第41回
デジタルカメラ
SONY Cyber-shot DSC-T50
(2006年11月29日購入・2008年6月23日著)



デジカメを購入しよう

 ロードテスト第21回で紹介したCyber-shot DSC-W1の調子が悪くなってきた。撮影中に急に電源が切れるようになったのだ。撮影しようとカメラを構えていると、急に画面が消えるのである。その際、繰り出したレンズは半分収納された状態で止まってしまう。電源ボタンを押すと正常に電源が入るので撮影が出来ないわけではないが、シャッターチャンスを逃す事があるのは問題だ。電池が弱っているのではないかとも考え、交換してみたが一向に改善しない。さらに、動画撮影時にオートフォーカスが正常に働かないことが頻繁に起こりだした。修理に出しても良いが以外と高くかかると言うことで、新機種の購入を検討してみよう。
 前回の機種で問題がなかったのは510万画素という画素数、2.5インチの画面サイズ、3倍光学ズーム、640×480ドット30fpsの動画である。一方不満点もある。まず、手ぶれがよく発生することと電池の持ちが悪いこと、動画撮影時にズームが行えないことである。手ぶれに関しては連写機能を利用し、4〜5枚連続撮影することで、その内何枚かが手ぶれしていないものが撮影できるが、根本的な解決ではない。そこで、これらを改善する機種を検討してみた。

手ぶれ補正付きの機種は?

 ここで撮影した写真の「ブレ」について確認してみよう。ブレには2種類あり、それが「手ぶれ補正」と「被写体ブレ」である。どちらも夜や室内など周囲が暗い場合にシャッター速度が遅くなるために起こるものであるが、「手ぶれ補正」はシャッターが降りる瞬間にカメラを持つ手が動くことで写真全体がぶれてしまうというものである。一方の「被写体ブレ」はシャッターが降りる瞬間に被写体が動いてしまったり、車などの動きのある被写体を撮影した場合に、静止したものはブレなく写るものの、肝心の被写体がブレてしまう事である。
 さて、手ぶれを防ぐ機能であるが、こちらは最近になって「手ぶれ補正」機能搭載のデジカメが登場している。光学式と電子式があるが、静止画には光学式が効果的だ。カメラの揺れを感知し、CCD又はレンズを揺れと逆方向に動かすことでブレを相殺するというものだ。一方、被写体ブレは、高感度撮影機能を利用することになる。銀塩カメラと同じくISO値で表すことになるが、銀塩カメラのようなフィルムを高感度のものに変えるような方法ではなく、デジタル的に明るくするものだ。つまり暗くても良いのでブレが発生しない様に速くシャッターを切っておき、デジタル補正で明るくするというものだ。ISO640以上に対応していれば高感度機、ISO1000以上が超高感度機になるようだ。
 ここで、高感度撮影機能を使えばシャッター速度そのもの速くなるため、被写体ブレだけでなく手ぶれも補正にも高価があるのではないかという疑問がわく。その通り、確かに手ぶれも補正できるが、残念ながら高感度撮影機能は万能ではない。デジタル的に明るくするために、ノイズが乗ってしまうのである。一方の光学式手ぶれ補正は特殊な機構が必要であるために価格が上がってしまうが、画質劣化はほとんど無い。そのため手ぶれ補正だけなら光学式手ぶれ補正を使った方が綺麗に撮れるのだ。「ブレを抑える」とうたったものには高感度だけの機種もあるが、今回は光学式手ぶれ補正と高感度の両方が付いた機種を選んでいきたい。
 2006年11月現在で光学式手ぶれ補正と高感度撮影機能の両方を備えた機種は、PanasonicとSONYの2メーカーが積極的にラインナップしている。PanasonicはISO1600まで対応しており、SONYよりもさらに高感度に設定できる。一方のSONYはレンズが繰り出さない薄型の機種であることが特徴だ。どちらも魅力的だが、ISOは高すぎてもノイズがひどくなってしまうので、実際にはISO1600まで高めるかどうか疑問だ。一方のSONYは薄型であることに加えて、バッテリの保ちが非常によいのも魅力的だ。そこでSONYの機種を選ぶ事にしよう。

