第101回
デジタルカメラ
SONY Cyber-Shot DSC-HX5V
(2010年3月5日購入・2010年8月22日公開)



すごいコンパクトデジカメが発売された

 これまで私は、デジタルカメラに関しては使っているデジタルカメラが壊れた時に買い換えてきた。しかし、今回は今使っているデジタルカメラCyber-Shot DSC-T77(ロードテスト第65回参照)が壊れていないにもかかわらず、新しい製品を買ってしまったのである。それほどまでにすごいデジカメが発売されたのだ。
 それがソニーのCyber-Shot DSC-HX5Vである。この機種、画素数は1020万画素とそれほど高いわけではないが、それ以外の機能は現時点で最高レベルのものばかりが搭載されているのである。まずイメージセンサーはソニーお得意の裏面照射型CMOSである"Exmor R"CMOSを使用している。これにより暗いシーンでのノイズが大幅に抑えられるのである。さらに比較的コンパクトな本体がら光学10倍ズームを搭載している。一方ワイド側もすごく、35mm換算で25mmと超広角なので、狭い部屋の中などでも広く撮影できる。また動画撮影機能も、コンパクトデジタルカメラでは初めて、フルハイビジョン(1920×1080ドット)の60i(毎秒60コマのインタレース)での撮影が可能なのだ。これは一般的なフルハイビジョンビデオカメラと同じ解像度、フレームレートであり、記録もAVCHD(MPEG-4 AVC/H.264)と同じである。ビットレートは17Mbpsと、最新のデジタルビデオカメラの24Mbpsより低いが、コンパクトなデジタルカメラでありながら、最新のデジタルビデオカメラとほぼ同じ画質で撮影が可能になったわけである。しかも光学式手ぶれ補正の搭載はもちろんだが、動画撮影時にはアクティブモードという機能を搭載しているのもすごいところである。これは同社のビデオカメラに搭載されている機能で、ワイド側での手ぶれ補正効果が従来の10倍に強化されたというものである。これにより歩きながら撮影でも手ぶれの少ない安定した撮影が可能である。
 さらに、それ以外の機能としても、豊富な機能が搭載されている。例えば、連写速度は1秒間に最大10枚の高速連写が可能である(連続10枚まで)。さらにその高速連写機能を生かした「手持ち夜景モード」という機能は、6枚を高速連写した後、カメラが自動的に写真を合成し、暗いシーンで発生しがちなザラザラとしたノイズを減らしてくれる機能である。また逆光補正HDRでは逆光補正と通常の2枚を連写し、逆光で暗い部分は逆光補正の写真を、明るい部分は通常の写真を使用して合成することで、逆光補正を行いつつ明るい部分が白飛びしてしまわないようになっている。またスイングパノラマでは、カメラを上下左右いずれかにパンするだけで、パンしている間に自動的に連写し合成してくれるため、最大270度のパノラマ撮影が可能である。また顔認識やスマイルシャッター機能は当然搭載しているが、これらの機能を応用し、セルフタイマーに自分撮り機能が搭載されている。これは1人か2人かを選んでおくと、その人数の顔がフレーム内に入った際に撮影してくれるというものだ。自分撮りはなかなか上手く撮りにくいが、この機能があれば失敗無く撮影できる。もちろん広角25mmのレンズのおかげで、自分撮りでも比較的広く撮影できる。また最大30秒の長時間露光が行えるのもおもしろい撮影が出来そうだ。
 もちろん基本的な機能も充実しており、高感度撮影はISO3200まで対応している。液晶ディスプレイは3.0インチで23万ドットと高詳細である。
 これだけの機能を搭載していながら、本体サイズは102.9×57.7×28.9mmで撮影時重量も200gとコンパクトデジタルカメラと呼べる範囲内に十分収まっているから驚きである。実はこの機種は外見からはWシリーズに属しそうだが、DSC-HX5Vの品番からも分かるようにHシリーズに属する製品である(Xは"Exmor R"又は"Exmor"CMOS採用製品に付く)。Hシリーズと言えば、これまではがっしりとした本体で、一眼レフとコンパクト型の中間に当たる中型機と呼ばれるデザインであった。前機種のDSC-HX1は光学20倍ズームを搭載しているとはいえ、本体サイズは114.5×82.8×91.8mmで撮影時重量も504gと手軽とは言えない機種だった。今回はそれ以上の機能を搭載しながらここまでコンパクトに抑えてきたのである。外見的にはWシリーズだが、機能的にはHシリーズのクラスになっているということで、こちらのシリーズの製品なのだろう。DSC-HX5VはHシリーズの機能とWシリーズのサイズを持った、手軽に持ち歩いて使える高機能機として購入できるレベルになったのである。
 これだけの機能とコンパクトさでありながら、価格は44,800円とそれほど高くないのもポイントだ。確かに最近では1万円台の機種も多く、3万円出せばかなりの機種が購入できる中で4万円台中盤は安いとは言えないが、機能を考えれば十分お買い得だと感じた。そこで、今回は発売日当日に購入してしまったのである。ヨドバシカメラマルチメディア梅田で44,800円、発売日記念と言う事で15%ポイント還元であった。ちなみにこの機種の人気が分かる出来事として、少し高価な機種でありながら、発売日の夕方に買いに行った時には数十台単位で確保していたという在庫が、すでに残り数台になっていると言われた事である。また3日後に見に行ったときには在庫切れになっていた。パソコン雑誌に掲載されていたデジタルカメラ売り上げランキングでも1位になるなど、安くはない機種でありながらかなりの人気ぶりである。
 今回はこの機種の基本の撮影画質から、特徴の機能まで使い勝手を一つ一つ検討してみたいと思う。

これまで所持してきたデジカメと比較する

 まずは、これまで私の所持してきたデジタルカメラと比較してみることとした。以下はその比較表である。

メーカー
エプソン
ソニー
ソニー
ソニー
ソニー
品番
CP-800
DSC-W1
DSC-T50
DSC-T77
DSC-HX5V
購入日
1999/7/28
2004/8/9
2006/11/29
2009/1/7
2010/3/5
購入時価格
74,800円
(1%ポイント還元)
43,800円
(15%ポイント還元)
38,000円
(10%ポイント還元)
25,800円
(20%ポイント還元)
44,800円
(15%ポイント還元)
画素数
206万画素
510万画素
720万画素
1010万画素
1020万画素
イメージセンサ
1/2型CCD
1/1.8型CCD
1/2.5型CCD
1/2.3型CCD
1/2.4型"Exmor R"CMOS
光学ズーム
3倍
3倍
4倍
10倍
焦点距離
38mm
38〜114mm
38〜114mm
35〜140mm
25〜250mm
マクロ
15cm
6cm
8cm(マクロモード時)
1cm(拡大鏡モード時)
8cm(マクロモード時)
1cm(拡大鏡モード時)
5cm
シャッタ速度
1/2〜1/750秒
1/8〜1/2000秒(オート)
30〜1/1000秒(マニュアル)
1/4〜1/1,000秒(オート)
1〜1/1,000秒(マニュアル)
1/4〜1/1,000秒(オート)
1〜1/1,000秒(マニュアル)
2〜1/1,600秒(オート)
30〜1/1,600秒(マニュアル)
感度設定
ISO100/200/400
自動/ISO100/
200/400
自動/ISO80/100
/200/400/ 800
/1000
自動/ISO80/100
/200/400/ 800
/1600/3200
自動/ISO125
/200/400/ 800
/1600/3200
光学式手ぶれ補正
○(動画時アクティブモード対応)
ビューファインダ
光学式
光学式
液晶モニタ
1,8インチ
11万画素
2.5型
123,200画素
3.0 型タッチパネル
230,400画素
3.0 型タッチパネル
230,400画素
3.0 型
230,400画素
フラッシュ
0.5〜2.4m
0.2〜3.5m
0.1〜3.4m
0.08〜3.0m
0.25〜3.8m
セルフタイマ
10秒固定
10秒固定
2秒/10秒
2秒/10秒
2秒/10秒/自分撮り(1人/2人)
動画撮影
640×480ドット30fps
(撮影中ズーム操作不可)
640×480ドット30fps
(撮影中ズーム操作対応)
640×480ドット30fps
(撮影中ズーム操作対応)
1920×1080ドット60i
(撮影中ズーム操作対応)
顔認識
笑顔認識撮影
内蔵メモリ
56MB
15MB
45MB
連写モード
最大10枚
最大9枚
最大5枚
最大100枚
最大10枚
(10枚/秒)
電源起動時間
約4秒(液晶使用時)
約2秒(ビューファインダー使用時)
約1.3秒(液晶使用時)
約1.3秒
約1.6秒
約1.8秒
レリーズラグ
N/A
約0.009秒
約0.01秒
約0.008秒
約0.01秒
撮影間隔(最高画質)
3.2秒
1.1秒
1.4秒
1.9秒
1.6秒
使用メモリ
コンパクトフラッシュ
メモリースティック
メモリースティックPRO
メモリースティック Duo
メモリースティックPRO Duo
メモリースティック Duo
メモリースティックPRO Duo
SDカード
SDHCカード
メモリースティック Duo
メモリースティックPRO Duo
バッテリ
単三型乾電池・充電池×2
単三型乾電池・充電池×2
専用充電池
専用充電池
専用充電池
バッテリ駆動枚数
100枚
340枚
400枚
220枚
310枚
サイズ
113mm×67.5mm
×35.5mm
91.0×60.0
×36.3mm
95.0×56.5
×23.4(最薄部19.0)mm
93.6×57.2
×15.0(最薄部13.9)mm
102.9×57.7
×28.9mm
撮影時重量
293g *1
250g
170g
151g
200g
*1 単三型ニッケル水素電池を1本29gとして換算

