プリンター徹底比較
2022年末時点のプリンター
〜エプソン・キャノン・ブラザーのプリンターを比較〜
(2025年11月11日公開)

プリンター比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
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A3カラー単機能プリンター(5万5千円以下)
 
 A3単機能機の中で、プロ向けでない製品である5機種を比較する。価格的には5万5千円以下となるが、エプソンはEP-50V(54,978円)とPX-S6010(38,500円)、PX-S5010(28,578円)、キャノンはPIXUS iP8730(31,680円)、PIXUS iX6830(27,280円)と価格にはかなりばらつきがある。とはいえ、PX-S5010PIXUS iP8730PIXUS iX6830は価格が近いため比較できるが、EP-50VPX-S6010はそれぞれ近い価格の製品が他に無いため、5機種まとめての比較となる。価格の近い3機種はどの機種がおすすめなのか、そしてそれより高価な2機種はその価格差だけの価値があるのか検証しよう。

プリント(画質)
メーカー エプソン エプソン エプソン キャノン キャノン
型番 EP-50V PX-S6010 PX-S5010 PIXUS iP8730 PIXUS iX6830
製品画像
実売価格(メーカーWeb/税込) 54,978円 38,500円 28,578円 31,680円 27,280円
インク 色数 6色 4色 4色(5本) 6色 5色
インク構成 ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
レッド
グレー
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック×2
シアン
マゼンタ
イエロー
顔料ブラック
染料ブラック
グレー
シアン
マゼンタ
イエロー
顔料ブラック
染料ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成 各色独立 各色独立 各色独立 各色独立 各色独立
顔料/染料系 染料
(つよインク200)
顔料
(文書キャビネット保存400年)
顔料 染料/顔料(黒)
(ChromaLife100+)
染料/顔料(黒)
(ChromaLife100+)
インク型番 ソリ IB07B番(大容量)
IB07A番(標準容量)
IB06(めがね) 350XL/351XL(大容量)
350/351(標準容量)
350XL/351XL(大容量)
350/351(標準容量)
355XXL(特大容量・顔料ブラックのみ)
最小インクドロップサイズ 1.5pl(AdvancedMSDT) N/A(3.8pl(MSDT)?) N/A(3pl(MSDT)?) 1pl 1pl
最大解像度 5760×1440dpi 4800×2400dpi 5760×1440dpi 9600×2400dpi 9600×2400dpi
高画質化機能 PrecisionCoreプリントヘッド(600dpi)

 まずはプリントの基本となる画質を見ていこう。インク色数はEP-50VPIXUS iP8730が6色、PIXUS iX6830が5色、PX-S6010PX-S5010が4色となるが、インクジェットプリンターのインクには顔料と染料があり、それぞれの組み合わせが異なっている。EP-50Vは全色染料インク、PX-S6010PX-S5010は逆に全色顔料インクなので分かりやすい。一方、PIXUS iP8730PIXUS iX6830は顔料ブラック+残りが染料インクとなる。つまりPIXUS iP8730は顔料ブラック+染料5色、PIXUS iX6830は顔料ブラック+染料4色となる。ここで、染料インクと顔料インクの話が出てきたので簡単に説明しておこう。染料インクは様々な用紙に対応でき、写真用紙等に印刷した際に発色が良く、用紙本来の光沢感が出るため、写真印刷に向いている。一方で普通紙に印刷すると紙にしみこんで広がってしまうため、メリハリが弱くなる。その点で顔料インクならメリハリのある印刷が行え、小さな文字や中抜き文字も潰れずに印刷が可能なほか、耐水性も高いため濡れた手で触ったりマーカーを引いても滲まない。とは言え全色を顔料インクとすると写真用紙などに印刷した際に発色が悪いほか、用紙の光沢感が薄れ半光沢のようになってしまう上に、光沢した年賀状や光沢フィルムなど一部に顔料インク非対応の用紙もある。つまりは染料インクと顔料インクは、用紙によって向き不向きがあるわけである。
 では、まずは写真画質である。写真画質と言っても、印刷内容が写真かどうかではなく、写真用紙に印刷する場合の話である。それ以外にも、ハガキの通信面や、ファイン紙など、普通紙以外に印刷する場合の画質である。これらに印刷には染料インクが向いている。そのため、最も画質が高いのは、6色全てが染料インクであるEP-50Vである。さらに通常の6色インク構成は、ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色に、薄い色のライトシアンとライトマゼンダとなっているが、EP-50Vでは基本4色とレッドとグレーインクを搭載する。これを、「Epson ClearChrome K2インク」と呼んで、従来の6色と区別している。ライトインクがない分、色の薄い部分での粒状感などが悪くなりそうだが、そこは理論的色変換システム「LCCS」が力を発揮する。プロセレクション(写真のプロ向けのプリント単機能機)の製品に採用されてきたこの「LCCS」は写真をプリントする際のインク配分を論理的に算出する色生成技術で、階調性・色再現域・粒状性などの点からベストになるように複雑に計算されて打つインクが決定される。さらに、光源によって色合いが異なる光源依存性も最適になる様に計算されるなど、かなり高度なものだ。さらに紙送りの精度も高めることで、基本4色だけでも従来の6色に近い高画質な印刷ができる。そこにレッドインクにより、くすみがちな赤系統の表現力を高め、赤い物だけで無く夕日や肌の色などでも違いが出る。さらに従来の6色ではモノクロ写真の場合のグレーの部分はカラーインクを使って表現するため青白くなってしまうが、EP-50Vではグレーインクを搭載しているため綺麗なグレーの階調表現ができる。カラー、モノクロ両方の表現力をさらに高めた製品と言える。また、ドットの大きさを示す「最小インクドロップサイズ」も画質に大きな影響があるが、これも1.5plと非常に小さいため、色の再現性だけで無く、粒状感(ドットが見えてザラザラした感じ)の面でも非常に高画質と言える。
 次に画質が高いのはPIXUS iP8730だ。EP-50Vと同じ6色構成だが、1色は顔料ブラックのため、染料インクは5色となる。基本4色にグレーインクを搭載しており、グレーインクをベースにすることで粒状感を抑えているが、特に色の鮮やかさという点では劣ってしまう。また、EP-50VのLCCSの様な機能も搭載していないため、EP-50Vよりはワンランク落ちる印象だ。とはいえ最小インクドロップサイズは1plと非常に小さく、十分に綺麗な写真印刷が可能だ。よほど画質にこだわらなければPIXUS iP8730でも十分綺麗だろう。次に写真画質が高いのはPIXUS iX6830である。PIXUS iP8730からグレーインクを抜いた5色構成で、写真印刷は基本の4色となる。PIXUS iP8730よりもやや画質が劣るが、最小インクドロップサイズは同じ1plであるため粒状感を感じるほどでは無い。こちらも十分に写真画質で印刷ができるだろう。
 残るPX-S6010PX-S5010は前述に様に全色顔料インクである。インクが4色という事よりもインクの種類の面で写真印刷に向いているとは言いがたい。発色が悪く光沢感も薄くなる。最小インクドロップサイズも非公開ながら、海外の同機能のモデルを参考にすると、PX-S6010は3.8pl、PX-S5010は3plと予想されるため、他機種の倍から4倍となり粒状感もそれなりに出てしまう。写真印刷ができないわけではないが、写真印刷を考えている人は避ける方が良さそうだ。
 一方、文書印刷の画質を見てみよう。こちらも写真画質と同じで、印刷内容が文書かどうかではなく、普通紙に印刷する場合の画質である。文書中の写真やイラストなどもこちらになる。文書印刷の場合は顔料インクが力を発揮する。その点で全色顔料インクのPX-S6010PX-S5010はカラー、モノクロ問わずシャープな印刷が可能だ。また同じ全色顔料の2機種の中でも、PX-S6010の方が、PrecissionCoreプリントヘッドを採用しており、普通紙印刷時の解像度も360dpiから600dpiにアップしているため、より高画質で、図面のような細い線でも潰れず印刷ができる。逆にEP-50Vは全色染料インクであるため、普通紙の印刷画質は並だ。細線強調機能や文字くっきり機能を搭載し、ドライバーレベルで画質を改善しているため、昔と比べるとかなりマシにはなっているが、やはり顔料インクと比べると劣ってしまう。PIXUS iP8730とPIXUS iP6830はブラックだけだが顔料インクを搭載しているため、ブラックインクを使用する部分に限ってだが、顔料インクの恩恵が得られる。カラー部分は染料インクを使用するのはもちろん、完全な黒ではなくグレーの部分はグレーインク(PIXUS iP8730のみ)又はカラーインクを混ぜて作る場合があり、また背景色がある場合も染料ブラックを使用する場合があるため、全ての黒色部分で必ずしも顔料ブラックの恩恵が得られるわけでは無いが、黒文字などが顔料インクなだけでも全体の仕上がりはぐっと引き締まる。以上から、写真に特化したEP-50V、普通紙に特化したPX-S6010PX-S5010、その中間のPIXUS iP8730PIXUS iX6830となる。
 なお、インクだがそれぞれ特徴的だ、EP-50Vは「つよインク200」となっており、アルバム保存300年、耐光性50年、耐オゾン性10年と耐保存性が非常に高くなっており、アルバム保存だけで無く、飾る場合も色あせを防ぐことができる。PIXUS iP8730PIXUS iX6830も「ChromaLife100+」でありアルバム保存300年、耐光性40年、耐ガス性10年と、こちらも耐保存性はかなり高い。これら3機種の耐保存性は問題ないレベルだ。一方PX-S6010PX-S5010は写真の耐保存性は公表されていないが、写真印刷向けの機種では無いため当然ともいえるだろう。逆に、PX-S6010は文書の耐保存性がうたわれており、キャビネット保存で400年となっている。重要な書類などを長期間保存できる点で、この機種の用途に合った性能と言えるだろう。