機種を選ぼう

 さて、具体的な機種を見てみよう。SONYのCyber-shotの手ぶれ補正機能と高感度撮影機能が付いていて薄型の機種は2機種だ、DSC-T50とDSC-T9である。2機種の違いを簡単に見てみよう。
機種名 DSC-W1(参考) DSC-T9 DSC-T50
有効画素数 510万画素 600万画素 720万画素
光学ズーム 3倍 3倍 3倍
焦点距離
(35mm換算)
38〜114mm 38〜114mm 38〜114mm
マクロ撮影 6cm 1cm 1cm
手ぶれ補正 ○(光学式) ○(光学式)
ISO感度設定 自動/100/200/400 自動/80/100/200/400/640 自動/80/100/200/400/800/1000
液晶 2.5型
123,200ドット
2.5型
230,400ドット
3.0型
タッチパネル式
230,400ドット
ビューファインダー ○(光学式)
記録メディア メモリースティック メモリースティックDuo メモリースティックDuo
内蔵メモリ 56MB 56MB
動画撮影 640×480ドット30fps 640×480ドット30fps 640×480ドット30fps
連写機能 最大9枚 最大7枚 最大5枚
バッテリ 単3型電池(2本) 専用リチウムイオンバッテリ 専用リチウムイオンバッテリ
バッテリ撮影枚数 340枚 240枚 400枚
外形寸法 91.0×60.0×36.3mm 89.7×54.9×16.8mm 95.0×56.5×23.4(最薄部19.0)mm
質量 189g(本体)
250g(撮影時)
134g(本体)
159g(撮影時)
130g(本体)
170g(撮影時)

参考として今持っている機種DSC-W1を掲載した。DSC-T9とDSC-T50を比較して目に付くところは、画素数、ISO感度設定、液晶ディスプレイ、バッテリ撮影枚数である。画素数は今の510万画素でも満足できているので600万画素でも720万画素のどちらでも大きな差はない。液晶ディスプレイはサイズが異なるだけでなくタッチパネルの有無も異なる。しかし、タッチパネルは強いて購入理由になるほどではなく、液晶サイズも大きければよいものの2.5型でも十分といえば十分だ。一方のISO感度設定は大きな差だ。最大ISO640では「やや高感度」程度にとどまってしまう。またバッテリ撮影枚数の差も大きい。
 これらの2点の差は見過ごせないものだ。そうなるとDSC-T50を購入したいところだが、DSC-T50は45,800円、DSC-T9は36,800円。9,000円の差は結構大きい。今回は光学式手ぶれ補正を重視することとしてDSC-T9で我慢するとしよう。
 ところが購入しにヨドバシカメラ・マルチメディア梅田に行くと、期間限定セールを行っていた。DSC-T50がなんと38,000円まで下がっているのだ。DSC-T9も33,800円まで下がっていたが、下げ幅はDSC-T50の方が圧倒的に大きく、価格差が小さくなっている。当初の予算に+1,200円でDSC-T50が買えると言うことで、こちらに変更した。

DSC-T50の使い勝手は?

 まず一目見て、DSC-W1と比べるとスマートになったと感じる。手に持ってもかなり薄くなった印象だ。これなら胸ポケットなどに入れることも出来るだろう。薄型になると撮影時のホールド感が落ちると言われているが、DSC-T50は撮影しにくいというほどではなかったので、この程度なら薄くなったことのメリットの方が大きいだろう。
 便利なのは電源の入れ方だ。電源ボタンも存在するが、前面のレンズカバーを下にスライドさせるだけで電源が入り撮影が出来る状態になる。ここで良いのが、レンズカバーはレンズ部だけでなく、かなり大きい事である。例えば、暗い中で電源を入れる場合、電源ボタンを手探りで探すのは数秒かかるが、レンズカバーなら大きいのですぐ電源を入れ撮影体制に入れるのだ。また取り出しながらレンズカバーをスライドさえることも出来るので、実際には撮影までの時間は更に短くなり、シャッターチャンスの逃しにくくなっている。

レンズカバーを閉じた状態である。非常にすっきりした印象だ。

レンズカバーをスライドさせた状態。レンズやフラッシュが見える。スライドさせるだけで電源が入るので非常に便利だ。

 では、DSC-T50の特徴の一つの液晶ディスプレイを見てみよう。見て思ったのは、画面が大きくなっただけでなく、綺麗になったと言うことだ。確かにスペックを見てみると液晶の画素数が倍近くになっているため、詳細に表示されている分綺麗に見えるようだ。一方で、DSC-W1と比べるとビューファインダーが無くなってしまったが、昔のデジカメなら液晶が見にくいことがあっても、今はほとんど無いので問題ないと言える。またタッチパネル液晶を採用したためズームボタンの他にはボタンが2つしかなく非常にシンプルである。

液晶が非常に大きい。またボタン類が少なくシンプルだ。

 続いて上面を見てみよう。シャッターの他、モードスイッチと手ぶれ補正ボタン、シャッターボタンがある。モードスイッチは「写真撮影」「写真再生」「動画撮影」の3つを切り替えるだけのシンプルなものだ。DSC-W1では「夜景」や「ビーチ」、「キャンドル」などのシーンモード切替も兼ねていたが、DSC-T50ではシーンモードの切り替えはタッチパネルで行うこととなっているようだ。手ぶれ補正ボタンは、オート撮影時以外に光学式手ぶれ補正のオン/オフを切り替えるものだ。そして電源ボタンは通常はレンズカバーをおろすことになるので使わないが、写真再生のために電源を付ける場合などに使用しても良い。配置は比較的分かりやすく、シャッターボタンもカメラを構えた時に人差し指が自然に来る位置であり、カメラを固定しやすい。