左奥が我が家のデジタルカメラ1代目エプソン「CP-800」、右奥が2代目ソニー「DSC-W1」、左奥から2番目が3代目ソニー「DSC-T50」、右奥から2番目が4代目ソニー「DSC-T77」、一番手前が今回購入したソニー「DSC-HX5V」である。

 まず、これまで買い換えるたびに向上していた画素数が、1世代前のDSC-T77から変化していない事がおもしろい。確かに現在販売されているコンパクトデジタルカメラには1400万画素クラスの機種もあるため、機種によっては画素数がさらに上がることも合ったが、DSC-HX5Vでは1020万画素に抑えられている。たしかにL版や2L版に印刷する程度なら1000万画素クラスでも十分であり、それ以上の画素数は画質の差がわかりにくいどころか、1枚あたりのファイルサイズが大きくなる問題がある。また同じイメージセンサーサイズで画素数を上げると、1画素あたりのサイズが小さくなり、結果的にノイズが乗りやすくなるなど画質低下にもつながるため、むやみに上がっていない事が評価できる。
 イメージセンサーサイズは、1世代前のDSC-T77と2世代前のDSC-T50がとにかく本体の厚みを薄くすることを特徴にした機種であり、プリズムで90度曲げているタイプだったのに対して、今回は多少厚みもありプリズムも使っていないため、大きくなっているかと思いきや、同等サイズになっている点は驚きである。ただし、これまでCCDセンサーだったのが、初めてCMOSセンサーの機種になっている。
 光学ズームはこれまでと異なり10倍とかなり大きい。一方広角側も25mmと、これまでの35mm〜38mmから比べてかなり広角寄りとなっている。狭い部屋の中などでも撮影しやすい点で、非常に便利になったと言える。マクロモードはこれまでの2機種は拡大鏡モードで1cmまで接近できたのに対して、DSC-HX5Vでは拡大鏡モードが無く、マクロモードで5cmとスペックダウンしている。ただし、ソニーは拡大鏡モードはTシリーズにしか搭載しておらず、またこれまでの2機種のマクロモードよりは接近できる事、さらに5cmまでであれば実用上問題ないことを考えると、気にはならない。

上から順に、1代目エプソン「CP-800」、2代目ソニー「DSC-W1」、3代目ソニー「DSC-T50」、4代目ソニー「DSC-T77」、今回購入したソニー「DSC-HX5V」である。

 続いてサイズを比較してみよう。まずは正面から見た大きさである。公開購入したDSC-HX5Vは高性能な機種であるため、これまでの機種と比べると大型化しているのは仕方のないことだろう。それでも、DSC-T77やDSC-T50と比べても縦はほぼ同じで、横幅が8〜9mm増えているだけである。3世代前のDSC-W1と比べると横幅は10mm以上大きくなっているが、縦は逆に小さくなっている。そのことから見ても特別大きいというわけでもない。

上から順に、1代目エプソン「CP-800」、2代目ソニー「DSC-W1」、3代目ソニー「DSC-T50」、4代目ソニー「DSC-T77」、今回購入したソニー「DSC-HX5V」を上から見たところである。なおどの機種も電源オフの状態である。

 厚みも比較してみよう。さすがに当時、光学式手ぶれ補正搭載機としては世界最薄をうたっていたDSC-T77と比べるとかなり厚くなっているといえる。しかし2世代前のDSC-T50も薄型をうたっていたが、DSC-HX5Vのそれほど差がないことが分かる。3世代前のDSC-W1よりは明らかに薄い。そのことから、最近は薄型の機種ばかり使ってきていたために、特に厚く見えたが、少し前の機種と比べると案外厚みは小さいことが分かる。重量も、DSC-T77の49gアップ、DSC-T50の30gアップと、サイズの割に重くないこともうれしいところである。

DSC-HX5Vの外見を見てみる

 それではDSC-HX5Vの外見を見てみよう。まずは正面である。正面は右側に大きくレンズが場所を占めている。これまで使ってきた機種ではレンズを含んで端から端までカバーで覆われており、カバーをおろすと電源がオンになったが、この機種は普通に電源ボタンを押すとレンズが繰り出してくる。レンズカバーは自動開閉なので、カバーの取る手間や、無くしてしまう心配は無い。真ん中より少し左の上の方に付いているのがフラッシュである。一方、レンズの右上に付いている小さな丸いものは、「セルフタイマーランプ/スマイルシャッターランプ/AFイルミネーター」と呼ばれる物だ。セルフタイマーの際のカウントなどに使用されるほか、非常に暗い場所で撮影する際に、シャッターを切る前にオレンジ色に光り、それによってオートフォーカスを合わせる機能に使用される。レンズの右下には、「Gレンズ」を使用していることを示す「G」マークが誇らしげに印刷してある。また左側が膨らんでおり、手で持った際に指をかけることでしっかりホールドできるようになっている。

DSC-HX5Vを正面から見たところである。右側に大きくレンズが占めており、その右上が「セルフタイマーランプ/スマイルシャッターランプ/AFイルミネーター」、真ん中より少し左の上の方にフラッシュがある。

 続いて背面である。操作ボタンは意外とシンプルで、十字キーと真ん中の決定ボタンの周囲4カ所の内3カ所しかボタンが配置されていない。十字キーの左下がMENUボタン、右下がゴミ箱ボタンとなっており、基本的には十字キーと真ん中の決定キーで操作できる。また、十字キーはそれぞれの方向が単独でフラッシュモードやセルフタイマー、スマイルシャッターなどの設定を出すためにも使用できる。わざわざメニューに入らなくても、これらのよく使う機能はワンタッチで呼び出せるのは便利である。
 キーにもマークがかかれているほか、画面内にもある程度の説明(上下ボタンで変更することや、MENUボタンで次に進むなど)が出るのでそれほど難しくなく、説明書を見なくてもさわっていれば使える様になってくるだろう。十字キーの左上は再生モードに入るときのボタンだが、おもしろいのがその上に付いている「MOVIE(動画)ボタン」である。写真撮影のどのモードにいるときでも、このボタンを押せばビデオの録画が即座に始まる。わざわざモードダイヤルを回して動画撮影モードにしてから、シャッターボタンでスタートといった事をする事無く、写真撮影中にぱっと動画を記録できる。さすがに動画撮影がおまけ的な機能でなく、本格的なフルハイビジョン動画が撮影できる機種だけあって、動画撮影の便利さにも気が遣われている。
 またボタンの配置されたところよりさらに上にへこみがあるが、ここは撮影時に親指をかけられる様に工夫してあるのである。このへこみに親指を入れ、前面のふくらみに中指・薬指・小指をかけると、しっかりとホールドできる上に人差し指は自然にシャッターやズームレバーの位置に来るために非常に使いやすい。これまでの薄型のDSC-T77はどうしてもホールド感が薄く心許ない感じだったが、DSC-HX5Vはしっかり持てる様に工夫されている。