プリント(印刷速度)
メーカー エプソン エプソン エプソン キャノン キャノン
型番 EP-50V PX-S6010 PX-S5010 PIXUS iP8730 PIXUS iX6830
製品画像
ノズル数 1080ノズル 1568ノズル 900ノズル 6656ノズル 5120ノズル
全色:各180ノズル カラー:各256ノズル
ブラック:800ノズル
カラー:各180ノズル
ブラック:360ノズル
C/M/GY:各1536ノズル
Y/染料BK:各512ノズル
顔料BK:1024ノズル
C/M:各1536ノズル
Y/染料BK:各512ノズル
顔料BK:1024ノズル
印刷速度 L判フチなし写真
(メーカー公称)
34秒 N/A N/A 30秒 30秒
A4普通紙カラー
(ISO基準)
N/A(9.0ipm?) 12.0ipm 11.0ipm 10.4ipm 10.4ipm
A4普通紙モノクロ
(ISO基準)
N/A(9.2ipm?) 25.0ipm 18.0ipm 14.5ipm 14.5ipm
ファーストプリント速度 A4普通紙カラー N/A 8.5秒 11.8秒 N/A N/A
A4普通紙モノクロ N/A 5.5秒 10.3秒 N/A N/A

 続いて、印刷速度を見てみよう。まずはL判写真フチなしである。EP-50Vは34秒、PIXUS iP8730PIXUS iX6830は30秒と、3機種に大きな差は無い。PX-S6010PX-S5010は写真の印刷速度が公表されていない。EP-50Vは1.5plと最小インクドロップサイズが非常に小さいが、5つのサイズのインク滴を打ち分ける「Advanced-MSDT」に対応しており、必要に応じて大きいサイズのインクを打つことで、画質と速度を両立している。ノズル数も全色180ノズルと、エプソンのプリンターとしては多い方だが、エプソンの6色の複合機は同じノズル数で13秒である事を考えるとやや遅めだ。LCCSの複雑な処理に時間が掛かるのか、紙送りなどを高精度に行っているのかといろいろ想像はできるが、原因は不明だ。一方のPIXUS iP8730PIXUS iX6830も1plと最小インクドロップサイズは非常に小さいが、ノズル数を多くすることで高速化しているが、こちらもキャノンの複合機では10秒や18秒であることを考えるとやや遅い。とはいえ、複合機の上位機種ほどではないが、ストレス無く使用できるレベルだ。
 一方、文書の印刷速度(普通紙への印刷速度)はEP-50Vを除く4機種が公表している。PIXUS iP8730PIXUS iX6830はA4カラー文書で10.4ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、モノクロ文書で14.5ipmとなっている。これはインクジェットプリンターとしては比較的高速な部類だ。しかし、PX-S5010はカラー11.0ipm、モノクロ18.0ipmと、大きな差ではないが上回る速度となっている。さらに、上位モデルのPX-S6010では、カラー12.0ipm、モノクロ25.0ipmとなっており、特にモノクロプリントは圧倒的だ。EP-50Vは非公表だが、海外の同機能のモデルを参考にすると、カラー9.0ipm、モノクロ9.2ipmとなっている。画質重視の機種だけに他機種よりやや遅く、また、他機種のようにブラックのノズル数だけを多くしてモノクロプリントを高速化していると言うことも無いため、モノクロは他機種との差が大きい。とはいえ、印刷する枚数によってはそれほど問題にならない事も多いだろう。モノクロ文書を100枚の印刷する時間で見てみると、EP-50Vが10分52秒(予測値)、PX-S6010が4分、PX-S5010が5分33秒、PIXUS iP8730PIXUS iX6830が6分54秒となる。カラー文書の場合、EP-50Vが11分7秒(予測値)、PX-S6010が8分20秒、PX-S5010が9分5秒、PIXUS iP8730PIXUS iX6830が9分37秒となる。この差を大きいとみるかがポイントとなる。

