第51回
インクジェット複合機
EPSON PM-T960
(2007年12月11日購入・2009年7月24日公開)



複合機に買い換えよう

 2007年12月上旬。年賀状の印刷を途中にして、我が家のインクジェットプリンタPX-G900が故障した。以前よりインクがつまりやすくなっており、頻繁にノズルクリーニングが必要になっていたが、今回は印刷結果に赤い横線が等間隔で入るようになってしまった。修理に出しても良いが、1度修理に出していてこれで2度目になることと、修理に出していては年賀状印刷ができないので、買い換える事とした。
 買い換えるにあたって、今回はインクジェット複合機を購入することに前から決めていた。インクジェット複合機が登場した当時は中〜下位のプリンタと中〜下位のスキャナをくっつけたような機種ばかりであったが、いつの間にか性能も向上し、今ではラインナップの中心は複合機となっている。性能で見ても、複合機は高性能機から低価格機までラインナップが揃っているのに対し、プリントだけの単機能機は複合機のラインナップの真ん中の辺り数機種と同じ性能になり、最高性能の機種は複合機に譲っている格好だ。また、我が家にはGT-9700Fというスキャナも持っているが、プリンタとスキャナが別々では場所も取る上に、単体でコピーをする事もできない。そう言う点で、ラインナップを見ても置き場所を見ても複合機が便利だと思われる。

複合機を選ぼう

 これまでもPM-750C、PM-3500C、PX-G900とエプソンの機種ばかり使ってきたことがあって、設定画面のレイアウトや印刷結果の傾向などの点でエプソンの方が慣れている。そこで今回もエプソンの機種から選ぶ事とする。

型番 PM-T990 PM-T960 PM-A940 PM-A840
実売価格 40,000円 34,000円 32,000円 25,000円
プリンタ部最大解像度 5760×1440dpi 5760×1440dpi 5760×1440dpi 5760×1440dpi
インク色数 6色 6色 6色 6色
インク種類 染料系 染料系 染料系 染料系
インクカートリッジ構成 各色独立 各色独立 各色独立 各色独立
最小インクドロップサイズ 1.5pl
(Advanced-MSDT対応)
1.5pl
(Advanced-MSDT対応)
1.5pl
(Advanced-MSDT対応)
1.5pl
(Advanced-MSDT対応)
ノズル数 1080ノズル
(180ノズル×6色)
540ノズル
(90ノズル×6色)
540ノズル
(90ノズル×6色)
540ノズル
(90ノズル×6色)
DVD/CDレーベル印刷
自動両面印刷 △(オプション)
前面給紙 △(A4普通紙のみ・排紙トレイ兼用)
オートフォトファイン!EX ○(ダイレクト印刷対応) ○(ダイレクト印刷対応) ○(ダイレクト印刷対応) ○(ダイレクト印刷対応)
メーカー公称印刷速度
(L版縁なし)
19秒 19秒 19秒 22秒
スキャナ部センサータイプ CCD CCD CIS CIS
読み取り解像度 4800dpi 3200dpi 1200dpi 1200dpi
フォルムスキャン ○(ネガフィルム6コマ) ○(ネガフィルム6コマ)
スキャンデーターのメモリカード保存 ○(JPEG/PDF) ○(JPEG/PDF) ○(JPEG/PDF) ○(JPEG/PDF)
ダイレクト
印刷部
対応スロット SD/MS/CF/xD SD/MS/CF/xD SD/MS/CF/xD SD/MS/CF/xD
PCからカードリーダとして利用
外付けドライブ/USBメモリへ保存
外付けドライブ/USBメモリから印刷
CD/DVDドライブ内蔵
動画から印刷 ○(1コマ/12コマ) ○(1コマ/12コマ) ○(1コマ/12コマ)
手書き合成シート
PictBridge対応
赤外線通信
テレビデータ放送から印刷
テレビでメモリカード内の写真表示
コピー部拡大縮小コピー機能 ○(25〜400%・1%刻み) ○(25〜400%・1%刻み) ○(25〜400%・1%刻み) ○(25〜400%・1%刻み)
CD/DVDレーベルコピー
写真焼き増し風コピー ○(退色復元対応) ○(退色復元対応) ○(退色復元対応) ○(退色復元対応)
液晶ディスプレイ 4.0型
角度調整可能
3.5型
角度調整可能
2.5型
角度調整可能
2.5型
前面インク交換
インターフェイス USB 2.0
有線LAN(100BASE-TX)
無線LAN(IEEE802.11b/g)
USB 2.0
有線LAN(100BASE-TX)
無線LAN(IEEE802.11b/g)
USB 2.0 USB 2.0
外形寸法(横×奥×高) 450×438×227mm 446×503×242mm 446×432×237mm 450×413×205mm
重量 14.2kg 12.8kg 10.6kg 8.3kg

 こうやって見ると、最上位のPM-T990はCD/DVDドライブが内蔵されている一方で前面給紙や自動両面印刷機能で劣るなど少々特殊な機種である。価格も40,000円とかなり高価である。一方PM-A840は価格は安いが性能的には少々物足りない。特にスキャナが今持っているGT-9700Fより大きく劣るのは考え物だ。PM-T960とPM-A940は本体は同じ形状であるものの、スキャナ部を中心に性能では意外と差がある。価格差が2000円のわりにこの性能差ならPM-T960が良さそうだ。また、PM-T960ならスキャナ解像度が3200dpiと今持っているGT-9700Fより上で、前面給紙や自動両面印刷機能も備えている。また無線/有線LANで接続できる点もおもしろい。PM-T960で決定である。ヨドバシカメラマルチメディア梅田で33,300円13%ポイント還元で購入した。

