プリンター徹底比較
2022年末時点のプリンター
〜エプソン・キャノン・ブラザーのプリンターを比較〜
(2023年7月18日公開)

プリンター比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンター比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。


A4複合機(カートリッジ方式・1万円以下)
 
 1万円以下というこのクラスは、複合機としては最下位モデルとなる。エプソンのEW-052AとキャノンのPIXUS TS3530がこの価格帯の製品となる。それぞれ8,778円と8,800円とほぼ同価格となっている。この価格帯の製品となると、かなりの機能が省かれ、最低限の機能だけと言った感じだが、両機種で搭載している機能は異なる。どちらの機種がおすすめなのか見ていこう。

プリント(画質)
メーカー エプソン キャノン
型番 EW-052A PIXUS TS3530
製品画像
実売価格(メーカーWeb/税込) 8,778円 8,800円
インク 色数 4色 4色
インク構成 ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
顔料ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成 各色独立 黒独立、カラー3色一体
顔料/染料系 染料(カラー)/顔料(黒) 染料(カラー)/顔料(黒)
インク型番 マグカップ 365XL/366XL(大容量)
365/366(標準容量)
最小インクドロップサイズ 3pl(MSDT) N/A
最大解像度 5760×1440dpi 4800×1200dpi
高画質化機能

 まずはプリントの画質を見てみよう。EW-052APIXUS TS3530も4色インク構成で、ブラックインクだけが顔料インク、カラーインクが染料インクという構成は同じだ。写真や年賀状の通信面、ファイン紙など普通紙以外への印刷時は顔料インクが使えず、カラー3色での印刷となる。カラー3色で黒を表現するが、どうしても完全な黒にはならず、濃いグレーや濃い茶色となってしまう。そのため、黒のメリハリの弱い印刷となってしまう他、夜景や影など黒の中の表現が苦手な傾向があるため、写真や年賀状の画質は上位モデルよりかなり劣る。最小インクドロップサイズは、EW-052Aが3pl、PIXUS TS3530は非公開ながら、海外の同等モデルを参考にすると2plと予想される。PIXUS TS3530は比較的小さいが、EW-052Aは上位モデルよりかなり大きくなっており、粒状感の面でも劣ることになる。全く印刷できないほどでは無いが、上位モデルとの差は大きく、いずれにしても写真を高画質に印刷する目的のプリンターでは無いだろう。また、使用するインクは、上位機種では、エプソンは「つよインク200」やキャノンは「ChromaLife 100」という名称を付け耐保存性の高いインクを採用しているが、EW-052APIXUS TS3530もこれには準拠していない。そのため、写真を印刷した場合に色あせが早いと思われる。
 一方、普通紙印刷の場合は、ブラックインクが使用できるため、4色印刷となり十分綺麗に印刷できる。普通紙印刷の場合、染料インクでは紙に染みこむためインクが広がってしまい、線が太くなったり中抜き文字がつぶれてしまう上に、コントラストが弱くなる傾向がある。また水に濡れると滲んでしまう弱点もある。一方、顔料インクはメリハリのある印刷が行え、耐水性も高い。両機種とも、黒インクだけだが顔料インクを採用しているため、黒文字などはメリハリのある印刷が行える。完全な黒ではないグレーの部分やカラーの中に混ざっている場合には染料のカラーインクを混ぜて作り出す場合があるため、全ての黒色部分で顔料インクの恩恵が得られるわけでは無いが、コピーや文書印刷では印象がだいぶ良くなる。普通紙印刷やコピーがメインなら十分高画質と言えるだろう。

プリント(印刷速度)
メーカー エプソン キャノン
型番 EW-052A PIXUS TS3530
製品画像
ノズル数 357ノズル 1280ノズル
カラー:各59ノズル
黒:180ノズル
各色320ノズル
印刷速度 L判フチなし写真
(メーカー公称)
74秒 52秒
A4普通紙カラー
(ISO基準)
N/A(4.0ipm?) 4.0ipm
A4普通紙モノクロ
(ISO基準)
N/A(8.0ipm?) 7.7ipm
ファーストプリント速度 A4普通紙カラー N/A N/A
A4普通紙モノクロ N/A N/A