プリント(印刷コスト)
メーカー エプソン エプソン エプソン キャノン キャノン
型番 EP-50V PX-S6010 PX-S5010 PIXUS iP8730 PIXUS iX6830
製品画像
印刷コスト
(税込)
L判フチなし写真 用紙代込み
(メーカー公称)
14.5円 N/A N/A 大容量:19.7円
標準:27.8円
大容量:17.9円
標準:23.1円
インク代のみ
(予測値)※
9.3円 N/A N/A 大容量:15.0円
標準:23.1円
大容量:13.2円
標準:18.4円
A4カラー文書 6.6円 大容量:9.4円 大容量:9.5円 大容量:10.6円
標準:14.8円
大容量:9.9円
標準:12.7円
A4モノクロ文書 N/A 大容量:2.9円 大容量:3.0円 N/A 特大容量:3.1円
大容量:3.6円
標準:4.6円
インク1セットでの印刷可能枚数
(A4カラー文書を印刷した場合)
顔料
ブラック
大容量:2,200ページ
標準:350ページ
1,000ページ 大容量:500ページ
標準:300ページ
大容量:500ページ
標準:300ページ
染料
ブラック
N/A 大容量:4,405ページ
標準:1,105ページ
大容量:5,000ページ
標準:1,645ページ
カラー N/A 大容量:1,100ページ
標準:300ページ
800ページ 大容量:670ページ
標準:310ページ
大容量:690ページ
標準:331ページ
インク1本の価格
(税込)
顔料
ブラック
大容量:6,446円
標準:1,463円
1,331円 大容量:1,610円
標準:1,140円
特大容量:2,200円
大容量:1,610円
標準:1,140円
染料
ブラック
891円 大容量:各1,460円
標準:各920円
大容量:各1,460円
標準:各920円
カラー 891円 大容量:各2,332円
標準:各979円
各1,771円 大容量:各1,460円
標準:各920円
大容量:各1,460円
標準:各920円
※写真の印刷コストに含まれる写真用紙代は、各メーカーで異なります。各メーカーの測定条件から、以下のようになっています。
エプソン:5.2円(「写真用紙<光沢>」500枚パック(KL500PSKR)2,600円→1枚5.2円)
キャノン:4.7円(「写真用紙・光沢 ゴールド」400枚パック(GL-101L400)1,875円→1枚4.6875円)
ブラザー:4.2円(「写真光沢紙」500枚パック2,090円→1枚4.18円)
なお、小数点2位以下の関係で0.1円の誤差が発生することがあります。

 印刷コストを見てみよう。まず、L版写真フチなしの印刷コストである。EP-50Vは14.5円、PIXUS iP8730が19.7円、PIXUS iX6830が17.9円となる。しかし、実際には、写真の印刷コストにはメーカー純正の写真用紙代が含まれており(エプソンは5.2円、キャノンは約4.7円)これらを除いた、純粋なインク代だと、EP-50Vがが9.3円、PIXUS iP8730が15.0円、PIXUS iX6830が13.2円とEP-50Vの安さが際立つ。ちなみに、写真用紙代がメーカーによって異なっているが、サードパーティー製の用紙など純正以外を使う場合は用紙代は同等になる事から、この写真用紙代を除いた印刷コストで比較する方がより正確とも言える。
 文書の印刷コストで見てみよう。こちらもEP-50Vが、A4カラー文書6.6円と最も安い。PIXUS iP8730の10.6円、PIXUS iX6830の9.9円と比べてもかなりの安さだ。ビジネス向けの機種は文書の印刷コストが安い傾向があるが、PX-S6010は9.4円、PX-S5010は9.5円とこちらもPIXUS iX6830とほぼ同じである。最近では、エコタンクやギガタンクと言った、内蔵のインクタンクにボトルから補充する方式のプリンターが、カラー文書1.0円〜2.2円ほどで登場しているので、これと比べると高く見えるが、インクカートリッジ方式の場合は12〜14円位でも低価格な部類に入るので、EP-50Vを除く4機種でも十分低印刷コスト、EP-50Vはカートリッジ方式ではかなりの低印刷コストと言える。
 ただ、インク1セットでの印刷可能枚数と価格を見ると、使い方によって向いている機種が変わってくる。EP-50Vは1本891円で全色揃えても5,346円と6色構成ながら比較的安いのが特徴だ。印刷可能枚数は非公表だが、インクの価格を印刷コストで割ると810ページとなるため、各色平均するとそのくらいになる。それに対してPX-S6010は大容量の場合、ブラックが6,446円、カラーが各2,332円で、4色で13,442円となる。A4カラー文書を印刷すると、ブラックインクは2,200ページ、カラーインクは1,100ページまで印刷が可能だ。インクカートリッジも高いが、印刷可能枚数はかなり多い。ほぼ同じ印刷コストのPX-S5010の場合、ブラックが1,331円、カラーが各1,771円と、特にブラックインクの差が大きい。ただ、PX-S5010の場合ブラックカートリッジは2本セットする必要がある為、実際は2,662円かかる。4色5本揃えると7,975円となる。それでもPX-S6010よりかなり低価格だが、その分ブラックインクは1,000ページ、カラーインクは800ページと少なくなる。価格差の大きいブラックインクは、印刷可能枚数も差が大きく、結果的に印刷コストはほぼ同じになる。PIXUS iP8730は顔料ブラックが1,610円、染料ブラックとカラーが各1,460円で6色で8,910円で、顔料ブラックは500ページ、カラーは670ページ印刷できる。PX-S5010よりやや高く、印刷可能枚数は少ないため、これが印刷コストの差となる。PIXUS iX6830PIXUS iP8730と同じインクを利用し、印刷可能枚数もほぼ同じだが、インクが1色少なく5色で7,450円であることから、印刷コストはやや安くなる。このように、EP-50Vを除く4機種は印刷コストは似ているが、インクカートリッジの価格と印刷可能枚数には大きな違いがある。例えばPX-S6010PX-S5010の場合、印刷枚数が多いなら交換頻度が少なくてもすむPX-S6010が便利だ。一方、印刷枚数が少ないなら、通常インクカートリッジはセットしてから半年、最低でも1年以内には使い切る必要があるため、使い切りやすいPX-S5010がオススメとなる。PX-S6010にも標準容量インクがあり、これならば4色セットで4,400円と非常に安価だが、印刷可能枚数はそれ以上に少なくなる。ブラックインクは大容量に比べて標準容量は36%の価格だが、印刷可能枚数は16%まで減り、カラーインクは価格は67%だが、印刷可能枚数は27%まで減る。標準容量インク使用時の印刷コストは公開されていないが、価格と印刷可能枚数を見る限りでは、印刷コストは倍以上になるだろう。それでも年間300枚も印刷しないなら、PX-S5010のインクでも使い切れないため、インクカートリッジの価格が安いPX-S6010の標準容量カートリッジは魅力的だ。同じくPIXUS iP8730PIXUS iX6830PX-S5010より印刷可能枚数は少ないが価格は近いため、印刷コストだけで見ると余り魅力が無いように思える。しかし、これら2機種にはより量の少ない標準 インクカートリッジが用意されており、印刷コストは1.5倍弱になるが、インク1セットが、PIXUS iP8730で6,060円、PIXUS iX6830で5,140円とさらに安く手に入れられる。印刷が特に少ないなら、これら2機種で標準カートリッジという組み合わせも有りだろう。PIXUS iX6830には逆に顔料ブラックのみ、大容量の更に上の特大容量インクが2,200円で販売されており(印刷可能枚数は不明)、印刷コストはやや下がる。モノクロ印刷が多いなら、顔料ブラックは特大容量、他は標準とするなど工夫ができる。ただ、これを見ると、やはりEP-50Vが優れていることが分かる。インクのサイズは1種類だが、1セット5,346円は、PIXUS iX6830の標準カートリッジ並みだ。それでいて、印刷可能枚数は大容量カートリッジ並みだ(と予想される)。本体価格の差やインクの種類の違いもあるため、これだけで決める訳にはいかないが、印刷コストだけで見るならEP-50Vが圧倒的にオススメだ。