DSC-HX5Vの背面である。操作ボタンはシンプルで、十字キーとその真ん中の決定キーの他は、4つしかない。といっても画面に簡単な説明も出るためそれほど難しくない。また十字キーはそれぞれが単独でフラッシュやセルフタイマーなどの機能を呼び出せるため、便利である。そのほか、さすがフルハイビジョン動画撮影をうたった製品だけ合って、静止画撮影モードからでもワンボタンで録画状態に入れる「MOVIE(動画)ボタン」があるのがおもしろい。

 ちなみにディスプレイは3.0型と十分な大きさである。前機種のDSC-T77も3.0型であったが、縦横比16:9のワイドディスプレイであったため、実際には(ワイドの写真を撮影するとき以外は)、ディスプレイの左右に黒帯があり、その部分にタッチパネル用のボタンが配置されていた。その反面DSC-HX5Vは縦横比が4:3のディスプレイであるため、画面いっぱいに映像が表示できるため非常に見やすい。液晶は光沢タイプだが、写り込みも少なく表示自体も美しい。液晶ディスプレイは合格点と言える。ちなみにフルハイビジョン動画撮影時は、撮影する動画が16:9のワイドとなるため、上下に帯の入った状態になる。

DSC-T77(上)とDSC-HX5V(下)の液晶ディスプレイの比較である。大きさは共に3.0型であるが、DSC-T77はワイドディスプレイで、真ん中に画像が表示されるのに大して、DSC-HX5Vは縦横比4:3のディスプレイなので、画面いっぱいに画像が表示されるため、実質DSC-HX5Vの方が見やすい。

 続いて上面である。まず一番右端にモードダイヤルが配置されている。モードダイヤルは背面にある方が、カメラを構えながらでもモード変更できて便利だが、DSC-HX5Vではモードダイヤルを回すと、画面にもダイヤルに合わせてモードが回転するアニメーションが表示されるため、画面を見ながら合わせることができる。ただしモードダイヤルを回すのと画面上で回るのでは若干のタイムラグがあるため、急いで回すと目的のモードを通りすぎることがあるため注意が必要だ。それでも画面に表示されないよりはよほど便利である。
 その左にはシャッターボタンとズームレバーがある。シャッターボタンの周囲がズームレバーになっているため、ズーム動作とシャッターを切る動作がスムーズに行えるため、なかなか便利な配置だと言える。また、DSC-T77では薄い本体に小さなズームレバーだったため操作しづらかったが、DSC-HX5Vは大きめなのでズーム操作もしやすい。
 その左には電源ボタン、そしてその左には連写撮影と1枚撮影を切り替えるボタンが付いている。毎秒10枚の高速連写機能を気軽に使えるようにという配慮だろう。こちらもなかなか便利である。
 一番左には動画撮影用のマイクが内蔵されている。デジタルカメラながらステレオマイクが内蔵されているあたりが、さすがフルハイビジョン動画の撮影ができる機種と言えるだろう。

DSC-HX5Vの上面である。左からモードダイヤル、シャッターボタンとズームレバー、連写切り替えボタンとなる。左側にはステレオマイクも内蔵されている。ズームレバーは大きめで操作しやすい。


DSC-HX5Vで撮影してみる

 それでは実際に撮影してみよう。電源ボタンを押すとレンズカバーが自動的に開き、レンズが前に飛び出てくる。モードダイヤルを合わせておけば、これだけで撮影が可能になる。電源を入れてからこの状態までは1秒以内に行われるため、さっと取り出して撮影が可能である。ちなみに、飛び出る長さは18mmである。本体より飛び出るため、誤って指が入ってしまうと言うこともなく、安心だ。実際に撮影してみると、シャッターボタンを押してからのレスポンスも高速で、撮りたい場面で撮影が可能であった。また前述の様にホールド感も良いため、安定して撮影できる印象である。さらに、「iおまかせ」モードにしておけば、通常撮影の他、夜景、逆光など自動でシーンを認識して、マクロモードかどうかの設定までして、ベストな設定で撮影してくれるため、各モードがよく分からない場合や、わざわざ合わせるのが面倒という人は、このモードに合わせておけば安心である。また、広角側が35mmフィルム換算で25mmとかなりワイドであるため、狭い室内や乗り物の中でも思った以上に広く撮影できるため非常に便利である。
 続いてズームをしてみよう。さすがに10倍ズームと言うだけあって遠くまで寄ることができる。35mmフィルム換算で25mmからの10倍ズームなので250mmとなる。これまで使ってきたDSC-T77がワイド側は35mmで4倍ズーム(140mm)であったため、それから考えると、7.14倍ズームとなるが、それでもここまでズームできて広角側にも強いという事で、ワイド側からズーム側までかなり心強いと感じた。ちなみに10倍までズームすると、レンズの飛び出る長さは35mmまで大きくなる。ズームするためには仕方のない事なのだが、思いの外前に長くなるという感じだ。もっともバランスが前に崩れるという事は無いため、見た目に「すごいズームしてるな」と感じるだけなのだが。


上の写真は、電源を入れて撮影できる状態にしたDSC-HX5Vである。電源を入れるとレンズが自動的に18mm飛び出てくる。さらに下の写真は光学10倍ズームの状態である。長さは35mmになり、さらにレンズが飛び出ている事がわかる。

DSC-HX5Vで写真を再生する

 撮影した写真を見る場合は、本体背面の再生ボタンを押すだけである。後は十字キーの左右で写真を進めたり戻したりが可能である。表示はかなり高速で、例えばボタンを押すと、まずは荒い画像が表示されてからきれいな画像が表示されるという様な事は無く、さっときれいな画像が表示される。液晶ディスプレイの画素数は23万画素と、兄弟機(同じフルハイビジョン動画撮影機能を持った薄型機)であるDSC-TX7の92.1万画素には劣るが、十分美しく写真を見ることが可能だ。また、連続で十字キーの左右を押しても、間引かれることなく、毎秒5〜6コマ程度のスピードで次々と送っていく事が可能である。また、再生中にズームレバーをワイド側にすると、最大8倍まで拡大表示ができるのも便利である。撮影した写真の表情を拡大して確認することもできる。また逆にズームレーバーをテレ側にすると、4×4の16枚サムネイル表示、5×5の25枚サムネイル表示、さらにカレンダー形式による日付選択の画面に切り替えることもできる。後述のスイングパノラマの再生機能なども含めて、再生機能は非常に便利だと言えよう。

DSC-HX5Vをテレビにつないで再生する

 DSC-HX5Vはテレビ出力が可能である。といっても本体に直接出力用の端子はない。出力方法はいろいろあるが、まず付属の「マルチ端子専用USB・AVケーブル」は、コンポジット端子(黄・赤・白の端子)に出力できるものである(パソコンとの接続用のUSBケーブルも兼ねている)。DSC-HX5Vの底面のマルチ端子に接続する形であり、どんなTVにも接続できるが、出力画質はビデオのスタンダード画質以下で、写真もビデオもきれいには写らない。旅行先のホテルのテレビにつないで、とりあえず大きく映し出してみんなで見ると言った用途になるだろう。しかし、DSC-HX5Vはフルハイビジョン動画が撮影できるだけあって、フルハイビジョンでの出力が標準で可能になっている。付属の「HDMI変換アダプタ」を底面のマルチ端子に接続すれば、HDMI端子ができあがる。あとは手持ちのHDMIケーブルでつなげば良い。ハイビジョンの液晶・プラズマテレビと接続すれば動画も写真もきれいに表示できるし、特にフルハイビジョンの液晶・プラズマテレビなら、フルハイビジョンで撮った動画がそのままの画質で表示できる。便利なのはHDMI端子が、ビデオカメラなどによく採用されているHDMIミニ端子ではなく、通常タイプのものである事だ。HDMI端子を備えているとは、さすがにフルハイビジョン動画が撮影できる機種である。

