第56回
ハイビジョンデジタルビデオカメラ
SONY Handycam HDR-SR11
(2008年7月6日購入・2009年1月8日公開)



ハイビジョンビデオカメラは?

 ロードテスト第46回で紹介したHandycam DCR-SR62は非常に使いやすい製品であった。本体は小さくて持ち運びしやすく、ハードディスク内蔵なので長時間録画でき、光学ズームも25倍と高い。しかし、一つ残念なのは画質である。確かにその前に使っていたHi8ビデオカメラと比べるとかなり画質が良くなった。それにテレビやパソコンで全体を何気に見るだけならそれほど気にならないのだが、よく見ると精細さに欠けているし、テレビ番組のアナログ放送などと比べても劣ると言わざるを得ない。実際、このDCR-SR62の録画画質はスタンダード画質と呼ばれるものなので、録画時の解像度は720×480ドット、つまり写真で言うと約35万画素である。35万画素の写真というと綺麗でないのが分かる。その上、CCDも100万画素と低いのも原因のようだ。
 しかも手持ちのデジタルカメラCyber-shot DSC-T50でも640×480ドット30fpsの動画が撮影できる。確かにデジタルカメラとデジタルビデオカメラでは撮影した動画のイメージも異なるし、解像度も若干異なるが、大きな差はない。一方、本体サイズはDCR-SR62はデジタルビデオカメラの中では小さいものの、デジタルカメラと比べればかなり大きい。残念ながら画質に大きな差がない今の状態では、わざわざデジタルビデオカメラを持ち歩かず、デジタルカメラで済ませてしまう事が多い。つまり今のままではデジタルビデオカメラの存在意義が薄いのである。
 画質を改善する手っ取り早い方法は、ハイビジョン撮影対応のデジタルビデオカメラに買い換える方法だ。ハイビジョンなら1920×1080ドットと、動画撮影時の画素数は約200万画素まで一気に上がり、かなり綺麗になると考えられる。実は少し前からハイビジョン撮影対応のデジタルビデオカメラの購入を検討していた。しかし、雑誌やホームページなどのレビュー記事を見ていると、これまでの機種は、どうしてもハイビジョンの割には精細さに欠けるという。200万画素の動画を切り出す割にはCCDやCMOSの画素数に余裕がないのが原因らしい。そのため、購入を見送っていたのだ。

魅力的な製品が発売された

 そんな中、魅力的な製品が発売された。それがHDR-SR11とHDR-SR12なのである。なんと566万画素のCMOSを採用しているのだ。566万画素もの画素数から1920×1080ドットの画像を取り出すことで、詳細な動画を撮影できる訳だ。その他、DCR-SR62と比べると顔検出機能によって顔にピントが合いやすくなっていたり、光学式手ぶれ補正(今使っているDCR-SR62は電子式)になっていたりと画質的には様々な面で高くなっている。また、液晶の画素数も92.1万画素と一般のデジタルビデオカメラやデジタルカメラよりかなり高くなっているのもHDR-SR11/HDR-SR12の特徴で、ハイビジョン撮影に向いているのだ。ハードディスクもHDR-SR11は60GB、HDR-SR12は120GBと大容量なので時間当たりのファイルサイズが大きいハイビジョンビデオカメラでも安心だ。その他にも、ズームに連動して音声もズームする「ズームマイク」や、すぐに撮影が開始できる「クイックオン」、暗闇でも撮影できる「スーパーナイトショット」、3秒の映像を120fpsで撮影し、それを12秒のスローモーションにできる「なめらかスロー撮影」など魅力的な機能も多い。566万画素のCMOSを生かして、1020万画素相当の静止画が撮影できるほか、動画を撮影しながら760万画素相当の静止画が同時撮影でき、撮影した動画から200万画素の静止画を切り出す機能も備えている。もちろんフラッシュも搭載されている。
 本体サイズはバッテリ装着時で83×76×138mm、重量は560gである。今使っているDCR-SR62の73×72×115mmで395gと比べると大きく、重くなるが、実際に店頭で手に持ってみると手にしっくり収まるためか、意外と重く感じない。希望に近い機種が見つかったと言うことで、ついに買い換えることとした。