 続いてプリントの速度を見てみよう。両機種ともノズル数が上位モデルよりも少なくなっており印刷速度に影響が出ている。L判写真印刷速度はEW-052Aは74秒、PIXUS TS3530となる。PIXUS TS3530の方が30%ほど高速だが、上位モデルでは10秒〜16秒程度である事を考えると、両機種とも印刷速度はかなり遅めだ。画質面では写真を印刷する事は少ないと思われるが、いざ印刷する場合は注意が必要だ。
 一方、文書の印刷速度はPIXUS TS3530はカラーが4.0ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、モノクロが7.7ipmとなっており、こちらも上位モデルの10ipmと15ipmと比べるとかなり遅くなっている。とはいえ、写真印刷と比べると、差は小さくなっており、かろうじて実用的なレベルといえる。ただ、印刷枚数が多い場合は注意が必要だ。一方、EW-052Aは文書印刷速度を公開していないが、海外の同スペックのモデルでは、カラー4ipm、モノクロ8ipmとなっており、近い速度となっていると思われる。写真印刷と異なりPIXUS TS3530とほぼ同等の速度となっており、EW-052Aは文書印刷向けのチューニングがなされている可能性がある。少なくともメインで使うと思われる文書印刷に関しては、両機種とも大きな差は無いと言える。

プリント(印刷コスト)
メーカー エプソン キャノン
型番 EW-052A PIXUS TS3530
製品画像
印刷コスト
(税込)
L判フチなし写真 用紙代込み
(メーカー公称)
28.8円 大容量:27.0円
標準:33.4円
インク代のみ
(予測値)※
23.6円 大容量:22.3円
標準:28.7円
A4カラー文書 14.5円 大容量:17.6円
標準24.5円
A4モノクロ文書 N/A N/A
インク1セットでの印刷可能枚数
(A4カラー文書を印刷した場合)
顔料
ブラック
N/A 大容量:400ページ
標準容量:180ページ
カラー N/A 大容量:300ページ
標準容量:180ページ
インク1本の価格
(税込)
顔料ブラック 1,859円 大容量:3,080円
標準容量:2,090円
カラー 各814円 大容量:2,970円
標準容量:2,310円
※写真の印刷コストに含まれる写真用紙代は、各メーカーで異なります。各メーカーの測定条件から、以下のようになっています。
エプソン:5.2円(「写真用紙<光沢>」500枚パック(KL500PSKR)2,600円→1枚5.2円)
キャノン:4.7円(「写真用紙・光沢 ゴールド」400枚パック(GL-101L400)1,875円→1枚4.6875円)
ブラザー:4.2円(「写真光沢紙」500枚パック2,090円→1枚4.18円)
なお、小数点2位以下の関係で0.1円の誤差が発生することがあります。

 続いてい印刷コストである。ここで両機種には違いがあり、EW-052Aは各色独立インクカートリッジとなっており、無くなった色だけ交換できるのに対して、PIXUS TS3530はカラー3色が一体型カートリッジとなっており、1色でも無くなると交換が必要になり無駄が出る事になる。この点が印刷コストにどう影響するかが重要だ。まず、L判写真の場合、EW-052Aは28.8円、PIXUS TS3530が27.0円となる。ただし、これにはメーカー純正の写真用紙代が含まれており、この写真用紙の価格がメーカーによって異なっている。エプソンは5.2円、キャノンは約4.7円で、これを除いた純粋なインク代は、それぞれ23.6円と22.3円となる。サードパーティー製の用紙など純正以外を使う場合は用紙代は同等になる事から、こちらを比較する方がより正確だ。これを見ると、PIXUS TS3530の方がわずかながら低印刷コストになっている。写真の場合、カラーインクは比較的均等に使われるため一体型カートリッジでも無駄が少なく、PIXUS TS3530でも大きなデメリットにならなかったと思われる。ちなみに、PIXUS TS3530の27.0円というのは大容量インクカートリッジを使用した場合で、標準容量を使用した場合は33.4円(用紙代を除くと28.7円)となり、一気に高くなる。
 一方、文書の印刷コストはEW-052Aは14.5円、PIXUS TS3530が17.6円とEW-052Aの方がかなり安くなる。PIXUS TS3530で標準容量インクカートリッジの場合は更に高くなり24.5円だ。文書印刷では色が偏りやすいため、一体型カートリッジの弱点が現れた形だ。またインクカートリッジ1セットの価格はEW-052Aは4,301円、PIXUS TS3530は大容量で6,050円、標準容量で4,400円となる。PIXUS TS3530の場合、大容量インクカートリッジならばEW-052Aと比較して印刷コストは写真印刷では勝り、文書印刷でも差は小さくなるが、インクカートリッジの価格が高く、購入時の出費が大きくなる。また、インクカートリッジの価格が高い分、印刷可能枚数が多いため、印刷枚数が少ないユーザーは使い切れずに無駄が出てしまう危険性がある。標準容量だとEW-052Aとインクカートリッジの価格は大差なくなるが、今度は印刷コストが大幅に上がってしまい悩ましい。その点では低価格なインクカートリッジでも安い印刷コストのEW-052Aは使い勝手が良いとも言える。
 これら2機種は文書印刷がメインと考えられるが、それを考えるとやはり各色独立しているEW-052Aの方が経済的だと言える。ちなみに、年賀状印刷でもやはり色が偏る傾向があるため、EW-052Aの方が良いだろう。