DSC-HX5Vの付属品である。左から順にマルチ端子専用USB・AVケーブル、充電器、充電池、HDMI変換アダプタである。どんなテレビにも対応するテレビ出力ケーブルと、テレビ側にも端子があることが条件だがフルハイビジョンで接続できるHDMI変換アダプタの2つにより、テレビ出力も万全である。

明るい場所での撮影画質を検証する

 それではまず、通常の明るいシーンでの撮影画質を見てみよう。撮影は晴れの日の屋外で行った。比較対象として、これまで使用してきたDSC-T77でも同じ場所で撮影している。DSC-T77はDSC-HX5Vとほぼ同じ画素数だが、イメージセンサーに通常のCCDを使用しており、またレンズが飛び出ないタイプなので、内部で90度光を曲げているため、どちらかと言えば画質よりもコンパクトさや手軽さを売りにした製品である。同じ画素数でもどの程度の差があるのか検証することができるだろう。

DSC-HX5V
DSC-T77

 2枚写真があるが、上の写真から見ていこう。どちらの機種でも撮影した写真は3648×2736ドットとなり、上の写真はそれを400×300ドットに縮小表示した物である。これを見ると色調等に大きな違いはない。目で見た感じとそれほど違和感なく、不自然にコントラストが高いと言うこともない。ただし、この写真では分からないが、赤や黄色など色鮮やかな物を撮影すると、DSC-HX5Vの方がより色鮮やかに撮影できているように感じた。これも不自然に色が濃いのではなく、色がしっかり出ているという様なイメージである。そしてこの2枚を見て気づくのは、やはり撮影できている広さの違いだろう。これはもちろん焦点距離の違いによるもので、DSC-T77が35mmフィルム換算で35mmなのに対して、DSC-HX5Vが25mmとなっている事が良く現れている。このような場面では真価がはっきりしないが、狭い部屋の中や乗り物の中など撮影する際には、非常に便利である。また、25mmまで広角だと、周辺がゆがんでしまいがちだが、DSC-HX5Vではうまく補正されているようで、ほとんど気にならないレベルであった。もちろん周辺部は若干のゆがみが発生するが、従来のコンパクトデジカメにもある程度のレベルに抑えられており満足できるレベルだ。
 続いて下の写真を見てみよう。これは上の写真の一部分を切り取った物で、縮小処理をしていない。つまり上の写真の等倍表示するとこの画質で見られるわけである。一見するとどちらも細部まできれいに撮影できているように感じる。しかし屋根の部分や、最上階の屋根で陰になっている部分を見ると、DSC-HX5Vの方が明らかにノイズが少ない用に見える。裏面照射型CMOSは暗いシーンでノイズが少なくなる点が注目されているが、明るいシーンでもノイズ量は少なくなっているように思える。DSC-HX5Vの画質の良さが垣間見える結果であった。

やや暗い場所での撮影画質を検証する

 続いてやや暗い場所で撮影を行ってみた。撮影場所は大阪市営地下鉄の御堂筋線の淀屋橋駅である。地下鉄の駅であるため普通なら特別暗いとは感じないが、昼間の屋外のような明るさは無く、また地下街や一般家庭と比べると空間が広いためか少し暗めである。ここでは高感度撮影モードにし、どちらもISO3200相当での撮影を行っている。また明るいところでのテストと同様、DSC-HX5Vに加えてDSC-T77でも撮影を行い比較している。

DSC-HX5V(高感度撮影モード・ISO3200)
DSC-T77(高感度撮影モード・ISO3200)

 まずは1枚目の全体写真から見てみよう。ISO感度を高くするとノイズ量は多くなってしまうが、縮小するとどちらもきれいに撮影できているし、どちらも十分明るく撮影できている。また高感度モードとすることでシャッター速度がある程度速くなる上に、光学式手ぶれ補正機能が搭載されているため手ぶれも起こっていない。しかしよく見ると、DSC-HX5Vに比べるとDSC-T77の方が色が浅い事が分かる。電車の前面の黒い部分や赤のラインが薄くなっているほか、駅の黄色い点字ブロックがグレーに近くなり、ホームの他のタイルとの差が小さくなっている。肉眼ではDSC-HX5Vの方が近いため、暗いシーンでも色が鮮やかに正しく撮影できるDSC-HX5Vはさすがと言えるだろう。
 続いて写真の一部を切り取った下の2枚を見てみよう。等倍まで拡大すると、ISO3200相当ではさすがに両機種ともかなりのノイズが発生している。ただし、どちらも疑似色が載ることはなく、色がムラムラとしているだけなので、全体的な見栄えが悪くないのであろう(DSC-T77の前に持っていたDSC-T50では疑似色が発生していた)。2枚目の写真の黒い部分や、3枚目の写真のホームの黒いラインを見るとDSC-HX5Vの方が若干ノイズが少ない(ムラムラが小さい)様にも感じるが意外と差は少ない。裏面照射型CMOSは暗いシーンに強いという事だが、これまでの機種もノイズ除去などの対策は搭載しているため、さすがにこの程度の暗さのシーンでは差は少ないようだ。ただ2機種の差が少ないだけであり、DSC-HX5Vの結果が悪いわけではない。

非常に暗い場所での撮影画質を検証する

DSC-HX5V(高感度モードでない場合)

 それでは非常に暗い場所での撮影画質を見てみよう。明るい場所でのテストと同じ場所の深夜に撮影している。マンションの敷地内なので街灯の数も一般道に比べると少なく暗い印象である。上の写真は高感度モードにせず、ISO800相当でシャッタースピードを1/4秒にして撮影したものである。かなり暗く写っており、肉感ではこれと同等か、もう少し暗い感じである。この状態で高感度モードにし、ISO3200相当で撮影を行っている。

DSC-HX5V(高感度撮影モード・ISO3200)
DSC-T77(高感度撮影モード・ISO3200)

 1枚目の全体写真を見ると、DSC-HX5VもDSC-T77も高感度撮影モードにすることである程度明るく写せていることが分かる。肉眼ではマンションの形が見えにくいほど暗くなるが、高感度モードではマンションの形がはっきりと分かるところまで明るくなっている。しかし、DSC-HX5VとDSC-T77の撮影写真を見ると、縮小した写真でありながらDSC-HX5Vの方が明らかにノイズが少ないことが分かる。写真は8分の1まで縮小しているにもかかわらずこの差は驚きである。2枚目の一部を切り取った縮小処理をしていない画像を見てもこの差は歴然で、DSC-T77では全体がザラザラしていて、特に室内の電気が消えている部屋では完全につぶれてしまっている一方、DSC-HX5Vでは全体的なざらざら感も少なく、電気の消えている部屋でも窓の形やベランダの柵の形が見える様になっている。ここまでの差であると、DSC-T77ではL判程度のサイズに印刷してもザラザラで汚い写真になるが、DSC-HX5Vではかなりきれいな写真となる。暗いシーンに強い裏面照射型CMOSの力が発揮された格好である。このノイズの少なさは非常に優秀で、旅行などで夜に屋外で撮影したり、薄暗いレストランで撮影しても、十分きれいな写真が撮影できるのは非常に便利だと言えよう。