HDR-SR11を購入する

 HDR-SR12とHDR-SR11があるが、違いはハードディスクの容量と本体の色だけだ。HDR-SR12が120GB、HDR-SR11が60GBである。多いに越したことはないが、60GBでも最高画質で7時間10分保存可能と言うことで、とりあえず問題なさそうなので、価格とのバランスを考えてHDR-SR11を購入することとした。
 さて、発売開始当初128,000円していたこの機種も最近では11万台に下りてきていた。そんな中、ヨドバシカメラのネット販売でその日の夜0時までのタイムバーゲンとして99,800円(10%ポイント還元)になっていた。特価でも106,800円までしか見たことがなかったので、これはかなり安い。購入しようかどうしようかと考えている内に0時を超えてしまった。
 しかしこれで決心が付き、購入することとした。その前にまずDCR-SR62を中古買い取りに出すことにした。箱が既に無かったが、付属品は全てそろっていたので、ソフマップ梅田店にて減額なしの24,000円で買い取ってもらえた。続いてヨドバシカメラマルチメディア梅田に買いに行く。するとなんと、特価で99,800円になっているではないか。しかも16%ポイント還元である。時間が過ぎてヨドバシカメラのネット販売で購入しなかったのが逆に良かったのである。これは安いと言うことで即購入した。中古買い取り価格を差し引くと、75,800円で購入でき、ポイントも15,968円分も付いてきた。かなりお得な買い物が出来た。

使い勝手は?

 では使い勝手を検証してみよう。まずは、本体の大きさと重量だ。たしかにこれまで使ってきたDCR-SR62と比べると大きくて重いが、持ってみると意外としっくり来る。また、持った時に指が自然に撮影スタートボタンやズームレバーに行くので、操作しやすい。しっくり来るので重さもそれほど感じない。また、バッテリ取り付け部のへこみがDCR-SR62より大きいので、バッテリの出っ張りが少ないのも好感が持てる。がただし、鞄に入れるとさすがに重く感じる。
 早速撮影してみる。まずレンズカバーが自動なのが便利だ。また、電源スイッチを左にひねると電源ONになり、もう一度ひねると静止画撮影モードに、右にひねると電源オフというのはDCR-SR62と変わらないが、それと比べると出っ張りが少ない。かといって操作しにくくは決して無く、逆に誤って手が当たってしまい急に電源が切れるという事が無いのが良い。
 さて、早速撮影してみよう。まずは画面の綺麗さに驚く。もちろんフルハイビジョンで撮影できるために綺麗なのだが、液晶ディスプレイもそれに負けない高詳細さだ。撮影時にも細部まではっきり確認でき、ピントが合っているか確認できたり、ズームする際に目標物が早くから確認できるなど非常に便利だ。ちなみに92.1万画素の液晶と言うことは計算すると1280×720ドットである。3.2インチながらノートパソコンの15.4インチ液晶に近い解像度なのだから驚きである。また顔認識機能は結構高性能で、夜の屋外でも顔の周りにしっかり枠が出て認識している。横向きの顔などでは顔と認識できないが、正面の顔であれば複数人でも認識できる。DCR-SR62では暗闇でしょっちゅうピントが合わなくなり大変だったが、HDR-SR11ではかなりしっかりピントが合っている。
 光学ズームは12倍である。ハイビジョン対応機では10倍が多い中で若干高いが、DCR-SR62の25倍と比べると少し弱い様に見える。しかし、566万画素という、ハイビジョンの画素数よりかなり高いCMOSを採用しているため、デジタルズームを多少使っても十分綺麗だ。設定では25倍と150倍の2種類の設定があり、150倍まで行くとさすがに乱れるが、25倍までなら十分実用的だ。さらにズームマイク機能により、画面のズームと共に音声もズームするので、臨場感のある音声を録れる。
 それ以外にも色々と便利な機能がある。例えばクイックスタート機能である。デジカメなどと比べ、デジタルビデオカメラは電源オンから撮影が開始できるようになるまでどうしても時間がかかってしまう。そこで便利なのがクイックオンボタンだ。一度電源を切る代わりにこのボタンを押すと一見電源オフ状態になるが、もう一度このボタンを押すと1秒で撮影可能状態になるというものだ。代わりに電源オフ状態でも若干電力を消費する。パソコンのスリープモードのようなものと考えれば分かりやすい。シャッターチャンスを逃したくない場面や撮影を頻繁に繰り返す場面では、クイックスタートが可能な状態で待機しておける。
 「なめらかスロー録画」機能もおもしろい。3秒間の映像を12秒間のスロー映像にできるという機能だ。つまり、4分の1倍速のスムーズな動画が撮影できるのだ。画質は若干落ちるが、通常とは違ったおもしろい動画が撮影できる。強いて言うなら、4分の1倍速よりもっとスローにも出来ると、おもしろい映像が録れそうである事と、3秒では短すぎるという事だ。まあ、おまけ機能としてはおもしろい機能である。もちろんSONYお得意のナイトショット機能も搭載されている。肉眼でも見えにくいような暗闇でも、赤外線を使って白黒の動画が撮影できるのだ。
 本体を見てみると、端子類が豊富だ。電源コネクタやUSB端子、HDMI端子まで内蔵している。電源コネクタはDCR-SR62でも付いていたが、USB端子はドッキングステーションにしか無く、旅行などでも必ずドッキングステーションが必要だった。その点HDR-SR11は内蔵されていて便利だ。またHDMI端子も内蔵しているため、手軽にハイビジョンテレビにつないでハイビジョン映像と音声を楽しめるわけである。また、それら端子のカバーがしっかりしているのも好感が持てる。ゴムキャップというイメージではなく、プラスチックのカバーでスライドさせて開けるようになっている。ゴムキャップより耐久性もありそうで、高級感がある。