プリント(給紙・排紙関連)
メーカー エプソン キャノン
型番 EW-052A PIXUS TS3530
製品画像
対応用紙サイズ 定型用紙 L判〜A4 L判〜A4
(A4のフチなし印刷非対応)
長尺用紙 1,200mm 676mm
給紙機能
(セット可能枚数(普通紙/ハガキ/写真用紙))
背面

(50枚/20枚/10枚)

(60枚/20枚/20枚)
前面
その他
排紙トレイ自動伸縮
用紙種類・サイズ登録 ○(サイズのみ)
用紙幅チェック機能

 続いて、給紙・排紙関連の機能を見てみよう。対応用紙は最小がL判、最大がA4という点では同等だ。ただし、フチなし印刷に関しては、EW-052AがL判、2L判、KG、ハガキ、ハイビジョン、六切、A4に対応しているのに対して、PIXUS TS3530はL判、2L判、KG、ハガキ、127mmスクエアのみで、A4サイズには非対応となっている。背景色のある文書の印刷には注意が必要だ。
 給紙機能はこの価格帯になると非常にシンプルになっており、EW-052APIXUS TS3530のどちらも背面給紙のみとなっている。また、A4普通紙のセット可能枚数も、上位モデルでは100枚程度であるのに対して、EW-052Aは50枚、PIXUS TS3530は60枚と少なくなっている。ハガキも両機種とも20枚となっており、年賀状印刷で枚数が多い場合などは上位モデルより手間が掛かることになる。写真用紙はEW-052Aが10枚、PIXUS TS3530が20枚で、写真印刷メインの機種では無いが、印刷する機会があれば頻繁に用紙を入れ替える必要がある。ただ、両機種に大きな差は無い。
 PIXUS TS3530には用紙のサイズを登録しておく機能が搭載されている。用紙をセットしたあと、液晶画面で設定する。そして、この登録内容と、印刷時の用紙設定が異なっている場合、エラーメッセージが表示される仕組みだ。上位モデルと異なり、液晶の表示内容が固定内容の表示・非表示の切り替えのみなので(後述)、用紙サイズしか選択肢がなく、A4、B5、A5などを選択した場合は普通紙、L判、2L判、KGサイズを選んだ場合は写真用紙、ハガキサイズを選んだ場合はインクジェットハガキに用紙種類は固定される。とはいえ、だけできる限り印刷ミスによる用紙とインクの無駄遣いをなくす工夫がなされているのは安心だ。

プリント(付加機能)
メーカー エプソン キャノン
型番 EW-052A PIXUS TS3530
製品画像
自動両面印刷 対応/非対応
対応用紙
対応サイズ
自動両面
印刷速度
A4カラー文書
A4モノクロ文書
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能 ○(オートフォトファイン!EX) ○(自動写真補正)
特定インク切れ時印刷 ○(黒だけでモード・5日間のみ)
自動電源オン/オフ −/○ ○/○
廃インクタンク交換
フチなし吸収材エラー時の対応機能 ○(フチあり印刷継続可)

