印刷コストが安く、次いでファーストタンク方式となる。従来のインクカートリッジ方式は印刷コストは高めだ。
 具体的に見てみると、L版フチなし写真の場合、EW-M973A3Tが8.1円、EP-982A3が23.2円、TR9530が19.0円(標準カートリッジ使用時)となる。これには写真用紙代が含まれており、各社の純正用紙で計算するため、エプソンが5.2円、キャノンが約4.7円となる。そのため、インク代だけで見ると、2.9円、18.0円、14.4円となる。エコタンク方式のEW-M973A3Tの安さが際立つ結果だ。EP-982A3Tと比べて6分の1以下、TR9530と比べても5分の1となる。ちなみに、EP-982A3TR9530の印刷コストは高く見えるが、カートリッジ方式としては標準的である。EW-M5610FTMFC-J5800CDWは写真の印刷コストは非公開だが、EW-M5610FTに関してはほぼ同じプリント機能のA4プリント機であるEW-M674FTが6.9円(インク代だけだと1.7円)であるため、EW-M5610FTもそれに近いと思われ、EW-M973A3Tよりさらに低印刷コストになる。
 カラー文書の印刷コストでも、EW-M973A3Tが1.8円、EP-982A3が13.5円、EW-M5610FTが1.0円、TR9530が10.5円(大容量・標準カートリッジ使用時)、MFC-J5800CDWが4.1円となる。やはりエコタンク方式のEW-M973A3TEW-M5610FT、特にEW-M5610FTの安さが際立っている。MFC-J5800CDWはエコタンク方式に対抗する大容量カートリッジの「ファーストタンク方式」だが、4.1円と、EW-M5610FTの4.1倍、EW-M973A3Tの2.28倍となり、やや高く見える。しかし、EP-982A3の30%、TR9530の39%となっているため、通常のカートリッジ方式よりは圧倒的に安価となっている。モノクロ文書の場合、EW-M973A3Tが0.7円、EW-M5610FTが0.4円、TR9530が3.3円(大容量カートリッジ使用時)、MFC-J5800CDWが0.8円となる(EP-982A3は非公開)。カラー文書と傾向は同じだが、MFC-J5800CDWEW-M5610FTの2倍、EW-M973A3Tとほぼ同じ印刷コストとなっており、カラー文書と比べると差が縮まっている。モノクロ文書なら、ファーストタンク方式でも十分に安価と言えるだろう。
 この差の要因はインク1本での印刷枚数とインクの価格だ。インク1セットでA4カラー文書を印刷した場合、それぞれのインクが何枚印刷できるかを比較してみると、カートリッジ方式の場合、TR9530では一般的に使われる標準容量なら顔料ブラックインクは400ページ、カラーインクは約500ページ印刷が出来る(染料ブラックは文書印刷にはあまり使用しないので約3,180ページと多くなっている)。EP-982A3は印刷可能枚数は公表されていないが、インクの価格を印刷コストで割ると、一般的に使われる増量インクでA4カラー文書が平均620ページ印刷できる計算となる。それに対して、エコタンク方式の場合、EW-M973A3Tは顔料ブラックは6,700ページ、染料ブラックは7,300ページ、カラーインクは各6,200ページも印刷が可能だ。EW-M5610FTも顔料ブラックは7,500ページ、カラーインクは各6,000ページでほぼ同等だ。エコタンク方式は、カートリッジ方式の10倍前後の印刷枚数となる。では価格を見てみると、EP-982A3は増量カートリッジで1本1,386円、6色買うとで8,316円となり、TR9530は標準容量で顔料ブラックが1,331円、染料ブラックとカラーが各1,133円で、5色買うとで5,863円である。それに対してエコタンク方式の場合、EW-M973A3Tは各2,046円で、6色買うと12,276円と、EW-M5610FTはブラックが2,365円、カラーが各1,265円で、4色買うと6,160円となる。EW-M973A3Tは同じ6色のEP-982A3と比べると高いし、EW-M5610FTも4色としては高いと言える。しかし、EW-M973A3TEP-982A3の差は1.48倍で、印刷可能枚数は10倍前後の差があることを考えると、差は小さいと言える。これにより1枚あたりの印刷コストにすると、エコタンク方式のEW-M973A3TEW-M5610FTが圧倒的に安くなる。ではファーストタンク方式のMFC-J5800CDWはというと顔料ブラックインクは6,000ページ、カラーインクは5,000ページと、エコタンク方式に迫る印刷枚数だ。ただ、ブラックインクは4,400円、カラーインクが各5,500円となり、4色買うと20,900円となってしまう。同じ4色のEW-M5610FTと比べると、印刷可能枚数は80%とやや少ないが、価格は約3.4倍となるため、印刷コストは高くなる。ただブラックインクだけで見ると、価格は約1.86倍と比較的差は小さい為、モノクロ文書はカラー文書よりもエコタンク方式に近い印刷コストになる。
 これを見ると、印刷コストだけで無く、インク1セットでの印刷可能枚数やインクの価格にも大きな差があることが分かる。印刷コストは安いに越したことはないが、それだけに注視していると、使い方によっては無駄になることもある。つまり、印刷枚数の少ないユーザーの場合、エコタンクやファーストタンク方式の場合、インク1セットを使い切れないという事になってしまう。印刷コストが安いプリンターは本体価格が高く設定されているため、せっかく高い価格で購入しても、印刷コストの安さで元が取れないという事になる。印刷枚数が多い人は本体やインク1セットが多少高くてもEW-M973A3TEW-M5610FTMFC-J5800CDWを購入して、印刷コストが安い方が良いし、印刷枚数が少ない人は、印刷コストだけで見ると高くても、本体購入時に安く、インクも使い切れる量が安く購入できるEP-982A3TR9530が良いだろう。

プリント(給紙・排紙関連)
メーカー エプソン エプソン エプソン キャノン ブラザー
型番 EW-M973A3T EP-982A3 EW-M5610FT TR9530 MFC-J5800CDW
製品画像
対応用紙サイズ 定型用紙 名刺〜A3ノビ L判〜A3 名刺〜A3ノビ 名刺〜A3 L判〜A3
長尺用紙 長さ2,000mmまで 長さ1,200mmまで 長さ1,200mmまで 長さ676mmまで 長さ1,200mmまで
給紙機能
(セット可能枚数(普通紙/ハガキ/写真用紙))
背面
A3ノビ以下
(50枚/20枚/20枚)
(0.6mm厚紙対応)

手差し・A3以下
(1枚/1枚/1枚)
(0.6mm厚紙対応)

A3ノビ以下
(20枚・1枚・1枚)

A3以下
(100枚/40枚/20枚)
(A3は50枚まで)

A3以下
(100枚/50枚/20枚)
(0.52mm厚対応)
前面 【カセット下段】
L判〜A4
(100枚/40枚/20枚)
【カセット上段】
L判〜2L/B6以下
(20枚/20枚/20枚)
【カセット下段】
L判〜A4
(100枚/40枚/20枚)
【カセット上段】
L判〜2L/B6以下
(−/20枚/20枚)
【カセット】
L判〜A4
(250枚/30枚/20枚)
【カセット】
A5〜A4・普通紙のみ
(100枚/−/−/)
【カセット】
L判〜A3
(250枚/30枚/20枚)
その他
手差しストレート給紙
(1枚/1枚/1枚)
(A3ノビ・1.3mm厚紙対応)
排紙トレイ自動伸縮
用紙種類・サイズ登録 ○(カセット収納連動/用紙セット(背面)連動) ○(カセット収納連動) ○(カセット収納(前面)/用紙セット(背面)連動) ○(カセット収納(前面)・給紙口カバー閉じ(背面)連動(背面)連動) ○(カセット収納(前面)/用紙セット(背面)連動)
用紙幅チェック機能 ○(印刷時) ○(印刷時)