上面はシャッターボタンを始め手ぶれ補正や電源ボタン、モードスイッチが配置される。シャッターボタンの位置はカメラを構えた時に自然に人差し指が来る位置だ。

 タッチパネル機能だが、タッチ操作そのものは非常に便利だ。画面に大きく表示されたボタンをタッチできるため操作しやすい。さらにボタンの場合と比べ、日本語で書かれているために、選択肢が分かりやすいという特徴もある。さらに、明るく光っている液晶ディスプレイにボタンがあるので、暗い中でも操作が行えるという利点もある。全体的にはタッチパネルは使いやすいと言えるのだ。

「オンスクリーンキー」を押すとこの画面が出てくる。

MENUを選ぶとこのような画面になる。各設定が日本語で書かれているので非常に分かりやすい。

 一方タッチパネルがデメリットになっている部分ある。背面にあるボタンは、「ズーム」と「画面切替ボタン」「オンスクリーンキー」だけとなってしまった。液晶ディスプレイが大型化した結果、十字キーなどを設置するスペースが無くなったとも考えられる。そのため、画面表示の切り替え以外の設定は全てオンスクリーンキーを押して画面操作する必要がでてしまった。一方、これまで使ってきたDSC-W1やタッチパネルでない下位機種のDSC-T9では十字キーのそれぞれによく使う設定の切り替えが割り振られている。例えばそれらの機種でフラッシュモードを切り替える場合、フラッシュモード切替のボタンを押すだけで、オート→強制発光→スローシンクロ→発光禁止→オートという風に切り替わっていく。一方DSC-T50で行う場合、まずオンスクリーンキーを押し、画面に表示されたメニューの中からフラッシュのボタンを押し、中の選択肢から発光モードを選ぶという形だ。わずか3手順だが、これまで最高でボタン1回で切り替えられた事と考えると手間である。セルフタイマーやマクロ撮影も同様で、DSC-W1やT9ではセルフタイマーボタンやマクロボタンを押すだけだが、DSC-T50ではオンスクリーンキー→画面のセルフタイマー又はマクロボタン→選択肢から選ぶの3手順となる。つまり、表示が分かりやすく暗いところでも操作できるが、どんな操作でも最低3手順が必要になってしまった。せめてよく使う機能の切り替えだけでも側面にボタンを設けるなどしてもらえるとより便利だったのだが。タッチパネルは全体的には使いやすいので、この点だけが非常に残念だ。

フラッシュモードの設定画面である。こちらも日本語で書かれていて分かりやすいが、オンスクリーンキーを押した上で、画面のフラッシュボタンを押さなければ出てこない。以前のDSC-W1や下位機種のDSC-T9のようなボタン操作の機種ならば、直接切り替えられるボタンが付いていたので、その点では面倒になったと言える。

セルフタイマーの設定画面である。こちらも同じくボタン操作の機種より手順が増えてしまっているのは残念だ。

 実際に撮影して画質を見てみる。DSC-T50は薄型の本体でしかも使用時にもレンズが飛び出ないが、これはCCDを上向きに配置しており、これをプリズムで光路を直角に曲げているためだ。そのため内部でレンズを動作させる事ができるため、レンズが飛び出ないでズームが行えるのだ。しかし、この方式は直角に曲げる分だけ、若干が質が落ちると言われており気になっていた。しかし、実際の写真を見る限りそのようなこともない。色も忠実に出ているように感じるし、周辺部のゆがみも小さいように感じる。また、明るいところでの写真はノイズも少なく綺麗だ。コンパクトデジカメとしては十分に満足である。それよりもコンパクトになったことで、ポケットに入れておきすっと取り出すことが出来、さらにレンズカバーをおろすだけなので取り出しながら手探りで電源を入れられるのが便利だ。実際に、友人との旅行中に、さっと取り出して何気ない姿を撮影が出来て非常に便利だった。
 小さな変更点だが、便利になった点として、動画撮影時にズームが行えるようになった点が挙げられる。DSC-W1ではズームしておいてからの撮影開始は出来たものの、撮影中にズーム操作が行えなかった。しかし、DSC-T50はビデオカメラのようにズーム操作が行えるので、便利になった。
 バッテリ駆動時間は公称値以上によく持つ印象だ。1度充電しておけば、2泊3日の旅行で300枚程度の写真撮影を行っても大丈夫であった。充電器も小さく軽いため持って歩いても苦にならない。


手ぶれ補正と高感度撮影の効果は?