PM-T960を接続する

 注文したその日には配達されてきた。それにしてもさすが複合機だけあり箱が大きい。重量もなかなかであり箱から出すのも一苦労であった。なんとか箱から出すが、本体も結構大きい。店頭で見た時は他の複合機と並んでいたためそれほど大きく感じなかったが、これまでプリントだけの単機能機を置いていた所に置くと結構な大きさだ。外見を見てみると、前面の最も下は前面給紙トレイで、その上に排紙トレイ、上の方にメモリカードリーダーが並んでいる。上部はスキャナ部とその手前が液晶ディスプレイと操作パネルである。背面は背面給紙トレイとその下に自動両面印刷ユニットが取り付けられている。自動両面印刷ユニットは購入時は取り付けられておらず、裏蓋で塞がれている。この蓋を取り外し、自動両面ユニットを取り付けると自動両面印刷が可能となる。その分後ろに飛び出てしまうので、自動両面印刷を使わない場合は取り外して使う事も可能である。

「PM-T960」の給紙トレイと排紙トレイを開けた状態である。さすが複合機だけあって本体はなかなかの大きさだ。上面は手前が液晶ディスプレイと操作パネルで、その奥がスキャナ部となる。

「PM-T960」を前面から見た所である。一番下の出っ張った所が前面給紙トレイである。一段へこんだ所が排紙トレイで、その上にメモリカードリーダやUSB端子、赤外線通信の受光部などがある。


「PM-T960」の背面である。背面給紙トレイは写真のように蓋を閉めることが出来る。その下の飛び出ている所は自動両面印刷ユニットである。取り付ければ自動両面印刷が可能で便利だが、飛び出るのが邪魔な人は取り外して蓋をする事も出来る。

 さて、早速パソコンと接続してみよう。PM-T960はUSB接続、有線LAN接続、無線LAN接続の3つが選べるが、今回は複数のパソコンで使用できるようにLAN接続とし、デスクトップパソコンのすぐ横に置くことから手持ちのLANハブを接続すれば有線LAN接続できる事から、有線LANで接続する事とした。なおPM-T960では、LANコネクタやUSBコネクタは、スキャナ部を持ち上げた内部に用意されている。そして、溝を通して本体側面から外に出すようになっている。背面にコネクタがあるよりすっきりしており、細かい点だが気に入った。

「PM-T960」の有線LANとUSB端子はスキャナユニットを開けた内部に用意されており、端子部が外部から見えないように工夫されている。

有線LANケーブルやUSBケーブルは端子に接続した後、内部の溝を通って側面から外に出る。溝も蓋をする事が可能であり、徹底してケーブルが目立たないように工夫されている。

 さて初めてのネットワークプリンタであり、設定などが難しいかと心配していたが、実際には付属のCD-ROMを入れて、手順通り進むとマニュアルを見ないでも接続できるほど簡単であった。ただし、途中一箇所だけつまったのが、PM-T960の接続を認識する所だ。最初実行するとプリンタが見つからないと表示されてしまったである。原因は簡単で、ウィルスバスターのファイヤーウォール機能が邪魔をしていただけであった。設定の際は一時的にファイヤーウォール機能を切る必要がある。なお設定完了後はファイヤーウォール機能がオンの状態でも使用することが出来るため、設定時だけ気にすればよい。それ以外は何の問題もなく設定が完了し、各種アプリケーションソフトもインストールできた。あとは使用する全てにプリンタで同じ作業を繰り返すだけである。なお、PM-T960では、複数のパソコンからプリントできるだけでなく、スキャナも利用できる点が便利である。また内蔵のメモリカードスロットをパソコンからメモリカードリーダ・ライターとして使用できるなど、様々な事が可能である。こうして無事に接続が完了した。なお無線LANで接続する場合も、AOSSに対応しているため、バッファロー製の無線LANルータを使用している場合は、無線LANルータのAOSSボタンを押しPM-T960でAOSS設定を選ぶだけで、接続から暗号化まで自動で行ってくれるため、簡単である。

PM-T960のプリント機能を使用する

 それでは順に機能を使用してみよう。まずはメインとなるプリント機能である。PM-T960では前面と背面にそれぞれ用紙をセットできる。今回は前面にA4普通紙を、背面にL判写真用紙をセットした。背面はL判などの小さめの用紙であればセットした状態でカバーを閉じることが出来るため、ホコリがつもるのを防げるという点で便利だ。また、印刷設定の画面の「給紙設定」欄で、前面と背面のどちらのトレイの用紙を使うか選択出来るほか、「用紙割り当て」で前面にセットした用紙の種類を登録しておくことで、自動的に前面か背面か選択してくれるようにもなっており便利である。

前面給紙トレイである。前面の透明の部分は外すことが出来るため、用紙のセットは非常に簡単だ。前面給紙トレイを本体に納めると少し飛び出た形となるが、飛び出た部分にちょうど透明の部分が来るため用紙がホコリをかぶる心配はない。また操作パネル部も同じくらい飛び出ているため、飛び出ていても気にはならない。