 続いて給紙・排紙関連の機能を見てみよう。5機種ともA3プリント対応と言うことで比較しているが、実は最大サイズに違いがある。EP-982A3TR9530MFC-J5800CDWはA3までだが、EW-M973A3TEW-M5610FTはA3ノビに対応する。A3は297×420mmなのに対して、A3ノビは329×483mmであり、一回り大きな用紙に印刷できるのはメリットだ。一方、最小サイズはEP-982A3MFC-J5800CDWはL判までだが、EW-M973A3TEW-M5610FTTR9530はより小さな名刺サイズに対応する。少量の名刺やフチなしデザインの名刺の作成に重宝するだろう。また、長尺用紙という点では、EW-M973A3Tは2,000mm(2m)まで、EP-982A3EW-M5610FTMFC-J5800CDWも1,200mm(1.2m)まで対応しており、大型POPや垂れ幕、横断幕の印刷に重宝する。それに対してTR9530は676mmまでとA3の1.5倍程度までしか対応しない。
 5機種とも前面給紙と背面給紙の両方に対応しているが、細かく見るとその機能には違いがある。前面給紙は5機種ともカセット式だ。用紙をセットしたままでもホコリが積もりにくく、常時セットしておくのに向いている。EW-M973A3TEP-982A3はカセットが2段となっており、上段が2L/B6以下の用紙、下段はA4以下となる。上段にL判写真用紙やハガキ、下段にA4普通紙と言った風に2種類の用紙を同時にセットして使い分けが出来るため便利だ。上段はハガキ、写真用紙なら20枚まで、下段は普通紙を100枚までセットできるが、下段にハガキや写真用紙をセットする事も可能だ。その場合ハガキは40枚、写真用紙は20枚までセットでき、上下段を連続で使用する事もできるので、ハガキは60枚、写真用紙は40枚まで交換無しで印刷できる。大量印刷の際に便利だろう。それに対して、EW-M5610FTTR9530MFC-J5800CDWのカセットは1段だ。異なる用紙を使用する場合は交換するか、背面給紙を利用する事になり、その点では不便だ。ただEW-M5610FTMFC-J5800CDWは文書印刷向けだけあって、前面給紙カセットに普通紙を250枚までセットできるため大量印刷も行え、これはEW-M973A3TEP-982A3に対するメリットだ。ハガキは30枚、写真用紙は20枚で特に多いわけではない。それに対して、TR9530の前面給紙カセットは100枚となるだけでなく、普通紙のみの対応となる点は注意が必要だ。普通紙以外のハガキや写真用紙、ファイン紙などはすべて背面給紙となる。普通紙以外を常時セットしておきたい場合は、不便と言える。また、5機種ともA3またはA3ノビに対応しているが、前面給紙カセットにA3/B4用紙をセットできるのはMFC-J5800CDWだけだ。残る4機種はA4までで、A3/B4用紙は背面からとなる。MFC-J5800CDWもA3/B4用紙をセットする場合はカセットを伸ばす必要があり、前に飛び出すが、常時セットしておけるという点で、A3/B4用紙をメインで使用する場合は非常に便利だ。
 では、背面給紙はというと、EP-982A3は手差し給紙、EW-M5610FTは簡易的なトレイ式、残る3機種は通常のトレイ式だ。EP-982A3の手差し給紙は1枚ずつしかセットできず、複数枚セットするとエラーとなる。前面給紙カセットにセットした用紙以外を数枚印刷したい場合や、前面給紙からでは扱いにくい厚紙や封筒などの印刷に利用する形となるだろう。A3/B4用紙も1枚ずつとなるため、大量印刷には向かない。ただし、その分、大型の用紙受けが不要であるため、後方を壁にくっつけていても利用できる。それに対してトレイ式は複数枚の用紙をセットできるため便利だ。EW-M973A3Tなら普通紙を50枚まで、TR9530MFC-J5800CDWなら100枚までセットできるため(TR9530はA3用紙は50枚まで)、A3/B4用紙への大量印刷にも対応できる(MFC-J5800CDWは前面給紙カセットにもセットできるが)。ハガキもEW-M973A3Tなら20枚まで、TR9530は40枚まで、MFC-J5800CDWは50枚までセットできる。ただし、トレイが後方に傾くため、後方にスペースが必要だ。EW-M5610FTは簡易的なので、普通紙は20枚まで連続給紙でき、A3/B4用紙もある程度使いやすいが、ハガキや写真用紙は1枚ずつとなる。
 ちなみに、厚みに関しては、一般的な背面給紙の場合、0.3mm厚程度までとなるが、EW-M973A3TEP-982A3は倍の0.6mm厚、MFC-J5800CDWも0.52mm厚まで対応しており、通常より厚い紙でも印刷できる。例えばアート紙(例えばエプソンのVelvet Fine ArtPaperは0.48mm)の印刷に重宝する。ちなみに、写真店に依頼した場合のような写真貼り合わせの年賀状の宛名面印刷はEW-M973A3TEP-982A3のみ正式対応している。さらに、EW-M973A3Tは手差しストレート給紙にも対応する。レーベル印刷用のトレイの通り道を、背面から挿し込んで利用できるようにしたもので、1.3mm厚の用紙まで対応できる。背面ユニットを取り外し、そこに取り付けられている手差しユニットを外して本体にセットする必要があり、また背面から用紙をまっすぐに挿し込めるスペースがいるなど、手間はかかるが、従来の一般的なプリンターでは不可能な厚さに対応できるのは、いざという時便利だろう。
 複雑なのでまとめると、EW-M973A3Tは前面2段+背面トレイ+手差しストレート、EP-982A3は前面2段+背面手差し、EW-M5610FTは前面1段+背面簡易トレイ、TR9530は前面1段(普通紙のみ)+背面トレイ、MFC-J5800CDWは前面1段+背面トレイとなる。一度にセット可能な枚数で見ると、A4普通紙はEW-M973A3Tが150枚(前面下段100枚+背面50枚)、EP-982A3が100枚(前面100枚のみ・背面給紙は手差しなので除く)、EW-M5610FTが270枚(前面250枚+背面20枚)、TR9530が200枚(前面100枚+背面100枚)、MFC-J5800CDWが350枚(前面250枚+背面100枚)と、MFC-J5800CDWが有利だ。またA3普通紙だと、EW-M973A3Tが50枚、EP-982A3が1枚、EW-M5610FTが20枚、TR9530が50枚、MFC-J5800CDWが350枚(前面250枚+背面100枚)と、MFC-J5800CDWが圧倒的だ。ハガキはEW-M973A3Tが80枚(前面上段20枚+下段40枚+背面20枚)、EP-982A3が60枚(前面上段20枚+下段40枚・背面給紙は手差しなので除く)、EW-M5610FTが31枚(前面30枚+背面1枚)、TR9530が40枚(背面40枚のみ)、MFC-J5800CDWが80枚(前面30枚+背面50枚)と、こちらはEW-M973A3TMFC-J5800CDWが有利だ。写真用紙もそれぞれ60枚、40枚、21枚、20枚、40枚と、EW-M973A3Tが便利だ。普通紙への印刷が多いならMFC-J5800CDWEW-M5610FTが、ハガキならEW-M973A3TMFC-J5800CDWが、写真用紙への印刷が多いならEW-M973A3Tが便利だ。
 EW-M973A3TEP-982A3は印刷時に自動的に排紙トレイが伸張される機能を搭載する。後述の自動電源オン機能と組み合わせると非常に便利だ。電源を切るときは自動的に排紙トレイが収納される。また、EP-982A3は排紙トレイが伸張する際に、排紙トレイに当たる操作パネル部分は少し持ち上がるが、電源を消ると操作パネルも自動で閉じられる。
 5機種とも用紙の種類とサイズを登録しておく機能が搭載されている。液晶ディスプレイでメニューから登録も可能だが、前面給紙カセットはカセットを挿し込むと、背面給紙はEW-M5610FTMFC-J5800CDWは用紙を挿し込むと、TR9530は給紙口カバーを閉じると自動的に登録画面が表示されるため便利だ(されないようにもできる)。この登録内容と、印刷時の用紙設定が異なっている場合、メッセージが表示される仕組みだ。また、EP-982A3EW-M5610FTは印刷時に実際の用紙幅をセンサーでチェックする機能もあり、用紙外にインクを打ってしまい、プリンター内部が汚れるのを防ぐ事ができるなど工夫がなされている。

プリント(付加機能)
メーカー エプソン エプソン エプソン キャノン ブラザー
型番 EW-M973A3T EP-982A3 EW-M5610FT TR9530 MFC-J5800CDW
製品画像
自動両面印刷 対応/非対応
対応用紙 普通紙
ハガキ
ファイン紙
普通紙
ハガキ
ファイン紙
普通紙
ハガキ
普通紙
ハガキ
普通紙
ハガキ(インクジェット・光沢非対応)
対応サイズ A4
B5
レター
ハガキ
ユーザー定義サイズ(182×257〜215.9×297mm)
A4
B5
レター
ハガキ
ユーザー定義サイズ(182×257〜215.9×297mm)
A4
B5
レター
ハガキ
ユーザー定義サイズ(182×257〜215.9×297mm)
A4
B5
A5
レター
ハガキ
A4
B5
A5
レター
ハガキ
自動両面
印刷速度
A4カラー文書 N/A
(5.0ipm?)
N/A
(4.5ipm?)
5.0ipm 3.0ipm 21.0ipm
A4モノクロ文書 N/A
(6.0ipm?)
N/A
(4.7ipm?)
7.0ipm 3.0ipm 21.0ipm
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷 ○(ネイル印刷対応)
写真補正機能 ○(オートフォトファイン!EX) ○(オートフォトファイン!EX) ○(オートフォトファイン!EX) ○(自動写真補正)
特定インク切れ時印刷 ○(黒だけでモード・5日間のみ) ○(クロだけ印刷・最大30日)
自動電源オン/オフ ○/○ ○/○ −/○ ○/○ −/−
廃インクタンク交換 ○(メンテナンスボックス交換可) ○(メンテナンスボックス交換可) ○(メンテナンスボックス交換可)
フチなし吸収材エラー時の対応機能 ○(フチあり印刷継続可) ○(フチあり印刷継続可) ○(フチあり印刷継続可)