動画撮影機能を検証する

 DSC-HX5Vの特徴の一つであるフルハイビジョンでの動画撮影機能を検証してみよう。撮影した画質は、裏面照射型CMOSセンサーである"Exmor R"CMOSであることもあって、所持しているデジタルビデオカメラHDR-SR11に負けない高画質であった。HDR-SR11も決して画質の悪い機種ではないだけに、比較的コンパクトなデジタルカメラでこの画質は驚きである。これまで、デジタルカメラに搭載されるビデオ撮影機能と言えば、確かに解像度とフレームレートはビデオカメラと同じなのだが、撮影した映像は大きく劣ることが多かった。例えば全機種のDSC-T77は640×480ドット30fpsでの撮影が可能だったが、デジタルビデオカメラの中では最下位機種のDCR-SR62(720×480ドット29.98fps)と比べても明らかな差があった。しかし、DSC-HX5Vはビデオカメラで撮影したといっても全く問題ないレベルに達しているのが驚きである。
 ただし、使用していてズームが遅いことが気になった。ズーム時の動作音が録音されて気になるという声も聞かれたが、これは意外と気にならない。それよりもズームが遅い点が不便である。1倍から10倍までズームするのに約6.5秒かかるのである。HDR-SR11が1倍から12倍までで約2秒なのと比べるとかなり遅い。また制止画撮影時は2秒弱で10倍までズームできるので、動画撮影時のみ遅いと言うことになる。理由は二つ考えられ、一つは前述の動作音をできるだけ小さく抑えるためである。もう一つは静止画撮影時のズームでもそうなのだが、ズームレバーがズームとワイドと停止の3段階しか無く、デジタルビデオカメラのようなズームレバーの傾ける角度によって可変ズームする機能がないのである。静止画の場合はズームしすぎても戻せばいいが、動画中に高速にズームしたり、ズームしすぎて戻ったりすると見にくくなるため、調整しやすいスピードになっているとも言える。しかし、遅いため、撮影目的の物が動く物だった場合、ズームした頃にはいなくなっている事もあった。このあたりもビデオカメラと異なるところである。ただし動画撮影モードでも、スタンバイ中は制止画撮影モード時と同じスピードでズームできるため、ズームしてから撮影をし始める分には問題ない。
 あとは細かい点としては、フォーカスがオートフォーカスしか無いことである。通常はオートフォーカスで問題ないし、精度もなかなかなので、普段の使用では問題ない。しかしマニュアルで固定できないと、手前に柵のあるようなところで、柵にピントが合ってしまったり、極端に暗いところでピントが合わないなど、ごくまれに不便なこともある。しかしデジタルカメラにそこまで求めるのは酷だろう。
 不満点も色々書いたが、何よりデジタルカメラでありながらここまで高画質の動画が撮影できるのは非常に便利である。デジタルカメラを持ち歩かないような外出でも、ふと動画を撮りたくなった際にビデオカメラと同レベルの動画が撮れるため安心である。また、写真も動画もとるといった場合でも、わざわざ持ち替えることなく撮影できるのは便利である。またDSC-HX5Vには、もちろん本体上部のモードダイヤルを動画に併せればシャッターのボタンで撮影開始・終了ができるのだが、静止画モードでも本体背面の録画ボタンを押すだけで、設定していた録画モードで即撮影が始まる。録画ボタンを押せば1秒以内に録画が始まるのは非常に手軽だ。またもう一度録画ボタンを押して撮影を止めると元の静止画撮影モードに戻るのも良い。手軽に動画を撮影するという点ではベストな機種とも言える。

動画撮影の画質を検証する

DSC-HX5V
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HDR-SR11
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 上の動画は、DSC-HX5Vで撮影した動画と、ハイビジョンビデオカメラHDR-SR11で撮影した動画である。同時に撮影しているため(録画開始は若干ずれているが)、ほぼ同じ場面で見比べることが可能だ。これを見ると、DSC-HX5Vはデジタルビデオカメラで撮影したと言っても問題ない程、高詳細でスムーズな映像が撮影できている。少なくとも今までのデジタルカメラの動画撮影機能の様な、撮影できる解像度とフレームレートは同じはずなのに、何か映像が汚かったり、映像のスムーズさに欠けると言った事は一切無いといえる。HDR-SR11は2年前の機種ながら、当時の最上位機種(正確には最上位機種からハードディスク容量を半分にしたもの)であり、発売当時は一歩抜きに出た画質と評価されていた機種なので、この機種と同レベルと言うことであれば、かなり高画質と言える。この画質ならばビデオカメラの代わりとして十分使えると言えるだろう。
 ただし何もかもHDR-SR11と同レベルではない。まず気になる点として、薄暗い場所でのノイズの多さである。地下鉄の駅で撮影した上記のサンプル動画でもそうだが、夜のレストランやホテルの部屋などで撮影すると、どうしても全体にザラザラとしたノイズが発生してしまう。一方HDR-SR11で撮影するとこういったノイズはかなり抑えられている。HDR-SR11は裏面照射型ではないCMOSセンサーであるため、本来は裏面照射型CMOSのDSC-HX5Vの方がノイズは少ないはずだが、残念ながらノイズ量ではHDR-SR11に軍配が上がる。原因を考えると、まずイメージセンサーサイズの大きさが考えられる。DSC-HX5Vの1/2.4型に対して、HDR-SR11は1/3.13型と小さいが、画素数がDSC-HX5Vの1020万画素に比べて、HDR-SR11では566万画素とかなり少ないため、イメージセンサーサイズは小さくても画素数が少なければ、1画素の大きさは大きくなる。つまりノイズに対してはHDR-SR11の方が有利なのである。しかし、これは仕方のないことで、フルハイビジョンの動画がきれいに撮れれば良いビデオカメラでは画素数を抑えてノイズ量を減らすことができるが、デジタルカメラでは静止画を撮影する上で画素数が高い必要があるためである。また動画撮影主体のデジタルビデオカメラでは、動画撮影時に何らかの処理が行われてノイズが軽減されているとも考えられる。そう考えると、最新の同社のビデオカメラであるHDR-CX550VやHDR-XR550Vでもイメージセンサーも1/2.88型で633万画素となっている上、DSC-HX5Vと同じExmor"R" COMSを搭載しているため、最新のデジタルビデオカメラ撮るかベルトノイズ量は多めになっているかもしれない。ただし、比べると差は分かるものの、映像が見られないほどのノイズ量ではなく、若干ザラザラした印象を受ける程度であり、よほど画質にこだわらなければ十分合格点と言える。むしろこの小さな本体で、しかもデジタルカメラでありながらここまで健闘していることが驚きと言える。
 そのほか、気になる点としてはHDR-SR11より音声が悪いと言うことである。声などは問題ないのだが、自然の音や機械音などは実際に耳で聞いたより軽い音になっている感じがする。HDR-SR11の方が臨場感のある音といえるだろう。HDR-SR11は当時の最上位機種で、5.1チャンネル記録もできる性能の良いマイクを内蔵しているのに対して、DSC-HX5Vは2チャンネルのみで、見た目にもマイク用の穴も小さいので仕方がないだろう。ただし、同社のデジタルビデオカメラの現行のラインナップを見ても、最上位機種は5.1チャンネル記録だが、中位モデルと下位モデルは2チャンネル記録であるため、デジタルビデオカメラとでも中・下位機種となら互角の可能性もある。価格も全然違うデジタルビデオカメラの最上位機種と比較するのが間違っているとも言える。また、音は軽くなってしまうが、小さな音までしっかり録音できている点は、優れているといえる。

手ぶれ補正アクティブモードを検証する

 DSC-HX5Vの特徴として、手ぶれ補正が動画撮影時にはアクティブモードに対応していることも挙げられる。これは、最近の同社のビデオカメラに採用されているものであり、もちろんデジタルカメラでは初採用となる。従来に比べて10倍ぶれにくいと言うことである。