 さて印刷を実行してみる。LANで接続していても印刷開始までの時間が特に長いとは感じずすぐに印刷が実行された。印刷はなかなか高速であり、印刷音もPX-G900より若干静かになっているようだ。ただし、A4普通紙を背面給紙でセットし、「はやい」モードで印刷した場合は、給紙音がかなり大きい。同じ部屋にいると驚いてしまうほどだし、他の部屋にいても聞こえるほどである。給紙後の紙送りの音はそれほど大きくなく、また前面給紙の場合もそれほど大きくないため、背面給紙で給紙時だけうるさい。少しでも印刷を高速化するため、給紙も高速に行うためと思われるが、残念な点である。一方前面給紙は思ったよりも便利である。用紙切れが、実際になくなって印刷が止まるまで分からない事と、ごくたまに何枚か重なった状態で給紙してしまうことがあったが、それ以外は問題なく、逆にトレイ内に収まっているために見栄えも良く、紙にホコリが付くこともないため安心である。
 印刷品質であるが、スペックからも分かるように非常に満足である。普通紙への印刷は顔料インクのPX-G900よりはメリハリが無く耐水性も弱いものの、PX-G900の前に購入した染料インクプリンタPM-3500Cと比べるとにじみも少なく耐水性も向上しているように思える。また写真用紙への印刷は目をこらしてみても粒状感が感じられないほど高画質である。また染料インクであるため、PX-G900よりも光沢感が失われず、より写真らしい印刷結果が得られる。インク自体もアルバム保存200年を謳っているため、耐保存性も高い点も安心である。
 自動両面印刷はあると便利だが、実際には表面の乾燥時間があってから裏面の印刷に入るため、時間がかかってしまう。また、普通紙しか選択出来ないのが不便である。普通紙だと裏移りがひどいため、両面印刷に対応したファイン紙などを使用したいところだが、ファイン紙を選ぶと自動両面印刷が行えなくなる。これでは意味がない。実際には奇数ページを一気に印刷して、用紙を再度セットして偶数ページを印刷するという方法でも十分と言える。
 続いてCD/DVDレーベル印刷機能を使用してみよう。「CDガイド開閉」ボタンを押すと、CD/DVDトレイの差し込み口が機械的に出てくる。ギミックとしては格好良いが、複雑な動作をしていて壊れやすそうに感じる事と、出てくるのに11.5秒もかかるためイマイチである。PX-G900では排紙トレイを引き上げて高さを変えるだけとシンプルだっただけに、不便に感じる。また実際に印刷してみると、トレイが吸い込まれてから位置合わせに時間がかかり、印刷が開始されるまで結構時間がかかる。CD/DVDレーベル印刷が行えるのは便利だが、少々大げさすぎる気がする。

CD/DVDトレイの差し込み口を出した状態である。「CDガイド開閉」ボタンを押すだけで、奥から機械的に出てくるため非常に簡単だ。ただし、複雑な動きをして出てくるために故障が心配な上に、11.5秒と時間もかかるのは考え物である。


CD/DVDレーベル印刷を行う時には、CD/DVDをトレイにはめ込んだ上で、PM-T960に挿し込む。トレイと本体の三角印を合わせておけば、あとは印刷実行時に自動的に給紙される。

PM-T960とPX-G900のプリント機能を比較する

 それでは、これまで使ってきたプリンタ「PX-G900」と比較してみよう。

型番 PM-T960 PX-G900
最大解像度 5760×1440dpi 2880×1440dpi
インク種類 PM-Gインク PX-Gインク
顔料/染料 染料系 顔料系
色数 6色 8色
構成 ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ライトシアン
ライトマゼンタ
フォトブラック
マットブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
レッド
ブルー
グロスオプティマイザー
カートリッジ形状 各色独立 各色独立
耐水性
アルバム保存 200年 200年
耐光性 50年 80年
耐オゾン性 25年 30年
最小インクドロップサイズ 1.5pl(Advanced-MSDT対応) 1.5pl(MSDT対応)
ノズル数 540ノズル(90ノズル×6色) 1440ノズル(180ノズル×8色)
DVD/CDレーベル印刷
自動両面印刷
対応用紙 名刺、カード、L判、2L判、KG、ハイビジョン、六切、A6縦〜A4縦 名刺、カード、L判、A6縦〜A4縦、89/100/127/210mm幅のロール紙
給紙方向 背面+前面 背面
写真補正機能 オートフォトファイン!EX オートフォトファイン!5
メーカー公称印刷速度
(L版縁なし)
19秒 42秒

 これを見ると印刷画質には大きな差がないことが分かる。どちらもインク滴は1.5plで、解像度は異なるもののこの程度の違いでは画質に大きな差ではない。インク数はPM-T960の6色に対してPX-G900は8色だが、2種類のブラックインクはそれぞれ写真と普通紙用に分かれているため同時には使用しないし、グロスオプティマイザーはインクをの乗らない箇所に打つことで光沢感を均一にするものであり、色のあるインクは両機種とも6色である。6色の構成は異なり、色再現能力に違いはあるのだろうが、見た限りでは大きな差はなかった。ただし、写真を印刷する上で、PX-G900はオートフォトファイン!5であり、全体的な傾向から明るさなどを補正するだけだったが、PM-T960では顔やシーンを認識して補正するなど補正能力が上がっており、実際に暗い写真などを印刷するとPM-T960の方が見やすい明るさまで補正されていた。
 一方インクそのものは2機種で全く異なる。PM-T960が一般的な染料インクであるのに対して、PX-G900は顔料インクである。PX-G900の方が普通紙への印刷時に、にじみの少ないメリハリのある印刷が行え、さらに耐水性もあるなど優れている。耐光性や耐オゾン性でもPM-T960より上だが、アルバム保存は両機種とも200年であり、PM-T960も耐光性50年と染料インクにしては耐保存性は高い。十分なレベルである。付加機能としてDVD/CDレーベル印刷は両機種とも行える。一方自動両面印刷はPM-T960だけである。対応する用紙は、名刺・カードサイズからA4までだが、PX-G900は製品発売時点では用紙サイズが存在しなかった2L判とKGサイズには対応していない。一方でPX-G900はロール紙に対応しておりパノラマ写真などの印刷には便利である。給紙はPX-G900が背面からのみであるのに対し、PM-T960では前面と背面にそれぞれ用紙がセットできる。
 ノズル数はPX-G900が各色180ノズルあるのに対し、PM-T960では各色90ノズルと半減しており、一見するとPM-T960の方が印刷は遅そうである。しかし、メーカー公称のL判縁なし写真の印刷速度はPX-G900が42秒なのに対して、PM-T960は19秒と半分以下の時間になっている。これはインクの吐出周波数を上げることによりインク吐出スピードが上がったことに加え、PX-G900では1.5/3/7plの3種類のドットサイズを打ち分けるMSDTであったのに対し、PM-T960では1.5pl〜11plの間の5種類のドットサイズを打ち分けるAdvanced MSDTに進化し、べた塗りの箇所には、より大きなドットを打つことが出来るようになったことが上げられるようだ。
 それでは実際の印刷速度をテストしてみよう。写真の印刷速度のテストはダイレクト印刷機能の項目に譲るとして、ここでは普通紙への文字文書の印刷速度を計測している。接続するパソコンはVAIO VGC-RM50(Core 2 Duo E6300(1.86GHz)、メモリ1GB、Windows XP)の機種で、PX-G900はUSB2.0で、PM-T960は有線LANで接続している。印刷した文章は、一太郎2008で作成した上下左右30mmの余白のA4用紙に、10.5ポイントの文字をいっぱいに記述したものを使用している。