プリント(給紙・排紙関連)
メーカー エプソン エプソン エプソン キャノン キャノン
型番 EP-50V PX-S6010 PX-S5010 PIXUS iP8730 PIXUS iX6830
製品画像
対応用紙サイズ 定型用紙 カード・名刺〜A3ノビ L判〜A3ノビ
(用紙幅64mmまで対応)
カード・名刺〜A3ノビ L判〜A3ノビ 名刺〜A3ノビ
長尺用紙 長さ1,200mmまで 長さ1,200mmまで 長さ1,200mmまで 長さ676mmまで 長さ676mmまで
給紙機能
(セット可能枚数(普通紙/ハガキ/写真用紙))
背面

(50枚/20枚/20枚)
(0.6mm厚紙対応)
○手差し
(1枚/1枚/1枚)

(50枚/20枚/20枚)

(150枚/40枚/20枚)

(150枚/40枚/20枚)
前面 【カセット】
A4まで
(200枚/65枚/50枚)
【カセット上段】
A3まで
(250枚/65枚/50枚)
【カセット下段】
普通紙A3〜B5
(250枚/−/−)
【カセット】
A4まで
(200枚/65枚/50枚)
その他
排紙トレイ自動伸縮 ○(A4/A3伸張量自動調整)
用紙種類・サイズ登録 ○(カセット収納(前面)・用紙セット(背面)連動) ○(カセット収納連動) ○(カセット収納(前面)・用紙セット(背面)連動)
用紙幅チェック機能 ○(印刷時) ○(印刷時) ○(印刷時)