 その他のプリント関連機能を見てみよう。5機種とも自動両面印刷を備えている。ただし、対応用紙や対応サイズには違いがある。対応用紙は一般的には普通紙とハガキとなるが、EW-M973A3TEP-982A3はファイン紙への両面印刷にも対応している。普通紙では両面印刷時に裏移りが気になるほか、画質もそれほど良くない。ファイン紙なら、各社から両面印刷に対応した物が発売されており、裏移りが軽減されているほか、印刷品質も良くなるため、綺麗な両面印刷を行う場合はこちらが便利だが、EW-M973A3TEP-982A3以外は手動で片面ずつ印刷するしか無い。ファイン紙への両面印刷を考えている人にはこれら2機種は便利だ。一方MFC-J5800CDWはハガキサイズには対応するが、インクジェットはがきや光沢ハガキには対応せず、普通紙タイプのハガキのみとなる。
 対応サイズとしては、注意点は、片面プリントはA3又はA3ノビまで対応しているが、自動両面印刷はA4が最大である事だ。A3やB4用紙の自動両面印刷はできない。A4、B5、レター、ハガキサイズは5機種とも対応している。加えて、TR9530MFC-J5800CDWはA5サイズにも対応する。一方、EW-M983A3T、EP-982A3EW-M5610FTはユーザー定義サイズ、つまり定型サイズではない用紙にも対応する。最小は182×257mm、つまりB5サイズなので、手動で設定することでB5より小さいサイズに対応できるわけではないが、A4からB5サイズの間で、非定型サイズにも自動両面印刷が可能となる。ちなみに自動両面印刷の速度は、EW-M5610FTがカラー5.0ipm、モノクロ7.0ipm、TR9530がカラー・モノクロとも3.0ipm、MFC-J5800CDWが21.0ipmとなる。片面印刷の速度に違いがあるため当然のように思えるが、片面印刷の何パーセントの速度が出ているかを計算してみると、EW-M5610FTはカラーが55.6%、モノクロが41.2%、TR9530はカラー30%、モノクロ20%、MFC-J580CDWはどちらも70%となる。片面印刷の高速なMFC-5800CDWは、低下率も低いため、自動両面印刷でもストレスなく使える一方、TR9530は低下率が大きく、EW-M5610FTに片面印刷では勝っていたカラーですら逆転されている。TR9530は自動両面印刷を多用するユーザーには向いていないといえる。EW-M973A3TEP-982A3は自動両面印刷速度は非公開だが、海外の同機能のモデルでは、EW-M973A3Tはカラーが5.0ipm、モノクロが6.0ipm、EP-982A3はそれぞれ4.5ipmと4.7ipmとなっている。片面印刷速度からの低下率はEW-M5610FTに近く、なんとか使えるレベルの速度にはなっているようだ。
 CD/DVD/BDレーベルの印刷はEW-M973A3TEP-982A3TR9530の3機種が搭載している。また、TR9530はレーベル印刷用挿し込み口を利用したネイル印刷にも対応する。写真の自動補正機能としてはエプソンの3機種は「オートフォトファイン!EX」、TR9530は「自動写真補正」という機能を搭載しており、4機能とも逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われる。もちろんパソコンからの印刷時だけでなく、後述のダイレクト印刷時や写真のコピー時にも利用できる(いずれも対応機種のみ)。
 自動電源オン機能はEW-M973A3TEP-982A3TR9530の3機種とも搭載している。パソコンやスマートフォンから印刷が実行されると自動的に電源がオンになる機能だ。その際EW-M973A3TEP-982A3は排紙トレイも自動で伸張する。用紙はあらかじめカセットにセットしておけることから、プリンターの前に行くことなく印刷が実行でき、印刷が完了した頃に取りに行くだけとなる。最近はスマートフォンや離れたところに置いているパソコンから印刷する機会も増えているため、非常に便利だ。ただしTR9530は前述の排紙トレイの自動オープン機能がないため、トレイを引き出してやらないと印刷は実行されない点は注意が必要だ。自動電源オフ機能は、これら3機種に加えてEW-M5610FTも対応しており、指定した時間操作が無いと、自動的に電源がオフになる。その際、EW-M973A3TEP-982A3は排紙トレイも収納される。
 EW-M973A3TEP-982A3EW-M5610FTが搭載しているのが、廃インクタンク(メンテナンスボックス)をユーザーが交換できる機能だ。廃インクタンクはクリーニングの際に排出されるインクを貯めておくタンクで、TR9530MFC-J5800CDWでは満タンになるとメッセージが表示され修理に出して交換するまで一切のプリントが止まってしまう。一方、EW-M973A3TEP-982A3EW-M5610FTはインクカートリッジなどと一緒に交換用メンテナンスボックスが売られており(EW-M973A3T用は2,618円、EP-982A3用は1,078円、EW-M5610FT用は1,980円)、交換すれば印刷が再開できる。安くすむだけでなく、プリンターが手元に無い期間が無くなるため便利だ。さらに、これら3機種はフチなし吸収材が満タンになったときも、便利になっている。フチなし印刷時は、用紙サイズピッタリに印刷すると用紙の微妙なズレによってフチができてしまうため、少し大きめにプリントして、はみ出した部分はフチなし吸収材に吸収させる方法となっている。このフチなし吸収材が満タンになると、TR9530MFC-J5800CDWではプリントが完全に止まってしまうが、EW-M973A3TEP-982A3EW-M5610FTはフチあり印刷に関しては継続ができるようになっているのである。急ぎのプリントを行っておいて、余裕のあるときに修理に出せるため便利な機能だ。

スキャン
メーカー エプソン エプソン エプソン キャノン ブラザー
型番 EW-M973A3T EP-982A3 EW-M5610FT TR9530 MFC-J5800CDW
製品画像
最大スキャンサイズ A4/リーガル
(216×356mm)
A4
(216×297mm)
A4/リーガル
(216×356mm)
A4
(216×297mm)
A4
(215.9×297mm)
読み取り解像度 1200dpi
(1200×4800dpi)
1200dpi
(1200×4800dpi)
1200dpi
(1200×2400dpi)
1200dpi
(1200×2400dpi)
1200dpi
(1200×2400dpi)
(ADFは600×600dpi)
センサータイプ CIS CIS CIS CIS CIS
原稿取り忘れアラーム
ADF 原稿セット可能枚数 35枚 20枚 50枚
原稿サイズ A4/レター/リーガル A4/レター/リーガル ハガキ〜A4
長尺900mmm対応
両面読み取り
読み取り速度 カラー 5.0ipm
(200dpi)
N/A 25.2ipm
(100dpi)
モノクロ 5.0ipm
(200dpi)
N/A 25.2ipm
(100dpi)
原稿取り忘れアラーム
スキャンデーターのメモリーカード保存 ○(JPEG/PDF) ○(JPEG/PDF) ○(JPEG/PDF/TIFF)