 その他、プリントの付加機能を見てみよう。この価格帯では自動両面印刷機能やディスクレーベル印刷機能は搭載されていない。写真の自動補正機能はソフトウェアレベルの話なので搭載しており、EW-052Aは「オートフォトファイン!EX」、PIXUS TS3530は「自動写真補正」と名称は違うものの、逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われる。最近では搭載機種が増えてきた「自動電源オン」機能はPIXUS TS3530のみ搭載している。印刷が実行されると自動的に電源がオンになる機能で、無線LAN接続ができるようになり、プリンターから離れた場所のパソコンやスマートフォンから印刷を実行することが増えたが、そういった際にわざわざプリンターの電源を入れに行く手間が省ける。指定した時間が経つと自動的に電源が切れる「自動電源オフ」は両機種とも搭載している。一方、EW-052Aだけが搭載している機能がフチなし吸収材エラー時の印刷継続機能だ。インクジェットプリンターのインクの吸収材は2種類あり、1つはクリーニングの際などに排出されるインクを貯める廃インクタンク(メンテナンスボックス)だが、こちらは上位モデルと異なり、満タンになると印刷が完全に止まってしまい修理対応となる。この点はEW-052APIXUS TS3530も同じだ。もう一つは、フチなし吸収材だ。フチなし印刷は、用紙サイズピッタリに印刷すると用紙の微妙なズレによってフチができてしまう事から、少し大きめにプリントして、はみ出した部分はフチなし吸収材に吸収させる方法となっている。このフチなし吸収材が満タンになると、PIXUS TS3530はプリントが完全に止まってしまうが、EW-052Aはフチあり印刷に関しては継続ができるようになっている。急ぎのプリントを行っておいて、余裕のあるときに修理に出せるため便利な機能だ。

スキャン
メーカー エプソン キャノン
型番 EW-052A PIXUS TS3530
製品画像
最大スキャンサイズ A4
(216×297mm)
A4
(216×297mm)
読み取り解像度 1200dpi(1200×2400dpi) 600dpi(600×1200dpi)
センサータイプ CIS CIS
原稿取り忘れアラーム
スキャンデーターのメモリーカード保存

 続いて、スキャナー部を見てみよう。解像度はEW-052Aが1200dpi、PIXUS TS3530が600dpiだ。解像度に大きな差があるように感じるが、反射原稿(紙などの原稿)にしか対応しないため、それほど問題ではない。一般的に文書なら200〜300dpi、写真なら300〜600dpiで、コピーもせいぜい300dpiといったところだ。よほど詳細にスキャンする場合にEW-052Aの1200dpiが効果を発揮すると言ったレベルだろう。確かに実際写真サイズを1200dpiで取り込むと約4,200×6,000ドットとなり2500万画素相当となるため、綺麗に保存したい場合は1200dpiでスキャンができるEW-052Aの方が良さそうだが、そうで無ければ両機種に実用上の差はあまりない。いずれもCIS方式で、厚い本の綴じ目近くなど、ガラス面から浮いてしまう原稿ではピントが合わなくなってしまう点は注意が必要だ。

ダイレクト印刷
メーカー エプソン キャノン
型番 EW-052A PIXUS TS3530
製品画像
ダイレクトプリント メモリーカード
USBメモリー
赤外線通信
対応ファイル形式
最大解像度
最大読込ファイル数
日付印刷
写真切り出し
フチなし/フチあり切り替え
色補正機能
手書き合成
メモリーカードからUSBメモリー/外付けHDDへバックアップ −/− −/−
PictBridge対応 ○(Wi-Fi)
各種デザイン用紙印刷

 ダイレクト印刷を見てみよう。とは言っても、ダイレクト印刷機能は搭載していないという点で共通だ。この価格帯では液晶も搭載されていない又は簡易液晶となるため仕方の無い所だ。PIXUS TS3530はPictBridgeのWi-Fi方式に対応しているが、対応機種も少なく、どこまで実用性があるかは疑問だ。