 続いて、給紙・排紙関連の機能を見てみよう。対応する用紙は、最大サイズは5機種ともA3ノビとなっているが、最小サイズはEP-50VPX-S5010PIXUS iX6830が名刺サイズ、PX-S6010PIXUS iP8730はL判となっている。名刺サイズにカットされた用紙に印刷できる3機種は、少量の印刷や、フチ無しのデザインの印刷が行いやすい。ただしPX-S6010はL判の幅89mmより小さい64mm幅までは対応している。このサイズは、B6ハーフサイズのプライスカードに用いられ、小売店などで重宝されそうだ。長尺印刷に関しては、エプソンの3機種が1,200mm(1.2m)まで対応しており、こちらは長尺のPOPや垂れ幕や横断幕などの印刷にも使用できる。一方キャノンの2機種は676mmまでと長尺印刷と言うには少し心許ない。長尺印刷を行うかどうかも機種の決め手の一つとなるだろう。
 給紙に関しては、それぞれの機種で特徴がある。一番シンプルなのはPIXUS iP8730PIXUS iX6830で背面給紙のみとなっている。一度にセット可能な枚数はA4普通紙が150枚と家庭向けよりやや多い程度だ。背面給紙は用紙のセットは簡単だが、トレイが後方に倒れるため、上方と後方にスペースが必要となる。また、用紙をセットしたままだとホコリが積もってしまい、その用紙がプリンター内部に入ると故障の原因となるため毎回取り除くのが望ましい点は不便だ。EP-50VPX-S5010は兄弟機の様な製品なので、方式は同じだ。前面給紙と背面給紙を併用する。前面給紙はカセット式となっておりA4サイズまでとなっているが、大型なので普通紙を200枚までセットできる。一方A3やB4など、A4サイズを超える用紙は背面からとなる。こちらは50枚までセット可能で、一般的な背面給紙よりは少ないが、A4用紙や写真用紙などよく使う用紙を前面給紙カセットに入れておけばホコリが積もる心配が無く、それ以外の用紙はセットしやすい背面からという使い方を想定しているのだろう。もちろん前面給紙カセットはハガキや写真用紙もセットできる。一方で背面給紙に関してはPIXUS iP8730PIXUS iX6830と同じくスペースが必要なほか、セットしたままにしておくとホコリが積もる問題があるのは同じだ。EP-50Vの背面給紙のもう一つの特徴として、0.6mm厚までの厚紙に対応している事がある。一般的なプリンターが0.3mmまでなので、倍の厚みまで使用できる。厚紙や写真貼り合わせの年賀状(写真店に依頼した年賀状)の他、写真印刷向けの機種と言うことでアート紙(例えばエプソンのVelvet Fine Art Paperは0.48mm厚)などにも利用できる。いざというときに便利だろう。PX-S5010も同じ構造だが厚紙対応はうたわれていない(対応していないとも書かれていない)ため不明だ。最後にPX-S6010だが、前面給紙を基本としている。給紙カセットを2段搭載し、それぞれに普通紙で250枚ずつセット可能と、圧倒的な給紙枚数である。上段はA3までの各種用紙、下段にはA3〜B5の普通紙という制限があるが、2段ともA3やA4普通紙をセットして500枚の大量使用に備えても良いし、上段にA4、下段にA3というように使い分けることもできる。注意点としてはA4までの用紙の場合、カセットは内部に完全に収納できるが、それ以上のサイズの場合、カセットを伸ばす必要があり、前に飛び出してしまう。使用時は排紙トレイを伸ばすため問題ないとも言えるが注意が必要だ。とはいえ、A4を超えるサイズをカセットにセットできるのは5機種中この機種だけで、それらのサイズを常に使う人には見逃せない機能だ。前面給紙・前面排紙と言うことで、プリンター後方で用紙が180度方向転換する必要があり、厚紙や封筒などの二重になった紙は問題が起こる可能性もある。そこで、PX-S6010では背面手差し給紙に対応している。従来の背面給紙に近い位置だが、他の4機種のトレイ式のような用紙をセットしておけるような大型のものではなく、折りたたみ式の簡易的なものだ。そのため、1枚ずつの給紙となるが、その分、背面に大げさなトレイを設けること無く背面給紙を可能としているわけである。前面給紙からだと上手く給紙出来ない用紙の他、前面給紙カセットにセットしたのとは異なる用紙を数枚印刷したい場合に、わざわざ入れ替えることなく印刷できるというメリットもある。また前面給紙カセットにセットできないA3ノビサイズもこちらからとなる。このように、各製品に特徴があるが、A3やB4を日常的に使うなら、これらの用紙を前面給紙カセットに入れられるPX-S6010が、日常的にはA4用紙までという人はEP-50VPX-S5010が便利だろう。
 ちなみに、ハガキや写真用紙のセット可能枚数も見てみよう。EP-50VPX-S6010PX-S5010は前面給紙カセットにハガキが65枚、写真用紙が50枚までセットできる。ハガキは30〜50枚、写真用紙は20枚程度が一般的なので、給紙枚数はかなり多い。その上、EP-50VPX-S5010は背面給紙にもハガキや写真用紙が20枚までセットできるので、合計でハガキは85枚、写真用紙は70枚セットできる。PIXUS iP8730PIXUS iX6830はハガキ40枚、写真用紙20枚である。ハガキや写真用紙に大量印刷したい場合は、EP-50VPX-S5010が手間が少なくて便利だ。
 一方 排紙トレイで便利なのが、EP-50VPX-S6010PX-S5010が搭載する自動開閉機能だ。印刷が実行されると自動的に排紙トレイが伸張する。印刷した用紙を落としてバラバラにしてしまう心配が無い。その上PX-S6010はA4とA3で伸張量を自動調整するため、必要以上にトレイが出て邪魔になる事も無い。逆に電源を切るときは自動的に排紙トレイが収納される。
 EP-50VPX-S6010PX-S5010は用紙の種類とサイズを登録しておく機能が搭載されている。液晶ディスプレイでメニューから登録も可能だが、前面給紙カセットを挿し込む、またはEP-50VPX-S5010の背面給紙は用紙をセットした時点で、自動的に登録画面が表示されるため便利だ(されないようにもできる)。この登録内容と、印刷時の用紙設定が異なっている場合、メッセージが表示される仕組みだ。できる限り印刷ミスによる用紙とインクの無駄遣いをなくす工夫がなされている。これに加えて、印刷速度に影響は出るが、印刷時に実際の用紙幅をセンサーでチェックする機能もあり、誤って小さい用紙をセットした場合でもインクでプリンター内部を汚さないようになっている。

プリント(付加機能)
メーカー エプソン エプソン エプソン キャノン キャノン
型番 EP-50V PX-S6010 PX-S5010 PIXUS iP8730 PIXUS iX6830
製品画像
自動両面印刷 対応/非対応
対応用紙 普通紙
ハガキ
普通紙
ハガキ
普通紙
ファイン紙
ハガキ
対応サイズ A4
B5
レター
ハガキ
ユーザー定義サイズ(182×257〜215.9×297mm)
A3
B4
A4
B5
A5
レター
リーガル
ハガキ
ユーザー定義サイズ(148×210〜297×431.8mm)
A4
B5
レター
ハガキ
ユーザー定義サイズ(182×257〜215.9×297mm)
自動両面
印刷速度
A4カラー文書 N/A 9.0ipm 4.7ipm
A4モノクロ文書 N/A 16.0ipm 5.5ipm
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能 ○(オートフォトファイン!EX・高彩モード対応) ○(オートフォトファイン!EX) ○(オートフォトファイン!EX) ○(自動写真補正) ○(自動写真補正)
特定インク切れ時印刷 ○(黒だけでモード・5日間のみ) ○(黒だけでモード・5日間のみ) ○(黒だけでモード・5日間のみ)
自動電源オン/オフ ○/○ −/○ ○/○ ○/○
(USB接続時のみ)
○/○
(USB接続時のみ)
PictBridge対応 ○(Wi-Fi)
廃インクタンク交換 ○(メンテナンスボックス交換可) ○(メンテナンスボックス交換可) ○(メンテナンスボックス交換可)
フチなし吸収材エラー時の対応機能 ○(フチあり印刷継続可)