 続いて、スキャナー部を見てみよう。最大スキャンサイズは基本的には5機種ともA4(実際は216×297mm)となっているが、EW-M973A3TEW-M5610FTは、リーガルサイズ(216×356mm)までスキャンが可能となっている。A3ノビ/A3プリント対応であるため、どうしても本体の横幅は500mm前後まで大きくなり、A4の297mmの長さのスキャナーしか搭載しないは勿体なく見える。かといってA3スキャナーを搭載できるほど奥行きはない。そこで日本ではなじみは薄いものの、リーガルサイズまでの対応とすることで、本体の大きさを無駄なく使ったスキャナーとなっているのである。また、読み取りセンサーは短辺の216mm幅のもので従来と変わらず、センサーの移動方向だけ伸ばす事で、最低限のコストアップで実現できているといえる。A4より少しだけ長い原稿や、3つ折りの冊子を開いてスキャンするなど、重宝する場面もあるだろう。
 読み取り解像度は全機種が1200dpiだが、EW-M973A3TEP-982A3は1200×4800dpi、残る3機種は1200×2400dpiと微妙に異なる。センサーの読み取り解像度(主走査)は1200dpiで同じだが、センサーの移動方向の精度(副走査)を2400dpiとする機種と4800dpiとする機種があるだけで、実際には大きく変わらない。また、カートリッジ方式の機種では主走査が2400dpiの機種もあるため、それと比べるとやや劣るように見える。しかし、実際は紙などの反射原稿しかスキャンできないため、一般的に文書なら200〜300dpi、写真でも300〜600dpiで、よほどキレイに取り込みたい場合でも1200dpiがせいぜいだ。実際、L判写真を1200dpiでスキャンすると4,200×6,000ドットとなり、2500万画素相当となるため、十分高画質だ。実用上は問題ないだろう。いずれもCIS方式で、厚い本の綴じ目近くなど、ガラス面から浮いてしまう原稿ではピントが合わなくなってしまう点は注意が必要だ。
 また、EW-M5610FTTR9530MFC-J5800CDWの3機種はADFを搭載している。原稿を連続で読み取ることが出来る機能で、EW-M5610FTは35枚、TR9530は20枚、MFC-J5800CDWは50枚まで一度にセットできる。片面読み取りではあるが、スキャンやコピー時に重宝するだろう。なおMFC-J5800CDWは、ADF使用時は最大600×600dpiとなる一方、長尺読み取りとする事で長さ900mmまでのスキャンが可能だ。なお、ADFのスキャン速度は、EW-M5610FTはカラー・モノクロ共に5.0ipmとなっており、ビジネス向けの機種などと比べると遅めだが、数枚の原稿であれば 問題ない速度だ。MC-J5800CDWは1枚2.38秒なので、25.2ipm相当と、非常に高速に見える。しかし、EW-M5610FTが200dpiでの速度なのに対して、MFC-J5800CDWが100dpiでの速度だ。解像度が高くなると速度は低下するのは当然なので、単純には比較できない。ただ、一般的な文書では200〜300dpi程度でスキャンする為、MFC-J5800CDWでは、公表している1枚2.38秒よりは、実用上は遅くなるだろう。
 EW-M973A3TEP-982A3MFC-J5800CDWの3機種はスキャンした原稿をパソコンを使わずにメモリーカードに保存する機能を搭載しているためパソコン無しで簡単にスキャンができる。一方、EP-982A3TR9530MFC-J5800CDWは原稿を取り忘れた際のアラーム機能も搭載しているなど、細かい点で工夫がなされている。

ダイレクト印刷
メーカー エプソン エプソン エプソン キャノン ブラザー
型番 EW-M973A3T EP-982A3 EW-M5610FT TR9530 MFC-J5800CDW
製品画像
ダイレクトプリント メモリーカード SD
(最大256GB)
メモリーカードリーダー対応
(最大2TB)
SD
(最大256GB)
メモリーカードリーダー対応
(最大2TB)
SD
USBメモリー
(外付けHDD/外付けDVDドライブ対応)
(最大2TB)

(外付けHDD/外付けDVDドライブ対応)
(最大2TB)

(最大256GB)
赤外線通信
対応ファイル形式 JPEG JPEG JPEG/TIFF JPEG
最大解像度 10,200×10,200ドット 10,200×10,200ドット N/A N/A
最大読込ファイル数 9,990枚 9,990枚 50,000枚 999枚
日付印刷
写真切り出し ○(ズーム/回転) ○(ズーム/回転) ○(トリミング印刷)
フチなし/フチあり切り替え ○(フチ4種類・フチ太さ3〜39mm) ○(フチ4書類・フチ太さ4段階
色補正機能 赤目補正
明るさ調整(+4〜-4)
コントラスト調整(+4〜-4)
シャープネス調整(3段階)
鮮やかさ調整(+4〜-4)
色調補正(RGB独立・+4〜-4)
フィルター(モノクロ/セピア/レトロ調/ハイキー/デイドリーム/トイフォト/ポップ/クロスプロセス)
色補正一覧印刷
編集した写真の別名保存
赤目補正
色調補正(RGB独立 +4〜-4)
明るさ調整(+4〜-4)
コントラスト調整(+4〜-4)
シャープネス調整(+4〜-4)
鮮やかさ(+4〜-4)
フィルター(モノクロ/セピア/レトロ調/ハイキー/デイドリーム/トイフォト/ポップ/クロスプロセス)
編集した写真の別名保存
赤目補正 明るさ補正(5段階)
コントラスト補正(5段階)
手書き合成 ○(ディスクレーベル対応)
メモリーカードからUSBメモリー/外付けHDDへバックアップ ○/○ ○/○ −/− −/− −/−
PictBridge対応 ○(USB/Wi-Fi) ○(USB/Wi-Fi) ○(Wi-Fi)
各種デザイン用紙印刷 塗り絵印刷
フォーム印刷(カレンダー・罫線・マス目・便箋・スケジュール帳・五線譜・メッセージカード)
デザインペーパー
証明写真印刷
シール印刷
フォトブック印刷
写真コラージュ
ディスクレーベル印刷
CDジャケット印刷
撮影情報付き印刷
インデックス
塗り絵印刷
フォーム印刷(カレンダー・罫線・マス目・便箋・スケジュール帳・五線譜・メッセージカード)
デザインペーパー
証明写真印刷
シール印刷
フォトブック印刷
写真コラージュ
ディスクレーベル印刷
CDジャケット印刷
撮影情報付き印刷
インデックス
カレンダー印刷
定型フォーム印刷(レポート用紙、原稿用紙/スケジュール用紙、方眼紙、チェックリスト、五線譜、漢字練習帳)
組み込みパターンペーパー
ディスクレーベル印刷
インデックスプリント

 ダイレクト印刷は、EW-M5610FTを除く4機種が搭載している。EW-M973A3TEP-982A3はSDカードリーダーとUSBポートを搭載しているため、SDカードやUSBメモリーからの写真印刷に対応している。またこのUSBポートは、外付けハードディスクや外付けDVDドライブにも対応しているため、これらからの印刷が行える。さらにメモリーカードリーダーにも対応しているので、SDカード以外のメモリーカードを利用したい場合でも、パソコン用のカードリーダーを用意すれば可能だ。EP-982A3は赤外線通信にも対応し、ガラケーからの写真印刷にも対応する。一方、TR9530はSDカードリーダーのみを搭載している。逆にMFC-J5800CDWはUSBポートのみ搭載している。メモリカードリーダーなどには非対応なので、USBメモリーのみの対応となる。なお、いずれもJPEG形式(TR9530はTIFF形式も)の対応で、PDFなどの印刷はできない。あくまで写真の印刷用となる。
 ダイレクト印刷時の日付印刷機能と、フチあり・フチなしを選べる点は4機種とも同じだが、は写真の一部を拡大して印刷する「ズーム/回転」または「トリミング印刷」機能は、MFC-J5800CDWを除く3機種が搭載している。また、フチあり、フチなしについても、TR9530MFC-J5800CDWはフチなしとフチあり(というよりフチなし印刷しない)の2種類しか選べないが、EW-M973A3TEP-982A3はフチなし、フチあり(白フチ)だけでなく黒フチも選べる他、写真の周囲にフチの色とは逆の細い枠線の入った黒枠付きの白フチ、白枠付きの黒フチも選べる。フチの太さもEP-982A3は4段階から選べ、EW-M973A3Tに至っては3〜39mmの間で1mm単位で調整が可能である。
 それ以外の補正機能にも大きな違いがある。上記以外の機能だと、TR9530は赤目補正のみで、色の調整などは一切できない。「自動写真補正」機能が使用できるため、自動でも綺麗に補正されるが、プリンター任せとなる。逆にMFC-J5800CDWは、高度な自動写真補正機能は搭載しないが、明るさとコントラストを5段階から調整が出来る。なお赤目補正機能は搭載しない。これらに対して、EW-M973A3TEP-982A3は機能が豊富だ。「赤目補正」機能の他、「作品印刷機能」と呼ぶ機能を搭載しており、「明るさ」「コントラスト」「シャープネス」「鮮やかさ」を+4から-4の9段階で調整が可能だ(シャープネスは3段階)。「オートフォトファイン!EX」も搭載するため自動でもかなり高精度に補正されるが、手動で好みの色に調整が可能だ。さらにフィルターも「レトロ」「セピア」「トイフォト」「ハイキー」「ポップ」「デイドリーム」「モノクロ」「クロスプロセス」といった8種類を用意している。さらにEW-M973A3Tでは、レッド、グリーン、ブルーのそれぞれの色調も9段階で調整できるため、色味を高度に調整できる。また、液晶画面上での調整では印刷時に異なる場合があるため、選んだ写真の色補正一覧を印刷し、その中から好みの物を選ぶことができる機能も備えるなど、「写真作品」を印刷できるほどまで機能豊富だ。また、苦労して好みの色合いに調整しても、次回印刷時はまた設定し直しでは大変だが、EW-M973A3TEP-982A3は作り込んだ写真を、別名でメモリーカードに保存できるのもアドバンテージだ。この2機種はSDカードからUSBメモリーや外付けハードディスクへ写真をバックアップすることも可能だ。SDカードから写真印刷、そして写真のバックアップ、バックアップ先からの写真印刷、写真の色補正までがパソコン無しで行える事になる。
 手書きの文字やイラストと写真を合成して印刷できる「手書き合成シート」はEW-M973A3TEP-982A3TR9530が対応している。TR9530は写真やハガキだけでなくCD/DVD/Blu-rayレーベルの手書き合成にも対応している。その他EW-M973A3TEP-982A3は塗り絵風の輪郭だけの印刷や、罫線、マス目、便箋、スケジュール帳、五線譜、メッセージカードなどが印刷できるフォーム印刷機能、ラッピングやブックカバーなどに使える全面模様の用紙を印刷できる「デザインペーパー印刷」、3種類の証明写真サイズの写真印刷ができる「証明写真印刷」機能、ラベル用紙に印刷して複数面のシールにできる「シール印刷」、写真を1〜数枚並べたフォトブックを印刷する機能、背景柄や複数の写真を組み合わせられる「写真コラージュ」機能の他、写真を1枚又は複数枚並べてディスクのレーベル面に印刷できる機能やCDジャケットを作成できる機能を搭載する。また、写真一覧を印刷できる「インデックスプリント」だけで無く、「撮影情報付き印刷」なら撮影日時やシャッタースピード、焦点距離とF値、カメラ名などと共に一覧印刷が可能だ。このように、単体で様々な印刷が可能だ。一方TR9530も写真をはめ込んだ「カレンダー印刷」機能や、レポート用紙、原稿用紙、スケジュール帳、方眼紙、チェックリスト、五線譜、漢字練習帳が印刷できる「定型フォーム印刷」、ディスクレーベルに印刷する機能を搭載している。MFC-J5800CDWはインデックスプリント機能だけ、EW-M5610FTはこういった機能は一切搭載してない。
 以上からダイレクト印刷機能はEW-M973A3Tが圧倒的に豊富で、EP-982A3も近い機能を搭載している一方、TR9530MFC-J5800CDWは基本的な機能のみ搭載と言った感じだ。