 今回のテストでは、パソコンで「印刷」ボタンを押してから実際に給紙が始まるまでの時間と、給紙が始まってから印刷が完了し紙が排紙されるまでの時間を分けて掲載した。これを見るとUSB2.0接続のPX-G900と有線LAN接続のPM-T960の間で、データが転送され印刷が開始されるまでの間に大きな差はなかった。ネットワークプリンタだからと言って印刷開始までに長く待たされるといったことはなさそうである。また、標準設定、きれい設定共にPM-T960の方が速いことも分かる。印刷枚数が多い時などにはこの差がありがたく感じる場面もありそうだ。おもしろいのは、標準設定ときれい設定の差で、PX-G900ではきれい設定にしても約1.7倍長くかかっているだけなのに対し、PM-T960では3倍以上長くかかっている。それぞれの印刷品質が異なるのかもしれないが、ノズル数の違いの関係もあるのかもしれない。ちなみにPM-T960で前面給紙と背面給紙で比較してみると、背面給紙の方が若干ながら時間が短い。背面はそのままストレートに用紙が入っていくのに対し、前面給紙では方向転換が必要である事が関係していると思われる。

PM-T960のスキャン機能を使用する

 続いてスキャナを使用してみよう。PM-T960のスキャナは下位機種と異なりCCDとなっている。そのため分厚い本のとじ目部分など、ガラス面から浮いてしまう原稿でも真っ黒にならずに取り込むことが出来る。また、プレビュー、スキャン共に高速で特別ストレスを感じることはなかった。昔からエプソンのスキャナの特徴と言えるが、特にプレビューが高速である点が好感が持てる。プレビューをして、原稿に傾きがあるなどした場合に何度もやり直すとしてもストレス無く行える。動作音も比較的静かである。

PM-T960のスキャナ部である。原稿カバーにはフィルムスキャン用の光源が搭載されているため、適度な重さがあり原稿を抑えるのにちょうど良い。

 また3200dpiという高解像度を生かしてフォルムスキャンも可能である。35mmのネガ/ポジストリップであれば1列分6コマ、マウントであれば4コマまで一度にセットできる。フィルムをスキャンする場合は、まずスキャナの原稿カバーの裏側の「原稿マット」を取り外す。すると取り外した所に、フィルムスキャン用の光源が現れる。また、原稿マットの裏側にフィルムをセットする「フィルムホルダ」を収納できるようになっているため、フィルムスキャン用の光源を使えるようにすると共にフィルムホルダも取り出せるというわけだ。この場所に収納できるので、フィルムホルダを無くしてしまう心配もない。よく考えられた設計と言える。そしてフィルムホルダにフィルムをセットしたら原稿台に置く。この際手前のくぼみにフィルムホルダの出っ張りをはめることで、フィルムスキャン用光源の位置に原稿を置くことが出来る。非常に手軽である。そしてプレビューを押すと、それぞれのコマが自動で認識され、画面に6コマが一覧で表示される。あとはスキャンしたい写真にチェックを付ける(実際はプレビュー後は全ての写真にチェックが付いているので、スキャンしたくない写真のチェックを外す)。そしてスキャンボタンをクリックすると、チェックを付けた写真が実際にスキャンされる。ネガフィルムのセットからスキャンまで難しい手順もなく、手軽にネガスキャンを行う事が出来ると感じた。スキャンした画質だが、最高の3200dpiでスキャンすると4469×2773ドットとなった。デジカメで言うと1240万画素となる。拡大して見てもかなり詳細に読み取れていることが分かる。1240万画素相当のドット数とは言ってもデジカメの1000万画素超の機種と比べると、背景の木々などの詳細さが足りないようにも感じるが、フィルムスキャナではなくフラットベッドスキャナ、しかも複合機に搭載される機能としては十分な画質である。この解像度なら、L判や2L判程度への印刷は問題なさそうである。

原稿カバーに取り付けられている原稿マットを外すと、フィルムスキャン用の光源が現れる。

取り外した原稿マットの裏には、フィルムをセットするフィルムホルダーが内蔵できるようになっている。フィルムホルダーの置き場所に困らず、フィルムスキャン時に無くしてしまう事もないので非常に便利だ。