 その他、プリントの付加機能を見てみよう。自動両面印刷機能はEP-50VPX-S6010PX-S5010が対応している。普通紙だけでなくハガキ用紙にも対応するため、年賀状で通信面と宛名面を用紙の差し替え無しで印刷できるなど、便利である。さらに、PX-S5010はファイン紙への両面印刷にも対応している。普通紙では両面印刷時に裏移りが気になるほか、画質もそれほど良くない。ファイン紙なら、各社から両面印刷に対応した物が発売されており、裏移りが軽減されているほか、印刷品質も良くなるため、綺麗な両面印刷を行う場合はこの機能は便利だ。対応用紙にも違いがある。A3又はB4用紙の自動両面印刷に対応するのはPX-S6010だけで、EP-50VPX-S5010はA4サイズまでとなる。また、EP-50VPX-S5010は最小はハガキを除くとB5サイズなのに対して、PX-S6010はA5サイズにも対応する。また、3機種ともユーザー定義サイズにより、定型サイズ以外への自動両面印刷にも対応しているが、その場合の最小サイズは、EP-50VPX-S5010が182×257mm(=B5サイズ)、PX-S6010が148×210mm(=A5サイズ)なので、定型サイズより小さいサイズを設定できるわけでは無い。自動両面印刷の速度にも差がある。PX-S6010はカラーが9.0ipm、モノクロが16.0ipmなのに対して、PX-S5010はそれぞれ4.7ipmと5.5ipmとなる。片面印刷の速度にも違いがあるが、片面印刷からの低下率で見てみるとPX-S6010のカラーは75%、モノクロは64%なのに対して、PX-S5010は 42.7%と30.6%となる。PX-S6010の方が自動両面印刷時の速度低下が抑えられており、元の速度差と合わせて、カラーは倍近く、モノクロは3倍近くの速度差になっている。両面印刷を多用するなら、用紙サイズの豊富さに加えて印刷速度面でもPX-S6010は便利だ。
 CD/DVDレーベル印刷機能に関しては、EP-50VPX-S5010PIXUS iP8730が対応している。基本的には家庭向けの機種用の機能だが、PX-S5010EP-50Vと同じ本体であるため機能が搭載されているのだろう。写真の自動補正機能としてエプソンの3機種は「オートフォトファイン!EX」を、キャノンの2機種は「自動写真補正」を備えている。「オートフォトファイン!EX」は顔を自動判別し、シーンに合った補正をするもので、逆光写真や色かぶりも自然に補正してくれる機能である。一方「自動写真補正」も顔を自動検出し、顔とそれ以外の部分の露光状態を別々に解析して、それぞれに合った明るさに補正してくれる機能である。つまり、5機種とも高精度で自動補正をする機能を搭載している。PictBridgeに関してはPIXUS iP8730がWi-Fi方式にのみ対応しているが、対応するデジタルカメラは獄限られており、大きな差ではないだろう。最近、搭載機種が増えつつある自動電源オン機能だが、PX-S6010を除く4機種が対応する。電源が切れた状態でも印刷が実行されると自動的に電源がオンになる機能だ。最近のプリンターは無線LANや有線LANでネットワーク接続ができるため、必ずしもパソコンのそばにあるとは限らず、またスマートフォンなどからのプリントも考えられるため、わざわざプリンターの前まできて電源を入れる必要がないのは便利だ。EP-50VPX-S5010は排紙トレイも自動で伸張するため完全に自動だが、PIXUS iP8730PIXUS iX6830は前面カバーを開け排紙トレイを開けた状態にしておく必要がある。また、PIXUS iP8730PIXUS iX6830はUSB接続時のみ有効なので、パソコンやスマートフォンから離れた場所に置いた場合のネットワーク接続時には使用できず、USB接続で近くに置いた場合のみというあまり意味が無い仕様だ。排紙トレイの自動伸張の点からも、実質的に便利なのはEP-50VPX-S5010だけだろう。一方、指定した時間が経つと自動的に電源がオフになる機能は5機種とも搭載している。ただし、こちらもPIXUS iP8730PIXUS iX6830はUSB接続時のみ利用できる。
 その他の便利機能として、EP-50VPX-S6010PX-S5010はカラーインクが無くなった際に、モノクロ印刷が継続できる「黒だけでモード」を搭載している。ただしモノクロ印刷の場合でもカラーインクが無いと本来の画質では印刷が出来ない他、5日間に限定されるため、モノクロ印刷しかしないのでカラーカートリッジを交換しないで、又は取り付けないで使用するという事はできない。プリンター自体に負担もかかるので、あくまで急なインク切れで、買いに行くまでの間にプリントが継続できるという機能だ。
 また、これら3機種は交換式メンテナンスボックス(廃インクタンクの交換)にも対応している。メンテナンスボックスとはクリーニング時に排出される廃インクを貯めるもので、満タンになると通常は修理に出して交換する必要がある。交換費用もそれなりに掛かる他、プリンターが手元に無い期間が発生してしまう。しかし、これら3機種はユーザー自身で簡単に交換できるようになっている。インクカートリッジなどと共に家電量販店やパソコンショップなどでも販売されており、EP-50VPX-S5010用は1,078円、PX-S6010用は2,618円となっている。PIXUS iP8730で修理に出すと14,300円、PIXUS iX6830は12,100円かかるのとは大きな差である。メンテナンスボックスの空き容量はインク残量と共に表示されるので、空きが少なくなったら予備を用意しておけば、満タンになってもすぐに印刷を再開できる。EP-50Vは印刷コストが安く、PX-S6010PX-S5010はビジネス用である事から、印刷枚数が多いと思われるため、この機能はうれしいところだ。一方、フチなし吸収材(フチなし印刷は用紙サイズより少し大きめにプリントする事で実現しており、そのはみ出したインクを吸収させるもの)が満タンになった場合も多くの機種は修理対応となるが、PX-S6010は「フチあり」印刷に限っては印刷が継続できる機能を搭載する。とりあえず、急ぐ印刷だけを行っておき、時間に余裕のある時に修理に出すことが可能だ。

スマートフォン/クラウド対応
メーカー エプソン エプソン エプソン キャノン キャノン
型番 EP-50V PX-S6010 PX-S5010 PIXUS iP8730 PIXUS iX6830
製品画像
スマートフォン連携 アプリ メーカー専用 EPSON iPrint Epson Smart Panel
(EPSON iPrintにも対応)
EPSON iPrint Canon PRINT Inkjet/SELPHY Canon PRINT Inkjet/SELPHY
AirPrint
対応端末 iOS 13.0以降
Android 8.0以降
iOS 13.0以降
Android 8.0以降
iOS 13.0以降
Android 8.0以降
iOS 14.0以降
Android 6.0以降
iOS 14.0以降
Android 6.0以降
Wi-Fiダイレクト接続対応
Wi-Fiダイレクト接続支援機能 ○(QRコード読み取り(iOS)/アプリ上で選択して本体で許可(Android))
スマートフォンで初期設定
スマートスピーカー対応 ○(Alexa/Googleアシスタント) ○(Alexa/Googleアシスタント) ○(Alexa/Googleアシスタント)
写真プリント
ドキュメントプリント ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
クラウド連携 プリント アプリ経由/本体 ○/− ○/− ○/− −/− −/−
オンラインストレージ ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/google classroom) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive)
SNS ○(Instagram/Facebook・コメント付き可) ○(Instagram/Facebook・コメント付き可) ○(Instagram/Facebook・コメント付き可)
写真共有サイト
メールしてプリント ○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/PDF/Word/Excel/PowerPoint/メール本文) ○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/PDF/Word/Excel/PowerPoint/メール本文) ○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/PDF/Word/Excel/PowerPoint/メール本文)
LINEからプリント ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint)
リモートプリント ○(リモートプリントドライバー) ○(リモートプリントドライバー) ○(リモートプリントドライバー)
スキャンしてリモートプリント ○(受信のみ) ○(受信のみ) ○(受信のみ)