スマートフォン/クラウド対応
メーカー エプソン エプソン エプソン キャノン ブラザー
型番 EW-M973A3T EP-982A3 EW-M5610FT TR9530 MFC-J5800CDW
製品画像
スマートフォン連携 アプリ メーカー専用 Epson Smart Panel
Epson Print Layout
(EPSON iPrintにも対応)
Epson Smart Panel
(EPSON iPrintにも対応)
Epson Smart Panel
(EPSON iPrintにも対応)
Canon PRINT Inkjet/SELPHY Brother Mobile Connect
AirPrint
対応端末 iOS 13.0以降
Android 8.0以降
(Epson Print Layout使用時はiOS 13.0以降・Android非対応)
iOS 13.0以降
Android 8.0以降
iOS 13.0以降
Android 8.0以降
iOS 14.0以降
Android 6.0以降
iOS 14.0以降
Android 5.0以降
Wi-Fiダイレクト接続対応
Wi-Fiダイレクト接続支援機能 ○(QRコード読み取り(iOS)/アプリ上で選択して本体で許可(Android)) ○(QRコード読み取り(iOS)/アプリ上で選択して本体で許可(Android)) ○(QRコード読み取り(iOS)/アプリ上で選択して本体で許可(Android)) ○(Bluetooth)
スマートフォンから初期設定 ○(Bluetooth LEで自動接続)
スマートスピーカー対応 ○(Alexa/Googleアシスタント) ○(Alexa/Googleアシスタント) ○(Alexa/Googleアシスタント) ○(Alexa/Googleアシスタント/LINE Clova)
写真プリント
ドキュメントプリント ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
スキャン ○(PDF/JPEG) ○(PDF/JPEG) ○(PDF/JPEG) ○(PDF/JPEG) ○(PDF/JPEG)
クラウド連携 プリント アプリ経由/本体 ○/− ○/− ○/− ○/○ ○/○
オンラインストレージ ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/google classroom) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/google classroom) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/google classroom) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/OneNote)
SNS ○(Instagram/Facebook・コメント付き可) ○(Instagram/Facebook・コメント付き可) ○(Instagram/Facebook・コメント付き可) ○(Instagram/Facebook・コメント付き可)
写真共有サイト ○(googleフォト/image.canon)
スキャン アプリ経由/本体 ○/○ ○/○ ○/○ ○/○ ○/○
スキャンしてオンラインストレージにアップロード ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/google classroom)
(google classroomはアプリからのみ)
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/google classroom)
(google classroomはアプリからのみ)
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/google classroom)
(google classroomはアプリからのみ)
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom)
(OneDrive/google classroomはアプリからのみ)
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/OneNote)
メールしてプリント ○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/BMP/PDF/Word/Excel/PowerPoint/メール本文) ○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/BMP/PDF/Word/Excel/PowerPoint/メール本文) ○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/BMP/PDF/Word/Excel/PowerPoint/メール本文) ○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/BMP/PDF/Word/Excel/PowerPoint/TXT/メール本文)
LINEからプリント ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint)
リモートプリント ○(リモートプリントドライバー) ○(リモートプリントドライバー) ○(リモートプリントドライバー)
スキャンしてリモートプリント

 スマートフォン・クラウド対応機能を見てみよう。iOSとAndroid端末に対応している。いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることでプリント又はスキャンが行える。メインで使用すると思われる写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。さらにドキュメント印刷にも対応している。PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もでき便利だ。また、スマートフォン上からスキャンを実行し、データーをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。新聞や雑誌、手書きの情報などをスマートフォンに電子化するといった使い方ができるため便利だろう。なお、iPhoneやiPadの場合、AirPrintを利用したプリントも可能だ。また、EW-M973A3Tは通常のEpson Smart Panelの他、プロ向けのプリンター用に提供される、より高度な写真印刷が行えるアプリ「Epson Print Layout」も利用可能だ。
 スマートフォンとの接続は、無線LAN(Wi-Fi)で行うが、無線LANルーターを経由する方法と、ダイレクトに接続する「Wi-Fiダイレクト」(TR9530の機能名はダイレクト接続)が選べる。無線LANルーターを経由する方が、機能面でも制限が無く、印刷する度にプリンターと接続と切断を繰り返すのWi-Fiダイレクトと比べると便利なので、こちらを利用するのがお勧めだが、無線LANルーターが無い環境で使用する場合や、一時的に同じネットワークに入っていない人がプリンターを使う場合にWi-Fiダイレクトは便利だ。Wi-Fiダイレクトの接続設定は手動でもそれほど難しくは無いが、MFC-J5800CDWを除く4機種は、接続支援機能が提供される。iOSの場合はエプソンの3機種は、本体の液晶に表示されるQRコードを標準カメラアプリで読み込めば接続が完了する。セキュリティーキーの入力などは不要で、非常に簡単になっている。TR9530はiOSの場合は従来通りWi-Fi設定からSSIDを選択し、セキュリティーキーの入力が必要だ。一方、Androidの場合は、エプソンの3機種はスマホアプリ上の一覧からプリンター選ぶと、本体の液晶にメッセージが表示されるので接続の許可を選べば接続が完了する。こちらも、セキュリティーキーの入力などが不要だ。一方、TR9530はBluetoothを用いた接続支援機能が搭載される。とはいえ、Bluetoothで直接印刷データーを送信するのではなく、接続自体はWi-Fiだが、あらかじめBluetoothでペアリングしておけば、Wi-Fiダイレクトの設定が簡単に行えるというものだ。しかし、エプソンの3機種と比べるとと事前にペアリング設定が必要なため使い勝手は劣るためか、本体とスマホ用アプリ上の両方で設定メニューはかなり奥にあり、メーカー側でも積極的に機能を薦めているわけではない。Wi-Fiダイレクトの接続はエプソンの3機種が便利だと言えるだろう。
 さらに、EW-M973A3Tにはスマホからプリンターの初期設定を簡単に行える機能も搭載する。アプリ上で「新規セットアップ」を選択し、初期設定を行っていないEW-M973A3Tの電源をオンにすると、EW-M973A3Tが一覧に表示される。これを選ぶとBluetooth LEを使用してEW-M973A3Tに自動接続される。そして、設置からインクの補充方法などを対話形式でスマートフォン上で案内し、最後にEW-M973A3Tをスマートフォンと同じネットワークのWi-Fiに接続して終了となる。インクの補充などの手順が非常に分かりやすいほか、自動的にネットワークの設定まで行われるので、初期設定のハードルは5機種中最も低いと言える。
 また、MFC-J5800CDWを除く4機種はスマートスピーカーに対応している。AlexaとGoogleアシスタント対応端末に対応しており、声だけでテンプレートを印刷させることができる。TR9530はLINE Clova対応端末にも対応している。エプソンの3機種は、デザインペーパー、フォトプロップス、カレンダー、ノート、方眼紙、五線譜などのエプソン独自のものと、Alexaに登録された買い物リスト、やることリストなどとなる。TR9530はナンプレ、ぬりえ、レポート用紙、チェックリスト、五線譜などキャノン独自のものと、プリンターの状態の確認が行える。
 さらに、クラウドとの連携機能も5機種とも搭載している。プリントの場合、オンラインストレージにアクセスし、ファイルを印刷が可能である。また、MFC-J5800CDW以外の4機種は、SNSの写真をコメント付きで印刷する事ができる。またTR9530は写真共有サイトからの印刷も可能だ。ここで大きな違いは、エプソンの3機種はスマートフォンのアプリとして搭載しているのに対して、TR9530MFC-J5800CDWはスマートフォン上だけでなくプリンター本体の操作でもクラウドにアクセスし印刷ができる点が上げられる。実際の操作性はスマートフォンからの方が上だが、本体だけで手軽にアクセスできる方法と、操作性が良いアプリ上で行う方法が選べるという点ではTR9530MFC-J5800CDWが便利だ。一方、スキャンの場合、スキャンしてオンラインストレージへアップロードできる。こちらはプリントとは異なり、5機種とも本体の操作でアップロードまで行うことも、スマートフォンからスキャンしてアップロードすることもできる。アプリをわざわざ立ち上げなくても、サッとスキャンしてアップロードできるため便利だ。
 さらにリモートプリント機能として、エプソンの3機種は、印刷したい写真や文書を添付してプリンターのにメールアドレスに送信すると自動で印刷できる「メールプリント」、LINE上でプリンターを友達登録し、トーク画面から写真を送信すると印刷される「LINEからプリント」、スキャンして離れた場所の対応複合機で印刷できる「メールdeリモート印刷」、パソコンやスマートフォンから通常のプリントと同じ操作で、外出先など離れた場所から自宅のこれらの機種で印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。一方のTR9530はLINEのトーク画面から印刷する「PIXUSトークプリント」のみ対応している。一方、MFC-J5800CDWは印刷したいファイルを添付してメールする「Eメールプリント」機能のみ搭載する。リモートプリント機能はエプソンの3機種が豊富だと言える。