HDR-SR11の上面である。前方にある穴の開いている部分がマイクである。また、右下のレバーがズームレバー、その前の銀色のボタンがPHOTOボタンであり、静止画を撮影する時はコチラを押す。動画撮影中に静止画を録れるため、動画の撮影スタート/ストップとは別のボタンになっている。


HDR-SR11の正面である。レンズカバーは自動で開く点がさすが上位機種という所だ。レンズの左側にはフラッシュがある。レンズ下の丸いダイヤルは「カメラコントロールダイヤル」である。真ん中のボタンを押すことでマニュアルモードに入り、ダイヤルで設定する。初期設定ではフォーカスとなっているが、カメラ明るさ、AEシフト、WBシフトに変更も出来る。その左には小さく逆光補正ボタンがある。


HDR-SR11の左側面である。液晶の裏側であるためボタンは配置されないが、「HD」「AVCHD」「10.2MEGA PIXELS」「HDD」などこの機種の特徴のロゴが書かれている。


HDR-SR11の後面である。上位機種であるため、ビューファインダーも装備されている。その下にはバッテリを取り付ける。前に持っていたDCR-SR62と比べ、バッテリ取り付け部がへこんでいるため、バッテリが飛び出さずデザイン的にも使い勝手的にも優れている。右側には撮影関係の操作パネルが並んでいる。


液晶を開いた状態である。3.2型と大きいため開いた時の存在感がある。その左側には液晶を裏返して自分撮りをする時にズームと録画スタート/ストップを行うボタンが並んでいる。


操作パネル部を拡大してみる。真ん中の丸いところが電源/モード切り換えスイッチである。一度右にひねると電源が入り、もう一度右にひねると、動画と写真の撮影モードを切り替えられる。左にひねると電源が切れる。出っ張りはそれほど大きくないがひねりやすい絶妙な形で、前に持っていたDCR-SR62と比べ出っ張りが小さい分誤って手が当たって電源が切れてしまう事が無い。上の方に見える丸いボタンは「クイック オンボタン」で、電源を切る代わりにこのボタンを押しておき、次に使う時にこのボタンを押すと1秒で使用できる状態になる。ちなみに下部のふたが開いているが、ここが電源コネクタである。


液晶の内側は各種ボタンが並ぶ。三角のマークは「画像再生ボタン」で、これを押すことで再生モードへ移行する。またその下はワンタッチディスクボタンで、その左が撮影のさまざまな設定がオートになるイージーボタンである。また、上部には「ナイトショット」機能のオン/オフが切り替えられるようになっている。その横の四角いカバーを開けると、メモリースティックDuoが入るスロットが出現する。