フィルムホルダーをセットした状態である。スキャナ面の手前にあるくぼみに、フィルムホルダの出っ張りをはめることで、フィルムスキャン用光源の位置にネガフィルムを置くことが出来る。写真は35mmのネガフィルムをセットした場合だが、マウントフィルムの場合はフィルムホルダーを上下を逆にセットする。

 紙原稿スキャン、フィルムスキャンのどちらでも使用できる機能として、退色復元機能がある。昔の写真など、色あせしてしまったり黄ばんでしまったりしたネガフィルムや写真の色を復元してくれる機能である。試してみると、かなり昔の写真でほぼ真っ黄色になった写真でも、肌の色や背景の木の色、空の色などがかなり自然な色合いに復元された。「退色復元」にチェックを付けるだけでかなりの精度で補正してくれるのには驚いた。
 ところでスキャナというと一般的にはパソコンから操作してスキャンし、スキャン結果はパソコン上に表示されたりパソコンに保存する事になる。しかしPM-T960はパソコンが無くてもスキャン出来るのである。デジカメ写真のダイレクトプリント用のメモリカードスロットを利用する機能で、ここにメモリカードを挿すと、スキャンしてメモリカードに保存する事ができるのである。しかも紙原稿スキャン、フィルムスキャンの両方で利用できる。手順は簡単で、紙原稿の場合は「メモリカード」ボタンを押し、画面で「スキャンしてメモリカードに保存」を選択する。あとは画質などを選択してスタートするだけである。画質は「速度優先」と「画質優先」の2つしかないが、パソコン無しでも簡単にスキャンが出来る機能なので設定も分かりやすい方が良い。これ以上細かい設定がいる人はパソコンを使うだろう。ちなみに「速度優先」は200dpi、「画質優先」は300dpiとなる。
 フィルムスキャンの場合は「フィルム」を選択し、仮スキャン(プレビュー)をまず行う。すると、スキャン後にどうするか選択肢が現れるので「スキャンしてメモリカードに保存」を選ぶ。すると1コマずつ認識されて一覧が表示されるので、スキャンしたい写真にチェックを付けてスタートするだけである。複合機上で行う場合でもきちんとコマの選択が行えるため安心だ。フィルムスキャンの場合「速度優先」は1200dpi、「画質優先」は2400dpiとなる。スキャナ本来の持つ最高の3200dpiではスキャン出来ないが、パソコン等の画面で見るだけなら1200dpiで、印刷する場合でも2400dpiでも十分きれいなので、良い選択肢と言える。

PM-T960とGT-9700Fのスキャン機能を比較する

 それでは、PM-T960のスキャナ部と、これまで使ってきたスキャナGT-9700Fのスペックを比較してみよう。

型番 PM-T960 GT-9700F
センサータイプ オンチップマイクロレンズ付き6ラインCCD(α-Hyper CCD II) オンチップマイクロレンズ付カラーCCD
最大有効読み取り領域 216×297mm 216×297mm
読み取り解像度主走査 3200dpi 2400dpi
副走査 6400dpi 4800dpi
読み取り階調入力 RGB各色16bit RGB各色16bit
出力 RGB各色16bit RGB各色16bit
光源 白色冷陰極蛍光ランプ 白色冷陰極蛍光ランプ
フィルムスキャン35mmネガ/ポジストリップ 6コマ×1列 6コマ×2列
35mmマウント 4コマ 4コマ
ブローニー
4×5インチ
1枚

 これを見ると、解像度がGT-9700Fの2400dpiに対してPM-T960は3200dpiに向上していることが分かる。紙原稿の場合は普通なら600dpi、せいぜい1200dpiで十分であるため差はないと言えるが、フィルムスキャンを行う際にはこの解像度の向上はうれしい所である。読み取り領域や読み取り階調は同等である。フィルムスキャンでは、フィルムスキャン用光源がPM-T960の方が小さい。そのために35mmネガ/ポジストリップのスキャンが、GT-9700Fが2列同時にセットできるのに対し、PM-T960は1列となる。またブローニーや4×5インチには対応しない。しかし我が家にあるフィルムと言えば35mmネガストリップだけであり、またとりあえず1列スキャン出来れば交換の手間が増える程度で大して問題はないと思われる。それよりも解像度が上がっていることがうれしい。

PM-T960のスキャン速度を比較する

 さて、それではスキャンスピードを計測してみよう。計測はPM-T960とこれまで使ってきたGT-9700Fを比較しているほか、前述のスキャンしてメモリカードに保存する場合の時間も計測している。またその場合、メモリカードによる差が出るのか検証するため、SDカード(書き込み速度実測値3.6MB/s)とメモリスティックPRO Duo MarkII(同10MB/s)でも計測してみた。


 まずは紙原稿のスキャンである。プレビュー速度はPM-T960が7.1秒、GT-9700Fが6.7秒とほぼ同等である。非常に高速であるため、何度もプレビューを行う場面でもストレス無く行える。続いてA4原稿を300dpiで読み取った時はPM-T960の方が高速である。また、L判写真を1200dpiで読み取った時もPM-T960の方が高速だ。低解像度から高解像度まで、紙原稿のスキャンはPM-T960の方が高速化されている。複合機に搭載されるスキャナだからと言って性能面で不満はないと言える。