DSC-HX5V
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HDR-SR11
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 実際に撮影してみたのが上のサンプル動画である。DSC-HX5Vと、比較対象としてアクティブモードには対応していないデジタルビデオカメラHDR-SR11で撮影した物も掲載している。撮影は、DSC-HX5VまたはHDR-SR11を手で持った状態で、多少揺れない様に気を遣いながら、しかしソロソロ歩きではなく、普通の速度で歩いて撮影している。これを見ると差は一目瞭然で、アクティブモード非対応のHDR-SR11では、画面が上下左右に揺れて非常に見にくいが、DSC-HX5Vではその揺れがかなり抑えられ、見やすい映像になっている。実際にここまでの差があるとは驚きである。HDR-SR11の揺れ方では、見ていて酔ってしまいそうで、あまり見る気になれないが、DSC-HX5Vのレベルまで抑えられていれば見る気が起きる。特にDSC-HX5Vは本体が小型であるため、歩きながら手に持って撮影すると言うことも手軽に行えるが、その際にブレがここまで抑えられると、歩きながら撮影が実用的なレベルになっている。
 ただし、DSC-HX5Vのアクティブモードはワイド側のみ動作するため、ズームした状態では通常レベルの手ぶれ補正となる。DSC-HX5Vと同時期に発売されたビデオカメラでは、新たにズーム側でのアクティブモードに対応したので、1世代遅れているとも言える。また、同じくビデオカメラの備えている回転ブレの補正機能だが、これは製品発表当初はホームページ上で対応が謳われていた。ところが発表から少したったころ(まだ発売前)、回転ブレ補正の記述が無くなっている事に気がついた。製品情報のページだけでなくプレスリリースからも削除されている。映像を見る限りでは回転ブレに関しては補正されているようには思えない事と、デジタルビデオカメラでズーム側のアクティブモードに非対応で回転ブレの補正機能を搭載した機種がないことを考えると、回転ブレ補正には対応していない可能性が高い。
 ワイド側のみの対応となるが、ここまで強力な手ぶれ補正機能を搭載しているため、DSC-HX5Vはデジタルカメラながら動画撮影機能はおまけ機能ではなく、本格的に搭載していることの現れだろう。

高速連写を検証する

 DSC-HX5Vの特徴の1つといえる高速連写について検証してみよう。スペック上は1秒間に10枚の連写が可能と言うことである。しかも300万画素や500万画素に落とす必要はなく、最高の1020万画素でこの速度での記録が可能である。コンパクトデジタルカメラとしては驚異的な速度と言えるだろう。連写自体は、連写モードにした状態でシャッターを長押しすれば、押している間連写が行われる。実際に撮影してみると、一瞬で10枚の連写が行われた。シャッターボタンを一瞬押して放しても、5、6枚連写されてしまうほど高速である。暗いシーンなどでシャッター速度が低下する場合は、これよりも連写が遅くなることもあったが、それは仕方のないところだろう。連写機能は動いている物を連続して撮る場合だけでなく、人物を入れたスナップ写真を撮る場合にも便利だ。1枚撮影だと、せっかく撮った写真が手ぶれしていたり、目をつぶっていたり、変な表情になってしまう事もあるが、常に連写で撮影していれば中にベストな1枚が見つかるはずである。また連写撮影と1枚撮影は本体上部の「連写/ブラケットボタン」で切り替えられるため、わざわざメニューを開いて設定する必要がないのも便利である。また10枚/秒以外に5枚/秒、2枚/秒の連写速度も選べる。いずれも最大10枚なので、10枚/秒では1秒間、5枚/秒では2秒間、2枚/秒では5秒間の連続写真が撮影できる。
 このように便利な連写撮影機能だが問題点もある。連写自体は速いのだが、その後のメディアへの書き込みが遅いのである。連写終了後、画面に10枚が順番に表示されていきながらメディアへ書き込んでいるのだが、再度撮影が可能になるまで18秒もかかってしまうのである。スナップ写真で違う方向を撮影しようとしたり、縦横を変えて撮影しようとしても、待ち時間が発生してしまうのはいただけない。連写中は一切メディアへの記録処理は行わないようで、連写速度を遅くしても撮影終了後から再度撮影が可能になるまでの時間は変わらなかった。しかもこの間は電源を切ることもできず、電源ボタンを押すと記録が中断されてしまうため、手に持って記録終了を待ってから電源を切らなければならない。せめて、電源ボタンを押しておいてポケットや鞄にしまえば、記録が完了後に電源か切れるというような使い方ができれば便利だったのだが。
 ちなみに記録メディアを変えて、連写終了から再度撮影が可能になるまでの時間を計測してみた。結果が以下の表である。

カード種類
書き込み実測値
*1
DSC-HX5Vでの
連写後待ち時間
SDHCカード(Class 6)
9.998MB/s
18.04秒
microSDHCカード(Class 2)
3.361MB/s
17.86秒
SDカード
3.679MB/s
19.79秒
MS PRO Duo MarkII
10.070MB/s
19.09秒
MS micro
6.244MB/s
17.93秒
*1 メモリカードリーダBSCRA38U2にメモリカードを挿し、CrystalDiskMark 2.2でテストサイズ100MB、テスト回数9回で計測した、シーケンシャルライト速度

 メディアにより2秒ほどの差はあるが、書き込み速度が高速なほど速いというわけではないため、何ともいえない。また、差は10%以内なので、高速なメディアを使用したとしても待ち時間が短縮される訳ではないという事になるだろう。だだし、フルハイビジョンで動画撮影をする場合は、Class4以上が推奨される点は注意が必要だ。
 もう一つ、連写速度は選べる物の、連写枚数は選べないのも多少不便だ。スナップ写真の場合5枚程度の連写で十分なのだが、前述のように一瞬で手を放しても5〜6枚撮影されてしまうほど高速なので、すぐに10枚まで連写されてしまう。設定で5枚連写の設定ができると便利だったといえる。5枚ならばメディアへの書き込み時間も半減され、再度撮影できるまでの待ち時間も短くなるというメリットもあるため、ぜひ改善してもらいたい。

手持ち夜景機能を検証する

 光学式手ぶれ補正機能が搭載されている最近のデジタルカメラではある程度の手ぶれは防いでくれるため便利だ。しかし、夜の屋外や特に暗い店の中のようなシャッター速度が極端に低下してしまうような状況だと光学式手ぶれ補正だけではかなりの確率でぶれてしまうことがある。そこで便利なのが高感度撮影機能である。ISO感度を1600や3200相当に設定することでシャッタースピードを上げる事ができ、ブレを抑えることができる。しかし高感度撮影機能は、シャッタースピードを速くすると暗く写るところを、デジタル的に明るくしているのである。すると、ノイズが乗ってしまうという問題がある。最近では撮影後、記録するまでの間にノイズを除去する処理を行う機種も多いが、それでもどうしてもノイズが載ってしまい、ザラザラとした感じになってしまう。そこでDSC-HX5Vでは高速連写できる事を生かして、ノイズを消す機能を備えている。それが「手持ち夜景」機能である。このモードで撮影すると、一度シャッターボタンを押すと6枚の写真が連写される。そしてその後、内部で合成処理が行われ、ノイズを抑えた写真1枚が記録されるというわけである。
 それでは実際にどの程度の効果があるのか、実際に撮影した写真を見てみよう。

DSC-HX5V(手持ち夜景モード)
DSC-HX5V(高感度撮影モード・ISO3200)

 まずは、「やや暗い場所での撮影画質を検証する」で撮影した場所で、「手持ち夜景モード」にして撮影した写真である。1枚目の写真全体を見ると、「手持ち夜景モード」の方が若干暗く写っていることが分かる。しかし、2枚目と3枚目の写真を見てみると、その差は歴然である。2枚目の写真では車両の前面にあったざらざら感が全くといっていいほど無くなっており、目で見たのと同じきれいな質感になっている。また背景に写っている広告までノイズがすっかり消えている。また3枚目の方では同じく車両前面のノイズが消えて、赤いラインがくっきりしている。さらに驚くべきは、車両側面のドアの下部に点いている金属のステップが、「高感度撮影モード」ではノイズでつぶれてしまい、何が何だかよく分からなくなっているが、「手持ち夜景モード」ではノイズが消えているだけでなく、金属の質感まで分かるほどまできれいになっている事である。ここまで質感が忠実に撮影できるのはすばらしいといえる。またホームの床の端にある滑り止めのような部分もノイズが消えてはっきりしただけでなく、すこし膨らんでいるという事まで認識できるようになっているのである。これほどの差とは驚きである。

DSC-HX5V(手持ち夜景モード)
DSC-HX5V(高感度撮影モード・ISO3200)