スマートフォン/クラウド対応
メーカー エプソン キャノン
型番 EW-052A PIXUS TS3530
製品画像
スマートフォン連携 アプリ メーカー専用 Epson Smart Panel
(EPSON iPrintにも対応)
Canon PRINT Inkjet/SELPHY
AirPrint
対応端末 iOS 13.0以降
Android 5.0以降
iOS 13.0以降
Android 5.0以降
Wi-Fiダイレクト接続対応
Wi-Fiダイレクト接続支援機能
スマートフォンで初期設定
スマートスピーカー対応 ○(Alexa/Googleアシスタント) ○(Alexa/Googleアシスタント)
写真プリント
ドキュメントプリント ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
スキャン ○(PDF/JPEG) ○(PDF/JPEG)
クラウド連携 プリント アプリ経由/本体 ○/− ○/−
オンラインストレージ ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/google classroom) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom)
SNS ○(Instagram/Facebook・コメント付き可) ○(Facebook・コメント付き可)
写真共有サイト ○(googleフォト/image.canon)
スキャン アプリ経由/本体 ○/− ○/−
スキャンしてオンラインストレージにアップロード ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/google classroom) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive)
メールしてプリント ○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/PDF/Word/Excel/PowerPoint/メール本文)
LINEからプリント ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint)
リモートプリント ○(リモートプリントドライバー)
スキャンしてリモートプリント

 スマートフォンとの連携機能も両機種とも搭載しており、iOSとAndroid端末に対応している。いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることでプリント又はスキャンが行える。メインで使用すると思われる写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。さらにドキュメント印刷にも対応している。PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もでき便利だ。また、両機種ともスマートフォン上からスキャンを実行し、データーをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。新聞や雑誌、手書きの情報などをスマートフォンに電子化するといった使い方ができるため便利だろう。ちなみに、PIXUS TS3530はiPhoneやiPadの場合、AirPrintを利用したプリントも可能だが、EW-052Aは必ず専用アプリ経由でのプリントとなる。
 スマートフォンとの接続は、無線LAN(Wi-Fi)で行うが、無線LANルーターを経由する方法と、ダイレクトに接続する「Wi-Fiダイレクト」(キヤノンは機能名はダイレクト接続)が選べる。無線LANルーターを経由する方が、機能面でも制限が無く、印刷する度にプリンターと接続と切断を繰り返すのWi-Fiダイレクトと比べると便利なので、こちらを利用するのがお勧めだが、無線LANルーターが無い環境で使用する場合や、一時的に同じネットワークに入っていない人がプリンターを使う場合にWi-Fiダイレクトは便利だ。
 また、両機種ともスマートスピーカーに対応している。AlexaとGoogleアシスタント対応端末に対応しており、声だけでテンプレートを印刷させることができる。2020年12月現在でEW-052Aは、デザインペーパー、フォトプロップス、カレンダー、ノート、方眼紙、五線譜などのエプソン独自のものと、Alexaに登録された買い物リスト、やることリストなどの印刷に対応する。PIXUS TS3530はナンプレ、ぬりえ、レポート用紙、チェックリスト、五線譜などキャノン独自のもの印刷と、プリンターの状態の確認が行える。
 クラウドとの連携機能も両機種とも搭載されている。プリントの場合、オンラインストレージのファイルを印刷したり、SNSの写真を印刷する事ができる。SNSの写真はコメント付きでも印刷が可能だ。またPIXUS TS3530は写真共有サイトからの印刷も可能だ。スキャンの場合、スキャンしてオンラインストレージへアップロードできる。両機種とも、プリント・スキャン共にスマートフォンのアプリ上からの操作となり、上位モデルの様にプリンター本体のみでクラウドからプリントしたり、スキャンしてアップロードする事はできない。
 さらにネットワークを利用したプリント機能として、EW-052Aは、印刷したい写真や文書を本機にメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、LINE上でプリンターを友達登録し、トーク画面から写真を送信すると印刷される「LINEからプリント」、パソコンやスマートフォンから通常のプリントと同じ操作で、外出先など離れた場所から自宅のEW-052Aで印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。一方のPIXUS TS3530はこれらの機能には非対応だ。リモートプリント機能はEW-052Aの方が豊富だ。