 では、光学式手ぶれ補正と高感度撮影の効果を見てみよう。

サンプル1
手ぶれ補正:無
高感度:無
(DSC-W1撮影)
サンプル2
手ぶれ補正:有
高感度:無
 
サンプル3
手ぶれ補正:有
高感度:有
 

クリックで拡大

クリックで拡大

クリックで拡大
ISO感度:ISO200
シャッター速度:1/8秒
ISO感度:ISO320
シャッター速度:1/32秒
ISO感度:ISO1000
シャッター速度:1/125秒

 この3枚を見ていただきたい。DSC-T50ではオート撮影時に光学式手ぶれ補正機能を切ることが出来ないので、光学式手ぶれ補正なしのサンプル1はDSC-W1を利用している。撮影場所も異なるが、暗所で撮影した場合どうなるかが分かるだろう。見てみると全体的にブレが発生している。この写真の電車は停車中にもかかわらずぶれているのは手ぶれのためだろう。
 サンプル2はDSC-T50で光学式手ぶれ補正機能だけを使用し、高感度撮影機能は使用していない場合の撮影サンプルだ。撮影モードは「オート」を選択しているため、ISO感度は320となった。サンプル1と比べると、全体的なブレが無くなっている。光学式手ぶれ補正機能が働いたおかげだろう。一方で動いている電車はぶれてしまっている。ISO感度が320ではシャッター速度は1/32秒で、動いているものを取るにはシャッターが遅すぎるのが原因だ。
 続いて同じ場所で「高感度モード」で撮影したのがサンプル3だ。こちらはISO感度が最高の1000となっている。見ると、電車のブレもかなり軽減されていることが分かる。サンプル2よりも電車が近づいた位置での撮影になっているため、よりブレやすいと考えられるが高感度撮影の効果が現れブレが減ったという事だ。シャッター速度も1/125秒まで速くなったためと思われる。
 ちなみに光学式手ぶれ補正のみでも手ぶれ写真の確率は大きく減った。CCDの動く範囲にも限りがあるため大きなブレは消すことが出来ず、手ぶれがゼロになったとは言えないが、室内での手ぶれ率はこれまで10枚中6〜7枚あったのが10枚に1枚程度まで減り、夜の屋外の写真でも10枚に9枚はブレていたのが10枚中3〜4枚くらいに減っている。旅行などの大切な写真の時は3〜4枚連写することで、ブレていない写真が確実に手にはいるようになった。

↓赤枠部分を拡大
↓赤枠部分を拡大
ISO感度:320
高感度モード「オフ」
ISO感度:1000
高感度モード「オン」

クリックで拡大

クリックで拡大

 次に上記写真の赤枠部分を拡大した2枚の写真を見てもらいたい。ISO320の時とISO1000の時を比べたものだ。特に電車の部分を見ると、ISO感度320の左写真では車体本来の質感になっているのに対して、ISO感度1000の右写真は本来の色とは違う色のノイズが多く入っており、ザラザラしているのが分かるだろう。拡大した部分だけでなく全体的にISO感度の高い方がノイズが高い印象だ。高感度撮影ではシャッター速度を速く撮影ができるため被写体ブレが抑えられるが、写真は暗く撮影されてしまったものをデジタル的に明るくするするため、どうしてもノイズが乗ってしまう。カメラ内で若干のノイズ除去補正はかけてくれているらしいのだが、やはり気になると言える。高感度撮影は被写体ブレが抑えられる一方、画質を犠牲にしなければ行けないことは理解が必要だと言える。
 ただ、ISO感度1000でも見られないほどの画質ではない。無理矢理感度を上げている割には予想以上に綺麗に撮影できているとも言える。被写体が動いている所での撮影時には便利な機能であると言える。

 今回のDSC-T50は、前機種のDSC-W1からそれほど期間が空いていないため、画素数的にはそれほど向上していないが、非常に便利になった。本体が小さくなった事によって、ここまで手軽に撮影が出来るようになるとは思ってもいなかった。これだけでも買い換えた意味があると言える。さらに光学式手ぶれ補正と高感度撮影により手ぶれの確率がかなり減ったのは非常にうれしい。撮った写真が手ぶれしていると、せっかくの思い出の写真が無くなってしまう。写真のブレで苦労されている人は、手ぶれ補正機種に買い換えを検討してはいかがだろうか?
(H.Intel)


■今回の関係メーカー・ショップ
    SONY  http://www.sony.co.jp/
    Cyber-shot  http://www.sony.jp/products/di-world/cyber-shot/

今回紹介した商品や、その他のハードやソフトの
ご購入はコチラでどうぞ!