 続いてA4の紙原稿をパソコンから操作して取り込む場合と、前述のPM-T960単体でスキャンする「スキャンしてメモリカードに保存」で速度差を計測した。「スキャンしてメモリカードに保存」を行う場合、実行するとまず仮スキャンが行われ、その後本スキャンを行う形になる。パソコンの場合はプレビューを行ってから本スキャンを行う。「スキャンしてメモリカードに保存」では仮スキャンと本スキャンが自動で連続で行われるが、パソコンからの場合はプレビュー後自動で本スキャンを行わなくてはならないという違いがあるが、とりあえずプレビュー(仮スキャン)+本スキャンの時間で比較した。
 結果を見るとメモリカードに保存する場合の仮スキャンは、パソコン上で行うプレビューよりも時間がかかる事が判る。また、その後の本スキャンもパソコン上の方が高速だ。特に、200dpiでは大きさながないものの、300dpiではメモリカードに保存する方が倍以上の時間がかかっている。数枚の原稿を手軽にスキャンする場合はメモリカードに保存する方法で問題ないが、枚数が多くPM-T960の近くにパソコンがある場合はパソコンから操作した方が作業が速く済みそうである。


 続いてネガフィルムのスキャンである。まずはプレビューにかかる時間である。こちらは紙原稿とは異なり、プレビューといえどもある程度の解像度でスキャンしなければならないのである程度時間がかかる。またスキャン終了後、画面にサムネイル表示するための処理にも時間がかかる。
 プレビュー時間は意外なことにパソコンからの方が時間がかかる。しかしこれには理由があり、スキャンしてメモリカードに保存する場合は、プレビュー画像はPM-T960の液晶で表示する程度の画像サイズで良いのに対し、パソコンから操作した場合はパソコン画面にかなり拡大表示できるため、同じプレビューでもパソコンから操作した方が高解像度でスキャンしているのではないかと思われる。スキャン後の画面表示はさすがにパソコンの方が高速である。


 では本題の本スキャンにかかる時間を計測した。今回は1列6コマの内1コマ目をスキャンする時間を計測している。これを見ると同解像度の場合は若干ながらパソコンからスキャンした方が高速である。2400dpiの場合でも28秒ほどだが、1列6コマをスキャンするとなると2分48秒、24枚撮りフィルム全てをスキャンするとなると11分12秒の差になる。こう考えると枚数が多い場合はパソコンからの方が良さそうである。ちなみにSDカード(書き込み速度実測値3.6MB/s)とメモリスティックPRO Duo MarkII(同10MB/s)では書き込み速度に3倍の違いがあるが、スキャン時間には誤差と呼べる程度の違いしか出なかった。
 また、「スキャンしてメモリーカードに保存」では選択出来ないスキャナ本来の最高解像度3200dpiでのスキャン時間も計測している。結果は3分32秒と2400dpiの倍近くかかっている。ここまで差があると2400dpiか3200dpiかで悩む所だ。少しでもきれいにスキャンしたい場合は3200dpi、L判程度の大きさへの印刷やパソコン画面で見るのが目的で、枚数が多い場合は2400dpiとなるだろう。

PM-T960のダイレクト印刷機能を使用する

 それでは複合機の特徴的な機能の一つ、ダイレクト印刷機能を見てみよう。PM-T960にカードスロットがあり、パソコンを使わずデジカメの写真が印刷できる機能である。カードスロットは、SDカード/メモリースティック/xDピクチャーカード兼用スロットと、コンパクトフラッシュ/マイクロドライブ用スロットの2スロット構成である。メモリースティックDuoやminiSD、microSDのような小型のカードはアダプタが必要だが、とりあえずスマートメディア以外は一通り対応しているので安心である。これらのスロットは本体前面にあり、カバーも付いている。カバーを閉めるとツライチになりデザイン的に美しい。

メモリカードリーダである。SD/MS/xDスロットとCFスロットの2つで、SM以外のメモリカードに対応する。使用しない時はカバーをしておくことも出来る。その左は赤外線通信の受光部、さらに左のへこみの中にはUSB端子が搭載されている。

 それでは操作パネルを見てみよう。操作パネルはスキャナユニットの前面に配置されている。一番左端にモードボタンがあり、その右に「CDガイド開閉」や基本設定に使う「セットアップ」ボタン、液晶を挟んで右側にカーソルキーと「+」「−」ボタン、「印刷設定」ボタン、「戻る」ボタンがあり、一番右端に「スタート」ボタンと「ストップ」ボタンがある。写真印刷の流れとしては一番左端でメモリカードを選択し、液晶を見ながら印刷する写真や枚数、印刷設定を行い、最後に左端の「スタート」ボタンを押すという、左から右に進んでいく形になる。液晶は3.5インチと大きいだけでなく表示が詳細で色も良く、さらに角度調整が可能なので便利である。実際にマニュアルを一度も見なくても、問題なく各種設定が行え印刷が出来た。なかなか考えられたボタン配置と言える。反応も非常に良く、ボタンを押した瞬間に反応しているので、項目選択に手間取ることもなくスムーズに行える。反応がよいか悪いかで操作性は大きく変わってくるだけに、これはうれしい所だ。またダイレクト印刷時にもパソコンから印刷する時同様、写真自動補正機能「オートフォトファイン!EX」が使用できるのも安心である。

PM-T960の操作パネルである。一番左でモード選択し、真ん中の液晶ディスプレイを見ながらその右の十字ボタンや「+」「−」ボタン、「印刷設定」ボタンで設定をする。最後に右端のスタートボタンを押すのが基本的な操作手順だ。左端から右に進んでいく操作法はなかなか分かりやすい。