コピー機能
メーカー エプソン エプソン エプソン キャノン ブラザー
型番 EW-M973A3T EP-982A3 EW-M5610FT TR9530 MFC-J5800CDW
製品画像
等倍コピー
拡大縮小 倍率指定 ○(25〜400%) ○(25〜400%) ○(25〜400%) ○(25〜400%) ○(25〜400%)
オートフィット
定型変倍
フチなしコピー
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー ○(退色復元対応) ○(退色復元対応) ○(色あせ補正対応)
割り付け(2面/4面) ○/− ○/− ○/− ○/○ ○/○
プレビュー
その他のコピー機能 濃度調整
背景除去機能
鮮やかさ調整
色調調整(レッド・グリーン・ブルー個別)
色相調整
濃度調整
背景除去機能
コントラスト調整
鮮やかさ調整
色調補正(レッド・グリーン・ブルー個別)
シャープネス調整
色相調整
濃度調整 濃度調整 濃度調整
地色除去コピー
傾き補正
バラエティコピー 見開きコピー
IDコピー
ミラーコピー
塗り絵コピー
リピートコピー
A3原稿二つ折りコピー
見開きコピー
IDコピー
ミラーコピー
塗り絵コピー
リピートコピー
A3原稿二つ折りコピー
IDコピー
影消しコピー
パンチ穴消しコピー
ADF手動両面コピー
ページ順コピー
大判原稿コピー
冊子レイアウトコピー
枠消しコピー
IDコピー
コピー予約
2in1IDカードコピー
ブックコピー
透かしコピー
ソートコピー
ポスターコピー(3×3/2×2/1×2)
A4+ノート
A4+方眼
A4+メモ
A4センター

 コピー機能を見てみよう。単純なコピー機能としては、5機種とも等倍コピーだけでなく、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「オートフィット」機能や、原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行う「定型変倍」機能、さらに25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える機能を搭載した高性能な物となっている。一方、それ以外の機能は機種によって差がある。まず、フチなしコピーについては、MFC-J5800CDWを除く4機種が対応する。また、CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷に対応したEW-M973A3TEP-982A3TR9530は、レーベルコピーにも対応する。またこれら3機種は原稿面に写真を複数枚置き、焼き増し風のコピーを行うことも出来る。この際「退色復元」や「色あせ補正」機能を使えば、昔の色あせした写真も自動で補正してくれる機能も備えている。さすが写真印刷が行える画質を持つ機種と言えるだろう。2枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2面割り付けは5機種とも対応するが、4枚の原稿を1枚に縮小する4面割り付けはTR9530MFC-J5800CDWのみの対応だ。また、EW-M973A3TEP-982A3TR9530はコピー前にプレビューを行うことで、原稿のセットミスの確認が行える他、プレビューを元に拡大縮小を調整できる。
 その他、画質の調整機能を見てみよう。濃度調整機能は5機種とも搭載する。EW-M5610FTTR9530はこれだけとなる。一方、EW-M973A3TEP-982A3MFC-J5800CDWは背景色を消すことで見やすくし、インクも節約できる「背景除去機能」又は「地色除去コピー」も行える。さらに、EW-M973A3TEP-982A3は鮮やかさ、色調、色相の調整も可能である。色相はレッド、グリーン、ブルーを個別に調整できるため、元の原稿に近い色や読みやすい色など、好みの色に調整が出来る。EP-982A3はこれに加えて、コントラストとシャープネス調整も可能だ。一方、MFC-J5800CDWは、原稿の傾きを自動で補正する「傾き補正」機能を搭載している。
 それぞれ、バラエティーコピーを行える機能を搭載する。EW-M973A3TEP-982A3は、A4又はB5の見開きの本を左右ページで別々にスキャンして、1枚に2面割付又は両面コピーする「見開きコピー」、免許証などの裏表をそれぞれスキャンして1枚の用紙に並べて印刷する「IDコピー」、アイロンプリント紙への印刷時に使える「ミラーコピー」、メモリーカードからのダイレクト印刷時と同じく輪郭だけの塗り絵風に変換してコピーする「塗り絵印刷」が行える他、同じ内容を2面、4面、または用紙サイズに合わせて自動的に割り付ける「リピートコピー」機能や、A3原稿を2回に分けてスキャンすることでA3コピーを可能にする「A3原稿二つ折りコピー」機能を搭載する。「見開きコピー」は通常の2面割付又は両面印刷と同じ機能のようだが、本の場合は原稿カバーが邪魔になり右ページと左ページをスキャンする際で向きが逆になってしまうが、片方を180度回転させて同じ向きにして並べられる。「リピートコピー」は手書きメモやネームシールなどをコピーするのに便利だ。A3原稿二つ折りコピーも、A3原稿を左右それぞれスキャンして2面割り付けしても同じようだが、2面割付では周囲だけでなく真ん中にも余白が出来るのに対して、この機能では真ん中は余白がないように結合されるので、多少のズレはあるがA3コピーに近い仕上がりとなる。EW-M5610FTも「IDコピー」機能を搭載する他、本のとじ目部分や周囲に出来る影を消す「影消しコピー」、パンチ穴を消す「パンチ穴消しコピー」機能を搭載する。TR9530は綴じ目や周囲の黒くなる部分を消す「枠消しコピー」機能と「IDコピー」機能の他、「A3原稿二つ折りコピー」と同じ「大判原稿コピー」機能、A4の原稿をA3見開き冊子の形に割り付けコピーする「冊子レイアウトコピー」機能の他、コピー実行中でも次の原稿の読み取り操作ができる「コピー予約」も可能だ。さらに、ADFを利用した機能として、複数ページの複数部をコピーするときに1部ずつまとめてコピーする「ページ順コピー」、ADFは片面スキャンだが、片面を連続スキャンし、次に裏面を連続スキャンすることで、両面に印刷してくれる「ADF手動両面コピー」機能を搭載している。MFC-J5800CDWも「2in1IDカードコピー」が行える他、見開きの本をコピーする際に本の傾きを自動補正し、綴じ目や周囲の影を除去する「ブックコピー」、コピー文書に透かし文字を入れられる「透かしコピー」、ADFを使用して、複数部のコピーを行う場合に1部ずつプリントする「ソートコピー」、さらに1枚の原稿を、2枚、4枚、9枚に分割してプリントし、貼り付ける事で大判コピーが行える「ポスターコピー」機能を搭載する。「透かしコピー」は「重要」「COPY」「社外秘」といった5種類から選べ、位置やサイズ、回転角度や透過度、文字の色も指定できる。また、A4原稿をA3用紙にプリントする際に、拡大するのでは無く、左半分に印刷し、右半分をノートや方眼、メモ用の余白に出来る機能や、A3用紙のセンターに等倍のまま印刷する機能も搭載する。5機種とも機能は異なるが、それぞれ便利なコピー機能をふんだんに搭載している。