コピー機能
メーカー エプソン キャノン
型番 EW-052A PIXUS TS3530
製品画像
等倍コピー ○(A4普通紙のみ・フチありのみ)
【アプリ上から】
○(各種用紙サイズ/種類対応・フチあり・フチなし対応)
○(A4/B5/A5普通紙のみ・フチありのみ)
拡大縮小 倍率指定
【アプリ上から】
○(25〜400%)
オートフィット
【アプリ上から】
○(L判/2L判/スクエア写真用紙・ハガキのみ・フチなしのみ)
定型変倍
【アプリ上から】
フチなしコピー
【アプリ上から】

(L判/2L判/スクエア写真用紙・ハガキは強制フチなし)
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー
割り付け(2面/4面) −/− −/−
プレビュー
その他のコピー機能
【アプリ上から】
濃度調整
バラエティコピー

 コピー機能も液晶ディスプレイを搭載しない、又は固定内容の液晶ディスプレイである事から、非常に簡易的なものとなっている。EW-052Aの場合、「モノクロコピーボタン」「カラーコピーボタン」を押す事でコピーが行えるが、A4普通紙への等倍コピーのみとなり、他の用紙や拡大縮小、フチなし印刷などは一切行えない。コピーボタンを押した回数だけコピーが行われる(最大20枚)ため、自由な枚数が指定できる。また、ストップボタンと同時に押す事でインク量を抑えた「お試し印刷」になる。一方、PIXUS TS3530の場合、セグメント表示の2桁の数字が表示できる液晶を搭載している。「カラーボタン」と「モノクロボタン」があり、そのボタンを押すと「1」が点滅をする。点滅中に繰り返し押す事で枚数を指定できる。点灯に変わるとコピーが開始される。ボタンを押す際に2秒以上長押しすると、下書きモードでのコピーとなる。また液晶には用紙サイズの表示が並んでおり、「用紙選択」ボタンを押すことで、順に表示されていくため、使用する用紙を選ぶ事が出来る。使用できる用紙は、A4、B5、A5の普通紙、L判、2L判、スクエアの写真用紙、ハガキとなっている。普通紙の場合は等倍でフチあり、写真用紙とハガキは自動で拡大縮小され、フチなし印刷となる。用紙との組み合わせで拡大縮小やフチあり・フチなしが固定なのではなく、それらも個別に設定できればより便利だったと言えるが、EW-052Aと比べると使える用紙が圧倒的に多く、便利だと言えるだろう。とはいえ、2面割り付けはおろか、濃度調整もできないシンプルなコピー機能しか持っていないため、より高機能なコピー機能が必要なら、上位モデルを検討することになるだろう。
 ただしこれは本体でのコピー機能だ。両機種ともスマートフォンのアプリ上でコピー操作を行う事が可能だ。PIXUS TS3530はアプリ上で行えるコピーは、本体でのコピー機能に依存しているため、アプリ上でも同じ制限となる。一方、EW-052Aはアプリ上でのコピー操作は非常に高性能だ。使用できる用紙サイズは、A4、B5、A5、B6、A6、L判、2L判、KGサイズ、ハガキ、ハイビジョン、六切と、長型3〜4号封筒、洋型1〜4号封筒となっており、使用できる用紙も、普通紙、各種写真用紙、フォトマット紙、スーパーファイン紙、郵便ハガキ(インクジェット)、郵便ハガキ、ハガキ宛名面、封筒となっている。枚数指定も99枚まで行える。拡大縮小も利用可能で、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「オートフィット」機能や、、原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行う「定型変倍」機能だけでなく、25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える。もちろんフチなし、フチあり設定や、濃度調整も可能だ。アプリを利用することで、上位モデルに近いコピー機能が実現できる事になる。本体だけのコピー機能ならPIXUS TS3530が便利だが、アプリを利用することを考えるとEW-052Aが便利だ。

操作パネル/インターフェース/本体サイズ
メーカー エプソン キャノン
型番 EW-052A PIXUS TS3530
製品画像
液晶ディスプレイ 1.5型モノクロセグメント
操作パネル 物理ボタン式 物理ボタン式
インターフェイス USB他 USB2.0×1 USB2.0×1
無線LAN IEEE802.11n/g/b IEEE802.11n/g/b
有線LAN
対応OS Windows 11/10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 11/10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.12.6〜(AirPrint利用)
外形寸法(横×奥×高) 390×300×146mm 435×316×145mm
重量 4.0kg 4.0kg
本体カラー ホワイト ブラック
ホワイト