 「非常に暗い場所での撮影画質を検証する」で撮影した場所で、「手持ち夜景モード」にして撮影した写真である。1枚目の写真を見ると、縮小表示しているためどちらも大差ないように見える。一方、2枚目の拡大写真を見ると、「手持ち夜景モード」の方が明らかにノイズが少なくなっている。さすがに暗すぎるためか、完全にノイズレスというわけにはいかないが、確実に少なくなっている。一方で、「手持ち夜景モード」の方が若干ピントが甘くなっている様にも思える。6枚を連写して合成するために、連写中にカメラが動いてしまったのか、暗すぎるために連写した中にぶれた写真が多かったのかは分からない。

 最初、合成するだけでは、大してノイズは減らないだろうと思っていたのだが、その予想はうれしい方に大きく外れたと言える。高感度撮影特有のノイズが大幅に減り、高感度撮影していないときと同じレベルにまでノイズが減っているのである。特に薄暗いところでは効果が大きく、ノイズがほとんど無くなっているのには正直目を疑ったほどである。連写する間に大きくカメラが動いてしまうと合成結果がぶれた写真になるという事だったが、薄暗い室内暗いであれば、特に固定することなく、「連写中は動かないようにしよう」と気にかける程度で十分ブレのない写真が撮影できた。もっとも「手持ち」夜景モードなのだから、手持ちできれいに撮れないといけないとも言えるのだが。
 撮影後は合成処理が必要となるため、「処理中」の表示が出てその間は撮影が行えないが、待ち時間は約4秒と十分に待てるレベルである。これでここまでノイズが減るのは驚きである。また、手持ち夜景はメニューから設定するのではなく、本体上部のモードダイヤルに独立して用意されるので、モードダイヤルを手持ち夜景に合わせるだけであり、手軽に使える点も評価できる。
 注意点としては、人物を撮る場合は、連写する1秒ほどはできるだけ止まっておいてもらうようにした方がよい事である。実際に、やや暗い場所で撮影した写真ではホームを歩く人が若干ぶれた状態になっている。このことから、例えば学校の学芸会で舞台上の子供を撮る場合や、メリーゴーランドに載っている人を撮るという様に肝心の被写体が動いてしまう場合や、車窓からの風景や、走ってくる車など連写中に大きく動くものでは使えない。
 相手に制止してもらう必要があったりカメラがなるべく動かないようにしたりと、若干気を遣うが、それだけでノイズが大幅に減った写真を撮影できるこの機能は、なかなか使えると言えるだろう。

スイングパノラマ機能について

 スイングパノラマ機能は、シャッターボタンを押した後、カメラをくるっとスイングさせると、普通では撮れないようなパノラマ撮影が可能になる機能である。シャッターボタンを押してから自分を中心に横に回るようにスイングさせると、その間に高速連写機能を使い、最大100枚の連写が行われる。初期設定の「STD」では180度、設定を「WIDE」にすると270度までのパノラマ写真が撮影できる。ただワイドなだけでなく、自分のいる地点の左側と右側が同じ平面上に写った、一風変わった写真が撮影できる。屋外で撮影すれば様々な方角の風景が写った写真が、室内なら例えばホテルの部屋のような通常は撮りにくい狭いところでも、入り口側からベッド、入り口と反対側の窓まで写るため、全体像がつかみやすい。
 また、高速連写機能を生かして100枚もの写真から合成するため、きれいに曲線を描いてパノラマになるのも、自然なパノラマ写真になる要因である。また写真を縦に細切れにして合成することになるが、動いている人が途中で切れると気持ち悪い写真になるため、DSC-HX5Vでは人物の顔や動く物を認識して、その部分では切らないようにすることで不自然な写真にならない機能まで搭載されている徹底の仕方である。人の多く通る通路で撮影しても、ほとんどの人が切れることなく写っていたのには驚きである。
 またスイングは縦横4方向いずれも設定が可能である。高さのあるところを撮影する場合は、スイング方向を上から下または下から上にすれば縦長の写真が撮影できる。ちなみに縦のスイングパノラマでもカメラは横向きに構えるため、STD設定で129度、WIDE設定で185度スイングさせることができる。
 スイングする際は、例えば左右のスイングパノラマの場合、できるだけ高さを変えずに回る必要がある。またスイングが速すぎると、合成できるほどの写真が連写できないためエラーとなる一方、遅すぎると、指定した角度に達する前に撮影が終了してしまう。とはいえ、それほど几帳面にする必要はなく、高さは手で持ってあまり大きく動かさずに体全体で回る様にするだけで十分だし、スピードも許容範囲は比較的大きいようなので、あまりにも高速に回ったり、あまりにもじっくり回ったりしなければ、問題なく撮影できる。スイングしてパノラマ写真などと言うと難しそうだが、意外と気楽に撮影できて、普通のカメラでは撮れないおもしろい写真が撮影できるのである。
 注意点としては明るさが撮影開始の時点で固定されることである。例えばレストランの昼間に窓際の席で使用するとすると、窓方向からスタートして室内側にスイングしていくと、明るさは窓の外の明るい風景が写るように調整されるため、室内側は普通に室内だけを撮影するよりも暗く写る事になる。逆に、室内方向からスタートして窓方向にスイングしていくと、明るさは室内が明るく写るように調整されるため、窓の外は明るすぎて白飛びする可能性がある。明るさが固定なのは残念だが、途中で明るさを変えると合成するときに不自然になると思われるため仕方が無いのだろう。また、例えば、前者の方法でスイングパノラマ撮影をするが、窓の外は白飛びしてもいいが室内が明るく写ってほしいという場合は、カメラをまず明るさを固定したい方向(今回は室内側)に向けて、シャッターボタンを半押しにした状態にして明るさを固定し、そのまま窓方向に向けてシャッターボタンを全押してスイングを開始すれば、明るさは室内側に合うように調整される。
 ちなみに撮影した写真は横方向のスイングパノラマではSTD(180度)設定で横4912×縦1080ドット、WIDE(270度)の場合は横7152×縦1080ドット、縦方向のスイングパノラマではSTD(129度)設定で横1920×縦4912ドット、WIDE(185度)の場合は横1920×縦3424ドットとなる。100枚の高速連写を行う事と、DSC-HX5Vで素早く合成できるサイズである必要があるためか、画素数はそれほど多くない。しかし、縦横どちらでも、ワイドでない辺の解像度は、フルハイビジョンと同じ解像度であるため、例えばフルハイビジョンのテレビでスクロール再生してもきれいに見えるレベルにはなっている。ちなみに、カメラ内で再生する場合は、スイング方向にスライドさせてみることができるため、その場にいて見回したような感覚を味わうことができる。

スイングパノラマ(ワイド)
スイングパノラマのワイドで撮影した写真である。270度までのパノラマが撮影できるため、きれいにカーブを描いた特殊な写真を撮ることが可能である。正反対の方向が同一平面になっているのがおもしろい。


逆光補正HDRについて

 写真を撮る際、逆光になっていると人物や部屋の中が真っ暗に写ってしまう事はよくあるだろう。逆光補正機能を使えば、確かに人物や部屋の中は明るく写るが、代わりに背景は白飛びしてしまって何が写っているのかわからないという事になってしまう。暗く写っている部分は明るく、明るく写っている部分はそのまま白飛びせずに写したいという贅沢な要望に応えるのが、「逆光補正HDR」機能である。モードダイヤルを「逆光補正HDR」にあわせておくと、1回のシャッターで、露出の異なる2枚の画像を撮影して、合成してくれるのである。この、露出の異なる2枚とは、簡単に言えば逆光補正した写真としていない写真である。逆光補正した写真からは、逆光補正により本来は暗くなる部分を明るく記録し、逆光補正していない写真からは、逆光補正をしなくても明るい部分をそのまま記録し、この2枚を合成することで、逆光で暗くなる部分は明るく、逆光になっていない部分も白飛びしていない写真が完成するのである。
 まず、使い勝手は非常によい。毎秒10コマの高速連写のおかげで、2枚の撮影は瞬時に行われるために普通に撮影する場合とほとんど変わらずに撮影できる。また合成処理も非常に高速なので、待たされることはほとんどない。またモードダイヤルに「逆光補正HDR」の選択肢があるため、手軽に利用できる点も評価できる。そして、その効果だが、うまくいったときは絶大である。たとえば昼間に窓の外を背景に人物を撮る場合、人物も明るく、窓の外の風景もはっきり写った、非常に見やすい写真が撮影できた。ただし風景ならまだしも、人物と背景の場合は、思い通りに人物が明るくならない事があった。特に人物が小さく写っている場合に顔認識が行われないと、逆光部分と認識されないのか人物は暗いままである事が10回中3〜4回程度あった。とはいってもその場で画像が確認できるのだから、うまく逆光補正されていなければ取り直せば良いのである。コツとしては顔認識をしている状態でシャッターを切った方がうまくいく確率が高くなる。失敗することもあるが、逆光の環境でも、希望通り人物も背景も一度に明るく写せるこの機能は画期的と言えるだろう。