ファクス機能
メーカー エプソン エプソン エプソン キャノン ブラザー
型番 EW-M973A3T EP-982A3 EW-M5610FT TR9530 MFC-J5800CDW
製品画像
通信速度 33.6kbps 33.6kbps
画質設定 モノクロ 8dot/mm×3.85line/mm(標準)
8dot/mm×7.7line/mm(精細)
8dot/mm×7.7line/mm(写真)
8dot/mm×3.85line/mm(標準)
8dot/mm×7.7line/mm(ファイン)
8dot/mm×15.4line/mm(スーパーファイン)
8dot/mm×7.7line/mm(写真)
カラー 200×200dpi 203×196dpi(標準・ファイン)
送信原稿サイズ A4/A5/リーガル A4/レター/リーガル
記録紙サイズ A3/B4/A4/B5/A5/リーガル/レター A3/B4/A4
受信ファクス最大保存ページ数 100枚/100件 400枚/N/A件
データー保持(電源オフ/停電) ○/○ ○/○
ワンタッチ 8件(4件+シフト押し4件)
アドレス帳 100件 100件×2番号
グループダイヤル 99宛先 198宛先
順次同報送信 100宛先 250宛先
(電話帳200宛先+手入力50宛先)
自動リダイヤル
発信元記録
ポーリング受信/送信 −/− −/− ○/− −/− −/−
ファクス/電話自動切替
見てから送信
見てから印刷
受信ファクスを メール送信
共有フォルダ保存 −(Dropbox/Evernote/googleドライブ対応)
外部メモリー保存
PCファクス 送受信 送受信

 ファクス機能を搭載しているのは、EW-M5610FTMFC-J5800CDWの2機種となる。搭載している機能はほぼ同等だが、細かなところで違いが出ている。2機種ともスーパーG3に対応しており、モノクロ、カラーファクスを行う事が出来る。ADFを搭載しているため、複数枚の原稿の送信も便利である。33.6Kbpsで通信可能であり、その場合の伝送速度はモノクロで約3秒となる。また読取走査線密度はモノクロで8dot/mm×3.85本/mmの標準モード、8dot/mm×7.7本/mmの精細モード/ファインモード、解像度は同じだが写真が含まれた原稿に適した写真モードは両機種共通だ。MFC-J5800CDWは加えてさらに高画質な8dot/mm×15.4本/mmのスーパーファインモードが選択できる。カラーは約200×200dpiでほぼ同等だ。送信原稿は、リーガルやレターサイズを除くと、MFC-J5800CDWはA4サイズのみだが、EW-M5610FTはA4の他A5サイズにも対応する。一方、受信したファクスの印刷は、両機種ともA3、B4、A4サイズに対応するが、EW-M5610FTはB5やA5サイズにも対応する。一般的にはMFC-J5800CDWでも問題ないが、EW-M5610FTしか対応しない送信原稿や受信用紙のサイズでファクスを利用したい人には注意が必要だ。
 受信したファクスはEW-M5610FTが100枚又は100件、MFC-J5610CDWが400枚(件数未公開)と差があるため、受信件数が多い場合は注意が必要だ。一方、、停電時やコンセントが抜けた場合のデーター保持は両機種とも行える。
 ダイヤル機能としては、両機種ともアドレス帳機能を搭載し、両機種とも100件まで登録出来るが、MFC-J5800CDWは1件あたり2番号まで登録出来るので、電話番号は200番号の登録が可能だ。またワンタッチダイヤルを8件(ボタンは4つで、シフトボタンと併せて8件)搭載しているため、決まった宛先には素早くファクスを送信できる。その他、グループダイヤル、順次同報送信、自動リダイヤル、発信元記録などの基本的な機能を搭載している。さらに、送信するファクスを液晶で確認してから送信する「見てから送信」と、受信したファクスの内容を液晶で確認した上で印刷するか決めることで用紙を節約できる「見てから印刷」機能も備える。加えてEW-M5610FTはボーリング受信にも対応している。一方MFC-J5800CDWは受信したファクスをクラウド上にアップする機能を搭載している。
 さらに、パソコン内のデーターを直接ファクスできる「PCファクス」機能も両機種とも搭載している。パソコン上のデーターをファクスとして送信する機能と、パソコン上にファクスのデーターを受信する機能の両対応だ。なお、両機種ともファクス機能だけで受話器がないため通話機能は無いが、モジュラージャックのインとアウトを備えており、アウトに電話機を接続すると通話が可能となる。その際、ファクス/電話自動切り替え機能にも対応しているのも便利だ。

操作パネル/インターフェース/本体サイズ
メーカー エプソン エプソン エプソン キャノン ブラザー
型番 EW-M973A3T EP-982A3 EW-M5610FT TR9530 MFC-J5800CDW
製品画像
液晶ディスプレイ 4.3型
(70度角度調整可)
4.3型
(90度角度調整可)
2.7型
(80度角度調整可)
4.3型
(角度調整可)
3.5型
(角度調整可)
操作パネル タッチパネル液晶
(70度角度調整可)
タッチパネル液晶
(90度角度調整可)
タッチパネル液晶
(80度角度調整可)
タッチパネル液晶
(90度角度調整可)
タッチパネル液晶+物理ボタン
(角度調整可)
インターフェイス USB他 USB2.0×1 USB2.0×1 USB2.0×1 USB2.0×1 USB2.0×1
無線LAN IEEE802.11ac/n/a/g/b
(5GHz帯対応)
IEEE802.11ac/n/a/g/b
(5GHz帯対応)
IEEE802.11n/g/b
IEEE802.11n/g/b
IEEE802.11n/g/b
有線LAN 100BASE-TX 100BASE-TX 100BASE-TX 100BASE-TX 100BASE-TX
対応OS Windows 11/10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 11/10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 11/10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 11/10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.10.5〜(AirPrint利用)
Windows 11/10/8.1/7 SP1
MacOS 10.15.x〜
耐久枚数 5万枚または5年 N/A 10万枚または5年 N/A 30万枚または7年
外形寸法(横×奥×高) 523×379×169mm 479×356×148mm 498×358×245mm 468×366×193mm 545×436×305mm
重量 11.1kg 8.5kg 10.2kg 9.7kg 17.7kg
本体カラー ブラック ホワイト ホワイト ブラック
ホワイト
ホワイト系