 先にインターフェースを見ていこう。EW-052APIXUS TS3530は共にUSB2.0接続に加えて、無線LAN(Wi-Fi)接続にも対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、無線LAN(Wi-Fi)ルーターで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。その場合、プリンターも無線LANルーターに接続しておけば、家庭内のどのパソコンでもプリント可能となり非常に便利だろう。またスマートフォンやタブレットからの印刷も可能となる。
 操作パネルを見ていこう。EW-052Aは前述のように液晶は搭載しておらず、操作ボタンのみが並ぶ。本体前面に角度固定で取り付けられている形となるため、低い位置に置いた場合は操作がしにくい。「電源ボタン」「Wi-Fiボタン」「ネットワークステータスシートボタン」「モノクロコピーボタン」「カラーコピーボタン」「ストップボタン」のみとなる。それに「無線LAN」「Wi-Fi Direct」「用紙」「インク」のそれぞれの状態を示すLEDランプとなる。コピー操作に関してはコピー機能の項目で説明したが、それ以外に組み合わせとして、「ストップボタン」を押したまま電源を入れると、ノズルチェックパターンが印刷される。その後、「ストップボタン」を5秒以上押すとクリーニングが実行される。カラーとモノクロスタートボタンを同時に押すと、スキャンしてUSB接続されたパソコンにPDF形式で保存される。また、インク切れの状態で「ストップボタン」を押すと、インクカートリッジが交換操作になる。まず本体にある「雫に斜線」のマークの所で、交換する必要があるインクカートリッジが止まるので確認する。そして、もう一度「ストップボタン」を押すと、交換可能な位置に移動する。液晶が無くてもインク切れのカートリッジが確認できるように工夫されているわけだ。インク切れ以外の状態の場合は「ストップボタン」の長押しで、同じく交換可能位置に移動する。
 ネットワークのワンタッチボタンによる接続はAOSSとWPSに対応している。「Wi-Fiボタン」を5秒以上押し、その後、無線LANルーターの対応ボタンを押すだけである。また、Wi-Fiダイレクト接続する場合は、「Wi-Fiボタン」を押したまま、「ネットワークステータスシートボタン」を押すとEW-052A本体の設定が行われる。その後「ネットワークステータスシートボタン」を5秒以上押すと「ネットワークステータスシート」が印刷されるので、SSIDとパスワードを確認し、スマートフォン等からそこに接続する形になる。
 一方、PIXUS TS3530の操作パネルは、本体上面のスキャナー部の左側に縦に並んでいる。EW-052Aとは逆で、上からは操作しやすいが、高い位置に置いた場合など正面からは操作しにくい。液晶は1.5型となっているが、数字以外は固定内容の点灯・非点灯のみでバックライトもない簡易的なものだ(数字は7セグメントで1〜9が表示できる1の位と、1だけが表示できる2セグメントの10の位の組み合わせ)。ボタンは、上から「電源ボタン」「LANボタン」「ダイレクトボタン」「インフォメーションボタン」セットアップボタン」「用紙選択ボタン」「OKボタン」「ストップボタン」「カラーボタン」「モノクロボタン」となっており、EW-052Aより多くなっている。前述の液晶に加えて「電源」「エラー」「インク」の各LEDランプにより状態を表示する。同じくコピー操作に関してはコピー機能の項目で説明したが、コピー以外の操作は「セットアップボタン」を利用して行う。例えば「セットアップボタン」を押して液晶に「1」と表示させた状態で、「カラーボタン」か「モノクロボタン」を押すと、ノズルチェックパターンが印刷される。「2」を表示させて同様の操作をすると、ヘッドクリーニングが実行される。「3」が強力ヘッドクリーニング、「4」がプリントヘッド位置調整、「7」が給紙ローラークリーニング、「8」がインク拭き取りクリーニング、「12」が夜間利用モードのオン・オフという風にそれぞれ割り当てられている。また、ネットワークのワンタッチボタンによる接続はAOSSとWPS、らくらく無線スタートに対応している。「LANボタン」を長押しし、液晶の電波強度を表すマークが点滅させた状態で、無線LANルーターの対応ボタンを押すだけとなる。「インフォメーションボタン」を押すと、ネットワーク設定の一覧が印刷される。EW-052Aと同様に、SSIDとパスワードを確認してスマートフォンなどから接続する事になる。
 両機種とも液晶が無い又は固定表示の液晶しか無い中で、各種設定やクリーニング、Wi-Fi設定が行えるようになっているし、プリント機能も利用する事でWi-Fiダイレクトの利用も可能となっている点では、工夫されていることが分かる。ただし、簡単な設定やインク交換ですら、操作手順を覚えておかなければならず、Wi-Fiダイレクトの設定などはマニュアルを見ないと非常に難しい。液晶の表示を読めばある程度の設定はマニュアル無しで行える上位モデルと比べると、操作性の面では大幅に劣ることは確実だ。この点が許容できるかが、この価格帯を選ぶかどうかの基準にはなるだろう。
 対応OSはメーカーによる差が大きい。EW-052AはWindows XP SP3以降は全て対応する。マイクロソフトのサポートの終了したWindows XPやVistaにも対応するのは安心だ。MacOSも10.6.8以降と比較的古いバージョンにも対応するだけでなく、ダウンロード対応とはなるが専用ドライバーがエプソンから提供される。一方、PIXUS TS3530はWindows 7 SP1/8.1/10/11のみの対応だ。Windows XPやVistaだけでなく、Windows 8も非対応である点は注意が必要だ。MacOSも10.12.6以降となっているだけでなく、ドライバーはキヤノンからは提供されず、AirPrintを使用する方法となっているため、一部の印刷設定、本体の動作設定ができない点でWindowsで利用する場合に比べて不便になっている。
 本体サイズを見てみよう。EW-052Aが390×300×146mm、PIXUS TS3530が435×316×145mmとなる。いずれも背面給紙であるため、用紙セット時は後方と上方にスペースが必要な点は同じなので、実質的に本体サイズの差がそのまま設置スペースの差になると考えて良いだろう。EW-052Aは上位モデルと同じ横幅を維持しているのに対して、PIXUS TS3530は上位モデルより大きく、EW-052Aとの比較で、横幅が45mm、奥行きが16mm大きくなる。それほど大きな差ではないが、やはりEW-052Aの方がコンパクトに見える。ちなみに本体カラーは、EW-052Aはホワイトのみ、PIXUS TS3530はブラックとホワイトのカラーバリエーションを用意している。