 また、ダイレクト印刷はメモリカードからだけでなく、USBメモリからの印刷も行える点がおもしろい。そのためPM-T960の前面左端にUSB端子が搭載されている。おもしろいのはUSB端子が奥まった所にあることである。穴は多少大きめではあるので一般的なUSBメモリなら問題なさそうだが、特殊なデザインのUSBメモリ(食品サンプル型や動物型など)や、デジタルオーディオプレイヤーをUSBメモリとして使っている場合は入らない可能性もある。しかし奥まった所にある分、USBメモリがしっかり固定され、出っ張りが小さくなるので、うっかり手などが当たって端子が曲がってしまうという事故が起こりにくいという利点がある。
 もう一つ、PM-T960でおもしろいのは動画からの静止画印刷機能である。パソコンで動画から1コマを静止画にしようとすると意外と手間がかかるが、PM-T960では動画のまま読み込ませると、好きなシーンを印刷できる。また1コマだけでなく、開始と終了地点を指定することでその間の12コマを連写写真のように印刷できる機能もおもしろい。動画は再生しながらシーンを探せるが、2/4/8倍速の早送りや巻き戻しも行えるため、素早く目的のシーンを探せる。最近ではデジカメや携帯電話で動画を撮るのも普通になってきているので、おもしろい機能というだけでなく、意外と「使える」機能と言える。

PM-T960のダイレクト印刷の速度を比較する

 それでは、ダイレクト印刷とパソコンからの印刷の速度を比較する。同時にこれまで使ってきたPX-G900との印刷速度も比較した。ロードテスト第41回で紹介したCyber-Shot DSC-T50(720万画素デジカメ)で撮影し、メモリスティックPRO Duo MarkIIに入っている写真をL判のエプソン写真用紙に縁なしで印刷する時間を計測した。また、印刷開始のボタンを押してから給紙が行われるまでの時間と給紙されてから印刷が完了するまでの時間を分けて計測している。


 これを見ると、パソコンからの印刷同士を比較した場合、「標準設定」ではPM-T960の方が速く、「きれい設定」ではPX-G900の方が高速という結果が出た。もちろん、PM-T960とPX-G900で「標準設定」「きれい設定」の中身が異なる可能性もあるが、PM-T960のAdvancedMSDTなどの高速化技術の効果が、「きれい設定」では出にくく、純粋に各色のノズル数が多いPX-G900の方が高速になったとも考えられる。また、PM-T960は公称値でL判縁なし印刷が19秒を謳っているが、給紙から印刷終了までが18.9秒となり、ほぼ公称値通りの結果が出たのは安心である。また給紙が開始されるまでのデータ転送等の時間であるが、これはPM-T960の有線LAN接続とPX-G900のUSB 2.0接続の間に差はないという結果となった。一方、PM-T960でメモリカードからのダイレクト印刷を行った場合、給紙から印刷終了までは標準設定で19.4秒とパソコンから印刷する場合とほぼ同等であると同時に公称値通りの結果である。ただし、給紙、すなわち印刷開始ボタンを押してから印刷が実行されるまでの時間は、パソコンからの場合より5秒も長くなっている。パソコンで処理するよりPM-T960で処理する方が遅くなってしまうためだろうか。一方「きれい設定」ではパソコンから印刷するよりダイレクト印刷の方が印刷時間が短くなっている。理由は分からないが、ダイレクト印刷の方が内部処理やメモリの関係で「きれいさ」が若干劣るのかもしれない。気になる所ではある。

PM-T960のコピー機能を使用する

 複合機の便利な機能としてコピー機能がある。これまでのスキャナ+プリンタではパソコン上でコピーソフトを起動してコピーする方法が一番簡単な方法だったが、複合機ではパソコン無しでコピーが行える。早速コピーを行ってみると、なかなか高速である。また普通紙への印刷でもそれなりにきれいなコピーで、ある程度小さな文字までしっかり読める。ただし白抜きのような文字は、文字の周囲のインクがにじみ読みにくくなる。また色合いは不自然なレベルではないが若干変化してしまう。一方、ファイン紙などインクのにじみの少ない用紙を使うとかなりの高画質でコピーできる。色合いの変化も少なくなり、小さな文字や白抜き文字もはっきり読める。拡大縮小は元サイズと用紙サイズを指定する方法以外に、25〜400%の間で1%刻みで指定できるのも便利だ。また普通の印刷以外に、縁なし印刷や2アップ印刷、両面印刷など様々な印刷方法が選べる。A4原稿をA4原稿16枚に分割して拡大印刷する事で貼り合わせるとポスターが作成できるという機能まで備えている。スキャナもプリンタもA4サイズであるためそれより大きな用紙はコピーできないが、コンビニなどのコピーと比べても十分実用レベルに達していると感じた。
 コピーはなにも紙原稿だけではない。CD/DVDレーベルコピーも行えるのである。その際コピー元となるCD/DVDはスキャナ面の適当な場所に置けば自動で認識してくれるのは便利である。アダプタなどにはめ込んでから原稿面に置くような事が必要がないのは手軽だ。また、印刷するCD/DVDのレーベル面の大きさを内径、外径共に1mm単位で設定できるため、製品によって異なるレーベル面の大きさに余白無く印刷できる。
 もう一つ、写真の焼き増し風コピーも行える。スキャナ面の適当な場所に写真を置けば、写真用紙にコピーしてくれるという訳である。しかも一度に最大3枚まで置くことが出来るので、入れ替えの手間も省ける。印刷結果は、元の写真と比べてもほとんど変わらないレベルでコピーできるため実用的だ。ただし縁なし印刷を行う関係で、どうしても元写真より縁が切れた状態になってしまうのは仕方がない事だとあきらめるしかなさそうだ。 もちろん、ネガフィルム等からの焼き増しプリントも可能だ。この写真の焼き増し風コピーは、ネガ等を紛失してしまったり、他人からもらった写真でも簡単にコピーできる点ではもちろん便利なのだが、古くなって色あせしてしまった写真を復活させるのにも便利である。退色復元機能とセットで使用すれば、全体が真っ黄色になってしまった写真でも、比較的自然な色合いに戻る。過去の思い出写真を一度復元してみるのもおもしろそうである。

