第98回
内蔵ハードディスク簡単接続キット
Groovy UD-301S
を使用してデスクトップパソコンVGC-RM50の
メインユニットのドライブを復活させる
(2010年2月10日購入・2010年6月1日著)



アクセスユニット復活作戦

 ロードテスト第45回で紹介したデスクトップパソコンVAIO VGC-RM50は、これまでメモリの増設、ハードディスクの増設、CPUの換装、グラフィックボードの換装、eSATAインタフェースボードの増設といった作業を行い、かなり便利になってきている。しかし実は一部のハードウェアが動作しない状態に陥っているのだ。
 VGC-RM50は本体がメインユニットとアクセスユニットの2つに分かれている。メインユニットにはその名の通りメインのパーツであるマザーボード、CPU、メモリ、ハードディスク、 グラフィックボード等の各種ボードなどが入っている。一方、アクセスユニットは、普段の使用の中でもアクセスを行うパーツ、DVDスーパーマルチドライブやメモリカードリーダ・ライターなどが搭載されている。USB端子は、メインユニットに多数あるが、アクセスユニットの前面にも2基搭載されている。
 問題はこのアクセスユニットが動作しないことである。電源は供給されているようで、ドライブのトレイの開閉などはできるのだが、アクセスユニット側に搭載された機器は、実際には一切認識されていない状態だ。また、アクセスユニット側にもあるハードディスクのアクセスランプも正常に動作せず、LEDが点灯したままになってしまったり、点灯しなくなったりする。また背面にPCカードスロットがあるがこちらももちろん使用できない。Bluetooth機能もアクセスユニット側に搭載されているらしく使用できなくなった。
 しかし、幸いなことに、PCカードスロットとBluetoothは使用しておらず、DVDスーパーマルチドライブも、外付けのBlu-rayディスクドライブを購入したため、多少不便ながらディスクが一切読めないという事は無い。メモリカードリーダ・ライタも別途USB接続の物を用意して対応した。メインユニットとアクセスユニットをつなぐケーブルの問題のような気もするが、確かめようもなく、どちらにしても修理に出さなくてはならない。ケーブルのような簡単な物ではなく、内部基盤の問題の可能性もあるし、もしかするとメインユニット側のアクセスユニットの接続部分が故障しているのかもしれない。幸い、BIOSでアクセスユニットが接続されていなくても起動するように設定できたので、アクセスユニットは切り離して使用してきた。しかし、せっかく搭載されているパーツを使用しないのももったいない。しかもそのパーツ自体は壊れていないのにである。そこで、とりあえずアクセスユニットの内部を見て、なんとか復活させられないか見てみることとした。

問題のVGC-RM50のアクセスユニットである。搭載されているパーツは故障していないが、アクセスユニット自体がメインユニットから認識されないため、使用できない状態である。

アクセスユニット内部を見る

 それではアクセスユニット内部を見てみる事にしよう。これまでメインユニット側は開けたことがあるのだが、アクセスユニットは初めてである。しかしアクセスユニットも同じで、背面にあるネジを外すと、寝かせて置いた時の天板が後ろにスライドできるようになり、少しスライドさせると取り外すことができる。天板全体が外れるため、内部での作業はしやすそうなのは便利だ。

VGC-RM50のアクセスユニットの背面である。左右の2つのネジを外すと天板が外せるようになる。

アクセスユニットを寝かせた状態で上から見た所である。ディスプレイを置けるように天板は平面である。この天板全体が外せる。

 前面側から見てみると、左側に小さな基盤があるのが見える。左手前にある金属の覆いの下にはメモリカードリーダ・ライタが、左奥の黒い部分はPCカードスロットである。このあたりはいかにも「専用」といった感じだ。一方、手前の中央から右側にかけては、金属フレームが見えるが、これは2基の5インチベイが横並びになっているものである。そして、そのうち右側の5インチベイには標準搭載のDVDスーパーマルチドライブが搭載されている。一般的な5インチベイに搭載されているため、DVDスーパーマルチドライブも一般の物のようだ。また、その5インチベイより奥は何も搭載されていない空間となっている。奥行きの大きなドライブも搭載できそうである。さて、このDVDスーパーマルチドライブを背面側から見てみると、見慣れたケーブルが挿さっているのが見える。どうやらATAPIのデータケーブルと電源ケーブルのようだ。一般的なATAPIドライブなら何とか復活できるかもしれない。
 もう一つ、メモリカードリーダ・ライタの方だが、こちらは付近に基盤があることから直づけされているだろうと思っていた。ところがこちらも背面から見てみると、なにやら短いケーブルが挿さっている。そこで、抜いてみると、なんと一般的なミニUSBコネクタである。それ以外にメモリカードリーダ・ライタにつながっているケーブルも無いため、ためしに手持ちのUSBケーブルでノートパソコンと接続してみると、アクセスランプが光り、パソコンからもメモリカードリーダ・ライタとして自動的にドライバが組み込まれて認識した。どうやら内部増設用のメモリカードリーダ・ライタではなく、どちらかといえばUSB接続の外付け製品の周りのケースがない物が取り付けられているような感じである。