 両機種とも最下位モデルだけあり最低限の機能をまとめた印象で、印刷速度や画質だけでなく操作性にも影響が出ている。一方で画質面では上位モデルよりは劣るものの、特に文書印刷に限れば使えないほど悪いわけではなく、価格を考えれば十分に高画質だ。どちらがおすすめかとなると、難しいところだ。印刷画質や速度面ではほぼ差が無く、背面給紙である点や自動両面印刷に非対応である点も同等だ。違いがあるとすると、印刷コストだ。各色独立インクカートリッジを採用するEW-052Aは印刷コスト面では有利であるため、本体価格だけで無くこの点も気にするならEW-052Aがオススメだ。また、本体のコンパクトさでもEW-052Aが優れている。一方、コピー機能で選ぶ方法もある。A4普通紙への等倍コピーだけならEW-052Aでも十分だが、他のサイズや用紙も使いたい場合はPIXUS TS3530が便利だ。
 ただし、EW-052Aの独立インクカートリッジやコンパクトさと、PIXUS TS3530のようなコピー機能の両方が必要、又は自動両面印刷機能が欲しい場合は上位モデルのEW-452AやPIXUS TS5430も検討すると良いだろう。EW-452Aは12,078円と、EW-052Aと3,300円差ながら、液晶が搭載されて拡大縮小コピーなども可能となり、自動両面印刷機能も搭載している。PIXUS TS5430は13,750円で、PXIUS TS3330と4,950円差ながら、本格的な液晶を搭載し、コピー機能もより豊富になり、前面給紙と背面給紙に対応している。両機種ともそのほかの面でも機能アップしているなど価格差の割に性能差が大きい。予算に余裕があるならこちらも併せて検討して頂きたい。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/
ブラザーhttps://www.brother.co.jp/


EW-052A
PIXUS TS3530BK
(ブラック)
PIXUS TS3530WH
(ホワイト)