PM-T960の便利機能を使用する

   その他、おもしろい機能として手書き合成が挙げられる。簡単に言えばデジカメからハガキ等にダイレクト印刷する際に、手書きの絵や文字を合成することが出来るという機能である。パソコンを使わなくても年賀状等が作れるというわけだ。写真を選んで手書き合成シートを印刷し、そこに手書きをしたらスキャナで読み取らせる。すると手書き部分と合成されて写真が印刷される。プリンタ、スキャナ、ダイレクト印刷というPM-T960の機能をフルに使った、複合機ならではのものと言える。
 手順はまずは、ファンプリントボタンを選び、手書き合成を選択する。そしてステップ1の「合成シート印刷」を選び、使用する写真を選ぶ。この際最終的に作成する用紙のサイズ(L判かハガキかなど)とレイアウト(前面か上半分か下半分か)も選んでおく。すると、手書き合成シートが印刷される。手書き合成シートは手書き欄の他に、文字の装飾や印刷枚数をマークシート形式でマークできる用紙となっている。ちなみに、この「手書き合成シート」は特殊な用紙ではなく、A4普通紙があれば、そこに手書き面からマーク欄まで印刷してくれる。手書き合成シートを印刷したら、手書き面に手書きを行う。色や太さもしっかり認識されるのでその点も考えて書いていく。ボールペンでは細すぎるので、サインペンや細めのマーカー(マジックインキなど)がオススメである。ちなみに手書き欄の背景には薄くカラーで写真が印刷されているため位置が合わせやすい。手書き合成機能を搭載した初期の機種は背景が印刷されておらず位置合わせが難しく、その後白黒の背景が印刷されるようになったのを経て、PM-T960ではカラーの背景が印刷される。
 手書き合成シートに手書きできたら、文字の種類(ふつう文字かモコモコ文字か)や、文字の周囲に余白を付けるかどうか、線で囲んだ内側を白抜きにするかどうかと、枚数(1〜10枚)の各マーク欄の該当箇所を塗りつぶしておく。
 手書き合成シートがかけたら、スキャナ面にセットする。ちなみに、手書き合成シートの左下に三角の印がある。スキャナ左上の角にも三角の印があるため、手書き合成シートをセットする際は、この三角の印が合うようにセットする。画面には先程手書き合成シートを印刷したため、自動的にステップ2の「合成シートを使ってプリントする」が選ばれているため、このままスタートボタンを押す。すると、自動的にスキャンが始まり手書きした内容を読み取った後、メモリカード内の写真と合成し印刷される。
 印刷されたものを見ると、手書きした部分の色合いは若干異なるものの、書いた内容に忠実に合成されており、かすれたり消えたりしている所もない。また、手書き部分の背景に薄く写真が印刷されているおかげで位置ズレもなく、吹き出しや矢印などを書いても変な所にくる心配がない。なにより写真に手書きが合成されているのが非常におもしろく、一風変わった年賀状が出来上がった。パソコンで作るときれいな年賀状が出来るが、手書きというのも味があって良い。しかも実際に手書きするのと違って同じものが大量印刷できる。前述の手順を見ると面倒に感じるかもしれないが、実際にやってみると操作は数手順で、しかも特別な用紙は要らないため非常に手軽に出来る。手書きで少し違った年賀状を作りたい人や、パソコンで作る年賀状が味気ないと感じている人だけでなく、パソコンで年賀状を作る自身がないという人にもお勧めできる機能と言える。


この写真を使用して手書き合成を行ってみる。メモリカードやUSBメモリ内に入っている写真を使う事が出来る。

写真とレイアウトを選択するとこの「手書き合成シート」が印刷される。特殊な用紙は必要なく、A4普通紙に印刷できる。

手書き面に自由に手書きする。色も太さも認識されるので、ボールペンや鉛筆より、マーカー程度の太さがある方がオススメだ。手書き面に薄くカラーで写真が印刷されるので位置合わせがしやすく便利だ。さらに、文字の種類や文字の縁取りの種類、枚数などのマークシート欄を塗りつぶす。

手書き合成シートが完成したらスキャナ面に置く。スタートボタンを押すと手書き合成シートがスキャンされ、写真と合成され、このように合成される。なかなかおもしろい年賀状が出来上がる。



 以上、初めて複合機を購入したわけだが、普通のコピー機能だけでなく、写真のコピーや手書き合成、デジカメからのダイレクト印刷、スキャンしてメモリカードに保存など、複合機ならではの多種多様な機能があり非常に便利であった。その上プリンタやスキャナ部単体で見ても非常に高性能である。例えばプリンタ部は高速で綺麗、スキャナ部も高速な上ネガスキャンも出来る。また、どのパソコンからも印刷やスキャンが出来るLAN接続は、一度知ってしまうと止められないほど便利な機能であった。複数のパソコンがある我が家では、これからは必須の機能となるだろう。PM-T960は確かに本体は大きいが、欠点が本当に少ない機種であり、どの機能を見ても満足以上のレベルを実現している。これだけの機能が詰まっていて3万円台前半というのは非常にお買い得ではないだろうか。


(H.Intel)


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