 操作パネルの位置は5機種とも共通だ。液晶も操作パネルも本体前面に取り付けられ、持ち上げて起こすことができるので見やすい角度に調整できる。EW-M973A3Tは70度、EP-982A3は90度、EW-M5610CDWは80度、TR9530もほぼ90度近くまで角度調整が可能で、MFC-J5800CDWはそこまでではないがある程度の角度調整が可能だ。設置する場所によらず使いやすい。ただし、操作パネルや液晶には違いがある。5機種ともタッチパネル液晶を搭載しており、直接画面内の項目をタッチして操作できるので、直感的に操作が可能だ。EW-M979A3T、EP-982A3TR9530は4.3型の液晶となっており、大型である事から視認性・操作性が良い。全ての操作が液晶内で行われ、電源ボタン以外の物理ボタンはない。EW-M5610FTも電源とヘルプボタン以外は物理ボタンはないが、液晶は2.7型とやや小さめだ。視認性が極端に悪くなるほどではないが、前の3機種と比べると劣る。また、EW-M5610FTはファクス機能を搭載しているが、その際のダイヤル用テンキーも液晶内に表示される。一方MFC-J5800CDWは3.5型液晶を搭載するが、ファクス用のテンキーの他、「ホーム」「戻る」「キャンセル」と、ワンタッチダイヤル用のボタンは物理ボタンとなる。特にテンキーが物理キーで搭載される点がEW-M5610FTとの大きな違いだ。テンキーが液晶内に表示されるEW-M5610FTでは、バックライトがあるため暗いところでも操作できる他、ファクス機能を使わない際はテンキーが見えないためスッキリしている。物理キーで搭載するMFC-J5800CDWは、テンキーを押した感触があるため、番号入力が行いやすいが、操作パネルのボタン数が多くなるため、見た目が煩雑になる。どちらが良いかは人それぞれだが、ファクス機能をよく使うなら、MFC-J5800CDWの方が使いやすいかもしれない。
 インターフェースは5機種とも共通で、USB2.0に加えて、有線/無線LANに対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルーターで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人には有線LAN/無線LANによりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。またネットワーク接続をすればスマートフォンやタブレットからの印刷も可能となる。また、無線LANに加えて有線LANにも対応しているため、無線LANの電波が届きにくい、壁内にLAN配線がある、手軽に接続したいなどの理由で有線LAN接続を使用する事も可能だ。一方、無線LAN機能には差があり、EW-M973A3TEP-982A3では、他の3機種より機能が強化されている。他の3機種はIEEE802.11n/g/bに対応しているが、これは2.4GHz帯の周波数を使用する。2.4GHz帯はBluetoothや無線マウス、固定電話の子機などと帯域が同じだし、電子レンジの影響を受けやすい。一方、EW-M973A3TEP-982A3はIEEE802.11ac/n/a/g/bに対応している。IEEE802.11ac/n/aでは5GHz帯の電波を使用でき、5GHz帯は基本的に無線LANでしか使用しないため、電波干渉が起こりにくく安定する。さらにIEEE802.11nと比べるとIEEE802.11acは通信速度が大幅に上がっているため、プリントやスキャンで通信速度がボトルネックになりにくくなっている。無線LANでの接続を考えている人には、EW-M973A3TEP-982A3は通信速度と安定性の2つの面でメリットがあると言える。
 対応OSはメーカーによる差が大きい。エプソンの3機種はWindows XP SP3以降は全て対応する。マイクロソフトのサポートの終了したWindows XPやVistaにも対応するのは安心だ。MacOSも10.6.8以降と比較的古いバージョンに対応するだけでなく、ダウンロード対応とはなるがメーカーから専用ドライバーが提供される。一方、TR9530MFC-J5800CDWはWindows 7 SP1以降でWindows XPやVistaには非対応なだけでなく、Windows 8も非対応である点は注意が必要だ。MacOSもTR9530は10.10.5以降、MFC-J5800CDWはMacOS 10.15.X以降と比較的新しいバージョンのみ対応だ。また、両機種ともドライバーはメーカーからは提供されず、AirPrintを使用する方法となっているため、一部の印刷設定、本体の動作設定ができない点でWindowsで利用する場合に比べて不便になっている。
 本体サイズを見てみよう。ADFもなく、通常のカートリッジ方式のEP-982A3は479×356×148mmとなる。一昔前のA4複合機に匹敵するコンパクトさとなる。コレを基準に見てみよう。EW-M973A3Tは523×379×169mmとなる。横幅が44mm、奥行きが23mm、高さが21mm大きく、全体に一回り大きい。エコタンク方式である事に加えて、EP-982A3より大きいA3ノビサイズに対応するためと思われる。EW-M5610FTは498×358×245mmで、同じA3ノビ対応ながら、インク数が少ないことや背面給紙が簡易的である事もあって、幅・奥行きはEP-982A3と余り変わらない。ADFを搭載している分高さは大きくなっているが、設置面積は小さいといえる。TR9530は468×366×193mmで、EP-982A3とほぼ同じ幅と高さだ。カートリッジ方式でA3ノビには非対応と共通する部分も多く、このサイズが限界と言えるのかもしれない。高さはADFを搭載する分大きくなっている。MFC-J5800CDWは545×436×305mmで、横幅、高さ、奥行きの全てが5機種中最も大きいためかなり存在感がある。MFC-J5800CDW以外の4機種のサイズは大きな違いはないが、MFC-J5800CDWだけは、設置スペースに注意が必要だ。MFC-J5800CDWは前面カセットにA3用紙セットできるが、その場合はカセットも前方に大きく飛び出る。一方背面給紙が手差し給紙のEP-982A3を除く4機種は、背面給紙を使用する際に後方と上方にスペースが必要だ。特にTR9530は普通紙以外は背面給紙からしか使用できないため、背面給紙をほぼ確実に利用する事となるため、設置スペースは他機種よりもやや大きく見積もる必要がある。
 ちなみに、本体の耐久枚数は、EW-M973A3Tが5万枚、EW-M5610FTが10万枚、MFC-J5800CDWが20万枚となっている。他の2機種は公表していないが、家庭向けプリンターは1万〜1万5000枚程度が一般的なので、これら3機種はかなり強化されている。EW-M973A3TEW-M5610FTはエコタンク方式であるため、MFC-J5800CDWもビジネス向けの機種だけに印刷枚数が多い事が予想されるだけに、うれしい強化点と言える。



 A3プリントA4スキャンという共通点での比較だが、5機種は思いのほか違う点の多い事が分かる。ではどれがオススメだろうか。まず、ファクス機能が必要ならEW-M5610FTMFC-J5800CDWの2択となる。印刷枚数が多いなど、印刷コストを気にするならEW-M5610FTだ。MFC-J5800CDWもファーストタンク方式で安い方ではあるが、エコタンク方式の安さは圧倒的だ。カラー文書は4分の1以下、モノクロ文書も半分の印刷コストであるたけでなく、インク1セットの価格が安いのも魅力だ。本体の価格差は13,728円あるが、カラー文書なら4,429枚、モノクロ文書でも34,320枚で逆転する計算だ。実際にはEW-M5610FTは同梱インクで3,600枚以上印刷できるので、その分を考えるともっと早くに逆転する。印刷速度も速く、自動両面印刷やADFも搭載し、ファクス機能も問題なく、操作性もまあまあだ。メンテナンスボックスが交換できるなど長く使っても安心だし、コンパクトさの面でも優秀だ。一方、印刷コストよりも、印刷速度や文書の画質を重視するならMFC-J5800CDWだ。30.0ipmという速度は、カラー文書はEW-M5610FTの3.3倍、モノクロ文書は1.76倍となる。ファーストプリントも高速なので、数枚の印刷を頻繁に行う使い方でも便利だ。全色顔料インクなので、普通紙印刷が高画質で耐水性も高い。またテンキーを物理ボタンで搭載しているので、ファクス送信が多いなら使いやすいだろう。ただ、普通紙印刷以外は苦手なのと、本体サイズがかなり大きい点は、注意が必要だ。
 それではファクス機能が不要な場合はどうだろう。その場合はファクス機能付きの機種も不要な機能が付いているというだけなので、選択肢からは除外されないため、改めて5機種から選ぶ事になる。まず写真印刷を行うならEW-M973A3TEP-982A3TR9530の3機種となる。特に画質にこだわるなら前の2機種だ。EW-M973A3Tの方が給紙機能が豊富で、より写真印刷の機能が豊富と言えるが、操作性やダイレクト印刷機能、コピー機能、操作性には似た部分が多い。やはり、大きな違いとしては印刷コストだろう。EW-M973A3TのL判写真の用紙代を除くと2.9円というのは、EP-982A3の18.0円やTR9530の14.4円と比べて圧倒的に安い。その分本体価格がEP-982A3と比べて約56,000円、TR9530と比べて約57,000円高い。これをL判写真やA4文書で元を取ろうと思うと4,000〜5,000枚の印刷が必要となる。ただ、A3サイズなど大判の写真印刷を行うなら話は変わってくる。A3サイズの印刷コストは出ていないが、サイズ比でL判の11倍なので、それなりの印刷コストになる。A3サイズもそれなりにプリントする、もしくはL判写真や文書も大量印刷するならEW-M973A3Tがオススメだ。EW-M973A3Tは同梱インクも大容量なので、その分を考えても印刷枚数が多ければ元が取れる。一方、印刷枚数はそれほど多くないなら、EP-982A3TR9530となる。写真印刷メインならEP-982A3だ。6色印刷で、ダイレクト印刷時の機能も豊富、写真用紙を前面カセットにセットしておけるのもメリットだ。一方、写真の画質はそこそこで、文書の画質にもこだわりたいならTR9530だ。またA3の給紙が1枚ずつのEP-982A3に対して50枚セットできるため、A3の印刷枚数が多いなら、またADFを搭載しているため、このあたりにメリットを感じるならTR9530も有りと言える。では写真印刷は余りしないなら、EW-M5610FTMFC-J5800CDWとなる。前述の通り、印刷枚数が多く印刷コスト重視ならEW-M5610FTが、全色顔料と高速印刷重視ならMFC-J5800CDWがオススメだ。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/
ブラザーhttps://www.brother.co.jp/


EW-M973A3T
(ドキュメントパック非同梱)
EP-982A3
EW-M5610FT
TR9530BK
(ブラック)
TR9530WH
(ホワイト)
MFC-J5800CDW