天板を外した所である。天板全体が外せるため、内部が見やすくて便利だ。下が前面側である。左奥にPCカードスロット、左手前にメモリカードリーダ・ライタが搭載されている。手前の中央から右にかけて2基の5インチベイがあり、右側にDVDスーパーマルチドライブが搭載されている。

搭載されているDVDスーパーマルチドライブの背面である。特殊な形状ではなく、普通にケーブルが挿さっている。

搭載されているDVDスーパーマルチドライブのケーブルを抜いてみると、一般的なATAPIドライブのコネクタが出てきた。

メモリカードリーダ・ライターの背面である。基盤に直接取り付けられているかと思ったら、なにやらケーブルが繋がっている。

メモリカードリーダ・ライターに繋がっているケーブルを外してみると、なんと一般的なUSB端子が姿を現した。小型の機器に採用されているミニUSB端子である。

 さて、とりあえず内部を確認してみたわけだが、なんとか復活できそうな感じである。特に、メモリカードリーダ・ライタに関しては少し長めのUSBケーブルを用意し、なんとかアクスユニット内部から引っ張り出してメインユニットのUSBポートに接続するだけで問題なく動作しそうだ。一方のDVDスーパーマルチドライブに関しては少し工夫が必要そうだ。一般的な内蔵用ドライブであるため、取り出してUSB接続の外付けケースに入れても良いのだが、外付けにすると置き場所がまた必要だし、5インチドライブ用の外付けケースもそれなりの価格である。そもそも、外付けケースに入れる目的はATAPIのデータケーブルをUSBに変換する必要があること、ATAPIの電源ケーブルに電源を供給するためにACアダプタ兼変換ケーブルが必要であること、そして内蔵ドライブをむき出し状態で使うと故障の原因になる事である。このうち最後の目的に関しては、アクセスユニット内部に取り付けられた状態なら「むき出し状態」で使用することにならず問題ないことになる。ということはあとはATAPIからUSBに変換し、直接電源を供給できれば良いことになる。そこで思い出したのが、内蔵ハードディスクなどを一時的に外付けにするキットである。外付けケースと異なり、専用のACアダプタが直接ハードディスクに接続できるようになっており、ATAPIからUSBへの変換ケーブルも付いているという物だ。ケースがないため常用するのは危険だが、ハードディスクを交換した際に中のデータを移す時などに重宝する製品だ。こういった製品を使えば、今回のDVDスーパーマルチドライブもUSB接続に変換してメインユニットに接続できるし、電源もコンセントから直接とれるようになる。問題はDVDスーパーマルチドライブのような光学ドライブでは使用できるかどうかである。
 様々なメーカーが同種の製品を発売しており、中には光学ドライブでは動作しない、もしくは動作は保証できないと書かれた製品も多かったが、その中で光学ドライブへの対応がはっきりと書かれた製品がいくつかあった。中でも一度、同社の製品を使用したことかあり信頼性があった、Groovy社の「UD-301S」を購入した。BEST DO!日本橋店で1,170円と比較的手頃な値段である。また、メモリカードリーダ・ライタ用に2mの比較的ケーブルが細めのUSBケーブルも用意した。

UD-301Sを接続する

 それでは早速「UD-301S」を接続してみよう。「UD-301S」は2本のケーブルからなっている。1本は、コンセントのコネクタから途中にACアダプタを経由して、さらに小さな箱形の電源スイッチを通って先端がATAPIの電源コネクタになっているケーブルである。もう一本は片方がUSBコネクタ、片方がATAPIのデータコネクタになっているケーブルである。単純にこれらを、アクセスユニットに内蔵されているDVDスーパーマルチドライブに接続するだけで準備は完了である。一方のPCカードリーダ・ライタの方もUSBケーブルを接続して準備は完了である。

ATAPI接続のドライブをUSB接続で使用できるキットGroovy社「UD-301S」である。ハードディスクだけでなく光学ドライブへの対応が謳われているため、今回の使用目的にあっている。価格も1,170円と手頃だ。

「UD-301S」は二つのパーツからなっている。左がATAPIからUSBに変換するケーブルである。一方右側は、コンセントからATAPIドライブに電源供給が行えるケーブルである。途中にACアダプタが付いている。