HDR-SR11の右側面である。手で握る部分であるためボタン類は無いが、写真のようにカバーを開けると各種端子が並んでいる。左側は「A/Vリモート端子」と「USB端子」である。特にUSB端子はDCR-SR62はドッキングステーションにしかなく苦労したので本体に搭載されているのは非常に便利だ。右側にはイヤホンとマイク端子に加え、HDMI端子まで備え、ハイビジョンテレビに出力できる用になっている。いずれのカバーもゴム製ですぐ切れてしまいそうな安っぽいものではなく、プラスチック製でスライドさせて開ける形になっており非常にしっかりしている。さすが上位機種である。


液晶ディスプレイである。3.2インチと大きいだけでなく、92.1万画素と非常に詳細であるため、撮影時点でハイビジョン画質を見ているように綺麗である。これならば撮影対象の表情などがはっきり見えるだけでなく、ズーム時に対象物を見つけやすい。もちろん充分明るい液晶である。


560gの本体は多少重さを感じるが、手にしっくり来る形で非常にホールドしやすい。またズームレバーや電源スイッチも自然に指が届く位置にある。また、全体的に高級感があるように思える。


使い勝手は?

 それでは撮影した映像を見てみよう。まずはこの画像を見ていただきたい。


クリックすると実際のサイズで表示されます。
撮影した動画から1コマを切り出したものである。つまりこの画質で毎秒30コマの動画になるのである。フルハイビジョンなので1920×1080ドットとなるが、解像度が高いだけでなく非常にメリハリのある画質である。

 これは静止画撮影モードで撮影したものではない。撮影した動画から1コマを切り出したものだ。つまり、この美しさで毎秒約30コマの動きのある映像になるのだ。これからも分かるように動画の画質は非常に綺麗だ。美しいといっても過言ではないレベルである。Hi8のビデオカメラからDCR-SR62に買い換えた時も驚くほど画質がアップしたが、今回もまた驚くほどアップしている。残念なのは我が家のテレビはブラウン管テレビで、パソコンもノートパソコンが1280×800ドット、デスクトップが1280×1024ドットなので、フルハイビジョンの1920×1080ドットを表示しきれる機器がないのだ。それでも美しさが分かる。単に1920×1080ドットで記録されているだけではなく、1ドット1ドットが詳細に映っており、動画全体がクッキリと細かく映っていると感じる。これはもはや家庭用ビデオカメラのレベルではないと感じる。動画は満点だ。
 続いて静止画を撮影してみたのが、以下の画質である。


クリックすると実際のサイズで表示されます。
静止画撮影モードで撮影した画質である。3680×2760ドットであるため1020万画素で記録されているが、CMOSは566万画素なのでデジタル的に解像度をアップして記録している事になる。そのために実際に1020万画素あるデジカメなどと比べると荒れて見えるが、L判程度の大きさの印刷なら十分綺麗に見える。

 静止画は1020万画素で記録されているが、CMOSは566万画素なので、デジタル的に1020万画素に解像度を上げて記録している形となる。1020万画素と考えて見るとそれほど綺麗でないように感じてしまうし、拡大して見ると荒れている様に見えてしまうが、これは566万画素のCMOSであることを考えると仕方がないだろう。むしろビデオカメラでありながらここまでの画質の静止画が撮影できることを評価したい。L判サイズへの印刷なら十分綺麗に見える。また、動画を撮影しながら760万画素相当の写真撮影が同時に行えるので、ビデオを撮りながらシャッターチャンスで写真撮影ができるのだ。また、フラッシュも内蔵されているので、本当にデジタルカメラ的使い方が出来る。もちろん顔検出機能も動作する。

 今回のHDR-SR11は、フルハイビジョンだという事が頭にあっても驚くほど高画質のビデオ撮影が出来た。はっきり言って、10万円前後のコンパクトな家庭用ビデオカメラで、ここまで綺麗に撮影できるとは驚きである。画質は満足以上のものであった。液晶の美しさ、動作の軽快さ、ホールド感、その他顔認識やズームマイクなどの機能も満足いくものだ。それでありながら10万円を切る価格で購入できた。少し前まで高価だったハイビジョンデジタルビデオカメラが購入しやすい価格に来たと感じる。ビデオカメラの購入を検討している方は、断然ハイビジョンデジタルビデオカメラがオススメだし、その際は一度店頭でHDR-SR11の画質を見ていただきたい。

(H.Intel)


■今回の関係メーカー・ショップ
Handycam http://www.sony.jp/products/Consumer/handycam/
SONY http://www.sony.co.jp/



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