長時間露光について

 DSC-HX5Vには長時間露光の機能が付いている。これまで使ってきたDSC-T77ではマニュアル設定でも露光時間は最高1秒であったが、DSC-HX5Vでは最大30秒までの長時間露光ができるようになっている。オート設定では2秒までだが、マニュアル設定とすることで30秒に設定できるわけである。30秒もの長時間露光が行えると、ほとんど光の無いような暗いシーンでも明るく撮影することができる。また、長時間露光ではデジタル的に感度を上げる訳ではないのでノイズも少なく撮影できるというメリットもある。それでは実際に撮影した写真を見てみよう。

DSC-HX5V(シャッター速度1/8秒・ISO3200)

DSC-HX5V(シャッター速度30秒・ISO125)

DSC-HX5V(シャッター速度10秒・ISO125)

 1枚目の写真は夜景を「高感度モード」で撮影した写真、2枚目は同じ場所で30秒の長時間露光を行った写真である。1枚目の写真はただの夜景にしか見えないが、長時間露光で撮った夜景は、明るく写っているだけでなく、街の光が美しく光っており、幻想的な写真になっている。また3枚目は、街灯などがあり多少の明かりがあるため、露光時間を10秒にして撮影した写真であるが、道路を走る車のライトが筋状になり、これまた幻想的な写真ができあがっている。このように長時間露光機能を使うと、一風変わった美しい写真が撮れるのである。
 ただし、手持ちでの撮影では、どんなに制止していようと思っても細かくブレてしまって、長時間露光撮影ほぼ不可能である。三脚とは言わなくても、手すりや机の上、塀の上など、どこかに固定する必要がある。また高感度撮影をした後は、30秒露光で処理に33秒ほどかかってしまう。手軽にスナップ写真を撮るときは高感度撮影や手持ち夜景機能などを使って撮影すればよいが、時には長時間露光を使うと、幻想的な写真が撮影できておもしろいだろう。また設定は30秒や10秒以外にも設定でき、5秒以上の設定だけでも30秒、25秒、20秒、15秒、13秒、10秒、8秒、7秒、5秒といった細かい設定も可能なので、明るさに併せて時間を設定すればよい。このようにマニュアル設定ができるあたりが、コンパクトさ優先の機種とは違う点だろう。長時間露光は必須の機能ではないが、付いていると楽しめる機能の一つである。

自分撮り機能について

 DSC-HX5Vのおもしろい機能として、10秒と2秒のセルフタイマー以外に、「自分撮り」という機能がある点である。自分撮りに設定して、カメラを自分の方に向けると、顔認識機能を使用して、顔がしっかりとフレーム内に入った瞬間に2秒のセルフタイマーが動作し撮影されるという機能である。カメラを置いてセルフタイマーで撮れないような場所でも、自分の顔を入れて写真が撮れるのである。顔認識機能を利用した便利な機能と言えるだろう。設定には1人と2人の設定があるため、2人で写真を撮る場合は、2人に設定すれば2人分の顔を認識した時点で撮影される。1人での旅行はもちろん、2人で旅行に出ても、お互いを撮るだけではせっかくの旅行の写真が寂しいといえる。そんなとき、この機能を使えば2人で写真が撮れるため便利である。「自分撮り」に設定後、カメラを自分の方に向けて顔を認識した瞬間は、セルフタイマーのランプが光るのでわかりやすい。自分の方に向けてもランプが光らない場合は顔がしっかりフレーム内に入っていないと思われるので、カメラの位置や角度を少しずつ変えていくと、セルフタイマーのランプが光る。光ったら今度は動かさないようにすれば比較的成功しやすい。10枚の内、8〜9枚は成功するため、思いの外使える機能と言える。またもし失敗しても、デジタルカメラなのだからその場で確認して取り直せるため問題ない。

バッテリについて

 バッテリ駆動時間は思いの外長いという印象であった。バッテリ自体が、これまで使ってきた薄型のTシリーズに比べると厚みのあるもので、容量もDSC-T77用のNP-FD1 が680mAhなのに対して、DSC-HX5V付属のNP-BD1/NP-BG1が910mAhと多くなっている。そのため、カタログ値でも写真が310枚、ビデオなら連続撮影時間が約75分、実撮影時間が約45分となっており、比較的長めである。実際に制止画だけの撮影であれば、丸一日外出して写真をどんどん撮っても、バッテリ一つで十分いけるだろう。ただ動画撮影をするとさすがにバッテリの減りは早い。とは言っても、ビデオカメラのように例えば子供の運動会や発表会といった長時間連続で撮影するのが目的の機種では元々ないため、写真の間に数分の動画を撮影する程度ならそれほど気にならない。充電器も小さいので、旅行の際でも1日は持つはずなので、ホテルや旅館に戻ったら充電するという使い方でもいけるはずだ。
 ただ、残り時間を気にして使うのもいやなので、念のために予備のバッテリを購入した(ヨドバシカメラ○メディア梅田で5,300円(10%ポイント還元))。付属品と同じ物は購入できず、DSC-HX5Vに対応している「NP-FG1」を購入した。「NP-FG1」は「NP-BG1」と比べて、サイズや容量は変わらないが、「NP-FG1」の方は、インフォリチウム対応になっているという違いがある。そのため、付属のバッテリを使用する場合は、電池残量が4段階の電池マークでしか分からないが、「NP-FG1」では分単位でで残量が分かるため非常に便利である。
 逆に言うと、インフォリチウム機能にも対応しているのに、なぜ付属のバッテリがインフォリチウム機能付きでない物なのかが分からない。インフォリチウム機能を付けるのにどれくらいコストがかかるのか分からないが、100円、1000円単位で安くすることが望まれる安価な機種ではなく、ある程度の高性能な機種なのだから、ぜひ付属のバッテリもインフォリチウム機能対応の物にするべきたと思う。せっかく付いている便利な機能なのに、バッテリを買い足さない人には知られないというのは勿体ない。
予備に購入したバッテリ「NP-FG1」である。

左が予備に購入した「NP-FG1」で、右がDSC-HX5V付属の「NP-BG1」である。サイズや容量は変わらないが、「NP-FG1」の方は、インフォリチウム対応になっている。

インフォリチウム対応の「NP-FG1」を使用すると、バッテリ残量表示が4段階の電池マークから、分単位での残量表示になるため非常に便利である。




 今回は、これまでのコンパクトさ重視から、少し性能も重視した機種へと変わったわけであるが、さすがに「違う」という印象だ。裏面照射型CMOSの「Exmor R」の画質はさすがだし、そのほかの機能も充実している上、どれもおまけ機能ではなく十分に「使える」機能に仕上がっている。その上にワイド側は広く、光学ズームは10倍と撮影しやすく、動画撮影はデジタルカメラとは思えないほどの高画質であった。44,800円というと現在では決して安いデジタルカメラとは言えないが、その価格以上の価値があると感じる機種であった。また、DSC-HX5Vは一目惚れして購入したようなものだが、間違いはなかったと言えるだろう。

(H.Intel)


■今回の関係メーカー・ショップ
Cyber-Shotのページ http://www.sony.jp/products/di-world/cyber-shot/
SONY http://www.sony.co.jp/