アクセスユニットの背面を加工する

 ケーブルは接続できたが、この状態ではアクセスユニット内部からケーブルが3本外に出て行くことになるため、このままではふたを閉める事ができない。そこで、なんとかしてこれら3本のケーブルを外に通してやる必要がある。しかし、アクセスユニットの側面や背面を見ても隙間は見あたらない。拡張カードスロットでもあれば、ブラケット部を外してケーブルを通せるのだが、残念ながら拡張カードはメインユニット側に取り付けるため、こちらにスロットはない。唯一隙間ができそうなのは、余っている5インチベイである。2基ある5インチベイの内左側は余っているため、ここの前面のパネルを外せばケーブルを通すことができる。しかし、たかがケーブル3本を通すだけなのに5インチの光学ドライブの前面と同じ大きさの隙間ができるのは大きすぎるし、なによりケーブルが前面から出るのはあまりにも不格好だ。
 そこで背面を見ていると、5インチベイの裏側にあたる部分が、金属パネルではなくハニカム形状の金網になっていることに気がついた。ここならばペンチなどで切っていくことで穴を開けられそうである。この部分は本体の強度に影響を与える部分でもなさそうなので穴を開けても問題なさそうだ。そこで試しに1カ所ペンチで切ってみると、隙間が小さいため小さなペンチでの作業となるため力は必要なものの、10秒ほどで切ることができた。これならば加工できそうである。
 そこで3本のケーブルを通せそうな大きさにペンチで金網を切っていく。切る作業自体は順調に進み、20分ほどで十分な大きさの穴を開けることができた。しかし、ハニカム形状であるため、切ったところがどうしてもとがってしまう。大丈夫かとも思うが、通したケーブルを傷つけてもいやなので、透明のビニールテープを周囲に二重に張って対応した。これで無事にケーブルを通してふたを閉める事ができるようになった。

「UD-301S」やUSBケーブルを繋いだ所である。この状態ではケーブルが邪魔で天板パネルを元に戻すことが出来ない。

アクセスユニット背面のちょうど5インチベイの後ろに当たる部分は、ハニカム構造の金網になっている。

小さめのペンチで金網を切っていき、ケーブルが通せるような穴を開けた。

切り口が尖ってしまいケーブルを傷つけては困るので、透明のビニールテープを二重に巻いて保護した。

「UD-301S」とUSBケーブル穴を通した所である。これで無事に天板パネルを閉じることが出来る。

動作検証してみる

 それではケーブルをパソコンVGC-RM50に接続して動作確認をしてみよう。まずは、メモリカードリーダ・ライタの方のUSBケーブルを接続する。バスパワー動作なので、USBハブなどには接続せず、メインユニット本体のUSBポートに直接差し込む(USBハブがACアダプタから電源を取るセルフパワー方式の場合はこちらでも良い)。すると自動的にドライバが組み込まれ、使えるようになった。試しにいくつかのメモリカードを差し込んでデータの読み書きを行ったが問題なく行えた。まあ、こちらは事前にノートパソコンに接続して動作することが確認できていただけに、当然の結果である。
 問題は少し変わった使い方をしているDVDスーパーマルチドライブの方である。続いてDVDスーパーマルチドライブに接続した「UD-301S」のUSBケーブルを接続する。さらに、「UD-301S」のACアダプタ側に付いている電源スイッチをオンにする。するとDVDスーパーマルチドライブが動作する音が聞こえた。こちらも成功かと思いきや、いつまで経ってもパソコンから認識されない。しかも、よく聞くとドライブの動作音も変な感じである。やはり動作しないのかと思いつつ、念のため「UD-301S」の説明書を見てみた。すると、USBハブに接続すると正常に動作しない可能性があると書かれている。確かに本体のUSBポートの数にも限りがあるため、バスパワー製品でない事もあってUSBハブに接続している。しかし、こういった注意書きは一応書かれているだけで、実際にはUSBハブに接続しても問題ないと思われるが、一応説明書に書かれているため、USBハブに他の機器を回してパソコン本体のUSB端子を空け、そこに接続してみた。すると、なんと正常に動作し始め、パソコンからも認識されたのである。
 動作検証としてDVDの読み込みを行ったが転送エラーもなく、また特に転送が遅いと言うこともなく正常に読み込みが行えた。また、書き込みも、DVD-R数枚に書き込み作業を行ったが、書き込み失敗もなく正常に書き込めた。こうして、「UD-301S」を使用してDVDスーパーマルチドライブを復活させることにも成功した。



 今回は無理矢理な方法ではあったが、使えなくなっていたDVDスーパーマルチドライブとメモリカードリーダ・ライタを復活させることに成功した。その後3ヶ月以上使ってきているが、特に認識に失敗したり動作不良を起こすこともなく安定している。また、「UD-301S」とUSBケーブルを併せても1800円程度と、比較的安価なパーツで復活できたのも良かった点と言えるだろう。同じような状態になっている人はまれだと思われるが、今回のように「UD-301S」などのケーブルは色々と応用できることがおわかりいただけたと思う。


(H.Intel)


■今回の関係メーカー・ショップ
Groovy http://www.groovy.ne.jp/



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