 スマートフォンとの連携機能は5機種とも搭載しており、iOSとAndroid端末に対応している。いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることで行える。写真印刷の場合、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。さらにドキュメント印刷にも対応している。PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応している他、Webページの印刷もでき便利だ。接続は無線LAN(Wi-Fi)を利用するが、無線LANルーターを経由する方法と、プリンターと直接接続するWi-Fiダイレクトが一般的だ。無線LANルーターを経由する方が、機能面でも制限が無く、印刷する度にプリンターと接続と切断を繰り返すのWi-Fiダイレクトと比べると便利なので、こちらを利用するのがお勧めだが、無線LANルーターが無い環境で使用する場合や、一時的に同じネットワークに入っていない人がプリンターを使いたい場合などにWi-Fiダイレクトは便利だ。エプソンの3機種は両方に対応しているが、キャノンの2機種はWi-Fiダイレクトには非対応で、無線LANルーターが必須となる。
 ちなみに、Wi-Fiダイレクトの接続設定は手動でもそれほど難しくは無いが、PX-S6010は接続支援機能が提供される。iOSの場合は本体の液晶に表示されるQRコードを標準カメラアプリで読み込めば接続が完了し、Androidの場合は一覧から接続するプリンターを選ぶと、本体の液晶にメッセージが表示されるので接続の許可を選べば接続が完了する。セキュリティーキーの入力などが不要で、設定はより簡単になっている。なお、iPhoneやiPadの場合、AirPrintを利用したプリントも可能だ。
 エプソンの3機種はスマートスピーカーにも対応する。AlexaとGoogleアシスタント対応端末に対応しており、声だけでテンプレートを印刷させることができる。デザインペーパー、フォトプロップス、カレンダー、ノート、方眼紙、五線譜などのエプソン独自のものと、Alexaに登録された買い物リスト、やることリストなどの印刷に対応する。
 また、EP-50VPX-S6010PX-S5010はクラウドとの連携機能も搭載されており、スマートフォン/タブレット上からオンラインストレージ上のデーターにアクセスし、そのファイルを印刷することも可能だ。さらにSNSの写真をコメント付きで印刷できる機能も搭載している。いずれもスマートフォン用アプリ経由で、プリンター本体でクラウドにアクセスする機能はない。
 それ以外にも、リモートプリント機能として、印刷したい写真や文書をメールに添付してEP-50VPX-S6010PX-S5010に送ると自動で印刷できる「メールプリント」、LINE上でプリンターを友達登録し、トーク画面から写真を送信すると印刷される「LINEからプリント」、パソコンやスマートフォンから通常のプリントと同じ操作で、外出先など離れた場所から自宅のこれらの機種で印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。さらにスキャナーを搭載しないため、送信はできないが、対応の複合機でスキャンして、これら離れた場所のこれらの機種に送信することで、簡易ファクスのような使い方ができる機能も搭載する。EP-50VPX-S6010PX-S5010の3機種はネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。一方、PIXUS iP8730PIXUS iX6830はスマートフォン/タブレットからのプリント機能だけで、クラウドやリモートプリント関係の機能は一切搭載していない。

操作パネル/インターフェース/本体サイズ
メーカー エプソン エプソン エプソン キャノン キャノン
型番 EP-50V PX-S6010 PX-S5010 PIXUS iP8730 PIXUS iX6830
製品画像
液晶ディスプレイ 2.4型
(90度角度調整可)
2.4型
(角度調整可)
2.4型
(90度角度調整可)
操作パネル 物理ボタン式
(90度角度調整可)
物理ボタン式 物理ボタン式
(90度角度調整可)
インターフェイス USB他 USB2.0×1 USB2.0×1 USB2.0×1 USB2.0×1 USB2.0×1
無線LAN IEEE802.11n/g/b IEEE802.11ac/n/a/g/b
(5GHz帯対応)
IEEE802.11ac/n/a/g/b
(5GHz帯対応)
IEEE802.11n/g/b IEEE802.11n/g/b
有線LAN 100BASE-TX 100BASE-TX 100BASE-TX 100BASE-TX
対応OS Windows 11/10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 11/10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 11/10/8.1/8/7/Vista/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 11/10/8.1/8/7/Vista SP1/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
Windows 11/10/8.1/8/7/Vista SP1/XP SP3
MacOS 10.6.8〜
耐久枚数 N/A 15万枚 5万枚 N/A N/A
外形寸法(横×奥×高) 476×369×159mm 515×400×298mm 476×369×159mm 590×331×159mm 584×330×159mm
重量 8.5kg 13.7kg 8.6kg 8.5kg 8.1kg
本体カラー ブラック ホワイト ホワイト ブラック ブラック

 最近では単機能プリンターでも操作パネルを備える機種が増えてきているが、EP-50VPX-S6010PX-S5010の3機種が該当する。EP-50VPX-S5010は同じ本体を使用しているのでデザインは共通だ。3機種とも2.4型のカラー液晶を搭載しており、液晶横の物理ボタンで様々な操作が行える。液晶と操作パネルは本体前面に搭載されるが、EP-50VPX-S5010は90度(水平)まで、PX-S6010もほぼ水平まで起こして角度調整ができるため、見やすい・操作しやすい角度にする事ができる。液晶は複合機と比べれば大きくはないが十分なサイズだ。操作ボタンも、液晶右に4方向のカーソルキーと、中央に「OK」ボタンがあり、その周囲に「ストップ」や「戻る」などのボタンが配置され、「ホーム」ボタンは液晶左で独立しているなど、わかりやすい配置だ(EP-50VPX-S5010PX-S6010はボタンの種類に若干の違いはあるが)。一方、PIXUS iP8730PIXUS iX6830には液晶は搭載されない。液晶があると、前述のセットした用紙の登録が行えるだけでなく、Wi-Fiダイレクトの設定や、インク残量確認、各種設定が行え、エラー発生時にはその内容も確認できる。また、PX-S6010は印刷枚数の確認、印刷ジョブの管理や、ユーザーによる利用制限、操作パネルの操作制限や、USB接続の無効化などの設定が可能なほか、印刷時にパスワード印刷を設定しPX-S6010本体でパスワードを入力するまで印刷されないようにできるなど、多人数での使用にも便利になっている。
 インターフェースは5機種ともUSB2.0に加えてネットワーク接続が可能だ。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルーターで複数のパソコンやスマートフォン、タブレットがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人には、家庭内のどのパソコンやスマートフォンからでも印刷できるため非常に便利だろう。ただしPIXUS iP8730は無線LANのみである一方、他の4機種は有線LANにも対応する。無線LANはケーブルが不要なので、ケーブルの取り回しに苦労しないで良いというメリットがあるが、無線LANルーターの近くに置く場合や、逆に遠くて接続が安定しない場合の他、接続設定が面倒という場合や、既に家庭内やオフィス内にLAN配線が用意されている場合などに有線LANは重宝するため、そういった使い方を考えている人はPIXUS iP8730は注意が必要だ。一方、PX-S6010PX-S5010は他の3機種より無線LAN機能が強化されている。EP-50VPIXUS iP8730PIXUS iX6830はIEE802.11n/g/bのみの対応だが、これは2.4GHz帯を使用する。Bluetoothや無線マウス、電話の子機などと同じ帯域で電波干渉を起こすほか、電子レンジなどの影響も受けやすい。それに対して、PX-S6010PX-S5010はIEEE802.11ac/n/a/g/b対応で、IEEE802.11ac/n/a使用時は5GHz帯が利用できる。5GHz帯は無線LAN専用とも言えるので通信が安定する。さらにIEEE802.11acはIEEE802.11nより通信速度が圧倒的に高速でるため、印刷データーの転送待ちが起きにくくなる。無線LANでの接続を考えている人には、この機能は便利と言えるだろう。
 対応OSは5機種ともWindows 11/10/8.1/8/7/Vista/XPとMacOS 10.6.8以降となる。Windows XPはSP3が必要だ。PIXUS iP8730PIXUS iX6830はWindows Vistaの場合SP1以降が必要であるが、5機種はほぼ同じと言える。耐久枚数はPX-S6010が15万枚、PX-S5010は5万枚をうたっている。一般的な家庭用プリンターが1万〜1万5000枚である事を考えると、これら2機種はかなり高耐久に作られており、ビジネス利用でも十分耐えられるようになっている。
 本体サイズは、EP-50VPX-S5010が476×369×159mm、PX-S6010は515×400×298mm、PIXUS iP8730は590×331×159mm、PIXUS iX6830が584×330×159mmである。EP-50VPX-S5010の横幅の小ささは突出していると言える。PX-S6010は性能重視であるためやや大きいが、EP-50VPX-S5010より幅は39mmm、奥行きは31mm大きいだけで設置面積はかなり小さめだ。高さは前面給紙カセットが2段であるため大きいが、給紙枚数を考えれば小さい方だと言える。PIUXS iP8730はEP-50VPX-S5010より幅が114mm、PIXUS iX6830も108mmも大きいため、かなり大柄だ。近年プリンターの小型化が著しいが、それ以前の発売の製品であるためだ。両機種は奥行きは38〜39mm小さいとはいえ、EP-50VPX-S5010はA4用紙までなら前面給紙カセットにセットでき、PX-S6010もA4用紙までなら前面給紙カセットは本体に完全収納できるのに対して、PIXUS iP8730PIXUS iX6830は背面給紙しか無いため、必ず後方にスペースが必要になる。設置面積ではかなり不利と言えるだろう。



 この5機種を見ると、万人にお勧めできるのはEP-50VPX-S5010である。発売が新しいだけに機能とコンパクトさが優れている。小型化のために、前面給紙カセットと自動両面印刷はA4までという制限があるとは言え、それらの機能を搭載し、A3ノビなどの大きい用紙も背面から連続給紙ができ、ディスクレーベル印刷、自動電源オンと排紙トレイの自動伸張機能など、最新の機種らしい便利な機能も豊富だ。スマートフォン対応だけで無く、リモートプリント機能などにも抜かりは無い。液晶を搭載し操作性も良い。それでいて他機種とは比べものにならないコンパクトさである。EP-50Vは写真の画質と印刷コストでは一歩抜きに出ているし、PX-S5010は文書印刷の画質と印刷コストに優れている。写真向け又は文書印刷のどちらかの用途が中心なら、写真ならEP-50V、文書ならPX-S5010をおすすめしたい。
 一方、より多人数での文書印刷用途なら、PX-S6010をオススメしたい。給紙枚数やインク1セットでの印刷可能枚数、本体の耐久枚数など、印刷枚数が多くても安心だ。また各種利用制限やパスワード印刷と言った機能も、多人数での使用に向いている。印刷スピードも圧倒的に速く、自動両面印刷も速いため、待ち時間も少ない。PrecisionCoreプリントヘッドによる普通紙印刷の高画質化と、文書の耐保存性の高さも魅力だ。また、前面給紙カセットや自動両面印刷がA3まで対応しているのもメリットだ。PX-S5010より1万円高く、本体サイズも大きくなるが、多人数で使用する、又は印刷枚数が多い、A3やB4プリントがメインなら、その価値は十分になる。
 逆に、EP-50VPX-S5010では、写真と文書それぞれに特化しすぎており、両方ともまんべんなく使いたいという人にはPIXUS iP8730PIXUS iX6830が良いだろう。また、写真の印刷もしたいが、EP-50Vほど画質はこだわらないので本体価格を安く抑えたいという人にもこれら2機種が良いだろう。染料の5色または4色で写真印刷もそれなりに高画質である一方、顔料ブラックで文字印刷も十分綺麗だ。本体は横幅が大きいことや、自動両面印刷に非対応、スマートフォン対応も機能が限定され、液晶が無いなど、旧世代のイメージが残るが、基本性能は悪くない。この2機種では、写真印刷やレーベル印刷といった機能を重視するならPIXUS iP8730、文書印刷や有線LAN接続といった機能を重視するならPIXUS iX6830がおすすめだ。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/